JP5252500B2 - 絶縁電線の内部診断方法及び診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁電線の銅製内部素線における酸化膜の発生を診断するための方法及び診断装置に関する。
絶縁電線の内部に接続部等から水分が侵入すると素線に錆等の酸化膜が発生する。素線の酸化膜は、内部素線が銅撚り線の場合に、撚り加工時の残留応力が影響して素線に微小なクラックを発生させ、それは応力腐食進行の原因となり、進行の度合いによっては断線に至ることもある。
これを事前に診断する方法として、局所的に絶縁被覆を剥がし、露出させた内部素線を目視観察する方法がある。しかしながら、この方法は、診断後に絶縁テープによる被覆を行なって復元する必要があり、その作業に手間が掛かる上、復元後の絶縁性能及び防水性能にばらつきを生じやすい。
これに代わる方法として、交流磁界により内部素線に渦電流を発生させ、電流値の変動により応力腐食割れ等の欠陥を検出する方法がある。また、絶縁電線の内部素線に交番電流を流して発生させた磁界を、絶縁電線の周方向に離間した位置で電圧に変換して同時に検出し、検出値の差によって内部素線の欠陥を判別する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらの方法は、電流値や磁界の変動に基づいて判別を行なうので、応力腐食割れ等の欠陥にまで進行した状態しか判別できず、その前段階を含めた酸化膜発生の診断には適さない。
また、種々の物質に対して0.1〜10THzの電磁波を照射し、物性の周波数依存性を直線近似し、基準状態における直線と検査物質における直線の傾きを比較して状態変化を評価する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法は、検査物質に直接、0.1〜10THzの電磁波を照射して透過又は反射してきた電磁波の周波数依存特性を直線近似して物質の変化を評価するものである。そのため,絶縁電線における絶縁被覆の影響について考慮されておらず、さらに高価な周波数可変光源を用いて周波数を変化させながら長時間の測定が必要である。その結果、屋外に架渉された絶縁電線の診断において避けがたい気温変化や電源電圧変動による光源の出力変動、さらに診断対象電線が電柱あるいは鉄塔でしか固定されていないために発生する揺れによる反射強度の変動に伴い、診断結果に誤りを生ずる畏れがある。
特開平10−73631号公報 特開2008−164594号公報
本願発明は、従来技術の上記問題を解決し、絶縁電線の銅製内部素線における酸化膜の発生を簡便且つ確実に検出し得る絶縁電線の内部診断方法及び診断装置を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するため、絶縁電線の銅製内部素線における酸化膜発生を調べるための内部診断方法であって、内部素線の酸化膜が問題となる量未満である良基準電線と、酸化膜が多量に発生した劣基準電線とに対し、1.3〜2.3THzの範囲から選んだ周波数の判定用遠赤外線を照射し、測定した反射強度を各々良基準値及び劣基準値として保存し、1.3THz未満又は2.3THz超過の周波数の較正用遠赤外線を前記良基準電線及び劣基準電線の少なくとも一方に照射し、測定した反射強度に基づいた較正基準値を保存し、診断対象電線に対して前記判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線を照射し、各遠赤外線について測定した反射強度を判定反射強度及び較正反射強度とし、前記判定反射強度を、前記較正反射強度と前記較正基準値との比較により較正した上で、前記良基準値及び劣基準値と比較することにより、前記診断対象電線の酸化膜の発生状態を診断することを特徴とする絶縁電線の内部診断方法を提供するものである。
