JP6698325B2 - 超分子金属−有機構造体物質およびその製造方法 - Google Patents

超分子金属−有機構造体物質およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超分子金属−有機構造体物質およびその製造方法、当該超分子金属−有機構造体物質を含む成形品、当該成形品を備える電子機器に関する。特に、本発明は、階層的自己配列金属−有機構造体ナノ粒子を含む多機能性超分子ハイブリッド、及びその製造方法に関する。
金属−有機構造体(Metal−Organic Framework:MOF)は、自己組立性分子建築ブロックを用いた繰り返される対称単位からなる3次元に拡張された構造を有する無機−有機ハイブリッド物質である(非特許文献1〜2)。金属−有機構造体(MOF)又は多孔性配位高分子(PCPs:porous coordination polymers)は、多数の配位有機リンカー及び金属イオンを採用することにより、様々な作用性の結晶性(多孔性又は非多孔性)物質を製造するために設計され、その結果、多くの化学的及び物理的特性が得られる。一般に、金属−有機構造体(MOF)は、約1,000m/gを超える非常に大きい内部表面積(BET比表面積)を有する3次元結晶性ナノ気孔構造を有する。
金属−有機構造体(MOF)の設計可能性により、研究者らはガスの分離/貯蔵、燃料電池、光学センサー、多孔性磁性体、立体異性体の分離/触媒、光触媒、分子篩などに適用するための新規な物質を製造することが可能になった(非特許文献3〜4)。
通常、金属−有機構造体(MOF)は、単結晶物質として得られるため、合成条件が結果物の物理−化学的な性質に大きな影響を与える。例えば、温度、圧力、溶媒、及びpH条件などを変化させることにより、金属−有機構造体(MOF)物質に関する研究は、結晶構造、粒子径、及び配位モード(窮極的に、最終産物の形成学的な特徴を決定するもの)などにおける顕著な変化を示す(非特許文献5)。
単結晶物質であるにも拘わらず、金属−有機構造体(MOF)に基づく一部の新規な物質は、ここ数年間に製造された。例えば、ポリマーブレンド又は量子点ドーピングされた金属−有機構造体(MOF)複合体が、ガスの分離/貯蔵又は触媒/磁石/光学的用途に対するホスト物質としての改善された性能のための向上した機械的及び光学的な特性を有することが報告されている(非特許文献6〜7)。
最近、電気的な用途を有する薄膜内の金属−有機構造体(MOF)が開発された(特許文献1、非特許文献8〜10)。驚くべきことに、HKUST−1と命名され(Hong Kong University of Science and Technology−1)(非特許文献11)、且つ、Cu−BTC又はBasoliteTMC300(BASF社製、商品名)としても知られている金属−有機構造体(MOF)物質は、簡単に接近可能な微細多孔性構造及び開放された銅(Cu)金属の位置により様々な潜在的な応用可能性を提供する。また、HKUST−1は、約2,100m/gという大きな内部表面積(BET比表面積)を有することを特徴とする。最近の研究は、ガスの貯蔵/分離に加えて、HKUST−1の他の分野、例えば、陽性子伝導性、電気伝導性、化学分離、Li−S電池、電気紡糸作用性繊維、及び毒性イオン捕集などの分野における数多くの重要な構造的特性を示す。
ハイブリッド物質に関する現存の方法に対する制限要素は、下記のように要約される。
従来の合成方法は、典型的に有機リンカー及び金属イオン溶液を含んで数日〜一週間の時間がかかる水熱処理又は溶媒熱処理反応を必要とする。
1.光学的/触媒的/磁気的及び他の作用性特性を決定するための決定的な変数は、金属−有機構造体(MOF)物質の粒子径に依存する。しかしながら、従来の水熱処理反応は、正確な金属−有機構造体(MOF)粒子径を微細に調節することができず、その結果、より広く分布されたミクロン寸法の粒子を生成してしまう。
2.薄膜状の金属−有機構造体(MOF)を製造するためには、高いコストがかかる自己組立断層(自己組織化単分子膜、SAMs;self−assembled monolayers)を用いることを余儀なくされるが、この方法は、大面積の生産は不可能である(非特許文献12〜14)。
3.複数の金属−有機構造体(MOF)物質は、導電性が低い。金属−有機構造体(MOF)結晶粒系及び構造体内における局所的な荷電(劣等な電子非局在化:poor electron delocalization)という2種類の重要な要素が金属−有機構造体(MOF)における弱い電荷移動の原因であり、これは、半導体又は絶縁体を形成する(非特許文献15)。
4.外部の電子豊富なゲスト(例えば、テトラシアノキノジメタン(TCNQ))の補助によりHKUST−1における金属の中心からの電荷の移動を示すことが、金属−有機構造体(MOF)を電気的な導電体に切り換えることを示唆するとはいえ(非特許文献15)、測定された導電性は、二つの電極間の距離が100μmという短い間隔距離を外れて増加する場合に急激に減少する。これは、様々な分野における金属−有機構造体(MOF)薄膜の実質的な応用を制限する重要な限界となる。
米国特許出願公開第2014/0045074号公報
Nature 2003, 423, 705−714 Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2334−2375 Chem. Soc. Rev. 2008, 37, 191−214 Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 1284−1293 Chem. Comm. 2006, 46, 4780−4795 Energy & Environmental Science 2010, 3, 343−351 Nat. Chem. 2012, 4.4, 310−316 Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 6543−6547 Science 2014, 343, 66−69 J. Phys. Chem. C 2014, 118, 16328−16334 Science 1999, 283, 1148−50 Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 1418−1429 J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 2464−2472 Chem. Comm. 2012, 48, 11901−11903 Science 2014, 343, 66−69
本発明は、上記従来技術を鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、調節可能な物理的及び化学的な特性を有する新規な超分子金属−有機構造体(MOF)物質を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質を含む成形品を提供することにある。
本発明のさらなる別の目的は、前記成形品を備える電子機器を提供することにある。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態による超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、銅化合物と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミン、及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンの反応生成物である。
式中、R、R及びRは、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
前記銅化合物は、硝酸銅(Cu(NO)であることが好ましい。
前記一般式1で表わされるトリアルキルアミンは、トリエチルアミン(NEt)であることが好ましい。
前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンは、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)であることが好ましい。
前記反応は、非水性有機溶媒内において行われることが好ましい。
前記非水性有機溶媒は、C1〜C10のアルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル(ACN)、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、ゾル状態の物質であることが好ましい。
前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、ゲル状態の物質であることが好ましい。
前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、粘弾性物質であることが好ましい。
前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、ナノ粒子状であることが好ましい。
