しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載のような本発明に関連する現状の技術には、アンテナ素子の指向性が金属筐体のサイズに影響されるため、設置場所などに制限が生じるという解決するべき課題がある。スロットによって放射される電波の指向性(放射パターン)は、金属筐体の外壁に誘起されるアンテナ電流により決まる。そこで、金属筐体のサイズが変わると、金属筐体の外壁に誘起されるアンテナ電流が影響を受け、ひいては放射される電波の指向性が影響を受けてしまうのである。
その一例を、図8〜図13を参照してさらに説明する。まず、図8は、アンテナ素子を金属筐体により覆う構造からなる現状の技術におけるアンテナ装置の構成の一例を示す模式図である。図8(A)は、アンテナ装置1Aのアンテナ素子11Aを覆う円筒形状の金属筐体21Aを真上から垂直に眺めた(円筒形状の金属筐体21Aの中心軸方向に眺めた)場合の平面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がY軸である。また、図8(B)は、金属筐体21AをY軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がZ軸である。また、図8(C)は、図8(B)の金属筐体21Aを90°回転させたX軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がY軸、縦軸方向がZ軸である。また、図8(D)は、金属筐体21A内に配置されているアンテナ素子11Aを搭載したプリント基板12の搭載位置を示す透視図であり、図8(B)の金属筐体21Aの場合と同様の側面から透視した場合を示している。
また、図9は、図8のアンテナ装置1Aにおけるアンテナ素子11Aからの電波の放射パターンの一例を示す模式図であり、図9(A)は、XZ面における電波の放射パターンを示し、図9(B)は、XY面における電波の放射パターンを示している。
次に、図10は、アンテナ素子を金属筐体により覆う構造からなる現状の技術におけるアンテナ装置の図8とは異なる構成例を示す模式図である。図10(A)は、アンテナ装置1Bのアンテナ素子11Aを覆う円筒形状の金属筐体21Bを真上から垂直に眺めた(円筒形状の金属筐体21Bの中心軸方向に眺めた)場合の平面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がY軸である。また、図10(B)は、金属筐体21BをY軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がZ軸である。また、図10(C)は、図10(B)の金属筐体21Bを90°回転させたX軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がY軸、縦軸方向がZ軸である。また、図10(D)は、金属筐体21B内に配置されているアンテナ素子11Aを搭載したプリント基板12の搭載位置を示す透視図であり、図10(B)の金属筐体21Bの場合と同様の側面から透視した場合を示している。
また、図11は、図10のアンテナ装置1Bにおけるアンテナ素子11Aからの電波の放射パターンの一例を示す模式図であり、図11(A)は、XZ面における電波の放射パターンを示し、図11(B)は、XY面における電波の放射パターンを示している。
なお、図8のアンテナ装置1Aと図10のアンテナ装置1Bとは、いずれも、アンテナ素子11Aを配置したプリント基板12と、円筒形状の金属外壁として、アンテナ素子11Aを実装したプリント基板12を覆う金属筐体21Aと金属筐体21Bと、をそれぞれ備え、さらに、アンテナ素子11Aの位置と同一の水平面上になる金属筐体21Aと金属筐体21Bとのそれぞれの位置には、アンテナ素子11Aが放射する主偏波と直交するようにスリット(切れ目)状のスロット22Aとスロット22Bとをそれぞれ設けている。ここで、それぞれに図示するように、円筒形状の金属筐体21Aと金属筐体21Bとのそれぞれの水平方向の平面(例えば図8(A)と平行する面)がXY面であり、水平方向のY軸に対向する平面(例えば図8(B)と平行する面)面がXZ面であり、水平方向のX軸に対向する平面(例えば図8(C)と平行する面)面がYZ面である。
ここで、図8のアンテナ装置1Aは、金属筐体21Aの長手方向(Z軸方向)の高さが40mmであり、短手方向(X軸、Y軸方向)の直径が20mmである。そして、金属筐体21Aに配置したスロット22Aの長手方向(Z軸方向)の位置は、アンテナ素子11Aと同一の位置であって、金属筐体21Aの高さを1/2にした真ん中の位置、すなわち、金属筐体21Aの上端から20mmの位置である。また、スロット22Aの長さは、概ね共振周波数の略1/2波長であって、共振周波数は2,400MHzであるものとする。
一方、図10のアンテナ装置1Bは、金属筐体21Bの高さを、図8のアンテナ装置1Aの金属筐体21Aの高さ40mmから80mmに変更したものであって、アンテナ素子11Aと同一の位置として金属筐体21Bに配置したスロット22Bの長手方向(Z軸方向)の位置は、金属筐体21Bの上端から20mmの位置であって、金属筐体21Bの下端から60mmの位置である。
