JP6697385B2 - 可溶性Fcガンマレセプタを含む組成物の安定性をインビトロで測定するための方法 - Google Patents

可溶性Fcガンマレセプタを含む組成物の安定性をインビトロで測定するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、本質的に、可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる組成物の安定性をインビトロ(in vitro)で測定するための方法に関し、その方法がヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面を1セット量(a set amount)の凝集ヒトIgGと接触させ;そのヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面を1セット量の可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの組成物と接触させ;そのヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合した凝集ヒトIgGの量を測定し、そしてステップ(c)で測定したヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合された凝集ヒトIgGの量をレファレンス値と比較し、それにより可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる組成物の安定性を測定するステップを含み、前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面は、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBでコートされ得る哺乳動物の細胞もしくは細胞株、および/または、固体表面であるか、または該細胞もしくは細胞株および/または該固体表面であることを特徴とする。
Fcレセプタ(FcRs)は、それらが免疫応答の範囲および強さをコントロールする免疫システムにおいて中心的役割を果たす。病原体が循環血液に接近した後、それらは免疫グロブリン(Igs)によりオプソニン作用を受ける。その結果である免疫複合体(ICs)は、高結合活性(high avidity)を有する多価性のために、FcRsのクラスタリング(clustering、集合)に細胞を導くことができるFcRと結合し、いくつかのエフェクタ機能のトリガーとなる(メッツゲル(Metzger, H.)、ジャーナル オブ イムノロジィ(J. Immunol.)1992、149:1477−1487)。これらは、発現したFcRタイプや関連タンパク質に依存して、後続の病原体の無力化を伴うエンドサイトシスや抗原提示、抗体依存性の細胞性障害(ADCC)、メディエータの分泌や抗体産生の調整を含む(フリートマンら(Fridman et al)、イムノロジカル レビュー(Immunol. Rev.)1992、125:49−76;ファン デ ウィンケルおよびカペル(van de Winkel and Capel)、イムノロジィ トゥデイ(Immunol. Today)1993、14:215−221)。
免疫複合体は、抗体、抗原、補体および順応的免疫性の一部としての種々のレセプタの間の複雑な相互作用に由来する。免疫複合体における抗体に結合した抗原は、少量の「外来」抗原でさえも循環から排除することが生理学的に可能な種々の細胞性メカニズムにより通常取り除かれる。免疫複合体は、タンパク質(感染、ワクチン、医薬品、等)やカスケードを活性化するためにタンパク質キャリアを必要とする非タンパク質材料(ハプテン)のような外来物質にヒトがさらされたときに形成され得る。自己免疫異状(disorder)は、(病原性の)免疫複合体が異なる器官に病理学的に堆積したときに、器官損傷/疾病にいたる炎症性カスケードを開始させる。免疫複合体疾患は、これらの成分の1またはそれ以上における調整不全が生じたときに、無数のやり方で明らかにすることができる。
特異的なFcRsは、全ての免疫グロブリン(Ig)のクラスに対して存在する。IgGがヒト循環系に見られる最も豊富な抗体アイソタイプであるため、結果として、IgGに対するFcRs、Fcガンマレセプタ(FcγRs)は、最も広範な多様性を伴い最も豊富である。ヒトFcγRsに関連するオルソロガスな(orthologous)タンパク質は、サル等の他の霊長類やネズミを含む他の哺乳動物の種に見られる。ヒトのように、他の種は、対応するIgGサブクラスに対して変化する親和性を有するいくつかのFcγRsを有している。FcγRsは活性化レセプタおよび抑制レセプタの両者を含んでおり、このポジティブおよびネガティブなシグナルの統合が生じる免疫応答のために必要である。
ヒトには、FcγRsの3つのクラスが存在する:高親和性レセプタFcγRI、低親和性レセプタFcγRIIおよびFcγRIIIである。FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIIIA(CD16)は、タイプIの膜貫通タンパク質としてまたは可溶性の形態で生じるものの、グリコシルホスファチジルイノシトールで裏打ちされた形態のFcγRIII(FcγRIIIB)も存在する。また、FcγRsは、種々のアイソフォーム(FcγRIA、B1、B2、C;FcγRIIA1−2、B1−3、C)やアレル(対立遺伝子、allele)(FcγRIIa1−HR、−LR;FcγRIIIb−NA1、−NA2)(ファン デ ウィンケルおよびカペル、イムノロジィ トゥデイ1993、14:215−221)を生じる。上述したように、これらのFcγRsは、IgGに対して異なる親和性、特に異なるIgGサブクラスに対して異なる結合親和性を有している。ヒトには4つのIgGサブクラスがあり、血清中での豊富さの順で呼称される(IgG1(66%)、2(23%)、3(7%)および4(4%);ハシラら(Hashira et al.)、ペディアトリクス インターナショナル(Pediatr. Int.)2000、42(4):337−342)。
FcγRIIは免疫適格細胞で最も広い分布を有するレセプタであり、それとともに、FcγRIIIAは免疫複合体のエンドサイトシスに主として含まれる。FcγRIIは、3つのアイソフォーム、FcγRIIA、FcγRIIBおよびFcγRIICに存在するが、しかしながらFcγRIIBおよびFcγRIICの細胞外領域が同じであるのに対して、FcγRIIAはほんの7%のアミノ酸残基によりその細胞外領域が異なる。それでも、いずれの形態も、ヒトおよびマウスIgGサブクラスに対する結合特性(ファン デ ウィンケルおよびカペル、イムノロジィ トゥデイ1993、14:215−221)、および、それらのヒトIgGsに対する異なる親和性(ブルーンズら(Bruhns et al.)、ブラッド(Blood)2009、113:3716−3725)により区別され得るものである。FcγRIIIAはADCCの導入のためのキーとなるレセプタであるものの、抑制FcγRIIBはB細胞に発現される単独のFcγRを表している。そこで、FcγRIIBの発現は、B細胞のダウンレギュレーションに必須であり、結果として抗体産生の減少となる。
sFcγRIIBを基に、本発明者らは、自己免疫疾患の治療のための新規な手法および方法を開発した。最も進歩した産物はSM101であり、病原性免疫複合体の結合のために免疫細胞に発現するFcγRsと競合する。SM101は、現在、紅斑性狼瘡(Lupus Erythematosus)や免疫性血小板減少症(Immune Thrombocytopenia)等の自己免疫異状の治療のために、米国および欧州において臨床治験に係わりあっている。
タンパク性の医薬品、例えば、SM101を含む医薬品や医薬品組成物が保管中に劣化することが推測されており、それゆえ、それらを含むタンパク質や組成物の残存活性を反映する再現可能なインビトロ(in vitro)でのテストの開発が高度に望まれている。
従って、本発明の技術的課題は、可溶性ヒトFcγRsを含む組成物の安定性をインビトロで測定するための方法を開発することであった。
本発明者らは、「正常な(normal)」または「健康的(healthy)」なヒトの集団から得たヒトIgG調製物(例えば、市販の静脈内免疫グロブリン(IVIG)調製物)が、正規化された確かな様式で提供されうる凝集ヒトIgGのこれまで未確定な分画を含むことを見出している。これは驚くべきことであり、病原性免疫複合体のそのような類似物が異なる「正常な」や「健康的」なヒトの集団から誘導され得ることは以前には知られていなかったためである。その凝集ヒトIgGは、FcγRレセプタに結合し、それによりインビボ(in vivo)での状況を擬態し(すなわち、上述した病原性免疫複合体を模倣する)、このため、可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む組成物の安定性を検出し(detect)測定し(determine)検定する(verify)ことを目的とする方法に使用され得る。とりわけ、凝集ヒトIgGは、例えば、インゲルハードら(Engelhard et al.)の(1990)、ヨーロピアン ジャーナル オブ イムノロジィ(Eur. J. Immunol.)20、1367−1377、ブルーンズら(Bruhns et al.)の(2009)、ブラッド ジャーナル(Blood J.)113(16)、3716−3725や米国特許2008/008700に記載されたように熱凝集したものではない。ブルーンズらは、ホウ酸緩衝生理食塩水中、pH8.0、63℃で30分間のヒトIgGのインキュベーションにより後続の処理を伴うことなく生成された熱凝集ヒトIgG(3718頁、免疫グロブリン結合アッセイ)、および、細胞培養上清から精製した抗−NIP mAbsと複合化した化学修飾BSA(NIP12−BSA−biotin)に由来する人工的な免疫複合体(3717頁、抗体および試薬)を記載している。同様に、米国特許2008/008700は、8頁の[0093]にHAGG(熱凝集IgG)の使用を開示している。
本発明は、従って、組成物、好ましくは医薬品組成物(医薬品と同義)の安定性(保存安定性や保管安定性等)をインビトロで測定するための方法に関し、その組成物が可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる組成物であり、その方法は、
(a)ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面を1セット量の凝集ヒトIgGと接触させ、
(b)前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面を1セット量の前記可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはしIIIBの組成物と接触させ、
(c)前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合した凝集ヒトIgGの量を測定し、
(d)ステップ(c)において測定した前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合された凝集ヒトIgGの量をレファレンス値と比較し、それにより可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる前記組成物の保存安定性、時間的安定性、保存寿命等の安定性を測定する、
ステップを含み、
前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面は、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBでコートされ得る哺乳動物の細胞もしくは細胞株、および/または、固体表面であるか、または該細胞もしくは細胞株および/または該固体表面であることを特徴とする。
本発明の方法におけるステップ(a)および(b)は、並行してまたは連続して行われ得る。また、ステップ(b)および(a)の順序を反対にすることも予想される。
本発明の方法がステップ(c)の前に、好ましくはステップ(a)および(b)の後に行われるべき洗浄ステップを含むことも予想される。
本発明の文脈で用いられる可溶性ヒトFcガンマレセプタは可溶性FcガンマIIBレセプタであることが好ましい。その可溶性ヒトFcガンマIIBレセプタはSM101(配列番号1)であることが特に好ましく、例えば哺乳動物の細胞や大腸菌(E. coli)のような細菌細胞等のホスト細胞におけるこれらレセプタの発現を介して取得され得るこれらのレセプタの調製物を含む。
