以下、本発明の中空糸膜モジュールの一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る中空糸膜モジュールは、上下水道、食品工業、一般工業、医療、理化学といった様々な分野で利用されるものである。
図1に示されるように、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1は、複数の中空糸膜2が束ねられた中空糸膜束3と、中空糸膜束3を収容する筒状のケーシング5とを備えるものである。
ケーシング5の両端開口には、配管が接続される管路10a,11aが形成された配管接続用のキャップ10,11が設けられており、配管接続用のキャップ10,11はナット13によってケーシング5に固定装着されている。ナット13は、ケーシング5の両端の側面に形成された雄ネジに螺合し、ナット13を締めることによって、キャップ10,11の溝に配置されたOリング12によりケーシング両端とキャップ10,11の間がシールされる。
また、ケーシング5の両端部には、流体が流れるノズル5aがそれぞれ形成されている。ノズル5aは、ケーシング5の長手方向に直交する方向に突き出すように設けられている。
図2は、中空糸膜束3をケーシング5に収容し、キャップ10,11を装着する前の状態の端面とその一部拡大図を示すものである。図2に示すように、中空糸膜束3の両端面においては、開口Pを有する中空糸膜2が配列され、各中空糸膜2間がポッティング材で充填されて接着部20(図1参照)が形成されている。
上記構成により、キャップ10,11の管路10a,11aから流入した流体は、接着部20によって中空糸膜2同士の間に漏れることなく、各中空糸膜2の中空部だけを通過する。そして、両端部に位置する両接着部20の間の各中空糸膜2の外表面から滲み出した流体が、ノズル5aから流出する。または、ノズル5aから流入された流体が、両端部の接着部20の間の各中空糸膜2の外表面から染み込み、各中空糸膜2の中空部を通過した流体が、キャップ10,11の管路10a,11aから流出される。
中空糸膜2としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜等を用いることができる。中空糸膜の素材は特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、また、これらの複合素材も使用できる。
中空糸膜2の内径は50μm〜3000μmであり、好ましくは500μm〜2000μmである。内径が小さい場合、圧損が大きくなり、ろ過に悪影響を及ぼすため、中空糸膜2の内径は50μm以上とすることが好ましい。また、内径を大きくした場合、紡糸時に膜の形状を保持することが困難になるため、3000μm以下とすることが好ましい。また、中空糸膜2の内表面の平均孔径は1〜50μmが好ましく、阻止孔径は0.1〜1μmが好ましい。また、中空糸膜2を外表面から内表面に向けて膜厚方向に3等分して、中空糸膜2の外表面を含む領域を領域a、内表面を含む領域を領域c、領域a及び領域cの間の領域を領域bとしたときに、領域aの平均孔径Pa、領域bの平均孔径Pb、領域cの平均孔径Pcが、Pa < Pb < Pcの関係を満たすことが好ましい。
また、中空糸膜束3の中空糸膜2の本数は、例えば、直径150mmの中空糸膜束3を形成する場合、約3000本である。
各中空糸膜2の両端部には、各中空糸膜2内の膜厚方向の一部の範囲に長さ方向に沿って樹脂を含浸させて形成された樹脂含浸部2aが設けられている。具体的には、各中空糸膜2の内表面側の一部の範囲に樹脂含浸部2aが設けられている。なお、図1においては、樹脂含浸部2aが形成された範囲を示すために図示しているが、実際には、樹脂含浸部2aは、各中空糸膜2の外表面には形成されておらず、上述したように、各中空糸膜2の内表面側の一部の範囲に形成されている。このように樹脂含浸部2aを設けることで、ハウジングへの挿入に不具合を生じることなく、ポッティング材が中空糸膜2の細孔を通じて中空部へ侵入し、中空糸膜2の中空部が閉塞することを防止することができる。
また、ポッティング材が、各中空糸膜2の内表面側の一部の範囲に形成された樹脂含浸部2aまで含浸するので、接着部20を各中空糸膜2の外表面から肉厚部の内部に向かって連続させて形成することができ、これにより各中空糸膜2と接着部20との接着性を向上させることができる。
樹脂含浸部2aを形成するために用いる樹脂としては、中空糸膜2の膜内に向けて吸収されるものであれば良いが、たとえばエポキシ樹脂やウレタン樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂を用いる場合、主剤としてノボラック系エポキシ樹脂、ビスフェノールA系樹脂、ビスフェノールF系樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル系エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などを用いることができる。硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン、酸無水物系樹脂などを用いることができる。また、ウレタン樹脂としては、エーテル系ウレタン樹脂やエステル系ウレタン樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂やウレタン樹脂は単体で用いてもよいし、反応性希釈剤を配合して粘度を調整して用いてもよいし、有機溶媒によって希釈して用いてもよい。なお、樹脂含浸部2aの形成方法については、後で詳述する。
ポッティング材としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オレフィン系ポリマー、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂等の高分子材料が好ましく、これらの高分子材料のいずれかでもよいし、複数の高分子材料を組み合わせて用いるようにしてもよい。また、ポッティング材は、ろ過時に加圧によって生ずる一次側と二次側の差圧に耐え得る耐圧性を有することが必要であり、そのためには適度な硬度を有している必要がある。
樹脂含浸部2aを形成するために用いる樹脂のガラス転移温度とポッティング材として用いる樹脂のガラス転移温度との差を0℃以上10℃以下とすることが望ましい。ガラス転移温度の差を10℃以下に設定することで、樹脂含浸部2aを形成するために用いる樹脂とポッティング材として用いる樹脂とを強固に接着することができる。また、樹脂含浸部2aを形成するために用いる樹脂およびポッティング材として用いる樹脂のガラス転移温度は70℃以上とすることが望ましい。このようなガラス転移温度の樹脂を用いることによって、70℃程度の水もしくは酸、アルカリ等の薬品を用いて熱水洗浄する場合に、十分な耐久性を保持することができる。また、樹脂含浸部2aを形成するために用いる樹脂とポッティング材として用いる樹脂は同一であることが望ましい。同一の樹脂を用いることで、十分な分子間力が働き必要な接着強度を保つことができる。
図3は、樹脂含浸部2aの先端と接着部20の先端との位置関係を説明するための図であり、2本の中空糸膜2に注目して示した図である。各中空糸膜2の一端部に形成される樹脂含浸部2aは、その他端方向の先端が、接着部20の他端方向の先端よりも他端側に位置するように形成されている。すなわち、樹脂含浸部2aは、各中空糸膜2の端面から樹脂含浸部2aの先端までの長さの方が、上記端面から接着部20の先端までの長さよりも長くなるように形成されている。なお、接着部20の先端とは、中空糸膜2の外表面に沿って接着剤が這い上がることで形成されるせり部21の先端のことであり、中空糸膜2の端面からの長さが最も長い端点のことをいう。
このような長さ関係で樹脂含浸部2aと接着部20とを形成することによって、中空糸膜2の接着部20における付け根近傍における揺れを抑制することができ、これにより中空糸膜2の接着部20への付け根近傍において、中空糸膜2が損傷するのを防止することができる。
また、樹脂含浸部2aの先端と接着部20の先端との間隔Dは、相加平均で1cm以上3cm以下とすることが好ましい。なお、樹脂含浸部2aの長さを長くし過ぎると、ろ過時の中空糸膜2の有効面積が減少するので、間隔Dは3cm以下とすることが好ましい。また、樹脂含浸部2aの先端と接着部20の先端との間隔については、全ての中空糸膜2の樹脂含浸部2aの先端と接着部20の先端との間隔が1cm以上3cm以下である必要はなく、全ての中空糸膜2の樹脂含浸部2aの先端と接着部20の先端との間隔の相加平均が1cm以上3cm以下であればよく、たとえば樹脂含浸部2aの先端と接着部20の先端との間隔が1cm以上3cm以下の範囲でないものが一部含まれていてもよい。