本発明はまた、前記目的を達成するため、絶縁電線の銅製内部素線における酸化膜発生を調べるための内部診断装置であって、1.3〜2.3THzの範囲から選ばれた周波数の遠赤外線、並びに、1.3THz未満又は2.3THz超過の周波数の遠赤外線を、選択的に出射し得る出射部と、該出射部から出射された遠赤外線の照射を受ける位置に診断対象電線を保持する保持部と、該診断対象電線で反射された遠赤外線を集光する集光部材と、該集光部材からの遠赤外線を受けてその強度を検出するセンサと、該センサから送られる検出信号を保存し複数の検出信号の比較を行なう信号処理部とを備えていることを特徴とする絶縁電線の内部診断装置を提供するものである。
本願発明は、銅製の素線に対して1.3〜2.3THzの周波数の遠赤外線を照射した時の反射光強度が、酸化膜の発生によって大きく減少する一方、1.3THz未満又は2.3THz超過の周波数の遠赤外線を照射した時の反射光強度は酸化膜の発生によって変化することが少ないこと、並びに、絶縁被覆に用いられているポリエチレン等の樹脂が遠赤外線の透過性を有するという新たな知見に基づいている。
本発明によれば、上記のようにして遠赤外線の照射によって診断をするので、絶縁被覆を剥がすことなく簡便に酸化膜発生状態の診断をすることができる。さらに、上記の特定周波数範囲の判定用遠赤外線を良基準電線と劣基準電線とに照射したときの各反射強度を良基準値及び劣基準値とするので、これらの基準値は、明確な差違のあるものとなっている。そして、診断対象電線に対して前記判定用遠赤外線を照射したときの反射光の強度を判定反射強度とし、これを前記良基準値及び劣基準値と比較することにより、診断対象電線の酸化膜発生状況を把握することができる。
特に、本発明においては、その比較に先立ち、判定用遠赤外線に対して前述の周波数差を有する較正用遠赤外線を良基準電線及び劣基準電線の少なくとも一方に照射したときの反射強度に基づいた較正基準値を予め保存する。そして、診断対象電線に較正用遠赤外線を照射したときの反射強度(較正反射強度)と前記較正基準値との比較により較正値を求める。反射強度は、絶縁被覆の材質や厚さ、照射光出力の変動、電線の揺れ等によって異なった値となるので、この較正値に基づいて較正した診断対象電線の判定反射強度を前記良基準値及び劣基準値と比較することにより、変動要因の影響を除去又は軽減した高精度の診断を確実に行なうことができる。
なお、判定用遠赤外線の周波数が1.3THz未満又は2.3THz超過となると、銅素線に照射したときの反射強度について、酸化膜の多寡による差が明確に得られない。また、較正用基準遠赤外線の周波数が、判定用遠赤外線の周波数の1.3〜2.3THzの周波数を有する場合は、銅素線に照射したときの反射強度について、酸化膜の多寡による差が大きく発生し、較正に使用することができない。この観点から、較正用遠赤外線は、1.5THz未満又は2.5THz超過の周波数の遠赤外線とすることによって、より確実に酸化膜の多寡による反射光強度の差を小さくすることができる。
また、判定用遠赤外線と較正用基準遠赤外線として選択される周波数は、上記の適切な範囲内であっても、接近しすぎると各々の遠赤外線の反射光強度が接近し、正確な評価が得られない。この観点から、前記判定用遠赤外線と較正用遠赤外線との周波数の差が、0.3THz以上であるのが望ましい。
本発明方法は、試料として切断された絶縁電線のみならず、架渉されて使用状態にある絶縁電線をも短時間で診断することができ、高電圧が印加された状態等、通電状態を保ったまま診断することも可能である。
本発明に係る絶縁電線の内部診断方法を実施するための診断装置を概略的に示す図である。 周波数を連続的に変化させた遠赤外線を照射して得られた反射率のグラフである。 絶縁電線の被覆材の厚さと遠赤外線の透過率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る絶縁電線の内部診断方法を実施するための診断装置を概略的に示している。
この装置は、電線に遠赤外線を照射しその反射光を測定して強度信号を発する検知部1と、該検知部からの信号を処理し表示する処理部2とを備えている。
検知部1は、一側部が開放され断面C字状をなすフレーム10と、フレーム10の上部に支持され遠赤外線を出射する出射部11と、フレーム10の中央部へ突出して設けられ遠赤外線の照射を受ける位置に電線を保持する保持部12と、電線で反射された遠赤外線を反射して集光する凹面鏡13と、凹面鏡13からの遠赤外線を受けてその強度を検出するセンサ14と、これらの動作を制御する制御部15とを備えている。なお、架渉された電線に検知部1を吊り下げた状態で診断する場合は、保持部12はフレーム10に対して上下逆向きに配置する。
