以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置1の構成を示す図である。
図1に示されるように、モータ駆動制御装置1は、制御回路部(駆動制御手段の一例、検出手段の一例、切替手段の一例、監視手段の一例)3と、位置検出器5とを備える。また、モータ駆動制御装置1は、モータ20に駆動電流を供給可能な第1駆動回路(第1系統の駆動回路の一例)2と、モータ20に駆動電流を供給可能な、第1駆動回路2とは異なる第2駆動回路(第2系統の駆動回路の一例)52とを備える。モータ駆動制御装置1は、モータ20に駆動電力を供給し、モータ20を駆動させる。モータ20は、U相、V相、W相のコイルLu,Lv,Lwを有する3相モータである。モータ20の種類は、同期モータ、ブラシレスモータなど、いずれであってもよい。詳細は後述するが、第1駆動回路2は、3相のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれの一端に接続された3相インバータ回路2aを有し、第2駆動回路52は、2相のコイルLu,Lvのそれぞれの一端に接続された単相インバータ回路52aを有する。モータ駆動制御装置1は、第1駆動回路2の動作を制御して第1駆動回路2によりモータ20を駆動する駆動制御手段と、第1駆動回路2が異常状態であることを検出する検出手段と、検出手段により第1駆動回路2が異常状態であることが検出されたとき、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える切替手段とを備えている。また、モータ駆動制御装置1は、電源から第1駆動回路2への電力の供給状況を監視する監視手段を備え、検出手段は、監視手段による監視結果に応じて第1駆動回路2が異常状態であることを検出する。なお、本実施の形態では、制御回路部3が駆動制御手段、検出手段、切替手段、監視手段の機能を含んでいる。さらに、モータ駆動制御装置1の制御回路部3は、駆動制御手段として、位置検出器5が出力する位置信号に基づいて第1駆動回路2の動作を制御し、第2駆動回路52は、単相インバータ回路52aの動作を制御する単相駆動部(単相駆動手段の一例)52bを有し、単相駆動部52bは、位置信号に基づいて単相インバータ回路52aの動作を制御する。
位置検出器5は、モータ20の3相のうちいずれか1相に対応し、モータ20のロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する。具体的には、位置検出器5は、例えば、ホール素子やホールICなどの磁気センサである。本実施の形態では、位置検出器5は、具体例として、ホールICであり、位置信号はホール信号Shである。位置検出器5から出力されるホール信号Shは、制御回路部3と第2駆動回路52とに入力される。位置検出器5は、モータ20の1箇所においてロータの位置を検出し、ホール信号Shを出力する。なお、プリドライブ回路に位置信号を入力して信号処理する機能を有する場合、位置信号は、制御回路部3に入力する代わりに、プリドライブ回路に入力するように構成してもよい。
ホール信号Shは、ロータが1回転する間に、所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第1の回転位置になったとき)にローからハイになり(立上り;立上りエッジ)、それとは別の所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第2の回転位置になったとき)にハイからローに戻る(立下り;立下りエッジ)。ホール信号Shは、ロータの回転に応じて周期的にハイ、ローとなる信号である。ホール信号Shは、ロータの位置に応じて、すなわちモータ20のいずれか1相とロータとの位置関係に応じて、位相が変化する信号である。
本実施の形態において、1つの位置検出器5のみが設けられており、モータ20のうち1箇所のみで検出されたホール信号Shが制御回路部3と第2駆動回路52とに入力される。例えば、位置検出器5は、モータ20のU相とV相の間に配置されている。すなわち、位置検出器5は、後述のように使用される2相のコイルLu,Lvが巻かれているスタック間の中間となる角度に配置される。モータ駆動制御装置1は、制御回路部3を用いて、ロータの位置を検出するための位置検出器5を1つのみ使用する1センサ方式で、モータ20を駆動する。
なお、位置検出器5は、モータ20の他のいずれかの相に対応するものであってもよい。また、3相のそれぞれに対応する2つ又は3つの位置検出器5が設けられており、そのうち1箇所の位置検出器5のみから出力されたホール信号Shが制御回路部3及び第2駆動回路52に入力されて用いられるようにしてもよい。
