JP6703740B2 - バルブステムシール - Google Patents

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Description

本発明は、バルブステムシールに関する。
従来から、内燃機関において、カム側とシリンダ側との間を往復運動する吸排気バルブのバルブステムとバルブガイドとの間の空間の密封を図るために、バルブステムシールが用いられている。バルブステムシールは、内燃機関作動中において油漏れ量(バルブステムとバルブガイドとの間への潤滑油供給量)が少ないことに起因する、バルブガイド及びバルブステムの損傷を抑制する一方で、油漏れ量が大きいことによる白煙発生等の不具合を防止するために、油漏れ量を調整して、バルブガイドとバルブステムとの間にバルブステムの往復運動を円滑に行わせるための潤滑油を供給しつつ、この潤滑油のポートやシリンダ(燃焼室)への流入の防止を図っている。
図5は、従来のバルブステムシール100をバルブガイド101に取り付けた状態をバルブステム102とともに示す断面図である。バルブステムシール100は、金属製の補強環103と、この補強環103に一体的に設けられ、ゴム等の弾性体からなる弾性体部104と、この弾性体部104を軸線xに向かう方向に付勢するスプリング105とを備えている。スプリング105は、弾性体部104を外側から締め付けることにより、弾性体部104のシールリップ106によるバルブステム102を押圧する力を高め、シール性を向上させている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−108827号公報
近年、内燃機関のさらなる燃費向上を目的として、車種に合わせてバルブステム102に対するバルブステムシール100の締め付け力を下げたいという要望(低トルク化)が高まってきている。
このような要望に対して、弾性体部104を薄肉化することが考えられる。
しかし、このような構成を採用すると、弾性体部104の剛性が低下し、バルブステム102の往復運動により弾性体部104が破損するおそれがある。さらに、弾性体部104によるバルブステム102の締め付け力が許容できない程度にまで低下してしまうことがあるため、シールリップ106に、ポート圧に基づくシリンダ側からの圧力(背圧)がかかった際にシールリップ106がバルブステム102から離れてしまうおそれがある。また、弾性体部104のバルブステム102の締め付け力は、スプリング105に大きく依存しており、車種にあわせてスプリング105による弾性体部104の締め付け力を調整することも困難である。
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、バルブステムの締め付け力を低減して燃費の向上を図りつつ、バルブステムとバルブガイドとの間の潤滑を確保することができるバルブステムシールを提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明は、シリンダとポートとの間を連通及び遮断するバルブのバルブステムと、このバルブステムが往復運動自在に挿入されるバルブガイドとの密封を図り、前記バルブガイドに設けられるバルブステムシールであって、軸線を中心とする環状の補強環と、前記軸線を中心として前記補強環に取り付けられた弾性体部と、を備え、前記弾性体部は、前記補強環と前記バルブガイドの間で押圧される嵌合部と、径方向内側で前記バルブステムに当接し、前記軸線を中心とする環状のシール部と、を有し、前記シール部は、径方向外側に突出する複数の突出部を有することを特徴とする。
前記複数の突出部は、互いに周方向に等間隔に設けられていることが好ましい。
各突出部は、径方向に沿った肉厚が等しいことが好ましい。
各複数の突出部の外周に沿った長さが等しいことが好ましい。
前記突出部は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向に拡幅していることが好ましい。
前記シール部の外周面は、前記シリンダ側から前記カム側に向かうにつれて前記軸線に向かって近づくように傾斜していることが好ましい。
本発明によれば、バルブステムの締め付け力を低減して燃費の向上を図りつつ、バルブステムとバルブガイドとの間の潤滑を確保することができる。
本発明の実施の形態に係るバルブステムシールの平面図である。 図1のII−II線における、バルブステムシールの軸線に沿った断面図である。 図1のIII−III線における、バルブステムシールの軸線に沿った断面図である。 バルブステムシールを用いた密封構造の縦断面図である。 従来のバルブステムシールを用いた密封構造の縦断面図である。
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとりうる。
<バルブステムシール>
