<第1の実施の形態>
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート搬送装置を備えた画像形成装置の一例である電子写真方式のフルカラーレーザプリンタの全体構成図である。図1において、100はフルカラーレーザプリンタ、101はフルカラーレーザプリンタ本体(以下、プリンタ本体という)である。この画像形成装置本体であるプリンタ本体101には、シートに画像を形成する画像形成部102、シートを給送するシート給送装置113、シート給送装置113から給送されたシートを搬送するシート搬送装置103等が設けられている。
画像形成部102は、プリンタ本体101に着脱可能に装着されると共に、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー画像を形成するプロセスカートリッジ7(7a,7b,7c,7d)を備えている。なお、このプロセスカートリッジ7は、現像ユニット4(4a,4b,4c,4d)と、トナーユニット5(5a,5b,5c,5d)によって構成されている。現像ユニット4は、像担持体である感光体ドラム1(1a,1b,1c,1d)と、帯電ローラ2(2a,2b,2c,2d)と、ドラムクリーニングブレード8(8a,8b,8c,8d)等を有している。また、現像ユニット4は、現像ローラ40(40a,40b,40c,40d)と、現像剤塗布ローラ41(41a,41b,41c,41d)を有している。
画像形成部102は、プロセスカートリッジ7の上方に配置され、画像情報に基づいてレーザ光を照射し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成するスキャナユニット3を備えている。また、画像形成部102は、プロセスカートリッジ7の下方に配置され、感光体ドラム上の各色トナー像が順次転写される中間転写ベルト112eを備えた中間転写ベルトユニット112を備えている。
この中間転写ベルトユニット112は、矢印Pで示す反時計回りに回転する中間転写ベルト112eの他、中間転写ベルト112eの内側に配設された1次転写ローラ112a,112b,112c,112dを備えている。なお、中間転写ベルト112eは、駆動ローラ112f、2次転写対向ローラ112g及びテンションローラ112hに張架されると共にテンションローラ112hにより矢印n方向に張力がかけられている。
また、1次転写ローラ112a,112b,112c,112dは、各感光体ドラム1に対向して配設されており、不図示の転写バイアス印加装置により転写バイアスが印加される。そして、1次転写ローラ112a,112b,112c,112dによって1次転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の各色トナー像が順次中間転写ベルト112eに転写され、中間転写ベルト上にフルカラー画像が形成される。シート給送装置113は、プリンタ本体101に引き出し可能に装着された給紙カセット111と、給紙カセット111に収納されたシートSを給送するシート給送ローラ9等を有している。
なお、図1において、117はレジストレーションローラ対、116は2次転写対向ローラ112gと共に、中間転写ベルト112eに形成されたフルカラートナー像をシートに転写する2次転写部115を構成する2次転写ローラである。114は2次転写部115によりシート上に転写されたトナー像に熱及び圧力を加えてトナー像を定着させる定着部である。この定着部114は内部に不図示のヒータを内蔵した定着ローラ96aと、定着ローラ96aに圧接する加圧ローラ96bとから成る定着ローラ対96を有している。
118は定着部114においてトナー像が定着されたシートを、プリンタ本体上面の排出シート積載部121に排出するシート排出部である。このシート排出部118は、正逆転可能な排出ローラ対120、スイッチバックローラ対120a、反転搬送路R1等を備えている。そして、シート搬送装置103は、レジストレーションローラ対117、2次転写ローラ116、定着ローラ対96等のローラによりシートSを搬送すると共に、後述するシート検知部143等を備えている。119は、画像形成動作及びシート搬送動作を制御する制御部である。
次に、このように構成されたフルカラーレーザプリンタ100の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号がスキャナユニット3に入力されると、スキャナユニット3から、画像信号に対応したレーザ光が感光体ドラム上に照射される。このとき感光体ドラム1は、帯電ローラ2により表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、スキャナユニット3からレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。
この後、この静電潜像を現像ユニット4により現像し、各プロセスカートリッジ7の感光体ドラム上にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー像を形成する。そして、4色のトナー像を1次転写ローラ112a,112b,112c,112dに印加した1次転写バイアスによって中間転写ベルト上に順次転写することにより、中間転写ベルト上にフルカラートナー像が形成される。なお、トナー像転写後、感光体ドラム表面に残ったトナーは、ドラムクリーニングブレード8によって除去される。
また、このトナー画像形成動作に並行して給紙カセット111に収容されたシートSはシート給送ローラ9により送り出された後、分離ローラ対10によって一枚ずつ分離され、分離されたシートSは、レジストレーションローラ対117に搬送される。次に、シートSは、レジストレーションローラ対117によりタイミングを合わされた後、2次転写部115に搬送される。そして、2次転写部115において、2次転写ローラ116に正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに、中間転写ベルト上のフルカラートナー像が2次転写される。
トナー像が転写された後、シートSは定着部114に搬送され、定着ローラ96aと加圧ローラ96bとによって加熱、加圧されて表面にトナー像が定着される。次に、フルカラートナー像が定着された後、シートSはシート排出部118に設けられた排出ローラ対120によって排出シート積載部121に排出積載される。なお、シートの両面に画像を形成する場合には、排出ローラ対120及びスイッチバックローラ対120aの反転により反転搬送路R1を経て、シートSは再びレジストレーションローラ対117に搬送される。この後、シートSはレジストレーションローラ対117によって2次転写部115に搬送され、第2面に画像形成が行われる。そして、このように第2面に画像が形成されたシートSは、定着部114を通過する際にトナー像が定着され、この後、排出ローラ対120によって排出シート積載部121に積載される。
ところで、図1に示すように、搬送部である定着ローラ対96のシート搬送方向下流には、定着ローラ対96により挟持搬送されるシートSを検知する検知部であるシート検知部143が設けられている。このシート検知部143は、制御部119に接続されており、制御部119は、シート検知部143から発信された信号に基づき定着ローラ対96を通過してきたシートSを検知する。そして、制御部119はシート検知部143から受け取った検知情報に基づいて定着部114のシート搬送方向下流側におけるシートSの搬送制御やジャム(シート詰まり)の報知等を行う。
ここで、シート検知部143は、図2(a),図2(b)に示すように、当接部材(移動部材)11と、不図示の発光部及び受光部とを有し、当接部材11を検知するフォトセンサ30(センサ)とを備えている。当接部材11は、図2(a)に示すように、シート搬送方向と直交する幅方向Wに平行に配置される本体部であるアーム11bと、アーム11bの先端に、アーム11bに対し所定角度θ1を有して傾斜して設けられた当接部(接触部)11aとを備えている。
なお、図2(a)において、98、99はシートガイドであり、定着ローラ対96を通過したシートSは、シートガイド98,99の間を通過する。なお、シートガイド98,99には、開口98a,99aが形成されており、当接部材11の当接部11aは、シートガイド98,99の間を通過するシートSと接触可能に構成され、この開口98a,99a内に挿入されている。また、当接部材11は、軸部である揺動軸11cを介してシートガイド99に設けられた支持部12に支持されている。
ここで、本実施の形態において、アーム11bに設けられた当接部材11の揺動軸11cは、図2(b)に示すように、シートガイド98,99で形成されるシート搬送路Rの法線方向Nに対して所定の傾きθ2を有して配置されている。つまり、当接部材11の揺動軸11cは、幅方向とは平行でない方向となるように配置されている。言い換えると、揺動軸11cは、搬送路に近い部分が遠い部分よりもシートの移動方向の下流側にあるように傾斜している.