前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、層状構造を有することが好ましい。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態による超分子金属−有機構造体(MOF)物質の製造方法は、銅化合物と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミン、及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを非水性有機溶媒内において反応させることを含む。
式中、R、R及びRは、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
前記銅化合物は、硝酸銅(Cu(NO)であることが好ましい。
前記一般式1で表わされるトリアルキルアミンは、トリエチルアミン(NEt)であることが好ましい。
前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンは、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)であることが好ましい。
前記非水性有機溶媒は、C1〜C10のアルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル(ACN)、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
前記非水性有機溶媒は、メタノール又はエタノールであることが好ましい。
前記非水性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)であることが好ましい。
前記非水性有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であることが好ましい。
前記非水性有機溶媒は、アセトニトリル(ACN)であることが好ましい。
上記目的を達成するためになされた本発明の一実施形態によるゾル状態の超分子金属−有機構造体(MOF)物質の製造方法は、前記銅化合物を含む溶液と、前記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させることを含む。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態によるゲル状態の超分子金属−有機構造体(MOF)物質の製造方法は、前記銅化合物を含む溶液と、前記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させ、それにより生成された物質に熱を加えるか、或いは所定の時間だけ放置することを含む。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態による粘弾性の超分子金属−有機構造体(MOF)物質の製造方法は、前記銅化合物を含む溶液と、前記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させ、それにより生成された物質に熱を加えるか、或いは、所定の時間だけ放置してゲル状態の物質を製造した後、前記ゲル状態の物質を所定の時間だけ放置することを含む。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態によるナノ粒子状の超分子金属−有機構造体(MOF)物質の製造方法は、前記銅化合物を含む溶液と、前記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させ、それにより生成された物質に熱を加えるか、或いは、所定の時間だけ放置してゲル状態の物質を製造した後、前記ゲル状態の物質を所定の時間だけ放置して粘弾性物質を製造し、前記粘弾性物質を乾燥させることを含む。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態による成形品は、前記超分子金属−有機構造体(MOF)物質を含む。
前記成形品は、フィルムであることが好ましい。
上記諸目的を達成するためになされた本発明の一実施形態による電子機器は、前記成形品を備える。
本発明によれば、超分子金属−有機構造体(MOF)物質は、手軽に製造可能であり、調節可能な物理的、化学的、及び機械的な特性を有する。前記物質は、多重刺激に対して反応性を有し、様々な3次円形状に成形し易い。これにより、各種多用な分野における前記物質の適用が期待される。
図1は、異なる有機溶媒を用いて銅(Cu)及び1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)システムから製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)(ゲル状態の超分子金属−有機構造体)を示す写真であり、図中、Gはゲルを示し、ACNはアセトニトリル(Acetonitrile)を示し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethyl Formamide)を示し、DMSOはジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)を示し、ETHはエタノール(Ethanol)を示し、且つ、MEHはメタノール(Methanol)を示す。 図2は、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)の多刺激反応性ゾル−ゲル変換過程を示す写真である。 図3は、アセトニトリル(ACN)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)の粘弾性物質への相変化を示す概略図である。 図4は、アセトニトリル(ACN)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)(a)、及びそれから形成された粘弾性物質(b)の電子走査顕微鏡(Scanning electron micrographs:SEM)イメージである。 図5は、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)の電子走査顕微鏡(SEM)イメージである。 図6は、メタノール(MEH)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)の電子走査顕微鏡(SEM)イメージである。 図7は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)の電子走査顕微鏡(SEM)イメージである。 図8は、エタノール(ETH)溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)の電子走査顕微鏡(SEM)イメージである。 図9は、二つの反応物のうちの一方が残りの他方の上に層状化して得られたメタノール溶媒により製造された超分子金属−有機ゲル(MOG)(G⊃MEH)の層状構造を示す電子走査顕微鏡(SEM)イメージである。 図10aは、超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた貯蔵弾性率(G’)を示すグラフである。 図10bは、超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた損失弾性率(G”)を示すグラフである。 図10cは、超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた剪断弾性率(G)を示すグラフである。 図10dは、超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた周波数に対する損失タンジェント(tanδ)値を示すグラフである。 図10eは、G⊃DMSOサンプルに対して行ったダイナミック変形スイープ測定結果を示すグラフである。 図10fは、G⊃DMSOサンプルに対して行ったダイナミック変形スイープ測定結果を示すグラフである。 図11aは、G⊃ACNを製造してから1時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に得られた貯蔵弾性率(G’)を示すグラフである。 図11bは、G⊃ACNを製造してから1時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に得られた損失弾性率(G”)を示すグラフである。 図11cは、G⊃ACNを製造してから約1時間後、約24時間後、約48時間後、及び約72時間後に得られた周波数に対する損失タンジェント(tanδ)値を示すグラフである。 図11d)は、G⊃ACNを製造してから1時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に得られた剪断弾性率(G)を示すグラフである。 図11eは、G⊃ACNの粘弾性物質に対して行ったダイナミック変形スイープ測定結果を示すグラフである。 図11fは、G⊃ACNを製造してから約24時間後、及び約72時間後の所定の応力クリープ試験結果を示すグラフである。 図12aは、超分子金属−有機ゲル(MOG)の電圧に対する電流(I−V)のグラフである。 図12bは、図12aの一部の区間を拡大して示すグラフである。 