以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本発明の一実施形態に係るフィルムの製造装置及び製造方法は、偏光特性を有する偏光フィルム(光学フィルム)を製造する。
図1に示されるように、フィルム製造装置100は、2組の欠陥検査システム10A,10Bと、貼合ローラR1,R2と、搬送ローラR3と、を備える。フィルム製造装置100は、まず、偏光子の主面両側に保護フィルムを貼り合わせて、偏光フィルム本体部(光学フィルム本体部)111を製造する。製造された偏光フィルム本体部111は、欠陥検査システム10Aによって欠陥の有無が検査される。
次に、フィルム製造装置100は、セパレートフィルム(離型フィルム)が粘着材に貼り合わされたセパレートフィルム付き粘着材112を原反ロール101から取り出す。そして、セパレートフィルム付き粘着材112を偏光フィルム本体部111の一方の主面側に貼合ローラR1によって貼り合わせる。
次に、フィルム製造装置100は、表面保護フィルム113を原反ロール102から取り出した後、表面保護フィルム113を偏光フィルム本体部111の他方の主面側に貼合ローラR2によって貼り合わせる。以上の工程により、偏光特性を有する偏光フィルム110が得られる。フィルム製造装置100は、偏光フィルム110を搬送ローラR3によって搬送しながら、欠陥検査システム10Bによって偏光フィルム110の欠陥の有無を検査した後、偏光フィルム110を原反ロール103に巻き取る。
偏光フィルム本体部111における偏光子の材料には、PVA(Polyvinyl Alcohol)等が挙げられる。偏光フィルム本体部111における保護フィルムの材料としては、TAC(Triacetylcellulose)等が挙げられる。セパレートフィルム付き粘着材112におけるセパレートフィルム及び表面保護フィルム113の材料としては、PET(Polyethylene Terephthalate)等が挙げられる。セパレートフィルムを剥がすことにより、偏光フィルム110が、粘着材によって液晶パネルや他の光学フィルム等に貼り合わされる。
以下、欠陥検査システム10A,10Bについて、欠陥検査システム10A,10Bを欠陥検査システム10と称して説明する。欠陥検査システム10A,10Bの構成は同一である。そのため、検査対象が偏光フィルム110である場合、すなわち、欠陥検査システム10Bとしての欠陥検査システム10について説明し、欠陥検査システム10Aについての説明を省略する。
欠陥検査システム10及びそれを用いた欠陥検査方法が行う欠陥検査とは、偏光フィルム110の製造工程や搬送工程の際に発生し得る欠陥を検出する処理の他、後述する欠陥マップを作成する処理を含んでもよい。この欠陥には、例えば、貼り合せの際に生じる気泡の噛み込み、貼り合せの際に生じる異物の混入及び付着、搬送中に生じる付着異物による傷転写で生じる凹凸、糊付着時に生じる輝点の混入及び付着などがある。
図2に示したように、欠陥検査システム10は、欠陥検査用画像撮像システム(以下、単に「撮像システム」と称す)11と、解析装置(欠陥検査手段)12と、を備える。欠陥検査システム10は、マーキング装置13を備えてもよい。以下では、断らない限り、マーキング装置13を備えた形態について説明する。図2には、説明の便宜のために使用するXYZ直交座標が示されている。X方向は偏光フィルム110の幅方向を示し、Y方向は偏光フィルム110の搬送方向を示す。Z方向は、X方向及びY方向のそれぞれに直交する方向を示す。他の図面の説明においても、同様のXYZ直交座標を利用して説明する。
撮像システム11は、偏光フィルム110に対して設定される撮像領域20を撮像することによって、欠陥検査用の画像を取得するためのシステム(或いは撮像装置)である。撮像システム11は、取得した画像を解析装置12に出力する。具体的には、撮像システム11は、取得した画像に対応する画像データを解析装置12に出力する。
解析装置12は、画像に対応する画像データに対して偏光フィルム110に存在する欠陥の検査処理を行う。具体的には、解析装置12は、偏光フィルム110に存在する欠陥の有無の判断を行う。解析装置12は、欠陥の種類の判断を行ってもよい。以下では、断らない限り、解析装置12で扱う画像データも単に画像と称する。解析装置12は、欠陥の検査処理及びそのための画像処理を実行できる装置であれば限定されるものではない。例えば、解析装置12として、検査処理用に製造された装置でもよいし、或いは、検査処理用のソフトウエアがインストールされたパーソナルコンピュータでもよい。解析装置12は、撮像システム11を制御する制御機能を有してもよい。
本実施形態において、解析装置12は、検査処理の結果を利用して欠陥位置情報を生成する。欠陥位置情報とは、偏光フィルム110の座標系における欠陥の位置をいう。具体的には、解析装置12は、画像座標系における欠陥の位置を偏光フィルム110の座標系に変換することにより、欠陥位置情報を生成する。解析装置12における変換処理には、画像座標系における欠陥位置と、偏光フィルム110が搬送される距離とが利用される。解析装置12は、当該欠陥位置情報を利用して偏光フィルム110の全領域に対応する画像を合成することにより欠陥マップを作成する。