なお、スロット22A、スロット22Bそれぞれによって放射される電波の指向性(放射パターン)は、金属外壁すなわち金属筐体21A、金属筐体21Bそれぞれに誘起されるアンテナ電流により決まり、金属筐体21A、金属筐体21Bそれぞれの形状による影響を受けてしまう。つまり、図9(B)と図11(B)との放射パターン(XY面)は、ほぼ同一であるが、図9(A)と図11(A)との放射パターン(XZ面)を比較すると、金属筐体21A、金属筐体21Bそれぞれの垂直方向(Z軸方向)の高さにより、言い換えると、金属筐体21A、金属筐体21Bそれぞれのスロット22A、スロット22Bとアンテナ素子11Aとの位置関係により、放射パターンが変化していることが分かる。仮に、アンテナ装置を同一フロア内に設定されている他の無線通信機器との間の無線通信に使用することを考えた場合において、アンテナ装置の水平方向例えば図9(A)、図11(A)の左右方向(60°〜120°と240°〜300°)に無線通信相手の該無線通信機器が配置されていた場合には、左右方向(60°〜120°と240°〜300°)の利得が大きい方が有利である。したがって、かかる場合には、図9の放射パターンとなる図8のアンテナ装置1Aの方が適しており、左右方向の利得が少ない図10のアンテナ装置1Bは適していないことになる。
前述したように、アンテナ素子から放射される電波の放射パターンは、アンテナ素子11Aを覆う金属筐体21A、金属筐体21Bそれぞれの外壁に誘起される電流によって決定される。図12は、図8のアンテナ装置1Aと図10のアンテナ装置1Bとの或るタイミングにおいて金属筐体21A、金属筐体21Bそれぞれの外壁に流れるアンテナ電流の様子を模式的に示す模式図であり、図12(A)が、図8のアンテナ装置1Aの場合を示し、図12(B)が、図10のアンテナ装置1Bの場合を示している。
図8のアンテナ装置1Aにおいては、図12(A)に示すように、金蔵円筒21Aの垂直方向の真ん中の位置に配置したスロット22Aにより、金属筐体21Aの長手方向すなわち垂直方向(Z軸方向)には一方向(図12(A)に示す例においては金属筐体21Aの上端から下端方向)の電流が誘起される。これに対して、図10のアンテナ装置1Bにおいては、金属筐体21Bの長手方向すなわち垂直方向(Z軸方向)には対向する向きの電流(図12(B)に示す例においては金属筐体21Bの上端から下端方向に向かう電流と下端から上端方向に向かう電流との対向電流)が誘起される。図10のアンテナ装置1Bにおけるかくのごとき対向電流の誘起を無くすためには、スロット22Bを金属筐体21Bの長手方向すなわち垂直方向(Z軸方向)の真ん中の位置(金属筐体21Bの上端から40mmの位置)に配置することが必要である。
しかし、金属筐体21Bのサイズは内蔵する部品(プリント基板12等)によって定まるものであり、かつ、アンテナ素子11Aを搭載するプリント基板12の金属筐体21B内の実装位置は変わらない。したがって、スロット22Bを金属筐体21Bの垂直方向の真ん中の位置に配置した場合には、アンテナ素子11Aとスロット22Bとの間の距離が離れてしまい、アンテナ素子11Aから放射される電波のアンテナ放射効率が劣化してしまう。
図13は、図10のアンテナ装置1Bのスロット22Bを金属筐体21Bの上端から20mmの位置に配置した場合と真ん中の40mmの位置に配置した場合とのアンテナ放射効率を示す特性図であり、実線が、金属筐体21Bの上端から20mmの位置に配置した場合を示し、破線が、金属筐体21Bの上端から40mmの位置すなわち真ん中の位置に配置した場合を示している。図13に示すように、スロット22Bを金属筐体21Bの上端から40mmの位置すなわち真ん中の位置に配置した場合には、共振周波数2,400MHzにおけるアンテナ放射効率が、−16.7dBとなり、金属筐体21Bの上端から20mmの位置に配置した場合の−2.5dBに比して、約−14dBも劣化してしまうことが分かる。
なお、前記特許文献1に記載されているように、スロット22A、スロット22Bそれぞれの位置は、アンテナ素子11Aからの距離が適用周波数の1/10波長以下であることが望ましいとされている。図10のアンテナ装置1Bの場合には、水平方向の電波の放射パターンの利得を改善するために、金属筐体21Bの上端から40mmの位置にスロット22Bを配置しようとすると、該スロット22Bの位置はアンテナ素子11Aからの距離が20mmとなり(すなわち、適用している共振周波数2,400MHzの1/10波長である約12.5mmを超える距離となり)、アンテナ放射効率が劣化してしまう。また、前記文献2に記載されているようなアンテナ素子の指向性を制御するための素子をプリント基板12上に配置するスペースは、小型化を図るために、通常、図9に示すアンテナ装置1Bには存在しないので、現状の手法による特性改善は見込めない。
(本開示の目的)
本開示は、以上に述べたような解決するべき課題に鑑みてなされたものであり、アンテナ素子を覆う金属筐体の形状を変えることなく、アンテナ素子の放射パターンを制御して電波の放射効率を向上させることが可能なアンテナ装置、無線通信機器およびアンテナ形成方法を提供することを、その目的としている。
前述の課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置、無線通信機器およびアンテナ形成方法は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
(1)本発明によるアンテナ装置は、
アンテナ素子はプリント基板に搭載し、
前記アンテナ素子の共振周波数の約1/2波長の長さからなる絶縁体または誘電体の2つのコの字形状のスロットを金属筐体上に形成し、
かつ、