図1は、バルブステムシール1の平面図である。図2は、図1に示すII−II線における軸線xに沿う断面図である。図3は、図1に示すIII−III線における軸線xに沿う断面図である。図4は、内燃機関において使用されている状態における、バルブステムシール1を用いた密封構造の概略構造を示すための軸線xに沿う断面図である。
バルブステムシール1は、内燃機関の動弁系において、バルブガイド4とバルブステム5との間の密封を図るものである。すなわち、シリンダとポートとの間を連通及び遮断するためのバルブのバルブステム5と、このバルブステム5が挿通される一端がカム側に臨み他端がシリンダ側に臨むバルブガイド4との間の空間の密封を図るものである。バルブステムシール1は、図4に示すように、バルブガイド4のカム側を臨む一端に被せられるように嵌め込まれ、取り付けられている。
ここで、「密封を図る」とは、燃焼室からの背圧がシリンダ側からカム側に伝わらないよう、バルブガイド4におけるカム側の一端において、バルブガイド4とバルブステム5との間の空間をシールするとともに、バルブガイド4とバルブステム5との摺動面の潤滑のために、潤滑油が燃焼室内に浸入しない程度に潤滑油の量を調整しつつ、潤滑油をバルブガイド4とバルブステム5との摺動面に供給することをいう。
バルブステムシール1は、図2及び図3に示すように、軸線xを中心とする金属製の環状の補強環2と、補強環2と同じく軸線xを中心とし、補強環2に取り付けられ、弾性体から形成された環状の弾性体部3とを備えている。
補強環2は、例えば、プレス加工や鍛造によって製造されている。弾性体部3は、例えば、フッ素ゴム等のゴム材からなり、成形型を用いて架橋(加硫)成形によって成形される。この架橋成形の際に、補強環2は成形型の中に配置されており、弾性体部3が架橋接着により補強環2に接着され、補強環2と一体的に形成される。
[補強環]
補強環2は、軸線xに沿う断面の形状(以下、断面形状ともいう)が、略L字状の形状を呈しており、軸線x方向に延びる円筒状の円筒部21と、円筒部21の上側の端部から軸線xに向かって延びる中空円盤状のフランジ部22とを有している。
[弾性体部]
弾性体部3は、補強環2とバルブガイド4との間で押圧される嵌合部31と、弾性体部3の内周側でバルブステム5に当接する、軸線xを中心とする環状のシール部32とを有している。また、弾性体部3は、補強環2のフランジ部22を覆うカバー部33を備え、カバー部33は、弾性体部3において、嵌合部31とシール部32とを接続している。嵌合部31、シール部32及びカバー部33は、同一の弾性体によって一体に形成されている。
(嵌合部)
嵌合部31は、バルブステムシール1がバルブガイド4に嵌着されて固定されるために機能する部分であり、バルブステムシール1の径方向外側において軸線xに沿って延在して、補強環2の円筒部21を径方向内側から覆っている。嵌合部31の径方向の厚さは、バルブガイド4に嵌着された場合に所定の嵌着力が発生するように所定の厚さに設定されている。嵌合部31は、軸線x方向の一部の範囲において周面が上記の所定の厚さに設定されていてもよく、また、嵌合部31は、軸線x方向の全ての範囲において周面が上記の所定の厚さに設定されていてもよい。
(シール部)
シール部32は、バルブステムシール1の取り付け状態において、バルブステム5に対する締め付け力を形成する部分であり、断面形状が中空の略円錐台状であり、かつ図1に示すように、平面視して周方向において壁厚が不均一になっている。シール部32は、軸線xを中心とする環状部34と、複数の突出部35と、シールリップ36とを有している。環状部34、突出部35及びシールリップ36は一体に形成されている。
環状部34は、突出部35が設けられていない部分、つまり、隣接する突出部35、35の間に外周面34aを有する。環状部34の外周面34aは、図2に示すように、軸線x方向で下側の下端縁34cから上側の上端縁34bに向かうにつれて軸線xに向かって近づくように傾斜している。したがって、シール部32は、突出部35の分だけ径方向の肉厚が厚い厚肉部と、環状部34だけの肉厚の薄肉部とを有している。
突出部35は、図1に示すように、環状部34から径方向外側に突出している部分(厚肉部)であり、シール部32の壁厚を厚くして、周方向において壁厚を不均一にしている部分である。図1においては、4つの突出部35が備えられており、一対の突出部35が直径上で相対するように設けられている。
突出部35は、環状部34の外周から径方向外側に突出しており、隣接する突出部35はそれぞれ互いに等間隔に設けられている。突出部35の外周面35aは、図2に示すように、軸線x方向で下側の下端縁35cから上側の上端縁35bに向かうにつれて軸線xに向かって近づくように傾斜している。
環状部34の上端縁34b及び突出部35の上端縁35bは、軸線x方向において同じ高さ位置にあり、環状部34及び突出部35の上側の端面は互いに面一をなしている。また、環状部34の下端縁35c及び突出部35の下端縁35cも、軸線x方向において同じ高さ位置にある。