マーキング装置13は、解析装置12から送られてくる欠陥マップを利用して、偏光フィルム110上に目印Mを付す装置である。マーキング装置13は、例えば、偏光フィルム110の幅方向Xに沿って延在するアームと、ペンなどを有するマーカヘッドとを有する。マーカヘッドがアーム上を幅方向Xに移動することにより、偏光フィルム110上の任意の位置に目印Mが付される。マーキング装置13は、解析装置12により制御されるように構成されていてもよいし、或いは、マーキング装置13自体がコンピュータといった制御部を有していてもよい。
撮像システム11は、解析装置12で処理した各種画像を表示する表示装置(例えば、ディスプレイ)を更に備えてもよい。表示装置が表示する画像には、解析装置12により解析された欠陥の位置が示された画像も含む。
次に、撮像システム11について詳細に説明する。撮像システム11は、搬送手段14と、複数のエリアセンサ(撮像手段)15と、照明部(照明手段)16と、を備える。撮像システム11は、照明部16から出射された照明光L1が偏光フィルム110で反射した反射光L2をエリアセンサ15で受ける反射型の光学系システムである。
搬送手段14は、複数のエリアセンサ15と照明部16とに対して偏光フィルム110を搬送方向Yに相対的に搬送させる搬送機構(搬送部)である。搬送手段14の一例は搬送ローラR4である。例えば、欠陥検査システム10が、図1に示した欠陥検査システム10Bである場合、例えば、搬送ローラR3(図1参照)も搬送手段14の一部とみなせる。原反ロール103(図1参照)により偏光フィルム110にテンションが付与されて偏光フィルム110が搬送されることから、原反ロール103も搬送手段14の一部を構成しているとも言える。
本実施形態では、照明部16とエリアセンサ15とが固定され、偏光フィルム110が搬送されているが、例えば、偏光フィルム110に対して照明部16と複数のエリアセンサ15との組を移動させてもよい。
図3に示したように、複数のエリアセンサ15は、Z方向において偏光フィルム110の一方の主面(以下、「表面」と称す)側に配置され、幅方向Xに互いに離間して配置される。エリアセンサ15のそれぞれは、二次元状の撮像領域20を有する。一つのエリアセンサ15の撮像領域20は、幅方向Xにおいて隣接するエリアセンサ15の撮像領域20の一部と重複し得る。撮像領域20は二次元状であるので、エリアセンサ15の視野幅W(撮像領域20の搬送方向Yの長さ)は、ラインセンサの視野幅より広い。撮像領域20は、偏光フィルム110に設定される領域であるが、偏光フィルム110の特定の位置に設定されるものではない。
図2に示したように、照明部16は、幅方向Xに延在しており偏光フィルム110を照明する照明光L1を出射する。照明部16は、偏光フィルム110に対してエリアセンサ15と同じ側に、偏光フィルム110の表面から所定距離だけ離間して配置される。
照明光L1は、図4に示したように、撮像領域20に明暗パターン30を生じさせる照明光である。明暗パターン30は、撮像領域20において搬送方向Yに沿って明部31と暗部32とが交互に繰り返されるパターンである。以下、断らない限り、明部31と暗部32の境界線33は搬送方向Yに対し実質的に直交している形態について説明する。
撮像領域20上において、搬送方向Yにおける明部31の長さをT1(mm)とし、暗部32の長さをT2(mm)としたとき、長さT1と長さT2は等しい(すなわち、T1=T2)。換言すれば、図4に示したように、撮像領域20に境界線33が複数現れている場合、隣接する境界線33の間隔は一定である。長さT1及び長さT2は、撮像対象である偏光フィルム110に弛み等の歪みが無い状態における長さである。T1及びT2は、視野幅Wより小さい。長さT1と長さT2が等しい場合、長さT1及び長さT2を、明部31と暗部32の繰返し間隔T(mm)とも称す。
エリアセンサ15の搬送分解能Aは、繰返し間隔Tの非整数倍であり且つ繰返し間隔Tは、搬送分解能Aより大きい。搬送分解能Aとは、偏光フィルム110上のある一点がエリアセンサ15の1フレームの撮影間での移動量であり、撮像速度(frame/s)に対する搬送速度である。具体的には、搬送速度をV(mm/s)とし、撮像速度をF(frame/s)とした場合、搬送分解能Aは、A=V/Fで表される。たとえば、搬送速度Vが500mm/sであり、撮像速度Fが1000frame/sである場合、搬送分解能は0.5mm/frameである。
上記明暗パターン30を偏光フィルム110に投影するために、図3に示したように、照明部16は、光源部17と共に、スリット部(明暗パターン生成部)18を有する。光源部17は、偏光フィルム110の組成及び性質に影響を与えない光を発する。光源部17としては、例えば、蛍光灯(特に高周波蛍光灯)、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライト、発光ダイオード(LED)などが挙げられる。
スリット部18は、透光性を有する基板18aと、遮光性を有する帯状の複数の遮光部18bとを有する。基板18aは板状部材であり、光源部17から出射される光に対して透過性を有する。基板18aが上記透光性を有すれば、基板18aの材料は、限定されない。基板18aの材料の例は樹脂、ガラスなどである。遮光部18bは、幅方向Xに延在する帯状の部材である。遮光部18bは、光源部17から出射される光を遮蔽できればよい。遮光部18bは、例えば次のようにして形成され得る。すなわち、ニトロセルロース、合成樹脂(例えばアルキド樹脂)、顔料、有機溶剤などを含むインクを基板18aに塗布することにより、遮光部18bは形成され得る。複数の遮光部18bは、遮光部18bの延在方向と直交する方向(搬送方向Yに対応する方向)に沿って基板18a上に互いに平行に設けられている。本実施形態において遮光部18bの幅と、遮光部18b同士の間隔とは、実質的に同等であり、遮光部18bの幅(或いは遮光部18b同士の間隔)は、搬送分解能Aが、明暗パターン30において明部31及び暗部32の繰返し間隔Tの非整数倍になるように設定されている。
