JP6698868B2 - 剛性可変装置 - Google Patents

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Description

本発明は、可撓性部材の剛性を変更する剛性可変装置に関する。
例えば、特許文献1は、挿入部の軟性部の剛性を変更し得る内視鏡を開示している。この内視鏡では、可撓性部材(例えばコイルパイプ)の両端部が内視鏡の所定位置に固定されており、この可撓性部材には可撓性調整部材(例えばコイルパイプに挿通された可撓性調整ワイヤ)が分離体を介して固定されている。可撓性部材と可撓性調整部材は、可撓性部材と可撓性調整部材とを装着される可撓性部材である軟性部に沿って軟性部のほぼ全体(全長)にわたって延びており、さらに操作部にまで延びている。可撓性調整部材が引っ張られることによって、可撓性部材が圧縮されて硬くなる。これにより、可撓性部材である軟性部の剛性は軟性部のほぼ全体にわたって変更される。
特開平5−91971号公報
特許文献1では、可撓性部材全体の剛性が変更されてしまい、可撓性部材の全長における可撓性部材の一部位の剛性、言い換えると可撓性部材における所望するエリアの剛性は変更されない。可撓性部材と可撓性調整部材とが可撓性部材に搭載されると、可撓性部材が太くなってしまう。
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、可撓性部材における所望するエリアの剛性を変更でき可撓性部材を細くできる剛性可変装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明の剛性可変装置の一態様は、可撓性部材に装着され、前記可撓性部材に異なる剛性を提供する剛性可変装置であって、第1の長手部材と、前記第1の長手部材に沿って配置される第2の長手部材と、熱を発する性能を有する誘起体とを具備し、前記第1の長手部材は、少なくとも1つの高曲げ剛性部と、高曲げ剛性部の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有する少なくとも1つの低曲げ剛性部とを有し、前記第2の長手部材は、前記誘起体が発生した熱によって第1の相から第2の相相が移り変わる性質を有する形状記憶部材を少なくとも有し、前記形状記憶部材の前記相が前記第1の相にあるときは前記形状記憶部材は低剛性状態を取り、前記形状記憶部材の前記相が前記第2の相にあるときは前記形状記憶部材は前記低剛性状態よりも高い剛性を有する高剛性状態を取り、前記誘起体は、前記低曲げ剛性部の周辺に配置される、前記形状記憶部材の一部位において、前記第1の相と前記第2の相との間で前記形状記憶部材の前記相の移り変わりを引き起こさせて、前記第2の長手部材の長手軸方向における前記第2の長手部材の一部位の剛性を変更させる。
本発明によれば、可撓性部材における所望するエリアの剛性を変更でき可撓性部材を細くできる剛性可変装置を提供できる。
図1Aは、第1の実施形態の剛性可変システムの概略図である。 図1Bは、剛性可変システムに配置される形状記憶部材の一部位が加熱された状態を示す図である。 図1Cは、剛性可変システムの剛性可変装置が組み込まれた内視鏡の斜視図である。 図1Dは、剛性可変装置の関節部が低剛性状態であることを示す図である。 図1Eは、剛性可変装置の関節部が高剛性状態であることを示す図である。 図1Fは、第1の実施形態の変形例を示す図である。 図2Aは、第2の実施形態の剛性可変システムに配置される形状記憶部材の一部位が加熱された状態を示す図である。 図2Bは、加熱された一部位が移動機構によって図2Aに示す状態から移動した状態を示す図である。 図3Aは、第2の実施形態の変形例1を示す図である。 図3Bは、第2の実施形態の変形例2を示す図である。 図3Cは、第2の実施形態の変形例3を示す図である。 図4Aは、第3の実施形態の剛性可変システムの概略図である。 図4Bは、図4Aに示す剛性可変システムに配置される第1の長手部材及び制御装置の概略図である。 図4Cは、図4Aに示す剛性可変システムに配置される第2の長手部材及び移動機構の概略図である。 図5Aは、図4Aに示す剛性可変システムに配置される剛性可変装置が最低剛性状態であることを示す図である。 図5Bは、図5Aに示す剛性可変装置が移動によって低剛性状態に切り替わったことを示す図である。 図5Cは、図5Bに示す剛性可変装置が加熱によって高剛性状態に切り替わったことを示す図である。 図5Dは、図5Cに示す剛性可変装置が移動によって低剛性状態に切り替わったことを示す図である。 図6Aは、第3の実施形態の第2の長手部材の一例を示す図である。 図6Bは、第3の実施形態の第2の長手部材の一例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、一部の図面では図示の明瞭化のために部材の一部の図示を省略する。形状記憶部材41において、高剛性状態(硬質状態)である部位(被加熱部41a)が黒塗りで示されている。
[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1Aと図1Bと図1Cとに示すように、剛性可変システム10は、例えば可撓性部材101に装着される剛性可変装置20と、剛性可変装置20を制御する制御装置80とを有する。
剛性可変装置20は、可撓性部材101に異なる剛性を提供し、可撓性部材101の剛性を変更する。剛性可変装置20は、第1の長手部材30と、第1の長手部材30に沿って配置される第2の長手部材40と、誘起体50とを有する。第2の長手部材40は、第1の長手部材30と隣り合ってもよいし隣接してもよい。例えば、第1の長手部材30は外筒であり、第2の長手部材40は第1の長手部材30の内部に配置された芯部材である。例えば、外筒の長手軸に垂直な外筒の断面形状は環形状であり、芯部材の長手軸に垂直な芯部材の断面の外周は円形状である。この場合、剛性可変装置20は、どの方向の曲がりに対しても安定した曲げ剛性を提供する。外筒の断面形状は、必ずしも環形状である必要はなく、他の形状、例えばC字形状であってもよい。本実施形態では、第1の長手部材30と第2の長手部材40とは、可撓性部材101に位置決め固定される。したがって、第2の長手部材40は、第1の長手部材30に対して、相対的に位置決め固定されることとなる。