フレーム10は、C字状断面を有しており、上下に延びる側壁10aと、該側壁10aの上端及び下端から各々一方向へ延びる上壁10b及び下壁10cとを備え、側壁10aとは反対の側10dが開放されている。フレーム10は、開放側10dから電線を受け入れて電線の長手方向がC字状断面に垂直となるように電線Lを保持する。このため、保持部12と凹面鏡13(集光部材)との間には、診断対象電線を該電線の径方向に移動して保持部12による保持位置に至らせるための間隙が設けられている。また、間隙を通して受け入れた電線を保持し得るように、保持部12はC字状断面(図の紙面)に垂直な方向に間隔をおいて2箇所に設けられている。保持部12の各々は、フレーム10の側壁10aから中央部へ突出して延びるアーム12aと、該アームの上部に支持され、アームの延設方向に摺動して相互に接近離反し得る1対の把持片12bとを備えている。
なお、保持部12と凹面鏡13(集光部材)とは、両者を離反させることにより診断対象電線を該電線の径方向に移動して保持部12による保持位置に至らせ得る開放位置と、両者を接近させて保持部12上の診断対象電線からの反射光の集光作用を奏し得る接近位置とをとり得るように、保持部12及び凹面鏡13の少なくとも一方が移動可能に設けてもよい。例えば、図1に矢印Sで示すように、保持部12をフレーム10に対して上下動可能に装着し、或いは、矢印Rで示すように、凹面鏡13をフレーム10に対して上下方向に回動可能に支持した構造とすることができる。
出射部11は、フレーム10の上壁10bに設けられ、C字状断面に垂直な方向に並ぶ2個の保持部12の間に配置されている。この出射部11は、遠赤外線を発する光源11aと、該光源から発せられた遠赤外線を集光して平行光とする集光装置11bとを備え、遠赤外線をフレーム10の中央部に向けて出射する。図1は出射部11からの遠赤外線を受ける部分が保持部12の紙面奧側に位置する状態を示している。光源11aは、1.3〜2.3THzの範囲から選ばれた周波数の判定用遠赤外線を発生する光源と、1.3THz未満あるいは2.3THz超過の周波数の較正用遠赤外線を発生する光源とを備えており、各々の光源は、例えば、Cr:Forsteriteレーザ励起したGaP半導体結晶を用いたテラヘルツ光源等を用いることができる。
凹面鏡13(集光部材)は、フレーム10における側壁10aの側と開放側10dとに配置されており、出射部11から発せられ保持部12上の電線Lで反射された遠赤外線を受ける。各々の凹面鏡13は、円筒の一部に相当する形状の反射面13aを有し、その軸線がC字状断面に垂直となるようにして配置される。電線Lは遠赤外線を広範囲に乱反射するので、反射面13aは広がりのある円弧状断面を有する。2個の凹面鏡13で反射された遠赤外線は、電線Lの下方の一所を中心に集光される。並設された凹面鏡13の間の間隙は、出射部11からの遠赤外線を保持部12上の診断対象電線に到達させるための透光部13bとなっている。この他、凹面鏡13を一体化した形状とし、透光部は、凹面鏡13に対して保持部12と反対側に位置する出射部からの光を通すように位置させ、貫通孔や透光性材料部分として形成することができる。
センサ14は、下壁10cにおいて凹面鏡13からの反射光を受ける位置に配置されている。センサ14としては、例えば、DTGS(Deuterated Triglycine Sulfate)検出器のような常温動作の集電型検出器等を用いることができる。センサ14は、受光した遠赤外線の強度に応じた検知信号を制御部15に送り、制御部15はその検知信号を処理部2に送信する。
処理部2は、制御部15から検知信号として送られた遠赤外線強度の演算及び保存を行なう演算記憶装置21と、演算結果等をディスプレーに表示する表示装置22と、これらの装置を操作する操作部23とを備えている。
以下、この診断装置を使用して絶縁電線の診断を行なう方法について説明する。
1.絶縁電線の準備