光源部17から出射された光はスリット部18に入射する。スリット部18では、遮光部18bにおいて光が遮蔽され、遮光部18bの間から光が透過する。したがって、照明部16から出射された照明光L1は、幅方向Xに延びる明部と暗部とが、明部(又は暗部)の延在方向に直交する方向に交互に形成された縞状の明暗パターンを有し、この明暗パターンが偏光フィルム110に投影されることで明暗パターン30が形成される。
撮像システム11において、照明部16とエリアセンサ15とは、明部31と暗部32の境界線33が撮像領域20内に一箇所以上存在するように、偏光フィルム110を照明すると共に、照明光L1が撮像領域20で反射してなる反射光L2をエリアセンサ15で受けられるように偏光フィルム110に対して配置される。
照明部16におけるスリット部材22の遮光部18bの数、および、遮光部18bの幅(或いは遮光部18b同士の間隔)は、照明部16及びエリアセンサ15の撮像領域20に対する配置関係が上記関係を満たすように設定されていればよい。
一実施形態において、明暗パターン30の搬送方向Yにおける領域幅に対応する、照明部16のスリット部材22における搬送方向Yに対応する長さは、偏光フィルム110の振動及びそれに伴う撮像領域20の位置変動を考慮して設定され得る。この点について説明する。
偏光フィルム110は搬送手段14により搬送される過程で振動する場合がある。偏光フィルム110が振動すると、振動に伴って生じる偏光フィルム110のゆがみにより、偏光フィルム110に対する照明部16及びエリアセンサ15の相対位置が変化し、その結果、偏光フィルム110における撮像領域20の位置が変動する場合がある。
偏光フィルム110の搬送による振動量は、偏光フィルム110の剛性、搬送時の引張力などに基づいて算出、または実測することができる。偏光フィルム110の搬送による振動量は、図5(a)に示したように、非振動時の偏光フィルム110(図5(a)において実線で示した偏光フィルム110)に対する、振動時の偏光フィルム110(図5(a)において二点鎖線で示した偏光フィルム110)における撮像領域20の傾斜角度θで表される。傾斜角度θは、振動によってゆがんだ偏光フィルム110の撮像領域20に対する仮想的な接平面Pと、偏光フィルム110が振動していないとした場合(すなわち、設計上)の偏光フィルム110に対する傾斜角度とし得る。傾斜角度θが大きいほど、偏光フィルム110の搬送による振動量が大きい。
この偏光フィルム110の搬送による振動量(傾斜角度θ)と、偏光フィルム110の搬送に伴う撮像領域20の位置変動範囲幅とは、下記式(1)の関係がある。
傾斜角度θ=(tan−1(C/D))/2 …(1)
[式(1)中、Cは撮像領域20の位置変動範囲幅(mm)を示し、Dは照明部16から撮像領域20までの距離(mm)を示す。]
上記式(1)より、撮像領域20の位置変動範囲幅C(mm)は、下記式(I)として算出し得る。
位置変動範囲幅C=D×tan(2θ)…(I)
たとえば、照明部16から撮像領域20までの距離Dが200mm、偏光フィルム110の振動量に相当する傾斜角度θが0.5度の場合、式(I)より、撮像領域20の位置変動範囲幅Cは3.5mmである。
照明部16は、偏光フィルム110の表面に投影された明暗パターン30の搬送方向Yの長さが、上記式(I)で表される、偏光フィルム110の搬送に伴う撮像領域20の位置変動範囲幅C(mm)と、視野幅W(mm)との和である(C+W)以上となるように、偏光フィルム110を照明することが好ましい。
すなわち、明暗パターン30の搬送方向Yの長さに対応するスリット部材22の長さが、偏光フィルム110の搬送に伴う撮像領域20の位置変動範囲幅C(mm)と、視野幅W(mm)との和である(C+W)以上となるように設定されることが好ましい。視野幅Wは、偏光フィルム110が振動していないとした場合における撮像領域20の搬送方向の長さである。
一方、搬送における振動による偏光フィルム110の速度変化は、通常±1%程度であることから搬送分解能Aの変化も±1%程度であり、搬送分解能における振動の影響を無視できる。
ここで、明部31と暗部32の搬送方向における長さの振動による変化を、図5(b)を参照して説明する。図5(b)は、偏光フィルム110が振動していない状態(実線)と振動し傾斜している状態(二点鎖線)における一つの明部31近傍を拡大して示しているとともに、照明光L1のうち図5(b)に示した一つの明部31を形成する部分を示している。偏光フィルム110が振動した場合、図5(a)を利用して説明した傾斜角度θは、通常±0.5°未満である。換言すれば、傾斜角度θが±0.5°未満になるように振動を抑制する。このような傾斜角度θであれば、撮像領域20はほぼ同じように傾斜する。よって、図5(b)では、振動して傾いた明部31近傍を直線として図示している。図5(b)に示したように、偏光フィルム110への照明光L1の照射角度をφとし、振動により変化した明部31の長さをT1aとした場合、長さT1aは、下記式(II)で表される。