そして、当接部材11は、このような状態で配置された移動中心(揺動中心)である揺動軸11cを中心として移動する。また、当接部材11の、揺動軸11cを中心に当接部11aとは反対側の端部には遮光部11dが設けられており、この遮光部11dに対応する位置に、フォトセンサ30が支持部12に支持されている。
そして、当接部材11が、当接部11aがシートSと当接可能な待機位置に位置する非検知状態となっているとき、当接部11aが搬送されるシートSにより押圧されて揺動すると、フォトセンサ30の発光部と受光部との間の光路を遮光部11dが遮光する。これにより、フォトセンサ30がOFFとなる。つまり、当接部材11が非検知状態から検知状態に変移すると、フォトセンサ30がOFFとなる。
また、シートSが通過し、当接部11aに対するシートSによる押圧が解除されると、フォトセンサ30により検知される検知状態となっている当接部材11が元の待機位置に戻る。これにより、遮光部11dがフォトセンサ30の発光部と受光部との間の光路から退避し、フォトセンサ30がONとなる。つまり、当接部材11が検知状態から非検知状態に変移すると、フォトセンサ30がONとなる。このようなフォトセンサ30のOFF及びONに基づき、制御部119は、シートの先端及び後端の通過を判断する。
なお、本実施の形態では、シートガイド98,99は直線的なガイド形状であるが、曲線的なガイド形状においても、シート検知部143によりシートの先端と後端を検知することが可能である。ここで、曲線的な形状のシートガイド98,99によりシート搬送路Rが曲線となる場合、シート搬送路Rの法線方向Nとは、当接部材11の当接部11aの位置における、シート搬送路Rに対する法線として定義される。
揺動軸11cを保持する支持部12は、図3に示すように本体部12dと、本体部12dと共に揺動軸11cを介して当接部材11を支持する支持部材12a(第1支持部)とを備えている。支持部材12aには、揺動軸11cの一端部が挿入される丸穴12a1が形成され、本体部12d(第2支持部)には、揺動軸11cの他端部が摺動可能(スライド可能)に係止されるスリット形状の摺動部12bが形成されている。
ここで、支持部12に揺動軸11cは、この支持部12により、既述したようにシート搬送路Rの法線方向Nに対して所定の傾きθ2を有して支持される。さらに、本実施の形態において、揺動軸11cは、支持部12により、シート搬送方向に対して所定の傾きθ5を有して支持されると共に、スリット形状の摺動部12bに沿ってシート搬送方向と直交する面に沿って移動自在(スライド移動可能)に支持される。
このように揺動軸11cを支持することにより、当接部材11は揺動軸11cを支点としてX方向及び摺動部12bに沿ってY方向へ移動(揺動)することができる。つまり、本実施の形態においては、支持部12により、当接部材11をX方向及びY方向の2軸方向へ移動可能に支持している。そして、当接部材11を2軸方向へ移動可能とすることにより、当接部11aは図2(b)に示すシートSのシート搬送方向Tとシート搬送路Rの法線方向Nへの独立した移動が可能となる。
なお、図3に示すように、アーム11bと支持部12の本体部12dには、それぞれ引っ掛け形状11e,12cが形成されており、この引っ掛け形状11e,12cには当接部材11を付勢する付勢部材である引張りバネ13が引っ掛けられる。なお、この引張りバネ13は、後述する図4(a)に示すようにシート搬送路Rの法線方向Nに対して所定の角度θSを有するように取り付けられている。そして、この引張りバネ13により引っ張られることにより、当接部材11は揺動軸11cを支点としてX方向及びY方向における待機位置に戻る力が与えられる。
ここで、図2(a)に示すように、シートガイド99には当接部材11のアーム11bが当接する突き当てリブ99bが設けられている。そして、引張りバネ13のバネ力により付勢された当接部材11が揺動軸11cを中心に揺動し、アーム11bが突き当てリブ99bに当接すると、当接部材11は図2(a)に示す、被検知位置である待機位置(第1のポジション)で静止する。この状態のとき当接部11aは、搬送されるシートの先端と当接するようシート搬送路内に進入する。なお、本実施の形態では、フォトセンサ30は定着ローラ対96のローラ幅内に配置されているが、遮光部11dを更に図2(a)のE方向へ延長させ、フォトセンサ30を定着ローラ対96のローラ幅の外側に配置して構成することもできる。
ところで、本実施の形態では、当接部材11は、支持部12により支持された状態のとき、アーム11bがシート搬送方向と直交する幅方向に平行になる。通常、メカロス分を小さくにするためには当接部材11の揺動角度を小さくする必要があり、そのためには従来のセンサではアーム長を長くとる必要が生じ、装置断面方向に大きな動作軌跡面積が必要となる。しかし、本実施の形態では、アーム11bが幅方向に平行に伸びているため、アーム長の長さに関わらず、装置断面方向のシート検知部143が要する動作軌跡は小さく収めることが可能である。このことから、本実施の形態のシート検知部143は、小型化と高スピード化が進むフルカラーレーザプリンタ(画像形成装置)においても搭載可能となる。なお、アーム11bの角度は、幅方向と平行にする必要はなく、アーム11bの角度を調節可能とし、装置構成に応じて幅方向に対して所定範囲内で傾きを持たせても良い。
次に、図4(a)から図5(b)を用いて本実施の形態のシート検知部143の動作について説明する。なお、図4(a)から図4(c)においては、シート検知部143を、図2(a)と同方向から見た斜視図と、図2(b)と同方向の定着ローラ対96の軸方向から見た断面図(D−D断面図)をセットで示している。
シートSがシートガイド98,99の間に設けられたシート搬送路内を搬送されると、シートSの先端(シート搬送方向下流端)がシート搬送路内に突出した当接部材11の当接部11aに当接して当接部11aを押し上げる。このとき、図4(a)に示すように、シート先端は当接部11aに対して直角に当たる。ここで、既述した図2(a)に示すように当接部材11の当接部11aは、アーム11bの伸びる方向に対して、所定角度θ1傾斜している。また、当接部材11の当接部11aはシート搬送方向Tと平行な面と、シート搬送路Rの法線方向Nに平行な面に沿って独立に移動(揺動)可能になっている。
