以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置1は、給紙部2、画像形成部3および画像読取部4を備える装置本体1Mと、装置本体1M上に配置されたADF5とを備えたデジタル複合機である。
画像読取部4およびADF5は、画像読取装置6を構成し、ADF5は自動原稿搬送装置を構成している。本実施の形態において、ADF5は、後で詳述するように、原稿トレイ51に載置された原稿(以下、原稿シートSという)を1枚ずつ所定の原稿読取位置まで搬送した後に原稿トレイ51の下側に配置された排紙トレイ53に排紙するようになっている。
給紙部2は、図2に示すように、それぞれカットシート状の転写紙P(記録用紙:例えば白紙)を積層状態で収納可能な複数段の給紙カセット21A,21B,21Cを有している。各給紙カセット21A,21B,21Cには、例えば複数のシートサイズから予め選択されたシートサイズの転写紙Pが、縦又は横の給紙方向に向けて収容されるようになっている。
給紙部2は、給紙カセット21A,21B,21Cに収納された転写紙Pをそれぞれの最上層側から順次ピックアップして分離給紙する給紙装置22A,22B,22Cを有している。給紙部2には、さらに、各種ローラ23等が設けられており、これらによって、各給紙装置22A,22B,22Cから給紙された転写紙Pを画像形成部3の所定の画像形成位置まで搬送する給紙経路24が形成されている。
画像形成部3は、露光装置(露光ユニット)31と、感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cと、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)のトナーが充填された現像装置33K,33Y,33M,33Cとを備えている。また、画像形成部3は、一次転写部34と、二次転写部35と、定着部36とを備えている。
露光装置31は、例えば、画像読取装置6で読み取った画像に基づいて各色の露光用のレーザ光Lを生成するようになっている。また、露光装置31は、レーザ光を各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cを露光して、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cの表層部に読取画像に対応した各色の静電潜像を形成するようになっている。
現像装置33K,33Y,33M,33Cは、それぞれ対応する感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cに薄層状のトナーを近接させるように供給して、静電潜像をトナーにより顕像化する現像を行うようになっている。
画像形成部3は、感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上に現像されたトナー像を一次転写部34に一次転写し、一次転写部34に近接する二次転写部35でそのトナー像を転写紙Pに二次転写するようになっている。また、画像形成部3は、転写紙Pに二次転写したトナー像を定着部36により加熱・加圧して溶融させ、転写紙Pにカラー画像を定着させて記録するようになっている。
画像形成部3は、給紙部2から給紙経路24を経て搬入された転写紙Pを二次転写部35側に搬送する搬送経路39Aを有している。この搬送経路39Aにおいては、まず、レジストローラ対37において、転写紙Pの搬送タイミングおよび搬送速度が調整されるようになっている。そして、転写紙Pは、一次転写部34および二次転写部35でのベルト速度に同期した状態で二次転写部35および定着部36を通過した後、排紙トレイ38上に排紙されるようになっている。
画像形成部3は、手差トレイ25上に載置される転写紙Pをレジストローラ対37よりも上流側で搬送経路39Aに給紙する手差給紙経路39Bを併有している。
二次転写部35および定着部36の下方には、それぞれ複数の搬送ローラおよび搬送ガイド等からなるスイッチバック搬送路39Cおよび反転搬送路39Dが配設されている。
スイッチバック搬送路39Cは、転写紙Pの両面に画像を形成する場合に、任意の一面に画像定着が済んだ転写紙Pを一端から進入させた後に、後退(進入時とは逆方向に移動)させるスイッチバック搬送を行うようになっている。
反転搬送路39Dは、スイッチバック搬送路39Cによりスイッチバック搬送された転写紙Pの表裏を反転させて、レジストローラ対37に再度給紙するようになっている。
これらスイッチバック搬送路39Cおよび反転搬送路39Dにより、一面に対する画像定着処理を終えた転写紙Pは、その進行方向を逆向きに切り替えられた後に表裏反転されて、再び二次転写ニップに進入する。そして、転写紙Pは、他面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ38上に排紙されるようになっている。
上記構成を有する画像形成部3は、画像読取装置6で読み取った読取画像又はPC(パーソナル・コンピュータ)等外部装置から送信される印刷データに基づき、例えば露光装置31により各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cを露光して各感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上に静電潜像を形成し、各色の現像装置33K,33Y,33M,33Cで各感光体ドラムの潜像上にトナーを供給して現像する。また、画像形成部3は、各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上のトナー像を一次転写部34で転写ベルトに一次転写し、二次転写部35で転写紙P上に重ねて二次転写した後、定着部36により転写紙P上のトナー像を加熱および加圧して定着させ、カラー画像を形成することができるようになっている。
画像読取装置6は、自動搬送中に原稿シートS(葉書サイズ等、小サイズ原稿も含まれる。)の画像を読み取るDFスキャナモード(搬送原稿読取りモード)と、平坦なコンタクトガラス(後述するフラットベッドコンタクトガラス41)上に載置された原稿シートSの画像を読み取るフラットベッドスキャナモード(載置原稿読取りモード)とに切替え可能に構成されている。
フラットベッドスキャナモードにおいて、画像読取部4は、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿シートS(例えば原稿、厚紙、本等)の画像面に光を照射して、その画像面からの反射光を画像信号に変換することにより原稿シートSの画像を読み取ることができる。
また、DFスキャナモードにおいて、ADF5は、シート載置台である原稿トレイ51上に積載された原稿シートSの束から原稿シートSを1枚ずつ分離して、原稿トレイ51の一端に設けられた給紙口(第1給紙口)55aから原稿シートSを搬入し、後述する原稿搬送部52の機構により構成されるUターン搬送パス(第1搬送経路)56に沿って搬送する。そして、その搬送中、原稿シートSが、搬送方向の上流側部分から順次部分的に画像読取部4の所定の原稿読取位置である上面側のDFコンタクトガラス42に対面するようになっている。すなわち、画像読取装置6は、ADF5により搬送される原稿シートSの画像を画像読取部4のDFコンタクトガラス42上で順次読取りすることにより、DFスキャナの機能を発揮できるようになっている。
