JP6706571B2 - イグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石及びその製造方法 - Google Patents

イグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石及びその製造方法 Download PDF

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本発明は希土類コバルト系永久磁石及びその製造方法に関する。
特許文献1には、めっきが施されたサマリウムコバルト磁石の製造方法が開示されている。具体的には、サマリウムコバルト磁石合金の粉末を圧力で成形して、圧粉体を得た後、この圧粉体をアルゴンガス中の雰囲気中において所定の温度で焼結を行う。続いて、アルカリ脱脂、水洗、中和、水洗、活性化、水洗、ニッケル(Ni)めっき、水洗の工程により所定の厚さのニッケルめっきを施し、アルゴンガス中の雰囲気中において所定の熱処理を加える。これらの工程を経ることによって、上記したサマリウムコバルト磁石が製造される。このようなサマリウムコバルト磁石は、良好な機械的強度を有する。
特開平08−181016号公報
このようなサマリウムコバルト磁石の製造方法は、ニッケルめっきやアルゴンガス等の不活性ガス中の雰囲気中における加熱を必要としており、製造の容易さに改良の余地が有った。
本発明は、容易に製造できるとともに、良好な機械的強度を有する希土類コバルト系永久磁石を提供するものとする。
本発明にかかる希土類コバルト系永久磁石は、
元素Rを、少なくともSmを含む希土類元素とすると、
質量%で、R:23〜27%、Cu:3〜6%(但し、6%は含まず)、Fe:10〜25%、Zr:1.5〜4.0%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなる希土類コバルト系永久磁石であって、
第1のセル相を含むベース層と、
前記ベース層を覆う表面酸化物層と、を備える。
このような構成は、酸素を備える雰囲気中において加熱することによって、製造することができる。そのため、めっき工程や不活性ガス雰囲気中の加熱工程を必要することなく、容易に製造することができる。しかも、酸化物層を表面に形成することができ、微小クラックを起点とする破壊の進展を抑制することができ、良好な機械的強度を有する。
さらに、前記表面酸化物層のFeの含有量は、前記ベース層のFeの含有量と比較して高いことを特徴としてもよい。前記表面酸化物層の厚みは、50〜500nmの範囲内にあることを特徴としてもよい。
また、前記ベース層は、前記表面酸化物層と接触している縞状層を備え、前記縞状層は、前記表面酸化物層との界面に沿うように延びる複数の第1の線状部を含むことを特徴としてもよい。さらに、前記線状部のFeの含有量は、前記ベース層のFeの含有量と比較して高いことを特徴としてもよい。
また、亀裂が前記ベース層に生じており、前記ベース層は、前記亀裂を覆う内部酸化物層をさらに備えることを特徴としてもよい。さらに、前記内部酸化物層が前記亀裂を埋め尽くしていることを特徴としてもよい。
また、前記ベース層は、前記縞状層と接触している遷移層を備え、前記遷移層は、前記縞状層との界面に沿うように延びる複数の第2の線状部と、第2のセル相と、を備えることを特徴としてもよい。
他方、本発明にかかる希土類コバルト系永久磁石の製造方法は、
元素Rを、少なくともSmを含む希土類元素とすると、
質量%で、R:23〜27%、Cu:3〜6%(但し、6%は含まず)、Fe:10〜25%、Zr:1.5〜4.0%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなる永久磁石体を、用いた希土類コバルト系永久磁石の製造方法であって、
前記永久磁石体を酸素分圧1〜100%の雰囲気中において熱処理温度200〜600℃で加熱保持することによって、表面酸化物層を前記永久磁石体に形成する工程を備える。
このような構成によれば、酸素分圧1%以上の雰囲気中において加熱することによって、良好な機械的強度を有する希土類コバルト系永久磁石を製造できる。そのため、めっき工程や不活性ガス雰囲気中の加熱工程を必要するとことなく、容易に製造することができる。
さらに、前記表面酸化物層を前記永久磁石体に形成する工程では、前記永久磁石体を大気雰囲気中において加熱保持することを特徴としてもよい。また、前記表面酸化物層を前記永久磁石体に形成する工程では、前記熱処理温度は300〜510℃であることを特徴としてもよい。
本発明によれば、容易に製造できるとともに、良好な機械的強度を有する希土類コバルト系永久磁石を提供することができる。
実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の表面近傍の断面を示す模式図である。 実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の変更例の表面近傍の断面を示す模式図である。 実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の変更例の表面近傍の断面を示す模式図である。 実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の変更例の表面近傍の断面を示す模式図である。 実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の製造方法のフローチャートである。 実施例1の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。 実施例2の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。 実施例3の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。 実施例3の永久磁石のDF−STEMによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。 実施例3の表面近傍における断面のミクロ組織、及び、化学組成を測定した各部位を示す断面写真である。 比較例1の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。