第1の長手部材30は、相対的に曲げ剛性が高い少なくとも1つの高曲げ剛性部31と、相対的に曲げ剛性が低い少なくとも1つの低曲げ剛性部33とを有する。つまり高曲げ剛性部31の曲げ剛性は高く、低曲げ剛性部33の曲げ剛性は高曲げ剛性部31の曲げ剛性よりも低くなっている。本実施形態では、例えば、第1の長手部材30は、4つの高曲げ剛性部31と3つの低曲げ剛性部33とを有するものとする。第1の長手部材30は、高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33とを支持する筒状の1つの外側支持部材35をさらに有する。外側支持部材35の曲げ剛性は、高曲げ剛性部31の曲げ剛性よりも低くなっている。外側支持部材35の曲げ剛性は、低曲げ剛性部33の曲げ剛性と同一であってもよいし異なってもよい。このため、第1の長手部材30は、低曲げ剛性部33では比較的曲がりやすく、高曲げ剛性部31では比較的曲がりにくい。
高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33と外側支持部材35とは、互いに対して別体である。高曲げ剛性部31は、例えば、金属製のパイプといった筒部材を有する。低曲げ剛性部33は、例えば、疎巻きコイルといったコイル部材を有する。低曲げ剛性部33のコイル部材は、密着巻きコイルでもよい。外側支持部材35は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材を有する。外側支持部材35のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。低曲げ剛性部33と外側支持部材35とは、例えば、金属製のワイヤ状且つ螺旋状の部材を有してもよい。高曲げ剛性部31は高い曲げ剛性を有する筒状の硬質部であり、低曲げ剛性部33と外側支持部材35とは低い曲げ剛性を有する筒状の軟質部である。
外側支持部材35は、高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33との内側に配置される。外側支持部材35の外周面は、高曲げ剛性部31の内周面に接着固定される。高曲げ剛性部31同士は、第1の長手部材30の長手軸方向において互いに対して所望する間隔離れて配置されている。低曲げ剛性部33は、第1の長手部材30の長手軸方向における高曲げ剛性部31同士の間の各スペースに配置される。したがって、複数の高曲げ剛性部31と複数の低曲げ剛性部33とは、第1の長手部材30の長手軸方向において交互に配置される。言い換えると、低曲げ剛性部33同士は、互いに対して機械的に直接接触しておらず、互いに対して離れて配置される。低曲げ剛性部33同士は、熱的に直接接触していない。低曲げ剛性部33の端部は、端部に隣り合う高曲げ剛性部31の端部に固定される。低曲げ剛性部33の端部は、端部に隣り合う高曲げ剛性部31の端部から離れて配置されてもよい。低曲げ剛性部33は、高曲げ剛性部31同士の間のスペースにおいて、外側支持部材35を巻回している。本実施形態では、1つの低曲げ剛性部33が外側支持部材35を外側支持部材35の全長に渡って巻回するのではなく、1つの低曲げ剛性部33が外側支持部材35の全長における外側支持部材35の一部位を巻回する。以下において、低曲げ剛性部33が巻回する部材の一部位を、被巻回部と称する。本実施形態では、被巻回部は、外側支持部材35の一部位を示す。このように低曲げ剛性部33は、外側支持部材35を部分的に巻回する。言い換えると、低曲げ剛性部33は、低曲げ剛性部33が外側支持部材35の一部位を巻回するように、高曲げ剛性部31によって外側支持部材35に位置決めされる。低曲げ剛性部33の巻きの外径は、高曲げ剛性部31の外径と略同一である。低曲げ剛性部33の巻きは、第1の長手部材30の長手軸に直交する方向において、高曲げ剛性部31に対して突出していないことが好ましい。低曲げ剛性部33の内周面は、外側支持部材35の外周面に接触する。なお低曲げ剛性部33の内周面は、外側支持部材35の外周面から離れてもよい。低曲げ剛性部33の長さは、高曲げ剛性部31の長さと異なっており、例えば高曲げ剛性部31の長さよりも短い。なお低曲げ剛性部33の長さは、高曲げ剛性部31の長さと同一でもよい。
外側支持部材35は、剛性可変装置20の全長に渡って配置される。外側支持部材35は、螺旋状に配置される。例えば、外側支持部材35は、高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33とに対する芯材として機能する。外側支持部材35は、低曲げ剛性部33と高曲げ剛性部31との位置決めを実施するために配置され、第1の長手部材30の組立易さのために配置される。なお、低曲げ剛性部33が高曲げ剛性部31に対して容易に位置決めされるのであれば、外側支持部材35は省略されてもよい。
第2の長手部材40は、剛性可変装置20の全長に渡って配置される。第2の長手部材40は、外側支持部材35の内部に配置される。したがって、外側支持部材35は、第2の長手部材40の径方向において、高曲げ剛性部31及び低曲げ剛性部33と、第2の長手部材40との間に介在する。第2の長手部材40の外周面は外側支持部材35の内周面とは接触しておらず、スペースが外側支持部材35と第2の長手部材40との間に形成される。
第2の長手部材40は、第1の相と第2の相との間で相が熱によって移り変わり得る形状記憶部材41を少なくとも有する。本実施形態では、第2の長手部材40は、形状記憶部材41のみを有する。形状記憶部材41の相が第1の相にあるときは、形状記憶部材41は、外力に従って容易に変形し得る低剛性状態を取り、低い弾性係数を示す。したがって、形状記憶部材41の相が第1の相にあるときは、形状記憶部材41は可撓性部材101に比較的低い剛性を提供する。第1の相において、剛性可変装置20と可撓性部材101とは、例えば、外力によって容易に撓むことが可能となる。また、形状記憶部材41の相が第2の相にあるときは、形状記憶部材41は、低剛性状態よりも高い剛性を有する高剛性状態を取り、高い弾性係数を示す。したがって、形状記憶部材41の相が第2の相にあるときは、形状記憶部材41は、外力に抗してあらかじめ記憶している記憶形状を取る傾向を示す高剛性状態を取り、可撓性部材101に比較的高い剛性を提供する。記憶形状は、例えば直線状であってよい。第2の相において、剛性可変装置20と可撓性部材101とは、例えば、略直線状態を維持可能となる、または外力によって第1の相に比べて緩やかに撓むことが可能となる。
ここにおいて、外力とは、形状記憶部材41を変形させ得る力を意味しており、重力も外力の一部と考える。