2つのコの字形状の前記スロットの配置位置に関し、それぞれ、前記アンテナ素子からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分を、前記金属筐体の長手方向の真ん中の位置に配置し、該第1のスロット部分それぞれの両端からそれぞれ90°に折り曲げて前記アンテナ素子からの電波の主偏波と平行する状態にした2本ずつの第2のスロット部分を、該第2のスロット部分それぞれの先端が前記アンテナ素子の近傍に位置するように延在させて配置し、
前記アンテナ素子が搭載されたプリント基板を前記金属筐体で覆う
ことを特徴とする。
(2)本発明による無線通信機器は、
前記(1)に記載のアンテナ装置を備え、無線通信用の電波を該アンテナ装置により送受信する無線通信機器。
(3)本発明によるアンテナ形成方法は、
アンテナ素子の共振周波数の約1/2波長の長さからなる絶縁体または誘電体の2つのコの字形状のスロットを金属筐体上に形成し、
かつ、
2つのコの字形状の前記スロットの配置位置に関し、それぞれ、前記アンテナ素子からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分を、前記金属筐体の長手方向の真ん中の位置に配置し、該第1のスロット部分それぞれの両端からそれぞれ90°に折り曲げて前記アンテナ素子からの電波の主偏波と平行する状態にした2本ずつの第2のスロット部分を、該第2のスロット部分それぞれの先端が前記アンテナ素子の近傍に位置するように延在させて配置し、
前記アンテナ素子を前記金属筐体により覆う
ことを特徴とする。
本発明のアンテナ装置、無線通信機器およびアンテナ形成方法によれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
すなわち、本発明においては、アンテナ素子を覆う金属筐体上に2つのコの字形状のスロットを配置した構造としている。さらに、2つのスロットそれぞれは、金属筐体の長手方向の真ん中の位置に、アンテナ素子からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分をそれぞれ配置するとともに、該第1のスロット部分それぞれの両端から90°に折り曲がって金属筐体の長手方向に延在して、該アンテナ素子の近傍に先端が位置する状態に配置した、該アンテナ素子からの電波の主偏波と平行する第2のスロット部分を、それぞれ有する構造としている。而して、アンテナ素子からの電波の放射効率を、現状の技術よりも格段に向上させることができる。
以下、本発明によるアンテナ装置、無線通信機器およびアンテナ形成方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるアンテナ装置、アンテナ形成方法について説明するが、かかるアンテナ装置を、例えば、携帯電話機、スマートフォン、タブレットや、あるいは、ノートPC(Personal Computer)等の無線通信用電波を送受信する機能を備えた移動無線通信機器に代表されるように、金属筐体で覆われた無線通信機器において無線通信用の電波を送受信するためのアンテナ装置として用いるようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、アンテナ素子が搭載されたプリント基板と、該プリント基板が例えば円筒形状の金属筐体により覆われたアンテナ装置において、前記アンテナ素子から離れた位置になる場合であっても、前記金属筐体上の長手方向の真ん中の位置に、前記アンテナ素子の共振周波数の略1/2波長程度の長さであって、かつ、前記アンテナ素子側に開口している状態になるコの字形状の2つのスロットを並べて配置することにより、該2つのスロットを励起して、前記アンテナ素子からの電波を前記金属筐体の外部に効率的に放射させることを可能にすることを主要な特徴としている。
より具体的には、本発明は、アンテナ素子の共振周波数の略1/2波長程度の長さになるコの字形状のスロットを、90°回転させて金属筐体の長手方向に存在するアンテナ素子側に開口している形に2つ並べて配置する。この際、2つのスロットそれぞれについて、アンテナ素子からの電波の主偏波と直交するスロット部分は、金属筐体の長手方向の真ん中付近に配置し、かつ、アンテナ素子からの電波の主偏波と平行するスロット部分の先端が、アンテナ素子近傍となるような形状に配置する。而して、金属筐体の外壁に流れるアンテナ電流(例えば金属筐体の長手方向に流れるアンテナ電流)が、現状の技術として図9に示したような対向する方向ではなく、同じ一方向に流れるように制御することができ、アンテナ放射効率の劣化を防いで、より遠くまで電波を届くようにすることができる。
<本発明の実施形態>
以下に本発明に係るアンテナ装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明に係るアンテナ装置は、無線通信用の電波を送受信するアンテナ素子が金属筐体によって覆われた形状からなるアンテナ装置であって、例えば2,400MHz帯の電波を使用する小電力データ通信システムにおける無線通信機器に好適に適用することができる。
例えば、該無線通信機器の一例としては、センサのような保守機能を有する無線通信機器があり、同一フロア内に設置されている管理端末との間で小電力による無線通信を行う場合がある。つまり、同一フロア内の無線通信機器との間で無線通信を行う場合には、アンテナ放射効率として水平方向の利得が大きくなればなるほど、より遠くまで電波が届くことになるので、同一フロア内の遠くの位置に存在する無線通信機器との間で、無線通信を行うことができる。本実施形態においては、水平方向のアンテナ放射効率を向上させる場合を例にとって、具体的な構成例と動作とを詳細に説明する。
(実施形態の構成例)