T1a=T1×sinφ/sin(φ−θ)・・・(II)
傾斜角度θは通常±0.5°未満である。よって、式(II)より、照射角度φが25°以上であれば、振動していない場合の明部31の長さT1に対するT1aの変動幅を±2%未満とし得る。このような変動幅であれば、振動の影響を無視できる。たとえば、照射角度φが30°である場合、傾斜角度θが±0.5°未満であるとすると、式(II)より、明部31の長さT1の変動幅は、±1%未満と見なすことができる。照射角度φは大きい方が変動幅を小さくできるので、照射角度φは30°以上が好ましい。傾斜角度θが±0.1°未満であれば、式(II)より、振動していない場合の明部31の長さT1に対するTaの変動幅を±2%未満とするためには、照射角度φが5°以上であればよい。照射角度φは大きい方が変動幅を小さくできるので、傾斜角度θが±0.1°未満である形態において、照射角度φは10°以上であることが好ましい。ここでは、明部31の長さT1について説明したが、暗部32の長さT2についても同様である。
以上のように、偏光フィルム110が振動したとしても、搬送分解能Aへの影響並びに明部31及び暗部32の長さの変動への影響を無視できる。すなわち、撮像領域20の位置が変動したとしても、欠陥位置と明部31及び暗部32の位置関係は一定と考えることができる。なお、搬送における偏光フィルム110の振動の影響をさらに抑えるためには、撮像位置をガイドロール等の搬送ロールに近づけることが好ましい。
図5(a)及び図5(b)を利用して説明したことにより、偏光フィルム110が振動したとしても、明暗パターン30のうちのいずれかの明部31とそれに隣接する暗部32との境界線33が撮像領域20内により確実に位置し得る。したがって、欠陥検査システム10は、偏光フィルム110が搬送されるときの振動などによって撮像領域20の位置が変動した場合であっても、エリアセンサ15で取得した二次元画像に基づいて、解析装置12によって欠陥をより確実に検出することができる。
照明部16は、偏光フィルム110の表面に明暗パターン30を投影できればその構成は限定されない。すなわち、照明部16は、幅方向Xに延在する複数の線状光源を有してもよい。線状光源は、延在方向と直交する方向に互いに離間して配置される。
次に、欠陥検査方法について説明する。欠陥検査方法では、複数のエリアセンサ15及び照明部16に対して相対的に偏光フィルム110を連続的に搬送する(搬送工程)。このように、複数のエリアセンサ15及び照明部16に対して相対的に搬送される偏光フィルム110を照明光L1で照明しながら、偏光フィルム110の撮像領域20を複数回撮像することによって複数の二次元画像を取得する(撮像工程)。その後、得られた複数の二次元画像を利用して偏光フィルム110における欠陥の検査処理を実行する(欠陥検査工程)。本実施形態では、マーキング装置13を備えるので、欠陥検査工程の後、偏光フィルム110に目印Mを施す工程(目印付与工程)を更に実施する。
偏光フィルム110を搬送している過程において、照明光L1の照明は連続的に実施され、予め設定された撮像タイミングに基づいて偏光フィルム110の撮像領域20の撮像が実施される。そして、撮像領域20の撮像タイミング毎に、欠陥検出工程と目印付与工程が実施される。
上記欠陥検査方法のうち、搬送工程及び撮像工程が欠陥検査用画像としての二次元画像を撮像する欠陥検査用画像撮像方法に対応する。
より詳細に、欠陥検査方法及び欠陥検査用撮像方法について説明する。まず、搬送手段14は、搬送方向Yに沿って偏光フィルム110を搬送する。この偏光フィルム110の搬送は、偏光フィルム110の製造中において、連続的に実施される。搬送中の偏光フィルム110に対して、照明部16から照明光L1を連続的に出射する。
撮像システム11は、搬送中における偏光フィルム110の撮像領域20を撮像する。撮像システム11は、撮像により得られた二次元画像(より具体的には、二次元画像に相当する画像データ)を解析装置12に送信する。エリアセンサ15は、所定の時間間隔ごとに(すなわち、所定のフレームレートで)撮像領域20を撮像する。エリアセンサ15における、ある撮像タイミングとその次の撮像タイミングとの時間間隔は、例えば、エリアセンサ15が撮像した二次元画像における搬送方向Yに対応する長さが、エリアセンサ15が二次元画像を取り込んでから次の二次元画像を取り込むまでの区間に偏光フィルム110が搬送される搬送距離の少なくとも2倍以上になる時間である。すなわち、2つの撮像タイミングの時間間隔は、偏光フィルム110の同一領域を2回以上撮像可能な時間間隔である。この時間間隔によれば、二次元画像の搬送方向Yの長さを、画像取込区間における搬送距離よりも大きくし、偏光フィルム110の同一部分の撮像数を増加させることにより、高精度に欠陥を検査できる。
図6は、エリアセンサ15で撮像した撮像領域20の二次元画像Iの一例である。図6では、撮像領域20に欠陥が存在しない場合を模式的に示している。撮像領域20には、明暗パターン30が投影されているため、二次元画像Iには、明暗パターン30に対応する明暗パターン像30Iが含まれる。明暗パターン像30Iには、明部31の像に対応する明部像31I及び暗部32の像に対応する暗部像32Iが含まれる。図6では、ハッチングを付して暗部像32Iを模式的に示している。暗部像32Iは、暗部32に対応しているため、暗部32に欠陥が存在しない場合、暗くなっている。しかしながら、暗部32に欠陥が存在すると欠陥の種類によっては欠陥による散乱などで欠陥がない場合に比べて輝度が高くなる傾向にある。