第1駆動回路2は、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電する。すなわち、第1駆動回路2は、モータ20に駆動電流を供給可能である。第1駆動回路2は、3相のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれの一端に接続された3相インバータ回路2aと、プリドライブ回路2bとを有している。第1駆動回路2には、制御回路部3から出力される駆動制御信号Sd1が入力される。
3相インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力される6種類の駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlに基づいてモータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電し、モータ20を駆動する。
本実施の形態において、3相インバータ回路2aは、モータ20のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれに駆動電流を供給するための6個のスイッチング素子Q1−Q6を備えている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、直流電源の正極側にメインヒューズ7を介して接続されたPチャンネルのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)からなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、直流電源の負極(本実施の形態において、グランド)側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6のソース端子は、直流電源の負極に、センス抵抗R0を介して接続されている。スイッチング素子Q1,Q2の組み合わせ、スイッチング素子Q3,Q4の組み合わせ、及びスイッチング素子Q5,Q6の組み合わせのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの3組の直列回路が並列に接続されて、ブリッジ回路が構成されている。スイッチング素子Q1,Q2の接続点がU相のコイルLuの一端に接続され、スイッチング素子Q3,Q4の接続点がV相のコイルLvの一端に接続され、スイッチング素子Q5,Q6の接続点がW相のコイルLwの一端に接続されている。また、3相インバータ回路2aに接続されていないコイルLu,Lv,Lwの他端は、モータ20において互いに接続されている。
プリドライブ回路2bは、3相インバータ回路2aの6個のスイッチング素子Q1−Q6のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。各出力端子から駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力して、スイッチング素子Q1−Q6のオン/オフ動作を制御する。制御回路部3から出力される駆動制御信号Sd1は、プリドライブ回路2bに入力される。プリドライブ回路2bは、駆動制御信号Sd1に基づいて、駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力することにより、3相インバータ回路2aを動作させる。すなわち、3相インバータ回路2aは、駆動制御信号Sd1に基づいて、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに選択的に通電する。
第2駆動回路52は、モータ20に駆動電流を供給可能である。第2駆動回路52は、3相のコイルLu,Lv,Lwのうちの2相のコイルLu,Lvのそれぞれの一端に接続された単相インバータ回路52aを有する。また、第2駆動回路52は、単相インバータ回路52aに駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvlを出力して単相インバータ回路52aを動作させる単相駆動部(単相駆動手段の一例)52bを有する。第2駆動回路52は、例えば、1チップの単相駆動ドライバICである。