これにより、シートSが当接部11aに対し当接角度90°で当接すると、シートSにより当接部11aには、シート搬送方向に沿って力が加わる。言い換えれば、当接部材11には、シート搬送方向に対して垂直な方向の力が加わる。これにより、当接部材11は、図3に示すX方向に揺動を始める。なお、引張りバネ13は図4(a)に示すように、シート搬送路Rの法線方向Nに対してθsの角度にて係止されている。そして、この引張りバネ13により、当接部材11が待機位置にあるとき、図3に示す当接部材11の揺動軸11cは、摺動部12bの一端12b1側に寄せられた状態で保持される。この状態で、シート先端が当接部11aに当たり、シートSにより押圧されると、当接部材11は第1の移動中心(揺動中心)となる位置に保持された揺動軸11cを中心に図4(b)に示すように矢印G方向に揺動を開始する。なお、この第1の移動中心は、シート幅方向に平行でない方向に延びていて、搬送されるシートの面に平行な仮想面と交差する。
更にシートSが搬送されると、当接部材11は、揺動軸11cを中心に矢印G方向に揺動を続ける。なお、本実施の形態では、既述した図2(b)に示すように、揺動軸11cは、シート搬送路Rの法線方向Nに対して角度θ2傾斜している。また、揺動軸11cは、図3に示すように、摺動部12bに沿って、矢印Yで示す範囲内で傾斜している。このため、当接部材11の揺動軌跡は、当接部11aがシート搬送路Rから退避する方向の軌跡となる。さらに、既述した図2(a)に示すように当接部材11の当接部11aはアーム11bに対してθ1傾斜しているため、当接部材11が揺動すると、シートSの当接角度θ3が90度から鋭角へと変化する。
そして、この後、更にシートSが搬送されると、シートSの先端が、図4(c)に示すように当接部材11の当接部11aを通過し、このようにシート先端が当接部11aを通過すると、シートSによる押圧が解除される。これにより、当接部材11は引張りバネ13により、当接部11aの先端をシートSに接触させた状態のまま図5(a)のI方向へ揺動し、シートガイド99に設けられた突き当てリブ99bに突き当たり、停止する。なお、図4(c)における当接部11aの位置を第2のポジションとする。すなわち、当接部11aは、シートの先端から受ける押圧力によって第1のポジションから、シートの先端との接触が解かれる第2のポジションに移動する。
このように、シートSが当接部材11の当接部11aを通過すると、当接部材11は突き当てリブ99bに突き当たり、待機位置の側方に移動する。つまり、本実施の形態においては、シートの後端が通過するまでに、言い換えればシート搬送中に、当接部材11を待機位置の近くまで戻すようにしている。
なお、当接部11aの先端をシートSに接触させた状態のまま当接部材11が揺動する際、当接部材11は丸穴12a1を支点として、引張りバネ13の付勢力に抗しながら支持部12のスリット形状の摺動部12bに沿ってY1方向へ揺動(移動)する。これにより、揺動軸11cは、当接部11aの先端をシートSに接触させた状態のまま当接部材11が揺動する際の第2の移動中心(揺動中心)となる位置に移動する。なお、この第2の移動中心は、シート幅方向に平行でない方向に延びていて、搬送されるシートの面に平行な仮想面と交差する。また、この後、シートSの後端(シート搬送方向上流端)が通過するまでは、当接部材11の当接部11aは、シートSを当接角度90°で押圧した状態となる。この図5(a)の当接部11aが停止した位置を第3のポジションとする。すなわち、第3のポジションは、当接部11aが第2のポジションよりもシートの移動方向(搬送方向)と反対方向に移動したポジションである。
これにより、この後、シートSの後端が通過すると、その直後に引張りバネ13の反力により、図5(b)に示すように当接部材11がJ方向へ揺動し、当接部11aがシート搬送路Rに進入する待機位置(第1のポジション)に復帰する。
このように、本実施の形態では、1枚のシート搬送中に、当接部材11をシート搬送方向Tにおける待機位置(第1のポジション)の近くの第3のポジションで待機させる。これにより、シート後端が通過した直後にシート搬送路Rの法線方向N(J方向)への移動のみで待機位置(第1のポジション)に復帰し、後続シートS1の受け入れ準備が完了する。このように構成した場合、後続シートS1の受け入れ準備が完了するまでのメカロスは、図5(b)に示すように、当接部材11のシート搬送方向の厚みD1と、当接部11aがJ方向へ移動して紙間検知に要する時間分の距離D2だけとなる。この結果、メカロスを大幅に縮小することができる。また、部品点数についても、本実施の形態では当接部材11と、引張りバネ13の部品だけであり、シンプルでコストアップの少ない構成となっている。
なお、本実施の形態では、一つの引張りバネ13で2方向(シート搬送方向Tとシート搬送路Rの法線方向N)への力を作用させている。このため、図6に示すように、引張りバネ13の掛け角度をθs、バネ力をf、シートSと当接部11aの動摩擦係数をμ1、アーム11bと突き当てリブ99bの動摩擦係数をμ2とすると、θsは以下の関係が成り立つように設定する必要がある。
即ち、シート搬送方向Tに作用する力の関係として次のような関係が成り立つように設定する必要がある。
fsinθs>fμ1cosθs
つまり、シート搬送方向Tにおいては、当接部材11がシート搬送方向上流側へ戻る力は引張りバネ13による復帰力fsinθsで表され、シートSと当接部11aのシート搬送方向下流側への摩擦力fμ1cosθsよりも大きい必要がある。
また、シート搬送路Rの法線方向Nに作用する力の関係として次のような関係が成り立つように設定する必要がある。
fcosθs>fμ2sinθs
つまり、シート搬送路Rの法線方向Nにおいては、当接部材11がシート搬送路Rの方向Nへ戻る力は、引張りバネ13による復帰力fcosθsで示される。そして、この復帰力fcosθsは、当接部材11が突き当てリブ99bとの間で発生する摩擦力fμ2sinθsよりも大きい必要がある。
以上の2つの関係式からバネに設置角度θsは次の関係式を満たすように設定する必要がある。
μ1<tanθs<1/μ2
例えば、μ1を0.4、μ2を0.3とすると、バネの設置角度θsは22°<θs<73°となる。なお、この場合、揺動軸11cの摺動摩擦力と当接部材11の自重は上記の力に対して無視できるほど小さいとして計算している。また、本実施の形態では、直線状のシート搬送路を想定しているため上記の力の関係式となるが、シート搬送路が曲線状になる場合は、曲線による力の関係を考慮に入れた計算をしてθsを設定する必要がある。