図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、欠陥の一例である凹凸欠陥D1が存在している場合において、エリアセンサ15により異なる撮像タイミングで撮像された二次元画像Iの模式図である。図7(b)に示した二次元画像Iは、図7(a)に示した二次元画像Iの後に撮像された撮像領域20の画像であり、図7(c)に示した二次元画像Iは、図7(b)に示した二次元画像Iの後に撮像された撮像領域20の画像である。
凹凸欠陥D1は輝度変化が生じにくい。そのため、 図7(a)、図7(b)及び図7(c)では、欠陥の一例である凹凸欠陥D1を破線で模式的に示している。図7(b)に示したように、欠陥が凹凸欠陥D1である場合において、凹凸欠陥D1が、明暗パターン像30Iにおける明部像31Iと暗部像32Iの境界線33Iに位置する場合、境界線33Iが歪む傾向にある。
図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、別の例として、欠陥の一例である気泡欠陥D2が存在している場合において、エリアセンサ15により異なる撮像タイミングで撮像された二次元画像Iの模式図である。図8(b)に示した二次元画像Iは、図8(a)に示した二次元画像Iの後に撮像された撮像領域20の画像であり、図8(c)に示した二次元画像Iは、図8(b)に示した二次元画像Iの後に撮像された撮像領域20の画像である。
気泡欠陥D2が明部31に位置した場合、気泡欠陥D2は、明部像31Iにおける欠陥以外の部分より輝度が高い(すなわち、明るい)状態で二次元画像Iに現れる。同様に、気泡欠陥D2が暗部像32Iに含まれる場合、気泡欠陥D2は、暗部像32Iにおける欠陥以外の部分より輝度が高い(すなわち、明るい)状態で二次元画像Iに現れる。
解析装置12は、エリアセンサ15が所定の撮像タイミングで撮像した複数の二次元画像を利用して欠陥を検査する。欠陥検査については、検査したい欠陥の種類に応じた欠陥検査アルゴリズム(或いは、欠陥検出アルゴリズム)を利用する。異なる欠陥の種類に対応する欠陥検査アルゴリズムを組み合わせてもよい。
例えば、図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示したように、欠陥が凹凸欠陥D1である場合、凹凸欠陥D1は、明部像31Iと暗部像32Iにおける輝度変化は生じにくい一方、明部像31I及び暗部像32Iの境界線33Iの歪みが生じやすい。よって、境界線33Iの変形状態を検出することで凹凸欠陥D1を検出できる。境界線33Iは、明部像31Iのエッジ又は暗部像32Iのエッジであるともいえる。よって、例えば、複数の二次元画像Iにおいて境界線33Iの形状に対応するエッジプロファイルを検出する。そして、エッジプロファイルにおいて、歪曲度を算出し、閾値以上の歪曲度が存在する場合には、凹凸欠陥D1が存在するとして判断する。
或いは、図8(a)、図8(b)及び図8(c)に示したように、欠陥が気泡欠陥D2である場合、明部像31I及び暗部像32Iにおいて、気泡欠陥D2が生じている部分の輝度が、気泡欠陥D2以外の部分に対して変化している。よって、輝度変化を検出することで、気泡欠陥D2を検出できる。例えば、二次元画像I上で、偏光フィルム110の搬送方向に対する輝度プロファイルを検出する。暗部像32Iにおいて気泡欠陥D2に相当する部分は、残部より輝度が高くなる傾向にあるので、気泡欠陥D2に対応する閾値を設定しておき、その閾値以上の輝度が存在すれば、気泡欠陥D2があると判断する。同様に、明部像31Iにおいて気泡欠陥D2に相当する部分は、残部より高いピークが存在するので、明部像31Iにおける気泡欠陥D2以外の部分の輝度を規定する閾値より大きく、気泡欠陥D2に対応する閾値以上の輝度が存在すれば、気泡欠陥D2があると判断する。気泡欠陥D2が、境界線33I上にある場合は、上記明部像31I及び暗部像32Iにおける気泡欠陥D2の判断手法を組み合わせればよい。
更に、例えば、複数の二次元画像において、欠陥検出された部分において、一ライン分の画像(偏光フィルム110の幅方向に延在するライン)を抜き出し、撮像領域20において搬送方向Yにおける対応する位置に配置して合成することで合成画像を作成してもよい。
ここでは、欠陥検出のために二次元画像Iを直接利用する場合を例示したが、エリアセンサ15から送られてきた二次元画像Iに対して予め欠陥を強調するような画像処理を行っていてもよい。このような画像処理には、例えば、垂直微分フィルタ法や、二値化法などが利用される。例えば、二値化法には、ラプラシアンヒストグラム法を用いて固定した閾値が利用され得る。
上記例では、欠陥として凹凸欠陥D1及び気泡欠陥D2の場合の処理方法の例を示したが、これらの欠陥検査用のアルゴリズムに限定されず、検出すべき欠陥を検出するように設計されたアルゴリズムを用いればよい。また、欠陥の検査処理については、例えば、特許文献1と同様の手法も採用され得る。