単相インバータ回路52aは、単相駆動部52bから出力される4種類の駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvlに基づいて、モータ20のU相のコイルLu及びV相のコイルLvを選択的に通電する。本実施の形態において、単相インバータ回路52aは、コイルLu及びコイルLvのそれぞれに駆動電流を供給するための4個のスイッチング素子Q7−Q10を備えている。スイッチング素子Q7,Q9は、直流電源の正極側に配置されたPチャンネルのMOSFETからなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q8,Q10のソース端子は、直流電源の負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q8,Q10は、直流電源の負極に、センス抵抗R0を介して接続されている。スイッチング素子Q7,Q8の組み合わせとスイッチング素子Q9,Q10の組み合わせとのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの2組の直列回路が並列に接続されている。スイッチング素子Q7,Q8の接続点がU相のコイルLuの一端に接続され、スイッチング素子Q9,Q10の接続点がV相のコイルLvの一端に接続されている。
単相駆動部52bには、位置検出器5から出力されたホール信号Shが入力される。単相駆動部52bは、ホール信号Shに基づいて、単相インバータ回路52aの動作を制御する。すなわち、単相駆動部52bは、単相インバータ回路52aの4個のスイッチング素子Q7−Q10のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。単相駆動部52bは、ホール信号Shに基づいて、各出力端子から駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvlを出力して、スイッチング素子Q7−Q10のオン/オフ動作を制御する。
以下に詳述するように、制御回路部3は、切替手段として、第2駆動回路52に制御電圧を印加することによりモータ20に駆動電流を供給する駆動回路の切り替えを行い、第2駆動回路52は、制御電圧が基準電圧であるときに駆動電流の供給動作を行わず、制御電圧が所定の駆動電圧であるときに駆動電流の供給動作を行う。
本実施の形態において、第2駆動回路52は、制御端子の電位に応じて、駆動電流の供給動作を行う。具体的には、第2駆動回路52は、制御電圧が基準電圧であるとき(例えば、グランドに接続されているとき)に駆動電流の供給動作を行わず、制御電圧が所定の駆動電圧(例えば、5ボルトであるが、これに限られない。また、駆動電圧の値に幅があってもよい。)であるときに駆動電流の供給動作を行う。すなわち、第2駆動回路52は、制御端子に基準電圧が印加されているときには、単相駆動部52bが駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvlを出力せず、単相インバータ回路52aがオン/オフ動作を行わないため、モータ20に駆動電流が供給されない。他方、第2駆動回路52は、制御端子に所定の駆動電圧が印加されているときには、単相駆動部52b及び単相インバータ回路52aが動作することにより、モータ20に駆動電流が供給される。
第2駆動回路52の制御端子には、制御回路部3から出力される制御信号(制御電圧の一例)Sd2が入力される。制御信号Sd2は、例えば、基準電圧と所定の駆動電圧とのいずれかの電圧値をとる制御電圧であり、ロー(基準電圧)かハイ(所定の駆動電圧)のいずれかの水準の電圧値をとる信号である。制御回路部3は、ローまたはハイのいずれかの水準の電圧値の制御信号Sd2を出力することで、第2駆動回路52の制御端子に制御電圧を印加する。これにより、制御回路部3により、第2駆動回路52によるモータ20に対する駆動電流の供給動作が行われるか否かが切り替えられる。
図2は、モータ20に対する駆動電流の供給動作を説明する図である。
図2においては、位置検出器5により出力されるV相についてのホール信号Svの波形の例と、U相、V相のコイルLu,Lvの逆起電圧Vu,Vvの波形の例と、U相とV相との間の差動逆起電圧Vu−vの波形の例とがそれぞれ実線で示されている。図に示されているように、V相についてのホール信号Svの位相の変化タイミングに応じてU相とV相とに駆動電流を流すことで、3相のモータ20を単相駆動させることができることがわかる。
なお、図2においては、U相に位置検出器5を設けた場合のホール信号Suの波形の例と、W相に位置検出器5を設けた場合のホール信号Swの波形の例とが、共に二点鎖線で示されている。また、W相のコイルLwの逆起電圧Vwの波形の例が、破線で示されている。
図3は、単相駆動時に駆動電流を流すコイルの組み合わせと位置検出器5を設ける相との対応関係を示す表である。