本発明者らは、サマリウムコバルト磁石を製品形状に加工する際の機械加工により微小クラックが発生し、曲げ圧縮応力が加わるとそれらの微小クラックが起点となって容易に破壊する現象に着目した。さらに、サマリウムコバルト磁石の機械的強度を改善するために、これらの微小クラックに起因する当該機械的強度への影響を除去することを想起した。本発明者らは、雰囲気、加熱温度等の熱処理条件の製造方法、サマリウムコバルト磁石の構成等について鋭意研究を重ね、本発明を想到するに至った。
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石について説明する。図1は、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の表面近傍の断面を示す模式図である。なお、分かり易くするために、図1では、ハッチングの図示を省略した。
図1に示す希土類コバルト系永久磁石10は、質量%で、R:23〜27%、Cu:3〜6%(但し、6%は含まず)、Fe:10〜25%、Zr:1.5〜4.0%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなる。ここで、Rは希土類元素であって、希土類元素のうち、少なくともSmを含む。Sm以外の希土類元素として、例えば、Pr、Nd、Ce、Laが挙げられる。また、希土類コバルト系永久磁石10は、希土類コバルトを主体とする金属間化合物を含有する。このような金属間化合物は、例えば、SmCo、SmCo17が挙げられる。希土類コバルト系永久磁石10は、結晶粒を含む金属組織を有する。
また、希土類コバルト系永久磁石10は、ベース層1と、表面酸化物層2とを備える。ベース層1は、結晶粒を備え、当該結晶粒は、SmCo17を含むセル相を備える。結晶粒は、さらに、このセル相を囲み、SmCoを含むセル壁と、Zr含有板状相とを含んでもよい。
表面酸化物層2は、ベース層1を覆う。表面酸化物層2は、ベース層1の表面上の微小クラックを埋めるとよい。表面酸化物層2の厚みは、例えば、50nm〜500nmの範囲内にある。なお、後述する実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の製造方法で得られる表面酸化物層2の厚みは、少なくとも50nm〜500nmの範囲内にあることが確認されている。また、表面酸化物層2は、CoやCu等の特定の元素が濃縮した濃縮部21を備えてもよい。Coが濃縮した濃縮部21のCoの含有量は、表面酸化物層2のCoの含有量と比較して高く、例えば、質量%で、90〜99%である。表面酸化物層2のFeの含有量は、ベース層1のFeの含有量と比較して高い。
希土類コバルト系永久磁石10は、良好な機械的特性を有する。この一因として、表面酸化物層2がベース層1を覆っているため、ベース層1の表面酸化物層2と接触面11における微小クラックを埋めて、この微小クラックを起点とした破壊を抑制するためと考えられる。
希土類コバルト系永久磁石10は、時計、電動モータ、計器、通信機、コンピューター端末機、スピーカー、ビデオディスク、センサ、その他機器の各種部品として広く利用することができる。また、希土類コバルト系永久磁石は、良好な機械的強度を有するため、他の利用品と比較して、厚みが薄くなる傾向にあるイグニッションコイルへの適用が特に期待される。
(変更例)
次に、図2〜図4を参照して、希土類コバルト系永久磁石10の各変更例について説明する。図2〜図4は、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の変更例の表面近傍の断面を示す模式図である。分かり易くするために、図2〜図4では、ハッチングの図示を省略した。
(変更例1)
図2に示す希土類コバルト系永久磁石20は、希土類コバルト系永久磁石10の変更例である。希土類コバルト系永久磁石20は、縞状層3を備えるところを除いて、希土類コバルト系永久磁石10と同じ構成を有する。縞状層3は、表面酸化物層2と直接接触している。縞状層3は、表面酸化物層2との界面に沿うように延びる複数の線状部31と、ベース層1に含まれるセル相と同じ構成を有するセル相とを含む。複数の線状部31は、希土類コバルト系永久磁石20の断面において、縞模様を示す。なお、線状部31は、希土類コバルト系永久磁石20の内部において、膜状体又はそれに近い形状を有すると考えられる。線状部31は、酸化物である。線状部31のFeの含有量は、ベース層1のFeの含有量と比較して高い。
希土類コバルト系永久磁石20は、希土類コバルト系永久磁石10と同様に、表面酸化物層2を備えるため、良好な機械的強度を有する。希土類コバルト系永久磁石20は、縞状層3を備えるため、希土類コバルト系永久磁石10と比較してさらに高い機械的強度を有し得る。
(変更例2)