解析装置12において、異なる種類の欠陥に対応した欠陥検査アルゴリムを組み合わせて欠陥検査処理を実施する場合、検査の結果、欠陥を検出したアルゴリズムを特定することで、欠陥の種類を判別し得る。
次に、解析装置12は、検出された欠陥に関するデータを利用して欠陥検査情報を作成する。欠陥検査情報は、欠陥の種類と、欠陥の位置に関する情報を含む。また、欠陥検査情報は、1個のロットに対する欠陥の有無を示す情報などを含んでもよい。欠陥検査情報の一例には、偏光フィルム110の全領域の欠陥マップが挙げられる。
前述したように、偏光フィルム110は搬送中に振動する場合があり、その振動量は、偏光フィルム110の剛性、搬送時の引張力などに基づいて算出、または実測することができる。よって、欠陥検査をする際には、次のようにして欠陥検査情報を作成してもよい。すなわち、振動に寄与する搬送時の偏光フィルム110の引張力など振動に影響するパラメータを計測しておき、計測されたパラメータの値及び偏光フィルム110の剛性などに基づいて振動量を算出する。欠陥検査情報を作成する際には、算出された振動量に基づいた撮像領域20の位置変動を考慮して、欠陥検査情報を作成すればよい。
次に、マーキング装置13は、欠陥検査情報を利用して、偏光フィルム110に欠陥の存在を示す目印Mを付す。この目印Mは、目視やその他の手段によって確認可能である。この欠陥位置を示す目印Mは、例えば、偏光フィルム110を所定サイズの枚葉品に裁断した後に、枚葉品を正常品と欠陥品とに分別する処理に利用される。
撮像システム11及び欠陥検査用画像撮像方法では、撮像手段(撮像部)としてエリアセンサ15を用いている。撮像システム11及び欠陥検査用画像撮像方法では、エリアセンサ15の撮像領域20に、明暗パターン30のうち少なくとも明部31と暗部32の境界線33が一つ存在すると共に、搬送分解能Aが、明部31と暗部32の繰返し間隔Tの非整数倍となるように、偏光フィルム110を照明部16で照明している。
したがって、エリアセンサ15が所定のフレームレートで撮像領域20を撮像すれば、図7(a),図7(b)及び図7(c)又は図8(a),図8(b)及び図8(c)に示したような複数の二次元画像Iを得ることができる。具体的には、偏光フィルム110に欠陥が存在していた場合、複数の二次元画像Iにおいて、明部像31Iに欠陥が存在する状態、暗部像32Iに欠陥が存在する状態、及び、明部像31Iと暗部像32Iの境界線33I上に欠陥が存在する状態のうち少なくとも2つの状態のそれぞれに対応した二次元画像Iを得ることができる。その結果、種々の欠陥をより確実に検出できる。この点を、明部31と暗部32の繰返し間隔Tが搬送分解能Aの整数倍である場合と比較して説明する。
欠陥には、明部31又は暗部32で検出し易い欠陥(例えば、気泡欠陥、打痕欠陥など)、明部31及び暗部32の境界線33上で検出し易い欠陥(例えば、凹凸欠陥)などがある。撮像領域20に明暗パターン30を投影しても、明部31と暗部32の繰返し間隔Tが搬送分解能Aの整数倍であると、例えば、ある撮像タイミングで取得された二次元画像Iの明部像31Iに欠陥が位置していると、他の撮像タイミングで取得された二次元画像Iにおいても明部像31Iに欠陥が位置する。したがって、欠陥が、明部像31Iと暗部像32Iの境界線33I上で検出可能な欠陥或いは暗部像32Iに欠陥があることで検出可能な欠陥である場合、偏光フィルム110に欠陥が存在していても、欠陥の検出が実質的にできない。
これに対して、搬送分解能Aが、明暗パターン30における明部31と暗部32の繰返し間隔Tの非整数倍であれば、明部31に欠陥が存在する状態(以下、「第1状態」と称す)、暗部32に欠陥が存在する状態(以下、「第2状態」と称す)、及び、明部31と暗部32の境界線33上に欠陥が存在する状態(以下、「第3状態」と称す)の状態それぞれに対応した二次元画像Iを得ることができる。この場合、解析装置12で、欠陥の種類に対応する種々の欠陥検出アルゴリズムを用いれば、明部31と暗部32の繰返し間隔Tが搬送分解能Aの整数倍である場合、すなわち、第1状態、第2状態及び第3状態の何れか一つの場合の画像しか得られない場合に比べて、より確実に偏光フィルム110における欠陥を検出可能である。
また、撮像手段としてエリアセンサ15を採用し、明暗パターン30を、明部31と暗部32の境界線33が一つ以上、撮像領域20内に存在するように、撮像領域20を照明していることから、搬送に伴う偏光フィルム110の振動によって撮像領域20に位置変動が生じても撮像領域20内に境界線33を少なくとも一つ生じさせやすい。よって、上述したように、欠陥をより確実に検出可能である。この観点からは、明暗パターン30の搬送方向Yに対する長さが、偏光フィルム110の搬送に伴う撮像領域20の位置変動範囲幅C(mm)と、視野幅W(mm)との和である(C+W)以上であることが好ましい。
上記のように、撮像システム11及びそれを含む欠陥検査システム10並びに欠陥検査用画像撮像方法及びそれを含む欠陥検査方法では、偏光フィルム110に欠陥が存在していた場合、より確実に欠陥を検出可能である。したがって、欠陥検査システム10を含むフィルム製造装置100及びフィルム製造装置100を用いたフィルム製造方法では、欠陥を含まない製品としての偏光フィルムをより製造し易い。
これまでの説明では、明部31及び暗部32の繰り返し方向、すなわち、明部31(又は暗部32)の延在方向に直交する方向が搬送方向Yに実質的に平行であるように、撮像領域20に対して明暗パターン30が配置されている形態を例示した。