本実施の形態において、第2駆動回路52により駆動電流が供給されるコイルは、U相、V相のコイルLu,Lvに限られない。すなわち、U相とV相とのコイルLu,Lv間に第2駆動回路52により駆動電流が供給されるコイルの組合せは、U相とV相とに限られず、U相とW相とにしてもよいし、V相とW相とにしてもよい。U相とW相とに駆動電流を流す場合、位置検出器5はU相とW相との間の位置に設ければよい。V相とW相とに駆動電流を流す場合、位置検出器5はV相とW相との間の位置に設ければよい。
図1に戻って、制御回路部3は、例えば、マイクロコンピュータ(MCU)で構成されている。制御回路部3は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、マイクロコンピュータなどのプログラマブルデバイスを用いて構成することができるが、これに限られるものではない。制御回路部3は、例えば、デジタル回路等であってもよい。
制御回路部3は、電源電圧Vccに基づいてレギュレータ(電圧源の一例)8によって生成された駆動電圧Vdが印加されている。
制御回路部3は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sd1を第1駆動回路2に出力し、モータ20の制御を行う。制御回路部3は、複数のスイッチング素子Q1−Q6を動作させる駆動制御信号Sd1を第1駆動回路2に出力することで、モータ20の制御を行い、モータ20を回転させる。制御回路部3は、位置検出器5から出力されるホール信号Shに基づいて、駆動制御信号Sd1をプリドライブ回路2bに出力する。
制御回路部3は、第1駆動回路2により3相のコイルLu,Lv,Lwに通電する6通りの通電パターンを、所定の順序で、ホール信号Shの位相の変化に応じて切り替える。
すなわち、モータ20は3相のコイルLu,Lv,Lwを有しているので、6つの通電パターンがある。すなわち、(1)ハイサイドU相UH及びローサイドV相VLの組合せの第1通電パターン、(2)ハイサイドU相UH及びローサイドW相WLの組合せの第2通電パターン、(3)ハイサイドV相VH及びローサイドW相WLの組合せの第3通電パターン、(4)ハイサイドV相VH及びローサイドU相ULの組合せの第4通電パターン、(5)ハイサイドW相WH及びローサイドU相ULの組合せの第5通電パターン、及び(6)ハイサイドW相WH及びローサイドV相VLの組合せの第6通電パターンがある。
また、制御回路部3は、上述のように、ローまたはハイのいずれかの水準の電圧値の制御信号Sd2を出力することで、第2駆動回路52の制御端子に制御電圧を印加する。これにより、制御回路部3により、第2駆動回路52による駆動電流の供給動作が行われるか否かが切り替えられる。
以下に詳述するが、本実施の形態におけるモータ駆動制御装置1は、単相インバータ回路52aと単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路及び3相インバータ回路2aと単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路のうち少なくとも一方の経路には開閉手段が設けられており、切替手段(本実施形態では制御回路部3がこの機能を担う)は、開閉手段の状態を変化させることにより、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える。
制御回路部3は、本実施の形態において、2つの開閉スイッチ(開閉手段の一例)11u,11vに対してスイッチ制御信号Scを出力し、開閉スイッチ11u,11vの動作を制御する。開閉スイッチ11u,11vは、例えば、電磁リレーや、機械スイッチや、半導体素子などである。開閉スイッチ11u,11vは、スイッチ制御信号Scに従って、それが設けられている経路の導通をオン/オフする。
本実施の形態において、開閉スイッチ11u,11vは、単相インバータ回路52aと、単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路に設けられている。すなわち、開閉スイッチ11u,11vがオフのとき、第2駆動回路52の単相インバータ回路52aは、モータ20には接続されておらず、モータ20のコイルLu,Lvに駆動電流が供給されない。開閉スイッチ11u,11vがオンに切り替わると、第2駆動回路52の単相インバータ回路52aがモータ20に接続される。このとき、第2駆動回路52が駆動電流の供給動作を行うことで、モータ20のコイルLu,Lvに駆動電流が供給される。このように、開閉スイッチ11u,11vの動作に伴って、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路は、第1駆動回路2からモータ20に駆動電流が供給される第1の系統の駆動回路と、第2駆動回路52からモータ20に駆動電流が供給される第2の系統の駆動回路とのいずれかに切り替えられる。