図3に示す希土類コバルト系永久磁石30は、希土類コバルト系永久磁石10、20の変更例である。希土類コバルト系永久磁石30は、内部酸化物層6を備えるところを除いて、希土類コバルト系永久磁石20と同じ構成を有する。希土類コバルト系永久磁石30には亀裂5が生じている。亀裂5は、希土類コバルト系永久磁石30の表面又は内側、ベース層1、表面酸化物層2、又は縞状層3にあってもよく、その数は、複数であってもよい。亀裂5のサイズ、形状及び方向は、多種多様である。希土類コバルト系永久磁石30は、縞状層3、及び内部酸化物層6を備え、内部酸化物層6は、亀裂5を覆う。内部酸化物層6は、亀裂5の表面の微小クラックを埋めるとよい。また、内部酸化物層6は、亀裂5を埋め尽くすと好ましい。言い換えると、内部酸化物層6は、亀裂5を満たすように埋めると好ましい。
希土類コバルト系永久磁石30は、上記した構成を有することにより、良好な機械的強度を有する。ここで、希土類コバルト系永久磁石30は、亀裂5が生じているため、機械的強度が低減しているおそれがあるとも考えられるが、希土類コバルト系永久磁石30は、内部酸化物層6を備えるため、亀裂5により低減した機械的強度を十分に回復させる、又は補強することができる。また、希土類コバルト系永久磁石30は、希土類コバルト系永久磁石20と同様に、表面酸化物層2及び縞状層3を備えるため、良好な機械的強度を有する。
(変更例3)
図4に示す希土類コバルト系永久磁石40は、希土類コバルト系永久磁石10、20、30の変更例である。希土類コバルト系永久磁石40は、遷移層4を備えるところを除いて、希土類コバルト系永久磁石30と同じ構成を有する。遷移層4は、縞状層3と接触しており、縞状層3との界面に沿うように延びる複数の線状部31と、ベース層1に含まれるセル相と同じ構成を有するセル相とを含む。遷移層4が含む線状部31の量は、縞状層3が含む線状部31の量と比較して少ない。遷移層4は、縞状層3とベース層1との間に位置しており、遷移層4における線状部31の量は、縞状層3側からベース層1側へ向かって減じるように遷移する傾向にある。ベース層1は、セル相を含む一方で、線状部31をほとんど含んでいない。
希土類コバルト系永久磁石40は、希土類コバルト系永久磁石30と同様に、内部酸化物層6を備えるため、亀裂5により低減した機械的強度を十分に回復させる、又は補強することができる。希土類コバルト系永久磁石40は、表面酸化物層2及び縞状層3を備えるため、希土類コバルト系永久磁石20と同様に、良好な機械的強度を有する。希土類コバルト系永久磁石40は、遷移層4を備えるため、希土類コバルト系永久磁石30と比較して、高い機械的強度を有し得る。
(製造方法)
次に、図5を参照して実施形態1にかかる永久磁石の製造方法について説明する。図5は、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の製造方法のフローチャートである。
まず、原料として、希土類元素と、純Feと、純Cuと、純Coと、純Zrとを準備し、これらを上記した所定の組成となるように配合する(原料配合ステップS1)。ここで、純Zrの代わりにZrを含む母合金を使用してもよい。母合金とは、通常2種類の金属元素からなる2元系合金であって、溶解原料として用いられるものである。また、Zrを含む母合金は、純Zrの融点1852℃より低い融点を有するような成分組成を有する。Zrを含む母合金の融点は、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石を溶解させる温度以下、つまり、1600℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは1000℃以下である。
Zrを含む母合金として、例えば、FeZr合金やCuZr合金が挙げられる。FeZr合金及びCuZr合金は、低い融点を有するため、後述するインゴットの組織中にZrを均一に分散させて好ましい。従って、FeZr合金及びCuZr合金は共晶組成又はこれに近い近傍の組成を有すると、融点が1000℃以下に抑制されて好ましい。具体的には、FeZr合金は、例えば、Fe20%Zr80%合金である。Fe20%Zr80%合金は、質量%で、Zrを75〜85%含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。また、CuZr合金は、例えば、Cu50%Zr50%合金である。Cu50%Zr50%合金は、質量%で、Zrを45〜55%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる。
次いで、配合した原料をアルミナ製の坩堝に装入し、1×10−2Torr以下の真空雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下において、高周波溶解炉により溶解し、金型に鋳造することにより、インゴットを得る(インゴット鋳造ステップS2)。鋳造方法は、例えば、ブックモールド法と呼ばれる金型鋳造方法である。なお、得られたインゴットを溶体化温度で1〜20時間程度熱処理してもよい。この熱処理を行うと、インゴットの組織をより均一化させて好ましい。
次いで、得られたインゴットを粉砕し、所定の平均粒径を有する粉末を得る(粉末生成ステップS3)。典型的には、まず、得られたインゴットを粗粉砕し、さらに、この粗粉砕したインゴットをジェットミルなどを用いて不活性雰囲気中で微粉砕し、粉末化させる。粉末の平均粒径(d50)は、例えば、1〜10μmである。なお、平均粒径(d50)は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。