図3に示すように、ADF5は、装置本体1Mの上面側の後部(背面側の部分)にヒンジ等の開閉機構を介して取り付けられている。そして、ADF5は、装置本体1Mに対してフラットベッドコンタクトガラス41上を開放する開位置と、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿シートSを押付け可能な閉位置とを採り得るようになっている。
画像読取部4は、画像形成装置1の装置本体1Mの上部に位置している。画像読取部4は、原稿シートSの搬送経路に位置するDFコンタクトガラス42と、原稿シートSが載置可能なフラットベッドコンタクトガラス41と、原稿シートSの一辺の突当ておよび位置決めが可能な突当部材43aとを有している。また、装置本体1Mは、上部前面側に操作部150を設置している。
操作部150は、スタートボタン151およびタッチパネル152等を有しており、スタートボタン151が押下されると、画像形成装置1に対して印刷またはデータ送信の開始を要求するようになっている。
ADF5は、画像形成装置1の装置本体1Mの上部にヒンジ機構1hを介して開閉動作可能に連結され、下面に原稿押え43bが装着されている。ADF5は、画像読取部4におけるDFコンタクトガラス42およびフラットベッドコンタクトガラス41を露出させる開放位置と、DFコンタクトガラス42およびフラットベッドコンタクトガラス41を覆う閉止位置との間で回動操作されるようになっている。
図4に示すように、原稿トレイ51は、ADF5にセットされた原稿シートSをその給紙方向と直交するシート幅方向で位置決めする左右一対の可動のサイドガイド板54が装着されている。これらサイドガイド板54は、原稿トレイ51と原稿シートSの幅方向の中心を一致させるように相対的に接近・離間可能である。ただし、サイドガイド板54は、原稿トレイ51の一方の縁部側に原稿シートSの一方の縁部を当接させて他方の縁部側のみを移動可能に配置したものでもよい。
原稿トレイ51の先端寄りの底面付近には、原稿トレイ51に原稿シートSが載置されたか否かを検知する原稿セットセンサ82が設けられている。
ADF5は、少なくともその上方を開閉可能としたカバー55によって覆われている。カバー55は、原稿シートSの搬送方向先端がそのカバー55内に入るように原稿トレイ51の給紙側の端部付近の上方に給紙口55aを形成している。また、カバー55は、給紙口55aよりも内部に原稿トレイ51の先端部分が収納されるように、原稿トレイ51の搬送方向先端部分の上方を覆っている。また、ADF5は、給紙口55aから排出口55bまでの原稿搬送部52を形成する主要なガイド部分を、カバー55等に形成されたリブ等によって形成している。
また、ADF5は、本実施の形態の特徴的な構成である、原稿トレイ51の支持手段50Aを有する。本実施の形態において、支持手段50Aは、原稿トレイ51に載置された原稿シートSを搬送可能な第1の状態と、第1の状態よりも原稿トレイ51が持ち上がった第2の状態と、の間で回動可能に原稿トレイ51を支持するとともに、第1の状態と第2の状態とで原稿トレイ51の姿勢を保持するよう原稿トレイ51を支持するものである。
本実施例において、第2の状態とは、原稿トレイ51に載置された原稿シートSを搬送可能な第1の状態よりも原稿トレイ51が持ち上がった状態であって、排紙トレイ53との間にユーザが手を挿入することができるように原稿トレイ51が回動している状態である。具体的に、第2の状態とは、原稿トレイ51が開いていない第1の状態から例えば45度までの範囲内の所定の角度まで回動し(開き)、固定支持されている状態である。
上記保持手段は、後で詳しく述べるように、一対の回転軸515a,515bと、原稿トレイ51が回動できるように一対の回転軸515a,515bを受け入れる一対の軸受部525a,525bと、複数段係止機構50と、を有する。
一対の回転軸515a,515bは、原稿トレイ51の原稿シートSの主走査方向両側の一対のリブ510a,510bに設けられる。一対の回転軸515a,515bは、原稿トレイ51を支持するとともに、原稿シートSを搬送する原稿搬送経路52を形成する一対のガイド部材521a,521bの原稿搬送経路52の壁面内側に設けられる。複数段係止機構50は、一対のリブ510a,510bと、一対のガイド部材521a,521bの各リブ510a,510bに対応する部位との相互間に分配して設けられる(図2、図4、図6、図7参照)。
複数段係止機構50は、原稿トレイ51の傾斜角度がそれぞれ異なる複数段のロック位置のうちのいずれかに当該原稿トレイ51を位置固定(ロック)する機構である。この複数段係止機構50については、図12〜図15を参照して後で詳述する。
次に、図5を参照して、画像読取部4の構成を説明する。画像読取部4は、ADF5とともに画像読取装置6を構成している。なお、図5は画像読取部4の要部を示し、図5(A)はフラットベッドスキャナモードのときの概略縦断正面図であり、図5(B)はモード切替時のときの一体型光学走査ユニットの移動途中を示す概略縦断正面図であり、図5(C)はDFスキャナモードのときの概略縦断正面図である。
フラットベッドコンタクトガラス41は、画像読取装置6がフラットベッドスキャナとして機能する場合であって読取対象の原稿シートSが載置されるとき、その原稿シートSの画像面に対面するようになっている。また、DFコンタクトガラス42は、画像読取装置6がDFスキャナとして機能する場合に、Uターン搬送パス56の所定読取り位置を通過する原稿シートSの画像面に対面するようになっている。さらに、DFコンタクトガラス42は、図5(A)に示すように、フラットベッドコンタクトガラス41に対して予め設定された傾斜角θをなすよう傾斜している。
画像読取部4の内部には、第1読取ユニット45と、左右方向に延びるガイドロッド46とが設けられている。第1読取ユニット45は、一体型光学走査ユニット47と、一体型光学走査ユニット47を保持するブラケット48と、一体型光学走査ユニット47およびブラケット48の間に圧縮状態で組み込まれた複数の圧縮コイルばね49とで構成されている。
一体型光学走査ユニット47は、例えばモールドフレームに、等倍結像素子ルーフミラーレンズアレイ、光路分離ミラー、等倍イメージセンサ、照明光源等を保持させた密着イメージセンサとして構成されている。この一体型光学走査ユニット47は、画像を主走査方向に高解像でライン走査することができ、ブック原稿等の画像読取りにも対応可能な大きな焦点深度を有するように構成されている。
なお、一体型光学走査ユニット47は、DFスキャナとフラットベッドスキャナに対応できる構成であれば、特定の方式に限定されるものではない。主走査方向は、フラットベッドコンタクトガラス41の上面およびDFコンタクトガラス42の上面の双方に対して平行な方向である。