監視手段として機能する制御回路部3は、直流電源から第1駆動回路2への電力の供給状況を監視する。制御回路部3は、メインヒューズ7の3相インバータ回路2a側の端部に、抵抗R5を介して接続されている。すなわち、制御回路部3には、抵抗R5を介してメインヒューズ7の3相インバータ回路2a側の端部の電圧に対応する監視電圧Vsが入力される。制御回路部3は、監視電圧Vsの値を監視することで、直流電源の状況を監視する。
[モータ駆動制御装置1の動作の説明]
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1を用いて3相のコイルLu,Lv,Lwを有するモータ20に駆動電流を供給してモータ20を駆動するモータ20の駆動制御方法は、通常時において、駆動制御手段として機能する制御回路部3により、第1駆動回路2の動作を制御して、第1駆動回路2によりモータ20を駆動する(駆動制御ステップ)。このとき、第2駆動回路52を用いたモータ20への駆動電流を供給しない。また、検出手段として機能する制御回路部3は第1駆動回路2が異常状態であることを検出する(検出ステップ)。そして、第1駆動回路2が異常状態であることが検出されたとき、切替手段として機能する制御回路部3は、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える(切替ステップ)。
図4は、制御回路部3による制御動作を説明するフローチャートである。
図4に示される一連の処理は、モータ駆動制御装置1の動作時に繰り返し実行されるものである。
ステップS11において、制御回路部3は、モータ駆動制御装置1の状態確認処理を行う。
図5は、状態確認処理の一例を示すフローチャートである。
制御回路部3は、状態確認処理を行うことで、第1駆動回路2が異常状態であることを検出する。
図5に示されるように、ステップS21において、制御回路部3は、監視電圧Vsが所定の電圧閾値V1よりも低いか否かを判断する。監視電圧Vsが電圧閾値V1以上であるとき(NO)、制御回路部3は、異常状態であるとは判定せず、状態確認処理を終了する。
監視電圧Vsが電圧閾値V1より低いとき(YES)、ステップS22において、制御回路部3は、異常状態であることを検出する。異常状態であることが検出されると、状態確認処理が終了する。
例えば以下のような場合において、制御回路部3は、検出手段として機能し、第1駆動回路2が異常状態であることを検出する。すなわち、例えば3相インバータ回路2aのいずれかのスイッチング素子Q1−Q6が故障するなどして、ショートが発生する場合がある(異常状態の一例)。このような故障が発生すると、第1駆動回路2に大きな電流が流れ、メインヒューズ7に流れる電流が大きくなり、メインヒューズ7が切れる。そうすると、監視電圧Vsが低くなり、電圧閾値V1未満になるため、制御回路部3が異常状態であることを検出する。
図4に戻って、ステップS12において、制御回路部3は、状態確認処理で異常状態であることが検出されたか否かを判断する。状態確認処理で異常状態であることが検出されていないと判断されれば(NO)、ステップS13に進む。状態確認処理で異常状態であることが検出されたと判断されれば(YES)、ステップS14に進む。
ステップS13において、制御回路部3は、第1駆動回路2によるモータ20の駆動を継続させる。すなわち、制御回路部3は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sd1を第1駆動回路2に出力し、第1駆動回路2によりモータ20に駆動電流を供給する。これにより、モータ駆動制御装置1は、モータ20の3相駆動を行う。ステップS13の処理が終了すると、ステップS11に戻る。
他方、ステップS14において、制御回路部3は、切替処理を行う。本実施の形態において、制御回路部3は、開閉スイッチ11u,11vの状態を変化させることにより、切替手段として機能し、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える。また、制御回路部3は、ハイ(所定の駆動電圧)の水準の電圧値の制御信号Sd2を出力することで、第2駆動回路52の制御端子に制御電圧を印加することにより、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える。
図6は、切替処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS51において、制御回路部3は、第1駆動回路2を停止させるように、駆動制御信号Sd1を出力する。これにより、第1駆動回路2によるモータ20への駆動電流の供給が停止される。