次いで、得られた粉末を、所定の磁場中において、さらに、この粉末を磁場方向に垂直に加圧してプレス成形し、成形体を得る(プレス成形ステップS4)。ここで、プレス成形条件として、磁場は、例えば、15kOe以上であり、プレス成形の圧力値は、例えば、0.5〜2.0ton/cm(=49〜196MPa)である。なお、製品に応じて、磁場は15kOe(=1193.7kA/m)以下であっても、上記した粉末を磁場方向に平行に加圧してプレス成形してもよい。非SI単位とSI単位との換算は、例えば、以下の換算式1〜4を用いて、行なうとよい。
1[kOe]=10/4π[kA/m] (…換算式1)
1[MGOe]=10/4π[kJ/m] (…換算式2)
1.0[ton/cm]=98.0665[MPa] (…換算式3)
1.0[Torr]=133.32[Pa] (…換算式4)
次いで、成形体を1×10−2(=1.3332Pa)Torr以下の真空雰囲気下、若しくは不活性雰囲気下、又は1×10−2Torr以下の真空及び不活性雰囲気下において焼結温度に加熱し、焼結する(焼結ステップS5)。焼結温度は、例えば、1150〜1250℃である。
次いで、引き続き同じ雰囲気条件のまま、成形体を焼結温度よりも20℃〜50℃低い溶体化温度で溶体化処理を行う(溶体化処理ステップS6)。溶体化時間は、例えば、2〜10時間である。なお、得られた成形体の組織と、目標とする磁気特性とに応じて、適宜変更してもよい。溶体化時間が下限値となる時間よりも長いと、成分組成が十分に均一化する。一方、溶体化時間が上限値となる時間よりも短いと、成形体に含まれるSmの揮発量が抑制される。これにより、成形体の内部と表面との成分組成に差が生じることを抑制し、永久磁石としての磁気特性の劣化を抑制することができる。
なお、焼結ステップS5と溶体化処理ステップS6とを連続して行うと、量産性が向上して好ましい。焼結ステップS5と溶体化処理ステップS6とを連続して行う場合、焼結温度から溶体化温度まで、低い降温速度、例えば、0.2〜5℃/minで降温させる。この降温速度が遅いと、Zrが成形体の金属組織中において、より確実に分散し、均一に分布し得て好ましい。
次いで、溶体化処理された焼結体を、例えば、100℃/minの冷却速度で急冷する(急冷ステップS7)。さらに、引き続き同じ雰囲気条件のまま、700〜870℃の温度に1時間以上加熱保持し、引き続いて、少なくとも600℃に降下するまで、好ましくは400℃以下に降下するまで、0.2〜5℃/minの冷却速度で冷却させる(時効処理ステップS8)。なお、時効処理された焼結体が着磁すると、永久磁石体が形成される。
次いで、この形成された永久磁石体を製品形状に加工する(製品形状加工ステップS9)。具体的には、必要に応じて、研磨、切断等の加工を永久磁石体に施すことによって、この永久磁石体を製品形状に変化させる。ここで、本ステップでは、永久磁石体が研磨されたり、切断されたりするとき、チッピングや微小なクラックが永久磁石体の表面及び内部に生ずることが多い。永久磁石体の機械的強度は、このようなチッピングや微小なクラックによって、低下する。
最後に、永久磁石体を、大気中、又は酸素分圧1〜100%の雰囲気中において、熱処理温度200〜600℃の範囲内で加熱保持する(酸化物層形成熱処理ステップS10)。なお、本ステップにおいて、雰囲気における酸素以外の気体は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。大気中における酸素分圧が、例えば、20〜22%である。加熱温度は、300〜510℃の範囲以内であると好ましく、さらに好ましくは350〜450℃の範囲以内である。本ステップを経ることによって、永久磁石体の表面近傍には、表面酸化物層を形成することができる。また、同様に、本ステップの各種条件に応じて、縞状層、内部酸化物層、及び遷移層の少なくとも1つを永久磁石体の表面近傍に形成することができる。
以上の工程を経ると、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石が得られる。本工程の、酸化物層形成熱処理ステップS10では、永久磁石体を大気中、又は酸素分圧1〜100%の雰囲気中で所定の熱処理温度で加熱保持することによって、酸化物層を形成する。これによって、製品形状加工ステップS9において永久磁石体を加工することで低下する機械的強度を回復、又は補強することができる。すなわち、永久磁石体を不活性ガス雰囲気下において加熱保持する必要がなく、より簡易な装置を用いて、良好な機械的強度を有する永久磁石を製造することができる。
なお、上記した製造方法では、インゴット鋳造ステップS2において、金型を用いて鋳造したが、ストリップキャスト法を用いて鋳造することもできる。ストリップキャスト法は、溶湯を銅ロールに滴下することによって、例えば、厚み1mmのフレーク状体を形成する。上記した製造方法、つまり、インゴット鋳造ステップS2を用いて製造した希土類コバルト系永久磁石は、ストリップキャスト法を用いて製造した希土類コバルト系永久磁石と比較して、飽和磁束密度Brが良好であり、減磁曲線から示される角形性も良好である。
(化学組成)
次に、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の化学組成を決定した理由について説明する。
この実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石において、元素Rの含有量が、質量%で、23%以上であれば、減磁曲線において一定の角形性を確保することができ、磁気特性を確保するためである。また、元素Rの含有量が、質量%で、27%以下であると、一定の飽和磁束密度Brを確保する。そのため、元素Rの含有量は、質量%で、23%以上、27%以下の範囲内とした。
