A.第1実施形態:
A−1.点火プラグ100の構成:
図1は、一実施形態としての点火プラグ100の断面図である。図中には、点火プラグ100の中心軸CL(「軸線CL」とも呼ぶ)と、点火プラグ100の中心軸CLを含む平らな断面と、が示されている。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。軸線CLに垂直な方向を、「径方向」とも呼ぶ。軸線CLを中心とする円の円周方向を、「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、図1における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から中心電極20に向かう方向である。また、図1における先端方向Df側を点火プラグ100の先端側と呼び、図1における後端方向Dfr側を点火プラグ100の後端側と呼ぶ。
点火プラグ100は、軸線CLに沿って延びる貫通孔12(軸孔12とも呼ぶ)を有する筒状の絶縁体10と、貫通孔12の先端側で保持される中心電極20と、貫通孔12の後端側で保持される端子金具40と、貫通孔12内で中心電極20と端子金具40との間に配置された抵抗体73と、中心電極20と抵抗体73とに接触してこれらの部材20、73を電気的に接続する導電性の第1シール部72と、抵抗体73と端子金具40とに接触してこれらの部材73、40を電気的に接続する導電性の第2シール部74と、絶縁体10の外周側に固定された筒状の主体金具50と、一端が主体金具50の先端面55に接合されるとともに他端が中心電極20とギャップgを介して対向するように配置された接地電極30と、を有している。
絶縁体10の軸線方向の略中央には、外径が最も大きな大径部14が形成されている。大径部14より後端側には、後端側胴部13が形成されている。大径部14よりも先端側には、後端側胴部13よりも外径の小さな先端側胴部15が形成されている。先端側胴部15よりもさらに先端側には、縮外径部16と、脚部19とが、先端側に向かってこの順に形成されている。縮外径部16の外径は、前方向Dfに向かって、徐々に小さくなっている。縮外径部16の近傍(図1の例では、先端側胴部15)には、前方向Dfに向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部11が形成されている。絶縁体10は、機械的強度と、熱的強度と、電気的強度とを考慮して形成されることが好ましく、例えば、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。
中心電極20は、絶縁体10の貫通孔12内の前方向Df側の端部に配置されている。中心電極20は、鍔部23を含む頭部24と、鍔部23の前方向Df側に形成された軸部27と、軸部27の先端に接合(例えば、レーザ溶接)された第1チップ29と、を有している。鍔部23は、軸部27の外径よりも大きな外径を有しており、鍔部23の前方向Df側の面は、絶縁体10の縮内径部11によって、支持されている。軸部27は、軸線CLに平行に前方向Dfに向かって延びている。軸部27は、外層21と、外層21の内周側に配置された芯部22と、を有している。外層21は、例えば、ニッケルを主成分として含む合金で形成されている。ここで、主成分は、含有率(重量パーセント(wt%))が最も高い成分を意味している。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、銅を主成分として含む合金)で形成されている。第1チップ29は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属)を用いて形成されている。中心電極20のうち第1チップ29を含む先端側の一部分は、絶縁体10の軸孔12から前方向Df側に露出している。なお、芯部22と第1チップ29との少なくとも一方は、省略されてもよい。
端子金具40は、軸線CLに平行に延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性材料を用いて形成されている(例えば、鉄を主成分として含む金属)。端子金具40は、前方向Dfに向かって順番で並ぶ、キャップ装着部49と、鍔部48と、軸部41と、を有している。軸部41は、絶縁体10の軸孔12の後方向Dfr側の部分に挿入されている。キャップ装着部49は、絶縁体10の後端側で、軸孔12の外に露出している。