形状記憶部材41の曲げ剛性は、形状記憶部材41の相が第1の相のとき、高曲げ剛性部31の曲げ剛性よりも低く、低曲げ剛性部33の曲げ剛性と同一または低い。形状記憶部材41の曲げ剛性は、形状記憶部材41の相が第2の相のとき、高曲げ剛性部31の曲げ剛性と同一または低く、低曲げ剛性部33の曲げ剛性よりも高い。
形状記憶部材41は、例えば、形状記憶合金を有する。形状記憶合金は、例えば、NiTiCuを含む合金であってよい。また、形状記憶部材41は、形状記憶合金に限らず、形状記憶ポリマー、形状記憶ゲル、形状記憶セラミックなど、他の材料から構成されていてもよい。
形状記憶部材41を構成する形状記憶合金は、例えば、マルテンサイト相とオーステナイト相との間で形状記憶合金の相が移り変わる部材であってもよい。この形状記憶合金は、マルテンサイト相時には、外力に対して容易に塑性変形する。つまり、その形状記憶合金は、マルテンサイト相時には低い弾性係数を示す。一方、形状記憶合金は、オーステナイト相時には、外力に抵抗して容易には変形しない。ここで、形状記憶合金がさらに大きな外力によって変形したとする。変形した形状記憶合金に対して大きな外力が打ち消された際、形状記憶合金は、超弾性を示して、記憶している形状に戻る。つまり、形状記憶合金は、オーステナイト相時には高い弾性係数を示す。
低曲げ剛性部33は、導電性材料を有する。低曲げ剛性部33は、例えば、電熱線、つまり電気抵抗の大きい導電性部材で構成されてよい。例えば、低曲げ剛性部33の周囲には図示しない第1絶縁膜が配置される。第1絶縁膜は、低曲げ剛性部33と外側支持部材35との間の短絡と、高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33との短絡とを防止する。
例えば、外側支持部材35の周囲には、図示しない第2絶縁膜が配置される。第2絶縁膜は、低曲げ剛性部33と外側支持部材35との間の短絡と、高曲げ剛性部31と外側支持部材35との間の短絡と、外側支持部材35と形状記憶部材41との間の短絡とを防止する。
誘起体50は、制御装置80から電流の供給を受けて熱を発する性能を有する。誘起体50は、この熱を、誘起体50の周辺に配置される形状記憶部材41の一部位に伝える。そして、誘起体50は、この一部位において、第1の相と第2の相との間で形状記憶部材41の相の移り変わりを引き起こさせる。誘起体50は、第2の長手部材40の長手軸方向における第2の長手部材40の一部位の剛性を変更させる。誘起体50は、形状記憶部材41の相の移り変わりを引き起こすことが可能な位置に配置されればよい。例えば低曲げ剛性部33がこのような誘起体50を備える構成では、剛性可変装置20の構成を簡素にできる。本実施形態では、低曲げ剛性部33が誘起体50を備える構成の一例として、低曲げ剛性部33は誘起体50を兼ねる。
ここで、熱による形状記憶部材41の相の移り変わりについて説明する。
制御装置80は、各低曲げ剛性部33をそれぞれ独立に駆動する駆動部81を有する。駆動部81は、1つの電源と1つのスイッチとを有する。駆動部81は、配線部83を介して低曲げ剛性部33に電気的に接続される。配線部83は、例えば、金属のワイヤ状の部材である。配線部83は、低曲げ剛性部33に電気的に接続されていればよく、低曲げ剛性部33と一体であってもよいし別体であってもよい。駆動部81は、それぞれ、スイッチのオン動作に応じて、配線部83を介して低曲げ剛性部33に電流を供給し、また、スイッチのオフ動作に応じて、低曲げ剛性部33に対する電流の供給を停止する。
低曲げ剛性部33は、制御装置80から電流の供給を受けて熱を発する性能を有する。低曲げ剛性部33の発熱量は、電流の供給量に応じる。低曲げ剛性部33は、熱によって形状記憶部材41に第1の相と第2の相の間の相の移り変わりを引き起こさせる誘起体50として機能する。詳細には、低曲げ剛性部33は、外側支持部材35を介して形状記憶部材41を加熱する加熱部であるコイルヒータとして機能する。形状記憶部材41は、誘起体50として機能する低曲げ剛性部33から発生した熱によって、第1の相から第2の相に形状記憶部材41の相が移り変わる性質を有する。詳細には、誘起体50として機能する低曲げ剛性部33は、低曲げ剛性部33の周辺に配置される、形状記憶部材41の一部位において、第1の相と第2の相との間で形状記憶部材41の相の移り変わりを引き起こさせる。そして、低曲げ剛性部33は、第2の長手部材40の長手軸方向における第2の長手部材40の一部位の剛性を変更させる。
ここで、図1Bを参照して低曲げ剛性部33によって加熱されるエリア90について説明する。エリア90は、低曲げ剛性部33の周辺(近傍)を示し、低曲げ剛性部33から発生した熱が伝わるエリアを示す。本実施形態では、ある1つの低曲げ剛性部33は、外側支持部材35の一部位(被巻回部)を巻回している。したがって、1つの低曲げ剛性部33は、外側支持部材35を全長に渡って加熱するのではなく、一部位(被巻回部)を加熱する、言い換えると外側支持部材35を部分的に加熱する。低曲げ剛性部33は、被巻回部のみだけでなく、被巻回部を含む被巻回部周辺を加熱してもよい。また、低曲げ剛性部33は、被巻回部を介して形状記憶部材41を全長に渡って加熱するのではない。第1の長手部材30は第2の長手部材40に対して相対的に位置決め固定されるため、低曲げ剛性部33は、被巻回部を介して形状記憶部材41の全長における形状記憶部材41の一部位の剛性、言い換えると形状記憶部材41における所望するエリアを加熱する。このように低曲げ剛性部33は、形状記憶部材41を部分的に加熱する。詳細には、低曲げ剛性部33は、被巻回部を介して被巻回部によって囲まれる形状記憶部材41の一部位を加熱する。
以下において、加熱された形状記憶部材41の一部位を、言い換えると形状記憶部材41において加熱が所望されるエリアを、被加熱部41aと称する。図面において、被加熱部41aと、形状記憶部材41において加熱されていない部位とを区別するために、被加熱部41aを黒塗りで表す。被加熱部41aは、低曲げ剛性部33の周辺に含まれる。なお被加熱部41aは、低曲げ剛性部33によって囲まれて且つ低曲げ剛性部33にオーバラップする部位と、この部位の周辺とを含んでもよい。言い換えると、被加熱部41aは、被巻回部によって囲まれる形状記憶部材41の一部位のみならず、高曲げ剛性部31の端部によって囲まれる形状記憶部材41の一部位も含む。つまり被加熱部41aは、被巻回部よりも微小に長いこともありえる。被加熱部41aは第2の相にあり硬質部であり、被加熱部41a以外の形状記憶部材41の一部位は第1の相にあり被加熱部41aよりも柔らかい軟質部である。