次に、本発明に係るアンテナ装置の構成例について、その一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係るアンテナ装置の構成の一例を示す模式図である。図1(A)は、アンテナ装置1のアンテナ素子11を覆う円筒形状の金属筐体21を真上から垂直に眺めた(円筒形状の金属筐体21の中心軸方向に眺めた)場合の平面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がY軸である。また、図1(B)は、金属筐体21をY軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がZ軸である。また、図1(C)は、図1(B)の金属筐体21を90°回転させたX軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がY軸、縦軸方向がZ軸である。また、図1(D)は、金属筐体21内に配置されているアンテナ素子11を搭載したプリント基板12の搭載位置を示す透視図であり、図1(B)の金属筐体21の場合と同様の側面から透視した場合を示している。ここで、それぞれに図示するように、円筒形状の金属筐体21の垂直方向(長手方向)のZ軸に対向する水平な平面(図1(A)と平行する面)がXY面であり、水平方向のY軸に対向する垂直の平面(図1(B)と平行する面)面がXZ面であり、水平方向のX軸に対向する垂直の平面(図1(C)と平行する面)面がYZ面である。
図1(D)に示すように、アンテナ装置1は、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bの場合と同様、金属筐体21の長手方向(Z軸方向)の高さは、80mmであり、かつ、金属筐体21内に配置されているアンテナ素子11は、金属筐体21の長手方向の上端から20mmの位置に配置されている。しかし、スロットに関しては、図10のアンテナ装置1Bの場合とは異なり、図1(B)、図1(C)、図1(D)に示すように、金属筐体21の長手方向(Z軸方向)の真ん中の位置すなわち上端から40mmの位置に、アンテナ素子11の共振周波数の略1/2波長の長さからなるコの字形状の2つのスロット221、スロット222が配置されている。
また、図1に示すアンテナ装置1は、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bとは異なり、図1(D)に示すように、アンテナ素子11として一部に開口部を有するC字形状のスプリットリング共振器(SRR: Sprit Ring Resonator)アンテナを用いており、かつ、アンテナ素子11を覆う円筒形状の金属外壁を形成する金属筐体21には、前述したように、絶縁体または誘電体からなる2つのコの字形状のスロット221、スロット222を配置している。
ここで、2つのスロット221、スロット222それぞれの形状は、金属筐体21のY軸方向の側面から眺めた場合には、奥側に存在しているスロット部分が重なっているために、図1(B)に示すように、L字形状、逆L字形状になっているが、X軸方向の側面から眺めた場合の図1(C)に示すように、いずれも、コの字形状を90°回転させて、金属筐体21の長手方向に存在するアンテナ素子11に向かって開口している形に配置している。すなわち、2つのスロット221、スロット222それぞれは、アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する水平方向(すなわち金属筐体21の短手方向)のスロット部分の両端から、アンテナ素子11からの電波の主偏波と平行する垂直方向(すなわち金属筐体21の長手方向)の上向きに90°に折れ曲がったスロット部分が延在する形状を有している。2つのスロット221、スロット222それぞれの形状は、かくのごとく、コの字形状である。
つまり、2つのスロット221、スロット222それぞれは、円筒形状の金属筐体21の直径方向になる短手方向(例えば、図1(C)の場合の横軸方向(Y軸方向)であり、アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する水平方向)に配置した第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221を有している。さらに、2つのスロット221、スロット222それぞれは、該第1のスロット部分2211、該第1のスロット部分2221それぞれの両端部分において、90°に折り曲げて、金属筐体21の長手方向の上向き(すなわち、図1(B)の縦軸方向(Z軸方向)の上向き、言い換えると、金属筐体21の長手方向の上向き側であって、アンテナ素子11からの電波の主偏波と平行する方向)に、金属筐体21内に内在するアンテナ素子11の近傍にそれぞれの先端が近づくように、延在させた2本ずつの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222を有している。