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための抵抗体73が配置されている。抵抗体73は、導電性材料(例えば、ガラスと炭素粒子とセラミック粒子との混合物)を用いて形成されている。抵抗体73と中心電極20との間には、第1シール部72が配置され、抵抗体73と端子金具40との間には、第2シール部74が配置されている。これらのシール部72、74は、導電性材料(例えば、金属粒子と抵抗体73の材料に含まれるものと同じガラスとの混合物)を用いて形成されている。中心電極20は、第1シール部72、抵抗体73、第2シール部74によって、端子金具40に電気的に接続されている。
主体金具50は、軸線CLに沿って延びる貫通孔59を有する筒状の部材である。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入され、主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50は、導電材料(例えば、主成分である鉄を含む炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。絶縁体10の前方向Df側の一部は、貫通孔59の外に露出している。また、絶縁体10の後方向Dfr側の一部は、貫通孔59の外に露出している。
主体金具50は、工具係合部51と、胴部52と、を有している。工具係合部51は、点火プラグ用のレンチ(図示せず)が嵌合する部分である。胴部52は、主体金具50の先端面55を含む部分である。胴部52の外周面には、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)の取付孔に螺合するためのネジ部57が形成されている。ネジ部57は、雄ねじであり、螺旋状のネジ山を有している(図示省略)。
主体金具50の工具係合部51と胴部52との間の外周面には、径方向外側に突き出たフランジ状の鍔部54が形成されている。胴部52のネジ部57と鍔部54との間には、環状のガスケット90が配置されている。ガスケット90は、例えば金属の板状部材を折り曲げることによって形成されており、点火プラグ100がエンジンに取り付けられた際に押し潰されて変形する。このガスケット90の変形によって、点火プラグ100と(具体的には、鍔部54の前方向Df側の面)、エンジンと、の隙間が封止され、燃焼ガスの漏出が抑制される。なお、ガスケット90が省略されてもよい。この場合、鍔部54は、直接に、エンジンの点火プラグ100用の取付孔を形成する部分(例えば、エンジンヘッド)に接触してよい。
主体金具50の胴部52には、先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部56が形成されている。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の縮外径部16と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。本実施形態では、先端側パッキン8は、例えば、鉄製の板状リングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
主体金具50の工具係合部51より後端側には、薄肉のカシメ部53が形成されている。また、鍔部54と工具係合部51との間には、薄肉の座屈部58が形成されている。主体金具50の工具係合部51からカシメ部53にかけての内周面と、絶縁体10の後端側胴部13の外周面との間には、円環状のリング部材61,62が挿入されている。さらにこれらのリング部材61,62の間には、タルク70の粉末が充填されている。点火プラグ100の製造工程において、カシメ部53が内側に折り曲げられて加締められると、座屈部58が圧縮力の付加に伴って外向きに変形(座屈)し、この結果、主体金具50と絶縁体10とが固定される。タルク70は、この加締め工程の際に圧縮され、主体金具50と絶縁体10との間の気密性が高められる。また、パッキン8は、絶縁体10の縮外径部16と主体金具50の縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。
接地電極30は、棒状の本体部37と、本体部37の先端部34に取り付けられた第2チップ39と、を有している。本体部37の他方の端部33(基端部33とも呼ぶ)は、主体金具50の先端面55に接合されている(例えば、抵抗溶接)。本体部37は、主体金具50に接合された基端部33から先端方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部34に至る。第2チップ39は、先端部34の後方向Dfr側の部分に固定されている(例えば、レーザ溶接)。接地電極30の第2チップ39と、電極20の第1チップ29とは、ギャップgを形成している。すなわち、接地電極30の第2チップ39は、中心電極20の第1チップ29の前方向Df側に配置されており、第1チップ29とギャップgを介して対向している。第2チップ39は、本体部37よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属)を用いて形成されている。