しかしながら、明暗パターン30は、境界線33が搬送方向Yと交差するように、偏光フィルム110に投影されていればよい。例えば、図9に示したように、明部31(又は暗部32)の延在方向は、搬送方向Yに直交する方向(図9中の一点鎖線の延在方向)に対して傾斜してもよい。この場合、凹み等が搬送方向Yに延在して形成された筋状欠陥を検出し易い。これは、境界線33が筋状欠陥の延在方向に傾斜していることから、二次元画像Iにおける境界線33に対応する境界線33Iの歪みを検出し易いからである。搬送方向Yに直交する方向に対する明部31(又は暗部32)の延在方向の傾斜角度をα(°)とすると、傾斜角度αは欠陥を検出可能な角度であれば限定されないが、傾斜角度αの例は、−10°〜10°である。例えば、この程度の傾斜角度αであれば、傾斜角度αが実質的に0°である場合の欠陥検査アルゴリズムを用いても欠陥の誤検出を抑制しながら筋状欠陥も検出可能である。種々の欠陥を一つの装置で検査し易い。傾斜角度αが実質的に5°である場合、搬送方向Yに延在する筋状欠陥をより検出し易い。
図9に示したように、撮像領域20において、搬送方向Yに直交する方向に対して明部31(又は暗部32)の延在方向が傾斜するように配置される明暗パターン30は、例えば、スリット部18において、搬送方向Yに対応する方向に対して遮光部18bの延在方向を傾斜させることで実現し得る。或いは、照明部16をX方向に対して傾斜させて配置することでも実現し得る。
これまでの説明では、搬送方向Yにおける明部31の長さT1と暗部32の長さT2とが等しく(T1=T2)、且つ、繰返し間隔T(=T1=T2)が搬送分解能Aの非整数倍の形態を説明した。すなわち、mを非整数とした場合、以下の条件1を満たす場合を説明した。
条件1:A=mT (ただし、T=T1=T2)
しかしながら、搬送方向Yにおける明部31の長さT1、搬送方向Yにおける暗部32の長さT2及び搬送分解能Aは、条件1の代わりに以下の条件2を満たしてもよい。
条件2:A=m(T1+T2)(ただし、mは非整数であり、T1≠T2)
条件1又は条件2が満たされていればよいので、条件1及び条件2に含まれるmは、非整数であれば同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
条件2が満たされている場合において、以下の条件3、条件4及び条件5の何れかが満たされてもよい。
条件3:A<T1かつA<T2
条件4:T1<T2であり、T2=nT1(ただし、nは整数)、(T1+T2)=pA(ただし、pは非整数)、且つ、A=qT1(ただし、qは非整数)
条件5:T1<T2であり、T2=kT1(ただし、kは非整数)、且つ、(T1+T2)=pA(ただし、pは非整数)
条件3,条件4及び条件5は互いに独立しており、k、p及びqは互いに等しい値でもよいし、異なる値でもよい。k、p及びqは、mと同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
ここで、明部31の長さT1、暗部32の長さT2及び搬送分解能Aと、明暗パターン30における欠陥位置の変化との関係について、シミュレーション結果を参照して説明する。搬送されている偏光フィルム110上に明暗パターン30が投影されていると仮定すると共に、T1、T2及びAをパラメータとしてシミュレーションS1〜シミュレーションS30を行った。シミュレーションS1〜シミュレーションS30における明部31の長さT1、暗部32の長さT2及び搬送分解能Aの関係は、図10、図11、図12及び図13に示した図表のとおりである。図10〜図13における、「No.」欄の数値は、シミュレーションS1〜S30の番号に対応している。具体的には、例えば、No.1は、シミュレーションS1の条件を示しており、No.2は、シミュレーションS2の条件を示している。図10〜図13において、「Y」は、対応する条件を満たしていることを意味し、「N」は、対応する条件を満たしていないことを意味する。
更に、シミュレーションS1〜シミュレーションS30の結果は、図14〜図43のとおりである。図14〜図43では、偏光フィルム110の搬送に伴う、明暗パターン30における欠陥の位置変化を示している。以下では、図14〜図43に示したように、欠陥を欠陥D0と称す。
図14〜図43では、明暗パターン30が有する暗部32を示すために暗部32にハッチングを付している。図14〜図43には、明暗パターン30が有する複数の暗部32のうち一つの暗部32の一辺を基準線BL(図14〜図43において最も下側の線)とし、明暗パターン30のうち基準線BLから搬送方向に8mmまでの領域が抜粋されて示されている。そのため、基準線BLから8mm先においては明部31及び暗部32の一部のみが図示されている場合も含む。シミュレーションS1〜シミュレーションS30においては、欠陥D0を、一辺が0.25mmの正方形とし、欠陥D0の初期位置を基準線BL上とした。具体的には、欠陥D0の中心が基準線BL上にある位置を欠陥D0の初期位置とした。すなわち、図14〜図43では、基準線BLに中心を有する欠陥D0が、偏光フィルム110の搬送に伴って移動した場合の複数の欠陥D0の位置を示している。