次に、本実施の形態における当接部材11の揺動軸11cの傾斜角度θ2について説明する。既述した図2(b)に示すように、揺動軸11cはシート搬送路Rの法線方向Nに対して角度θ2だけ傾いている。この傾斜角度θ2は、当接部材11の当接部11aのシート搬送路Rから退避する方向への移動を当接部材11の揺動によって行うことで、動作安定性を確保することを目的としており、適切な角度に設定する必要がある。
例えば、揺動軸11cの傾斜角度θ2を0°に近づけると、既述した図4の(b)に示すG方向も0°に近くなる。この場合、当接部材11の当接部11aがシートSの搬送を妨げない位置に移動するまでに揺動する角度が大きくなり、図6に示す動作軌跡量Mが大きくなってしまう。一方、揺動軸の傾斜角度θ2が90°に近くなると、少ない揺動角度でも当接部材11の当接部11aがシートSの搬送を妨げない位置に移動するので動作軌跡量Mは小さくなる。しかし、この場合、シートSによって当接部11aが押圧された時に、図4(b)に示すG方向(揺動方向)へ働く分力が小さく、当接部材11を揺動させるのに必要な力が大きくなる。これにより、シートS先端に打痕が生じたり、また当接部材11が破損したりすることも考えられる。
次に、本実施の形態における当接部材11の揺動軸11cの動作軌跡量Mと回転方向への分力成分FGが両立する傾斜角度θ2について、図7(a)及び図7(b)を用いて説明する。図7(a)の左側の縦軸は、本実施の形態の当接部材11のシート搬送方向の動作軌跡量Mを示し、右側の縦軸は、当接部材11の当接部11aがシートにより押圧される際に働くG方向への分力成分FGを示す。図7(a)の横軸は、本実施の形態の当接部材11の揺動軸11cの、法線方向Nに対する傾斜角度θ2を示す。
図7(b)は、動作軌跡量M、揺動軸11c方向への分力成分FGの力の関係を示した図である。当接部材11の当接部11aのシート搬送路への突出量をD3、揺動軸11cの傾斜角度をθ2とすると、動作軌跡量Mと揺動軸11c方向への分力成分FGは以下の関係で示される。
動作軌跡量M=D3/tanθ2
揺動軸11c方向への分力成分FG=cosθ2
そして、D3を2mmとし、各傾斜角における動作軌跡量Mと揺動軸11c方向への分力成分FGをプロットしたものが図7(a)である。動作軌跡量Mは下に凸の関数となっており、特に傾斜角度θ2が小さい領域(例えば20°以下)では急激に大きくなり、傾斜角度が大きい領域(例えば80°以上)ではほとんどゼロに近くなる。一方で揺動軸11c方向への分力成分FGも揺動軸の傾斜角度θ2が増加するにつれて、分力成分は小さくなっていくものの、動作軌跡量Mとは異なり、上に凸の関数となっている。
本実施の形態においては、当接部材11については、小型化の進む装置本体に収まるように動作軌跡量Mをなるべく小さく抑えつつ、更にシート先端へのダメージ無くセンサをスムーズに動作させるため分力成分FGをなるべく大きくしておく必要がある。この観点から、図7の(a)において、動作軌跡量Mと分力成分FGの差が最も大きい角度範囲であり、さらに分力成分FGが50%以上確保されている30°〜50°を当接部材11の揺動軸11cの傾斜角度θ2の推奨範囲とすることが好ましい。なお、図7の(a)に示す分力成分FGと、動作軌跡量Mとのグラフを描く上で、シートS先端と当接部材11の当接部11aとの摩擦力は無視できるほど小さいとして計算している。
次に、本実施の形態における当接部材11の検知方法について説明する。図8(a)は、当接部材11の遮光部11dにより、フォトセンサ30の光軸が遮光された状態を示している。この後、搬送されるシートSにより当接部材11が押し上げられると、図8(b)に示すように遮光部11dは、右下方向である矢印P方向へ移動し、遮光部11dはフォトセンサ30の光軸領域30aから退避する。これにより、フォトセンサ30は遮光状態から透過状態に切り替わり、制御部119はフォトセンサ30からの信号の変化に基づきシートの通過を検知する。
この後、シート先端が通過し、当接部材11が既述した図5(a)に示すようにI方向へ揺動すると、遮光部11dは図8(c)に示すように上方向である矢印Q方向へ移動してフォトセンサ30の側方に移動し、シートSが通過するまでその位置を保つ。この状態においても遮光部11dは光軸領域30aに対して退避した位置にあるため、フォトセンサ30としては透過の信号を出力しており、制御部119はシートの通過を検知した状態を維持している。
シート後端が当接部材11を通過すると、当接部材11は揺動軸11cを中心として揺動し、図8(a)の位置へ戻る。また、この当接部材11の揺動により、遮光部11dは図8(a)に示す水平方向左側となる矢印K方向へ移動してフォトセンサ30の光軸領域30aを遮光し、制御部119はシートの通過を検知する。このように遮光部11dはフォトセンサ30に対して、2つの方向(P方向、K方向)から光軸領域30aに進退して遮光/透過に切り替えることで、シートSの先端と後端を検知している。言い換えると、当接部11aが第1のポジションにある時のフォトセンサ30の信号と、当接部11aが第2のポジション及び第3のポジションにある時のフォトセンサ30の信号と、が異なる。
以上説明したように、本実施の形態においては、当接部材11を、搬送されるシートにより当接部11aが押圧されると、シート搬送方向及びシート搬送方向の法線方向に沿って移動させながら検知状態に変移させるようにしている。また、シートによる押圧が解除されると、当接部材11を、シート表面に沿ってシート搬送方向と逆方向に移動して待機位置の近くまで戻すようにしている。そして、シートが通過すると、当接部材11を、当接部11aが搬送されるシートと当接する位置となる待機位置に戻るようにしている。このように、当接部材11を、シートによる押圧が解除されると、待機位置の近くまで戻すことにより、小サイズ、低コストでシートが通過してから当接部材11が非検知位置に戻るまでの時間を短くすることができる。
<変形例>
なお、本実施の形態においては、摺動部12bはスリット形状としたが、図9に示すように、スリット形状ではない、一端12b1が無い形状でもよい。以下では図9乃至図11(b)を用いて、摺動部12bをスリット形状としない構成を変形例として示す。なお、図10(a)乃至図11(b)においては、変形例のシート検知部143Aを、斜視図と、定着ローラ対96の軸方向から見た断面図(D−D断面図及びE−E断面図)と、のセットで示している。