本体部37は、外層31と、外層31の内周側に配置された内層32と、を有している。外層31は、内層32よりも耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルを含む合金)で形成されている。内層32は、外層31よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。なお、内層32と第2チップ39との少なくとも一方は、省略されてもよい。
A−2.絶縁体10の検査:
図2(A)は、絶縁体10の検査システムの実施形態を示す概略図である。この検査システム1000は、絶縁体10の欠陥を検出する。検出される欠陥は、絶縁体10の内部に生じる微少な空洞である。
検査システム1000は、光学装置500と、絶縁体10を支持する支持部710(例えば、絶縁体10の軸孔12内に挿入されて絶縁体10を支持する棒部分を含む部材)と、支持部710を絶縁体10の軸線CLを中心に回転させる電気モータ700と、光学装置500とモータ700とを制御する制御装置600と、を含んでいる。制御装置600は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU)と、揮発性記憶装置(例えば、RAM)と、不揮発性記憶装置(例えば、フラッシュメモリ)と、を有するコンピュータである。不揮発性記憶装置には、予め、プログラムが格納されている。プロセッサは、プログラムに従って動作することによって、後述する検査処理を実行する。以下、制御装置600のプロセッサが処理を実行することを、制御装置600が処理を実行する、とも表現する。
光学装置500は、テラヘルツ波を生成する発光装置510と、テラヘルツ波の強度を測定する受光装置520と、発光装置510からのテラヘルツ波610を絶縁体10に向けて照射するとともに、絶縁体10からの反射波620を受光装置520へ導く光学システム530と、を有している。
発光装置510は、パルス状のテラヘルツ波を繰り返し生成する装置である。発光装置510は、例えば、短パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、レーザ光によって励起されてテラヘルツ波を発生する結晶と、結晶から発生したテラヘルツ波をコリメートするコリメータ(例えば、放物面鏡)と、を有している。
受光装置520は、入射したテラヘルツ波の強度を測定する装置である。受光装置520は、例えば、いわゆるポッケルス効果によりテラヘルツ波の強度に応じて複屈折を引き起こす結晶と、この結晶による偏光状態の変化が大きい光を透過するように方向付けられた偏光板と、偏光板を透過した光の強度を測定するCCDカメラと、を有している。
光学システム530は、絶縁体10の外周面上のスポット状の照射位置Piに、発光装置510からのテラヘルツ波610を導くとともに、絶縁体10の軸孔12の内周面上の反射位置Prで反射した反射波620を、受光装置520へ導くシステムである。図示を省略するが、光学システム530は、種々の光学機器(例えば、レンズ、ミラー、ビームスプリッター、ガルバノミラー等)を含んでいる。特に、本実施形態では、光学システム530は、ガルバノミラーシステム535を含んでいる。ガルバノミラーシステム535は、1以上のガルバノミラーで構成されている。ガルバノミラーは、電気モータ等の駆動源によって角度と位置との少なくとも一方が調整されるミラーである。発光装置510からのテラヘルツ波610は、ガルバノミラーシステム535による反射を通じて、絶縁体10上の照射位置Piへ導かれる。また、絶縁体10からの反射波620は、ガルバノミラーシステム535による反射を通じて、受光装置520へ導かれる。ガルバノミラーシステム535の1以上のガルバノミラーの角度と位置との少なくとも一方が調整されることによって、発光装置510からのテラヘルツ波610が照射される照射位置Piと、受光装置520によって検出可能な反射波620の反射位置Prと、のそれぞれの軸線CLの方向の位置が変更される。