突出部35の上端縁35bは、環状部34の上端縁34bよりも径方向外側に位置し、突出部35の下端縁35cは、環状部34の下端縁34cよりも径方向外側に位置しており、また、突出部35の外周面35aと環状部34の外周面34aは、軸線xに対して互いに同じ傾斜角を有している。つまり、各突出部35は、環状部34の突出部35が設けられていない部分(薄肉部)の外周面34aから、軸線xに沿ういずれの高さ位置においても、環状部34から均一に径方向外側に同じ厚さだけ突出している。
また、各突出部35の外周面35aはそれぞれ、図1に示すように、周方向に沿って同じ長さだけ延在している。より具体的には、各突出部35の外周面35aは、軸線x方向における同じ高さ位置において周方向に同じ周長を有している。
さらに、突出部35は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向に拡幅して突出している。突出部35の周方向における幅は、環状部34に接続している部分から、径方向外側に下端縁35cに向かって漸次拡幅しており、突出部35は平面視略扇形状をなしている。
シールリップ36は、図2及び図3に示すように、環状部34の内周面に、軸線xを中心として環状に形成されている。シールリップ36の先端部は、軸線xに向かって突出しており、断面形状が内周側に向かって凸状の楔形を有している。シールリップ36は、環状部34の径方向内側において、後述するように挿入されるバルブステム5に当接する。
(カバー部)
カバー部33は、図2及び図3に示すように、補強環2のフランジ部22の上側を覆う上側カバー部33aと、フランジ部22の下側を覆う下側カバー部33bとを有している。下側カバー部33bは、バルブステムシール1がバルブガイド4に嵌着された際に、下側カバー部33bの下側を臨む面が、バルブガイド4の上側を臨む端面に当接し、バルブガイド4に対するバルブステムシール1の位置決めがなされるように、少なくとも一部において軸線x方向の厚さが設定されていてもよい。
<密封構造>
以下に、図4を用いて、バルブステム5と、バルブガイド4との間の密封を図る密封構造10について説明する。
密封構造10は、図4に示すように、上記のバルブステムシール1と、バルブガイド4とを備えていて、バルブステムシール1が、バルブガイド4のカム側の一端に嵌着されている。
バルブガイド4は、円筒状に形成されている。バルブガイド4は、バルブのバルブステム5が軸線x方向において往復運動自在に挿入される、軸線x方向に沿って延びる貫通孔であるガイド孔41が形成されている。ガイド孔41は、バルブガイド4のカム側の一端と、バルブガイド4のシリンダ側の他端との間に延びており、ガイド孔41の内径はバルブステム5の外径よりも若干大きくなっている。
密封構造10が構成されている状態において、バルブのバルブステム5がシリンダ側からバルブガイド4のガイド孔41に挿入され、バルブステムシール1に挿入されている。バルブステム5は、図示しないカムによって軸線x方向に往復運動する。バルブステムシール1において、シールリップ36の先端部は、バルブステム5の外周面51にバルブステム5が摺動自在に当接している。
また、バルブガイド4のガイド孔41とバルブステム5の外周面51との間には、環状の空間gが形成されており、バルブステム5がバルブガイド4のガイド孔41内を往復運動可能となっている。
バルブガイド4の一端が、補強環2の円筒部21及び弾性体部3の嵌合部31の内側に圧入されると、嵌合部31は、補強環2の円筒部21とバルブガイド4の外周面との間で圧縮されて径方向の力である嵌合力を所定の大きさ発生する。この嵌合力により、バルブステムシール1がバルブガイド4に嵌着されて固定される。嵌合部31の径方向の厚さは、この所定の嵌合力が発生するように所定の厚さに設定されている。
シールリップ36は、その先端部がバルブステム5の外周面51に当接して、潤滑油が供給されるカム側から空間gの密封を図るが、シールリップ36の先端部は、所定量の潤滑油がシールリップ36の先端部から漏れ出て、この漏れ出た潤滑油が空間gに供給されるようになっている。この潤滑油の所定の漏れ量は、空間gに油膜が形成され、バルブステム5がバルブガイド4のガイド孔41に対して円滑に往復運動可能になるような量である。
シール部32の、特に突出部35はこのような適量の潤滑油が、シールリップ36の先端部とバルブステム5の外周面51との間から漏れ出して空間gに供給されるように、バルブステム5に対して所定の大きさの締め付け力を発生する。環状部34の外周には、複数の突出部35が等間隔で設けられており、シール部32に周方向において厚肉部及び薄肉部が交互に配設されている。
図1に示すように、4つの突出部35が互いに周方向に等間隔をおいて設けられており、バルブステム5を直径方向両側から挟み込むので、バルブステムシール1によるバルブステム5の安定的な締め付けが可能になる。また、シール部32は全体として、突出部35によるバルブステム5に対する所定の締め付け力を発生させつつ、突出部35が設けられていない部分において収縮性を発生させ、バルブステム5の往復運動に対する追随性を発揮する。