図13aは、より高い周波数範囲(inset)において拡張された領域を有するG⊃ETHのナイキスト線図(Nyquist plots)である。 図13bは、図13aの一部の区間を拡大して示すグラフである。 図14aは、G⊃ACNから誘導された粘弾性ハイブリッド物質のナイキスト線図である。 図14bは、図14aの一部の区間を拡大して示すグラフである。 図15は、超分子金属−有機ゲル(MOG)を常温で長時間乾燥させた場合、ゲルがハイブリッド繊維内に含浸された球状のナノ寸法の金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド粒子になったことを示す写真である。 図16は、図15に示すゲルを極性有機溶媒に1分未満浸漬してゲルの繊維が全て破壊され、純粋な金属−有機構造体(MOF)ナノ結晶を生成することを示す写真である。 図17は、左側から右側に進むにつれて増加する厚さを有する、ゾル−ゲル方法により得られたガラス基板の上に蒸着された金属−有機構造体(MOF)薄膜を示すカラー写真である。 図18は、超分子金属−有機構造体(MOF)ナノ粒子懸濁液からディップコーティングを用いてガラス基板の上に蒸着した金属−有機構造体(MOF)薄膜を示すカラー写真である。 図19は、図18において製造された薄膜を100℃に加熱し、且つ、これを再び常温まで冷却させることにより現れる可逆的な色変化を示すカラー写真である。 図20は、図18において製造された薄膜の表面形状を示すカラー写真である。 図21は、図20における横線領域の表面粗さを原子間力顕微鏡(atomic force microscopy:AFM)トポグラフィーを用いて分析したプロファイルである。 図22は、図18において製造した薄膜の結晶構造を確認する2次元X線回折グラフであり、下のグラフは、超分子金属−有機構造体(MOF)ナノ粒子が蒸着されていない薄膜自体の2次元X線回折グラフであり、1で示すグラフは、超分子金属−有機構造体(MOF)ナノ粒子が蒸着された薄膜の2次元X線回折をシミュレーションしたグラフである。 図23は、超分子金属−有機ゲル(MOG)サンプルの電気伝導性を測定するためのセッティングを示すカラー写真である。
本発明の第一の態様によると、銅化合物と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミンと、および3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンとの反応生成物である超分子金属−有機構造体物質が提供される:
式中、R、R及びRは、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
本発明の第二の態様によると、銅化合物、上記一般式1で表わされるトリアルキルアミン、および3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを非水性有機溶媒内において反応させることを含む、超分子金属−有機構造体物質の製造方法が提供される。
以下、本発明に係る超分子金属−有機構造体物質(例えば、階層的自己配列金属−有機構造体(MOF)ナノ粒子を含む多機能性超分子ハイブリッド)、及びその製造方法を実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は、ここで説明する実施形態に限定されるものではなく、他の形態に具現化可能である。
図中、様々な層及び領域の厚さは、明確性を図るために誇張している。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
なお、層、膜、領域、板などの構成部分が他の構成部分の「上」にあるとした場合、それは、他の構成部分の「真上」にある場合だけではなく、これらの間に更に他の構成部分がある場合も含む。逆に、ある構成部分が他の構成部分の「直上」にあるとした場合には、これらの間に他の構成部分がないことを意味する。
以下、別途に断わりのない限り、「置換」とは、化合物中の水素がC1〜C30のアルキル基、C2〜C30のアルキニル基、C6〜C30のアリール基、C7〜C30のアルキルアリール基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のヘテロアルキル基、C3〜C30のヘテロアルキルアリール基、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C15のシクロアルケニル基、C6〜C30のシクロアルキニル基、C2〜C30のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(−F、−Cl、−Br、又は−I)、ヒドロキシ基(−OH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、アミノ基(−NRR’、ここで、R及びR’は、互いに独立して、水素又はC1〜C6のアルキル基である)、アジド基(−N)、アミジノ基(−C(=NH)NH)、ヒドラジノ基(−NHNH)、ヒドラゾノ基(=N(NH)、アルデヒド基(−C(=O)H)、カルバモイル基(−C(O)NH)、チオール基(−SH)、エステル基(−C(=O)OR、ここで、Rは、C1〜C6のアルキル基又はC6〜C12のアリール基である)、カルボキシル基(−COOH)とその塩(−C(=O)OM、ここで、Mは、有機又は無機の陽イオンである)、スルホン酸基(−SOH)とその塩(−SOM、ここで、Mは、有機又は無機の陽イオンである)、リン酸基(−PO)又はその塩(−POMH又は−PO、ここで、Mは、有機又は無機の陽イオンである)及びこれらの組み合わせから選ばれる置換基により置換されることを意味する。
また、以下、別途に断わりのない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S、Si、及びPから選ばれるヘテロ原子を1つ〜3つ含むものを意味する。
本明細書において、「アルキレン基」は、一つ以上の置換体を選択的に含む2以上の価数を有する直鎖若しくは分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基である。
本明細書において、「アリーレン基」とは、一つ以上の置換体を選択的に含み、一つ以上の芳香族環において少なくとも2つの水素の除去により形成された2以上の価数を有する官能基を意味する。
また、「脂肪族有機基」とは、C1〜C30の直鎖若しくは分枝鎖アルキル基を意味し、「芳香族有機基」とは、C6〜C30のアリール基、又はC2〜C30のヘテロアリール基を意味し、「指環族有機基」とは、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C30のシクロアルケニル基、及びC3〜C30のシクロアルキニル基を意味する。更に、「炭素−炭素不飽和結合含有置換基」とは、少なくとも一つの炭素−炭素の二重結合を含むC2〜C20のアルケニル基、少なくとも一つの炭素−炭素の三重結合を含むC2〜C20のアルキニル基、環内に少なくとも一つの炭素−炭素の二重結合を含むC4〜C20のシクロアルケニル基、又は環内に少なくとも一つの炭素−炭素の三重結合を含むC4〜C20のシクロアルキニル基である。
本明細書において、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
本発明の一実施形態においては、調節可能な物理的、又は化学的特性を有する新規な超分子金属−有機構造体物質(超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質)を提供する。
以下、前記新規な超分子金属−有機構造体物質(超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質)、その製造方法、及び前記物質の様々な刺激への反応性、相変化、又は微細構造の変化とその特性について添付図面を参照して詳細に説明する。
1.新規な超分子金属−有機構造体物質(超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質)
銅基材の金属−有機構造体(MOF)物質、HKUST−1(Science 1999, 283(5405) 1148−50)は、異なる溶媒、温度、又は塩基を用いる合成方法(Chem. Mater. 2010, 22, 5216−5221; Chem. Phys. Chem. 2013, 14, 2825−2832; Adv. Funct. Mater. 2011, 21, 1442−1447)によりその超分子構造の形態について研究されてきた(Nat. Chem. 2011, 3, 382−387, Cryst. Eng. Comm. 2011, 13, 3314−3316)。
本発明者らは、高濃度の出発反応物を少量の溶媒中において反応させることにより、既存に報告された超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質とは全く異なる物理的、化学的性質を示す新規な超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質を製造した。