図10(a)は当接部材11が待機位置(第1のポジション)にある状態を示す。シートSが当接部11aに当接すると、当接部材11は、待機位置から、まず図9に示すZ方向に、軸11cが摺動部12bから離れるように揺動する。すなわち、当接部材11は図10(b)に示すように矢印V方向に揺動する。その後、軸11cが丸穴12a1に対して傾くことで、軸11cと丸穴12a1との間の隙間が詰まり、軸11cが丸穴12a1の側壁により係止された後に、図9に示すX方向に揺動を始める。
すなわち、当接部材11は図11(a)に示すように矢印G´方向に揺動する。そして、シート先端が当接部11aを通過すると、シートSによる押圧が解除される。当接部材11は引張りバネ13により、当接部11aの先端をシートSに接触させた状態のまま図11(b)のI方向へ揺動し、シートガイド99に設けられた突き当てリブ99bに突き当たり、停止する。このとき、当接部材11は、軸11cが摺動部12bに当接するように図9に示すZ方向に揺動するとともに、摺動部12bに沿って図9に示すY方向に揺動する。この後、シートSの後端が通過した際の動きは、前述の実施形態と同様である。なお、当接部11aは、図11(a)において第2のポジションに位置し、図11(b)において第3のポジションに位置している。
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図12は、本実施の形態に係るシート搬送装置に設けられたシート検知部142B(検知部)の構成を説明する図である。なお、図12において、既述した図2(a)と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
図12において、60は当接部材であり、この当接部材60は、シートと当接する当接部を構成する当接部60aと、本体部であるアーム部材60bと、の2つの部品から構成されている。アーム部材60bはシート搬送路Rの法線方向Nに対して平行な第1の軸である揺動軸60cを支点として支持部12に、シート搬送路Rに対して平行な面に沿って揺動可能に支持されている。また、当接部60aはシート搬送方向Tと平行な第2の軸である回動軸60dによってアーム部材60bに、シート搬送路Rに対して直交する面に沿って回動可能に支持されている。
ここで、揺動軸60cと回動軸60dは定着ローラ対96の軸方向から見て直交する位置関係となっており、このような位置関係により、揺動軸60cと回動軸60dは、回動及び揺動動作をそれぞれ独立に行うことができる。なお、本実施の形態では揺動軸60cはシート搬送路Rの法線方向Nに平行、回動軸60dはシート搬送方向Tに平行としたが、これに限定されることではなく、これら揺動軸60c及び回動軸60dの角度関係は装置構成に応じて決定しても良い。
当接部60aは、アーム部材60bに対してトーションバネ61により、常にY方向に付勢されると共に、アーム部材60bに設けられた不図示のストッパに突き当たって位置決めされる。また、アーム部材60bは引張りバネ62により常にZ方向に付勢されており、シートガイド80に立設されたリブ80aに突き当たって位置決めされる。
図12において、60a1は、当接部60aが揺動する軌跡において、シートSと接触する当接面であり、この当接面60a1は、後述する図13(a)に示すように、幅方向Wに対してθ4傾斜している。60eは、当接部60aの底面に設けられた遮光部である。80、81はシートガイドであり、定着ローラ対を通過したシートは、シートガイド80,81の間を通過する。なお、シートガイド80,81には、開口80c,81cが形成されており、当接部60aは、シートガイド80,81の間を通過するシートSと接触するよう、この開口80c,81c内に挿入されている。
また、シートガイド80には支持板80bが立設されており、この支持板80bにフォトセンサ31が取り付けられている。そして、フォトセンサ31の発光部と受光部との間の光路が当接部60aの底面に設けられた遮光部60eにより遮光されると、フォトセンサ31からの信号がONからOFFに変わり、これにより制御部119はシートSの通過を検知する。
次に、図13(a)乃至図13(c)を用いて本実施の形態のシート検知部143Bの動作について説明する。なお、図13(a)乃至図13(c)は、シート検知部143Bを図12と同方向から見た斜視図と、定着ローラ対96の軸方向から見た断面図(H−H断面図)をセットで示している。シートが搬送されて当接するまでは、当接部60aは、図13(a)に示すように、シート搬送方向Tに対して直角にシート搬送路R内に突出した状態でシートSを待ち受けている。このとき、当接部60aは、待機位置(第1のポジション)に位置している。
シートSが搬送されてくると、図13(b)に示すように、シート先端が当接部60aに当接し、シートSの搬送力F1により、当接部60aをシート搬送方向下流方向へ押圧する。これにより、当接部60a及びアーム部材60bは一体的に、すなわち当接部材60は揺動軸60cを中心に−Z方向、すなわちシート搬送方向に対して平行な面に沿ってシート搬送方向下流側に揺動する。
ここで、既述したように当接部60aが揺動する軌跡において、シートSと接触する当接面60a1は幅方向Wに対して傾斜している。そして、このように当接面60a1が傾斜角度(例えば角度θ4)を有することで、当接部材60の揺動軸60cを中心とした−Z方向への揺動角度の増加に伴い、シート先端が当接面60a1を押圧する。これにより、図13(b)示すように当接部60aを、回動軸60dを支点として−Y方向、すなわちシート搬送方向と直交する方向へ回動させる分力P2が生じる。
そして、シートSが更に搬送されると、この分力P2により、図13(c)に示すように当接部60aは回動軸60dを支点として−Y方向へ回動し、シート搬送路Rから退避する。この時、当接部60aは、第2のポジションに位置している。そして、シートSの先端が通過すると、図14(a)に示すように当接部材60は引張りバネ62のバネ力により、Z方向へ回動し、突き当てリブ80aに突き当たり、待機位置の側方で停止する。つまり、本実施の形態においても、シートの後端が通過するまでに、言い換えればシート搬送中に、当接部材60を待機位置の近くまで戻すようにしている。この際、シートSは搬送中であるため、当接部60aはアーム部材60bに対して所定角度回転し、搬送中のシートSをトーションバネ61のバネ力で押圧した状態のままの状態で待機する。この時、当接部60aは、第3のポジションに位置している。