本発明は、同様に、本発明の方法および実施形態において、ここに定められる凝集ヒトIgGの使用に関する。
本発明の文脈において、用語「インビトロ法」は、インビボ法に対して、ヒトや動物の身体の外側で行われる方法に関する。
語句「方法(method)」は、「テスト(test)」や「アッセイ(assay)」等に置き換えられてもよい。
用語「安定性(stability)」は、「保存安定性(shelf stability)」、「保存寿命(shelf life)」や「半減期(half-time)」を含む。組成物の「安定性」は、そこに含有される主要成分の安定性、すなわち、ここに定められる可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの安定性に本質的に関する。その安定性は、時間、つまり「時間的安定性」等、温度、バッファ条件、可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの産生ホスト、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの配列、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの製造方法等の異なるパラメータにより影響される。
本発明の組成物(可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる組成物)の安定性を測定することにより、その組成物(すなわち、可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBであるその組成物の主要成分の本質において)の品質/状態/結合能力をモニタ/コントロールすることが同様に可能である。
組成物」は、好適な実施形態において、医薬品組成物(医薬品と同等である)や診断上の組成物であり、薬学的または診断上で受容可能なキャリア、バッファ、成分等をさらに含んでもよい。また、その組成物は、さらに治療上の活性成分を含んでもよい。
用語「凝集ヒトIgG」(しばしば「ヒト凝集IgG」等としても表記される)は、ヒトIgG調製物の凝集した部分に関する。その調製物は、驚くべきことに、静脈内、皮下または筋肉内の投与のために用いられる血液ベースの製造物(プールされたヒトIgG調製物やIVIGs等)に存在しており、その製造物はプールされた(好適には多価の)IgGを含有している。このため、凝集ヒトIgGは、好適には、IVIG調製物/組成物等のプールされたヒトIgG調製物から取得/分離され得るものであり、取得可能である。その凝集ヒトIgGは、少なくとも90%のヒトIgG含量により特徴づけられる「ヒトタンパク質」から分離され得る凝集ヒトIgGであることが予想される。そのヒトタンパク質は、ヒトの血清や血漿に由来する/由来し得るものであり、好適な実施形態において、世界保健機関の医薬品統計法共同研究センタ(WHO Collaborating Centre for Drug Statistics Methodology)(WHOCC)の解剖治療化学(ATC)分類法(Anatomical Therapeutic Chemical classification system)に従うATCコードのJ06BA01またはJ06BA02を有する正常ヒト免疫グロブリン(ヒトIgG)として特徴づけられ、同定される。用語「ヒトタンパク質」は、ここで用いられるときに、プールされたヒトIgG調製物を含む。好適な実施形態において、ヒトIgGはサブタイプIgG1のIgGを少なくとも50%含む。より好適な実施形態において、ヒトIgGは(さらに)サブタイプIgG2のIgGを少なくとも20%含む。特に好適な実施形態において、その凝集ヒトIgGは、ベリグロビン(Beriglobin、登録商標)、バリテクト(Varitect、登録商標)やベンビッグ(Venbig、登録商標)から取得/分離されまたは取得可能であり、ベリグロビンが好適である。ベリグロビンは、95%以上、例えば100%のIgGを含む。例えば、100%のIgGを含むベリグロビンは、61%のIgG1、28%のIgG2、5%のIgG3、6%のIgG4を含んでおり、最大で約1%のIgAを含んでもよい。ベリグロビン、バリテクトおよびベンビッグについて示されるパーセント値は、%(w/w)を示す。代表的なベリグロビンは、バッチ番号(batch number)の26840311Aまたは23840311Bを有するものである。バリテクトは、95%以上、例えば100%のIgGを含む。例えば、100%IgGのバリテクトは、59%のIgG1、36%のIgG2、3%のIgG3、2%のIgG4を含んでおり、5%以下のIgAを含んでもよい。ベンビッグは、95%以上、例えば100%のIgGを含む。例えば、100%IgGのベンビッグは、52−80%のIgG1、26−50%のIgG2、2.4−5%のIgG3、0.3−1%のIgG4を含むことができる。もちろん、当業者は、ベリグロビン、バリテクト、ベンビッグ、または、これら3つの医薬品のような他のいずれかの組成物を、本発明の方法および使用に適用することができる。別の好適な凝集ヒトIgGは、サブクビア(Subcuvia、登録商標)から取得/分離されまたは取得可能である。例えば、100%IgGのサブクビアは、45−75%のIgG1、20−45%のIgG2、3−10%のIgG3、2−8%のIgG4を含むことができる。サブクビアについて示されるパーセント値は、%(w/w)を示す。代表的なサブクビアは、バッチ番号のBVNG1M032Aを有するものである。
しかしながら、当業者は、これら3つの医薬品を用いるばかりではなく、自身でヒトIgG調製物を調製することもできる。実際、当業者は、ここに記載されたようにIgG調製物を調製することがたやすい立場にあり、例えば、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900またはそれ以上、好適には1000以上のヒトのドナーの血漿からIgGをプールすることで、それにより(プールされた)ヒトIgG調製物が得られる。結果として、本発明に適用されるようなヒトIgG調製物は、好適には95%以上、例えば100%のIgGを含む。ここに好適に適用されるIgG調製物は、全体のIgG含量が100%(w/w)を超えない条件で、次のようなIgGサブクラス:52−80%(w/w)のIgG1、26−50%(w/w)のIgG2、2−5%(w/w)のIgG3および/または0.2−6%(w/w)のIgG4、を含む。
さらに好適な実施形態において、そのヒトタンパク質は、少なくとも100、つまり100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000等のヒト(健全または「標準的(standard)」)のドナーからの混合された血清または血漿からなるかまたは含んでおり、全4つのIgGサブグループを含む。少なくとも500のヒト(健全または「標準的」)のドナーからの混合された血清または血漿が好適である。用語「健全」は、現時点(提供する時点)で血液を提供するための標準的な適格性基準を満たす個人を意味しており、その適格性基準が繰り返しの改善や変更を受けることに留意する。
別の実施形態において、その凝集ヒトIgGは、サイズ排除クロマトグラフィを含む分離法によりそのヒトタンパク質から取得可能な凝集ヒトIgGであることが予想される。好適な実施形態において、そのサイズ排除クロマトグラフィは、その凝集ヒトIgGから単量体および/または二量体のIgGを分離する。本発明の文脈において用いられ得る凝集ヒトIgGを分離するための手段および方法は、このどこかに(例えば、実施例欄)開示されている。また、本発明の凝集ヒトIgGは、例えば、エンゲルハードらのヨーロピアン ジャーナル オブ イムノロジィ((1990), Eur. J. Immunol. 20, 1367-1377)、ブルーンズらのブラッド ジャーナル((2009), Blood J. 113(16), 3716-3725)や米国特許2008/008700に記載されているような熱凝集したヒトIgGではない。実際、熱凝集IgGは、ここに記載されているように取得された/取得可能な凝集IgGと異なっている。つまり、熱凝集は、一定のタンパク質に融解温度(Tm)以上の温度がかけられたときに、タンパク質の部分的な変性の結果である。融解温度は、タンパク質の機能であり、ヒトIgGsの混合物の場合、広い範囲のTmが必然的に得られる。このため、凝集の度合は、用いたIgGの混合物に依存して、1バッチ毎に変化するものである。
さらに、いくつかの単量体IgGは、当然に、熱による凝集IgGの調製物の一部であり、このため不純物と考えられる単量体IgGの量を変えることなく凝集IgGの調製物を認めることはできない。しかしながら、ここに記載されるような凝集IgG調製用の方法では、凝集IgGから単量体および/または二量体のIgGを分離しており、このため、ここに記載された方法により取得された/取得可能な結果となる凝集IgGは、従来技術からの熱凝集したIgGと異なる。
従って、熱凝集したIgGは、長期の安定性をもたらし、バッチ放出テストや他のルーチンテストに完全に適している本発明により開示された凝集IgG調製物と同等のものではない。
時には静脈内投与用の血漿免疫グロブリンとも称される静脈内免疫グロブリン(IVIS)調製物等のプールされたヒトIgG調製物は、数百の健全なドナーのプールされた血漿に由来するものであり、ドナー集団の累積的な抗原履歴を反映する免疫抗体および自然抗体(NAbs)の両者を含有することが予想される。プールされたヒトIgG調製物は、その自然により高価なポリクローナル性であり、多くの抗体種を含有している。このため、それは、病原体および外来抗原、ならびに、自己/自己抗原(self/autoantigens)を含む広範囲の抗原と反応するNAbsに向けられた特性を有する「免疫抗体」と俗称される大きなスペクトルを含有する。NAbsは、意図的な免疫化や独立して外来抗原にさらすことなく生成されるものとして定義される。
静脈内調製物に加えて、皮下投与用(SCIG)および筋肉内投与用(IMIG)に設計された調製物がある。ここで用いられるように、用語「IVIG」は、IVIG、SCIGおよびIMIGの調製物を包含しようとするものである。IVIG製剤は、よく知られており、イントラガム(INTRAGAM、登録商標)P、プリビゲン(PRIVIGEN、登録商標)、ハイゼントラ(HIZENTRA、登録商標)、ガムネックス(Gamunex、登録商標)、フレボガンマ(Flebogamma、登録商標)、オクタガム(Octagam、登録商標)およびガムイミュン(Gamimune、登録商標)を含む。
IVIG調製物等のプールされたヒトIgG調製物により共有される1つの特徴は、それらが正常な血漿または血清に由来するため、それらが含有する主要な免疫グロブリン種が、例えば、イントラガム(登録商標)Pにおいて少なくとも98%の免疫グロブリンであり、プリビゲンがIgGである、ということである。従って、IVIG等のプールされたヒトIgG調製物は、IgGの濃縮された調製物とみなされ得る。
好適な実施形態において、IVIGは、少なくとも5%w/v、少なくとも10%w/v、少なくとも20%w/v、または、少なくとも25%の免疫グロブリンを含有する。
IVIG調製物の例は、国際公開WO2005/023867の表1に示されている。これらの例の全ては、本発明の文脈において適用され得る好適なIVIG調製物である。
ここに定められる凝集ヒトIgGは選択的にラベル(標識)されており、そのラベルは直接的または間接的のいずれかで凝集ヒトIgGと結合する。「直接的」はそれにより共有結合したラベル(リンカーを含んでもよい)を意味しているのに対し、間接的は凝集ヒトIgGと結合するラベルされた第2の要素、例えば抗体やそのフラグメント等のラベルされた結合ドメインによる凝集ヒトIgGの結合を含む(例えば、ラベルされた二次抗−ヒトIgG抗体等の抗−ヒト抗体)。二次ラベルされた抗体は、いずれの抗−IgG抗体も有効であり、以下の実施例ではR−フィコエリトリンでラベルされたヤギ抗−ヒトIgG(ディアノヴァ(Dianova)社、カタログ番号109−116−088)が用いられているが、しかしながら好適な多くの他の抗体が市販されている。本発明の文脈においては、特に「蛍光ラベル」が予想されるが、本発明はそれに制限されるものではなく、すなわち、他のラベル(例えば、ELISA法等の免疫的方法に用いられ得るラベル)が同様に予想される。蛍光ラベルは、量子ドット剤、蛍光タンパク質、蛍光染料、pH感受性蛍光染料、電圧感受性蛍光染料および/または蛍光ラベルされたマイクロスフェアを含むグループから好適に選択される。蛍光ラベルはレーザービームで励起され、セットされた波長での発光はFACS装置により検出可能であることが好適である。