ステップS52において、制御回路部3は、スイッチ制御信号Scを出力することにより、開閉スイッチ11u,11vの状態を切り替える。具体的には、開閉スイッチ11u,11vがオフの状態から、開閉スイッチ11u,11vがオンになるように切り替える。これにより、モータ20の駆動電流の供給系統が、第1駆動回路2からモータ20に駆動電流が供給される第1の系統から、第2駆動回路52からモータ20に駆動電流が供給される第2の系統に切り替えられる。
ステップS53において、制御回路部3は、制御信号Sd2をロー(基準電圧)からハイ(所定の駆動電圧)に切り替える。これにより、第2駆動回路52による駆動電流の供給動作が開始される。
ステップS53の処理が終了すると、切替処理が終了する。そうすると、図4に戻って、ステップS11に戻る。
以上説明したように、本実施の形態では、通常の駆動時においては、3相インバータ回路2aを含む第1駆動回路2でモータ20が3相駆動される。そして、第1駆動回路2に異常が発生すると、単相インバータ回路52aを含む第2駆動回路52に駆動回路が切り替えられ、第2駆動回路52によってモータ20が単相駆動される。すなわち、モータ駆動制御装置1は、メイン駆動回路として用いられる第1駆動回路2と、バックアップ回路として用いられる、第1駆動回路2とは別個の駆動回路である第2駆動回路52とを含んでいる。バックアップ回路として用いられる第2駆動回路52は、モータ20を単相駆動する、単純な構成の回路である。したがって、モータ駆動制御装置1の回路規模を比較的小さくすることができ、製造コストを低く抑えることができる。
モータ駆動制御装置1に第1駆動回路2のみが設けられている場合には、第1駆動回路2が故障し、モータ20を駆動することができなくなると、モータ20が外力により逆回転することを止めることができなくなる。ショートブレーキを作用させたとしても、逆回転の回転速度を低減させることができるが、モータ20を停止させることはできない。
これに対し、本実施の形態では、第1駆動回路2の故障などでモータ駆動制御装置1が異常状態になっても、簡素な構成の第2駆動回路52で、単相駆動によるトルクをモータ20に加えることができる。したがって、少なくともモータ20が逆回転することを防止することができる。そのうえ、モータ20を逆回転させようとする外力が小さければ、単相駆動によるトルクによりモータ20を正回転させることができる。したがって、本実施の形態では、モータ駆動制御装置1の製造コストを低く抑え、かつ、モータ駆動制御装置1に異常状態が発生してモータ20を通常のように駆動することができなくなってもその影響を小さく抑えることができる。
例えばファンモータとして用いられるモータ20をモータ駆動制御装置1で駆動する場合において、第1駆動回路2が故障すると、ファンに風が当たってファンが逆回転する可能性がある。このような場合においても、本実施の形態においては、第2駆動回路52によりモータ20を単相駆動させることができるので、ファンが逆回転しないように、モータ20を停止状態に維持したり、モータ20を正回転させることができる。したがって、第1駆動回路2が故障した場合であっても、ファンモータによる冷却機能が低下することを防止することができる。
図7は、モータ駆動制御装置が動作不能となり、ファンモータの駆動が停止した場合において、ファンモータとして用いられるモータ20に外力が加わった場合のモータ20の状態の試験結果の具体例を説明するグラフである。
図7においては、本実施の形態として、モータ20が第2駆動回路52により単相駆動される場合(「単相駆動」)、従来例として、モータにショートブレーキが掛けられている場合(「SB」)、従来例として、モータがモータ駆動制御装置による制動制御が行われない場合(「駆動なし」)の3つの場合について、それぞれ、横軸には、モータ20を5000rpm,2000rpmで逆回転させる外力がモータ20に加わっているときのモータ20の回転数が示されている。
図7の「駆動なし」に示されるように、従来例として、モータがモータ駆動制御装置による制動制御が行われない場合には、それぞれ、モータは、外力によって、5000rpm,2000rpmで正回転方向とは反対方向(逆回転方向)に逆回転(バックフローと呼ばれる)をしてしまう。
また、図7の「SB」に示されるように、従来例として、モータ駆動制御装置による制動制御として、モータにショートブレーキが掛けられている場合には、外力に抗して、モータの回転数が小さくなる。しかしながら、それぞれ、モータは、外力によって、低い回転数でも逆回転(バックフロー)をしてしまう。