次に、シートSが搬送されてシートSの後端が当接部材60を通過すると、当接部60aのみが、トーションバネ61にバネ力により回動軸60dを中心としてY方向へ回動し、図14(b)に示す待機位置へ戻る。この際、既述した第1の実施の形態と同様、メカロスは当接部材60の板厚分と当接部60aが紙間検知に要する時間分の距離だけとなり、紙間を大幅に小さくすることが可能となる。
次に、当接部材60の検知方法について説明する。当接部材60が待機位置に位置するときは、図13(a)に示すように、当接部60aの遮光部60eによりフォトセンサ31の光軸31aを遮光している。この際、当接部60aはシートSに対して垂直方向に伸びており、シートSの先端が当接する際に当接部60aが受ける力は、シート搬送方向と同方向となる。
次に、図13(b)に示すように、シート先端により当接部60aが押圧されて押し上げられると、遮光部60eがフォトセンサ31の光軸31aから退避し、これによりフォトセンサ31がONとなり、制御部119はシートの通過を検知する。また、シートが搬送されているときは、図13(c)に示すように、遮光部60eはフォトセンサ31の光軸31aから大きく退避した位置で動作しており、フォトセンサ31は、シートが通過していることを検知している状態(ON状態)を維持している。
シート先端が通過した後の、シート搬送中は、図14(a)に示すように当接部材60はシート搬送方向においては待機位置と同レベルまで戻り、シート搬送経路からは退避した位置で待機している。この状態においても、遮光部60eはフォトセンサ31の光軸31aから退避しているため、フォトセンサ31のシート検知状態は維持されている。つまり、本実施の形態の当接部材60は、フォトセンサ31の光軸を通過する方向がシートの先端検知と後端検知で異なるため、2方向にてシート先端と後端を検知する。そして、シートSの後端が通過した直後は図14(b)に示すようには当接部60aが待機位置に戻ることで遮光部60eは再びフォトセンサ31の光軸31aを遮光する。これにより、フォトセンサ31がOFFとなり、制御部119はシートが通過したことを検知する。
以上説明したように、本実施の形態においては、搬送されるシートにより当接部60aが押圧されると、当接部60aをシート搬送方向と直交する面に沿って移動させるようにしている。また、シートによる押圧が解除されると、当接部60aをシート表面に沿ってシート搬送方向と逆方向に移動し、シートが通過すると当接部60aを搬送されるシートと当接する位置に戻すようにしている。
つまり、当接部材60を、搬送されるシートにより当接部60aが押圧されると、当接部60aをシート搬送方向と直交する面に沿った方向に移動させながらシート搬送方向に沿って推移させるようにしている。また、当接部材60を、シートによる押圧が解除されると、シート表面に沿ってシート搬送方向と逆方向に移動し、シートが通過すると、当接部60aが搬送されるシートと当接する位置となる待機位置に戻すようにしている。これにより、既述した第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図15は、本実施の形態に係るシート搬送装置に設けられたシート検知部143C(検知部)の構成を説明する図である。なお、図15において、既述した図2(a)と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
図15において、70は当接部材であり、軸部である揺動軸70cを介してシートガイド199に設けられた支持部71に支持されている。当接部材70の端部には遮光部70dが設けられており、シートガイド199には、この遮光部70dに対応する位置にフォトセンサ32が支持されている。
本実施の形態における当接部材70の検知方法について、図16(a)乃至図18(c)を用いて説明する。なお、図16(a)乃至図17(c)においては、本実施の形態のシート検知部143Cを、斜視図と、定着ローラ対96の軸方向から見た断面図(F−F断面図)をセットで示している。また、図18(a)及び図18(b)は、それぞれ図17(b)及び図17(c)の定着ローラ対96の軸方向から見た断面図(D−D断面図)である。本実施の形態においては、第1実施の形態とは異なり、制御部119は、フォトセンサ32がOFFのときにシートが通過中であると、フォトセンサ32がONのときにはシートが無いと判断する。
図16(a)は、当接部70aがシートSと当接する待機位置(第1のポジション)に位置している状態(非検知状態)を示している。この状態において、遮光部70dは、フォトセンサ32を遮光していない。すなわち、フォトセンサ32はONであり、制御部119はシートが無いと判断している。
この後、搬送されるシートSにより当接部材70が押し上げられると、遮光部70dは、図16(b)に示す矢印P方向へ移動する。この状態において、遮光部70dは光軸領域32aに対して退避した位置にあるため、フォトセンサ32はONのままであり、制御部119はまだシートの通過を検知していない。この時、当接部70aは、第2のポジションに位置している。
次に、図16(c)に示すように、シートS先端が当接部材70の当接部70aを通過し、当接部材70が待機位置の側方に移動すると、遮光部70dは矢印Q方向へ移動してフォトセンサ32の光軸領域32aに侵入する。これにより、フォトセンサ32はONからOFFに切り替わり、制御部119はフォトセンサ32からの信号の変化に基づきシートS先端の通過を検知する。この時、当接部70aは、第3のポジションに位置している。
続いて、図17(a)に示すように、シートS後端が当接部材70を通過すると、当接部材70は揺動軸70cを中心として揺動し、待機位置へ戻る。また、この当接部材70の揺動により、遮光部70dは矢印K方向へ移動し、フォトセンサ32の光軸領域32aから退避する。これにより、フォトセンサ32はOFFからONに切り替わり、制御部119はフォトセンサ32からの信号の変化に基づきシートS後端の通過が終了したことを検知する。