図2(B)は、絶縁体10に照射されるテラヘルツ波610と、絶縁体10からの反射波620と、の説明図である。図中には、絶縁体10の軸線CLに垂直な断面が示されている。本実施形態では、テラヘルツ波610は、絶縁体10の外周面10o上の照射位置Piに、絶縁体10の外周面10oにおおよそ垂直に、照射される。照射位置Piに照射されたテラヘルツ波610は、絶縁体10を透過して、軸孔12の内周面10iに到達する。そして、テラヘルツ波は、内周面10iで反射する。反射波620は、絶縁体10に照射されるテラヘルツ波610とおおよそ同じ光路を通って、光学システム530へ入射する。以下、内周面10i上のテラヘルツ波610が到達した位置を、反射位置Prとも呼ぶ。
テラヘルツ波の強度は、絶縁体10を透過することによって、弱くなる。反射波620の強度は、照射位置Piと反射位置Prとの間の距離(すなわち、絶縁体10の肉厚)が大きいほど、弱くなる。また、絶縁体10のうちの照射位置Piと反射位置Prとの間の部分に欠陥が存在する場合、テラヘルツ波は、欠陥によって、散乱され得、また、吸収され得る。このように、欠陥によって、反射波620の強度は、さらに小さくなる。従って、検査対象の絶縁体10の反射波620の強度が、欠陥の無い基準となる絶縁体10の反射波620の強度(以下、基準強度と呼ぶ)と比べて小さい場合、検査対象の絶縁体10が欠陥を有している、と判断できる。
なお、受光装置520には、絶縁体10のうちの反射位置Prとは異なる部分(例えば、外周面10o)での反射波も、入射し得る。このような意図しない反射波は、反射位置Prでの反射波620の光路よりも短い、または、長い光路を通って、受光装置520へ入射する。意図しない反射波が受光装置520で検出されるタイミングは、反射位置Prでの反射波が検出されるタイミングとは、異なっている。従って、予め決められた適切な時間範囲内で受光装置520によって検出される信号を用いることによって、反射位置Prでの反射波620の強度を測定できる。
図3は、検査処理の手順の例を示すフローチャートである。絶縁体10の検査処理は、絶縁体10が点火プラグ100の組み立てに用いられるよりも前に行われる。本実施形態では、制御装置600は、図3の手順に従って、絶縁体10の予め決められた複数の照射位置Piのそれぞれでの反射波620の強度を測定する。図4は、複数の照射位置Piの説明図である。図4(A)には、絶縁体10の軸線CLに垂直な断面が示され、図4(B)には、絶縁体10の斜視図が示されている。図4(B)では、絶縁体10が、簡略化されて、円筒で表現されている。各図に示された複数の黒点Piのそれぞれは、照射位置を示している(照射位置Piと呼ぶ)。
図示するように、複数の照射位置Piは、絶縁体10の外周面10oの全体に亘って、おおよそ均等に分布するように、配置されている。具体的には、図4(A)に示すように、照射位置Piの周方向の位置Px(周方向位置Pxと呼ぶ)は、1番からM番(Mは2以上の整数)のM個の位置のいずれかに設定される。M個の周方向位置Pxは、周方向におおよそ等間隔に並ぶように、配置されている。図4(A)の例では、周方向位置Pxの1番からM番までの番号は、予め決められた周方向(図4(A)の例では、時計回りの方向)に向かって昇順に割り当てられている
また、図4(B)に示すように、照射位置Piの軸線CLに平行な方向の位置Py(軸方向位置Pyと呼ぶ)は、1番からL番(Lは2以上の整数)のL個の位置のいずれかに設定される。L個の位置Pyは、絶縁体10の前方向Df側の端の近傍から後方向Dfr側の端の近傍まで、おおよそ等間隔に並ぶように、配置されている。図4(B)の例では、軸方向位置Pyの1番からL番までの番号は、前方向Df側の端の位置から後方向Dfrに向かって昇順に割り当てられている。
本実施形態では、M×L個の照射位置Piのそれぞれで、反射波620の強度が測定される。周方向位置Pxが同じであるL個の反射位置Prは、絶縁体10の外周面10o上で軸線CLに平行な方向(例えば、後方向Dfr)に延びるライン上に、配置される(以下、走査ラインSLとも呼ぶ)。
周方向位置Pxの変更は、検査システム1000を動かさずに、絶縁体10(図2(A))を軸線CLを中心に回動させることによって、行われる。これに代えて、絶縁体10を動かさずに、絶縁体10に対する光学装置500の周方向の位置を変化させてもよい。