先ず、酸化膜が問題となる量未満である絶縁電線(これを「良基準電線」と称する)と、酸化膜が多量に発生した絶縁電線(これを「劣基準電線」と称する)と、診断対象とする絶縁電線とを用意する。「酸化膜が問題となる量未満」というのは、銅製内部素線に酸化膜の発生がないかあるとしても発生量が僅かであるため素線表面のクラック発生を生じていないものをいう。また、「酸化膜が多量に発生した絶縁電線」というのは、銅製内部素線表面のクラック発生を生じているか生じる直前の状態となるほど酸化膜が多量に発生している絶縁電線をいう。
2.遠赤外線の設定
光源11aとしては、前述の銅製素線とその酸化膜に対する遠赤外線の反射特性の知見に基づき、1.3〜2.3THzの周波数範囲から選択した判定用遠赤外線と、1.3THz未満又は2.3THz超過の較正用遠赤外線とを用いる。したがって、精密で高価な周波数可変光源を用いて周波数を設定する必要はない。また、センサ14もこれらの周波数に対応し得るものであればよい。
3.基準値の獲得
次に、検知部1の保持部12に電線を保持しない状態で判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線を照射し、センサ14に直接到達させる。このときセンサ14から制御部15を経て演算記憶装置21に送られた遠赤外線強度の測定値を各々判定用出射強度及び較正用出射強度として保存する。
次に、上記で用意した良基準電線を診断装置の保持部12に固定し、出射部11から前述の判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線を照射する。遠赤外線は、良基準電線で反射され、凹面鏡13で集光されてセンサ14に到達する。そして、センサ14から演算記憶装置21に送られた判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線各々の遠赤外線強度の測定値と、先に測定した判定用出射強度及び較正用出射強度との比から反射率を算出し、各々良基準値及び良較正基準値として保存する。
次に、劣基準電線を診断装置の保持部12に固定し、出射部11から判定用遠赤外線及び較正用基準遠赤外線を照射し、センサ14から演算記憶装置21に送られた各々の遠赤外線強度の測定値と、判定用出射強度及び較正用出射強度との比から反射率を算出し、各々劣基準値及び劣較正基準値として保存する。
これらの良基準値、良較正基準値、劣基準値及び劣較正基準値は、一旦獲得して保存しておくことにより、同じ時間及び場所での診断対象の電線の評価のみならず、異なる時間又は場所で行なう診断にも使用することができる。
4.診断対象電線の測定
次に、診断対象電線を検知部1の保持部12に固定し、出射部11から判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線を照射し、センサ14から演算記憶装置21に送られた遠赤外線強度の測定値と、判定用出射強度及び較正用出射強度との比から反射率を算出し、各々判定反射強度及び較正反射強度として保存する。
なお、診断を先の基準値獲得の場合と異なる時間又は場所で行なうときは、新たに検知部1の保持部12に電線を保持しない状態で判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線を照射して、センサ14に直接到達させた遠赤外線強度の測定値を判定用出射強度及び較正用出射強度として以後の反射率の算出に用いるのが望ましい。
5.測定値の評価
次に、較正反射強度と良較正基準値とを比較し、両者に有意差があれば、それをなくすのに必要な修正量を求める。そして、その修正量を判定用遠赤外線の照射によって得られた反射率に適用することにより、判定反射強度の較正を行なう。具体的には、較正反射強度と良較正基準値との比を求めて修正量とし、この修正量を判定反射強度に掛け算することにより、判定反射強度の較正を行なう。この較正を行なった上で、較正後の判定反射強度を良基準値と比較する。