具体的には、銅化合物と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミン、及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを反応させて新規な超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドゲルを製造した。
上記一般式1中、R、R及びRは、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。ここで、R、R及びRは、同じであっても、または相互に異なるものであってもよい。また、C1〜C10のアルキル基は特に制限されず、炭素原子数1〜10の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基でありうる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。これらのうち、C1〜C5のアルキル基が好ましく、C1〜C3のアルキル基がより好ましく、エチル基である(即ち、上記一般式1のトリアルキルアミンがトリエチルアミンである)ことが特に好ましい。
銅化合物は、特に制限されないが、例えば、硝酸銅、炭酸銅、硫酸銅、塩化銅、リン酸銅などが挙げられる。これらのうち、硝酸銅(Cu(NO)が特に好ましい。
3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンは、ベンゼン環のいずれかの位置の3個以上(上限:6個)の水素原子がカルボキシル基で置換されていれば特に制限されないが、ベンゼン環のいずれかの位置の3〜4個の水素原子がカルボキシル基で置換されることが好ましく、ベンゼン環のいずれかの位置の3個の水素原子がカルボキシル基で置換されることがより好ましい。具体的には、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸が好ましく、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)が特に好ましい。
すなわち、本発明の好ましい形態によると、銅化合物は硝酸銅(Cu(NO)であり、一般式1で表わされるトリアルキルアミンはトリエチルアミン(NEt)であり、3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)である。
ここで、本発明の超分子金属−有機構造体物質はいずれの方法によって製造されてもよいが、銅化合物、上記一般式1で表わされるトリアルキルアミン、および3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを非水性有機溶媒内において反応させることが好ましく、銅化合物を含む非水性有機溶媒と、一般式1で表わされるトリアルキルアミンおよび3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む非水性有機溶媒と、を反応させることが好ましい。さらに具体的には(Cu(NO)溶液と、トリエチルアミン(NEt)、及び1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)を含む溶液と間の反応から、新規な超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドゲルが製造できる。以下、上記好ましい方法を説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
上記方法において、非水性有機溶媒は、特に制限されないが、C1〜C10のアルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル(ACN)、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジンなどが挙げられる。ここで、C1〜C10のアルカノールは、特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどが挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜5のアルカノールが好ましく、炭素原子数1〜3のアルカノールがより好ましく、メタノール、エタノールが特に好ましい。また、上記非水性有機溶媒のうち、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(ACN)が好ましい。なお、上記非水性有機溶媒は、1種を単独で使用してもまたは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。また、銅化合物を含む非水性有機溶媒と、一般式1で表わされるトリアルキルアミンおよび3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む非水性有機溶媒と、を反応させる際に、銅化合物に使用する非水性有機溶媒は、トリアルキルアミンおよび3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンに使用する非水性有機溶媒と同じであってもまたは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい形態によると、非水性有機溶媒は、C1〜C10のアルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル(ACN)、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、又はこれらの組み合わせを含む(特に好ましくは、上記のいずれかである)。本発明のより好ましい形態によると、非水性有機溶媒は、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(ACN)、又はこれらの混合物である。
非水性有機溶媒への銅化合物、トリアルキルアミンおよび3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンの添加量は、特に制限されず、適切に調節できる。
上記方法において、銅化合物を含む非水性有機溶媒、および/または一般式1で表わされるトリアルキルアミンおよび3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む非水性有機溶媒は、必要であれば超音波処理してもよい。
このようにして調製された銅化合物を含む非水性有機溶媒、および一般式1で表わされるトリアルキルアミンおよび3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む非水性有機溶媒は、混合される。この際、これらの溶媒を、必要であれば、振盪または撹拌しながら混合してもよい。このように機械的な力を加えることによって、混合物はゾル類似挙動を示す。
様々な有機溶媒において行われた反応により、異なる超分子金属−有機ゲル(Metal−Organic Gel:MOG)、具体的にG⊃ACN、G⊃DMF、G⊃DMSO、G⊃ETH、及びG⊃MEHが得られる(図1参照)。ここで、Gはゲルを示し、ACNはアセトニトリルを示し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを示し、DMSOはジメチルスルホキシドを示し、ETHはエタノールを示し、且つ、MEHはメタノールを示す。また、「G⊃」は「⊃」の後に記載された溶媒で作製された超分子金属−有機ゲルを示す。このため、例えば、「G⊃ACN」は、アセトニトリルを用いて作製された超分子金属−有機ゲルを意味する。
本発明者らは、金属−有機ゲル(MOG)を製造するに当たって、異なる溶媒を用いることにより、製造された金属−有機ゲル(MOG)が調節可能性を有する特徴的な物理的、機械的、及び化学的性質を示すことを見出したが、これは、前記金属−有機ゲル(MOG)の多機能性に対する構造的依存性を説明する。
2.ゾル−ゲル転移
本発明の好ましい形態によると、超分子金属−有機構造体物質はゾル状態の物質である。また、本発明の好ましい形態によると、超分子金属−有機構造体物質はゲル状態の物質である。
前記超分子金属−有機構造体(MOF)、HKUST−1の製造については文献によく知られており、これは、典型的に1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)及び銅(Cu)をジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒内において一緒に反応させることを含む。
しかしながら、本発明の実施形態において、トリエチルアミン(NEt)塩基を用いることにより、前記反応により得られる自己組立体(自己組織化体、セルフアセンブリ)が完全に新規なハイブリッド金属−有機ゲル(MOG)物質を生成することは全く予想できなかった驚くべき効果である。図2を参照して後述するように、研究したところ、このゲル化合物は、熱、機械、及び化学的刺激に対して驚くべき反応を示す。
前記ユニークな多重反応性の現象は、以下のように説明される。
金属−有機ゲル(MOG)を形成するに当たって、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)1当量及び/又は第二銅(Cu(II))溶液1.5当量を連続して交互に添加すると、自己組立(自己組織化)又は相変化、すなわち、ゲルからゾルへの変換、又はゾルからゲルへの変換が起こる。