Cuの含有量が、質量%で、3%以上であれば、一定の保磁力iHcを確保することができ、6%未満であれば、キュリー点と一定の飽和磁束密度Brとを確保する。そのため、Cuの含有量は、質量%で、3%以上、6%未満の範囲内とした。
Feの含有量が、質量%で、10%以上であれば、一定の飽和磁束密度Brを確保することができ、25%以下であれば、一定の保磁力iHcを確保することができる。そのため、Feの含有量は、質量%で、10%以上、25%以下の範囲内とした。
Zrの含有量が、質量%で、1.5%以上、4%以下であれば、一定の保磁力iHc及びエネルギー積(BH)mを確保し得る。そのため、Zrの含有量は、質量%で、1.5%以上、4%以下の範囲内とした。
ところで、上記したように、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の製造方法では、酸化物層形成熱処理ステップS10(図5参照)において、表面酸化物層が形成される。この形成した表面酸化物層が少なくともベース層の表面上の微小クラックを埋めることにより、製品形状加工ステップS9において永久磁石体を加工することで低下した機械的強度を回復することができる、又は補強することができる。これらは、上記した化学組成を有する実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石において、特有の現象であると考えられる。
また、上記したように、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石の製造方法では、さらに、ベース層1(図1参照)の結晶粒のセル相に相当するセル相と、縞状層3(図2参照)に相当する縞状層とを形成する。これも、上記した化学組成を有する実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石において、特有の現象であると考えられる。
(実施例1〜5)
次に、実施の形態1にかかる希土類コバルト系永久磁石についての実施例1〜5及び比較例1〜5について行った実験について説明する。
実施例1〜5は、上記した製造方法と同じ製造方法を用いて、製造した。詳細には、原料配合ステップS1(図5参照)では、目標組成は、質量%で、Sm:25.0%、Cu:4.5%、Fe:20.0%、Zr:2.4%として、残部がCoとした。Zrを含む母合金として、Fe20%Zr80%合金を使用した。また、インゴット鋳造ステップS2では、雰囲気条件は、1×10−2Torr以下の真空雰囲気下とした。また、インゴット鋳造ステップS2で得られたインゴットを1170℃で15時間加熱保持して、熱処理を施した。また、粉末生成ステップS3では、ジェットミルを用いて、粗粉砕したインゴットを不活性雰囲気中で微粉砕し、平均粒径(d50)6μmの粉末を生成した。また、プレス成形ステップS4では、磁場15kOe、プレス成形の圧力1.0ton/cmの条件で、金型を用いてプレス成形を行ない、粉末を長さ100mm、幅50mm、高さ50mmの直方体に成形した。また、焼結ステップS5では、1×10−2Torr以下の真空雰囲気下において焼結温度1200℃で焼結を行なった。また、溶体化処理ステップS6では、降温速度1℃/minで溶体化温度まで降温させて、溶体化温度1170℃、4時間の条件で溶体化処理を行った。また、急冷ステップS7では、冷却速度は100℃/minとした。時効処理ステップS8では、焼結体を不活性雰囲気中で850℃の温度で10時間加熱保持して等温時効処理を行い、その後0.5℃/minの冷却速度で350℃まで連続時効処理を行い、永久磁石体を得た。
次いで、製品形状加工ステップS9では、得られた永久磁石体を切断して、曲げ圧縮強度の測定用試験片の形状に加工した。曲げ圧縮強度の測定用試験片の形状は、長さ16.2mm、幅12.6mm、高さ0.75mmの直方体であり、磁化容易軸は、磁化方向である。
最後に、酸化物層形成熱処理ステップS10では、雰囲気条件は大気中とし、熱処理温度条件は表1に示す熱処理温度とした。各熱処理温度条件のn数は、5とした。
以上の工程を経ることによって、実施例1〜5及び比較例1〜5に係る磁石片を得た。得られた磁石片を熱処理後にパルス着磁機を用いて着磁し、フラックスメーターを用いて表面磁束Φmを測定した。測定した磁石片について曲げ圧縮強度試験を行い、3点曲げ圧縮強度を測定した。その測定結果を表1に示す。
表面磁束Φm[×10-5Wb・T]の良好な値は、445以上とし、曲げ圧縮強度[N]の良好な値は、50以上とした。表1に示すように、熱処理温度が310℃以上である場合、曲げ圧縮強度が顕著に改善され、良好な値に到達する。また、熱処理温度が510℃を越えると、曲げ圧縮強度がさらに向上することなく、表面磁束Φmが低下し、良好な値に該当しなくなることが観察された。従って大気中で熱処理する場合は、少なくとも熱処理温度310℃〜510℃の範囲内で熱処理することによって、良好な曲げ圧縮強度を備え磁気特性の劣化の小さい磁石が得られた。
(SEM断面組織観察)
続いて、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて、実施例1〜3及び比較例1について断面組織観察を行った。断面組織観察による写真を図6〜8、図18に示す。図6は、実施例1の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。図7は、実施例2の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。図8は、実施例3の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。図18は、比較例1の永久磁石の表面近傍における断面のミクロ組織を示す写真である。