ブラケット48は、ガイドロッド46に支持された下側スライダ部48aと、一体型光学走査ユニット47を保持する一対の保持腕部48bと、これら下側スライダ部48aおよび一対の保持腕部48bを一体に装着したブラケット本体部48dとを有している。
ここで、下側スライダ部48aは、ブラケット本体部48dの長手方向中央の下部に固定された筒状体からなり、一対の保持腕部48bは、ブラケット本体部48dの両端側で図中上方側に突出する一対の板状体によって構成されている。これら一対の保持腕部48bは、一体型光学走査ユニット47の両端面から垂直に突出する両端突出部47aを長手方向軸線回りに姿勢変化可能におよび上下方向に変位可能に保持するよう、垂直方向の長穴(小判穴)48cを有している。
複数の圧縮コイルばね49は、一体型光学走査ユニット47の下面部分を主走査方向の複数箇所で上方側(フラットベッドコンタクトガラス41側、DFコンタクトガラス42側)に押し付けるようになっている。
また、一体型光学走査ユニット47の上部には、フラットベッドコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42のうち少なくとも一方の下面に当接しつつ副走査方向に円滑に滑り動く矩形環状の上部スライダ部47bが装着されている。
なお、この上部スライダ部47bは、一体型光学走査ユニット47の長手方向または短手方向に延在するとともに、その延在方向と直交する方向で互いに離間する突起状のものであってもよい。また、上部スライダ部47bは、複数の半球状の突起等で構成されてもよい。いずれの場合も、上部スライダ部47bは、フラットベッドコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42の下面かそれに代わるガイド面に対し、低摩擦係数で摺動性・滑動性が良く、無潤滑にできる素材で形成されるのがよい。
一体型光学走査ユニット47は、また、図5(A)、(B)、(C)に示すとおり、ブラケット48の下方側に配置されたガイドロッド46によって副走査方向に移動自在に案内されている。そして、その副走査方向の位置に応じて、一体型光学走査ユニット47は、その上部で保持部材43によって保持されているフラットベッドコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42のうちいずれか片方または両方にスライド可能に当接する。これにより、第1読取ユニット45は、ガイドロッド46に沿って移動自在であるものの、ガイドロッド46の軸回りの傾きを規制される。
この第1読取ユニット45は、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿シートSの画像面を主走査方向にライン走査するとともに副走査方向に移動することで、原稿シートSの画像を読み取ることができる。また、第1読取ユニット45は、DFコンタクトガラス42上を通過する搬送原稿の画像を主走査方向にライン走査することで、原稿シートSの画像を読み取ることができる。
なお、画像読取部4の内部には、無端のループ状でその周方向の一箇所に第1読取ユニット45のブラケット48が固定されたタイミングベルトが設けられている。また、画像読取部4の内部には、タイミングベルトが弛みなく掛け渡された複数のタイミングプーリと、いずれか1つのタイミングプーリを回転駆動するモータ等が設けられている。
フラットベッドスキャナモードの読取動作を行う場合、第1読取ユニット45は、ホームポジションから副走査方向一方側に移動しながら、例えば図2に点線で示す停止位置付近のホームポジションから同図中の右側に移動する。そして、その微小移動距離毎に一体型光学走査ユニット47によるライン走査を実行して、フラットベッドコンタクトガラス41上の載置原稿シートSの表面(下面)の画像を読み取る。また、その読取動作が終了すると、第1読取ユニット45は、再度ホームポジションに戻る。
DFスキャナモードの読取動作を行う場合、第1読取ユニット45は、図2に実線で示すように、ホームポジションからDFコンタクトガラス42の下方に移動する。すなわち、第1読取ユニット45は、ホームポジションから予め設定された距離だけ副走査方向他方側に移動してDFコンタクトガラス42の下方で停止し、DFコンタクトガラス42上を通過する搬送原稿シートSの表面の画像を読み取る。
このように、第1読取ユニット45は、フラットベッドコンタクトガラス41の下方側とDFコンタクトガラス42の下方側とに位置し得るよう副走査方向に移動可能である。そして、一体型光学走査ユニット47は、その副走査方向位置に応じて、図5(A)に示すようなフラットベッドコンタクトガラス41を通して画像読取り可能な水平の第1読取姿勢と、図5(C)に示すようなDFコンタクトガラス42を通して画像読取り可能な傾斜した第2読取姿勢とに姿勢変化する。
次に、図6および図7を参照して、ADF5の構成を説明する。図6は、ADF5がUターン搬送パス56によって原稿トレイ51から原稿シートSを搬送する機構を説明する図である。
図6に示すように、ADF5は、定型の原稿シートSを載置可能な原稿載置台としての原稿トレイ51と、原稿シートSを画像読取り可能に搬送する原稿搬送部52と、画像読取り後の原稿シートSをスタックする排紙トレイ53とを備えている。原稿トレイ51と排紙トレイ53とは、小型化を目的として、少なくともそれらの一部が離間する状態でかつ上下に重ねて配置されている。
原稿搬送部52は、原稿トレイ51に載置された原稿シートSの束から最上位の原稿シートSを1枚ずつ分離して原稿搬送部52に搬入する分離ユニット52aを有している。また、原稿搬送部52は、分離・搬入された原稿シートSを折り返すように反転させるための複数の搬送ローラ52b,52c,52dを有しており、原稿シートSを折り返した後に、原稿シートSをDFコンタクトガラス42に沿ってその上面の所定の読取動作位置Pd1を通過させる。そして、原稿搬送部52は、そのさらに下流側に排出ローラ対52e,52fを有している。Uターン搬送パス56は、かかる原稿搬送部52の機構により原稿シートSが搬送される経路をいう。これら搬送および排紙用のローラ群の配置数や配置場所は、原稿搬送部52の経路設定条件や、原稿シートSの最小サイズの原稿搬送方向の長さ等に応じて任意に設定可能である。
第1読取ユニット45は、それを構成する一体型光学走査ユニット47が図6において47(Pb)で示される位置、すなわち図2の実線位置に位置するとき、搬送中の原稿シートSの画像を一体型光学走査ユニット47により読取動作位置Pd1で繰り返しライン走査して、原稿画像を読み取ることができる。そして、その画像読取り後の原稿シートSは、排出ローラ対52e,52fにより排紙トレイ53に排出される。
原稿搬送部52は、上述した分離ユニット52a、搬送ローラ52b,52c,52d、排出ローラ対52e,52fに加え、これら配置された複数のセンサやそれらの検知情報を基に搬送制御を実行するコントローラを有している。複数のセンサとは、例えば公知の給紙適正位置センサ92、突当センサ93、原稿幅センサ94、読取入口センサ95、レジストセンサ96、排紙センサ97、テーブル上昇センサ98等(図10参照)であり、それらのセンサが原稿シートSの搬送方向上流側から下流側に順に配置される。勿論、通常の原稿シートSは、PPCその他の屈曲の容易なシートで、画像記録面を形成し得るものである。