ただし、各中空糸膜2の端面から樹脂含浸部2aの先端までの長さは、上記端面から接着部20の先端までの長さと同じにしてもよい。
また、樹脂含浸部2aの中空糸膜2の肉厚方向の厚さは、中空糸膜2の厚さに対して10%以上70%以下であることが望ましい。より好ましくは、30%以上60%以下である。樹脂含浸部2aの中空糸膜2の肉厚方向の厚さを10%以上にすることで、接着工程での中空部へのポッティング材の染み込みによる閉塞を防ぐことができる。また、樹脂含浸部2aの中空糸膜2の肉厚方向の厚さを100%として樹脂含浸部を形成させた場合、含浸させた部分の膜が剛直となってしまい、柔軟性が失われる。それゆえ、膜束のハンドリング時等の応力が印加されるときに、当該樹脂含浸部が損傷する虞がある。そこで、樹脂含浸部2aの中空糸膜2の肉厚方向の厚さを70%以下になるように設定することで、中空糸膜2の長手方向において樹脂含浸部2aを含む部分に柔軟性を持たせることにより、上述のような膜束のハンドリング時に問題なく取り扱うことができる。
図4Iは、樹脂含浸部2aが形成された中空糸膜2の内表面をSEM(走査電子顕微鏡)で撮影した画像を示す図であり、図4IIは、樹脂含浸部2aが形成されていない中空糸膜2の内表面をSEMで撮影した画像を示す図である。図4Iに示すグレーのべた画像の部分が、樹脂が染み込んでいる部分であり、図4IIと比較すると、中空糸膜2の細孔に樹脂が染み込んでいることが分かる。
次に、上述した中空糸膜モジュール1の製造工程について説明する。中空糸膜モジュール1の製造工程の説明においては、エポキシ樹脂を使用した場合について記載している。但し、エポキシ樹脂に限定される訳ではなく、他の樹脂を使用した場合でも同様の製造工程にて中空糸膜モジュール1を製造することができる。なお、本実施形態では、耐熱性や耐薬品性の観点からエポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を使用している。
図5は、中空糸膜モジュール1の製造工程を示す図であり、図5に示す矢印方向の順に工程が進むものとする。また、図6は、図5に示す各工程を詳細に示す図であり、一部の中空糸膜2を拡大して示した図である。
まず、図5Iに示す工程1において、所定の本数の中空糸膜2を束として整え、中空糸膜束3を作製する。
次に、図5IIに示す工程2において、中空糸膜束3の端部の先端部分を希釈剤で希釈したエポキシ樹脂溶液R中へ浸漬する。具体的には、1cm程度浸漬する。そして、工程2においては、図6Iに示すように、中空糸膜2の端部がエポキシ樹脂溶液Rに浸漬された後、その浸漬された側とは逆の他端側の中空部の開口から注射器などの吸引器を用いて吸引して中空部内を陰圧状態とする。このように中空部内を陰圧状態とすることによって中空糸膜2の中空部にエポキシ樹脂溶液Rを充填させる。中空糸膜2の中空部に充填されたエポキシ樹脂溶液Rは、図6IIに示すように、中空糸膜2の内表面側の細孔へ染み込む。なお、この際、上述したように中空糸膜束3の端部は、1cm程度しかエポキシ樹脂溶液R中へ浸漬していないので、中空糸膜2の外表面側からはエポキシ樹脂溶液Rは染み込まない。そして、所定時間陰圧状態を保持した後、陰圧状態を解放することで中空糸膜2の中空部に充填されたエポキシ樹脂溶液Rを外部に排出させる。
そして、図5IIIに示す工程3において、中空糸膜束3をエポキシ樹脂溶液Rから引き上げて乾燥させる。上述した工程2および工程3が、接着予備工程に相当する。
なお、接着予備工程において使用する希釈剤、エポキシ樹脂の希釈濃度、浸漬時間は、エポキシ樹脂の粘度等で適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
また、接着予備工程で使用するエポキシ樹脂を希釈する希釈剤としては、反応性希釈剤または有機溶媒を使用することが好ましい。
反応性希釈剤としては、脂肪族系の希釈剤が好ましく、また、エーテル系の反応性希釈剤であることが好ましい。エーテル系の反応性希釈剤としては、エポキシ基が1個のモノグリシジルエーテルと、エポキシ基が2個のジグリシジルエーテルが挙げられるが、硬化物の架橋密度を高くできる点から、1,6ヘキサンジグリシジルエーテルなどの多官能のジグリシジルエーテルが特に好ましい。
また、有機溶媒としては、アルコールやケトン類等の揮発性に優れる溶媒を使用することが好ましく、特にエタノール、1−ブタノール、もしくはこれらの混合物を使用することが好ましい。なお、中空糸膜2の材質によっては、有機溶媒が中空糸膜2を溶解してしまう可能性があるため、中空糸膜2を溶解しない有機溶媒が適宜選択される。
上記工程3における乾燥条件は特に限定されるものではないが、空気の流れを作ること及び乾燥温度を適宜調整することでより効率的に乾燥することができる。また、中空糸膜2の内表面側に含浸したエポキシ樹脂を硬化させるために高温状態にしてもよい。ただし、温度が高すぎると中空糸膜の孔径が変形してしまう場合があるので、上述したように100℃以下とすることが好ましい。
このように中空糸膜2に樹脂含浸部2aを形成することで、後述する接着工程の際に使用するポッティング材が、中空糸膜2の肉厚部内に形成される細孔を通じて、中空糸膜2の中空部へ侵入することを阻止することができる。具体的には、中空糸膜2の細孔が大きい場合、ポッティング材の粘度や、後の接着方法にもよるが、接着工程において、ポッティング材が中空糸膜2の中空部まで到達し中空糸膜2を閉塞させてしまう可能性がある。上述したように接着予備工程によって樹脂含浸部2aを予め形成することによって、このような大孔径の細孔を有する中空糸膜2でも中空部を閉塞することなく接着工程を実施することができる。
ただし、ポッティング材は、上述したように中空糸膜2の内表面側に形成された樹脂含浸部2aの位置まで含浸するので、接着部20を中空糸膜2の外表面から肉厚部の内部に向かって連続させて形成することができ、これにより中空糸膜2と接着部20との接着性を向上させることができる。
また、樹脂含浸部2aの中空糸膜2の肉厚方向の厚さは、中空糸膜2の厚さに対して10以上70%以下になるように設定することが望ましい。
具体的には、樹脂含浸部2aは、希釈したエポキシ樹脂が、中空糸膜2の内表面側から毛細管現象による細孔へ染み込むことにより形成されるため、希釈したエポキシ樹脂との接触時間が長いほど中空糸膜2の肉厚部に残留するエポキシ樹脂が多くなって樹脂含浸部2aの肉厚方向の厚さが厚くなる。たとえば、相対的に長い時間樹脂溶液と接触させることで樹脂含浸部2aを形成した場合の樹脂含浸部2aの肉厚方向の厚さが、図7に示すT1となり、相対的に短い時間樹脂溶液と接触させることによって樹脂含浸部2aを形成した場合の樹脂含浸部2aの肉厚方向の厚さが、図7に示すT2となる。
本実施形態においては、希釈剤中のエポキシ樹脂の濃度を10質量%以上に設定している。エポキシ樹脂の濃度が10質量%未満の場合、接着工程において中空糸膜2の中空部がポッティング材により閉塞する可能性があるためである。
具体的には、接着予備工程において、エポキシ樹脂の濃度が10質量%未満の場合、エポキシ樹脂の量が減少するため、密な樹脂含浸部2aが形成できない場合がある。そのため、接着工程において、この樹脂含浸部2aが蜜に形成されていない箇所からポッティング材が中空糸膜2の中空部へ侵入することにより、中空部が閉塞すると考えられる。
エポキシ樹脂溶液R中のエポキシ樹脂の濃度を10質量%以上に設定した場合、樹脂含浸部2aが十分に密に形成されるため、接着工程においてポッティング材が中空糸膜2の中空部へ侵入することはない。よって、本実施形態では、希釈剤中のエポキシ樹脂の濃度を10質量%以上に設定し、全ての中空糸膜2の内表面側に樹脂含浸部2aを密に形成させることで、中空糸膜2の中空部がポッティング材によって閉塞するのを防いでいる。
また、樹脂含浸部2aの厚さが中空糸膜2の厚さに対して70%以下になるように、エポキシ樹脂溶液Rのエポキシ樹脂の濃度を70質量%以下に設定している。これにより、上述したように中空糸膜2の長手方向において樹脂含浸部2aを含む部分に柔軟性を持たせることができる。
また、接着予備工程において、エポキシ樹脂溶液R中へ中空糸膜2の端部を浸漬して引き上げた後、エポキシ樹脂溶液Rの乾燥を途中で止め、中空糸膜2の肉厚部に未反応なエポキシ樹脂が残った状態としても良い。このような状態でポッティング材としてエポキシ樹脂を使用し後述する接着工程を行い、中空糸膜2の肉厚部に存在する未反応なエポキシ樹脂とポッティング材とを同時に硬化させても良い。これにより、接着予備工程の際に未反応であったエポキシ樹脂のエポキシ基もしくはアミノ基と、接着工程で使用するポッティング材中のエポキシ基もしくはアミノ基とが、化学的に結合し、強固な接着を実現できる。さらに、接着予備工程で使用するエポキシ樹脂と同一のエポキシ樹脂を、接着工程で使用すれば、より良好な接着強度を得ることができる。また、このように同一のエポキシ樹脂を用いた場合、線膨張係数が同一であるため、熱サイクルによる膨張量、収縮量に差がなく、熱耐久性が向上する。また、接着予備工程と接着工程とで使用する材料を統一することができるため、混合等の工程管理が容易となる。