図6に示すように、実施例1の永久磁石のミクロ組織断面では、ベース層1aと、表面酸化物層2aと、亀裂5aと、内部酸化物層6aとが観察された。表面酸化物層2aの厚みT2aは、50〜100nm(=0.05〜0.10μm)であった。表面酸化物層2aは、ベース層1aを覆い、内部酸化物層6aは、亀裂5aを埋めている。
なお、図6に示される保護膜P9は、断面組織観察を行うために、実施例1の永久磁石の表面を保護することを目的として、形成されたものである。保護膜P9は、表面酸化物層2aと直接接触するカーボン保護膜と、当該カーボン保護膜を覆うPt保護膜とを備える。図7、図8及び図18に示される保護膜P9も、同様の構成を備える。
また、図7に示すように、実施例2の永久磁石のミクロ組織断面でも、ベース層1bと、表面酸化物層2bと、亀裂5bと、内部酸化物層6bとが観察された。表面酸化物層2bの厚みT2bは、100〜200nm(=0.10〜0.20μm)であった。表面酸化物層2bは、ベース層1bを覆い、内部酸化物層6bは、亀裂5bを埋めている。
また、図8に示すように、実施例3の永久磁石のミクロ組織断面でも、ベース層1cと、表面酸化物層2cと、亀裂5cと、内部酸化物層6cとが観察された。表面酸化物層2cの厚みT2cは、200〜300nm(=0.20〜0.30μm)であった。表面酸化物層2cは、ベース層1cを覆い、内部酸化物層6cは、亀裂5cを埋めている。
一方、図18に示すように、比較例1では、ベース層91dと、亀裂95dとが観察された。しかし、ベース層91dを覆う表面酸化物層や、亀裂95dを埋める内部酸化物層を確認することができなかった。実施例1〜3の曲げ圧縮強度が、比較例1の曲げ圧縮強度と比較して高い理由の一つとして、実施例1〜3が、比較例1と異なり、表面酸化物層や内部酸化物層を備えることが挙げられる。
(DF−STEM/EDX断面組織観察)
次に、実施例3の永久磁石について、DF−STEM/EDX(Dark Field - Scanning Transmission Electron Microscope / Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、これらの断面組織における各元素の組成(含有量)を計測し、元素マッピングを行なった。これらの計測した断面組織及びその元素マッピングによる像を図9〜図16に示す。図9は、実施例3の永久磁石のDF−STEMによる像である。図10〜図16は、実施例3の永久磁石の表面の元素マッピングによる像である。
図9に示すように、実施例3の永久磁石の表面近傍のミクロ断面組織では、縞状層3eと、縞状層3eを覆う表面酸化物層2eとが観察された。縞状層3eは、表面酸化物層2eとの境界面に沿って延びる縞状模様を示す。縞状層3eには、亀裂5eが生じている。亀裂5eは、内部酸化物層6eによって埋められている。
なお、カーボン保護膜P92は、保護膜P9(図6参照)に含まれる一構成要素であり、断面組織観察のために形成したものである。
(元素マッピング)
図10〜図16を用いて、図9に示す断面において、C(炭素)、O(酸素)、Fe、Co、Cu、Zr及びSm、についてそれぞれ元素マッピングした結果について説明する。なお、O(酸素)とC(炭素)は、製造する上で、含有することを避けることのできない不可避的不純物である。図10〜図16に示す像において、濃淡が、元素マッピングの対象となった元素について濃度の高低を示し、淡いほど、その元素について濃度が高いことを示す。
図10に示すように、カーボン保護膜P92におけるC(炭素)の濃度は、他の部位におけるC(炭素)の濃度と比較して高い。
図11に示すように、亀裂5e、内部酸化物層6e及び表面酸化物層2eにおけるO(酸素)の濃度は、他の部位におけるOの濃度と比較して高い。また、図12に示すように、FeもOと同様の傾向が見られる。つまり、亀裂5e、内部酸化物層6e及び表面酸化物層2eにおけるFeの濃度は、他の部位におけるFeの濃度と比較して高い。
図13に示すように、亀裂5e、内部酸化物層6e及び表面酸化物層2eの内部において、Coについて高い濃度を有する粒子状の濃縮部21aが観察された。また、図14に示すように、亀裂5e、内部酸化物層6e及び表面酸化物層2eの内部において、Cuについて高い濃度を有する粒子状の濃縮部21bが観察された。表面酸化物層2e直下からCuの規則的な格子状模様が観察され、この上記した化学組成を備える永久磁石に特有のセル構造が縞状層3eに形成されていることがわかる。セル構造とは、希土類コバルト系永久磁石10のベース層1(図1参照)と同様に、結晶粒を備え、当該結晶粒は、SmCo17を含むセル相を備える構造である。この結晶粒は、さらに、このセル相を囲み、SmCoを含むセル壁と、Zr含有板状相とを含む。
図15に示すように、試料表面、つまり表面酸化物層2eに略平行でかつ規則的な、Zr濃度の高い縞状模様が観察され、これも上記した化学組成を備える永久磁石に特有のZrリッチ層である。図12を再び参照すると、Zrリッチ層と同じ方位でそれよりは間隔の広い縞状模様が見られるが、STEM像の縞状模様及びO(酸素)マッピングの縞状模様と一致しており、縞状模様はFeの酸化物層であることが分かる。図16に示すように、縞状層3eは、他の部位、例えば、表面酸化物層2e、亀裂5e、内部酸化物層6eと比較して、高いSm濃度を有する。
(各部位の化学組成分析)