ここで、図17(b)及び図18(a)に示すような、シートS後端が当接部材70を通過し、当接部材70が待機位置へ戻りきる前に後続シートS1が当接部材70と当接した状態について説明する。シートS後端が当接部材70を通過してから、後続シートS1が当接部材70と当接するまでの時間が、遮光部70dがフォトセンサ32の光軸領域32aから退避する時間よりも短いと、フォトセンサ32はOFFからONに切り替わらない。したがって、制御部119は図17(b)のタイミングではシートS後端の通過が終了したことを検知していない。
この後、搬送される後続シートS1により当接部材70が押し上げられた状態を示す図が、図17(c)及び図18(b)である。シートS1が当接部材70に対し当接角度90°で押圧することにより、シートS1は図4(b)に示すように当接部材70を矢印G方向に揺動させようとする。一方で、引張りバネ13は、図5(b)に示すように当接部材70を矢印J方向へ揺動させようとする。以上のシートS1及び引張りバネ13から加わる力により、当接部材70は、矢印G方向に動かそうとする力と矢印J方向に動かそうとする力の合力の向きである、図18(b)に示すような矢印L方向に揺動する。それに伴い、遮光部70dは図17(c)に示すように矢印U方向へ移動し、フォトセンサ32の光軸領域32aから退避する。これにより、フォトセンサ32はOFFからONに切り替わり、制御部119はフォトセンサ32からの信号の変化に基づきシートS後端の通過が終了したことを検知する。
このように、本実施の形態においては、シートS後端が通過した後に、当接部70aが待機位置に戻りきらないうちに後続シートS1に押圧された場合でも、シートSの通過の終了を検知できる。第1の実施の形態では、シートS後端が通過した後に、後続シートS1の受け入れ準備が完了するまでのメカロスは、図5(b)に示すように、当接部材11の厚みD1と、当接部11aがJ方向へ移動して紙間検知に要する時間分の距離D2との和であった。本実施の形態においてのメカロスは、図18(c)に示すように、当接部材70のシート搬送方向の厚みD1と、当接部70aがJ方向へ移動して、後続シートS1が当接部70aを押圧したときに当接角度90°で押圧する位置に移動する距離D3との和である。
厚みD1は、図16(c)の状態でシートSがシート搬送路Rの法線方向Nに位置がずれた際にもフォトセンサの出力が切り替わらないようにするため、一定のマージンを確保しておく必要がある。距離D3は、図18(c)に示すように、当接部70aがJ方向へ、当接部70aの先端半径D4とシートの厚みtとの和だけの移動に要する時間分の距離であり、図5(b)に示す距離D2よりも短い。したがって、本実施の形態では、第1の実施の形態よりもメカロスを縮小することができる。なお、本実施形態の当接部材70は、第1実施の形態と同等の形態としたが、第2実施の形態と同等の形態でもよい。
<第4の実施の形態>
ところで、シート搬送装置に用いられるフォトセンサは、熱に弱いという性質を持っている。定着ローラ対から発せられる熱により、シートガイド近傍の温度がフォトセンサの耐熱温度より高くなってしまう場合には、これまで説明した第1乃至第3の実施の形態のような、フォトセンサをシートガイド近傍に配置する構成にはできない。図19は、そのような場合でも本発明の効果が得られる構成である、本発明の第4の実施の形態に係るシート搬送装置に設けられたシート検知部143Dの構成を説明する図である。なお、図19において、既述した図2(a)と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
図19において、280はシート搬送方向と直交する幅方向Wに垂直に配置された側板であり、定着ローラ96aと加圧ローラ96bを回転自在に支持している。フォトセンサ33は、側板280を挟んで定着ローラ対96と反対側に配置されており、側板280によって定着ローラ対96から発生する熱から保護された、耐熱温度以下の環境に配置されている。フォトセンサ33は、側板280に取りつけられたセンサ支持部材281によって支持されている。
以上のように、フォトセンサ33が側板280を挟んで定着ローラ対96と反対側に配置されている場合、フォトセンサを遮光可能な遮光部が第1乃至第3の実施の形態のように当接部材と一体形状であると、当接部材が幅方向Wに長くなってしまう。これは、当接部材の一端の当接部がローラ幅中央に、他端の遮光部がローラ幅の外側にある側板280を挟んだ、当接部と反対側に配置されることになるためである。したがって、当接部材の、シート検知の際の動作軌跡が大きくなってしまい、プリンタ本体の小型化が困難になってしまう。また、それに伴い、側板280を当接部材の動きに合わせて切り欠かなくてはならなくなる。その結果、定着ニップで発生した熱が側板を挟んだフォトセンサ側に伝わりやすくなり、フォトセンサ近傍の環境の温度が高くなってしまい、フォトセンサ33の耐熱温度を超えてしまう可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、図19に示すように、当接部材270を、揺動部材271と、遮光部材272と、に二体化している。当接部材270は、当接部271a、アーム271b、揺動軸271c及びジョイント部271dから構成され、遮光部材272は、遮光部272a、回転軸272b及びジョイント部272cから構成される。
揺動部材271は、シート搬送方向と直交する幅方向Wに平行に配置されるアーム271bと、アーム271bの先端に設けられた当接部271aと、を備えている。また、揺動部材271は、軸部である揺動軸271cを介してシートガイド299に設けられた支持部273に支持されている。
遮光部材272は、シート搬送方向と直交する幅方向Wに平行に延出する回転軸272bと、回転軸272bの先端で、フォトセンサ33に対応する位置に設けられた遮光部272aとを備えている。
揺動部材271と遮光部材272とは、それぞれのジョイント部271d,272cからなるジョイント276で接触している。遮光部材272にはねじりバネ275が取りつけられており、遮光部材272を、揺動部材271に向かって付勢している。したがって、遮光部材272は揺動部材271の動きに追従して、回転軸272b回りに回転する。つまり、シートSの搬送に応じて2軸方向に移動している揺動部材271の動きを、ジョイント276を介すことにより、遮光部材272の、回転軸272b中心の回転の動きに変換している。