本発明に導く実験のために、市販製品であるベリグロビン(Beriglobin、登録商標)が用いられ、分取用サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により単量体および二量体のIgGから凝集ヒトIgGが分離された(以下の詳細な説明および実施例2参照)。しかしながら、ここに記載されるような他のいずれの「ヒトタンパク質」も凝集ヒトIgGの分離用の開始点(starting point)として用いられ得るものであり、例えば、ドイツ市場における現時点の適切な製品であるベリグロビン、バリテクトやベンディグ(Vendig)、または、ここに記載されるような、例えば、少なくとも100、200、300、400、500またはそれ以上、好適には1000以上のヒトのドナーの血漿からIgGをプールすることによるIgG調製物である。これら「開始点」のいずれか(ここに定義されたヒトタンパク質、IVIGs等の(プールされた)IgG調製物、を含む)は、例えば分取用サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)による凝集ヒトIgGの分離のために用いられ得る(以下の詳細な説明および実施例2参照)。米国FDAは現時点で10の製品を揃えている。「ヒトタンパク質」例えばベリグロビンの原料としての使用は、特に好適であり、これが本発明の実施形態における標準として用いられるべき凝集ヒトIgG製品用の制御された供給源を提供するためである。凝集ヒトIgGは、0.35mg/mLおよび1.40mg/mLの間、好ましくは0.5および1.35mg/MLの間のタンパク質含量を有するように調整され得る。当業者は、タンパク質含量が適切なバッファで希釈されること、または、例えば限外濾過により濃縮されることにより調整され得ることを認識しているであろう。さらなるガイダンスは、本発明の実施例1および2で提供される。
可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる組成物の安定性を測定するための方法の最終ステップにおいて、表面に対して結合され、ここに記載されたように測定される凝集ヒトIgGの量は、レファレンス値と比較される。その比較ステップは、以下のように、その組成物の安定性の測定を許容する。
例えば、その安定性がFcガンマレセプタをも含む組成物と比較して測定される組成物の安定性が高くなるほど、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面と結合する凝集IgGが減少するが、凝集IgGがその組成物により含まれる1またはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタにより結合されるためである。
一方、例えば、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面と結合する凝集IgGが増加するほど、ここに記載された方法に従いその安定性が測定される組成物のようなFcガンマレセプタをも含む組成物と比較してその組成物をより低い安定となる。しかしながら、「より低い安定」は、その安定性が測定された組成物が有益でないことを意味するものではない。これに対して、特定の応用では、その原料成分が短縮された半減期、より低いpH安定性等を有する組成物を有することが望ましいため、例えば、レファレンス組成物より低い安定である組成物を有することが望ましい。
説明したように、本発明の方法に従いその安定性が測定される組成物のようにヒトFcガンマレセプタの1つまたはそれ以上をも含むレファレンス組成物は、レファレンス組成物としてここに参照される。
そのレファレンス組成物について、表面に結合した凝集ヒトIgGの量を反映する値は、ここに記載されたように測定され、その値がレファレンス値として有効である。このため、本発明の教示に従い組成物の安定性が測定される前に、レファレンス値が測定され、有効となる。従って、そのレファレンス値は、ここに記載されるように測定された表面に結合された凝集ヒトIgGの量と比較され得るものであり、その量がレファレンス値と比較した値に変換される。その比較により、組成物の安定性を測定することが可能である。事実、説明したように、レファレンス値が測定され、そのレファレンス値が表面により結合された凝集ヒトIgGの特定量を反映する。このため、レファレンス値は、その組成物により含まれた1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcレセプタにより結合されたIgGの量を間接的に反映する。
もちろん、レファレンス組成物は、比較可能な量(望ましくは同じ量)で同じ1つまたはそれ以上の可溶性Fcガンマレセプタを含むのであれば、本発明の実施形態に従いその安定性が測定される組成物と単に比較可能である。
例えば、ここに記載されるようなFcガンマレセプタの温度安定性、pH安定性、保存バッファ安定性、貯蔵安定性、貯蔵寿命、半減期、劣化に対する安定性(または抵抗性)、単量体形態についての安定性、等の点では、レファレンス値がここに記載される組成物の安定性を反映することができる。しかしながら、組成物の安定性特性または安定性パラメータのどちらが測定されるかは、例えば、どの組成物が用いられるかについての要求および/または興味および/または目的に依存し得るため、決定的なことではない。
事実、本発明の方法は、組成物の安定性の一般的な読み出しを許容するから、安定性に影響するような特定のパラメータをテストすることに制限されるものではないが、それが通常、ここに記載されたように表面に結合され測定された凝集ヒトIgGの量であるためであり、代わりに、本発明の教示に従いその安定性が測定された組成物により含まれた1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタにより結合された凝集ヒトIgGの量であるためである。
先に説明したように、表面に結合される凝集IgGが少ないほど、その組成物により含まれる1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタがより強力になりさらに強力になる。例えば、組成物のpH安定性に興味があるとすれば、当業者は、その組成物に種々のpH条件を受けさせ、その組成物に接触したまま表面に結合した凝集ヒトIgGをテストすることができる。その組成物が例えば酸性pHに対して安定であると仮定すれば、1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタは、凝集ヒトIgGを結合することがまだ可能であり、ここに記載されたようにより少ない凝集IgGが表面に結合するであろう。もちろん、当業者は、本発明の方法を実施するときに、pH安定性をテストした後、適切なバッファを供給しなければならないことを承知している。例えば、過度に酸性または塩基性の環境がここに記載された方法を妨げることとなり、このため、それらを供給する前に、当業者は、従来一般的に知られた手段および方法によりバッファリング条件を調整し適合させなければならない。
別の例のために、長期の貯蔵寿命や劣化に対する抵抗性を有する組成物に興味があるとすれば、その組成物をレファレンス組成物として用い、例えば、1、2、6または12ヶ月間組成物を保存した後にここに記載されたように表面に結合した凝集IgGの量を測定し、その値を組成物の所望の性質用のレファレンス値として用いる。その後、例えば、長期安定性や劣化に対する抵抗性を反映するそのレファレンス値は、ここに記載されたように表面に結合しており、また本発明の方法によりその安定性が測定された組成物と接触している凝集ヒトIgGの量を反映する値と比較される。
例えば12ヶ月の保存後に測定され、技術者の期待を満たすとみなされるレファレンス値は、表面に結合した凝集ヒトIgGの特定量を反映しているにすぎないため、例えば、100に設定でき、100を相対値にすることができる。
少なくとも50%、好ましくは60%または70%、より好ましくは80%または90%の凝集ヒトIgGが表面に結合されていないものの、その安定性が測定された組成物により含まれる1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタにより結合されているとすれば、レファレンス値は受容可能とみなされる。特に、先に説明したように、表面に結合される凝集ヒトIgGが少なくなるほど、1つまたはそれ以上の可溶性Fcガンマレセプタによる結合が多くなり、反対もまた同様である。従って、組成物の安定性が高くなれば、1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタによるものを除いて、表面により結合される凝集ヒトIgGが少なくなる。反対に、組成物の安定性がより低くなれば、表面により結合される凝集ヒトIgGが多くなり、1つまたはそれ以上の可溶性ヒトFcガンマレセプタによる結合が少なくなる。
本発明は、また、少なくとも500の(健全または「標準的」)ドナーの混合された血漿からサイズ排除クロマトグラフィにより凝集ヒトIgGを分離するための方法を包含する。
また、本発明の凝集ヒトIgGがサイノモルガス(cynomolgous、カニクイザル)、カリスリクス(callithrix、マーモセット)、マカク(macaqua、マカクザル)、サンギス(sanguis)等のヒト以外の霊長目の対応するIgG調製物により追加され、または、置換されることも予想される。
本発明の「可溶性ヒトFcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIAまたはFcγRIIIB」は、例えば、欧州特許出願EP 1 135 486、EP 1 642 974およびEP1 446 139に記載されたものである。本発明の「可溶性ヒトFcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIAまたはFcγRIIIB」は、好適な実施形態において、膜貫通ドメインおよびシグナルペプチドの不存在により特徴づけられる。本発明のクレームした可溶性FcγRsは、好適な実施形態において、配列番号:2、4、6、8および10の核酸配列のそれぞれによりエンコードされた配列番号:1(SM101、組換えヒトFcγRIIB)、配列番号:3(FcγRIIB)、配列番号:5(FcγRIIA)、配列番号:7(FcγRIIIA)および配列番号:9(FcγRIIIB)のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むかまたはそのアミノ酸配列からなる。本発明は、また、配列番号:1、3、5、7または9のタンパク質に対して少なくとも90%、好ましくは95%の同一性を有する可溶性FcγRsも包含する。配列同一性の測定について、アミノ酸の最大の一致をもたらすように配列を整列させることにより比較がなされる。本発明の好適な実施形態において、可溶性ヒトFcガンマレセプタは、FcγRIIB(配列番号:3)である。より好適な実施形態において、可溶性ヒトレセプタは、可溶性FcγRIIBレセプタであるSM101(配列番号:1)である。本発明の方法のさらに好適な実施形態において、1つの可溶性レセプタのみ(または上述したように、対象のレセプタに対して少なくとも90%の同一性を有する全てのタンパク質の混合物)が一時にテストされるべきである。
本発明が言及する配列を以下に示す。

配列番号:1(SM101)
MAPPKAVLKL EPQWINVLQE DSVTLTCRGT HSPESDSIQW FHNGNLIPTH
TQPSYRFKAN NNDSGEYTCQ TGQTSLSDPV HLTVLSEWLV LQTPHLEFQE
GETIVLRCHS WKDKPLVKVT FFQNGKSKKF SRSDPNFSIP QANHSHSGDY
HCTGNIGYTL YSSKPVTITV QAPSSSP

配列番号:2(SM101、cDNA)
1 ATGGCACCGC CGAAAGCAGT TCTGAAACTG GAACCGCAGT GGATTAACGT TCTGCAGGAA
61 GATAGCGTTA CCCTGACCTG TCGTGGCACC CATAGCCCGG AAAGCGATAG CATTCAGTGG
121 TTTCACAACG GCAATCTGAT TCCGACCCAT ACCCAGCCGA GCTATCGTTT TAAAGCGAAC