ただし、中空糸膜モジュール1に使用するケーシング5等の部材の耐熱性が十分でない場合、完全硬化に必要な温度まで加熱できない場合がある。そのような場合は、接着予備工程終了後、ケーシング5に収容する前に中空糸膜束3を高温加熱して完全硬化を行うことで、架橋密度が増し耐薬品性が向上した構造を実現することができる。接着予備工程でエポキシ樹脂を完全硬化させた場合、接着工程で使用するポッティング材との化学結合を伴って接着硬化させることはできないが、同一のエポキシ樹脂を用いれば十分な分子間力が働き必要な接着強度を保つことができる。
次に、図5IVに示す工程4において、中空糸膜2の両端部に樹脂含浸部2aを形成した後、図5Vに示す工程5において、樹脂含浸部2aが形成された中空糸膜束3をケーシング5内へ挿入し、ポッティング材PTを用いて各中空糸膜2の樹脂含浸部2aが形成された端部同士を接着するとともに、中空糸膜束3とケーシング5とを接着固定した。なお、工程5においては、図6IIIに示すように、中空糸膜束3の各中空糸膜2の開口を封止物2bで目止めし、各中空糸膜2の中空部を封止する。封止物2bとしては、たとえば石膏が用いられるが、その他にも熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂を用いてもよい。これによりポッティング材PTが、中空糸膜2の中空部に侵入するのを防止することができる。
中空糸膜束3とケーシング5とを接着固定するには、中空糸膜束3が収容されたケーシング5を水平方向に回転させながら接着する遠心接着、またはケーシング5の長手方向を鉛直方向に配置し、ポッティング材PTをケーシング5の下端から注入する静置接着にて行うことができる。遠心接着は、中空糸膜束3の両端を同時に接着することができる反面、多額の設備投資や高速で回転させるための電力が必要となる。一方、静置接着は、片側ずつ接着する必要があるため接着に必要な時間は増加するものの、大型の設備投資の必要がなく、簡素な治具で実施できる。ここでは静置接着による接着手順を説明する。
図8に示すように、接着予備工程を経た中空糸膜束3をケーシング5に収納し、そのケーシング5の下端に接着カップ30を装着し、図9に示すように、装着した接着カップ30を固定用ナット40によってケーシング5に固定する。
接着カップ30にはポッティング材PTを注入するための注入孔30aが設けられている。求められるポッティング材PTの注入速度にもよるが、この注入孔30aの口径は4mm〜16mmとすることが好ましい。また、注入孔30aの個数は1個でも構わないが、接着カップ30の底面に複数個をほぼ等間隔に均等分散して設けることが好ましい。本実施形態においては、図8に示すように4個の注入孔30aをほぼ等間隔に均等分散して設けている。
このようにして組み立てた後、図9に示すようにポッティング材容器50に一端が接続された注入チューブ51の他端が接着カップ30の注入孔30aに挿入され、ポッティング材容器50内のポッティング材PTを注入チューブ51および注入孔30aを介してケーシング5内に規定量だけ注入し、硬化するまで放置する。なお、ポッティング材PTの注入方法については、自重によって注入してよいし、ポンプなどを用いて気体の加圧力によって注入しても良いが、定量性のあるポンプを使用するのが注入条件の再現性が得られる点で好ましい。なお、ポッティング材PTが硬化した後、必要に応じて高温での完全硬化を実施しても良い。
次に、ケーシング5内のポッティング材PTが硬化したことを確認した後、固定用ナット40および接着カップ30を取り外す。そして、図5VIに示す工程6において、図6IVに示すように、封止物2bによって目止めしていた部分を切断し、中空糸膜束3の端部を開口させる。
最後に、図10に示されるように、中空糸膜束3が接着固定されたケーシング5の両端部のそれぞれに、配管接続用のキャップ10,11がOリング12を介して装着され、ナット13によって締結固定された後、リーク検査、試運転等を実施し、規定通りに製造できていることを確認して中空糸膜モジュール1が完成する。
なお、上記実施形態の中空糸膜モジュール1は、中空糸膜束3の両端部がポッティング材PTによって接着固定されるものであるが、例えば、中空糸膜束の一端部だけを接着固定し、他端部は中空部を封止して接着固定しないような中空糸膜モジュールである場合には、接着固定される一端部のみに樹脂含浸部を設けるようにすればよい。
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1をろ過装置100に設置した態様の一例について図11を参照して説明し、さらに、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1を用いたろ過方法について説明する。なお、このろ過装置100において、内圧ろ過でのクロスフローろ過方式を想定している。
ろ過装置100は、中空糸膜モジュール1のキャップ11の管路11aに接続されて被処理水を供給する供給配管101と、キャップ10の管路10aに接続されて循環水を送り出す循環配管102とを備えている。さらに、供給配管101や循環配管102の途中には、圧力計Pi,Poや弁101a,102aなどが配設されている。また、ろ過装置100は、ろ過水の流路となる上部ろ過水排出管103と下部ろ過水排出管104とを備えている。上部ろ過水排出管103や下部ろ過水排出管104はろ過水の合流管105に接続されており、合流管105は外部の配管(図示せず)に連絡している。なお、合流管105には、圧力計Pfや弁105aなどが配設されている。
中空糸膜モジュール1は縦に配置され、上側のノズル5aが上部ろ過水排出管103に接続され、下側のノズル5aが下部ろ過水排出管104に接続される。
被処理水は、供給配管101から管路11aを通じて所定の圧力で中空糸膜モジュール1に導入される。被処理水は、各中空糸膜2の中空部に導入され、中空糸膜2でろ過され、そのろ過水は各中空糸膜2の外表面から滲み出す。ろ過水は、上部ろ過水排出管103または下部ろ過水排出管104を通って合流管105に排出され、外部配管を通じて採取される。一方で、中空糸膜2を透過した被処理水は、循環水としてキャップ10の管路10aから排出され、循環配管102に送り出される。
上記実施形態の中空糸膜モジュール1においては、中空糸膜2の内表面側の一部の範囲に樹脂含浸部2aを設けるようにしたが、図12に示すように、中空糸膜2の外表面側の一部の範囲にも樹脂含浸部2cを設けるようにしてもよい。なお、以下、中空糸膜2の内表面側に設けられた樹脂含浸部2aを内表面側樹脂含浸部2aといい、中空糸膜2の外表面側に設けられた樹脂含浸部2cを外表面側樹脂含浸部2cという。
中空糸膜2の一端部に形成された外表面側樹脂含浸部2cは、内表面側樹脂含浸部2aと同様に、その他端方向の先端が、接着部20の他端方向の先端よりも他端側に位置するように形成されている。すなわち、外表面側樹脂含浸部2cは、内表面側樹脂含浸部2aと同様に、各中空糸膜2の端面から外表面側樹脂含浸部2cの先端までの長さの方が、上記端面から接着部20の先端までの長さよりも長くなるように形成されている。
このような長さ関係で樹脂含浸部2aと接着部20とを形成することによって、中空糸膜2の接着部20における付け根近傍における揺れをさらに抑制することができ、これにより中空糸膜2の接着部20への付け根近傍において、中空糸膜が損傷するのを防止することができる。また、外表面側樹脂含浸部2cは、接着部20のせり部21の先端が、中空糸膜2の外表面に直接接触して傷つけるのを防止することができる。
また、外表面側樹脂含浸部2cの先端と接着部20の先端との間隔Dも、内表面側樹脂含浸部2aと同様に、相加平均で1cm以上3cm以下とすることが好ましい。間隔Dを1cm以上に設定することで、外表面側樹脂含浸部2cによる中空糸膜2の補強効果を充分に得ることができる。なお、外表面側樹脂含浸部2cの長さを長くし過ぎると、ろ過時の中空糸膜2の有効面積が減少するので、間隔Dは3cm以下とすることが好ましい。また、外表面側樹脂含浸部2cの先端と接着部20の先端との間隔については、全ての中空糸膜2の外表面側樹脂含浸部2cの先端と接着部20の先端との間隔が1cm以上3cm以下である必要はなく、全ての中空糸膜2の外表面側樹脂含浸部2cの先端と接着部20の先端との間隔の相加平均が1cm以上3cm以下であればよく、たとえば外表面側樹脂含浸部2cの先端と接着部20の先端との間隔が1cm以上3cm以下の範囲でないものが一部含まれていてもよい。
ただし、各中空糸膜2の端面から外表面側樹脂含浸部2cの先端までの長さは、上記端面から接着部20の先端までの長さと同じにしてもよい。