そして、図1(B)、図1(C)に示すように、2つのスロット221、スロット222それぞれの第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221のそれぞれは、金属筐体21の長手方向の真ん中の位置すなわち金属筐体21の上端から40mmの位置に、アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交するように水平に配置されている。また、2つのスロット221、スロット222それぞれの2本ずつの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれは、図1(B)に示すように、互いに対向するような位置に、アンテナ素子11からの電波の主偏波と平行するように垂直に形成されている。そして、図1(D)に示すように、第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれの先端部分が、金属筐体21内に配置されているプリント基板12上のアンテナ素子11の近傍に位置するようにするために、望ましくは、アンテナ素子11の水平方向と略同一の位置まで(すなわち、金属筐体21の上端から略20mmの位置まで)延在するように形成されている。
言い換えると、2つのコの字形状のスロット221、スロット222それぞれは、アンテナ素子11の共振周波数の略1/2波長の長さを有し、アンテナ素子11の主偏波と直交するスロット部分として第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221のそれぞれと、アンテナ素子11の主偏波と平行するスロット部分として第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれと、からなっている。
そして、アンテナ素子11の主偏波と直交するスロット部分である第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221のそれぞれは、金属筐体21の長手方向(Z軸方向)の真ん中の位置に水平(金属筐体21の短手方向)に配置される。また、アンテナ素子11の主偏波と平行するスロット部分である第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれは、アンテナ素子11の主偏波と直交するスロット部分である第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221のそれぞれの両端から90°に折れ曲がった状態で垂直(金属筐体21の長手方向)にアンテナ素子11の近傍まで延在するように配置される。
つまり、アンテナ素子11の主偏波と平行するスロット部分である2本ずつの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれは、垂直方向(金属筐体21の長手方向)に延在した結果として、それぞれの先端部分が、金属筐体21の長手方向(Z軸方向)の任意の位置(本実施形態においては金属筐体21の上端から20mmの位置)に配置されているアンテナ素子11の近傍に近づくように、望ましくは、アンテナ素子11と略同一の水平方向の位置まで達するように、配置される。以上のように、2つのスロット221、スロット222それぞれは、金属筐体21の長手方向(Z軸方向)であって、アンテナ素子11が配置されている方向(本実施形態においては金属筐体21の上方向)側に開口したコの字形状のスロットを形成している。
(実施形態の動作の説明)
次に、本発明の実施形態として図1に示したアンテナ装置1の動作について、その一例を、図2および図3を用いて説明する。まず、図2は、図1に示したアンテナ装置1の金属筐体21上に配置した2つのコの字形状のスロット221、スロット222と、金属筐体21の内壁と、に誘記されるアンテナ電流の一例を示す模式図である。つまり、図2(A)は、アンテナ装置1をX軸方向の側面から透視した場合を示しており、スロット221、スロット222の各コの字形状スロットに誘記されるアンテナ電流の様子を説明するものであり、図2(B)は、アンテナ装置1をY軸方向の側面から透視した場合を示しており、SRRアンテナであるアンテナ素子11に流れる電流によって金属筐体21の内壁に誘記されるアンテナ電流の様子を説明するものである。
図2(B)の実線矢印に示すように、Cの字形状のSRRアンテナであるアンテナ素子11に高周波電流が印加されると、図2(B)の破線矢印に示すように、金属筐体21の内壁に電流が誘記される。アンテナ素子11に流れる電流により誘記された該電流は、図2(A)の実線矢印に示すように、アンテナ素子11の主偏波と同じ垂直方向(Z軸方向)すなわち金属筐体21の長手方向に流れるが、該電流が流れるこの向きは、金属筐体の長手方向(垂直方向)の真ん中に配置した2つのスロット221、スロット222それぞれの第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれと直交する向きになるので、2つのスロット221、スロット222それぞれに電流が誘起されることになる。
ここで、2つのスロット221、スロット222それぞれの第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれは、図1(D)に示したように、アンテナ素子11との間の距離が垂直方向(Z軸方向)すなわち金属筐体21の長手方向に20mm程度離れているので、2つのスロット221、スロット222それぞれに誘記される電流の値は低い値になる。
しかし、コの字形状スロットを形成する2つのスロット221、スロット222それぞれの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれは、アンテナ素子11(SRRアンテナ)の近傍に配置されており、かつ、アンテナ素子11の主偏波と平行しているので、図2(A)に示す2つのスロット221、スロット222それぞれに誘記される電流が、図2(B)に示すアンテナ素子11(SRRアンテナ)により金属筐体21の内壁に誘記された電流に結合することになる。したがって、アンテナ素子11の主偏波と直交する2つのスロット221、スロット222それぞれの第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれが、アンテナ素子11から離れた距離に存在していても、2つのスロット221、スロット222それぞれには比較的高い電流値の電流が誘記される。