181 AACAACGATA GCGGCGAATA TACCTGTCAG ACCGGTCAGA CCAGCCTGAG CGATCCGGTT
241 CATCTGACCG TTCTGAGCGA ATGGCTGGTT CTGCAGACCC CGCATCTGGA ATTTCAGGAA
301 GGCGAAACCA TTGTTCTGCG TTGCCACAGC TGGAAAGATA AACCGCTGGT TAAAGTTACC
361 TTCTTCCAGA ACGGCAAAAG CAAAAAATTC AGCCGTAGCG ATCCGAATTT TAGCATTCCG
421 CAGGCGAATC ATAGCCATAG CGGCGATTAT CATTGTACCG GCAACATTGG CTATACCCTG
481 TATAGCAGCA AACCGGTGAC CATTACCGTT CAGGCGCCGA GCAGCAGCCC GTAA

配列番号:3(ヒトFcγRIIB)
MGTPAAPPKA VLKLEPQWIN VLQEDSVTLT CRGTHSPESD SIQWFHNGNL IPTHTQPSYR FKANNNDSGE YTCQTGQTSL SDPVHLTVLS EWLVLQTPHL EFQEGETIVL RCHSWKDKPL VKVTFFQNGK SKKFSRSDPN FSIPQANHSH SGDYHCTGNI GYTLYSSKPV TITVQAPSSS P

配列番号:4(ヒトFcγRIIB、cDNA)
1 atggggacac ctgcagctcc cccaaaggct gtgctgaaac tcgagcccca gtggatcaac 61 gtgctccagg aggactctgt gactctgaca tgccggggga ctcacagccc tgagagcgac121 tccattcagt ggttccacaa tgggaatctc attcccaccc acacgcagcc cagctacagg181 ttcaaggcca acaacaatga cagcggggag tacacgtgcc agactggcca gaccagcctc241 agcgaccctg tgcatctgac tgtgctttct gagtggctgg tgctccagac ccctcacctg301 gagttccagg agggagaaac catcgtgctg aggtgccaca gctggaagga caagcctctg361 gtcaaggtca cattcttcca gaatggaaaa tccaagaaat tttcccgttc ggatcccaac421 ttctccatcc cacaagcaaa ccacagtcac agtggtgatt accactgcac aggaaacata481 ggctacacgc tgtactcatc caagcctgtg accatcactg tccaagctcc cagctcttca
541 ccg

配列番号:5(ヒトFcγRIIA)
MGTPAAPPKA VLKLEPPWIN VLQEDSVTLT CQGARSPESD SIQWFHNGNL IPTHTQPSYR
FKANNNDSGE YTCQTGQTSL SDPVHLTVLS EWLVLQTPHL EFQEGETIML RCHSWKDKPL
VKVTFFQNGK SQKFSHLDPT FSIPQANHSH SGDYHCTGNI GYTLFSSKPV TITVQVPSMG
SSSP

配列番号:6(ヒトFcγRIIA、cDNA)
1 atggggacac ctgcagctcc cccaaaggct gtgctgaaac ttgagccccc gtggatcaac 61 gtgctccagg aggactctgt gactctgaca tgccaggggg ctcgcagccc tgagagcgac121 tccattcagt ggttccacaa tgggaatctc attcccaccc acacgcagcc cagctacagg181 ttcaaggcca acaacaatga cagcggggag tacacgtgcc agactggcca gaccagcctc241 agcgaccctg tgcatctgac tgtgctttcc gaatggctgg tgctccagac ccctcacctg301 gagttccagg agggagaaac catcatgctg aggtgccaca gctggaagga caagcctctg361 gtcaaggtca cattcttcca gaatggaaaa tcccagaaat tctcccattt ggatcccacc421 ttctccatcc cacaagcaaa ccacagtcac agtggtgatt accactgcac aggaaacata481 ggctacacgc tgttctcatc caagcctgtg accatcactg tccaagtgcc cagcatgggc541 agctcttcac caat

配列番号:7(ヒトFcγRIIIA)
MDLPKAVVFL EPQWYRVLEK DSVTLKCQGA YSPEDNSTQWF HNESLISSQA SSYFIDAATV DDSGEYRCQ TNLSTLSDPV QLEVHIGWLL LQAPRWVFKEE DPIHLRCHSW KNTALHKVTY LQNGKGRKY FHHNSDFYIP KATLKDSGSY FCRGLVGSKNV SSETVNITIT QGLSVSTISS F

配列番号:8(ヒトFcγRIIIA、cDNA)
1 atggatctcccaa aggctgtggt gttcctggag cctcaatggt acagggtgct cgagaaggac 61 agtgtgactc tgaagtgcca gggagcctac tcccctgagg acaattccac acagtggttt121 cacaatgaga gcctcatctc aagccaggcc tcgagctact tcattgacgc tgccacagtt181 gacgacagtg gagagtacag gtgccagaca aacctctcca ccctcagtga cccggtgcag241 ctagaagtcc atatcggctg gctgttgctc caggcccctc ggtgggtgtt caaggaggaa301 gaccctattc acctgaggtg tcacagctgg aagaacactg ctctgcataa ggtcacatat361 ttacagaatg gcaaaggcag gaagtatttt catcataatt ctgacttcta cattccaaaa421 gccacactca aagacagcgg ctcctacttc tgcagggggc ttgttgggag taaaaatgtg481 tcttcagaga ctgtgaacat caccatcact caaggtttgt cagtgtcaac catctcatca541 ttc

配列番号:9(ヒトFcγRIIIB)
MDLPKAVVFLE PQWYSVLEKD SVTLKCQGAY SPEDNSTQWF HNENLISSQA SSYFIDAATVNDSGEYRCQT NLSTLSDPVQ LEVHIGWLLL QAPRWVFKEE DPIHLRCHSW KNTALHKVTYLQNGKDRKYF HHNSDFHIPK ATLKDSGSYF CRGLVGSKNV SSETVNITIT QGLAVSTISSF

配列番号:10(ヒトFcγRIIIB、cDNA)
1 atggatctcc caaaggctgt ggtgttcctg gagcctcaat ggtacagcgt gcttgagaag 61 gacagtgtga ctctgaagtg ccagggagcc tactcccctg aggacaattc cacacagtgg121 tttcacaatg agaacctcat ctcaagccag gcctcgagct acttcattga cgctgccaca181 gtcaacgaca gtggagagta caggtgccag acaaacctct ccaccctcag tgacccggtg241 cagctagaag tccatatcgg ctggctgttg ctccaggccc ctcggtgggt gttcaaggag301 gaagacccta ttcacctgag gtgtcacagc tggaagaaca ctgctctgca taaggtcaca361 tatttacaga atggcaaaga caggaagtat tttcatcata attctgactt ccacattcca421 aaagccacac tcaaagatag cggctcctac ttctgcaggg ggcttgttgg gagtaaaaat481 gtgtcttcag agactgtgaa catcaccatc actcaaggtt tggcagtgtc aaccatctca541 tcattc
本発明の実施形態がヒトFcγRsを示しているものの、他の哺乳動物のFcγRs、特にネズミまたはサル等の霊長目のものにも適用され得るものである。
ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面」は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを発現する細胞や細胞株、好ましくは哺乳動物細胞や哺乳動物細胞株であるかまたはそれらを含む。これらの細胞は、いくつかの実施形態において、他のヒトFcガンマレセプタの存在なくして、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAまたはIIIBを発現し、すなわち、これらの細胞/細胞株が1つのFcγRを単に発現する。ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むその表面が本質的にまたは排他的でもヒトFcγRIIBを含むことが特に好適である。さらに好適な実施形態では、その表面により含まれるヒトFcガンマレセプタのサブタイプと、可溶性ヒトFcガンマレセプタのその組成物により含まれるヒトFcガンマレセプタのサブタイプとが同一である。FcγRIIBがテストされるときは、ラジリンパ芽細胞株(Raji lymphoblastoid cell line)(CCL−86、ATCC)等のFcγRIIBのみを発現する細胞が好ましい。FcγRIIAについては赤白血症細胞株(erythroleukemic cell line)K562(CCL−243、ATCC)が用いられ、FcγRIIIAについてはNKL細胞株(ロバートソンら(Robertson et al.)、エクスペリメンタル ヘマトロジィ(Exp. Haematol.)1996、24(3):406−15)が用いられる。代わりに、対象のFcR(s)を感染させたCHO細胞が用いられ得る。対象のタンパク質を発現するためにCHO細胞の移入のための方法は従来よく知られており、この方法が、例えば、ブルーンズら、ブラッド2009、113:3716−3725に記載されている。
ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面」は、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBでコートされ得る固体表面であるかまたは固体表面を含むものであることも予想される。「固体表面」は、それにより、例えば磁気で引きつけられるような微粒子材料(ビーズ)、または、ELISAプレートやバイアコア(Biacore)検出ユニット等の平坦表面のいずれかを含む。その表面の材料は、それぞれの方法において用いられ得るプラスチック、ポリマ、金属、ガラス等の適切な固体材料としてもよい。ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBのようなタンパク質の固体表面(例えば、平坦な表面や微粒子の表面)へのコーティングは、当業者によく知られた標準的な方法により行われる。固体表面のコーティングは、本発明の「ヒトFcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIAまたはFcγRIIIB」で、および/または、「可溶性ヒトFcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIAまたはFcγRIIIB」で行われてもよく、細胞表面での(膜アンカ(membrane anchor)を要求する)生物学的発現の必要がないためである。