次に、較正反射強度と劣較正基準値を比較し、両者に有意差があれば、それをなくすのに必要な修正量を求める。そして、その修正量を判定用遠赤外線の照射によって得られた反射率に適用することにより、判定反射強度の較正を行なう。具体的には、較正反射強度と劣較正基準値との比を求めて修正量とし、この修正量を判定反射強度に掛け算することにより、判定反射強度の較正を行なう。この較正を行なった上で、較正後の判定反射強度を劣基準値と比較する。
これらの比較により両基準値に対する接近度を知得することができ、これによって診断対象電線の銅製内部素線の酸化膜の発生状態を高い精度で推測することができる。
上記の方法では、較正基準値として、良較正基準値及び劣較正基準値を得ており、各々により判定反射強度の較正を行なうので、良基準値及び劣基準値と比較すべき較正後の判定反射強度が2種類となる。但し、良較正基準値及び劣較正基準値の差は本来小さいので、2種類の判定反射強度の差も小さく、比較上の問題はない。これらの差が大きい場合は、測定の誤りが予測されるので、再測定や測定手段の点検をすることにより誤った診断を回避することができる。
較正基準値として良較正基準値及び劣較正基準値のいずれか一方を用いることもできる。但し、良較正基準値及び劣較正基準値を得て、良較正基準値による判定反射強度を良基準値と比較し、劣較正基準値による判定反射強度を劣基準値と比較することによって、より正確な診断を行なうことができる。特に、良基準電線を測定してから、劣基準電線を測定するまでの間に光源の出力変化がある場合に、その影響を低減することができる。また、良基準電線の絶縁被覆と劣基準電線の絶縁被覆との間に製造、施工又は使用環境の違いによる遠赤外線透過量の相違がある場合にも、その影響を低減することができる。
さらに、2種類の較正後の判定反射強度を得ることにより、良基準電線と劣基準電線を工場等で測定してから、診断対象電線を遠隔地(架線された場所)で測定するまでの光源の出力変化の影響や、架線された電線に対して測定装置を用いる際の不安定な支持状態による光路長や電線配置のわずかな変化による反射強度の変化の影響を低減することができる。
[実験例]
以下、本発明の原理に関する実験例について説明する。次に示す絶縁電線を用い、図1に示した診断装置を使用して内部素線の診断に関する実験を行なった。
架橋ポリエチレン絶縁電線OC80sq(Outdoor Closslinked polyethylene、導体断面積80mm2、直径2.3mm銅素線×19本撚、絶縁被覆:架橋ポリエチレン)の現場撤去品について絶縁被覆を除去して目視点検を行い、酸化膜の発生度合いが異なる銅製内部素線を2種類採取した。そのうち1本は、不使用状態に至っており、酸化膜発生状況が、通常の使用状態での許容範囲を越えた度合いとなったことを目視で認識できるものであった(この素線を「劣素線」と称する)。もう1本は、酸化膜発生状況が、ほとんど新品に近く、酸化膜による変色が目視で認識できないものであった(この素線を「良素線」と称する)。
使用した遠赤外線は、グレーティングを用いて発生周波数が1.3〜3.8THzの範囲で可変できるテラヘルツ光源として、Cr:Forsteriteレーザ励起したGaP半導体結晶を用い、ピーク出力約500mWを発生させた。
図2は、良素線及び劣素線に対して遠赤外線を照射し、その周波数を連続的に変化させ、反射した遠赤外線の強度から反射率を求めて描いたグラフである。具体的には、金属平面板に何も試料を載せない状態で遠赤外線を照射し、その周波数を連続的に変化させ、反射した遠赤外線の強度を出射強度とする。そして、金属平面板に良素線あるいは劣素線を載せた状態で遠赤外線を照射し、その周波数を連続的に変化させ、反射した遠赤外線の強度測定し、各周波数における出射強度との比から反射率を求めた。これは、本発明の原理を説明するためのものであり、本発明の実施には、以下に説明する周波数の遠赤外線を用いるだけでよい。
このグラフは、照射遠赤外線の周波数が、1.3〜2.3THzの範囲において、良素線の反射率が劣素線の反射率に比べて明らかに高いことを示している。例えば、1.7THzの遠赤外線の場合は、良素線による反射率に対し、劣素線による反射率は約1/4に減少する。