なお、SRRアンテナであるアンテナ素子11の主偏波と直交する2つのスロット221、スロット222それぞれの第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれと、アンテナ素子11の主偏波と平行する2つのスロット221、スロット222それぞれの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれとの間を分離した場合や、あるいは、2つのスロット221、スロット222それぞれの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれを、アンテナ素子11が存在する方向(図1(B)のZ軸の上方向)ではなく、アンテナ素子11から遠ざかる方向(図1(B)のZ軸の下方向)に90°に折り曲げて延在させた場合には、2つのスロット221、スロット222それぞれに誘記される電流の値は、微弱なままになってしまう。
しかし、図1に示したように、本実施形態におけるアンテナ装置1においては、コの字形状スロットを形成する2つのスロット221、スロット222それぞれの第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれは、SRRアンテナであるアンテナ素子11の近傍に達するように、アンテナ素子11が存在する方向に配置されている。したがって、図2(B)に示したように、SRRアンテナである該アンテナ素子11の両側に位置する金属筐体21の内壁には電流が誘記される。而して、アンテナ素子11の近傍に配置されている第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれを有する2つのコの字形状のスロット221、スロット222それぞれには、金属筐体21の内壁に流れる前記電流により電流が誘記されることになり、2つのコの字形状のスロット221、スロット222それぞれに誘記される前記電流の値は、比較的高い値になる。
なお、以上の説明においては、アンテナ素子11としてSRRアンテナを採用している場合について説明したが、本発明は、用途に応じて、場合によっては、SRRアンテナ以外のアンテナ素子を用いるようにしても構わない。しかし、仮に、アンテナ素子11が、SRRアンテナではなく、逆L字型アンテナであった場合には、以下のように、SRRアンテナの場合に比し、アンテナ素子11からの電波の放射効率が低下してしまう。すなわち、逆L字型アンテナであった場合、アンテナ素子11に近い側の金属筐体21の内壁(1か所のみであり、両側ではない)に電流が誘起され、これにより、2つのスロット221、スロット222のうち、アンテナ素子11に近い側のスロット例えばスロット221に電流が誘記される。そして、スロット例えばスロット221に誘記された電流によって、もう一方のスロット例えばスロット222に電流が誘起される。その結果、アンテナ素子11として逆L字型アンテナを用いた場合においても、2つのスロット221、スロット222それぞれに電流が誘記されるものの、2つのスロット221、スロット222それぞれに誘記される電流値に差分が発生し易くなるのみならず、SRRアンテナを使用した場合に比して、アンテナ素子11から放射される電波の放射効率が劣化することになる。
次に、図3は、図1に示したアンテナ装置1の金属筐体21の外壁に或るタイミングにおいて誘記される電流の様子を模式的に示す模式図であり、実線矢印が、金属筐体21の外壁に誘記される電流を示し、破線矢印が、2つのスロット221、スロット222それぞれに誘記される電流を示している。図1のアンテナ装置1においては、SRRアンテナであるアンテナ素子11の主偏波と直交する2つのスロット221、スロット222それぞれの第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれを、円筒形状の金属筐体21の垂直方向(Z軸方向)すなわち長手方向の真ん中の位置(高さ80mmの金属筐体21の上端から40mmの位置)に配置している。したがって、図3の実線矢印に示すように、金属筐体21の外壁に誘記される電流は、一律、同じ向きに、すなわち、図3に示すタイミングにおいては、金属筐体21の垂直方向(Z軸方向)の上から下方向に、流れるように誘記される。したがって、アンテナ素子11からの電波の放射効率を、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bに比して、格段に向上させることができる。
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果を奏することができる。
すなわち、本実施形態においては、アンテナ素子11として、C字形状のSRRアンテナを採用するとともに、該アンテナ素子11を覆う金属筐体21上に2つのコの字形状のスロット221、スロット222を配置した構造としている。さらに、スロット221、スロット222それぞれは、金属筐体21の長手方向の真ん中の位置に、アンテナ素子11の主偏波と直交する第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれを配置するとともに、該第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれの両端から90°に折り曲がって金属筐体21の長手方向に延在して、該アンテナ素子11の近傍に先端が位置する状態に配置した、該アンテナ素子11の主偏波と平行する第2のスロット部分2212、第2のスロット部分2222それぞれを、有する構造としている。