好適な実施形態において、本発明は、可溶性ヒトFcガンマレセプタの結合活性をインビトロで測定するための方法における凝集ヒトIgGの使用に依存する。本発明の方法における第1のステップは、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAまたはIIIBの1つのみを(好ましくは他のFcγレセプタの存在なくして)発現する細胞株からの哺乳動物細胞を、1セット量の凝集ヒトIgG、および、1セット量の対応する可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAまたはIIIBと接触させる。本方法の第1のステップで選択される哺乳動物細胞が対象のFcガンマレセプタのみを発現すること、可能であれば他のFcガンマレセプタがないことが好適であり、これはIgGに結合する他のレセプタの存在がテストされる可溶性FcγRの活性を妨げるためである。
その表面に結合された凝集ヒトIgGの量を測定すること」は、表面に結合した凝集ヒトIgGの量の計測または定量に関しており、すなわち、本発明の文脈において好適に計測されるものがヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合した凝集ヒトIgGの量である。その結合した凝集ヒトIgGは、例えば、間接的ラベル(例えば、抗−ヒトIgG結合ドメイン)の手段または直接ラベル(すなわち、凝集ヒトIgGが直接的にラベルされる−このどこかに説明されている)の手段により検出される。例えば、凝集ヒトIgGに結合した低レベルのラベルされた二次抗体は、凝集ヒトIgGに対する可溶性FcγRの高レベルの結合を示し、その反対も同様である。
これに代えてまたはこれに付加して、洗浄(本発明の方法におけるステップ(c)の前)により除去された凝集ヒトIgGの量を分析し、計測し、定量することも同様に可能であり、その凝集ヒトIgGが対象の(組成物に含まれた)可溶性FcγRに結合しており、それとともに洗い出される。
本発明の方法における「接触させるステップ」は、表面、レセプタおよび凝集ヒトIgGに相互に物理的な接触をもたらすことを包含しており、それによりそれらが相互に結合し得る。このステップは、インキュベーションステップを包含してもよく、それにより試薬が反応するための時間を有する。
用語「セット量」は、単純に、それぞれの試薬の量が固定されるべきことを示しており、それにより結果が推定され、定量さえもなされ得る。例えば、以下の実施例からもわかるように、凝集ヒトIgGの標準量は、可溶性レセプタの系列希釈で用いられており、それにより可溶性レセプタが表面に結合する凝集ヒトIgGを阻害する量が測定され得る。
本発明の方法における洗浄ステップは、ステップ(c)の前の「洗浄」により、結合していない凝集ヒトIgGおよび結合していない可溶性ヒトFcγRの除去を包含する。このステップが本発明において用いられる表面に結合していない試薬の除去に関することに留意すべきである。洗浄ステップは、以下の実施例で用いられるFACSバッファ等の標準バッファで行われ得る。
本発明の可溶性FcγRの系列的希釈に適用するときは、ラベルの「検出」が可溶性FcγRのIC50の測定を考慮する。「最大の半分の抑制濃度(IC50)」は、生物学的、生化学的機能を阻害することでの化合物の有効性の計測である。この定量的な計測は、特定の薬品や他の物質のいかなる量が所与の生物学的プロセスを半分に阻害するために必要とされるか、を示している。換言すれば、それは、物質の最大の半分(50%)の抑制濃度(IC)である(50%ICまたはIC50)。それは、医薬品研究におけるアンタゴニスト(antagonist)薬剤力価の計測として一般的に用いられる。FDAによれば、IC50は、インビトロにおける50%抑制に要求される薬剤の濃度を表している。このため、本文脈において、本方法で用いられる凝集IgGの量と比較して、哺乳動物細胞に結合した凝集IgGの量は、細胞に結合する凝集IgGの50%抑制に必要とされるFcγRの量の測定を許容する。同様に、細胞に結合するIgGの95%抑制に必要な量であるIC95も計測され得る。データのための他のいずれの評価テクニックも当業者に用いられ得るものであり、例えば、欧州薬局方5.0;2005;チャプター5.3(「生物学的アッセイおよびテストの結果の統計学的分析」)による4パラメータのロジスティック法(4PL)がある。
本発明のインビトロ法の特に好適な実施形態において、可溶性ヒトレセプタはFcγRIIB(配列番号:3)、さらに好適にはSM101(配列番号:1)であり、細胞はラジ細胞であり、凝集ヒトIgGは、ヒトIgG調製物から分離されており、例えば、ベリグロビン(登録商標)や二次抗体がレーザービームで励起可能であり、セットされた波長での発光がFACS装置の手段により検出可能な蛍光ラベルを有している。
以下に記載した実験において、本発明のインビトロ法を用いることで、SM101(可溶性ヒトFcγRIIB、配列番号:1)が凝集IgGへの結合のためのラジ細胞で細胞に結合したFcγRIIBと競合すること、一定量の細胞および凝集ベリグロビンに添加したSM101の濃度を増加させることでFcγRIIBを結合した膜に結合する凝集IgGの漸進的抑制の結果となること、が見出された。このテストは、医療や診断上の応用に必要なSM101の可能な用量の測定を許容する。この方法は、また、異なるバッチが一定の結合活性を有することを確かめるためにSM101の品質管理に用いられ得る。同様に、この方法は、可能な用量を測定するために他のいずれの可溶性FcγRに適用されてもよく、異なるバッチの可溶性FcγRが同じ結合活性を有することを保証するための品質管理として適用されてもよい。このため、本発明のインビトロ法は、可溶性FcγRsの結合活性のための新しいテストを提供するものであり、凝集IgGがインビトロでIgG免疫複合体を模倣するために用いられ得るという知見に基づいている。
特に、以下の実施例1において、本発明のインビトロ法は、「SM101のための細胞ベースの力価アッセイ」とも呼称され、SM101の生物学的機能/活性の測定を許容する。樹立されたヒトB細胞株であるラジおよびポリクローナルな凝集ヒトIgG(ベリグロビン、凝集した分画)の使用は、細胞ベースのアッセイの手段によるSM101の活性を分析するために優れた構成(set-up)を表す。実施例において、SM101は、いくつかの別々のFACS実験で、ラジ細胞で膜に結合したFcγRIIBに対する凝集ヒトIgGsの結合の抑制を示した。SM101の系列希釈は、SM101についてのIC50値を測定するために用いられた。以下の実施例1において、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03125、0.01565、0.0078、0.0039、0.00195μg/μlの終端濃度での系列希釈が用いられているものの、1.3664、0.80、0.40、0.20、0.10、0.06、0.036、0.0216、0.01296、0.00648、0.003888、0.001944μg/μLの系列や、他の濃度でも対象の範囲で線状のカーブ(a linear curve)を許容する他の希釈系列が用いられてもよい。計測した0.98×10−6MのみかけKは、文献に見られるデータ、昆虫細胞由来の(グリコシル化された)可溶性FcγRIIBを用いた1.4×10−6M(ゾンダーマンら(Sondermann et al.)、バイオケミストリィ(Biochemistry)1999、38(26):8469−77)や、大腸菌からの組換えsFcγRIIBを用いた1.67×10−6M(マエナカら(Maenaka et al.)、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリィ(J. Biol. Chem.)2001、276(48):44898−904)に相当する。算出されたSM101のIC50である17.7μg/mL(実施例1)は、他のアッセイで測定されたIC50値と適合する。
実施例1.6において、本発明者らは、調査的な医薬用製造物SM101の生物学的活性が標準品の活性に相当することを示すことができた。特に、クレームした結合活性を測定する方法に関し、実施例1は、ラジ細胞を用いる可溶性ヒトFcγRIIBのための詳細なプロトコルを提供する。当業者は、この方法を他のレセプタや細胞タイプに適合させるために必要な調整に十分に気づいているであろう。実施例1で用いられた代表的なプロトコルを以下に繰り返すが、当業者は、このプロトコルの変更が可能であることに十分に気づいている;
1.ラジ細胞培養の細胞濃度を測定する
2.遠心分離によりラジ細胞を回収する
3.ウェルプレートにFcガンマレセプタ(例えばSM101)の濃度系列を準備する
4.凝集(aggr.)ベリグロビンバッファ=「凝集ベリ−ミックス(aggr. Beri-Mix)」を準備する
5.ステップ4の「凝集ベリ−ミックス」にステップ2のラジ細胞を再懸濁させる
6.Fcガンマレセプタ(例えばSM101)の濃度系列を含有するそれぞれのウェルにラジ細胞懸濁液を添加する
7.氷上でインキュベートする
8.それぞれのウェルに「FACS−バッファ」を添加し、遠心分離する
9.上清を廃棄する
10.それぞれのウェルに二次抗体−混合物を添加する
11.「FACS−バッファ」を添加し遠心分離する
12.上清を廃棄する
13.「FACS−バッファ」を添加し、サンプルをポリスチレンチューブに移し、FACSで分析する
実施例2は、ベリグロビンからの凝集IgGの分離のための特徴的な方法を提供する。また、当業者は、同様の結果となるようなこの方法の変更が可能であることに十分に気づくであろう。特に、ここに開示された凝集IgGの製造のための方法は、以下のステップにより要約され得る;
1.ベリグロビン(登録商標)の160mg/mLをPBS−Nで100mg/mLに調整する
2.凝集IgGを単量体または二量体のIgGから分離することが可能なカラムを用いる分取SEC(サイズ排除クロマトグラフィ)により分離する、例えば、カラム:スーパーデックス(Superdex)200 10/300GL、移動相:5mMのHis、150mMの塩化ナトリウム pH6.5、0.01%(w/v)のアジ化ナトリウム、フロー0.5ml/min 室温、注入:0.4g/lで100μl(図12参照)
3.凝集IgG分画のタンパク質含量を測定する
4.選択的に:含量が0.50mg/mL未満であれば限外濾過で濃縮し、含量が1.40mg/mLを超えればPBS−N(0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水)で希釈する
5.20%(v/v)グリセロールに調整する
6.0.5mLに等分し、液体窒素で急速凍結する
上述した凝集IgGの分離のための方法は、他のヒトIgG調製物、例えば、従来入手可能なものやここに記載されたものにも適用可能である。
実施例3では、実施例2に従い分離された凝集IgGの含量および純度をテストした。このため、実施例2および3は、本発明の方法で用いられるべき凝集IgGでの特徴的なガイダンスを当業者に提供する。特に、バッファとしてPBS−N(0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水)を用い1mL/minでSEC(サイズ排除クロマトグラフィ)を用いることで、凝集IgGは、スーパーデックス200、ハイロード(HiLoad)26/60、ジーイーヘルスケア(GE Healthcare)を用い、エクタ エクスプローラ(Akta Explorer)10 FPLCや他の適切なFPLCを用いるときに、およそ115mL後に溶出することが見出された。溶出液のタンパク質含量を実施例3のステップ1に従い計測し、必要であれば、0.30および1.4mg/mLの間、好ましくは0.50および1.35mg/mlの間、より好ましい範囲の数値に調整した。この後、凝集IgGの純粋含量を実施例2、ステップ2に従い計測し、凝集/オリゴマIgGの相対的ピーク面積が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、90%、最も好ましくは少なくとも95%であることを確保した。
本発明の方法が確実に実施できることを、予備的確認実験(実施例4−10)において、用いた凝集IgGの品質の影響、テストサンプルにおける単量体IgGの量を変えることの効果、培養したまたは新たに解凍したラジ細胞での膜結合FcγRIIBの発現の安定性、モノクローナル抗体を介したラジでの膜結合FcγRIIBの阻害の効果について、および、ラジ細胞で用いた抗−ヒト二次抗体のバックグランド染色の安定性についてテストすることでさらに研究した。インターアッセイおよびイントラアッセイの安定性を、n=25の実験で得られたみかけKおよびIC50の平均値を比較することにより評価した。従って、本発明のインビトロ法(細胞ベースの力価アッセイ)が新たなバッチのSM101の力価を標準品と比較して評価するための適切なツールであることが結論され得る。