軸方向位置Pyの変更は、光学システム530のガルバノミラーシステム535によって、行われる。本実施形態では、光学システム530は、ガルバノミラーシステム535に含まれる1以上のガルバノミラーのそれぞれの角度と位置との少なくとも一方を調整することによって、絶縁体10を動かさずに、照射位置Piと受光装置520によって検出可能な反射波620の反射位置Prとを、軸線CLの方向に移動させることができる。このようなガルバノミラーシステム535の構成としては、1以上のガルバノミラーを含む公知の種々の構成を採用可能である。例えば、反射波620を反射するガルバノミラーが、発光装置510からのテラヘルツ波610を反射するガルバノミラーとは別のミラーであってもよい。また、発光装置510からのテラヘルツ波610を反射するガルバノミラーの総数は、1以上の任意の数であってよい。同様に、反射波620を反射するガルバノミラーの総数は、1以上の任意の数であってよい。いずれの場合も、光学システム530と絶縁体10との間の距離を長くすることによって、図2(B)で説明したテラヘルツ波610と反射波620とのそれぞれの進行方向と照射位置Piと反射位置Prとの配置との関係を維持しつつ、照射位置Piの軸線CLの方向の位置と、受光装置520によって検出可能な反射波620の反射位置Prの軸線CLの方向の位置と、を変更できる。
図3のS100では、制御装置600(図2(A))は、照射位置Piの軸方向位置Pyを、軸線CLの方向の予め決められた端の位置に移動させる(Py=1、または、Py=L)。S100が初めて実行される場合、照射位置Piは、Px=1、Py=1の位置に移動されることとする。以下、現行の周方向位置Pxに対応付けられた走査ラインSLを、対象ラインSLとも呼ぶ。
S110では、制御装置600は、光学装置500の発光装置510に、テラヘルツ波610を絶縁体10に照射させ、そして、受光装置520に、絶縁体10からの反射波620の強度を測定させる。なお、制御装置600は、測定結果を表すデータを、図示しない記憶装置(例えば、制御装置600に接続されたハードディスクドライブ)に格納することが好ましい。
S120では、制御装置600は、対象ラインSL(図4(B))の全ての照射位置Piでの測定が終了したか否かを判断する。対象ラインSLのL個の照射位置Piの中に未処理の照射位置Piが残っている場合(S120:No)、S130で、制御装置600は、光学システム530を駆動して、照射位置Piの軸方向位置Pyを、現行の軸方向位置Pyの隣の未処理の軸方向位置Pyに移動させる。例えば、S100で照射位置Piが前方向Df側の端の位置(Py=1)に設定される場合、照射位置Piは、後方向Dfrの隣の位置に、移動される。そして、制御装置600は、S110に移行し、更新された照射位置Piの処理を実行する。
対象ラインSLの全ての照射位置Piでの測定が終了した場合(S120:Yes)、S140で、制御装置600は、全ての周方向位置Pxでの測定が終了したか否かを判断する。未処理の周方向位置Pxが残っている場合(S140:No)、S150で、制御装置600は、モータ700を駆動して、照射位置Piの周方向位置Pxを、現行の周方向位置Pxの隣の未処理の周方向位置Pxに移動させる。本実施形態では、周方向位置Pxは、予め決められた周方向(図4(A)の時計回りの方向)の隣の位置に変更される。そして、制御装置600は、S100に移行し、新たな対象ラインSLの処理を実行する。
なお、2回目以降のS100では、周方向位置Pxは変更されずに、軸方向位置Pyが、予め決められた位置(例えば、Py=1)に設定される。そして、新たな対象ラインSLの複数の照射位置Piでの測定が、予め決められた方向(例えば、後方向Dfr)に向かって、1つずつ順番に、行われる。なお、S150が実行される時点で(すなわち、1つの走査ラインSLの測定が終了した時点で)、軸方向位置Pyは、軸線CLの方向の端の位置である(Py=1、または、Py=L)。従って、制御装置600は、S150から、S100ではなく、S110へ移行してもよい。この場合、S130では、制御装置600は、軸方向位置Pyを、新たな対象ラインSLの測定の開始時の軸方向位置Pyから反対側の端の軸方向位置Pyへ向かう方向の隣の位置に、移動させればよい。すなわち、複数の走査ラインSLを1つずつ処理する場合に、軸方向位置Pyの先端方向Dfへの移動と、軸方向位置Pyの後方向Dfrへの移動とが、交互に繰り返される。
全ての周方向位置Pxでの測定が終了した場合(S140:Yes)、S160で、制御装置600は、欠陥が検出されたか否かを判断する。複数の照射位置Pi(ここでは、M×L個の照射位置Pi)のうち少なくとも1個の照射位置Piで、反射波620の強度が閾値よりも小さい場合、欠陥が検出されたと判断される。全ての照射位置Piで、反射波620の強度が閾値以上である場合、欠陥が検出されなかったと判断される。