被巻回部における熱の伝達範囲は、例えば、熱の温度と、被巻回部の太さと、高曲げ剛性部31の長さ及び厚みと、低曲げ剛性部33の長さ及び厚みと、外側支持部材35の熱伝導率と、高曲げ剛性部31の熱伝導率と、低曲げ剛性部33の材質と、高曲げ剛性部31の材質と、外側支持部材35の材質とによって調整される。なお被巻回部における熱の伝達範囲の長さは、第1の長手部材30の長手軸方向における長さを示す。
被加熱部41aにおける熱の伝達範囲は、例えば、熱の温度と、被巻回部の太さと、被巻回部の長さ及び厚みと、高曲げ剛性部31の長さ及び厚みと、低曲げ剛性部33の長さ及び厚みと、被加熱部41aの太さと、高曲げ剛性部31の熱伝導率と、外側支持部材35の熱伝導率と、形状記憶部材41の熱伝導率と、高曲げ剛性部31の材質と、低曲げ剛性部33の材質と、外側支持部材35の材質と、形状記憶部材41の材質とによって調整される。なお被加熱部41aにおける熱の伝達範囲の長さは、第1の長手部材30の長手軸方向における長さを示す。
形状記憶部材41は、細長い外観形状を有する。低曲げ剛性部33は、ワイヤ状の部材を有しており、形状記憶部材41の外周に配置される外側支持部材35の外周に配置される。低曲げ剛性部33同士は、剛性可変装置20の長手軸方向に沿って互いに対して所望する間隔を離れて配置される。低曲げ剛性部33は、外側支持部材35の外周を螺旋状に延びている。このような構成のおかげで、低曲げ剛性部33から発生する熱は、外側支持部材35を介して形状記憶部材41に効率良く伝達される。
複数の低曲げ剛性部33は、同一構造体であってよい。しかし、これに限定されることなく、複数の低曲げ剛性部33は、複数の異なる構造体を含んでいてもよい。異なる構造体は、例えば、異なる長さや異なる太さや異なるピッチを有していてもよく、また、異なる材料で作られていてもよい。つまり、複数の低曲げ剛性部33は、すべてまたはいくつかが、同じ特性を有していてもよいし、異なる特性を有していてもよい。
ここで、剛性可変装置20と可撓性部材101との関係について説明する。
剛性可変装置20は、形状記憶部材41が何ら拘束されることなく、可撓性部材101に装着される。例えば、剛性可変装置20は、可撓性部材101の限られた空間内に少ないスペースをもって配置される。限られた空間とは、剛性可変装置20をちょうど収容し得る空間を意味している。したがって、剛性可変装置20と可撓性部材101との一方の変形は、わずかであっても、他方に接触して外力を与え得る。なお可撓性部材101は、剛性可変装置20よりもわずかに大きい空間を有してさえいればよい。
例えば、可撓性部材101は、剛性可変装置20の外径よりもわずかに大きい内径を有し、外力が付加されることで撓むことが可能なチューブである。剛性可変装置20は、このチューブの内部に配置されてよい。剛性可変装置20は、可撓性部材101に対して相対的に位置決め固定される。図1Cに示すように、可撓性部材101は、例えば、内視鏡100の挿入部であってよい。したがって、内視鏡100は、可撓性部材101と、可撓性部材101に装着され、可撓性部材101に異なる剛性を提供する剛性可変装置20とを有する。制御装置80は、内視鏡100に配置されてもよいし、内視鏡100に接続される内視鏡100の制御装置(図示せず)に配置されてもよい。したがって、剛性可変システム10は、内視鏡100に配置される、または内視鏡100と内視鏡100の制御装置とを有する内視鏡システムに配置される。
以下に、本実施形態における、可撓性部材101における所望するエリアの剛性の変更について説明する。
まず図1Aに示すように、剛性可変システム10は初期状態であるとする。初期状態では、駆動部81は低曲げ剛性部33に電流を供給しておらず、低曲げ剛性部33は熱を発生しておらず、被加熱部41aが発生せず、形状記憶部材41と可撓性部材101とは全長に渡って低剛性状態である。
図1Bに示すように、例えば、駆動部81は、スイッチのオン動作に応じて、配線部83を介して低曲げ剛性部33に電流を供給する。低曲げ剛性部33は、電流の供給に応じて熱を発生する。熱は、低曲げ剛性部33から形状記憶部材41に直接伝達されるのではなく、低曲げ剛性部33から被巻回部を介して形状記憶部材41に間接的に伝達される。熱は、低曲げ剛性部33から外側支持部材35全長に渡って外側支持部材35に伝達されるのでなく、外側支持部材35の一部位である被巻回部に伝達される。また熱は、被巻回部から形状記憶部材41の被加熱部41aに伝達される。
なお、低曲げ剛性部33から高曲げ剛性部31への熱の伝達と、高曲げ剛性部31から外側支持部材35への熱の伝達とは、例えば高曲げ剛性部31の熱伝導率によって、抑制される。また被巻回部から被加熱部41aに伝達された熱は、上記した被加熱部41aにおける熱の伝達範囲の調整によって、被加熱部41aから被加熱部41a以外の形状記憶部材41の一部位に伝達されることは抑制される。したがって熱は、被巻回部及び被加熱部41a熱の伝達範囲の調整によって、1つの被巻回部から形状記憶部材41全長に渡って伝達されことは抑制される。
熱の伝達によって、被加熱部41aの温度は上がる。すると被加熱部41aの相は加熱によって第1の相から第2の相に切り替わり、被加熱部41aの剛性は加熱によって上がる。したがって、被加熱部41aは低剛性状態から高剛性状態に切り替われる。つまり、低曲げ剛性部33は、低曲げ剛性部33の周辺に配置される、形状記憶部材41の一部位である被加熱部41aにおいて、被加熱部41aの相を第1の相から第2の相に移り変わらせる。そして低曲げ剛性部33は、被加熱部41aの剛性を低剛性状態から高剛性状態に変更する。被加熱部41aは剛性が高く曲がりにくい硬質部とみなせることができ、被加熱部41a以外の形状記憶部材41の一部位は剛性が低く曲がりやすい軟質部とみなせる。
剛性可変装置20は可撓性部材101に対して相対的に位置決め固定されており、被加熱部41aは位置決めによって可撓性部材101における所望するエリアに配置される。被加熱部41aが低剛性状態から高剛性状態に切り替わることによって、可撓性部材101における所望するエリアの剛性が上がる。言い換えると、剛性可変装置20は、可撓性部材101の全長における可撓性部材101の一部位のみに比較的高い剛性を提供する。したがって、可撓性部材101は可撓性部材101の全長に渡って低剛性状態から高剛性状態に切り替わるのではなく部分的に低剛性状態から高剛性状態に切り替わる、言い換えると可撓性部材101の全長における一部位が低剛性状態から高剛性状態に切り替わる。このように剛性可変装置20は、低曲げ剛性部33の周辺に配置される、形状記憶部材41の一部位である被加熱部41aの剛性状態を変更し、この変更によって可撓性部材101における所望するエリアの剛性を変更する。