上記知見、特徴的な方法および実施例に記載されたプロトコルは、FcRIIAのためのヒト赤白血症細胞株K562やFcγRIIIAのためのヒトNKL細胞等の適切な細胞との組み合わせで、FcγRIIA、FcγRIIIAやFcγRIIIBに適用することも可能である。代わりに、チャイニーズハムスタ卵巣細胞(CHO細胞)を、対象のFcγRで感染させ、本発明のインビトロ法に用いた。実施例2の凝集IgGおよび実施例3のコントロールを調製する方法に関し、これらの方法を、ベリグロビンの代わりに用いることができるバリテクトやベンビッグ等の市場における他のヒトIgG調製物の製造物に等しく適用するであろう。
いくつかの文書が本明細書の本文を通じて指摘されている。ここに指摘されたそれぞれの文書(全ての特許、特許出願、学術論文、製造者の説明書、指示書、等を含む)は、上述のものであっても以下のものであっても、その全体として参照によりここに組み入れられる。ここにないものは、本発明が以前の発明による開示であるような以前のものと称されるものではないことを承認したものとして解釈されるべきである。
ここで用いられる単数形「1の(a)」、「1つの(an)」や「その(the)」は、この文脈が他のことを明確に示していない限り、複数の参照を包含することに留意するべきである。このため、例えば、「試薬(a reagent)」の参照が1またはそれ以上の異なる試薬を含有し、「その方法(the method)」の参照がここに記載された方法について改変することや置換することができる当業者に知られたものと同等のステップや方法の参照を含有する。
他のことが示されていない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、その一連の全ての要素に関連することが理解されるべきである。当業者は、わずかなルーチン実験で、ここに記載された発明の特徴的な実施形態に対する多くの同等のものを承認し確認することができる。そのような同等のものは、本発明に包含されるべきものである。
この明細書および続くクレームを通じて、本文脈が他のことを要求しない限り、語句「含む(comprise)」、および。「含む(comprises)」や「含んでいる(comprising)」等の変化形は、明示された整数やステップまたは複数の整数や複数のステップのグループを含むものを包含することが理解されるべきであり、他の整数やステップまたは整数やステップのグループを排除するものではない。ここで用いられるときに用語「含んでいる(comprising)」は、用語「包含している(containing)」と置き換えられ得るものであり、しばしばここで用いられるときに用語「有している(having)」と置き換えられ得る。
ここで用いられるときに「からなる(consisting of)」は、クレーム要素に明示されていない要素、ステップや成分を排除する。ここで用いられるときに、「本質的にからなる」は、クレームの基本的で新しい特性に物質的に影響しない材料やステップを排除しない。
ここに記載されたように、「好適な実施形態」は、「本発明の好適な実施形態」を意味する。同様に、ここに記載されたように、「種々の実施形態」および「別の実施形態」は、それぞれ、「本発明の種々の実施形態」および「本発明の別の実施形態」を意味する。
ラジ細胞1×10のSSC−A/FSC−Aを示すFACS分析用の主要な戦略(ゲーティングストラテジィ、gating strategy)である。G1は生細胞(全細胞の94.9%)を含む。生細胞では、SM101不在下における二次抗体(αhu IgG(H+L)−PE)の膜結合した凝集ヒトIgG(凝集ベリグロビン)に対する結合について分析する。集団分布のみの図解のためにドット−プロットダイアグラムを含んでおり、右端のヒストグラムプロットが結合したヒト凝集IgG(凝集ベリグロビン)を含むラジ細胞を表している。 SM101(可溶性ヒトFcγRIIB)濃度を変えて(最低濃度0μg/μL、サンプルの濃度範囲0.0078−0.5μg/μl)インキュベートしたサンプルのヒストグラムのオーバーレイである。オーバーレイにおける対応するヒストグラムのネガティブコントロール(二次抗体単独での染色(=sek AK、影付き赤))の方へのシフトは、ヒト凝集IgGs(凝集ベリグロビン)の細胞への結合の阻害を示している。サンプルのPE−A蛍光のメジアンを右側に示している。 SM101の代わりにチキン血清アルブミン(CSA)を用い、変化させた濃度(最低濃度0μg/μL、サンプルの濃度範囲0.0078−0.5μg/μl)でのコントロール実験のヒストグラムのオーバーレイである。ネガティブコントロール(SM101_sekAK.fcs:二次抗体単独での細胞の染色、影付き赤)。 実施例1の表1から、計測したメジアンを正規化した値を、ラングミュア等式(Langmuir equation)に当てはめた。 実験7のFACSからのデータ(FACS007)を用い、シグモイドロジスティック関数(sigmoid logistic function)に当てはめたデータを、SM101の質量濃度(μg/μL)に対する%阻害で示す。 表3(FACS021からのデータ)において算出されたSM101標準品(reference standard)およびSM101IMPの計測したメジアンを正規化した値に当てはめたデータのラングミュア−ダイアグラムである。 分取SECによる凝集IgGの精製である。280nm(上側トレース(upper trace))、260nm(下側トレース(lower trace))での溶出液の光学密度および電導性(線状トレース(line trace))を示す。プールされた凝集ヒトIgG分画はグレーの影付きである。 種々の凝集ヒトIgG分画の分析SECである。ブランクのバッファ注入(トレースボトム(trace bottom)、ライン)後のクロマトグラムであり、ベリグロビン(登録商標)からの単量体IgGの50μg注入(最高ピークを含むトレース)が分取SECクロマトグラム(参照)におけるおよそ180mLでのピークに対応しており、ベリグロビン(登録商標)からの二量体IgGの50μg注入(最低ピークを含むトレース)が分取SECクロマトグラム(参照)におけるおよそ145mLでのピークに対応しており、バッチ27/10/10からの凝集/オリゴマIgGの24μg注入(オーバーラップしている第1ピークの低い方)およびバッチ15/07/11からの凝集/オリゴマIgGの24μg注入(オーバーラップしている第1ピークの高い方)を示す。全体のクロマトグラム(a)および拡大部分(b)を表している。 バッチ27/10/10の凝集ヒトIgGからの分析SECクロマトグラムの代表的なインテグレーションである。 バッチ15/07/11の凝集ヒトIgGからの分析SECクロマトグラムの代表的なインテグレーションである。 生きたラジ細胞に結合した凝集ヒトIgGについて量を変えた異なるバッチ(Beri1、Beri2およびBeri3)でのFACS−分析である。 ラジ細胞に対する凝集IgGの結合のpH依存性である(メジアンMFI)。 メジアンMFIのpH依存性である。グラフは、サンプルのメジアンMFI−二次抗体のメジアンMFI(コントロール)を示す。 2つの有効なプールされたIgG調製物からの凝集IgGの分離を示す(ベリグロビンのバッチ番号26840311Aおよびサブクビアのバッチ番号BVNG1M032A)。カラム:スーパーデックス200 10/300GK;移動相:5mMのHis、150mMの塩化ナトリウム pH6.5、0.01%(w/v)アジ化ナトリウム;フロー:0.5ml/min 室温;注入:0.4g/lで100μl。
以下の実施例は本発明を例証する。これらの実施例は本発明の範囲を制限するものとして解釈されるものではない。実施例は例証の目的で含まれるものであり、本発明はクレームによってのみ限定される。以下の略語が実施例(および明細書)で用いられる。
g 地球の重力加速度
C 高速液体クロマトグラフィ
MWCO kDaでの分子量カットオフ
PBS−N 0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水
rpm 回転数/分
SEC サイズ排除クロマトグラフィ
FSC 前方散乱
SSC 側方散乱
IgG 免疫グロブリンG
PE フィコエリトリン
FACS 蛍光活性化細胞ソーティング
DSMZ ドイツ細胞バンク(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
IMP 調査的な医薬用製造物
AU 吸光度単位
(実施例1)
1.1 実験の概要
本実施例では、SM101(可溶性ヒトFcγRIIB、sFcγRIIB)の結合活性を測定するために本発明のインビトロ法(FACS力価アッセイとも称される)を用いた。特に、FcγRIIBを発現するヒト細胞の細胞株ラジ(DSMZ番号ACC319、ヒトバーキットリンパ腫)を一定量の凝集したリガンド(ヒトIgG)および量を変えたSM101(すなわち、sFcγRIIB、配列番号:1)とともにインキュベートした。SM101は、細胞結合FcγRIIB−タンパク質と競合し、ラジで発現された唯一の(IgG−結合性の)Fcγレセプタを表している。
FcγRIIB発現細胞により結合された凝集IgGは、ヒトIgGの重鎖および軽鎖の両者を認識する蛍光ラベルされたポリクローナル二次抗体を用い、続いて細胞のFACS分析により検出され得る。一定量の細胞および凝集IgGsに添加された増加する濃度のSM101は、膜結合FcγRIIBに結合するIgGの漸進的阻害の結果となる。用いた細胞の自己蛍光および二次抗体の非特異的結合の両者を測定するために、無染色細胞でのパラレルコントロールのサンプルと、二次抗体と排他的にインキュベートした細胞とを用いた。
ベクトン−ディッキンソン社(Becton, Dickinson & Company、BD)のFACS−カント−II(FACS-Canto-II)装置でBDのFACS−ディバ ソフトウェア(FACS-Diva software)を用いて1×10の生細胞を記録することにより、FACS−分析を行った。フロージョー ソフトウェア(FlowJo Software)(ツリースター社(Treestar Inc.)、米国オレゴン州(OR/USA))を用いてデータを評価した。
1.2 材料:
−プレート:U形状96ウェル(セルスター(Cellstar)社、番号650180)
−チューブ:15mLファルコンチューブ
5mLポリスチレン製、12×75mm(BD、番号352054)
−ピペット:滅菌済、フィルタ付き10mL、5mL(TPP、番号94010、94005)、目盛付きフィルタ付き1−200μL、101−1000μL(スターラボ(StarLab)社、番号S1120−8810およびS1126−7810)
−マイクロプレート粘着テープ(83mm、66mm、パーマセル(Permacel)社、番号25082)
−SM101(sFcγRIIB)標準品:8.2mg/mL、416μM、−80℃保存
−FACS−バッファ:HBSS(ギブコ(Gibco)社、番号14175)+5%FCS(ギブコ社、番号10270−106)+0.01%(w/v)アジ化ナトリウム(メルク(Merck)社)
−細胞培養メディウム:
TMメディウム
RPMI(ギブコ社、番号31570)+1%MEM NEA(ギブコ社、番号11140)+1%ピルビン酸ナトリウム(ギブコ社、番号11360)+2mMグルタマックス−I(GlutaMAX-I)(200mMストック溶液、ギブコ社、番号35050−061)+10%FCS(ギブコ社、番号10270−106)
−IgG(凝集ベリグロビン):
20%(v/v)グリセロールを含むPBS/0.02%(w/v)アジ化ナトリウム中にIgG0.96mg/mL、−80℃保存。スーパーデックス200(16/60)またはスーパーデックス200(10/300)GLでのサイズ排除クロマトグラフィにより分離されたもの。開始材料:ベリグロビン(登録商標)(ZLBベーリング社(ZLB Behring GmbH)、Ch.−B.23840311BまたはCh.−B.26840311A;5mLアンプル)またはサブクビア(登録商標)Ch.−B.BVNG1M032A
−二次抗体:
ヤギ抗−ヒトIgG(H+L)R−フィコエリトリン結合(conj.)(Fab)フラグメント(ディアノヴァ社、カタログ番号109−116−088)
1.3 プロトコル:
1.密度0.2−1.0×10cells/mlのラジ細胞培養の細胞濃度を測定する