次に、図17を参照して、実施例3の表面近傍における断面のミクロ組織において、各部位の各組成分析の結果について説明する。図17は、実施例3の表面近傍における断面のミクロ組織、及び、化学組成を測定した各部位を示す断面写真である。
表2に、図17に示された各分析位置の化学組成分析の測定結果を示す。
図17に示すように、ベース層1fと、表面酸化物層2fと、縞状層3fと、遷移層4fとが観察された。ベース層1f、遷移層4f、縞状層3f、及び表面酸化物層2fは、希土類系コバルト永久磁石の内側から外側に向かって、この順に積層するよう形成されている。これらは、希土類系コバルト永久磁石の内側から外側に向かってなだらかに遷移している。
表面酸化物層2fは、FeとCoとOとを主成分として含有している。表面酸化物層2fは、分析位置004及び005を備える。両方の分析位置における分析結果は、大きく異なった。分析位置004において、Fe及びOの含有量が高く、分析位置005において、Coの含有量が高い。表面酸化物層2fは、特定の化学組成を有する化合物からなるものではなく、例えば、Coの含有量が高い粒状の濃縮部を備える。
縞状層3fは、分析位置006、007及び012を備える。分析位置006及び007には、縞状組織が位置しており、分析位置012には、縞、つまり、線状部が位置する。縞状組織は、線状部とセル構造とを備え、線状部とセル構造とは、当該縞状組織が示す縞模様を構成する。分析位置012における分析結果は、O及びFeの含有量が高かったため、線状部は、酸化物層と考えられる。分析位置006、007における分析結果は、分析位置012における分析結果と比較して、合金組成に近く、酸素濃度も低い。
遷移層4fは、縞状層3fと接触しており、縞状層3fとの界面に沿うように延びる複数の線状部と、ベース層1fに含まれるセル相と同じ構成を有するセル相とを含む。遷移層4fが含む線状部の量は、縞状層3fが含む線状部の量と比較して少ない。遷移層4fは、縞状層3fとベース層1fとの間に位置しており、遷移層4fにおける線状部の量は、縞状層3f側からベース層1f側へ向かって減じるように遷移する傾向にある。また、隣り合う線状部同士の間隔は、広い。
ベース層1fでは、希土類コバルト系永久磁石10のベース層1(図1参照)と同じ構成のセル構造が観察された。
表面酸化物層2fの厚みが0.3μm程度、縞状層3fの厚みが0.7μm程度、遷移層4fの厚みが2μm程度であった。
(実施例6〜11)
次に、実施例6〜11の磁気特性及び機械的強度などを測定した結果について説明する。
実施例6〜11は、実施例1〜5と同様に、上記した製造方法と同じ製造方法を用いて、製造した。詳細には、原料配合ステップS1(図5参照)では、目標組成は、質量%で、Sm:25.9%、Cu:4.5%、Fe:15.0%、Zr:3.1%として、残部がCoとした。Zrを含む母合金として、Fe20%Zr80%合金を使用した。また、インゴット鋳造ステップS2、及び粉末生成ステップS3では、実施例1〜5と同じ条件を用いた。また、プレス成形ステップS4では、磁場15kOe、プレス成形の圧力1.0ton/cmの条件で、金型を用いてプレス成形を行なった。また、焼結ステップS5では、1×10−2Torr以下の真空及び不活性雰囲気下において焼結温度1210℃で焼結を行なった。また、溶体化処理ステップS6では、降温速度1℃/minで溶体化温度まで降温させて、溶体化温度1180℃で溶体化処理を行った。また、急冷ステップS7では、冷却速度は100℃/minとした。時効処理ステップS8では、焼結体を不活性雰囲気中で800℃の温度で5時間加熱保持して等温時効処理を行い、その後1℃/minの冷却速度で350℃まで連続時効処理を行い、永久磁石体を得た。
次いで、製品形状加工ステップS9では、実施例1〜5と同じ製造条件を用いて、得られた永久磁石体を切断して、曲げ圧縮強度の測定用試験片の形状に加工した。
最後に、酸化物層形成熱処理ステップS10では、雰囲気条件は、表3に示す酸素分圧とし、熱処理温度条件は、表3に示す熱処理温度とした。
以上の工程を経ることによって、実施例6〜11及び比較例6〜9に係る磁石片を得た。実施例1〜5と同じ方法を用いて、表面磁束Φm及び3点曲げ圧縮強度を測定した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例6〜10では、表面磁束Φm及び曲げ圧縮強度がいずれも良好な値であった。実施例6では、酸化物層形成熱処理ステップS10において酸素分圧100%であったのにもかかわらず、表面磁束Φm及び曲げ圧縮強度がいずれも良好な値であった。したがって、酸化物層形成熱処理ステップS10において、酸素分圧の上限値は、100%である。
一方、比較例6では、表面磁束Φmが良好な値(445×10-5Wb・T以上)であるものの、曲げ圧縮強度が小さく、良好な値(50N以上)に該当しなかった。この一因として、比較例6では、酸化物層形成熱処理ステップS10が無く、酸化物層が形成されないためと考えられる。
また、比較例7では、表面磁束Φmが良好な値であるものの、曲げ圧縮強度が小さく、良好な値に該当しなかった。この一因として、比較例7では、酸化物層形成熱処理ステップS10において熱処理温度180℃が、実施例6の同ステップにおける熱処理温度200℃よりも小さいことが考えられる。酸化物層形成熱処理ステップS10において、熱処理温度は200℃以上であると好ましい。
また、比較例8では、曲げ圧縮強度が低下し、良好な値に該当しなかった。この一因として、比較例8では、酸化物層形成熱処理ステップS10ステップにおける酸素分圧が0.8%と、実施例11の同ステップにおける酸素分圧1%と比較して低いことが考えられる。そのため、酸化物層形成熱処理ステップS10において、酸素分圧が1%以上であることが好ましい。