また、内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cの中空糸膜2の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜2の厚さに対して10%以上70%以下であることが望ましい。より好ましくは、30%以上60%以下である。内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cの中空糸膜2の肉厚方向の合計の厚さを10%以上にすることで、接着部20に対する中空糸膜2の付け根近傍の強度を増すことができる。また、内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面樹脂含浸部2cの中空糸膜2の肉厚方向の厚さを70%以下にすることで、中空糸膜2の長手方向において内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面樹脂含浸部2cを含む部分に柔軟性を持たせることができる。
図12に示すように、中空糸膜2に対して外表面側樹脂含浸部2cと内表面側樹脂含浸部2aとの両方を設ける場合、これらを別々に形成する方法と、同時に形成する方法とがある。まず、外表面側樹脂含浸部2cと内表面側樹脂含浸部2aとを別々に形成する方法について説明する。
外表面側樹脂含浸部2cと内表面側樹脂含浸部2aとを別々に形成する場合には、これのうち、まず内表面側樹脂含浸部2aから形成される。なお、この内表面側樹脂含浸部2aを形成する工程が、第1の接着予備工程に相当する。この第1の接着予備工程については、上述した図5I〜IVおよび図6I〜図IIで説明した工程と同様である。
そして、第1の接着予備工程によって内表面側樹脂含浸部2aが形成された後、外表面樹脂含浸部2cが形成される。この外表面樹脂含浸部2cを形成する工程が、第2の接着予備工程に相当する。
図13は、中空糸膜2に外表面側樹脂含浸部2cを形成する工程を示す図である。また、図14は、図13に示す各工程を詳細に示す図であり、一部の中空糸膜2を拡大して示した図である。
まず、図13Iに示す工程1において、内表面側樹脂含浸部2aが形成された中空糸膜2を束として整え、中空糸膜束3を作製する。この工程1では、続いて、好ましくは図14Iで示すように、中空糸膜束3の各中空糸膜2の開口を封止物2bで目止めし、各中空糸膜2の中空部を封止してもよい。封止物2bとしても、上述した封止物2bと同様に、たとえば石膏が用いられるが、その他にも熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いてもよい。
次に、図13IIに示す工程2において、封止物2bで封止した中空糸膜束3の端部を有機溶媒で希釈したエポキシ樹脂溶液R中へ所定時間浸漬させた後、図13IIIに示す工程3において、中空糸膜束3をエポキシ樹脂溶液Rから引き上げて乾燥させる。この工程2および工程3が、第2の接着予備工程に相当する。
上記工程2においては、図14IIに示すように、中空糸膜2がエポキシ樹脂溶液Rに浸けられた後、エポキシ樹脂溶液Rが中空糸膜2の外表面の細孔から侵入し、さらに中空糸膜2の端部の内表面側樹脂含浸部2aを除く肉厚部全体に浸透する。
なお、第2の接着予備工程において使用する有機溶媒、エポキシ樹脂の希釈濃度、浸漬時間は、エポキシ樹脂の粘度等で適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
上記工程3における乾燥条件も、上記実施形態と同様に、特に限定されるものではないが、空気の流れを作ること及び乾燥温度を適宜調整することでより効率的に乾燥することができる。有機溶媒を完全に揮発させるには、80℃〜100℃の高温環境で乾燥させることが好ましい。ただし、温度が高すぎると中空糸膜の孔径が変形してしまう場合があるので、上述したように100℃以下とすることが好ましい。
この工程3においては、エポキシ樹脂の希釈に使用した有機溶媒が、中空糸膜2の外表面から優先的に揮発する。そして、この有機溶媒の揮発と同時に、有機溶媒中に溶けているエポキシ樹脂も中空糸膜2の外表面側へ引き寄せられる。これにより、中空糸膜2の肉厚部の外表面側に外表面側樹脂含浸部2cが形成される。図14IIIは、中空糸膜2の外表面から有機溶媒が次第に揮発し、エポキシ樹脂が中空糸膜2の外表面側に引き寄せられる状態を示している。
このように中空糸膜2に外表面樹脂含浸部2cを形成することで、接着工程の際に使用するポッティング材が、中空糸膜2の肉厚部内の細孔を通じて、中空糸膜2の中空部へ侵入することを阻止することができる。また、中空糸膜2の外表面の周方向に亘って外表面樹脂含浸部2cを形成することで、外表面の周方向の全域において中空糸膜2の損傷を抑えることができる。
また、第2の接着予備工程により外表面樹脂含浸部2cを形成した中空糸膜2の外表面の細孔は、エポキシ樹脂により完全に埋まっているわけではなく、一部分の細孔を残した状態となっていることがわかった。このような構造は、接着工程においてアンカー効果による接着強度の向上を期待することができる。
また、内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cの中空糸膜2の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜2の厚さに対して10%以上70%以下になるように設定することが望ましく、樹脂溶液中のエポキシ樹脂の濃度によってコントロールすることができ、10質量%以上70質量%以下に調整することで達成される。
本実施形態においては、有機溶媒中のエポキシ樹脂の濃度を10質量%以上とすることによって、中空糸膜2の外表面の周方向全域に亘って密な外表面側樹脂含浸部2cを形成することができ、これにより外表面の周方向の全域において中空糸膜2の損傷を抑えることができる。
第2の接着予備工程において、中空糸膜2の端部は中空糸膜束3としてエポキシ樹脂溶液R中へ含浸され、乾燥される。この際、中空糸膜2同士が接触している外表面からは有機溶媒が揮発しにくく、中空糸膜2同士が接触していない外表面から優先的に揮発が進行する。そのため、エポキシ樹脂溶液Rは中空糸膜2同士が接触している外表面側から中空糸膜2同士が接触していない外表面側へ移動する。ここで、エポキシ樹脂溶液Rの移動に伴いエポキシ樹脂溶液Rに溶けているエポキシ樹脂も中空糸膜2同士が接触していない外表面側へ移動し、外表面側樹脂含浸部2cを形成する。
一方で、中空糸膜2同士が接触している外表面側ではエポキシ樹脂の量が減少するため、密な外表面側樹脂含浸部2cが形成できない場合がある。そのため、密な外表面側樹脂含浸部2cが形成できない部分においては接着部20による中空糸膜2の損傷抑制の効果が低下する可能性がある
エポキシ樹脂溶液R中のエポキシ樹脂の濃度を10質量%以上に設定した場合、中空糸膜2同士が接触している外表面側においてもエポキシ樹脂が残るため、中空糸膜2の外表面の周方向全域に亘って密な外表面側樹脂含浸部2cが形成される。よって、本実施形態では、有機溶媒中のエポキシ樹脂の濃度を10質量%以上に設定し、中空糸膜2の外表面の周方向全域に亘って密な外表面側樹脂含浸部2cを形成することで、周方向の全域に亘って中空糸膜2の損傷が抑制される。
また、内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cの中空糸膜2の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜2の厚さに対して70質量%以下になるように、エポキシ樹脂溶液Rのエポキシ樹脂の濃度を設定している。これは、第2の接着予備工程において、エポキシ樹脂溶液R中へ含浸させた中空糸膜2の端部を乾燥させる際に、中空糸膜2同士が固着するのを防ぐためである。エポキシ樹脂溶液R中のエポキシ樹脂の濃度が70質量%を超えると、接着予備工程における乾燥の際、中空糸膜2同士が固着してしまう。第2の接着予備工程の後に複数の中空糸膜2をケーシングに挿入できるように円柱状に束を整えることが難しくなるほか、無理やり固着した中空糸膜2同士を剥がそうとすると中空糸膜2を傷つける原因となる。
また、第2の接着予備工程において、エポキシ樹脂溶液R中へ中空糸膜2の端部を浸漬して引き上げた後、エポキシ樹脂溶液Rの乾燥を途中で止め、中空糸膜2の肉厚部に未反応なエポキシ樹脂が残った状態としても良い。このような状態でポッティング材としてエポキシ樹脂を使用して接着工程を行い、中空糸膜2の肉厚部に存在する未反応なエポキシ樹脂とポッティング材とを同時に硬化させても良い。なお、このように第2の接着予備工程および接着工程を行う効果については、上述したとおりである。また、この場合も中空糸膜モジュール1に使用するケーシング5等の部材の耐熱性が十分でない場合には、上記実施形態と同様に、第2の接着予備工程終了後、ケーシング5に収容する前に中空糸膜束3を高温加熱して完全硬化を行うようにしてもよい。