また、原稿搬送部52は、DFコンタクトガラス42の上流側の搬送ローラ52c,52dのニップ位置から排出口55bに至る下流側の所定搬送区間においてDFコンタクトガラス42に沿って傾斜しつつ延在するストレート搬送パス(第2搬送経路)56aを形成している。
図7は、ADF5がストレート搬送パス56aによって後述する図8に示されるカード供給トレイ(手差しトレイ)73の給紙口(第2給紙口)72から原稿シートSを搬送する機構を説明する図である。
図7に示すように、ストレート搬送パス56aは、通常の原稿シートSより高曲げ剛性となるハードシート、特に小サイズのハードシートHが、カード供給トレイ(手差しトレイ)73の給紙口72から搬入され、DFコンタクトガラス42の上面と平行をなすように傾斜した平面に沿って搬送される搬送経路である。また、ストレート搬送パス56a内を搬送されるとき、ハードシートHは、DFコンタクトガラス42上において、所定の読取動作位置Pd1を通過するようになっている。
ここにいう小サイズのハードシートHは、樹脂等(厚紙でもよい)で形成された標準定型サイズのカード類、例えば免許証、IDカード(身分証明書カード)、交通系カード等であり、図6に示すように搬送ローラ52b,52c,52dによって折り返すように反転させることができない種類の原稿である。
すなわち、ハードシートHは、図6に示すような原稿シートSを折り返すように反転させるUターン搬送パス56には適さず、図7に示すストレート搬送パス56aに適している。ここでの小サイズとは、例えば身分証明書カードの形状を定めた国際規格であるISO/IEC 7810のID−1、ID−2またはID−3のいずれか、またはそれと同程度のカードサイズである。ただし、そのカードサイズの短手方向の幅は、原稿トレイ51上にセットされる標準のカットシートサイズのうち最小サイズのカットシートの短手方向の幅よりも小さくなるように設定される。
ストレート搬送パス56aを形成する複数の搬送ローラ52c,52dおよび排出ローラ対52e,52fは、ストレート搬送パス56a上に配置された複数のセンサおよびそれらの検知情報を基に搬送制御を実行するコントローラと共に、第2原稿搬送部61を構成している。よって、この第2原稿搬送部61は、ストレート搬送パス56aの一端側、すなわち給紙口72から小サイズのハードシートHを搬入し、ストレート搬送パス56aに沿って搬送したハードシートHを、排紙領域側となるストレート搬送パス56aの他端側すなわち排出口55bから排紙する。
図8に示すように、カード供給部71は、ADF5の側面に設けられた給紙口72と、カード供給トレイ73から構成されている。カード供給部71は、さらに後述するカードピックアップローラ74と、カード搬送経路75とを備える(図9参照)。
カード供給トレイ73の底面付近には、カード供給トレイ73に原稿、すなわち、ハードシートHが載置されたか否かを検知する原稿セットセンサ82が設けられている。
カード供給トレイ73は、常時は閉じていてカバー55の側面の一部を構成し、図8および図9に示すように、給紙口72を開放するように回動可能となっている。このカード供給トレイ73は、閉状態にある場合には通常原稿である原稿シートSの搬送ガイドの一部となる。
カードピックアップローラ74は、カード供給トレイ73にセットされたハードシートHを取り出して、給紙口72を経由してカード搬送経路75にカードを供給する。カード搬送経路75は、給紙口72から下向き傾斜したDFコンタクトガラス42に至る経路であり、DFコンタクトガラス42の上流側でUターン搬送パス56に合流する。
この際、カード搬送経路75は、DFコンタクトガラス42の下向き傾斜に伴い、給紙口72からDFコンタクトガラス42に至る範囲を、DFコンタクトガラス42の傾斜角度に沿って同一平面上に位置している。これにより、カード搬送経路75とストレート搬送パス56aとは、給紙口72から排出口55bに至る範囲の全般でDFコンタクトガラス42の傾斜角度に沿って同一平面上に位置している。すなわち、カード供給トレイ73から搬入されたハードシートHは、カード搬送経路75とストレート搬送パス56aに沿って搬送される。
原稿搬送部52は、図9に詳しく開示しているように、原稿シートSの原稿搬送方向を基準として給紙口55a側の上流端であって原稿トレイ51の先端上部に、原稿シートSの載置により回動するセットフィラー57を有している。原稿搬送部52は、給紙口55aよりも内側の近傍に配置されたピックアップローラ58と、Uターン搬送パス56を挟んで対向するように配置された給紙ローラ59および分離板60からなる分離ユニット52aと、を有している。
ピックアップローラ58は、接触位置において原稿トレイ51に積載された原稿シートSのうち、最上位側から数枚(理想的には1枚)の原稿シートSをピックアップする。
給紙ローラ59は原稿給送方向に回転可能となっている。分離板60は、複数枚の原稿シートSが重送されようとした場合に、給紙ローラ59の回動移動方向に対して最上位以外の原稿シートSの抵抗となることにより、原稿シートSの重送を抑制する。なお、給紙ローラ59はベルト方式のものでもよいし、分離板60は給紙ローラ(給紙ベルト)とは逆方向に回転するローラ方式のものでもよい。
なお、給紙ローラ59の下流側に隣接して配置した搬送ローラ52b,52c,52dは、ピックアップローラ58の駆動タイミングに応じて、給紙した原稿シートSの先端を突き当ててスキュー搬送を補正し、補正後の原稿シートSを引き出し搬送する先端整合機能を備えるようになっている。
原稿搬送部52は、DFコンタクトガラス42の上方に対向するように配置して原稿シートSの画像を読み取らせる第1読取ローラ66と、排出口55bよりも上流側直前に配置して原稿シートSを排出口55bから排紙トレイ53に向けて排出する排出ローラ対52e,52fとを有する。
第1読取ローラ66は、コイルスプリング等の付勢部材を用いてDFコンタクトガラス42に向けて付勢されており、原稿シートSを搬送しつつ、その原稿シートSをDFコンタクトガラス42に密着させるようになっている。
原稿搬送部52は、第1読取ローラ66よりも下流側で搬送ローラ52b,52c,52dと排出ローラ対52e,52fとの間の比較的直線的に原稿シートSを搬送する経路上に第2読取ユニット68を配置している。
第2読取ユニット68は、原稿シートSおよびハードシートHの裏面画像を読み取る読取手段としての裏面走査ユニット69と、ストレート搬送パス56aを挟んで裏面走査ユニット69に対向するよう配置された第2読取ローラ70と、を有している。
裏面走査ユニット69は、原稿シートSおよびハードシートHの表面画像を画像読取部4の一体型光学走査ユニット47で読み取った後の原稿シートSおよびハードシートHの裏面画像を読み取るように密着型のイメージセンサ等を用いている。