本発明方法は、この現象を利用し、1.3〜2.3THzの範囲から選んだ周波数の遠赤外線を絶縁電線に照射し、前記1.〜5.の説明のようにして、反射光の遠赤外線強度を測定することにより、酸化膜の発生状況を知ることを可能にするものである。
このグラフはさらに、上記周波数範囲以外の周波数では、良素線の反射率と劣素線の反射率との間にほとんど差がないこと、すなわち、不変範囲があることを示している。例えば、2.5THzの遠赤外線の場合は、良素線による反射率と劣素線による反射率とはほとんど差が見られない。本発明は、この現象に基づいて、不変範囲の周波数の遠赤外線(較正用遠赤外線)を前記良基準電線又は劣基準電線に各々照射し、測定した反射強度に基づいた較正基準値を得、また、その較正用遠赤外線を診断対象電線にも照射してその反射強度を較正反射強度とし、較正反射強度と較正基準値との比較により必要な修正量を求める。そして、これを前述の判定用遠赤外線によって得られた反射率に適用して較正するものである。
図3は、絶縁電線を被覆する被覆材の厚さと遠赤外線の透過率との関係を調べた結果を示すグラフである。絶縁電線は使用目的及び電圧に応じて様々な厚さの絶縁被覆が施される。前述の絶縁電線OC80sqから絶縁被覆の架橋ポリエチレンを採取し、厚さ1.35mm、2.4mm、3mmの方形サンプルを作成し、遠赤外線の透過率を測定した。
使用した遠赤外線は、グレーティングを用いて発生周波数が1.3〜5.0THzの範囲で可変できるテラヘルツ光源として、Cr:Forsteriteレーザ励起したGaP半導体結晶を用い、ピーク出力約500mWを発生させ、検出器の前にサンプルを配置して透過測定を行なった。
このグラフは、被覆材の厚さによって遠赤外線の透過率が異なることを示している。したがって、良基準値及び劣基準値を得るために使用した絶縁電線と、診断対象電線とで被覆材の厚さが異なっていると、遠赤外線を照射して反射強度を比較するときに正確な比較ができない。このような場合に、前述の不変範囲の周波数の遠赤外線(較正用遠赤外線)の照射によって較正を行なうことが有効となる。さらに光出力変動や電線の揺れによって発生する反射強度の変動についても較正用遠赤外線の照射によって較正することが有効となる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、前述の診断装置における集光部材は、凹面鏡のみならず、反射光の光路中に置かれた凸レンズ、或いは、架渉した電線を挟み込めるように分割可能とした積分球、その他の光学素子を用いたものとしてもよい。また、本発明方法を実施するための装置は、図示のものに限らず、必要な操作を行ない得る種々の形態のものとすることができる。
診断対象電線としては、銅製内部素線を有したものであれば、被覆材はポリエチレン、架橋ポリエチレンの他、種々の材質のものを対象とすることができる。
また、本発明方法は、中間段階の基準電線を加えて行なうこともできる。すなわち、内部素線の酸化膜の量が前記良基準電線と劣基準電線とにおける酸化膜の量の中間にあたる一又は複数の銅製内部素線を有する絶縁電線を中間基準電線とする。この中間基準電線に判定用遠赤外線を照射し、測定した反射強度を中間基準値として保存する。そして、診断対象電線に判定用遠赤外線を照射して得た判定反射強度を、前述と同様にして較正した上で、良基準値、劣基準値及び中間基準値と比較することにより、診断対象電線の酸化膜の発生状態を診断する方法とすることができる。これにより、より詳細な診断を行なうことができる。
また、判定用遠赤外線及び較正用基準遠赤外線は、各々前述の範囲から選択した複数種類の周波数の遠赤外線とすることができる。
1 検知部
2 処理部
10 フレーム
11 出射部
12 保持部
13 凹面鏡
14 センサ
15 制御部
21 演算記憶装置
22 表示装置
23 操作部

Claims (10)

  1. 絶縁電線の銅製内部素線における酸化膜発生を調べるための内部診断方法であって、
    内部素線の酸化膜が問題となる量未満である良基準電線と、酸化膜が多量に発生した劣基準電線とに対し、1.3〜2.3THzの範囲から選んだ周波数の判定用遠赤外線を照射し、測定した反射強度を各々良基準値及び劣基準値として保存し、