次いで、図13IVに示す工程4において、中空糸膜2の両端部に外表面側樹脂含浸部2aを形成する。その後の接着工程については、上記実施形態と同様である。
次に、外表面側樹脂含浸部2cと内表面側樹脂含浸部2aとを同時に形成する方法について説明する。
図15は、中空糸膜2に外表面側樹脂含浸部2cと内表面側樹脂含浸部2aを同時に形成する工程を示す図である。また、図16は、図15に示す各工程を詳細に示す図であり、一部の中空糸膜2を拡大して示した図である。
まず、図15Iに示す工程1において、所定の本数の中空糸膜2を束として整え、中空糸膜束3を作製する。外表面側樹脂含浸部2cと内表面側樹脂含浸部2aを同時に形成する場合には、図16Iで示すように、各中空糸膜2の開口は封止しない。予め各中空糸膜2の両端を封止した状態で、後述するようにエポキシ樹脂溶液Rに浸漬して乾燥させた場合、乾燥工程において中空糸膜2の内表面から有機溶媒が揮発されなくなり、内表面側樹脂含浸部2aを形成することができないからである。
次に、図15IIに示す工程2において、中空糸膜束3の端部を希釈剤で希釈したエポキシ樹脂溶液R中へ所定時間浸漬させた後、図15IIIに示す工程3において、中空糸膜束3をエポキシ樹脂溶液Rから引き上げ、エポキシ樹脂溶液Rを垂れ切った後、乾燥させる。この工程2および工程3が、接着予備工程に相当する。
上記工程2においては、図16IIに示すように、中空糸膜2がエポキシ樹脂溶液Rに浸けられた後、エポキシ樹脂溶液Rが中空糸膜2の外表面および内表面の細孔から侵入し、さらに中空糸膜2の端部の肉厚部全体に浸透する。
そして、エポキシ樹脂溶液Rを垂れ切った後、乾燥させることによって、図16IIIに示すように、内側樹脂含浸部2aおよび外側樹脂含浸部2cが形成される。
なお、接着予備工程において使用する希釈剤、エポキシ樹脂の希釈濃度、浸漬時間は、エポキシ樹脂の粘度等で適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
上記工程3における乾燥条件は特に限定されるものではないが、空気の流れを作ること及び乾燥温度を適宜調整することでより効率的に乾燥することができる。ただし、温度が高すぎると中空糸膜の孔径が変形してしまう場合があるので、上述したように100℃以下とすることが好ましい。
なお、この接着予備工程においても、エポキシ樹脂溶液R中へ中空糸膜2の端部を浸漬して引き上げた後、エポキシ樹脂溶液Rの乾燥を途中で止め、中空糸膜2の肉厚部に未反応なエポキシ樹脂が残った状態としても良い。このような状態でポッティング材としてエポキシ樹脂を使用して接着工程を行い、中空糸膜2の肉厚部に存在する未反応なエポキシ樹脂とポッティング材とを同時に硬化させても良い。なお、このように接着予備工程および接着工程を行う効果については、上述したとおりである。
次いで、図15IVに示す工程4において、中空糸膜2の両端部に内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cを形成した後、図15Vに示す工程5において、内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cが形成された中空糸膜束3をケーシング5内へ挿入し、ポッティング材PTを用いて各中空糸膜2の内表面側樹脂含浸部2aおよび外表面側樹脂含浸部2cが形成された端部同士を接着するとともに、中空糸膜束3とケーシング5とを接着固定した。なお、工程5においては、図16IVに示すように、中空糸膜束3の各中空糸膜2の開口を封止物2bで目止めし、各中空糸膜2の中空部を封止する。封止物2bとしては、たとえば石膏が用いられるが、その他にも熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂を用いてもよい。これによりポッティング材PTが、中空糸膜2の中空部に侵入するのを防止することができる。
そして、図15VIに示す工程6において、図16IVに示すように、封止物2bによって目止めしていた部分を切断し、中空糸膜束3の端部を開口させる。
以下に、実施例および比較例で使用した測定方法を記載する。
(中空糸膜の内表面の平均孔径)
中空糸膜2の内表面の平均孔径は、以下のようにして測定する。まず、中空糸膜2を長さ方向に切断して、中空糸膜の内表面側を露出させた状態で走査型電子顕微鏡を用いて中空糸膜2の内表面を極力多数の細孔の形状が明確に確認できる程度の倍率で撮影する。なお、孔径が0.1μmから50μm程度であれば、500倍程度の倍率の電子顕微鏡画像を用いるのが適当である。次に、電子顕微鏡画像のコピーの上に透明シートを重ね、黒いペン等を用いて細孔部分を黒く塗り潰し、透明シートを白紙にコピーすることにより、細孔部分は黒、非細孔部分は白と明確に区別する。その後、市販の画像解析ソフトを利用して任意に選んだ細孔100個の孔径を求め、その相加平均値を出すことで平均孔径を算出する。画像解析ソフトは例えば三谷商事株式会社から販売されているソフトウェア“WinRoof”を用いることができる。なお、孔径とは、細孔の円周上における任意の点から、該任意の点に対向する位置にある細孔の円周上の点とを結んだ距離を指す。
(中空糸膜の内表面と外表面との間の肉厚部における平均孔径)
中空糸膜2の内表面と外表面との間の肉厚部における平均孔径は、以下のようにして測定する。まず、中空糸膜2を長さ方向に垂直な断面で切断する。次に、その断面において、中空糸膜を外表面から内表面に向けて膜厚方向に3等分し、外表面を含む領域を領域a、内表面を含む領域を領域c、領域aと領域cの間の領域を領域bとする。その後、各領域毎に平均孔径を求める。例えば、領域aの平均孔径を求める場合、領域a内における任意の位置から膜厚方向に対して全膜厚の10%の範囲内を走査型電子顕微鏡で撮影する。この時、領域a内における任意の位置から膜厚方向に対して全膜厚の10%の範囲内が、必ず領域a内に収まるように、領域a内における任意の位置を設定する必要がある。その後、撮影した画像を基に、中空糸膜の内表面の平均孔径の測定法と同様にして平均孔径を算出することで、領域aにおける平均孔径を求めることができる。なお、領域b、領域cにおいても領域aと同様にして、平均孔径を求めることができる。
(中空糸膜の阻止孔径)
中空糸膜2の阻止孔径は、以下のようにして測定する。一定径の粒子が分散した粒子分散液を中空糸膜中空部へ流入し濾過を行う。この時、粒子径を0.1μmから0.1μm刻みで変えながら濾過液の濃度を測定し、濾過前の粒子分散液の濃度と比較することで粒子の濾過阻止率を求める。濾過阻止率が90%であるときの粒子径を阻止孔径とする。
(樹脂含浸部を形成するために用いる樹脂及びポッティング材として用いる樹脂のガラス転移温度)
樹脂含浸部2aを形成するために用いる樹脂のガラス転移温度とポッティング材として用いる樹脂のガラス転移温度は、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC)装置(型版:DSC8000)を用いて測定した。測定方法はJIS K7121のガラス転移温度の測定方法に準拠した。なお、基準物質としてはインジウムを使用した。
具体的には、完成した中空糸膜モジュール1において、接着部20から約5mgの樹脂を採取し、樹脂含浸部2aから樹脂を適量採取した。樹脂含浸部2aを形成する樹脂中には中空糸膜2が含まれるため、事前に中空糸膜2のみを有機溶媒で溶解させる前処理を施した。具体的には、採取した樹脂含浸部2aを形成する樹脂中へ、中空糸膜素材であるポリスルホンやPVDFを溶解することができるジメチルホルムアミド溶液を約100mL加え、超音波洗浄を10分間実施した。ただし、中空糸膜2を溶解させる溶媒はこれに限定されるものではなく、適宜選択すれば良い。一度目の洗浄が終了した後、ジメチルホルムアミド溶液を交換し、同様の操作をさらに2度実施した。その後、溶け残った樹脂をエタノールで洗浄し、40℃の乾燥機中で8時間乾燥させ、樹脂約5mgを採取した。
次に、接着部20から採取した樹脂5mgと前処理後の樹脂含浸部2aを形成する樹脂5mgをそれぞれ専用のサンプル容器に封入し、サンプル容器を装置内に設置した後、装置内を20℃に温調し測定を開始した。20℃から160℃の範囲でサンプルを昇温した。昇温速度は10℃/minとした。得られた結果から中間点ガラス転移温度(Tg)を算出し、これをガラス転移温度とした。
(中空糸膜の内径及び外径)
中空糸膜2の内径及び外径は、以下のようにして求める。中空糸膜2を膜長手方向に垂直な向きにカミソリなどで薄く切り、走査型電子顕微鏡を用いて断面の内径の長径と短径、外径の長径と短径を測定し、以下の式(1)、(2)により、それぞれ内径と外径を決定した。なお、本実施形態では任意に選んだ中空糸膜2、20本についてそれぞれ内径および外径を測定し、相加平均値を算出することで求めている。