第2読取ローラ70は、裏面走査ユニット69における原稿シートSおよびハードシートHの浮きを抑えると同時に、裏面走査ユニット69におけるシェーディングデータを取得するための基準白部を兼ねている。なお、原稿シートSおよびハードシートHの裏面画像の読み取りを行わない場合には、原稿シートSおよびハードシートHは裏面走査ユニット69を素通りするようになっている。
第2読取ローラ70は、ギャップ調整機構により、裏面走査ユニット69と原稿シートSまたはハードシートHとの距離(搬送ギャップ)に関して、画像品質を損なわない焦点深度に合わせた適切な距離を保つようになっている。
次に、図6〜図9を参照してADF5の原稿読取動作について説明する。上記の構成において、原稿シートSの画像を読み取る場合には、図6に示すように、原稿トレイ51に原稿シートSをセットし、スタートボタン151を押下することで最上位の原稿シートSから順に、給紙口55aを経由してUターン搬送パス56へと繰り出される。
そして、図9(A)に示すように、原稿トレイ51にセットされた原稿シートSは、給紙口55aを経由してUターン搬送パス56へと繰り出された後、図中の円で示されるUターン搬送経路56gで折り返されるようにUターン搬送される。この後、原稿シートSは、DFコンタクトガラス42の上面を通過する際に、第1読取ローラ66の加圧でDFコンタクトガラス42に密着されつつイメージセンサとしての一体型光学走査ユニット47により一面(例えば、表面)の画像が読み取られる。
さらに、原稿シートSの他面(例えば、裏面)の画像を読み取る場合には、原稿シートSが裏面走査ユニット69を通過する際に、第2読取ローラ70の加圧で裏面走査ユニット69に密着されつつ裏面走査ユニット69により他面(例えば、裏面)の画像が読み取られる。そして、他面の画像を読み取った後の原稿シートSは、排出ローラ対52e,52fにより排出口55bから排紙トレイ53に向けて排出される。
一方、原稿トレイ51で設定されている最小サイズ原稿シートS(例えば、葉書サイズ)よりも小さい原稿、特に、銀行等のキャッシュカードや各種クレジットカード等のような厚手の樹脂カード類などのハードシートHの画像を読み取る場合には、まず、図8に示すように、カード供給トレイ73により給紙口72を開放する。
この状態で、カード供給トレイ73にハードシートHをセットし、スタートボタン151を押下することで最上位のハードシートHから順に、給紙口72を経由してカード搬送経路75へと繰り出される。カード搬送経路75は、その全般が同一平面上にあるとともに、2つのローラから構成されるカードピックアップローラ74、第1読取ローラ66、排出ローラ対52e,52fのそれぞれの隣接間隔がハードシートHの縦サイズ(又は横サイズ)以下で配置されている。
そして、図9(B)に示すように、給紙口72を経由してカード搬送経路75へと繰り出されたハードシートHは、DFコンタクトガラス42の上面を通過する際に、第1読取ローラ66の加圧でDFコンタクトガラス42に密着されつつ一体型光学走査ユニット47により一面(例えば、表面)の画像が読み取られる。
さらに、ハードシートHの他面(例えば、裏面)の画像を読み取る場合には、ハードシートHが裏面走査ユニット69を通過する際に、第2読取ローラ70の加圧で裏面走査ユニット69に密着されつつ裏面走査ユニット69により他面の画像が読み取られる。そして、他面(例えば、裏面)の画像を読み取った後のハードシートHは、排出ローラ対52e,52fにより排出口55bから排紙トレイ53に向けて排出される。
このように、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、画像の読み取り対象となる原稿シートSを積載する原稿トレイ51と、原稿トレイ51に積載された原稿シートSを取り出す給紙口55aと、給紙口55aで取り出した原稿シートSを搬送する原稿搬送部52と、原稿搬送部52に配置され搬送中の原稿シートSの一面側の画像を読み取る一体型光学走査ユニット47と、原稿搬送部52に配置され搬送中の原稿シートSの他面側の画像を読み取る裏面走査ユニット69と、給紙口55aとは別に設けられハードシートHを原稿搬送部52に向けて供給する給紙口72と、給紙口72から裏面走査ユニット69を経由して排出口55bに至る搬送経路が同一平面上に位置するストレート搬送パス56aと、を備えることにより、ADF5の小型化や読み取り時間の短縮化に貢献しつつ、小サイズで厚手の樹脂カード類への読み取りを可能とし、原稿シートSおよびハードシートHなどの読み取りの多様化に対応することができる。
次に、図10を用いて画像形成装置1の動作の制御構成を説明する。図10に示すように、画像形成装置1は、自動原稿搬送制御用のコントローラ部100と、装置本体制御用の本体制御部111と、本体制御部111に付帯する操作部150とを備えている。
コントローラ部100は、原稿セットセンサ82、給紙適正位置センサ92、突当センサ93、原稿幅センサ94、読取入口センサ95、レジストセンサ96、排紙センサ97およびテーブル上昇センサ98の検知信号を取り込むようになっている。
コントローラ部100は、ピックアップローラ58を駆動するピックアップモータ101と、給紙ローラ59および搬送ローラ52b,52c,52dを駆動する給紙モータ102と、ブラケット48を移動させるタイミングプーリを駆動する読取モータ103と、排出ローラ対52e,52fを駆動する排紙モータ104と、および原稿トレイ51の可動原稿テーブル51a(図4参照)を昇降させる底板上昇モータ105を作動させるようになっている。
コントローラ部100は、一体型光学走査ユニット47に対して、原稿シートSまたはハードシートHの先端が該一体型光学走査ユニット47の読取位置に到達するタイミング(それ以降の画像データが有効データとして扱われる)を通知するタイミング信号等を出力するとともに、第2読取ユニット68に対して、原稿シートSまたはハードシートHの先端が裏面走査ユニット69の読取位置に到達するタイミング(それ以降の画像データが有効データとして扱われる)を通知するタイミング信号等を出力するようになっている。
コントローラ部100と本体制御部111とは、インターフェース回路107を介して接続されている。本体制御部111は、操作部150のスタートボタン151が押下されると、インターフェース回路107を介してコントローラ部100に原稿給紙信号や読取開始信号を送信するようになっている。
次に、図11を用いて画像読取装置6と画像形成装置1との間の信号経路について説明する。
図11に示すように、第2読取ユニット68は、LEDアレイ、蛍光灯、または冷陰極管等からなる光源部200を有している。光源部200は、コントローラ部100からの点灯信号に基づいて、原稿シートSに光を照射するようになっている。また、第2読取ユニット68は、コントローラ部100から原稿シートSの先端が裏面走査ユニット69の読取位置に到達するタイミングを通知するタイミング信号や光源部200の電源を得るようになっている。