本実施の形態における当接部材270の検知方法について、図20(a)乃至図21(b)を用いて説明する。なお、図20(a)乃至図21(b)においては、本実施の形態のシート検知部143Dを、斜視図と、定着ローラ対96の軸方向から見た断面図(B−B断面図及びC−C断面図)をセットで示している。本実施の形態においては、第3の実施の形態と同様、制御部119は、フォトセンサ33がOFFのときにシートが通過中であると、フォトセンサ33がONのときにはシートが無いと判断する。
図20(a)は、当接部271aがシートSと当接する待機位置に位置している状態(非検知状態)を示している。この状態において、遮光部272aは、フォトセンサ33を遮光していない。すなわち、フォトセンサ33はONであり、制御部119はシートが無いと判断している。
この状態で、シート先端が当接部271aに当たり、搬送されるシートSにより押圧されると、図20(b)に示すように、揺動部材271は第1の移動中心(揺動中心)となる位置に保持された揺動軸271cを中心に矢印G方向に揺動する。この揺動により、揺動部材271のジョイント部271dが矢印G方向に移動するが、揺動部材271の矢印G方向の揺動によって遮光部材272は回転しない。これは、ジョイント部272cの揺動部材271との当接面は、矢印G方向及びシート搬送方向と直交する幅方向Wと平行な面であるため、揺動部材271のジョイント部271dは遮光部材272のジョイント部272c上を移動するだけだからである。したがって、この状態において、遮光部272aは光軸領域33aに対して退避した位置にあるため、フォトセンサ33はONであり、制御部119はまだシートの通過を検知していない。
そして、シートSの先端が、揺動部材271の当接部271aを通過すると、当接部271aへのシートSによる押圧が解除される。この時、当接部271aは、第2のポジションに位置している。ここで、図19に示すように、アーム271bと支持部273には、それぞれ引っ掛け形状271e,273aが形成されており、この引っ掛け形状271e,273aには揺動部材271を付勢する付勢部材である引張りバネ274が引っ掛けられている。また、シートガイド299には揺動部材271のアーム271bが当接する突き当てリブ299bが設けられている。
これにより、図21(a)に示すように、揺動部材271は引張りバネ274により、当接部271aの先端をシートSに接触させた状態のまま揺動軸271cを中心として矢印I方向へ揺動する。そして、揺動部材271は、シートガイド299に設けられた突き当てリブ299bに突き当たり、停止する。この時、当接部271aは、第3のポジションに位置している。
ここで、ジョイント276において、揺動部材271のジョイント部271dは、引張りバネ274から受ける力により遮光部材272のジョイント部272cを押圧して回転軸272bを中心として矢印α方向へ回転させようとする。このジョイント部271dによる矢印α方向への力は、ねじりバネ275が遮光部材272を−α方向へ回転させようとする力よりも大きくなっている。このとき、遮光部272aはα方向に回転しフォトセンサ33の光軸領域33aに侵入する。これにより、フォトセンサ33はONからOFFに切り替わり、制御部119はフォトセンサ33からの信号の変化に基づきシートの通過を検知する。
その後、シートS後端が揺動部材271を通過すると、図21(b)に示すように、揺動部材271は引張りバネ274により揺動軸271cを中心として矢印J方向へ揺動する。そして、遮光部材272はねじりバネ275により回転軸272bを中心として−α方向へ回転し、待機位置へ戻る。また、この遮光部材272の回転により、遮光部272aも−α方向に回転し、フォトセンサ33の光軸領域33aから退避する。これにより、フォトセンサ33はOFFからONに切り替わり、制御部119はフォトセンサ33からの信号の変化に基づきシートS後端の通過が終了したことを検知する。
このように、本実施の形態においては、フォトセンサ33を、側板280を挟んで定着ローラ対96と反対側に配置し、当接部材270を、揺動部材271と遮光部材272とに二体化した。これにより、当接部材270の、シート検知の際の動作軌跡は、シート幅内に収まっている揺動部材271の動作軌跡と、回転動作をしている遮光部材272の動作軌跡のみとなり、当接部材が一体である場合よりも動作軌跡は小さくなる。このため、プリンタ本体の小型化が容易となる。また、回転軸272bが幅方向Wに平行であり、側板280に対して垂直であることから、側板280の切り欠きは、回転軸272bを貫通するような穴を開けるのみで十分となる。
したがって、側板280の切り欠きを大きくする必要が生じる、当接部材が一体形状である場合と異なり、フォトセンサ33近傍の雰囲気温度を、フォトセンサ33の耐熱温度以下にすることが容易となる。以上により、本実施形態は、定着ローラ対から発せられる熱によってシートガイド近傍の温度がフォトセンサの耐熱温度より高くなってしまう場合においても、既述した第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。なお、本実施の形態の技術を、第1乃至第3の実施の形態に対して組み合わせてもよい。
なお、これまで説明した第1乃至第4の実施の形態では、シート検知部を備えた画像形成装置として、図1に示すフルカラーレーザプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シートSに記録された画像を読み取る図22に示す、画像読取部を有する画像読取装置200にも適用できる。
図22では、原稿トレイ221にセットされた原稿Dを給送ローラ222が給送する。給送された原稿Dを原稿搬送路内で原稿搬送ローラ223,224,225,226が搬送する。原稿搬送ローラ223,224,225,226によって搬送されている最中の原稿Dを、画像読取部としての読取センサ229が読み取って、読み取った原稿Dを原稿排出ローラ227から原稿排出トレイ228上に排出する。原稿Dが搬送される原稿搬送路には、上記第1乃至第4実施の形態と同構成のシート検知部230が設けられ、原稿Dを検知し、原稿Dの検知タイミングに応じて読取センサ229が原稿Dの読取を開始する。
また、これまではシートの先端と後端を検知するシート検知部の当接部材11,60,70,270について説明したが、本発明の構成は、シート検知に限定される必要は無い。例えば、シート搬送における斜行を補正する斜行補正ユニットや、排紙トレイ上の積載紙の満載状態を検知する満載検知ユニット等に用いられる当接部材などに適用しても良い。