強度の閾値は、欠陥が存在する場合の強度より大きく、欠陥が存在しない場合の基準強度よりも小さい値に、予め決定されている。このような閾値は、照射位置Pi毎に、予め決められている。すなわち、反射波620の強度は、照射位置Piに対応付けられた閾値と、比較される。図2(B)で説明したように、欠陥が無い場合の基準強度は、絶縁体10の肉厚に応じて変化する。従って、強度の閾値は、照射位置Piでの絶縁体10の肉厚に応じて、変化することが好ましい。本実施形態では、絶縁体10の肉厚は、軸方向位置Pyに応じて変化する。また、軸方向位置Pyが同じである場合、周方向位置Pxによらずに、肉厚はおおよそ一定である。そして、本実施形態では、周方向位置Pxを変更するために、絶縁体10が、軸線CLを中心に、回動される。従って、図2(B)に示す照射位置Piと反射位置Prとの位置関係は、周方向位置Pxに拘わらずに、同じである。これらの結果、強度の閾値としては、軸方向位置Py毎に決定された値を、用いることができる。軸方向位置Pyが同じで周方向位置Pxが異なるM個の照射位置Piには、軸方向位置Pyに対応付けられた閾値を、共通に利用できる。
S160の終了に応じて、制御装置600は、図3の処理を終了する。欠陥が検出された絶縁体10は、点火プラグ100の組み立てには利用されない。欠陥が検出されなかった絶縁体10のうち、予め決められた条件を満たす絶縁体10が、点火プラグ100の組み立てに利用される。
以上のように、図3の実施形態では、テラヘルツ波610を絶縁体10に照射して絶縁体10からの反射波620の強度を測定するという照射測定処理(S110)が、複数の照射位置Piで行われる。従って、絶縁体10の種々の部分の欠陥を検出できる。
また、S110、S120(No)、S130では、照射位置Piを軸線CLの方向に移動させる処理(S130)と照射測定処理(S110)とが交互に繰り返されることにより、軸線CLの方向に沿って並ぶ複数の照射位置Piで照射測定処理(S110)が行われる。すなわち、1本の走査ラインSL上の複数の照射位置Piでの照射測定処理(S110)が行われる(以下、走査処理と呼ぶ)。また、S150では、照射位置Piの周方向位置Pxが、予め決められた複数の位置のうち、予め決められた方向の隣の位置に変更される。そして、走査処理(S110、S120(No)、S130)と、周方向位置Pxの変更(S150)とは、交互に繰り返される。従って、1個の絶縁体10の検査処理の全体を通じて、照射位置Piが絶縁体10の周りを周方向に周回する回数は、1回である。すなわち、本実施形態では、絶縁体10は、軸線CLを中心に1回転する。仮に、軸方向位置Pyを変化させずに周方向位置Pxを変化させてM個の照射位置Piで照射測定処理を行うという周方向の走査処理と、軸方向位置Pyを変更する処理と、を交互に繰り返すとする。この場合、検査処理の全体を通じて、照射位置Piが絶縁体10の周りを周方向に周回する回数は、L回である。すなわち、絶縁体10は、軸線CLを中心にL回転する。このように、本実施形態の検査処理は、絶縁体10の回転の回数は、L回と比べて少ない1回となるように、構成されている。この理由は、以下の通りである。
発光装置510(図2(A))からのテラヘルツ波610を反射するガルバノミラー(ガルバノミラーシステム535に含まれるガルバノミラー)は、テラヘルツ波610の光路上の、絶縁体10と発光装置510との間に配置される。ここで、絶縁体10とガルバノミラーとの間の距離は、絶縁体10の軸線CLの方向の長さ(特に、複数の照射位置Piが分布する範囲の軸線CLの方向の長さ)と比べて、長い。従って、ガルバノミラーの角度と位置との少なくとも一方の小さい変化によって、絶縁体10上の照射位置Pi(特に、軸方向位置Py)は、大きく変化する。同様に、反射位置Prからの反射波620を反射するガルバノミラー(ガルバノミラーシステム535に含まれるガルバノミラー)は、反射波620の光路上の、絶縁体10と受光装置520との間に配置される。そして、絶縁体10とガルバノミラーとの間の距離は、絶縁体10の軸線CLの方向の長さ(特に、複数の反射位置Prが分布する範囲の軸線CLの方向の長さ)と比べて、長い。従って、ガルバノミラーの角度と位置との少なくとも一方の小さい変化によって、受光装置520が検出可能な反射波620の反射位置Pr(特に、軸線CLの方向の位置)は、大きく変化する。従って、ガルバノミラーの角度と位置との少なくとも一方を調整することによって位置Pi、Prを移動させる処理は、絶縁体10を動かすこと(例えば、絶縁体10の移動や回転)によって位置Pi、Prを同じ距離だけ移動させる処理と比べて、高速に実行可能である。本実施形態では、絶縁体10の回転の回数が、L回ではなく1回で済むので、検査処理に要する時間が長くなることを抑制できる。
なお、テラヘルツ波610の周波数(波長)としては、絶縁体10を外周面10oから内周面10iまで透過でき、かつ、内周面10iでの反射波620の強度が受光装置520で検出するのに十分であるような周波数が、採用される。このような周波数は、絶縁体10の肉厚や材質に応じて、異なり得る。例えば、絶縁体10の肉厚が0.5mm以上、10mm以下の範囲内であり、絶縁体10の材質が焼成されたアルミナである場合、1THz以上、50THz以下の周波数を採用してよい。