第2読取ユニット68は、主走査方向に並ぶ複数のセンサチップ201と、それぞれのセンサチップ201に個別に接続された複数のOPアンプ回路202と、それぞれのOPアンプ回路202に個別に接続された複数のA/Dコンバータ203とを有している。さらに、第2読取ユニット68は、画像処理部204、フレームメモリ205、出力制御回路206およびインターフェース回路207(図中ではI/F回路と記す)等を併有している。
センサチップ201は、等倍密着イメージセンサと称される光電変換素子と集光レンズとを具備するものである。原稿シートSの表面で反射した反射光は、複数のセンサチップ201の集光レンズにより光電変換素子に集光され、画像情報として読み取られるようになっている。
それぞれのセンサチップ201で読み取られた画像情報は、OPアンプ回路202によって増幅された後、A/Dコンバータ203によってデジタル画像情報に変換されるようになっている。
これらデジタル画像情報は、画像処理部204に入力されてシェーディング補正などが施された後、フレームメモリ205に一時記憶されるようになっている。さらに、デジタル画像情報は、出力制御回路206によって本体制御部111に受入可能なデータ形式に変換された後、インターフェース回路207を経由して本体制御部111に出力されるようになっている。
次に、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置(ADF5)に設けられる原稿トレイ51の複数段係止機構50について図12〜図15を参照して説明する。なお、複数段係止機構50の説明の便宜上、図12〜図15に示す構成については、原稿トレイ51の先端側寄りに設けられる可動原稿テーブル51a(図4参照)等の構成を省略している。
複数段係止機構50は、ADF5に対して原稿トレイ51を回動可能に支持するトレイ回動機構がベースとなっている。まず、トレイ回動機構について説明する。
図12に示すように、ADF5は、上述した原稿搬送部52と該原稿搬送部52の原稿搬送方向上流側の搬送経路部分を含み、原稿トレイ51から排紙トレイ53までの間で原稿シートSを搬送する原稿搬送経路520を形成するガイド部材521a,521bを有する。また、ADF5において、原稿トレイ51は、原稿搬送方向下流側先端部に、ガイド部材521a,521bの基端部520cの主走査方向両側に位置する一対のリブ510a,510bを有する。
原稿トレイ51の一対のリブ510a,510bには、各リブ510a,510bよりガイド部材521a,521bの原稿搬送経路520の壁面側に一対の突出する回転軸515a,515bが設けられる。一対のリブ510a,510bと回転軸515a,515bとは原稿搬送経路520内に位置する。また、ADF5の原稿搬送経路520を形成する一対のガイド部材521a,521bには、上記一対のリブ510a,510bに形成された各回転軸515a,515bを回動可能に受け入れる一対の軸受部525a,525bが形成されている。
このように、ADF5において、原稿トレイ51は、ガイド部材521a,521bの基端部520cの主走査方向両側に一対のリブ510a,510bを有しかつ各リブ510a,510bより一対のガイド部材521a,521bの原稿搬送経路520の壁面側に突出する一対の回転軸515a,515bを有している。
ADF5において、一対のリブ510a,510bと回転軸515a,515bとが原稿搬送経路520内に位置され、各回転軸515a,515bがガイド部材521a,521bの原稿搬送経路520の主走査方向両側面部に設けられた軸受部525a,525bに回転可能に支持されている。これにより、ADF5は、原稿トレイ51が各回転軸515a,515bを中心に回動可能なトレイ回動機構を有する。
図13は、図12の矢印D−D線方向から見たADF5の構成を示し、図13(A)は原稿トレイ51を開いていない第1の状態を示す概略側面図であり、図13(B)は原稿トレイ51が最大に持ち上がった第2の状態を示す概略側面図である。
図12を参照して説明したトレイ回動機構を有するADF5は、原稿トレイ51を、例えば、図13(A)に示す第1の状態と図3(B)に示す第2の状態との間、すなわち、持ち上がっていない状態と、最大に持ち上がった傾斜状態との間で回動させることができる。
ここで、原稿トレイ51は、持ち上がっていない状態では、持ち上がっていない状態に比べて、原稿トレイ51と排紙トレイ53との間の距離間隔、すなわち、排紙トレイ53に排出された原稿の取出しスペースが大きくなるようになっている。
本実施の形態において、ADF5のトレイ回動機構は、原稿トレイ51を、持ち上がっていない状態(図13(A)参照)、または最大に持ち上がった傾斜状態(図13(B)参照)のいずれかの状態にロックする複数段係止機構50を有している。
次に、複数段係止機構50について図14も参照してさらに詳しく説明する。図14は図12に示す複数段係止機構50の要部拡大構造を示し、図14(A)は図12の矢印E−E線方向から見た構成を示す側面図であり、図14(B)は図12の矢印F−F線方向から見た構成を示す側面図である。
図12に示すように、複数段係止機構50は、上述したトレイ回動機構を構成する各リブ510a,510bと、各ガイド部材521a,521bの上記各リブ510a,510bに対応する部位との相互間に分配して設けられる。
具体的に、複数段係止機構50は、リブ510aと、ガイド部材521aのリブ510aに対応する部位との間については、図12の矢印E−E線から見た構成、つまり、図14(A)に示す構成(以下、リブ510a側の構成)を有し、リブ510bと、ガイド部材521bのリブ510bに対応する部位との間については、図12の矢印F−F線から見た構成、つまり、図14(B)に示す構成(以下、リブ510b側の構成)を有する。
図14(A)および(B)に示すように、複数段係止機構50は、各リブ510a,510bにそれぞれ設けられた複数の係止用凹部512a,512bおよび513a,513bと、各リブ510a,510bに対応してガイド部材521a,521b側に配置された一対の突起526a,526bと、各突起526a,526bを係止用凹部512a,512bおよび513a,513bと係合する方向に付勢する弾性部材527a,527bと、各突起526a,526bと各弾性部材527a,527bとをそれぞれ収容する保持筒状部528a,528bを備える。
複数段係止機構50は、原稿トレイ51が持ち上がっていない状態(図13(A)、図14(A)参照)のときに、複数の係止用凹部512a,512bおよび513a,513bのうちの一方の係止用凹部例えば512a,512bが、対応する各突起526a,526bと係合することにより、原稿トレイ51が持ち上がらないようにロックしている。
また、複数段係止機構50は、原稿トレイ51が最大に持ち上がった傾斜状態(図13(B)参照)のときに、複数の係止用凹部512a,512bおよび513a,513bのうちの他方の係止用凹部例えば513a,513bが、対応する各突起526a,526bと係合することにより、原稿トレイ51が傾斜状態を保持するようにロックするようになっている。