図10に示したように、シミュレーションS1〜シミュレーションS4では、上記条件1を満たしている一方、条件2は満たしていない。図11及び図12に示したように、シミュレーションS5〜シミュレーションS25では、条件1は満たさない一方、条件2を満たしている。図13に示したように、シミュレーションS26〜S30では、条件1及び条件2を共に満たしていない。
この場合、条件1及び条件2の何れか一方を満たすシミュレーションS1〜シミュレーションS25では、図14〜図38に示されているように、明暗パターン30において、欠陥D0の移動に伴い、上記第1状態、上記第2状態及び上記第3状態の少なくとも2つの状態が実現されている。これに対して、条件1及び条件2を共に満たさないシミュレーションS26〜S30では、図39〜図43に示されているように、欠陥D0が移動しても第2状態しか満たされていない。したがって、条件1及び条件2の何れか一方を満たすことで、上記第1状態、上記第2状態及び上記第3状態の少なくとも2つの状態の二次元画像Iを得ることができ、欠陥の種類が異なっていても、欠陥をより確実に検出できることが理解できる。
次に、条件2を満たしているシミュレーションS5〜シミュレーションS25を更に検討する。
シミュレーションS5、シミュレーションS6、シミュレーションS8〜シミュレーションS12、シミュレーションS16では、条件2は満たすが、条件3〜条件5をいずれも満たしていない。シミュレーションS5、シミュレーションS6、シミュレーションS8〜シミュレーションS12、シミュレーションS16の結果は、図18、図19、図21〜図25のとおりである。これらの図に示されているように、条件2を満たす一方、条件3〜条件5をいずれも満たしていない場合には、上記第1状態、上記第2状態及び上記第3状態の2つの状態が実現されている。
シミュレーションS7、シミュレーションS13〜シミュレーションS15及びシミュレーションS17〜シミュレーションS25は、条件2を満たすとともに、条件3〜条件5の何れかを満たす。特に、シミュレーションS7およびシミュレーションS15は、条件2をみたすとともに、条件3〜条件5のうちの条件3を満たし、シミュレーションS14は、条件2を満たすとともにと、条件3〜条件5のうちの条件4を満たし、シミュレーションS19〜シミュレーションS25は、条件2を満たすとともに、条件3〜条件5のうち条件5を満たす。シミュレーションS7、シミュレーションS13〜シミュレーションS15及びシミュレーションS17〜シミュレーションS25の結果は、図20、図26〜図28及び図30〜図38のとおりである。これらの図に示されているように、欠陥D0の移動に伴い、上記第1状態、上記第2状態及び上記第3状態のすべての状態が実現されている。
シミュレーションS1〜シミュレーションS25の結果より、上記条件1及び条件2の何れかを満たしていれば、第1状態、第2状態及び第3状態の少なくとも2つの状態に対する二次元画像を得ることができるので、欠陥の種類が異なっていても、欠陥をより確実に検出できることがわかる。更に、条件1を満たす場合か、条件2を満たし、且つ、条件3〜条件5の何れかを満たす場合であれば、上記第1状態、上記第2状態及び上記第3状態のすべてが実現されるので、欠陥の種類が異なっていても、欠陥をより一層確実に検出できる。
シミュレーションS1〜シミュレーションS4では、T1=T2である一方、シミュレーションS5〜シミュレーションS25では、T1とT2は異なる。この場合でも、上記条件2を満たしているので、欠陥をより確実に検出できることは前述したとおりである。欠陥の種類やサイズに応じて適する明部31及び暗部32の長さは異なるため多様なタイプの欠陥にも対応しやすい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。明部及び暗部の長さが同じである場合、撮像手段の撮像速度を、搬送分解能が、撮像領域内における互いに隣接する明部及び暗部の搬送方向の長さの非整数倍となるように調整してもよい。
図2及び図3に示した撮像システム11では反射型の撮像システムを例示したが、撮像システムは透過型の撮像システムでもよい。
シミュレーションS1〜S30は、明部31の長さがT1であり、暗部32の長さがT2である場合について実施した。しかしながら、明部31及び暗部32の違いは、明るさの違いである。したがって、搬送方向Yにおける明部31の長さをT2とし、搬送方向Yにおける暗部32の長さT1としても同様の結果が得られる。すなわち、撮像手段の撮像速度に対するフィルムの搬送速度である搬送分解能をAとし、搬送方向における明部の長さ及び暗部の長さの一方をT1とし、他方をT2としたとき、条件1又は条件2を満たせばよい。条件2を満たす場合には、上記条件3〜条件5の何れかを満たすことが好ましい。
これまでの説明では、検査されるべきフィルムとして偏光特性を有する偏光フィルムを例示したが、検査されるべきフィルムは、偏光特性を有さない位相差フィルム(光学フィルム)や電池用セパレータフィルム等でもよい。偏光特性を有さないフィルムに対して撮像システム11などを適用する場合には、搬送手段で搬送するフィルムを、偏光特性を有さないフィルムに置き換えればよい。また、偏光フィルム110に対して例示した欠陥検査用画像撮像システム及びそれを含む欠陥検査システムを、偏光特性を有さないフィルムの公知の製造装置に組み込む或いは従来の欠陥検査システムと置き換えることで、偏光特性を有さないフィルムの欠陥をより確実に検出可能なフィルム製造装置を実現できる。