締め付け力は、バルブステムシール1を使用する車種に応じて、環状部34からの突出部35の径方向外側での突出量、突出部35の周方向での周長及び突出部35同士の周方向での間隔の少なくとも1つによって決定される。
<作用、効果>
以上のような構成を有するバルブステムシール1によれば、シール部32には突出部35、つまり径方向外側に突出することで壁厚を厚くした剛性の高い厚肉部、及びそれ以外の壁厚は薄いが追随性に優れた薄肉部が設けられることになり、例えば、図5に示す従来のバルブステムシール100のように弾性体部102に取り付けられるスプリング103を用いなくても、弾性体部3自体がバルブステム5を所定の締め付け力で締め付けることができる。また、突出部35の数を増やしたり、各突出部35を大きくしたりすることで、バルブステムシール1による締め付け力を簡単に調整することができる。これにより、背圧によるシールリップ36のバルブステム5からの解離を抑制しつつ、カム側からの適量の潤滑油の供給が可能になる。
また、複数の突出部35は互いに周方向に等間隔に設けられているので、バルブステムシール1の取り付けの際、バルブガイド4及びバルブステム5に対して、バルブステムシール1の周方向での取り付け角度を考慮する必要がなく、取り付け作業の手間を軽減することができる。また、バルブステムシール1によるバルブステム5に対する締め付け力も、バルブステム5の外周面51に亘って均等に提供されるので、バルブステム5が偏心して往復運動した場合であっても、バルブステム5に対するシールリップ36の柔軟な追随性を獲得することができ、また、シールリップ36の所定の箇所における過度な応力集中を抑制することができるので、シールリップ36における偏った摩耗を抑制することができる。
また、複数の突出部35はそれぞれ、シール部32の突出部35を備えていない部分の外周面から径方向に同じ距離だけ突出していて、また、複数の突出部35の外周面35aはそれぞれ、周方向において同じ長さだけ延在しているので、バルブステムシール1の各突出部35におけるバルブステム5に対する締め付け力はより均等になり、応力集中の発生をさらに抑制することができる。さらに、バルブステムシール1が取り付けられる車種に応じて、締り付け力の調整も容易になる。
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、突出部35は、複数備えられていればよく、その数量、大きさ、形状は特に限定されない。また、所定の締め付け力を確保することができれば、環状部34の外周面34a及び突出部35の外周面35aは傾斜していなくてもよく、軸線xに対して平行に延びていてもよい。また、突出部35の周方向における幅は、径方向内側から外側に亘って一定であってもよい。
1 バルブステムシール
2 補強環
3 弾性体部
4 バルブガイド
5 バルブステム
10 密封構造
31 嵌合部
32 シール部
34 環状部
34a 外周面
35 突出部
35a 外周面
36 シールリップ
x 軸線

Claims (6)

  1. シリンダとポートとの間を連通及び遮断するバルブのバルブステムと、このバルブステムが往復運動自在に挿入されるバルブガイドとの密封を図り、前記バルブガイドに設けられるバルブステムシールであって、
    軸線を中心とする環状の補強環と、
    前記軸線を中心として前記補強環に取り付けられた弾性体部と、を備え、
    前記弾性体部は、前記補強環と前記バルブガイドの間で押圧される嵌合部と、径方向内で前記バルブステムに当接し、前記軸線を中心とする環状のシール部と、を有し、
    前記シール部は、径方向外側に突出して径方向の肉厚が厚い厚肉部を形成する突出部を複数有することを特徴とするバルブステムシール。
  2. 前記複数の突出部の各々は、前記シール部の外周面に沿って前記軸線に沿った方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載のバルブステムシール。
  3. 前記複数の突出部は、互いに周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブステムシール。
  4. 前記複数の突出部の各々は、径方向の肉厚が前記軸線方向に亘って等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブステムシール。
  5. 前記複数の突出部の外周に沿った長さが夫々等しいことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のバルブステムシール。
  6. 前記複数の突出部の各々は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向に拡幅していることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のバルブステムシール。
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