複数段係止機構50において、各リブ510a,510bは、それぞれ対応する回転軸515a,515bに関して下側に扇状に形成された外周部511を有し、該外周部511に複数の湾状の凹部514a,514bが形成されている。湾状の凹部514a,514bは、それぞれ、上述した係止用凹部512a,512bおよび513a,513bを構成している。
複数段係止機構50において、リブ510a側のガイド部材521aおよびリブ510b側のガイド部材521bにそれぞれ設けられる突起526a,526bは、対応する各リブ510a,510bの下側に位置され、対応する回転軸515a,515bの中心方向に進出、引退するように設けられている。
各突起526a,526bの対応するリブ510a,510bにそれぞれ設けられる係止用凹部512a,512bおよび513a,513b、すなわち、湾状の凹部514a,514bに係合する部分は、半球面に形成されている。一方、各係止用凹部512a,512bおよび513a,513bを構成する湾状の凹部514a,514bの対応する上記各突起526a,526bに係合する部分は、突起側の間口が広く、深く係合する方向に次第に狭くなるテーパ溝状に形成されている。
次に、複数段係止機構50を備えたADF5の動作について図15を参照して説明する。なお、図15は、図12の矢印E−E線から見たリブ510a側の構成を示すものであるが、説明の便宜上、リブ510b側の構成についても括弧書きの符号を付して示している。
図15において、同図(A)は、原稿トレイ51が持ち上げられていない状態での複数段係止機構50のロック態様を示す要部概略側面図である。このとき、複数段係止機構50では、ガイド部材521a,521b側に配置された突起526a,526bが、リブ510a,510bに設けられた係止用凹部512a,512bにそれぞれ係合している。これにより、突起526a,526bが、それぞれ、弾性部材527a,527bによって回転軸515a,515bの中心方向に進出するように付勢され、原稿トレイ51が持ち上がらないようにロックされる。
図15において、同図(B)は、同図(A)の原稿トレイ51を持ち上げていない状態から、原稿搬送方向下流側の端部を上方に向けて持ち上げ始めた際(持ち上げ初期時)の複数段係止機構50のロック態様を示す要部概略側面図である。このとき、複数段係止機構50では、原稿トレイ51の持ち上げ開始後、各リブ510a,510bがガイド部材521a,521bに形成された回転軸515a,515bを中心に矢印gで示す方向に連続して回動される。
リブ510a,510bの回動中、ガイド部材521a,521b側の突起526a,526bは、回動中の係止用凹部512a,512bに対してスライドしながら、回転軸515a,515bの中心方向とは逆方向(図15(B)に矢印hで示す方向)に退出し続ける。
この間、原稿トレイ51をさらに持ち上げる操作が続行されると、突起526a,526bは、図15(B)に示すように、係止用凹部512a,512bから抜け出してリブ510a,510bの外周部511に当接した状態となる。原稿トレイ51をさらに持ち上げる操作が続行されると、突起526a,526bは、図15(B)の状態を経て、リブ510a,510bに設けられた各係止用凹部513a,513bにそれぞれ対向する領域に達する。
図15において、同図(C)は、原稿トレイ51を、最大に持ち上がった傾斜状態としたときの複数段係止機構50のロック態様を示す要部概略側面図である。このとき、複数段係止機構50では、ガイド部材521a,521b側に配置された突起526a,526bが、リブ510a,510bに設けられた係止用凹部513a,513bにそれぞれ係合する。これにより、突起526a,526bが、それぞれ、弾性部材527a,527bにより、図15(C)に矢印iで示す回転軸515a,515bの中心方向に進出するように付勢される。
これにより、ADF5では、原稿トレイ51が最大に持ち上げられた傾斜状態にロックされる。この傾斜状態では、原稿トレイ51の下面側が排紙トレイ53の上面との間の距離が開き、図13(A)に示す状態(持ち上がっていない状態)に比べて排紙されたハードシートH等の小サイズ原稿の取出しスペースが大きくなる。しかも、この傾斜状態にあっては、原稿トレイ51が当該傾斜状態のまま保持されるため、排紙トレイ53上の小サイズ原稿へのアクセス時に原稿トレイ51を押さえている必要がなくなる。
よって、本実施の形態に係るADF5では、例えば、図14(A)に示すように、上述したストレート搬送パス56aを搬送しつつ読み取ったハードシートHが排紙トレイ53上に排出された後、図14(B)に示すように、原稿トレイ51を最大に持ち上げてロックすることにより、ハードシートHを片手で容易に取出すことができ、作業性が向上する。上記作業性については、Uターン搬送パス56を搬送されて読み取られた葉書サイズあるいは名刺サイズの原稿等の取出しに関しても同様の効果が見込める。
本実施の形態に係る画像形成装置1は、例えば、大きさや価格等の制約が大きいローエンド機に適用される。ローエンド機は、装置の高さ寸法が小さく小型化されており、原稿トレイ51と排紙トレイ53との間隔が狭いためにユーザの手が奥まで入り難く、原稿トレイ51を持ち上げることで奥まで手が入れられる設定になっている。本実施の形態に係るADF5は、原稿トレイ51と排紙トレイ53間の間隔が狭いローエンド機に採用するため、原稿トレイ51を最大に持ち上げて傾斜状態にロックできる構成であり、排紙トレイ53の奥側に排出されているハードシートH等の小サイズ原稿を取り出す際の作業向上に特に有用である。
また、本実施の形態に係るADF5は、原稿トレイ51が持ち上げられていない状態でもロックされる。このため、ADF5は、原稿トレイ51が持ち上げられていない状態で、画像読取部4がDFコンタクトガラス42およびフラットベッドコンタクトガラス41を露出する開放位置に回動された場合のばたつき抑制効果も得られる。
このように、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置(ADF)5は、原稿トレイ51に載置された原稿シートSを1枚ずつ所定の原稿読取位置まで搬送した後に原稿トレイ51の下側に配置された排紙トレイ53に排紙する構成であって、かつ、原稿トレイ51に載置された原稿シートSを搬送可能な第1の状態と、第1の状態よりも原稿トレイ51が持ち上がった第2の状態と、の間で回動可能に支持するとともに、第1の状態と第2の状態とで原稿トレイの姿勢を保持するよう支持する支持手段50Aを備えた構成である。
この構成によれば、原稿トレイ51をユーザが排紙トレイ53との間に手を挿入することができる第2の状態に支持することで、原稿トレイ51をその状態に固定したまま小サイズ原稿を取り出すことができ、小サイズ原稿取り出し作業の作業性を向上させことができる。また、原稿トレイ51を第1の状態に支持することで、ADF5が画像読取装置1の装置本体1Mに対して開いた状態での原稿トレイのばたつきを抑制できる。