照射位置Piでのテラヘルツ波610のスポットのサイズ(例えば、外径)は、検出対象の欠陥の大きさに応じて、調整されることが好ましい。ここで、スポットは、絶縁体10の外周面10o上の照射位置Piにおいてテラヘルツ波610が照射される領域である。一般的には、スポットサイズよりも大きなサイズ(例えば、外径)の欠陥の検出が、容易である。従って、スポットサイズは、検出対象の欠陥の外径よりも小さいことが好ましい。なお、欠陥の外径は、例えば、0.3mm以上、1.0mm以下であってよい。
また、複数の照射位置Piは、照射位置Piでのスポットが隣の照射位置Piでのスポットと重なるように、配置されてよい。この場合、絶縁体10のうちのテラヘルツ波610が照射されない部分を小さくできるので、欠陥を見逃すことを抑制できる。また、複数の照射位置Piは、照射位置Piでのスポットが隣の照射位置Piでのスポットから離間するように配置されていてもよい。この場合、照射位置Piの総数を低減できるので、検出処理の時間を短縮できる。なお、スポットは、隣の複数のスポットのうちの一部のスポットのみと重なってもよい。例えば、スポットは、周方向の隣のスポットと重なり、軸線の方向の隣のスポットから離間してもよい。逆に、スポットは、軸線の方向の隣のスポットと重なり、周方向の隣のスポットから離間してもよい。
B.第2実施形態:
図5(A)は、絶縁体10の検査システムの別の実施形態を示す概略図である。図5(B)は、絶縁体10に照射されるテラヘルツ波610と、絶縁体10からの反射波620と、の説明図である。図5(B)中には、絶縁体10の軸線CLに垂直な断面が示されている。図5(A)の検査システム1000aは、図2(A)の検査システム1000の代わりに利用できる。
検査システム1000aは、発光装置510と、発光装置510からのテラヘルツ波610を絶縁体10の照射位置Piへ導く第1光学システム531と、受光装置520と、絶縁体10の反射位置Prからの反射波620を受光装置520へ導く第2光学システム532と、支持部710と、支持部710を回転させる電気モータ700と、発光装置510と第1光学システム531と受光装置520と第2光学システム532と電気モータ700とを制御する制御装置600aと、を含んでいる。光学システム531、532は、それぞれ、種々の光学機器(例えば、レンズ、ミラー、ビームスプリッター、ガルバノミラー等)を含んでいる。特に、本実施形態では、第1光学システム531は、第1ガルバノミラーシステム536を含み、第2光学システム532は、第2ガルバノミラーシステム537を含んでいる。ガルバノミラーシステム536、537は、それぞれ、1以上のガルバノミラーで構成されている。
本実施形態では、図2(A)、図2(B)の実施形態とは異なり、図5(B)に示すように、発光装置510からのテラヘルツ波610は、絶縁体10の外周面10o上の照射位置Piに対して斜めに照射される。また、テラヘルツ波610は、軸線CLに垂直な平面に沿って、絶縁体10に照射される。テラヘルツ波610は、照射位置Piから、絶縁体10の内部を透過して、内周面10iへ到達する。そして、テラヘルツ波は、内周面10iで反射する。反射位置Prは、内周面10i上のテラヘルツ波の反射位置である。反射波620は、反射位置Prから絶縁体10の内部を透過して外周面10oへ到達し、絶縁体10の外周側へ進行する。図5(B)の基準面Laは、反射位置Prと軸線CLとを含む平面であり、外周面10oおよび内周面10iに垂直に交わる平面である。光学システム531、532よりも絶縁体10側の光路に関して、反射波620の光路は、テラヘルツ波610の光路の基準面Laに対する鏡像と、おおよそ同じである。
発光装置510からのテラヘルツ波610は、第1ガルバノミラーシステム536による反射を通じて、絶縁体10上の照射位置Piへ導かれる。第1ガルバノミラーシステム536の1以上のガルバノミラーのそれぞれの角度と位置との少なくとも一方が調整されることによって、照射位置Piの軸線CLの方向の位置が変更される。このような第1ガルバノミラーシステム536の構成としては、公知の種々の構成を採用可能である。また、絶縁体10からの反射波620は、第2ガルバノミラーシステム537による反射を通じて、受光装置520へ導かれる。第2ガルバノミラーシステム537の1以上のガルバノミラーのそれぞれの角度と位置との少なくとも一方が調整されることによって、受光装置520によって検出可能な反射波620の反射位置Prの軸線CLの方向の位置が変更される。このような第2ガルバノミラーシステム537の構成としては、公知の種々の構成を採用可能である。いずれの場合も、光学システム531、532と絶縁体10との間の距離を長くすることによって、図5(B)で説明したテラヘルツ波610と反射波620とのそれぞれの進行方向と照射位置Piと反射位置Prとの配置との関係を維持しつつ、照射位置Piの軸線CLの方向の位置と、受光装置520によって検出可能な反射波620の反射位置Prの軸線CLの方向の位置と、を変更できる。