自己組立(自己組織化)に対する陽イオンCu(II)(Cu2+)及び陰イオンBTC3−効果に加えて、さらに攪拌して機械的な力を加える場合、前記物質はゲルに変わる統合性が阻害されて粘性のゾルとなる。驚くべきことに、前記ゾルを約1〜2分間超音波処理するか、或いは、前記ゾルを2分〜20分、好ましくは10分〜15分間放置すると、再びゲル状に戻る。このハイブリッド物質は攪拌に敏感であり、このため、より強い機械的な力を適用すると、相回復(ゾルからゲルに戻る)が起こるのにさらに長時間がかかることを見出した。
化学的及び物理的な反応に加えて、G⊃DMSOのゲル相は、また、70〜90℃(好ましくは75〜85℃、特に80℃付近)において数分間、具体的には約1分間〜約2分間のゾルを加熱することにより生成される。なお、上記は、DMSO溶媒を用いて製造したG⊃DMSOゲルについて説明したが、他の溶媒については同様の現象が起こりえる。
すなわち、銅化合物を含む溶液と、一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させることにより、ゾル状態の超分子金属−有機構造体物を製造できる。また、銅化合物を含む溶液と、一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させて反応物を得、前記反応物に熱を加える、または前記反応物を所定の時間放置することにより、ゲル状態の超分子金属−有機構造体物質が製造できる。
3.金属−有機ゲル(MOG)の粘弾性ハイブリッド物質への変換
本発明の好ましい形態によると、超分子金属−有機構造体物質は粘弾性物質である。
前記アセトニトリル溶媒を用いて製造したG⊃ACNゲルからもう一つのユニークな相変化を見出した。すなわち、前記ゲルが固体のような物質に変換されることが観察された。
図3は、前記ゲルが粘弾性物質に相変化することを概略的に示す模式図である。
図3に示すように、G⊃ACNを密閉バイアル内に48時間以上放置した場合、前記ゲルが粘弾性物質に変わった。ここで、放置時間の上限は、ゲルが粘弾性物質に変割る限り特に制限されないが、通常、100時間以下である。この物質の重要な物理的性質の一つは、その形状維持可能性である。この物質は柔らかいながらも、任意の形状に切断される程度に安定的であり(又は、手で僅かな圧力を加えることにより変形され)、このため、様々な3次元形状、複合的な形状、及び構造に手軽に成形される。なお、上記は、アセトニトリル溶媒を用いて製造したG⊃ACNゲルについて説明したが、他の溶媒については同様の現象が起こりえる。
すなわち、銅化合物を含む溶液と、一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させて反応物を得、前記反応物に熱を加えるまたは前記反応物を所定の時間放置することによりゲル状態の物質を製造した後、前記ゲル状態の物質を所定の時間放置することにより、粘弾性の超分子金属−有機構造体物質が製造できる。
4.高度に整列された微細構造を有する超分子ハイブリッド
図4は、アセトニトリルを溶媒として用いて製造した金属−有機ゲル(MOG)物質(a)、及びそれから形成された粘弾性物質(b)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
一方、図5〜図8は、他の溶媒、すなわち、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びエタノールを用いて製造した金属−有機ゲル(MOG)物質(各図において(a)で示すもの)と、それらからそれぞれ乾燥されたサンプル(各図において(b)で示すもの)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5〜図8に示すように、上述した乾燥された物質の走査電子顕微鏡(SEM)イメージは、前記物質の繊維状が所定の方向に成長したことを示す。すなわち、全ての乾燥されたサンプルは、異なる厚さを有する様々な大きさの短柵状に繊維が成長した厚い塊を示す。
図9は、溶媒としてメタノールを用いて製造した金属−有機ゲル(MOG)、G⊃MEH内に層状に形成された繊維状ネットワークを示す電子走査顕微鏡(SEM)イメージである。すなわち、本発明の好ましい形態によると、超分子金属−有機構造体物質は層状構造を有する。なお、図4〜9は、下記実施例における試験例2に従って撮影された写真である。
5.調節可能な機械的性質を有する超分子ハイブリッド
剪断変形(γ)及びこれに見合う剪断応力(τ)を加えるとき、超分子ハイブリッド金属−有機構造体(MOF)の構造的統合性を研究するために動的流動実験を行う。
貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は、それぞれ回復弾性挙動及び消散粘性挙動の測定値である。なお、本明細書において、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は、下記実施例の試験例1に記載された方法によって測定された値を採用する。
剪断弾性率(G=τ/γ)は、下記式:
の値であり、物質の機械的強度、すなわち、剪断変形により引き起こされた捩れに対する構造的抵抗性(剛性度)を反映する。
周波数掃引ダイナミック流動学研究を用いて前記図4〜図8のようにして製造された全てのゲルサンプルの剪断応力下での貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を測定したところ、互いに異なる値を示し、これは、異なる溶媒を適用することによりハイブリッド物質の機械的性質が調節される可能性があることを示唆する。
図10a及び図10bは、それぞれ超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を示すグラフであり、図10cは、超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた剪断弾性率(G)を示すグラフである。
一方、図10dは、超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後に得られた周波数に対する損失タンジェント(tanδ=G”/G’)値を示すグラフである。
図10a及び図10bに示すように、G⊃ACN、G⊃DMF、及びG⊃ETHは約10kPa〜約30kPaの比較的に大きな貯蔵弾性率(G’)、約5kPa〜約20kPaの比較的に大きな損失弾性率(G”)を有するのに対し、G⊃DMSO、及びG⊃MEHは約1kPa〜約5kPaの非常に小さな貯蔵弾性率(G’)、約0.5kPa〜約1.5kPaの非常に小さな損失弾性率(G”)を有する。その結果、図10cから明らかなように、G⊃DMSO、及びG⊃MEHは非常に小さな剪断弾性率を達成することができる。
しかしながら、弾性率値は、分子内に閉じ込められた溶媒の量に応じてサンプル間に非常に大きく変化した。
図10dに示すように、G⊃ACN、G⊃MEH、及びG⊃ETHは、約50Hz〜約100Hzの比較的に大きな角周波数において相変化を示す特徴的なピークを有することが確認される。特に、G⊃ACNから観察された大きな偏差は、G⊃ACNのハイブリッドネットワークが比較的に高い周波数において加えられた剪断力に対して相対的に更に弱いということを示す。逆に、G⊃DMSOは、実質的に無視可能な程度の相変化を示し、剪断変形に対して良好な機械的安定性を有することを示す。
ダイナミック変形スイープ測定を行ってG⊃DMSOサンプルのチキソトロピー性を調べてみる。
図10e及び図10fは、G⊃DMSOサンプルに対して行ったダイナミック変形スイープ測定結果を示すグラフである。
図10eに示すように、0.1Hzの角周波数において100%から0.1%までの変形の緩和中に15分内にゲル状態への再現可能な回復が確認される。
ダイナミック変形スイープ測定において、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との交点を耐変形率として決定する。
図10fに示すように、G⊃DMSOサンプルは耐変形率が16%であることが確認される。
一方、時間の関数として貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)における変化を研究するために、同じ実験をそれぞれ超分子金属−有機ゲル(MOG)を製造してから1時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に繰り返し行った。
流動学を用いてG⊃ACNの構造的転移をモニタリングすることにより、粘弾性状態への切り換わりが全体のネットワークの強度をどのように変化させるかが確認される。
図11a及び図11bは、それぞれG⊃ACNを製造してから1時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に得られた貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を示すグラフであり、図11cは、G⊃ACNを製造してから約1時間後、約24時間後、約48時間後、及び約72時間後に得られた周波数に対する損失タンジェント(tanδ)値を示すグラフである。