また、本実施の形態では、支持手段50Aは、原稿トレイ51の原稿シートSの主走査方向両側の一対のリブ510a,510bに設けられ、各リブ510a,510bの外側から主走査方向に突出する一対の回転軸515a,515bと、原稿トレイ51を支持するとともに、原稿シートSを搬送する原稿搬送経路52を形成する一対のガイド部材521a,521bの原稿搬送経路52の壁面内側に一対の回転軸515a,515bに対応して設けられ、原稿トレイ51が回動できるように一対の回転軸515a,515bを受け入れる一対の軸受部525a,525bと、一対のリブ510a,510bと、一対のガイド部材521a,521bの各リブ510a,510bに対応する部位との相互間に分配して設けられた複数段係止機構50と、を有し、複数段係止機構50は、原稿トレイ51が持ち上がっていない第1の状態のときに、原稿トレイ51が持ち上がらないようにロックし、また原稿トレイ51が最大に持ち上がった第2の状態のときに、原稿トレイ51が傾斜状態を保持するようにロックする構成である。
この構成により、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、例えば、ストレート搬送パス56aを搬送されて読み取られたハードシートH、Uターン搬送パス56を搬送されて読み取られた葉書サイズあるいは名刺サイズの原稿等の小サイズ原稿が排紙トレイ53上に排出された後、原稿トレイ51を最大に持ち上げた第2の状態にしてロックする(図13(B)、図15(C)参照)ことができる。これにより、原稿トレイ51と排紙トレイ53間の小サイズ原稿の取出しスペースを確保するために原稿トレイ51を常時手で保持しておく必要がなくなる。よって、本実施の形態では、原稿トレイ51を最大に持ち上げてロックした状態で小サイズ原稿を片手で容易に取り出すことができ、小サイズ原稿の取出しに際して作業が向上する。
また、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、複数段係止機構50が、各リブ510a,510bに設けられた複数の係止用凹部512a,512bおよび513a,513bと、各リブ510a,510bに対応してガイド部材521a,521b側に配置された一対の突起526a,526bと、各突起526a,526bを係止用凹部512a,512bおよび513a,513bと係合する方向に付勢する弾性部材527と、を備え、原稿トレイ51が持ち上がっていない状態のときに、複数の係止用凹部512a,512bおよび513a,513bのうちの1つ係止用凹部512a,512bが、対応する各突起526a,526bと係合することにより、原稿トレイ51が持ち上がらないようにロックし、また原稿トレイ51が最大に持ち上がった傾斜状態のときに、複数の係止用凹部512a,512bおよび513a,513bのうちの他の1つ係止用凹部513a,513bが、対応する各突起526a,526bと係合することにより、原稿トレイ51が傾斜状態を保持するようにロックする構成であってもよい。
この構成により、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、複数段係止機構50を、各突起526a,526bが係止用凹部512a,512bおよび513a,513bの一方と係合するように回動させることで原稿トレイ51を最大に持ち上がった傾斜状態で確実かつ容易にロックすることができ、この点においても小サイズ原稿の取出し作業の作業性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、各リブ510a,510bが、回転軸515a,515bに関して下側に扇状に形成され、外周部511に複数の湾状の凹部514a,514bが形成され、当該凹部514a,514bが係止用凹部512a,512bおよび513a,513bを構成しており、突起526a,526bとは、各リブ510a,510bとの下側に位置され、回転軸515a,515bの中心方向に進出・引退するように設けられている構成としてもよい。
この構成により、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、複数段係止機構50を、突起526a,526bが係止用凹部512a,512bおよび513a,513bである凹部514a,514bと係合するシンプルな構造とすることができ、ローエンド機にとって重要な小型化、低コスト化を維持できる。
また、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、突起526a,526bの係止用凹部512a,512bおよび513a,513bに係合する部分は半球面に形成され、係止用凹部512a,512bおよび513a,513bの突起526a,526bに係合する部分は突起526a,526b側の間口が広く深く係合する方向に次第に狭くなるテーパ溝状に構成されていてもよい。
この構成により、本実施の形態に係る自動原稿搬送装置5は、原稿トレイ51を開かれていない状態から最大に持ち上がった傾斜状態とする際に突起526a,526bが係止用凹部512a,512bおよび513a,513bに対してスライドし易く、所望のロック位置に移動させる操作を原稿トレイ51の回動を妨げることなくスムーズに実行できる。
また、本実施の形態に係る画像形成装置1は、上記複数段係止機構50を有する自動原稿搬送装置5を備えた構成により、原稿トレイ51と排紙トレイ53間の縦方向の隙間が小さく、かつ、ハードシートH等の小サイズ原稿の読取機能を有する自動原稿搬送装置5を搭載していても、原稿トレイ51を最大に持ち上がった傾斜状態としたうえで、排出された小サイズ原稿を片手で容易に取り出すことができ、小サイズ原稿の取出し作業の作業性を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施の形態では、複数段係止機構50を、各リブ510a,510bにそれぞれ突起526a,526bに係合する2つの係止用凹部512a,512bおよび513a,513bを設けて2段の係止機構としているが、より多い段数の係止機構としてもよい。
また、上記実施の形態では、複数段係止機構50は、各突起526a,526bと各係止用凹部512a,512bおよび513a,513bとが上下方向(原稿シートSの紙面に対して垂直な方向)に係合する構成であるが、各突起526a,526bと各係止用凹部512a,512bおよび513a,513bとが水平方向(原稿シートSの紙面に対して垂直な方向)に係合する構成としてよい。
なお、各突起526a,526bの各係止用凹部512a,512bおよび513a,513bに対するスライドの円滑性、ロック位置へ移動させる操作性の面では、前者の構成の方が有利である。
本発明はプリンタ・複写機・ファクシミリなどに用いる自動原稿搬送装置およびそれを備えた画像形成装置の分野において有用な発明である。
以上説明したとおり、本発明によれば、原稿トレイが持ち上がっていない状態のときに、原稿トレイが持ち上がらないようにロックし、また原稿トレイが最大に持ち上がった傾斜状態のときに、原稿トレイが傾斜状態を保持するようにロックする複数段係止機構を備えることで、原稿トレイを所定の角度でロックでき、小サイズ原稿を取り出す際の作業性を向上させ得る自動原稿搬送装置および画像形成装置を提供することができる。