また、比較例9では、表面磁束Φmが低下し、良好な値に該当しなかった。この一因として、比較例9では、酸化物層形成熱処理ステップS10における熱処理温度が620℃と、実施例11の同ステップにおける熱処理温度600℃と比較して高いことが考えられる。そのため、熱処理温度が600℃以下であることが好ましい。
以上より、酸化物層形成熱処理ステップS10では、酸素分圧が1%以上、100%以下であることが好ましく、熱処理温度が200℃以上、600℃以下の範囲内にあることが好ましい。
なお、実施例6〜10のミクロ組織断面を観察したが、実施例1〜5と同じ構成を有することを確認した。
以上、本発明を上記実施の形態および実施例に即して説明したが、上記実施の形態および実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
10、20、30、40 希土類コバルト系永久磁石
1、1a、1b、1c、1f ベース層 11 接触面
2 表面酸化物層 21、21a、21b 濃縮部
2a、2b、2c、2e、2f 表面酸化物層
3、3e、3f 縞状層 31 線状部
4、4f 遷移層
5、5a、5b、5c、5e 亀裂
6、6a、6b、6c、6e 内部酸化物層
S9 製品形状加工ステップ S10 酸化物層形成熱処理ステップ

Claims (11)

  1. 元素Rを、少なくともSmを含む希土類元素とすると、
    質量%で、R:23〜27%、Cu:3〜6%(但し、6%は含まず)、Fe:10〜25%、Zr:1.5〜4.0%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなる希土類コバルト系永久磁石であって、
    第1のセル相を含むベース層と、
    前記ベース層を覆う表面酸化物層と、を備える、
    イグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  2. 前記表面酸化物層のFeの含有量は、前記ベース層のFeの含有量と比較して高い、
    ことを特徴とする請求項1に記載のイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  3. 前記表面酸化物層の厚みは、50〜500nmの範囲内にある、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  4. 前記ベース層は、前記表面酸化物層と接触している縞状層を備え、
    前記縞状層は、前記表面酸化物層との界面に沿うように延びる複数の第1の線状部を含む、
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載されるイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  5. 前記第1の線状部のFeの含有量は、前記ベース層のFeの含有量と比較して高い、
    ことを特徴とする請求項4に記載のイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  6. 亀裂が前記ベース層に生じており、
    前記ベース層は、前記亀裂を覆う内部酸化物層をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載されるイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  7. 前記内部酸化物層が前記亀裂を埋め尽くしている、
    ことを特徴とする請求項6に記載されるイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  8. 前記ベース層は、前記縞状層と接触している遷移層を備え、
    前記遷移層は、前記縞状層との界面に沿うように延びる複数の第2の線状部と、第2のセル相と、を備える、
    ことを特徴とする請求項4、又は、請求項4を引用する請求項5〜7のいずれか1項に記載されるイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石。
  9. 元素Rを、少なくともSmを含む希土類元素とすると、
    質量%で、R:23〜27%、Cu:3〜6%(但し、6%は含まず)、Fe:10〜25%、Zr:1.5〜4.0%を含み、残部がCo及び不可避的不純物からなる永久磁石体を、用いた希土類コバルト系永久磁石の製造方法であって、
    前記永久磁石体を酸素分圧1〜100%の雰囲気中において熱処理温度200〜600℃で加熱保持することによって、表面酸化物層を前記永久磁石体に形成する工程を備える、
    イグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石の製造方法。
  10. 前記表面酸化物層を前記永久磁石体に形成する工程では、
    前記永久磁石体を大気雰囲気中において加熱保持する、
    ことを特徴とする請求項9に記載されるイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石の製造方法。
  11. 前記表面酸化物層を前記永久磁石体に形成する工程では、
    前記熱処理温度は300〜510℃である、
    ことを特徴とする請求項10に記載されるイグニッションコイル用希土類コバルト系永久磁石の製造方法。
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