本実施形態においても、絶縁体10のうちの照射位置Piと反射位置Prとの間の部分に欠陥が存在する場合には、欠陥が存在しない場合と比べて、反射波620の強度が低下する。従って、図2の実施形態と同様に、反射波620の強度を閾値と比較することによって、欠陥の有無を判断できる。そして、図3、図4で説明した手順に従って検査処理を行うことによって、絶縁体10の種々の部分の欠陥を検出できる。
また、本実施形態においても、走査処理(図3:S110、S120(No)、S130)と、周方向位置Pxの変更(S150)とが、交互に繰り返されるので、検査処理の全体を通じて、絶縁体10の回転の回数が1回である。これにより、検査処理に要する時間が長くなることを抑制できる。なお、制御装置600aは、図2(A)の制御装置600と同様のコンピュータである。制御装置600は、プログラムに従って、図3の手順で、検査処理を実行する。
また、本実施形態においても、周方向位置Px(図4(A))を変更するために絶縁体10は軸線CLを中心に回動されるので、図5(B)に示す照射位置Piと反射位置Prとの位置関係は、周方向位置Pxに拘わらずに、同じである。従って、強度の閾値としては、軸方向位置Py毎に決定された値を、用いることができる。軸方向位置Pyが同じで周方向位置Pxが異なるM個の照射位置Piには、軸方向位置Pyに対応付けられた閾値を、共通に利用できる。
C.変形例:
(1)図4(A)、図4(B)の実施形態では、複数の照射位置Piは、絶縁体10の外周面10o上におおよそ均等に分布している。ただし、照射位置Piの密度は、絶縁体10の外周面10o上の位置に応じて異なっていてもよい。例えば、欠陥の有無を重点的に検査したい部分での照射位置Piの密度が、他の部分での密度と比べて、高くてもよい。具体的には、図4(A)、図4(B)で説明したM×L個の照射位置Piのうちの一部の照射位置Piが、間引かれてもよい。
また、走査ラインSL上の複数の照射位置Piを処理する順番は、絶縁体10の軸線CLに平行な方向(前方向Dfまたは後方向Dfr)に沿って1つずつ選択する順番とは異なる順番であってもよい。例えば、奇数番目の軸方向位置Pyの照射位置Piの処理が終了した後に、偶数番目の軸方向位置Pyの照射位置Piが処理されてもよい。このように、軸線CLの方向に沿って並ぶ複数の照射位置Piで照射測定処理を行う走査処理としては、照射位置Piを軸線CLの方向に移動させることと照射測定処理を行うこととを交互に繰り返す種々の処理を採用可能である。ここで、検査処理に要する時間を短縮するためには、図3の実施形態のように、照射位置Piを軸線CLの方向に移動させる処理は、照射位置Piの軸方向位置Pyを、予め決められた複数の軸方向位置Pyのうちの隣の未処理の軸方向位置Pyに変更する処理であることが好ましい。
(2)検査システムの構成は、図2、図5の検査システム1000、1000aの構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、図5の実施形態において、発光装置510からのテラヘルツ波610は、絶縁体10の軸線CLに垂直な平面に対して斜めに、照射位置Piに照射されてもよい。
(3)点火プラグの構成は、図1で説明した構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、絶縁体10の形状は、図1に示す形状とは異なっていてもよい。中心電極の側面(軸線CLに垂直な方向側の面)と、接地電極とが、放電用のギャップを形成してもよい。放電用のギャップの総数が2以上であってもよい。抵抗体73が省略されてもよい。絶縁体10の貫通孔12内の中心電極20と端子金具40との間に、磁性体が配置されてもよい。中心電極20の全体が、絶縁体10の貫通孔12内に配置されてもよい。
(4)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図2(A)、図5(A)の制御装置600、600aの機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。