而して、アンテナ素子11からの電波の放射効率を、現状の技術よりも格段に向上させることができる。図4は、図1に示したアンテナ装置1のアンテナ素子11からの電波の放射パターンの一例を示す模式図であり、図4(A)は、XZ面における電波の放射パターンを示し、図4(B)は、XY面における電波の放射パターンを示している。図4に示すように、アンテナ素子11からの電波の放射効率が、特に、スロット221、スロット222のコの字形状の面に対向している側面方向(図1のXZ面のX軸方向、すなわち、図4(A)の左右方向)の電波の放射効率が、現状の技術に比して格段に良好な特性を有していることが分かる。
すなわち、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bにおいては、アンテナ素子11Aの主偏波と直交するスロット22Bを金属筐体21Bの長手方向の真ん中の位置に配置していないので、図12(B)に示したように、金属筐体21Bの外壁に流れる電流が、金属筐体21Bの上端から下端方向に向かう電流と下端から上端方向に向かう電流との対向電流になる。そのため、図11(A)に示したように、水平方向の電波の放射パターンが劣化している。
これに対して、本実施形態として図1に示したアンテナ装置1においては、アンテナ素子11の主偏波と直交する第1のスロット部分2211、第1のスロット部分2221それぞれを金属筐体21の長手方向の真ん中の位置に配置するとともに、アンテナ素子11としてSRRアンテナを採用しているので、金属筐体21の外壁に流れる電流が、図3に示したように、例えば金属筐体21の上端から下端方向に向かう一方向とすることができる。したがって、図4に示すように、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bの場合に比して、アンテナ利得特性が格段に改善され、特に、アンテナ装置1の水平方向例えば図4(A)のXZ面におけるアンテナ利得が大幅に大きくなっていることが分かる。
また、本実施形態として図1に示したアンテナ装置1においては、コの字形状の2つのスロット221、スロット222を並べて配置しているので、2つのスロット221、スロット222それぞれから電波を放射することによって、図4(A)のXZ面の放射パターンに示すように、スロット221、スロット222のコの字形状の面に対向している側面方向すなわち図1のX軸方向に対向する水平方向の左右(0°〜180°と180°〜360°)の対称性についても、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bの場合(図11(A)の放射パターン)に比して、大幅に改善することができる。
また、図5は、図1に示したアンテナ装置1のアンテナ放射効率の一例を示す特性図である。図5の特性図において、太い点線のグラフが、本実施形態として図1に示したアンテナ装置1の場合の放射効率を示している。また、実線のグラフは、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bの場合(スロット22Bを金属筐体21Bの上端から20mmの位置に配置した場合)を比較のために示しており、図13の特性図における実線のグラフと同じものである。また、破線のグラフは、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bにおけるスロット22Bの位置を金属筐体21Bの長手方向の真ん中(すなわち金属筐体21Bの上端から40mm)の位置に変更した場合を比較のために示しており、図13の特性図における破線のグラフと同じものである。
図5の特性図に示すように、共振周波数2,400MHzにおけるアンテナ放射効率は、本実施形態として図1に示したアンテナ装置1においては、太い点線のグラフに示す−2.7dBであり、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bの場合(スロット22Bを金属筐体21Bの上端から20mmの位置に配置した場合)とほぼ同じ値であり、図10に示したアンテナ装置1Bにおけるスロット22Bの位置を金属筐体21Bの長手方向の真ん中に変更した場合の−16.7dBに比して、大幅に改善されていることが分かる。
<本発明の他の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態として、図1に示したアンテナ装置1とは異なる構成例について、図6および図7を参照しながら詳細に説明する。本他の実施形態においては、アンテナ素子を覆う金属筐体に配置するスロットの個数が、図1に示したアンテナ装置1の場合とは異なり、2つではなく、3つのスロットを配置する場合について示している。なお、スロット以外の部分(アンテナ素子、プリント基板、金属筐体)については、図1のアンテナ装置1の場合と同じである。
図6は、本発明に係るアンテナ装置の構成の図1とは異なる例を示す模式図である。図6に示すアンテナ装置2において、スロット以外のアンテナ素子11、プリント基板12、金属筐体22の各構成要素については、前述したように、図1に示したアンテナ装置1におけるアンテナ素子11、プリント基板12、金属筐体21と全く同じである。なお、金属筐体22は、金属筐体22上に配置するスロットの個数および配置位置が、図1の場合と異なっているので、図1の場合の金属筐体21とは異なる符号を付している。