一方、図11dは、G⊃ACNを製造してから1時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後に得られた剪断弾性率(G)を示すグラフである。
図11a及び図11bに示すように、経時的に貯蔵弾性率(G’)が非線形状に実質的に上昇することから、動的構造的変形が裏付けられる。例えば、周波数0.1Hzにおいて、G⊃ACNは、製造してから約1時間後には約17kPa、約48時間後には約26kPa、約72時間後には約45kPaの貯蔵弾性率(G’)を有する。同様に、より高い周波数において、例えば、100Hzにおいて、G⊃ACNは、製造してから約72時間後の貯蔵弾性率(G’)が製造してから約1時間放置後の貯蔵弾性率(G’)の3倍を超える値を有する。
図11cに示すように、G⊃ACNは、製造後に約48時間以上放置した場合には損失タンジェント(tanδ)値が周波数に非依存的であり、いかなる相変化も感知されない。このような結果(見出し)は、図11dに示すように、G⊃ACNにおける弱い超分子ネットワークが経時的に次第に強くなり、剪断−誘発変形に機械的にさらに強くなることを示し、これにより、図4bに示すように、G⊃ACNが高度に組み込まれた微細構造を有する粘弾性物質に切り換わることが確認される。
図11eは、G⊃ACNの粘弾性物質に対して行ったダイナミック変形スイープ測定結果を示すグラフである。
図11eに示すように、G⊃ACNの粘弾性物質は耐変形率が11%であることが確認される。
更に、G⊃ACNを製造してから約24時間後、及び約72時間後の変形回復を比較するために、所定の応力クリープ試験を行う。図11の(f)は、G⊃ACNを製造してから約24時間後、及び約72時間後の所定の応力クリープ試験結果を示すグラフである。
図11fに示すように、G⊃ACNの粘弾性物質に対応するG⊃ACNを製造してから約72時間後のサンプルが、G⊃ACNを製造してから約24時間後のサンプルに比べて顕著に高いクリープ抵抗性及び変形回復応答を示す。
6.調節可能な電気的導電性を有する超分子ハイブリッド
導電性(電気伝導性)の測定は、全てのサンプルが互いに異なる導電性値を示し、このため、電気的性質の調節可能性を提示するということから興味深い結果を示す。
具体的に、Keithley 2614Bソースメーター、及び前記製造された各金属−有機ゲル(MOG)サンプルを有するコンダクションセルを用いて、且つ、10Vのバイアスを用いて測定したとき、G⊃MEHが最も高い電気導電性値9.4402S/mを示すのに対し、最も低い導電性値はG⊃DMSO(0.1388S/m)から観察される(図12a、及び図12bを参照すること)。
図12は、超分子金属−有機ゲル(MOG)の電圧に対する電流(I−V)のグラフであり、図12bは、図12aの一部の区間を拡大して示すグラフである。
G⊃DMF(0.2255S/m)及びG⊃DMSOにおける相対的に低い導電性値は、 安定したゲル相を取り囲んで強く相互作用をする溶媒分子によりそれの移動性が妨げられて全体電荷移動度が抑制される、電荷キャリアの「ケージ効果」に起因するものであると考えられる。
2番目に高い導電性はG⊃ACN(2.5125S/m)から観察され、次は、G⊃ETH(1.1367S/m)である。
G⊃ACN(2.5125S/m)の場合、最初には比較的低い導電性が観察されたが、驚くべきことに、同じゲルサンプルから誘導された粘弾性物質が顕著に高い導電性9.8583S/mを示し、これは、約300%の向上を示す。前記3.の項目において記述したように、前記粘弾性物質は異なる形状に切断され、押付により薄いシートや膜に成形され、このため、その相対的に高い電気導電性値は、前記物質の潜在的電子機器用途への適用可能性を示す。
一方、図12aにおいて、±5Vの間の平らな部分は、Keithley 2614Bソースメーターのアルミニウム電極のニー電圧 (knee電圧)と関連すると認められる。
また、交流インピーダンスの測定からも、周波数の関数として前記金属−有機ゲル(MOG)のユニークな電気的特性が分かる。
前記製造された全てのゲルサンプルから、小さなハンプを有する典型的なワールブルクインピーダンスが観察される。これは、前記サンプル内において弱い相互作用をするイオン性物質及び潜在的に金属−有機構造体(MOF)ナノ粒子と関連して発生する強い電荷移動を示唆する。
ナイキスト線図を用いて前記サンプルのイオン性伝導度値を測定したところ、それぞれ下記の通りであった。ここで、具体的な測定方法は、下記実施例の試験例6に従って行った。
また、図13は、より高い周波数範囲(inset)において拡張された領域を有するG⊃ETHのナイキスト線図であり、図13bは、図13aの一部の区間を拡大して示すグラフである。
図14は、G⊃ACNから誘導された粘弾性ハイブリッド物質のナイキスト線図であり、図14bは、図14aの一部の区間を拡大して示すグラフである。
7.ハイブリッドナノ粒子の調節された成長に対する速い合成
超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質の製造のための本発明の実施形態による方法は、同時にゲル繊維性組立体から超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の生成を調節可能にする。
すなわち、本発明の好ましい形態によると、超分子金属−有機構造体物質はナノ粒子状である。
ここで、超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の生成方法は、特に制限されないが、下記方法であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、銅化合物を含む溶液と、一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させて反応物を得、前記反応物に熱を加えるまたは前記反応物を所定の時間放置することによりゲル状態の物質を製造し、前記ゲル状態の物質を乾燥させることにより、ナノ粒子形態の超分子金属−有機構造体物質が製造できる。
本発明の実施形態による方法によれば、約30nm〜約150nmの粒子径を有するナノ粒子を製造することができる。
原子間力顕微鏡(AFM)及び光学イメージを用いて、製造された金属−有機構造体(MOF)の粒子径を分析した結果を図20に示す。具体的には、下記実施例の試験例3に従って行った。
本発明の実施形態による合成方法は、ナノ寸法の超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質の速い合成方法を提案し、したがって、産業的に量産するために開発可能な新規な方法を提案する。
図15は、前記実施形態において製造された金属−有機ゲル(MOG)を常温において長時間乾燥させた場合、前記ゲルがハイブリッド繊維内に含浸されている球状のナノ寸法の金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド粒子となることを示す写真である。
図16は、前記図15に示すゲルを極性有機溶媒、例えば、メタノールに1分未満浸漬した場合、全てのゲルの繊維が破壊されて純粋な金属−有機構造体(MOF)ナノ結晶を生成することを示す写真である。
すなわち、本発明の実施形態により金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドゲルを生成した後、これを乾燥させたり、乾燥後に洗浄したりすることにより、金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子を高速且つ容易に製造することができる。
8.超分子金属−有機ゲル(MOG)により形成し易い薄膜
上述した超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド物質のユニークな物理的性質とは別途に、これらのゾル−ゲル相のメリットの一つは、超分子金属−有機構造体(MOF)ハイブリッド薄膜が製造し易いということである。前記ナノ粒子のナノ寸法の結晶サイズにおける均一性は、均一であり、コンパクトであり、しかも、平らな薄膜を製造可能にする。
前記薄膜は、公知のコーティング方法、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、及びドクターブレードフィルムコーティング方法を用いて任意の支持体の上に容易に製造可能である。
前記支持体としては、ガラス基板、シリコン、スズドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)基板などが使用可能であるが、これらに限定されない。
例えば、前記製造されたG⊃MEHゲルに溶媒、例えばメタノールを添加して、前記ゲルの繊維状のネットワークを破壊して純粋なナノ粒子を得、前記製造されたナノ粒子を含有する溶液をガラス基板などの表面にディップコーティングして前記ナノ粒子の薄膜を得る。
一方、前記薄膜は、ナノ粒子懸濁液の濃度に応じて異なる厚さ(約100nm〜約10μmの厚さ)に製造される。
本発明の一実施形態においては、ドクターブレード方法を用いてガラス基板の上に前記ナノ粒子懸濁液の濃度を調節してコーティングして、それぞれ1μm、2μm、5μm、及び10μmの厚さの薄膜を製造し、製造された各フィルムの写真を図17に示す。
