JP6704747B2 - 合金材料の評価方法 - Google Patents
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Description
合金材料の評価対象物の評価方法であって、
前記評価対象物の金属組織における析出物間の距離を示す距離パラメータを計測するステップと、
前記合金材料の使用温度及び使用時間に関する熱履歴パラメータと、前記合金材料の金属組織における析出物間の距離を示す前記距離パラメータとの相関を示すマスターカーブに対して、前記評価対象物について計測した前記距離パラメータを当てはめて、前記評価対象物の使用温度を算出するステップと、を備え、
前記マスターカーブは、前記評価対象物と同種の合金材料のサンプルついての、前記熱履歴パラメータと前記距離パラメータとの相関を示す基準マスターカーブを、前記評価対象物の材料初期条件に基づいて補正したものである
ことを特徴とする。
前記合金材料の評価方法は、
前記熱履歴パラメータが互いに異なる複数種の熱履歴条件の下で作製された複数の前記サンプルの各々について前記距離パラメータを計測するステップと、
複数の前記サンプルについてそれぞれ計測した前記距離パラメータと、前記サンプルの各々の前記熱履歴パラメータとの相関から前記基準マスターカーブを取得するステップと、
前記評価対象物の前記材料初期条件に基づいて前記基準マスターカーブを補正して前記マスターカーブを取得するステップと、
をさらに備える。
前記合金材料の評価方法は、前記サンプルの材料初期条件を入力条件としたシミュレーションにより得られる前記サンプルの前記距離パラメータの計算結果と、前記基準マスターカーブとが整合するような前記シミュレーションの計算条件を決定するステップをさらに備え、
前記マスターカーブを取得するステップでは、決定された前記計算条件の下で、前記評価対象物の前記材料初期条件を入力条件として前記シミュレーションを行うことで、前記評価対象物についての前記熱履歴パラメータに対応する前記距離パラメータを計算することで、前記マスターカーブを取得する。
前記材料初期条件(材料の製造履歴)は、前記評価対象物又は前記サンプルの化学組成、固溶化熱処理履歴、結晶粒径、または、結晶粒形状の少なくとも一つを含む。
前記化学組成は、Cr、Fe、Nb、C、N、Ni又はCuの少なくとも一つの元素の含有率である。
前記固溶化熱処理履歴は、前記評価対象物又は前記サンプルの材料製造時における熱処理温度および熱処理時間を含む。
前記シミュレーションの前記計算条件は、前記金属組織における析出物の元素構成比率または析出サイトの少なくとも一方を含む。
前記距離パラメータは、前記金属組織における析出物間の平均距離、前記金属組織における析出物の粒径、または、前記金属組織における析出物の数密度の少なくとも一つを含む。
そこで、上記(8)のように、これらのうち少なくとも一つを熱履歴パラメータとして用いることで、合金材料の使用温度を適切に求めることができる。
前記合金材料の評価方法は、算出された前記評価対象物の前記使用温度に基づいて、前記評価対象物の余寿命を評価するステップをさらに備える。
前記合金材料は、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金である。
前記評価対象物は、ボイラの伝熱管である。
この点、上記(1)〜(10)で述べた方法は、過酷な環境であるボイラの炉内に温度センサを設置することなしに、ボイラ伝熱管(評価対象物)の使用温度を高精度に推定することができる。
ここで、熱履歴パラメータとして、標準試料が加熱されたときの温度(メタル温度)をT(単位:K)とし、加熱されていた時間をt(単位:h)としたときに、次式(1):
λ=T(20+logt)・・・(1)
で表されるパラメータを用いてもよい。
図2に示すように、距離パラメータ計測工程(ステップS2)は、研磨工程S20と、母材エッチング工程S22と、レプリカ取得工程S24と、レプリカ画像取得工程S26と、測距工程S28と、距離パラメータ演算工程S30とを有する。
それから、母材エッチング工程S22にて、図3(c)に示すように、析出物34を溶かさずに、母材36がエッチングにより除去される。なお、母材36の粒界38では、エッチングが早く進行する。
図4は、走査型電子顕微鏡によってレプリカ32の表面を観察して得られる画像の一部を概略的に示す図である。この画像中において、合金材料の金属組織中における様々な形状の複数の析出物34を確認することができる。
そして、析出物34間の距離L1、L2、L3、・・・、Lk(ただし、kは整数である)が測定される。距離L1、L2、L3、・・・、Lkは、それぞれ交点P1と交点P2、交点P3と交点P4、交点P5と交点P6、交点P2k−1と交点P2kの間の直線距離である。
Lm=(L1+L2+L3+・・・+Lk)/k
なお、複数の仮想的な直線42を引き、直線42毎に距離Lkを求め、それらの距離Lkの算術平均を平均距離Lmとして求めてもよい。
なお、図5及び図6は、合金材料がオーステナイト系ステンレス鋼である場合を例示している。