2.ラジ細胞の1.2×10を採取し、15mlファルコンチューブ中、477×gで5分間遠心分離する
3.ここから、全てのステップを氷上または4℃で行う
4.96ウェルプレート(U底状)で、1.0μg/μLのSM101で開始し0.0039μg/μLで終了するSM101の濃度系列(希釈液:「FACS−バッファ」)を準備し、同様に、対応するコントロールウェルに50μLのTM−メディウムを添加することによりコントロールサンプル(二次抗体のみに0μg/μLのSM101を用いた)を準備する
5.FACS−バッファ中で50μg/ml凝集ベリグロビンの500μLを準備する(すなわち、0.96μg/μLストックの26.04μLを473.96μLのFACS−バッファに添加することにより)、「凝集ベリ−ミックス」
6.ステップ2からのラジ細胞1.2×10をステップ5からの「凝集ベリ−ミックス」500μLに再懸濁させ、十分に混合する(ボルテックス、30秒、ミディアムスピード)
7.SM101濃度系列の50μLを含むそれぞれのウェルおよびコントロールウェルにラジ細胞懸濁液の50μLを添加する(最終容量=100μL)
8.暗所の氷上で30分間インキュベートする
9.それぞれのウェルに「FACS−バッファ」150μLを添加し、粘着テープを用いてウェルをシールし513×gで5分間遠心分離する
10.「FACS−バッファ」中で1/100二次抗体−混合物の1mLを準備する
11.上清を廃棄し、クロスコンタミネーションを回避するためにウェル上をシールしてプレートを短時間ボルテックスする
12.無染色のコントロールを除き、それぞれのウェルに二次抗体−混合物50μLを添加する
13.暗所の氷上で30分間インキュベートする
14.「FACS−バッファ」150μlを添加し、513×gで10分間遠心分離する
15.上清を廃棄し、プレート上をシールしてプレートを短時間ボルテックスする
16.「FACS−バッファ」150μlを添加し、サンプルを5mLポリスチレン製チューブに移し、BDのFACS−カント−IIで分析する(BDのディバ ソフトウェア v.6.0を用いる)
1.4 SM101の濃度系列(終了濃度):
0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03125、0.01565、0.0078、0.0039、0.00195μg/μL;最終容量(VEND)=100μL
1.5 FACSデータ分析
BDのFACS−カント−IIでFACS−データを記録し、fcs−ファイルフォーマットでデータを保存した。続く分析ではフロージョー ソフトウェア(v.8.8.4)を用いた。図1は代表的なゲーティングストラテジィを表している。
生細胞を採取しそのフィコエリトリン−蛍光を評価した。SM101濃度系列からのサンプルのヒストグラムをフロージョー ソフトウェアを用いてヒストグラムのオーバーレイにグループ化した。それぞれのサンプルについて、そのソフトウェアにより蛍光メジアン値を算出した(図2)。図2は、ラジ細胞での膜結合FcγRIIBに対する凝集IgGsの結合における強力な濃度依存性阻害を示している。並行実験において、SM101による特異的阻害を確認するために、上述したものと同じ濃度系列を用いる同量のチキン血清アルブミンでSM101を置換した(図3)。本発明のインビトロ法は、図2に表されるショーケース実験で立証されるように、SM101の結合活性を評価するための定性的な細胞ベースの手段を提供する。
1.6 活性の算出
この細胞アッセイにおいてSM101の活性を算出するために、蛍光強度シグナルのメジアンを以下の式を用いて正規化した(正規化したデータを表1に示す)。
表1は、図2に示されたFACS計測について算出された正規化した値であり、続いてのラングミュア等温線の当てはめ(fitting)に用いたものである。
みかけKおよび最大阻害の測定のために、エクセル(Excel)のソルバーアドイン関数(Solver-add-in function)を用いて、以下のラングミュア結合等温式に対するデータの続いての当てはめを行い、図4に示されるような阻害曲線の結果を得た。ラジ細胞でのFcγRIIBの未知の細胞表面濃度およびフリーなSM101の濃度が計算に考慮され得ないため、みかけKが真正(real)Kと異なることとなる。%阻害では%正規化したシグナルを用いており、cが可溶性FcRの濃度(モル濃度または質量濃度)である。エクセルのソルバーアドイン関数やこのタイプの算出を許容する他のコンピュータプログラムを用い、最大阻害およびKのために以下の式に当てはめた。
この当てはめストラテジィを用いることで、FACSデ−タからみかけKが0.99×10−6Mであり、平方残差の和が0.0226であることが明らかとなった(表2)。表2は、FACS007からのデータのラングミュア等式に当てはめて得られたパラメータである。
FACSのデータからSM101のIC50を算出するために、分析ソフトウェアであるマイクロカル(Microcal、登録商標)オリジン(Origin)(バージョン:6.0)を用いた。%阻害を競合SM101の濃度に対してプロットした。以下のシグモイドロジスティック関数にデータを当てはめた。IC50の算出では、パラメータA1を0とし、パラメータA2を100とした。
表1からのデータ(FACS007)を用いることで、IC50が17.7μg/mL、スロープが1.63と評価された(図5)。
1.7 標準品およびSM101の比較
後続の実験において、調査的な医薬品製造物であるSM101(sFcγRIIB)の生物活性を調査し、薬剤物質である標準品(FACS021)と比較した。IMPおよび標準品について、シングル96−ウェルプレートで並行して上記項目1.4に記載されたようにFACSベースの力価アッセイを行った。
記載したようにFACS−データを記録し分析し(上記項目1.5)、上記概説したラングミュア結合等温式を用いてデータの当てはめを行った(以下の表3および図6)。表3は、ラングミュア等温線の当てはめに用いたFACS計測(FACS021からのデータ)から得られた値である。
FACSデ−タからSM101標準品のみかけKが0.739×10−6Mであり、SM101のIMPのみかけKが0.904×10−6Mであることが明らかとなった(表4)。表4は、表3、図6からのデータ(FACS021)をラングミュア関数およびシグモイドロジスティック関数に当てはめて得られたパラメータである。
上述したシグモイドロジスティック関数を用いるFACS−分析のデータからSM101の標準品およびIMPのIC50を算出するために、分析ソフトウェアのマイクロカル(登録商標)オリジン(バージョン:6.0)を用いた。SM101標準品は、IC50が12.9μg/mLを示し、SM101のIMPが16.2μg/mLであった(表4)。
インターアッセイ偏差の+/−20%が細胞アッセイにおいて容認できるとすれば、FACSベースの力価アッセイにおいて測定されたように、IMPの生物活性が薬剤物質であるSM101標準品に相当することが結論付けられ得る。
(実施例2)
本実施例では、市販のIVIG、ベリグロビンからの凝集IgGの調製のための方法を記載する。凝集IgGは、本発明の可溶性ヒトFcガンマレセプタの結合活性をインビトロで測定するための方法の原料である。本実験では、以下の試薬を用いた:
(品目) (購買先) (品質)
ベリグロビン(登録商標) 地元薬局 承認番号
160mg/mL 176a/92
CSLベーリング(Behring)
5mLプレフィルドシリンジ
塩化ナトリウム ロス、または同等物 p.a.
塩化カリウム メルク、または同等物 p.a.
リン酸水素2ナトリウム・2水塩 シグマ、または同等物 p.a.
リン酸2水素カリウム メルク、または同等物 p.a.
アジ化ナトリウム メルク、または同等物 精製済
グリセロール98%、無水 ロス、または同等物 欧州薬局方
凝集IgGの製造のための方法は、以下のステップに要約することができる:
1.ベリグロビン(登録商標)の160mg/mLをPBS−Nで100mg/mLに調整する
2.分取SECにより分離する
3.タンパク質含量を測定する
4.選択的に:含量が0.50mg/mL未満であれば限外濾過で濃縮し、含量が1.40mg/mLを超えればPBS−N(0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水)で希釈する
5.20%(v/v)グリセロールに調整する
6.0.5mLに等分し、液体窒素で急速凍結する
特に、160mg/mLベリグロビン(登録商標)の5mLを、均質な溶液が得られるまで、PBS−Nの3mLと慎重に混合する。予めPBS−Nで平衡化したスーパーデックス200ハイロード26/60カラム(ジーイーヘルスケア)に、3.0mLの希釈物を流速1mL/min(エクタ エクスプローラ10、ジーイーヘルスケア)で注入する。バッファとしてPBS−Nを用い1mL/minでタンパク質を分離する。凝集IgGは、およそ115mL後に溶出し、溶出液の280nmでの光学密度が50mAUを超えた後、3mLずつの分画で回収する。はじめの3つの分画をプールし、さらなるSEC処理からのプールと混合されるまで、最大3日間、2−8℃で保存する。全てのSEC処理からの凝集IgGプールのタンパク質含量が0.50mg/mLを下回れば、プールを限外濾過(アミコンウルトラ(Amicon Ultra)、ウルトラセル(Ultracel)100kDaのMWCO、ミリポア(Millipore))により1.00−1.40mg/mLまで濃縮すべきである。凝集IgGプールのタンパク質含量が1.40mg/mLを超えれば、プールをPBS−Nで1.40mg/mLまで希釈する。最後に、凍結保護剤のグリセロールを、最終濃度の20%(v/v)まで、定速攪拌(500rpm)しながら滴下する。調整した凝集ベリグロビン(登録商標)プールの含量を放出用に測定し、プールを1.5mL反応チューブ(セーフシールチューブ(Safe seal tubes)、ザルステッド(Sarstedt))に0.5mLずつ分取する。分取したものを液体窒素で急速凍結し、−60℃から−80℃で保存する。精製の結果を図7に示しており、影付き領域がプールされた凝集IgG分画を表している。
(実施例3)
本実施例では、実施例2の方法に従い調製された凝集IgGの品質をテストするための方法を記載する。第1のステップにおいて、凝集ベリグロビン(登録商標)分画の含量を測定する。第2のステップにおいて、凝集ベリグロビン(登録商標)の純度を分析SECによりテストする。第2のステップを凝集ベリグロビン(登録商標)の凍結した分取品で行う。凍結した分取品を、その使用前に穏やかに振盪(500rpm(回転/分)、サーモミキサー(Thermomixer)R、エッペンドルフ(Eppendorf))しながら室温(25±2℃)で解凍しなければならない。
不適当な(incongruous)バッチの場合にテストの労力を最少化するために、品質テストを段階的に行う。それぞれのステップのテストで以下のテストを行う。
(ステップ)(項目)(方法/プラン) (目標とする値)
1 含量 UV/VIS 0.30mg/mL≦
分光法 c凝集ベリグロビン≦1.35mg/mL
2 純度 分析SEC 相対ピーク面積
凝集/オリゴマの
ベリグロビン(登録商標)>70%
ステップ1:UV/VIS分光法による含量計測
実施例1の方法に従い製造した凝集ベリグロビン(登録商標)分画の含量を、UV/VIS分光法により計測する。必要であれば、タンパク質溶液を、280nmでの光学密度が0.2および0.8の間となるまで、それぞれのバッファで希釈する。その溶液の400μLをUVマイクロキュベット(UV−キュベット マイクロ、ブランド(Brand))に移す。ブランクとしてのPBS−Nに対して280nmおよび320nMでの吸光度を記録し(キャリィ100バイオ(Cary 100 Bio)、ヴァリアン(Varian))、mg/mLでの濃度を以下の等式に従い算出する。アッセイを3回行い、結果を平均する。
ステップ2:分析SECによる純度
二量体および単量体の形態に対して相対的な凝集/オリゴマのベリグロビン(登録商標)の量を分析SECにより測定する。予めPBS−Nで平衡化したスーパーデックス200 10/300GLカラム(ジーイーヘルスケア)を備えたシリーズ1200HPLCシステム(アギレント(Agilent))を用いる。凝集ベリグロビン(登録商標)の新たに解凍した分取品の150μLを遠心分離し(20,000・g、5分間)、上清の50μLを流速0.5mL/minで注入する。バッファとしてPBS−Nを用い流速0.5mL/minでタンパク質を分離させ、280nmで溶出液の吸光度をモニタする。全体の処理時間を50分に制限する。50μLのPBS−N、20%グリセロールの注入を、それぞれの凝集ベリグロビンの注入に先行させる。クロマトグラムをマニュアルで統合(integrate)し、純度を、13.0分から30.0分までの全てのピークと比較した凝集/オリゴマのベリグロビン(登録商標)ピークの相対面積として報告する。種々のベリグロビン(登録商標)分画の分析SECを図8に示す。図9aおよび9bは、2つの凝集ベリグロビン(登録商標)バッチからの分析SECクロマトグラムの代表的な統合(integration)を示す。