(中空糸膜の膜厚方向の厚さ)
中空糸膜2の膜厚方向の厚さは、以下のようにして測定する。上述したように中空糸膜2の内径( A )および外径( B )を測定し、以下の式(3)にて求めた。
中空糸膜2の膜厚 = ( B − A ) / 2・・・(3)
なお、本実施形態では任意に選んだ20本の中空糸膜2についてそれぞれ膜厚を測定し、相加平均値を算出することで求めている。
(樹脂含浸部の中空糸膜の膜厚方向の厚さ)
樹脂含浸部2aの中空糸膜2の膜厚方向の厚さは、以下のようにして測定する。まず、中空糸膜2において樹脂含浸部2aが形成されている箇所を膜長手方向に垂直な向きにカミソリなどで薄く切り、走査型電子顕微鏡を用いてこの断面を撮影する。次に、撮影した断面画像を基に樹脂含浸部2aを特定する。断面画像において、樹脂含浸部2aは、中空糸膜2の細孔が接着予備工程において使用された樹脂により閉塞されているため細孔を確認できないが、樹脂含浸部が形成されていない箇所は、中空糸膜2の細孔を確認することができる。よって、断面画像において、細孔を確認することができるか否かにより、樹脂含浸部2aと樹脂含浸部2aが形成されていない箇所との境界を特定することができる。その後、中空糸膜2の膜厚方向の厚さの測定方法と同様に、樹脂含浸部2aの内径及び外径を求め、樹脂含浸部2aの厚さを算出する。なお、本実施形態では任意に選んだ中空糸膜2、20本についてそれぞれ樹脂含浸部2aの中空糸膜2の膜厚方向の厚さを測定し、相加平均値を算出することで求めている。
次に、本発明の中空糸膜モジュールおよびその製造方法の具体的な実施例および比較例を、下表1から表4を参照しながら説明する。
(実施例1)
実施例1では、平均空孔率70%、内表面平均孔径30μm、阻止孔径0.4μm、内径1.4mm、外径2.3mm、肉厚幅450μmのポリスルホン性多孔性中空糸膜を使用した。また、ポッティング材は、モメンティブ社のエポキシ樹脂(主剤:BisA系エポキシ樹脂(EPIKOTE828EL), 硬化剤:脂肪族アミン(EPIKURE9280))を主剤:硬化剤=100:51で混合したものを使用した。混合直後の初期粘度は約800mPa・sであり、粘度はJIS K7215の規定に従って測定した。
以下、実施例1の中空糸膜モジュールの製造工程を説明する。
接着予備工程では、モメンティブ社のエポキシ樹脂(主剤:BisA系エポキシ樹脂(EPIKOTE828EL), 硬化剤:脂肪族アミン(EPIKURE9280))を主剤:硬化剤=100:51で混合したもの65質量部に希釈剤として三菱化学社製の1,6ヘキサンジグリシジルエーテルを35質量部加えて均一に混合することで粘度を80mPa・sに調整した樹脂溶液を使用した。両端部が開口している状態の中空糸膜600本の一方の端部を前記樹脂溶液に1cm浸漬し、中空糸内部を陰圧状態にすることで前記樹脂溶液を中空糸膜内部に導入した。中空糸膜内部の樹脂溶液面高さが10cmとなったところで高さを60秒間維持した後、陰圧を解放した。その後室温で24時間乾燥させた後、90度で9時間乾燥させることで、含浸された樹脂を完全硬化させた。一方の端部の処理が完了した後に、逆側の端部にも同様の処理を行った。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さ(肉厚幅)に対して47%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
接着工程では、接着予備工程を終えた中空糸膜600本を1セットとし、4セットをプラスチック製のケーシングに挿入した後、中空糸膜束両端部をポッティング材を用いて静置接着した。
その後、接着予備工程及び接着工程で使用したエポキシ樹脂を完全硬化させるために90℃で16時間加熱した。最後に、接着部の端部を2.5cm切断除去し、キャップを装着することで中空糸膜モジュールを製造した。端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さを中空糸膜モジュール解体後に測定したところ平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
なお、平均値は、任意で選んだ中空糸膜20本について端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さ及び各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さをそれぞれ測定し、その相加平均値を算出することで求めた。
以下の実施例及び比較例においても同様に相加平均値を算出して求めている。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例1で製造した中空糸膜モジュールのリーク検査を以下のように実施した。
まず、アルコールによる親水化処理を施した中空糸膜モジュールの両端部に装着したキャップを取り外した後、中空糸膜モジュールを水槽に浸漬させ、中空糸膜モジュール内部を純水で満たした。
次いで、一方のノズルは栓を施して密閉状態とし、他方のノズルは空気を放出させる配管へ接続した。各中空糸膜の開口から空気を流入し、0.1MPaまで徐々に空気圧を印加し、中空糸膜の外表面から気泡が継続して出てこないかどうかを確認したが、気泡は観察されなかった。
さらに、実施例1で製造した中空糸膜モジュールについて、再びアルコールによる親水化処理を施した後、ろ過・逆洗の繰り返し試験を以下のように実施した。中空糸膜モジュールへの被処理水の供給流量は、ろ過・逆洗流量が、7.5m3/hになるようにした。(なお、ろ過は内圧ろ過とした。)ろ過と逆洗をそれぞれ60s、15s実施する過程を1サイクルとし、50000サイクル運転を実施した。その後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
さらに、実施例1で製造した中空糸膜モジュールについて、熱サイクルに対する耐久性を確認した。水温を20℃から75℃に昇温する時の昇温速度を40℃/minとし、降温時の降温速度を20℃/minとした。75℃、20℃の保持時間をそれぞれ11minとした。以上を1サイクルとし、このサイクル運転を3000サイクル連続で実施した。運転後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例2)
実施例2では、中空糸膜および希釈剤は、実施例1と同じ種類のものを使用したが、接着予備工程における樹脂の含浸させる時間を40秒間と短くすることで、染込み厚さを薄くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して33%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例3)
実施例3では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵時間を15秒間とさらに短くすることで、染込み厚さをさらに薄くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して13%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例3で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例3で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例3で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例4)
実施例4では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵時間を10秒間とさらに短くすることで、染込み厚さをさらに薄くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して8%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例5)
実施例5では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵時間を120秒間と長くすることで、染込み厚さを厚くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して69%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例5で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例5で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例5で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例6)