加熱を続けると、図5(c)に示すように、析出物34cが成長するとともに、複合窒化物(MX)からなる析出物34nが、母材36中、すなわちオーステナイト粒子の内部に析出する。
更に加熱を続けると、図5(d)に示すように、析出物34c及び析出物34nの粗大化、及び、σ相からなる析出物34sの粒界38での析出が始まり、粒界38が不鮮明になる。そして更に加熱を続けると、図5(e)に示すように、析出物34c及び析出物34nの粗大化及び凝集、及び、析出物34sの粗大化が進み、粒界38が更に不鮮明になる。
図5(a)〜図5(e)に示すように、熱履歴パラメータλが増加するにつれて、析出物34(34c,34n,34s)の粒成長挙動に伴って距離パラメータXが変化するのである。
図7に示すように、合金材料Aは、合金材料Bに比べて、析出物構成元素であるC、Ni、Nb、Nの含有量が若干多い。このため、合金材料Aにおいて析出物の数密度が比較的多くなるために、合金材料Aの平均粒子間距離は合金材料Bに比べて小さくなる。
このように、同一規格材料の合金材料間であっても、析出物構成元素の含有量の違いが距離パラメータXに影響を及ぼし得る。よって、サンプルについて求めた基準マスターカーブ100をそのまま評価対象物に適用するのではなく、基準マスターカーブ100を補正する必要がある。
幾つかの実施形態では、図8に示すように、析出シミュレーションは、合金材料の材料初期条件(材料の製造履歴)を入力条件として、析出物の経年変化を出力するようになっている。
材料初期条件は、合金材料の化学組成、固溶化熱処理履歴、結晶粒径、または、結晶粒形状の少なくとも一つを含む。
図8に示す例示的な実施形態では、析出シミュレーションでは、最初に、合金材料の化学組成を入力条件として平衡計算を行って、各温度における析出物の種類と体積を求める(ステップS100)。この際、合金材料の化学組成として、例えば、Cr、Fe、Nb、C、N、Ni、Cu等の析出物構成元素の含有量を入力条件としてもよい。そして、合金材料の固溶化熱処理履歴(例えば、合金材料が配管である場合には配管加工時の熱処理履歴(熱処理温度及び時間))を入力条件としてScheil計算を行い、凝固時における析出相の有無を確認する(ステップS102)。続いて、合金材料の金属組織を観察することで得られた結晶粒の粒径および/または粒形状を入力条件とし、析出物の計算を行う(ステップS104)。ここでいう「結晶粒」とは、オーステナイト(γ)粒子である。こうして、析出物の種類、粒径、体積分率および粒子間距離等について、析出物の経年変化についての計算結果が得られる(ステップS106)。
こうして得られたマスターカーブ200は、基準マスターカーブ100を再現可能である析出シミュレーションに対して、サンプルの材料初期条件に替えて、評価対象物の材料初期条件を入力することで得られたものであるから、評価対象物の材料初期条件に基づいて基準マスターカーブ100を補正したものであると捉えることができる。
評価対象物の合金材料中の析出物構成元素(例えば、Cr、Fe、Nb、C、N、Ni、Cu等)の含有量が、サンプルの合金材料に比べて少ない場合、評価対象物の高温環境下での使用し伴い生成される析出物(CrNbNやσ相等)の析出量が少なくなる。この場合、図9(a)に示すように、サンプルについての基準マスターカーブ100に対して、評価対象物のマスターカーブ200Aは上方にずれる(即ち、距離パラメータXが大きくなる)。
逆に、評価対象物の合金材料中の析出物構成元素(例えば、Cr、Fe、Nb、C、N、Ni、Cu等)の含有量が、サンプルの合金材料に比べて多い場合、評価対象物の高温環境下での使用し伴い生成される析出物(CrNbNやσ相等)の析出量が多くなる。この場合、図9(b)に示すように、サンプルについての基準マスターカーブ100に対して、評価対象物のマスターカーブ200Bは下方にずれる(即ち、距離パラメータXが小さくなる)。
すなわち、評価対象物について、研磨工程S20と、母材エッチング工程S22と、レプリカ取得工程S24と、レプリカ画像取得工程S26と、測距工程S28と、距離パラメータ演算工程S30と、を順に行うことで、距離パラメータXを計測してもよい。
ステップS9では、図10のような既知の関係から、評価対象物の使用温度Tおよび評価対象物に作用する応力に対応する破断時間を読取って、評価時点までの累積使用時間を破断時間から差し引くことで評価対象物の余寿命を求めることが可能である。図10に示す例において、評価対象物の使用温度Tが650℃であり、評価対象物に作用する応力が110MPaであれば、評価対象物の破断時間は100000時間である。評価対象物の使用時間tが10000時間であれば、評価対象物の寿命消費率は、10000×100/100000=10(%)となる。
なお、評価対象物に作用する応力は、評価対象物がボイラの伝熱管である場合、ボイラの運転圧力及び評価対象物の形状に基づいて求めることができる。
オーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金は、高温環境下で使用するにつれて析出物の粒成長が起きる。このため、オーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金に上述の評価方法を適用することで、評価対象物(合金材料)の使用温度を高精度に求めることができる。
この点、上述の評価方法は、過酷な環境であるボイラの炉内に温度センサを設置することなしに、ボイラ伝熱管(評価対象物)の使用温度を高精度に推定することができるので有用である。
具体的には、材料初期条件(例えば、合金材料の化学組成、固溶化熱処理履歴、結晶粒径、結晶粒形状など)が互いに異なる複数のサンプル群のそれぞれについて複数の基準マスターカーブ100を求めることで、材料初期条件とマスターカーブの相間を予め取得する。そして、この相関に、評価対象物の材料初期条件を当てはめることで、評価対象物のマスターカーブ200を求めてもよい。
32 レプリカ
34,34c,34n,34s 析出物
36 母材
38 粒界
40 レプリカフィルム
42 直線
100 基準マスターカーブ
200,200A,200B マスターカーブ
A,B 合金材料
X 距離パラメータ
T 使用温度
t 使用時間
Claims (9)
- 合金材料の評価対象物の評価方法であって、
前記評価対象物の金属組織における析出物間の距離を示す距離パラメータを計測するステップと、
前記合金材料の使用温度及び使用時間に関する熱履歴パラメータと、前記合金材料の金属組織における析出物間の距離を示す前記距離パラメータとの相関を示すマスターカーブに対して、前記評価対象物について計測した前記距離パラメータを当てはめて、前記評価対象物の使用温度を算出するステップと、を備え、
前記マスターカーブは、前記評価対象物と同種の合金材料のサンプルについての、前記熱履歴パラメータと前記距離パラメータとの相関を示す基準マスターカーブを、前記評価対象物の材料初期条件に基づいて補正したものであり、
前記熱履歴パラメータが互いに異なる複数種の熱履歴条件の下で作製された複数の前記サンプルの各々について前記距離パラメータを計測するステップと、
複数の前記サンプルについてそれぞれ計測した前記距離パラメータと、前記サンプルの各々の前記熱履歴パラメータとの相関から前記基準マスターカーブを取得するステップと、
前記評価対象物の前記材料初期条件に基づいて前記基準マスターカーブを補正して前記マスターカーブを取得するステップと、
前記サンプルの材料初期条件を入力条件としたシミュレーションにより得られる前記サンプルの前記距離パラメータの計算結果と、前記基準マスターカーブとが整合するような前記シミュレーションの計算条件を決定するステップと、をさらに備え、
前記マスターカーブを取得するステップでは、決定された前記計算条件の下で、前記評価対象物の前記材料初期条件を入力条件として前記シミュレーションを行うことで、前記評価対象物についての前記熱履歴パラメータに対応する前記距離パラメータを計算することで、前記マスターカーブを取得する
ことを特徴とする合金材料の評価方法。 - 前記材料初期条件は、前記評価対象物又は前記サンプルの化学組成、固溶化熱処理履歴、結晶粒径、または、結晶粒形状の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の合金材料の評価方法。
- 前記化学組成は、Cr、Fe、Nb、C、N、Ni又はCuの少なくとも一つの元素の含有率であることを特徴とする請求項2に記載の合金材料の評価方法。
- 前記固溶化熱処理履歴は、前記評価対象物又は前記サンプルの材料製造時における熱処理温度および熱処理時間を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の合金材料の評価方法。
- 前記シミュレーションの前記計算条件は、前記金属組織における析出物の元素構成比率または析出サイトの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の合金材料の評価方法。
- 前記距離パラメータは、前記金属組織における析出物間の平均距離、前記金属組織における析出物の粒径、または、前記金属組織における析出物の数密度の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の合金材料の評価方法。
- 算出された前記評価対象物の前記使用温度に基づいて、前記評価対象物の余寿命を評価するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の合金材料の評価方法。
- 前記合金材料は、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の合金材料の評価方法。
- 前記評価対象物は、ボイラの伝熱管であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の合金材料の評価方法。
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