    1.3THz未満又は2.3THz超過の周波数の較正用遠赤外線を前記良基準電線及び劣基準電線の少なくとも一方に照射し、測定した反射強度に基づいた較正基準値を保存し、
    診断対象電線に対して前記判定用遠赤外線及び較正用遠赤外線を照射し、各遠赤外線について測定した反射強度を判定反射強度及び較正反射強度とし、前記判定反射強度を、前記較正反射強度と前記較正基準値との比較により較正した上で、前記良基準値及び劣基準値と比較することにより、前記診断対象電線の酸化膜の発生状態を診断することを特徴とする絶縁電線の内部診断方法。
  2. 前記較正用遠赤外線が、1.5THz未満又は2.5THz超過の周波数の遠赤外線であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線の内部診断方法。
  3. 前記判定用遠赤外線と較正用遠赤外線との周波数の差が、0.3THz以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁電線の内部診断方法。
  4. 前記各絶縁電線への各遠赤外線の照射による反射光を集光部材によって集光して反射強度測定を行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の絶縁電線の内部診断方法。
  5. 前記集光部材を用いた測定位置に診断対象電線を至らせるための通路を確保することにより、架渉された状態にある絶縁電線を切断せずに診断対象電線を前記測定位置に至らせて前記反射強度測定を行なうことを特徴とする請求項に記載の絶縁電線の内部診断方法。
  6. 内部素線の酸化膜の量が前記良基準電線と劣基準電線とにおける酸化膜の量の中間にあたる一又は複数の銅製内部素線を有する絶縁電線を中間基準電線とし、該中間基準電線に前記判定用遠赤外線を照射し、測定した反射強度を中間基準値として保存し、前記判定反射強度を、前記較正反射強度と前記較正基準値との比較により較正した上で、前記良基準値、劣基準値及び中間基準値と比較することにより、前記診断対象電線の酸化膜の発生状態を診断することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の絶縁電線の内部診断方法。
  7. 絶縁電線の銅製内部素線における酸化膜発生を調べるための内部診断装置であって、1.3〜2.3THzの範囲から選ばれた周波数の遠赤外線、並びに、1.3THz未満又は2.3THz超過の周波数の遠赤外線を、選択的に出射し得る出射部と、該出射部から出射された遠赤外線の照射を受ける位置に診断対象電線を保持する保持部と、該診断対象電線で反射された遠赤外線を集光する集光部材と、該集光部材からの遠赤外線を受けてその強度を検出するセンサと、該センサから送られる検出信号を保存し複数の検出信号の比較を行なう信号処理部とを備えていることを特徴とする絶縁電線の内部診断装置。
  8. 前記保持部と前記集光部材との間に、診断対象電線を該電線の径方向に移動して前記保持部による保持位置に至らせるための間隙が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の絶縁電線の内部診断装置。
  9. 前記保持部と前記集光部材とは、両者を離反させることにより診断対象電線を該電線の径方向に移動して前記保持部による保持位置に至らせ得る開放位置と、両者を接近させて前記保持部上の診断対象電線からの反射光の集光作用を奏し得る接近位置とをとり得るように、前記保持部及び集光部材の少なくとも一方が移動可能に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の絶縁電線の内部診断装置。
  10. 前記集光部材に対して前記保持部と反対側の位置に前記出射部が配置されており、前記集光部材には前記出射部からの遠赤外線を前記保持部上の診断対象電線に到達させるための透光部が設けられていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の絶縁電線の内部診断装置。
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