実施例6では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵高さを11cmと高くすることで、染込み高さを高くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して47%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは12cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均9.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均2cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例6で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例6で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例6で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例7)
実施例7では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵高さを12cmと高くすることで、染込み高さを高くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して47%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは13cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均10.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均3cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例7で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例7で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例7で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例8)
実施例8では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵高さを9cmと低くすることで、染込み高さを低くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して47%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは10cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均7.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は全くなかった。
実施例8で製造した中空糸膜モジュールは中空部の閉塞数が全体の約20%であった。
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は77℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例8で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例8で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から15か所の気泡が観察された。
さらに、実施例8で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したところ、中空糸膜の外表面から気泡が観察された。
(実施例9)
実施例9では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂は実施例1と同様のものを使用したが、接着予備工程で用いる希釈剤を1、6ヘキサンジグリシジルエーテルではなく、エタノールを使用した。
以下、実施例9の中空糸膜モジュールの製造工程を説明する。
接着予備工程では、モメンティブ社のエポキシ樹脂(主剤:BisA系エポキシ樹脂(EPIKOTE828EL)、硬化剤:脂肪族アミン(EPIKURE9280))を主剤:硬化剤=100:51で混合したもの50質量部に希釈剤としてエタノールを50質量部加えて均一に混合することで粘度を20mPa・sに調整した樹脂溶液を使用した。両端部が開口している状態の中空糸膜600本の一方の端部を、その末端が拘束されていない状態で前記樹脂溶液に1分間含浸させた後、室温中で24時間乾燥させエタノールを除去した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
実施例9における接着予備工程を終えた中空糸膜を用いて、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを製造した。端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例9で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例9で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例9で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例10)
実施例10では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂と希釈剤は実施例9と同様のものを使用したが、希釈倍率を表2のように変更し膜含侵部の厚さを薄いものを製造した。その他の製造条件は実施例9と同様に実施した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して27%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例10で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例10で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例10で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例11)
実施例11では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂は実施例9と同様のものを使用したが、希釈剤はエタノールではなく1−ブタノールを使用した。その他の製造条件は実施例9と同様に実施した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して27%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例11で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例11で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例11で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例12)
実施例12では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂と希釈剤は実施例9と同様のものを使用したが、接着工程で使用するポッティング材にウレタン樹脂を用いた。その他の製造条件は実施例9と同様に実施した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して27%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するウレタン樹脂のガラス転移温度は76℃であった。
また、実施例12で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例12で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例12で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例13)