他方、図7の「単相駆動」に示されるように、本実施の形態のモータ駆動制御装置1では、モータ20が第2駆動回路52により単相駆動されるため、モータ20は、いずれも、正方向に回転する。モータ20を2000rpmで逆回転させるような比較的小さい外力がモータ20に加わっているときには、例えば、正方向に5000rpmで回転させることができる。モータ20を5000rpmで逆回転させるような比較的大きい外力がモータ20に加わっているときであっても、回転数は低いものの、モータ20を正方向に回転させることができる。したがって、本実施の形態のモータ駆動制御装置1は、バックフローを回避することができる。
また、本実施の形態においては、第1駆動回路2からモータ20に駆動電流を供給する場合と、第2駆動回路52からモータ20に駆動電流を供給する場合とで、1つの位置検出器5を共用する。したがって、モータ駆動制御装置1の回路構成を簡素化し、モータ駆動制御装置1の製造コストを低減させることができる。
また、開閉スイッチ11u,11vの状態が変更されることにより、モータ20の駆動電流の供給系統が、第1駆動回路2からモータ20に駆動電流が供給される第1の系統から、第2駆動回路52からモータ20に駆動電流が供給される第2の系統に切り替えられる。第1駆動回路2によりモータ20に駆動電流が供給される通常時においては、第2駆動回路52はコイルLu,Lvから切り離されている状態が維持される。したがって、通常時において、第1駆動回路2からモータ20に供給される駆動電流が第2駆動回路52に流れることがない。
[変形例の説明]
上記の実施の形態において、開閉スイッチは、第1駆動回路2の3相インバータ回路2aと、単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路に設けられていてもよい。
また、単相インバータ回路52aと、単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路に2つの開閉スイッチが設けられ、第1駆動回路2の3相インバータ回路2aと、単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路にも2つの開閉スイッチが設けられていてもよい。
図8は、本実施の形態の一変形例に係るモータ駆動制御装置101を示す図である。
図8に示されるように、モータ駆動制御装置101は、上記の実施の形態におけるモータ駆動制御装置1の構成において、さらに、2つの開閉スイッチ(開閉手段の一例)111u,111vが設けられている構成を有している。すなわち、モータ駆動制御装置101において、単相インバータ回路52aと、単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路に2つの開閉スイッチ11u,11vが設けられており、第1駆動回路2の3相インバータ回路2aと、単相インバータ回路52aに接続された2相のコイルLu,Lvのそれぞれとを接続する経路にも、2つの開閉スイッチ111u,111vが設けられている。
2つの開閉スイッチ111u,111vには、制御回路部3から、スイッチ制御信号Sc2が出力される。2つの開閉スイッチ111u,111vは、開閉スイッチ11u,11vのオン/オフ状態とは反対の状態となる。具体的には、開閉スイッチ11u,11vがオフのとき、開閉スイッチ111u,111vはオンとなる。これにより、第1駆動回路2の3相インバータ回路2aがモータ20に接続され、かつ、第2駆動回路52の単相インバータ回路52aは、モータ20には接続されていない状態になる。他方、開閉スイッチ11u,11vがオンに切り替えられるときには、開閉スイッチ111u,111vはオフに切り替えられる。これにより、第2駆動回路52の単相インバータ回路52aがモータ20に接続され、第1駆動回路2の3相インバータ回路2aはモータ20には接続されていない状態になる。このように、開閉スイッチ11u,11vと開閉スイッチ111u,111vとの動作に伴って、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路は、第1駆動回路2からモータ20に駆動電流が供給される第1の系統の駆動回路と、第2駆動回路52からモータ20に駆動電流が供給される第2の系統の駆動回路とのいずれかに切り替えられる。
本変形例においては、4つの開閉スイッチ11u,11v,111u,111vが設けられている。したがって、第1駆動回路2からモータ20に供給される駆動電流が第2駆動回路52に流れることを防止することができると共に、第2駆動回路52からモータ20に供給される駆動電流が第1駆動回路52に流れることを防止することができる。したがって、例えば第1駆動回路2において、単相駆動に用いられるU相又はV相のローサイドのスイッチング素子Q2,Q4がショートしている場合であっても、第2駆動回路52によって、確実にモータ20を単相駆動させることが可能となる。