一方、G⊃DMSOのゾル相は、これらのハイブリッド物質の非常にコンパクトで且つ均一な薄いコーティングを手軽に製造可能にする。空気乾燥された前記コーティングは、メタノールに約10分〜約15分間丁寧に浸漬することにより直ちに洗浄されて、純粋な金属−有機構造体(MOF)ナノ粒子フィルムを得るために不所望の水溶性前駆体を除去可能にする。これにより製造された薄膜の写真を図18に示す。図18において、Aで示す部分が有機基板の上に形成された薄膜である。
図18の「A」で示す薄膜は、洗浄されない場合に高温に加熱すると緑色を帯びるのに対し、洗浄された薄膜はHKUST−1薄膜において予想される通常の色の変化、すなわち、中心銅からの配位された水を除去することにより青緑色から濃い青色への色の変化が起こる(図19を参照すること)。
前記方法により製造された薄膜は高い均一性を示し、例えば平均粒径約100nm以下、具体的には約30nm以下において表面粗さは約10nm〜30nmの範囲である。
具体的に、前記薄膜の表面形状を示すのが図20である。
図20から、前記薄膜に存在するナノ粒子の粒径が約30nm以下であることが分かる。
図21は、図20の写真において横に示す線部分の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)トポグラフィーで測定したグラフである。ここで、具体的な測定方法は、下記実施例の試験例5に従って行った。
図21から、前記製造されたフィルムの表面粗さは約10nm〜30nmの間であることが分かり、これは、前記薄膜が非常に均一に形成されたことを示す。
図22は、前記薄膜内のナノ粒子の結晶構造を確認する2次元X線回折グラフであり、下のグラフは、ナノ粒子が蒸着されていない薄膜自体の2次元X線回折グラフであり、1で示すグラフが、ナノ粒子が蒸着された薄膜の2次元X線回折をシミュレーションしたグラフである。具体的には、下記実施例の試験例4に従って行った。
このため、本発明は、本発明の超分子金属−有機構造体物質を含む成形品、特に本発明の超分子金属−有機構造体物質を含むフィルムを包含する。また、本発明は、本発明の成形品を備える電子機器をも包含する。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、下記の実施例及び比較例は説明の目的のためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではない。
本出願明細書において、別途に断わりのない限り、本出願明細書にいて超分子金属−有機構造体(MOF)物質について説明するために用いられた金属−有機ゲル(MOG)、金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子などのサンプルは、下記の実施例に記載の方法により製造されたものであり、各試験若しくは分析は、下記の試験例に記載の方法により行われた。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。
実施例1:金属−有機ゲル(MOG)(G⊃MEH)及び金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の製造
約2mmol(メタノール溶液中のBTCの濃度=約2mM)の1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)をメタノールに溶解させ、ここに約6mmol(メタノール溶液中のトリエチルアミン濃度=約6mM)のトリエチルアミンを添加して完全可溶性リガンドを形成する。前記完全可溶性リガンドが形成された溶液を約5分間超音波処理する。
メタノールに約3mmol(メタノール溶液中の硝酸銅の濃度=約3mM)の硝酸銅を入れ、約1分間〜約2分間更に超音波処理して溶解させて硝酸銅溶液を製造する。
次いで、前記完全可溶性リガンドが形成された溶液を数秒間激しく振とうしながら前記硝酸銅溶液を添加して混合物を製造する。得られた混合物は、ゾル類似挙動を示し、金属−有機構造体(MOF)であった。次いで、前記混合物がゲル類似挙動を示すまで放置する。約2分間放置すると、前記混合物がゲル類似挙動を示す。ここで、前記ゲル類似挙動は、チューブ反転方法により確認される。これにより、金属−有機ゲル(MOG)(G⊃MEH)が製造される。
前記金属−有機ゲル(MOG)(G⊃MEH)を常温において乾燥させる。次いで、前記乾燥させた金属−有機ゲル(MOG)(G⊃MEH)をメタノールに約1分未満浸漬させた後に洗浄する。これにより、金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子が形成される。
実施例2:金属−有機ゲル(MOG)(G⊃ETH)及び金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の製造
前記完全可溶性リガンドが形成された溶液の製造時及び前記硝酸銅溶液の製造時にメタノールの代わりにエタノールを用いた以外は、実施例1の方法と同様にする。
実施例2においては、前記混合物を約5分間放置すると、ゲル類似挙動を示す。
実施例3:金属−有機ゲル(MOG)(G⊃ACN)及び金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の製造
前記完全可溶性リガンドが形成された溶液の製造時及び前記硝酸銅溶液の製造時にメタノールの代わりにアセトニトリルを用いた以外は、実施例1の方法と同様にする。
実施例3においては、前記混合物を約5分間放置すると、ゲル類似挙動を示す。
実施例4:金属−有機ゲル(MOG)(G⊃DMF)及び金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の製造
前記完全可溶性リガンドが形成された溶液の製造時及び前記硝酸銅溶液の製造時にメタノールの代わりにN,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は、実施例1の方法と同様にする。
実施例4においては、前記混合物を約10分間放置すると、ゲル類似挙動を示す。
実施例5:金属−有機ゲル(MOG)(G⊃DMSO)及び金属−有機構造体(MOF)ハイブリッドナノ粒子の製造
前記完全可溶性リガンドが形成された溶液の製造時及び前記硝酸銅溶液の製造時にメタノールの代わりにジメチルスルホキシドを用いた以外は、実施例1の方法と同様にする。
実施例5においては、前記混合物を約20分間放置すると、ゲル類似挙動を示す。
実施例6:薄膜の製造
実施例1において製造された金属−有機ゲル(MOG)を金属−有機構造体(MOF)薄膜の製造のための前駆体として用いる。前記金属−有機ゲル(MOG)を約20mlのメタノールを用いて3回洗浄し、次いで、遠心分離してナノ−金属−有機構造体(nano−metal−organic framework:NMOF)粒子を集める。
遠心分離チューブの底面に残留した懸濁液を集め、次いで、前記懸濁液を、ブレードの先端及びガラス基板の表面間の隙間の設定を数マイクロメートルから数十マイクロメートルまで、具体的には約4μmから約50μmまでに変化させながらドクターブレード技術を用いてガラス基板に蒸着して金属−有機構造体(MOF)薄膜を形成する。また、前記ナノ−金属−有機構造体(NMOF)懸濁液は、ディップコーティング及びスピンコーティング方法(順次に、i)約500rpmで約50秒、ii)約800rpmで約50秒、iii)約1000rpmで約20秒)にも成功的に使用可能である。
実施例7:薄膜の製造
実施例1において製造された金属−有機ゲル(MOG)の代わりに、実施例2において製造された金属−有機ゲル(MOG)を用いた以外は、前記実施例6の方法と同様にして薄膜を製造する。
実施例8:薄膜の製造
実施例1において製造された金属−有機ゲル(MOG)の代わりに、実施例3において製造された金属−有機ゲル(MOG)を用いた以外は、前記実施例6の方法と同様にして薄膜を製造する。
実施例9:薄膜の製造
実施例1において製造された金属−有機ゲル(MOG)の代わりに、実施例4において製造された金属−有機ゲル(MOG)を用いた以外は、前記実施例6の方法と同様にして薄膜を製造する。
実施例10:薄膜の製造
実施例1において製造された金属−有機ゲル(MOG)の代わりに、実施例5において製造された金属−有機ゲル(MOG)を用いた以外は、前記実施例6の方法と同様にして薄膜を製造する。
比較例1〜5
実施例1〜5において、それぞれトリエチルアミンの代わりに水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて反応を行う。それぞれの反応混合物を放置したところ、金属−有機ゲル(MOG)が生成される代わりに、沈殿物が形成されることが確認される。それぞれの実験を順次に比較例1〜5と称する。
比較例6〜10
実施例1〜5において、それぞれトリエチルアミンの代わりに水酸化カリウム(KOH)を用いて反応を行う。それぞれの反応混合物を放置したところ、金属−有機ゲル(MOG)が生成される代わりに、沈殿物が形成されることが確認される。それぞれの実験を順次に比較例6〜10と称する。
試験例1:流動性試験