実施例13では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂と希釈剤は実施例9と同様のものを使用したが、接着予備工程における含浸高さを実施例9よりも低く設定し、膜束端面からの樹脂含侵部の長さを低くしたものを製造した。その他の製造条件は実施例9と同様に実施した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは10cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均7.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は全くなかった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全体の15%が閉塞した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例13で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例13で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から15か所の気泡が観察された。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の一部に破断した異常が観察された。
さらに、実施例13で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、3000サイクル終了後に再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から2か所の気泡が観察された。
(実施例14)
実施例14では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂と希釈剤は実施例9と同様のものを使用したが、接着予備工程における希釈倍率を実施例1よりも低く設定し、樹脂含侵部の厚さをさらに薄くしたものを製造した。その他の製造条件は実施例9と同様に実施した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して4%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全体の6%が閉塞した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例14で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例14で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から4か所の気泡が観察された。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の一部に破断した異常が観察された。
さらに、実施例14で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、3000サイクル終了後に再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から1か所の気泡が観察された。
(実施例15)
実施例15では中空糸膜および接着予備工程で用いるエポキシ樹脂と希釈剤は実施例9と同様のものを使用したが、希釈倍率を変更し樹脂含侵部の厚さを厚いものを製造した。その他の製造条件は実施例9と同様に実施した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して80%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
接着予備工程の完了した中空糸膜束をケースに挿入しようと試みたところ、含侵部の一部の膜同士が固着しており、ケースへの挿入性に問題があった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例15で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例15で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例15で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(実施例16)
実施例16では実施例1〜15と異なり、接着予備工程を2段階に分けて行った。以下に実施例16の中空糸膜モジュールの製造工程を説明する。
1度目の接着予備工程は、実施例1において中空糸内部を陰圧状態で中空糸膜内部の樹脂用液面高さを10cmに維持する時間を30秒にすること以外の条件を実施例1と同様に行った。
2度目の接着予備工程では、実施例9と同様に行った。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含侵部が中空糸膜の外表面側および内表面側に形成されていることを確認した。樹脂含侵部の肉厚方向の厚さの合計は、中空糸膜の厚さに対して53%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含侵部の先端までの長さは11cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。
また、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含侵部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
また、実施例16で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は検出されなかった。
さらに、実施例16で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。50000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
さらに、実施例16で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
(比較例1)
比較例1では、実施例1で使用したポリスルホン性多孔性中空糸膜、ポッティング材を用いて、接着予備工程を実施せずに中空糸膜束をケーシングへ挿入し、接着固定した。接着工程での条件は実施例1と同様である。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、ほぼ100%ポッティング材として使用したエポキシ樹脂によって閉塞していた。また、エポキシ樹脂が中空糸膜内部まで染み込んだため、エポキシ樹脂の硬化発熱時の熱が実施例1と比べ、中空糸膜モジュール端部の中心に蓄積され、硬化時の発熱温度が高くなった。それに伴いエポキシ樹脂は焼けた色となり、硬化に伴う接着部の残留応力が大きくなってしまい外周部の一部に樹脂亀裂が発生した。
(比較例2)
比較例2では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、予備接着工程における樹脂含侵高さを低くすることで、染込み高さを低くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の内表面側に形成されていることを確認した。一方外表面をSEMで観察したところ、表面は開口した状態が保たれており、樹脂は付着していなかった。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して47%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは6cmであった。
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さの測定を試みたが、樹脂含浸部が接着部に埋没してしまい、測定は不能であった。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、ほぼ全数が閉塞した状態となっていた。
(比較例3)
比較例3では、PVDF製の中空糸膜を使用した。その他の工程は比較例1と同様に実施した。
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、ほぼ100%ポッティング材として使用したエポキシ樹脂によって閉塞していた。また、エポキシ樹脂が中空糸膜内部まで染み込んだため、エポキシ樹脂の硬化発熱時の熱が実施例1と比べ、中空糸膜モジュール端部の中心に蓄積され、硬化時の発熱温度が高くなった。それに伴いエポキシ樹脂は焼けた色となり、硬化に伴う接着部の残留応力が大きくなってしまい外周部の一部に樹脂亀裂が発生した。