高剛性状態である可撓性部材101の一部位は、可撓性部材101に作用する外力すなわち形状記憶部材41を変形させ得る力に対抗して記憶形状に戻る傾向を示す。したがって、可撓性部材101の一部位は、略直線状態を維持する。
ここで、低曲げ剛性部33は、第1の長手部材30の長手軸方向において、2つの高曲げ剛性部31に挟まれる。図1Dと図1Eとに示すように、この低曲げ剛性部33は、一方の高曲げ剛性部31が他方の高曲げ剛性部31に対して曲がる際に剛性可変装置20の関節部51として機能する。図1Dと図1Eとでは、図示の明瞭化のために、外側支持部材35と制御装置80と駆動部81と配線部83との図示を省略している。この関節部51は、低曲げ剛性部33によって囲まれる被巻回部及び被加熱部41aを含む。図1Dは初期状態を示し、関節部51は低剛性状態である。したがって、関節部51は外力によって容易に曲がる。図1Eに示すように被加熱部41aが低剛性状態から高剛性状態に切り替わった際、関節部51も低剛性状態から高剛性状態に切り替わる。したがって、関節部51が低剛性状態に比べて、関節部51が高剛性状態のもとでは、一方の高曲げ剛性部31は他方の高曲げ剛性部31に対して曲がりにくくなり、略直線状態を維持する。つまり、剛性可変装置20及び可撓性部材101は、曲がりにくくなり、略直線状態を維持する。
なお図1Bの最も右側に位置する駆動部81が図1Bの最も右側に位置する低曲げ剛性部33(以下、便宜上、右側低曲げ剛性部と称する)に電流を供給し、右側低曲げ剛性部は電流の供給に応じて熱を発生したとする。この熱は、右側低曲げ剛性部から被巻回部に伝達される。低曲げ剛性部33と右側低曲げ剛性部とは互いに離れて配置されており、被巻回部同士も互いに離れて配置される。したがって、形状記憶部材41は上記した被加熱部41aとは異なる一部位(便宜上、右側被加熱部と称する)にて加熱され、右側被加熱部の温度は加熱によって上がる。すると、右側被加熱部の相は加熱によって第1の相から第2の相に切り替わり、右側被加熱部の剛性は加熱によって上がる。したがって、右側被加熱部は低剛性状態から高剛性状態に切り替わり、可撓性部材101における所望する別のエリアの剛性が上がり、可撓性部材101の全長における2つの部位が低剛性状態から高剛性状態に切り替わる。
例えば、右側被加熱部の温度は被加熱部41aの温度と異なってもよく、このため右側被加熱部の剛性は被加熱部41aの剛性と異なってもよい。したがって、可撓性部材101における所望する別のエリアの剛性は、可撓性部材101における所望するエリアの剛性と異なる。このように、可撓性部材101の剛性は、部分的に変更されてもよい。もちろん本実施形態では、例えば全ての低曲げ剛性部33に電流が流れた際に、熱の伝達範囲の調整によって、被加熱部41a同士が互いに熱的に接続されることも可能である。したがって、形状記憶部材41全体の剛性が変更することも可能である。
駆動部81は、スイッチのオフ動作に応じて、低曲げ剛性部33に対する電流の供給を停止する。すると、加熱が停止され、被加熱部41aの温度が自然冷却によって下がる。すると、被加熱部41aの相は第2の相から第1の相に切り替わり、被加熱部41aの剛性は下がる。そして、被加熱部41aが配置されている可撓性部材101の一部位の剛性も下がる。言い換えると、剛性可変装置20は、比較的低い剛性を可撓性部材101に提供し、可撓性部材101に作用する外力すなわち形状記憶部材41を変形させ得る力に従って容易に変形する。したがって、可撓性部材101は、外力によって容易に撓むことが可能となる。また被加熱部41aの剛性及び可撓性部材101の一部位の剛性は、加熱される前の剛性に戻ることが可能である。関節部51は高剛性状態に比べて、関節部51が低剛性状態のもとでは、一方の高曲げ剛性部31は他方の高曲げ剛性部31に対して曲がり易くなる。つまり、剛性可変装置20及び可撓性部材101は、曲がり易くなる。
このように例えば低曲げ剛性部33によって形状記憶部材41の一部位の相が第1の相と第2の相の間で切り換えられることによって、可撓性部材101における所望するエリアの剛性が切り換えられる。
本実施形態では、低曲げ剛性部33の周辺に配置される、形状記憶部材41の一部位の剛性を、低曲げ剛性部33によって変更する。本実施形態では、一部位の剛性の変更によって、可撓性部材101における所望するエリアの剛性を変更できる。また本実施形態では、高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33と外側支持部材35と形状記憶部材41との配置によって剛性可変装置20の構成をシンプル且つ細くでき、可撓性部材101を細くできる。
本実施形態では、外側支持部材35によって、第1の長手部材30の組立性を向上できる。本実施形態では、低曲げ剛性部33が誘起体50として機能するため、剛性可変装置20の構成を簡素にできる。
本実施形態では、高曲げ剛性部31が配置される。したがって、低曲げ剛性部33及び被加熱部41aが短く、短い被加熱部41aが高剛性状態であっても、高曲げ剛性部31によって、剛性可変装置20及び可撓性部材101の全長の大部分を高剛性状態に切り替えることができる。そして、剛性可変装置20及び可撓性部材101の全長の大部分が高剛性状態に切り替わる際に、省電力化を実現できる。
剛性の切り換えに加えて、可撓性部材101に重力以外の外力が作用している状況下においては、剛性可変装置20は、可撓性部材101の形状を切り換える双方向アクチュエータとしても機能する。また、可撓性部材101に重力以外の外力が作用しておらず、形状記憶部材41の相が第2の相に切り換えられる前の第1の相において可撓性部材101が変形されている状況下においては、可撓性部材101の形状を元に戻す単一方向アクチュエータとしても機能する。
[変形例]
図1Fは、本実施形態の変形例1を示す。本変形例では、低曲げ剛性部33が誘起体50を備える構成の一例として、誘起体50は、低曲げ剛性部33とは別体である。誘起体50それぞれは、低曲げ剛性部33それぞれの周辺に配置される。1つの誘起体50が、第1の長手部材30の全長に渡って配置されてもよい。