(実施例4)
本実施例では、ラジ細胞への結合における凝集ベリグロビン(登録商標)の量および品質の推定される影響を測定するために実験を行った。量を変えた凝集ベリグロビン(登録商標)および異なるバッチのベリグロビンを用いて実験を行った。
凝集ベリグロビン(登録商標)のテストした濃度は、20、10、5、3および2.5μg/1×10細胞を含むものとした。続く実験では、二次抗体が凝集ベリグロビン(登録商標)と比較して過剰に有効であるかを測定するために、二次抗体(αhu IgG(H+L)−PE)の濃度を付随して変更した(図10)。
図10からわかるように、ラジ細胞への結合は、最低濃度であっても、凝集ベリグロビン(登録商標)の量により制限されない。1×10細胞あたり2.5μgの量(Vend=100μL)が細胞における有効なレセプタへの定量的な結合に十分である。表5は、凝集ベリグロビン(登録商標)の異なるバッチ(番号1、2、3)のMFIのメジアン、算出した平均値およびSDを示す。
(実施例5)
本実験では、ラジ細胞への凝集ベリグロビン(登録商標)の結合のpH−依存性を調査した。実施例1(FACS−力価−アッセイ)に記載したように本発明の方法に用いられるメディウムは、RPMI、MEM、ピルビン酸塩ナトリウム、10%FCSおよびグルタミン源(グルタマックス−I、ギブコ)を包含する。L−グルタミンは、次第にPCAおよびNH3に分解しアルカリ性pHに到る。グルタマックス−Iが低減した分解傾向を有しているとしても、培養メディウムのpHは、次第によりアルカリ性となる。ラジ細胞への凝集ベリグロビン(登録商標)の結合のpH−依存性をテストするために、0.1×10のラジ細胞を2.5μgの凝集ベリグロビン(登録商標)とともに種々のpH条件(pH6.5、6.7、7.0、7.2、7.8、8.0、8.5、9.0、10.0)でインキュベートし、細胞に結合する凝集ベリグロビン(登録商標)を1/200αhuIgG(H+L)−PE二次抗体を用いるFACSアッセイで評価した。図11(a)および11(b)からわかるように、ラジ細胞への凝集ベリグロビン(登録商標)の結合の依存性がテストしたpH条件のpH6.5で見かけ上最適となる。より低いpH条件は、細胞への有害な効果が予想されるため、テストしなかった。このため、pH7.0±0.25のフレッシュなメディウムのみをテストにもちいたことで安全なはずである。アッセイでの希釈液として、TMメディウムに代えてFACS−バッファ(HBSS+5%FCS+0.01%(w/v)アジ化ナトリウム、pH6.5−6.8)を用いることが好適である。
(実施例6)
SM101によるFcγRIIB陽性(positive)細胞へのIC結合の競合阻害における単量体ヒトIgGの効果を追加の実験でテストした。この目的のために、ラジ細胞を、1セット量の凝集ベリグロビン(登録商標)(2.5μg/1×10細胞)、1セット量の単量体ベリグロビン(登録商標)および変化する量のSM101(100、50、25、12.5、6.25、3.12、1.56、0.78、0.39μM)とともにインキュベートするか、または、1セット量の凝集ベリグロビン(登録商標)、SM101および変化する量の単量体ベリグロビン(登録商標)(3.3、1.6、0.8、0.4、0.2、0.1、0.05、0μM)とともにインキュベートするか、のいずれかとした。二次抗体を過剰に添加した(1/100希釈のストック、20μLを1980μLに添加、二次抗体のタンパク質濃度:0.5μg/μL、0.25μg/1×10と同じ)。単量体ベリグロビン(登録商標)がnM(ナノモル)濃度範囲でラジ細胞への免疫複合体の結合を競合的に阻害することが見出された。SM101は、μM(マイクロモル)濃度範囲にもかかわらず同様の効果を示す。単量体ベリグロビン(登録商標)が膜結合FcγRIIBに結合し、このため凝集ベリグロビンの結合を阻害するものと結論付けることができる。このシステムにおける凝集した活性なベリグロビン(登録商標)分子の数は不明であり、このため観測された効果が、膜結合FcγRIIBへの単量体IgGの優先的な結合に起因するものか、または、添加した単量体IgGにより凝集ベリグロビン(登録商標)の数が優ることによるものかははっきりしていない。単量体IgGの最高濃度(3.3μM)は0.5μg/1×10細胞に相当しており、単量体IgGが全ての有効な二次抗体に結合することを意外なものにする。
(実施例7)
本実験では、二次抗体バックグランドのMFIに関連するインターアッセイ/イントラアッセイの再現性をテストした。遡及的な分析において、n=25のテストのデータをラジ細胞での二次抗体のバックグランド染色の変化について評価した。以下の表7は、抗−ヒトIgG(H+L)−PE二次抗体(1/100希釈)で染色したラジ細胞のMFI、サンプルの平均値および標準偏差を示す。色つきは並行して行った実験(イントラアッセイ安定性)を示す。
表6からわかるように、二次抗体(凝集ベリグロビンを添加していない)で染色したラジ細胞のMFIは、別の実験(インターアッセイ安定性)または並行の実験(イントラアッセイ安定性)のいずれを比較しても、標準偏差(SD)21%であり(MFIのSDが29、平均MFIが134.9)、まずまず一定のままである。
(実施例8)
本実施例では、みかけKおよびIC50に関連するインターアッセイ/イントラアッセイの再現性をテストした。25の実験からのFACSベースの力価アッセイのデータセットにおけるインターアッセイおよびイントラアッセイの安定性を評価するために、当てはめたみかけKおよびIC50を分析した。以下の表7において、K、IC50および25のFACS実験の採取前のラジ細胞の細胞密度を示す。シングルプレートでの別のテストでKおよびIC50を評価したため、実験12−15および16−17がイントラアッセイ安定性を示している。テストNo.4および6(グレーで強調)は、計測データが明らかな異常値を示しているため、後続の分析から排除した。
表7に示されたデータから総括されるように、インターアッセイおよびイントラアッセイの安定性は高い。ところが、テストNo.18以降はより低いKおよびIC50値が測定されたことに留意すべきである。このことは、FACS−カントII装置の新たなベースライン設定と相関する。
表8は、表8からの25の実験におけるKおよびIC50の平均値、標準偏差および平均偏差を示す。
表8は、表7に示された全25の実験におけるK(0.53×10−6M)およびIC50(10.6μg/mL)の平均値を示している。これは、およそ50%のSDとなる(SD=0.26)。テストNo.1−17(明らかな異常値のNo.4および6を除く)とテストNo.18−25とについて別々に平均を算出すれば、SDは、テストNo.1−17について29%(平均Kが0.68×10−6M)、テストNo.18−25について26%(平均Kが0.26×10−6M)で顕著に低下する(表9)。表9は、テストNo.1−17とテストNo.18−25との平均KおよびIC50値を示す。

Claims (11)

  1. 可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる組成物の安定性をインビトロで測定するための方法であって、以下のステップを含み、
    (a)ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面を1セット量の凝集ヒトIgGと接触させ、
    (b)前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面を1セット量の前記可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの組成物と接触させ、
    (c)前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合された凝集ヒトIgGの量を測定し、
    (d)ステップ(c)において測定した前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合された凝集ヒトIgGの量をレファレンス値と比較し、それにより可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含むかまたは可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBからなる前記組成物の安定性を測定する
    ここで
    前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面は、ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBでコートされ得る哺乳動物の細胞もしくは細胞株、および/または、固体表面であるか、または該細胞もしくは細胞株および/または該固体表面であり、
    前記凝集ヒトIgGは、サイズ排除クロマトグラフィを含む分離法によりヒトタンパク質から取得した凝集ヒトIgGであ
    前記レファレンス値は、前記可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの組成物の代わりに、レファレンス組成物としての標準品を用いてステップ(a)から(c)を実施することによりあらかじめ測定された、前記ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを含む表面に結合された凝集ヒトIgGの量であり、
    前記レファレンス組成物は、前記可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBの組成物と同じ可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIBを比較可能な量で含むことを特徴とする方法。
  2. ステップ(a)および(b)は、並行してまたは連続して行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記凝集ヒトIgGは、ヒトIgGの少なくとも90%の含量により特徴づけられるヒトタンパク質から分離され得る凝集ヒトIgGであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記凝集ヒトIgGは、ベリグロビン(登録商標)から分離され得ることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記サイズ排除クロマトグラフィは、前記凝集IgGから単量体および/または二量体のIgGを分離することを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記凝集ヒトIgGは、ラベルされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記ラベルは、二次ラベルされたヒト抗−IgG抗体を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記可溶性ヒトFcガンマレセプタは、可溶性FcガンマIIBレセプタであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記可溶性ヒトFcガンマIIBレセプタは、SM101(配列番号1)であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記哺乳動物の細胞は、ATCC番号CCL−86として寄託されたラジ細胞であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記表面に含まれるヒトFcガンマレセプタのサブタイプおよび前記可溶性ヒトFcガンマレセプタIIA、IIB、IIIAおよび/またはIIIB組成物に含まれるヒトFcガンマレセプタのサブタイプは、同一であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の方法。
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