温度調節された基底板を備えるPhysica MCR−301(アントンパール社製)流動計を用いて貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)などの流動測定を行う。全ての試験において、基底板と上部板との間の間隔を約1mmに保った平行板配列を用いる。クリープ回復試験及び応力回復試験のために、約10Paの所定の剪断応力を適用する。実施例1〜5で得られた金属−有機ゲル(MOG)の結果を図10および図11に示す。
試験例2:走査電子顕微鏡(SEM)イメージ
SC7620 Polaronスパッタコーター(クォーラムテクノロジーズ社製)を用いて金属−有機ゲル(MOG)試片を金薄膜でコーティングする。次いで、走査電子顕微鏡(カールツァイス社製、EVO LS15)を用いて写真を撮影する。実施例1〜5で得られた金属−有機ゲル(MOG)の結果を、それぞれ、図6、図8、図4、図5および図7に示す。
試験例3:無限焦点顕微鏡(infinite focus microscopy:IFM)分析
金属−有機構造体(MOF)薄膜の光学イメージ及び表面高さトポグラフィーを無限焦点顕微鏡(IFM)(アリコナ社製Infinite Focus 3D profilometer)を用いて分析する。
試験例4:X線回折分析
ナノ粒子及び金属−有機ゲル(MOG)サンプルのX線粉末回折特性をCu−Kα光源(約1.541Å)を有するリガク社製Smart Lab回折計を用いて分析する。回折データは、約2°から約30°までの2θ角、約0.01°の間隔、及び約1°/分の段階速度の条件下で収集する。
試験例5:原子力顕微鏡(AFM)分析
原子力顕微鏡(AFM)高さトポグラフィー及び振幅変調−周波数変調タッピングモードイメ−ジングを大気中においてアサイラムリサーチ社製MFP−3D AFMを用いて行う。振幅変調−周波数変調カンチレバーホルダーに取り付けられた共振周波数約300kHz、力の定数が約40N/mのシリコンAFMプローブ(Tap300−G、バジェットセンサー)をナノ機械特性の測定のために用いる。先端校正は、ヤング率が約4GPaに設定されたMatrimid(登録商標)5218の標準サンプルを用いて行う。
試験例6:電気伝導性試験
金属−有機ゲル(MOG)サンプルの電気伝導性は、Keithley 2614Bソースメーター及びアルミニウム電極が約1cm置きに配置された注文製作型伝導性セルを用いて測定する。前記電気伝導性の測定のためのセッティングを図23に示す。
粘弾性固体の伝導性は、平らなアルミニウム電極対の間に配置されたアセトニトリル(ACN)粘弾性物質の薄膜に対して測定する。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれらに限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲において定義している基本概念を用いた当業者の色々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。

Claims (17)

  1. 銅化合物と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミンと、および3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンとの反応生成物である超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲル

    式中、R、R及びRは、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
  2. 前記銅化合物は硝酸銅(Cu(NO)であり、前記一般式1で表わされるトリアルキルアミンはトリエチルアミン(NEt)であり、前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)である、請求項1に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲル
  3. 前記反応は、非水性有機溶媒内において行われる、請求項1または2に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲル
  4. 前記非水性有機溶媒は、C1〜C10のアルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル(ACN)、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲル
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルから得られる、粘弾性物質。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルから得られる、ナノ粒子形態を有する超分子金属−有機構造体物質。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルから得られる、層状構造を有する超分子金属−有機構造体物質。
  8. 銅化合物、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミン、および3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを非水性有機溶媒内において反応させることを含み、前記銅化合物は硝酸銅(Cu(NO )である、超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルの製造方法。

    式中、R、R及びRは、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
  9. 記一般式1で表わされるトリアルキルアミンはトリエチルアミン(NEt)であり、前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)である、請求項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルの製造方法。
  10. 前記非水性有機溶媒は、C1〜C10のアルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトライミド(DMAc)、アセトニトリル(ACN)、トルエン、ジオキサン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、ピリジン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項またはに記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルの製造方法。
  11. 前記非水性有機溶媒は、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(ACN)、又はこれらの混合物である、請求項10のいずれか1項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルの製造方法。
  12. 前記銅化合物を含む溶液と、前記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び前記3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させて反応物を得、前記反応物に熱を加える、または前記反応物を所定の時間放置することを含む、請求項11のいずれか1項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルの製造方法。
  13. 化合物を含む溶液と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させて反応物を得、前記反応物に熱を加えるまたは前記反応物を所定の時間放置することによりゲル状態の物質を製造した後、前記ゲル状態の物質を所定の時間放置することを含み、前記銅化合物は硝酸銅(Cu(NO )である、粘弾性の超分子金属−有機構造体の製造方法。

    式中、R 、R 及びR は、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
  14. 化合物を含む溶液と、下記一般式1で表わされるトリアルキルアミン及び3以上のカルボキシル基により置換されたベンゼンを含む溶液と、を反応させて反応物を得、前記反応物に熱を加えるまたは前記反応物を所定の時間放置することによりゲル状態の物質を製造し、前記ゲル状態の物質を乾燥させることを含み、前記銅化合物は硝酸銅(Cu(NO )である、ナノ粒子形態の超分子金属−有機構造体の製造方法。

    式中、R 、R 及びR は、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。
  15. 請求項1〜のいずれか1項に記載の超分子金属−有機構造体ハイブリッドゲルを含む成形品。
  16. 前記成形品はフィルムである、請求項15に記載の成形品。
  17. 請求項16に記載の成形品を備える電子機器。
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