誘起体50は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材を有する。誘起体50のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。誘起体50は、例えば、金属製のワイヤ状且つ螺旋状の部材を有してもよい。誘起体50は、例えば、低曲げ剛性部33の外周を巻回する。誘起体50は、パイプといった軟質の筒部材を有してもよい。誘起体50は、低い曲げ剛性を有する筒状の軟質部である。誘起体50の曲げ剛性は、例えば、低曲げ剛性部33の曲げ剛性と同一であってもよいし、低曲げ剛性部33の曲げ剛性と異なってもよい。誘起体50は、低曲げ剛性部33の外周を全周に渡って囲ってもよい。
誘起体50の内周面は、低曲げ剛性部33の外周面から離れる。誘起体50の内周面は、低曲げ剛性部33の外周面に密着してもよい。誘起体50の両端は、高曲げ剛性部31の端部の外周面を囲ってもよい。誘起体50の両端における内周面は、高曲げ剛性部31の端部における外周面に密着することが可能である。つまり、誘起体50の両端における内周面は、高曲げ剛性部31の端部における外周面に密着しなくてもよい。
誘起体50は、配線部83に電気的に接続される。駆動部81は、それぞれ、スイッチのオン動作に応じて、配線部83を介して誘起体50に電流を供給し、また、スイッチのオフ動作に応じて、誘起体50に対する電流の供給を停止する。誘起体50は、熱を低曲げ剛性部33及び外側支持部材35を介して形状記憶部材41の一部位に伝える。誘起体50は、低曲げ剛性部33及び外側支持部材35を介して形状記憶部材41を加熱する加熱部であるコイルヒータとして機能する。誘起体50は、低曲げ剛性部33及び外側支持部材35を介して形状記憶部材41を加熱できれば、低曲げ剛性部33に機械的に直接接触してもよいし、低曲げ剛性部33に機械的に直接接触していなくてもよい。
本変形例の構成は、後述する第2,3の実施形態それぞれの構成と第2の実施形態の変形例それぞれの構成とに組み込まれてもよい。
[第2の実施形態]
以下に、図2Aと図2Bとを参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態とは異なることのみを記載する。
本実施形態では、高曲げ剛性部31の長さは、被加熱部41aの長さよりも長いことが好ましい。
剛性可変装置20は、第1の長手部材30に沿って第2の長手部材40を移動させる移動機構60を有する。したがって、本実施形態では、第2の長手部材40は、第1の長手部材30に対して、移動可能となっている。なお第1の長手部材30は、第1の実施形態と同様に、位置決め固定される。移動機構60は、例えば、第2の長手部材40を、外側支持部材35に対して移動させる。移動機構60は、第2の長手部材40を、牽引または押圧する。第2の長手部材40の移動に従って、被加熱部41aも移動する。
移動機構60は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって移動を予め制御される。例えば、移動機構60は、低曲げ剛性部33の周辺に配置される、高剛性状態の形状記憶部材41の一部位である被加熱部41aを、高曲げ剛性部31の周辺に移動させる。高曲げ剛性部31の周辺とは、図2Bに示すように被加熱部41aが被加熱部41aの全長に渡って高曲げ剛性部31によって囲まれて、被加熱部41aが被加熱部41aの全長に渡って高曲げ剛性部31にオーバラップする位置を示す。
例えば、移動機構60は、図示しないモータと、第2の長手部材40の一端部に接続され、モータの回転力によって第2の長手部材40を移動させる図示しない移動部材とを有する。移動部材は、例えば、形状記憶部材41の一端部に直接接続される。移動部材は、例えば、ワイヤ状の部材である。移動機構60は、挿入部の基端部に連結される操作部103に配置されてもよい。移動機構60は、操作部103におけるボタンの操作によって、駆動してもよい。
ここで、図2Aに示すように、第1の実施形態と同様に、低曲げ剛性部33の周辺に配置される被加熱部41aの剛性が加熱によって上がり、被加熱部41aは低剛性状態から高剛性状態に切り替わったとする。被加熱部41aは、剛性が高い硬質部位とみなせる。図2Bに示すように、第2の長手部材40が移動機構60によって移動した際、硬質部位である被加熱部41aは、低曲げ剛性部33の周辺から高曲げ剛性部31の周辺にずれる。言い換えると、被加熱部41aは、高曲げ剛性部31にオーバラップする。そして、第2の長手部材40の移動によって、被加熱部41aが配置されていた低曲げ剛性部33の周辺には、被加熱部41a以外の形状記憶部材41の一部位である軟質部位41cが配置される。言い換えると、軟質部位41cは、低曲げ剛性部33にオーバラップする。さらに言い換えると、低曲げ剛性部33の周辺に配置される、形状記憶部材41の一部位は、曲りにくい硬質部位である被加熱部41aから曲がりやすい軟質部位41cに切り替わる。また関節部51は、高剛性状態から低剛性状態に切り替わる。これにより、剛性可変装置20は、可撓性部材101に比較的低い剛性を提供することとなる。
ここで、剛性可変装置20が、本実施形態とは異なり、低曲げ剛性部33の周辺に配置される被加熱部41aを自然冷却することによって可撓性部材101に比較的低い剛性を提供する状態を自然提供状態と称する。本実施形態では、剛性可変装置20は、被加熱部41aの移動によって、自然提供状態に比べて早く可撓性部材101に比較的低い剛性を提供できる。つまり、本実施形態では、自然冷却よりも、可撓性部材101を短時間に高剛性状態から低剛性状態に切り替えることができる。これにより可撓性部材101に対する応答性を向上できる。
[変形例1]
図3Aは、本実施形態の変形例1を示す。本変形例では、外側支持部材35が省略される。第1の長手部材30は、第1の長手部材30の長手軸方向において高曲げ剛性部31と低曲げ剛性部33との間に配置される断熱部材37を有する。断熱部材37は、例えば、高曲げ剛性部31の端部に固定され、リング状である。第1の長手部材30の長手軸方向において、低曲げ剛性部33は2つの断熱部材37に挟まれる。断熱部材37は、低曲げ剛性部33の端部に固定され、低曲げ剛性部33に熱的に接続される。断熱部材37は、低曲げ剛性部33から発生した熱が高曲げ剛性部31に伝達されることを防止する。断熱部材37は、例えば、樹脂などの、低い熱伝導率を有する部材である。
本変形例では、断熱部材37によって、低曲げ剛性部33を高曲げ剛性部31に固定でき、外側支持部材35を不要にでき、剛性可変装置20を細くできる。本実施形態では、外側支持部材35が不要なため、第1の実施形態の構成に比べて低曲げ剛性部33を形状記憶部材41の近傍に配置でき、熱を低曲げ剛性部33から形状記憶部材41に素早く直接伝達できる。また断熱部材37によって、低曲げ剛性部33から高曲げ剛性部31への熱の伝達を防止できるため、被加熱部41aにおける熱の伝達範囲の長さ、言い換えると、可撓性部材101における所望するエリアの長さをより精密に制御できる。