図9は、本実施の形態の別の変形例に係るモータ駆動制御装置201を示す図である。
以下に記述するように、第2駆動回路52の制御電圧が印加される端子は、所定の駆動電圧の電圧源に接続されており、制御回路部3による駆動制御手段としての動作と切替手段としての動作とが共に行われない場合に、電圧源により所定の駆動電圧が印加されることにより、第2駆動回路52によりモータ20に駆動電流が供給される。
図9に示されるように、モータ駆動制御装置201は、上記の実施の形態におけるモータ駆動制御装置1の構成において、レギュレータ(電圧源の一例)8の出力端と第2駆動回路52の制御信号Sd2が入力される制御端子とを抵抗R8を介して繋ぐバイパス210が設けられている構成を有している。すなわち、制御信号Sd2が入力される第2駆動回路52の制御端子は、バイパス210によって、レギュレータ8によって生成された駆動電圧Vdが印加される。
本変形例において、モータ駆動制御装置201は、このような構成を有することにより、制御回路部3が故障するなどして制御回路部3による駆動制御手段としての動作や切替手段としての動作が共に行われない場合であっても、第2駆動回路52を駆動させて、モータ20を単相駆動させることができる。すなわち、通常時には、制御回路部3により出力される制御信号Sd2がグランドの制御電圧であるため、第2駆動回路52は駆動電流の供給動作を行わない。ここで、制御回路部3に故障が発生するなどし、制御回路部3から制御信号Sd2が出力されなくなり、制御回路部3の制御信号Sd2の出力端子がオープンになると、レギュレータ8により、第2駆動回路52の制御端子に、駆動電圧(所定の駆動電圧の一例)Vdが印加される。したがって、第2駆動回路52によりモータ20に駆動電流が供給されるようになる。
なお、モータ駆動制御装置201において、開閉スイッチ11u,11vがノーマリークローズ又はノーマリーオンとなるように用いられるようにすればよい。このように構成することにより、制御回路部3の故障に伴い、開閉スイッチ11u,11vをオフする(すなわち、オープンとさせる)スイッチ制御信号Scが出力されなくなったときに、開閉スイッチ11u,11vがオンとなり、第2駆動回路52がモータ20に接続されるようにすることができる。
[その他]
第1駆動回路2で発生する異常状態の種類は、上記のような電源供給が遮断されている状態に限定されない。制御回路部3は、異常状態として、3相インバータ回路2aのスイッチング素子Q1−Q6が故障した異常状態や、第1駆動回路2に過電流が流れる異常状態を検出してもよい。例えばセンス抵抗R0により得られる電圧値に基づいて第1駆動回路2の駆動電流の増加を監視することにより、異常状態を検出することができる。また、電源電圧Vccに対応する監視電圧Vsを監視することにより、過電圧である異常状態を検出してもよい。また、第1駆動回路2に設けた温度センサの温度の検出値やマイコン内部に設けられた温度センサの温度の検出値等に基づいて、高温である異常状態を検出することができる。
図10は、状態確認処理の一変形例を説明するフローチャートである。
図10に示されるように、例えば、状態確認処理は、種々の条件のいずれかが満たされたときに異常状態であることを検出する処理であってもよい。すなわち、制御回路部3は、監視電圧Vsが閾値V1より小さいか(S121)、駆動電流が所定の過電流閾値より大きいか(S122)、監視電圧Vsが所定の過電圧閾値より大きいか(S123)、温度の検出値が所定の温度閾値より大きいか(S124)をこの順に判断する。いずれかの判断において条件が満たされていると判断すると(S121からS124のいずれかでYES)、ステップS125において、制御回路部3が、異常状態であることを検出する。これにより、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路が第2駆動回路52に切り替えられる。なお、判断の順番は、図10に示されるものに限られない。
位置検出器5が3相に対応して設けられており、第1駆動回路2によりモータ20に駆動電流を供給する場合においては、3相それぞれの位置信号に基づいてモータ20の駆動制御が行われるようにしてもよい。
また、位置検出器5が設けられず、いわゆるセンサレス駆動方式によりモータ20が駆動されるように構成されていてもよい。
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートで文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。