[変形例2]
図3Bは、本実施形態の変形例2を示す。第1の長手部材30は、高曲げ剛性部31同士を連結する筒状の連結部材39を有する。連結部材39の両端は、高曲げ剛性部31の端部の外周面に固定される。連結部材39は、高曲げ剛性部31同士の間の各スペースの周辺に配置される。1つの連結部材39が、第1の長手部材30の全長に渡って配置されてもよい。連結部材39は、高曲げ剛性部31の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有する。連結部材39の曲げ剛性は、低曲げ剛性部33の曲げ剛性と同一であってもよいし異なってもよい。連結部材39は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材を有する。連結部材39のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。連結部材39は、例えば、金属製のワイヤ状且つ螺旋状の部材を有してもよい。本変形例では、連結部材39は、低曲げ剛性部33の外周に配置される。連結部材39は、螺旋状に配置されており、低曲げ剛性部33を巻回する。低曲げ剛性部33の外周面は、連結部材39の内周面に固定されてもよい。
本変形例では、第1の実施形態の構成に比べて低曲げ剛性部33を形状記憶部材41の近傍に配置できると共に、連結部材39によって高曲げ剛性部31の連結強度と第1の長手部材30の組立性とを向上できる。
[変形例3]
図3Cは、本実施形態の変形例3を示す。連結部材39は、低曲げ剛性部33の内周に配置される。連結部材39の両端は、高曲げ剛性部31の端部に配置される断熱部材37に固定される。低曲げ剛性部33の内周面は連結部材39の外周面に固定されており、低曲げ剛性部33の端部は断熱部材37から離れて配置される。断熱部材37は、熱が低曲げ剛性部33から連結部材39を介して高曲げ剛性部31に伝達することを防止する。
本変形例では、連結部材39によって高曲げ剛性部31の連結強度と第1の長手部材30の組立性とを向上できる。
第2の実施形態の変形例1,2,3それぞれは、第1の実施形態の構成と第1の実施形態の変形例の構成とに組み込まれてもよい。
[第3の実施形態]
以下に、図4Aと図4Bと図4Cとを参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、第1,2の実施形態とは異なることのみを記載する。
図4Aと図4Bとに示すように、本実施形態の第1の長手部材30の構成は、第1の実施形態の第1の長手部材30に、第2の実施形態の変形例1の断熱部材37が配置された構成である。高曲げ剛性部31の長さは、被加熱部41aの長さと同一であるが、被加熱部41aの長さよりも長いことが好ましい。本実施形態では、3つの高曲げ剛性部31と2つの低曲げ剛性部33とが配置されているものとする。
図4Aと図4Cとに示すように、本実施形態の第2の長手部材40は、少なくとも1つの形状記憶部材41と、形状記憶部材41よりも軟質な少なくとも1つの軟質部材43と、形状記憶部材41と軟質部材43とを支持する筒状の内側支持部材45とを有する。本実施形態では、例えば、第2の長手部材40は、2つの形状記憶部材41と3つの軟質部材43と1つの内側支持部材45とを有するものとする。
複数の形状記憶部材41と複数の軟質部材43とは、第2の長手部材40の長手軸方向において交互に配置される。つまり形状記憶部材41同士は、互いに離れて配置される。形状記憶部材41と軟質部材43とは、互いに対して固定される。形状記憶部材41と軟質部材43とは、内側支持部材45に挿入される。形状記憶部材41の外周面と軟質部材43の外周面とは、内側支持部材45の内周面に接着または溶接などによって固定される。形状記憶部材41と軟質部材43とは、内側支持部材45に位置決め固定される。
形状記憶部材41の曲げ剛性は、形状記憶部材41の相が第1の相であっても第2の相であっても、軟質部材43の曲げ剛性よりも高い。形状記憶部材41は、形状記憶部材41全長に渡って被加熱部41aとして機能する。形状記憶部材41の長さは、低曲げ剛性部33の長さよりも長い。
軟質部材43は、例えば、湾曲可能となっている。軟質部材43は、例えば、ばね材である。軟質部材43は、形状記憶部材41よりも柔らかく撓みやすい。
内側支持部材45は、形状記憶部材41と軟質部材43との外周に配置される。内側支持部材45は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材を有する。内側支持部材45のコイル部材は、疎巻きコイルでもよい。内側支持部材45は、例えば、金属製のワイヤ状且つ螺旋状の部材を有してもよい。例えば、内側支持部材45の曲げ剛性は、軟質部材43の曲げ剛性と略同一である。内側支持部材45の外周面は外側支持部材35の内周面とは接触しており、内側支持部材45は移動機構60によって外側支持部材35をスライドする。形状記憶部材41と軟質部材43とは、内側支持部材45に固定されるため、内側支持部材45の移動に伴い、内側支持部材45と共に移動する。内側支持部材45が外側支持部材35に対して移動できれば、内側支持部材45の外周面は外側支持部材35の内周面とは接触しておらず、スペースが内側支持部材45の外周面と外側支持部材35の内周面との間に形成されてもよい。
図5Aは、剛性可変装置20が最低剛性状態(超軟質状態)であることを示す。最低剛性状態では、剛性可変システム10は初期状態であり、駆動部81は低曲げ剛性部33に電流を供給しておらず、低曲げ剛性部33は熱を発生しておらず、形状記憶部材41と可撓性部材101とは低剛性状態であるものとして説明する。
最低剛性状態において、形状記憶部材41(軟質部)は高曲げ剛性部31(硬質部)にオーバラップし、軟質部材43は低曲げ剛性部33(軟質部)にオーバラップする。したがって、剛性可変装置20は、可撓性部材101に最も低い剛性を提供する。
図5Bは、剛性可変装置20が低剛性状態(軟質状態)であることを示す。このとき、第2の長手部材40は、例えば最低剛性状態に対して移動機構60によって移動する。
低剛性状態において、形状記憶部材41(軟質部)は低曲げ剛性部33(軟質部)にオーバラップし、軟質部材43は高曲げ剛性部31(硬質部)にオーバラップする。したがって、剛性可変装置20は、可撓性部材101に比較的低い剛性を提供する。
図5Cは、剛性可変装置20が高剛性状態(硬質状態)であることを示す。このとき、第2の長手部材40は、図5Bに示す低剛性状態に対して移動していない。また低曲げ剛性部33から発生した熱によって、形状記憶部材41全体は被加熱部41aとして機能し軟質部から硬質部に変化する。
高剛性状態において、被加熱部41a(硬質部)は低曲げ剛性部33(軟質部)にオーバラップし、軟質部材43は高曲げ剛性部31(硬質部)にオーバラップする。したがって、剛性可変装置20は、可撓性部材101に最も高い剛性を提供する。
図5Dは、剛性可変装置20が最低剛性状態であることを示す。このとき、第2の長手部材40は、例えば高剛性状態に対して移動機構60によって移動する。
最低剛性状態において、被加熱部41a(硬質部)は高曲げ剛性部31(硬質部)にオーバラップし、軟質部材43は低曲げ剛性部33(軟質部)にオーバラップする。したがって、剛性可変装置20は、可撓性部材101に最も低い剛性を提供する。
本実施形態では、軟質部材43により第2の長手部材40を部分的に柔らかくできる。また形状記憶部材41同士は互いに離れて配置される。したがって、形状記憶部材41同士における、熱の伝達が抑制される。これにより、可撓性部材101における所望するエリアの剛性の可変を精密に制御できる。
本実施形態では、形状記憶部材41と軟質部材43とは互いに対して端部にて溶接または接着などによって固定されていれば、内側支持部材45は省略されてもよい。つまり、図6Aと図6Bとに示すように、第2の長手部材40は、形状記憶部材41と軟質部材43とを有してもよい。軟質部材43は、例えば、第2の長手部材40の長手軸方向において伸縮可能でもある。これにより、剛性可変装置20と可撓性部材101とを細くできる。また軟質部材43の曲げ剛性は、形状記憶部材41の曲げ剛性よりも低ければよい。したがって、図6Bに示すように、軟質部材43は、例えば、金属製のワイヤ状の部材でもよい。図6Aと図6Bとにおいて、移動機構60は、例えば、軟質部材43に接続される。
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。

Claims (15)

  1. 可撓性部材に装着され、前記可撓性部材に異なる剛性を提供する剛性可変装置であって、
    第1の長手部材と、前記第1の長手部材に沿って配置される第2の長手部材と、熱を発する性能を有する誘起体とを具備し、
    前記第1の長手部材は、少なくとも1つの高曲げ剛性部と、高曲げ剛性部の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有する少なくとも1つの低曲げ剛性部とを有し、
    前記第2の長手部材は、前記誘起体が発生した熱によって第1の相から第2の相相が移り変わる性質を有する形状記憶部材を少なくとも有し、
    前記形状記憶部材の前記相が前記第1の相にあるときは前記形状記憶部材は低剛性状態を取り、前記形状記憶部材の前記相が前記第2の相にあるときは前記形状記憶部材は前記低剛性状態よりも高い剛性を有する高剛性状態を取り、
    前記誘起体は、前記低曲げ剛性部の周辺に配置される、前記形状記憶部材の一部位において、前記第1の相と前記第2の相との間で前記形状記憶部材の前記相の移り変わりを引き起こさせて、前記第2の長手部材の長手軸方向における前記第2の長手部材の一部位の剛性を変更させる、剛性可変装置。
  2. 前記低曲げ剛性部は、前記誘起体を備える請求項1に記載の剛性可変装置。
  3. 前記第1の長手部材に沿って前記第2の長手部材を移動させる移動機構を具備し、
    前記移動機構は、前記低曲げ剛性部の周辺に配置される、前記高剛性状態の前記形状記憶部材の前記一部位を、前記高曲げ剛性部の周辺に移動させる請求項2に記載の剛性可変装置。
  4. 前記第1の長手部材は外筒であり、前記高曲げ剛性部は筒部材を有し、前記低曲げ剛性部はコイル部材を有し、
    前記第2の長手部材は、前記第1の長手部材の内部に配置された芯部材である請求項3に記載の剛性可変装置。
  5. 前記第1の長手部材は、複数の高曲げ剛性部と、複数の低曲げ剛性部とを有し、
    前記複数の高曲げ剛性部と前記複数の低曲げ剛性部とは、前記第1の長手部材の長手軸方向において交互に配置される請求項4に記載の剛性可変装置。
  6. 前記第2の長手部材は、前記形状記憶部材のみを有する請求項に記載の剛性可変装置。
  7. 前記第2の長手部材は、複数の形状記憶部材と、前記形状記憶部材よりも軟質な複数の軟質部材とをさらに有し、
    前記複数の形状記憶部材と前記複数の軟質部材とは、前記第2の長手部材の前記長手軸方向において交互に配置される請求項に記載の剛性可変装置。
  8. 前記第2の長手部材は、前記形状記憶部材と前記軟質部材との外周に配置され、前記形状記憶部材と前記軟質部材とを支持する筒状の内側支持部材を有する請求項に記載の剛性可変装置。
  9. 前記第1の長手部材は、前記高曲げ剛性部と前記低曲げ剛性部との内側に配置され、前記高曲げ剛性部と前記低曲げ剛性部とを支持する筒状の外側支持部材を有する請求項に記載の剛性可変装置。
  10. 前記外側支持部材は、前記高曲げ剛性部の前記曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有するコイル部材を有する請求項に記載の剛性可変装置。
  11. 前記第1の長手部材は、前記第1の長手部材の前記長手軸方向において前記高曲げ剛性部と前記低曲げ剛性部との間に配置される断熱部材を有する請求項に記載の剛性可変装置。
  12. 前記第1の長手部材は、前記第1の長手部材の前記長手軸方向において前記高曲げ剛性部と前記低曲げ剛性部との間に配置される断熱部材を有する請求項に記載の剛性可変装置。
  13. 前記第1の長手部材は、前記低曲げ剛性部の外周または内周に配置され、前記高曲げ剛性部同士を連結する筒状の連結部材を有する請求項12に記載の剛性可変装置。
  14. 前記連結部材は、前記高曲げ剛性部の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有するコイル部材を有する請求項13に記載の剛性可変装置。
  15. 可撓性部材と、
    前記可撓性部材に装着され、前記可撓性部材に異なる剛性を提供する請求項1に記載の剛性可変装置と、
    を具備する内視鏡。
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