図6(A)は、図1(A)と同様、アンテナ装置2のアンテナ素子11を覆う円筒形状の金属外壁を形成する金属筐体22を真上から垂直に眺めた(円筒形状の金属筐体22の中心軸方向に眺めた)場合の平面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がY軸である。また、図6(B)は、図1(B)と同様、金属筐体22をY軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がX軸、縦軸方向がZ軸である。また、図6(C)は、図1(C)と同様、図6(B)の金属筐体22を90°回転させたX軸方向の側面から水平に眺めた場合の側面図であり、横軸方向がY軸、縦軸方向がZ軸である。また、図6(D)は、図1(D)と同様、金属筐体22内に配置されているアンテナ素子11を搭載したプリント基板12の搭載位置を示す透視図であり、図6(B)の金属筐体22の場合と同様の側面から透視した場合を示している。ここで、それぞれに図示するように、円筒形状の金属筐体22の垂直方向(長手方向)のZ軸に対向する水平な平面(図6(A)と平行する面)がXY面であり、水平方向のY軸に対向する垂直の平面(図6(B)と平行する面)面がXZ面であり、水平方向のX軸に対向する垂直の平面(図6(C)と平行する面)面がYZ面である。
図6(D)に示すように、図1のアンテナ装置1の場合と同様、金属筐体22の長手方向(Z軸方向)の高さは、80mmであり、かつ、金属筐体22内に配置されているアンテナ素子11は、金属筐体22の長手方向の上端から20mmの位置に配置されている。また、アンテナ素子11も、図1のアンテナ装置1の場合と同様、SRRアンテナ(スプリットリング共振器アンテナ)を用いている。しかし、スロットに関しては、図1のアンテナ装置1の場合とは異なり、図6(B)、図6(C)、図6(D)に示すように、金属筐体22上に第1スロット223、第2スロット224、第3スロット225の絶縁体または誘電体からなる3個のスロットが配置されている。なお、第1スロット223、第2スロット224、第3スロット225の3個のスロットそれぞれは、アンテナ素子11の共振周波数の略1/2波長の長さである。
そして、第1スロット223、第2スロット224の2つのスロットの形状については、それぞれ、図1のアンテナ装置1の場合のスロット221、スロット222と同様のコの字形状のスロットであるが、金属筐体22上の配置位置については、図1のアンテナ装置1の場合とは異なり、それぞれ、金属筐体22の長手方向(Z軸方向)の任意の高さ位置に配置することができ、第1スロット223と第2スロット224とを、別々の高さ位置に配置しても構わない。
図6に示す配置例においては、第1スロット223と第2スロット224とを別々の高さ位置とし、第3スロット225の閉口部側の位置すなわち図6(B)の左側に配置される第1スロット223については、図1のスロット221、スロット222の場合と同様、図6(B)に示すように、該第1スロット223のアンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分を、金属筐体22の長手方向の真ん中の位置すなわち金属筐体22の上端から長手方向に40mmの位置に配置している。したがって、第1スロット223のアンテナ素子11からの電波の主偏波と平行する第2のスロット部分の先端部分は、図1のスロット221、スロット222の場合と同様、アンテナ素子11と略同一の水平位置すなわち金属筐体22の上端から長手方向(Z軸方向)に略20mmの位置に達することになる。一方、第3スロット225の開口部側の位置すなわち図6(B)の右側に配置される第2スロット224については、図1のスロット221、スロット222の場合とは異なり、該第2スロット224のアンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分を、金属筐体22の長手方向の真ん中の位置よりもアンテナ素子11から離れた任意の位置、例えば、金属筐体22の上端から長手方向に55mmの位置に配置している。
一方、第3スロット225の形状は、現状の技術として図10に示したアンテナ装置1Bにおけるスロット22Bの場合と同様、金属筐体22の水平方向(短手方向の面に形成したスリット(切れ目)状のスロットであり、図6(B)に示すように、X軸の右側方向に開口部を有し、アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交するスロット部分のみによって構成されている。そして、第3スロット225の配置位置も、図10に示したアンテナ素子装置1Bにおけるスロット22Bの場合と同様、アンテナ素子11の近傍の位置に配置される。すなわち、図6(D)に示すように、金属筐体22の長手方向(Z軸方向)において、アンテナ素子11と略同一の水平位置すなわち金属筐体22の上端から長手方向(Z軸方向)に略20mmの位置に配置される。
次に、図6に示したアンテナ装置2の動作例について説明する。SRRアンテナのアンテナ素子11に高周波電流が流れると、該アンテナ素子11の近傍に配置されている第3スロット225が励起されて、金属筐体22の外壁に長手方向(Z軸方向)に流れる電流が誘記される。そして、金属筐体22の外壁に長手方向(Z軸方向)に流れる電流によって、2つの第1スロット223と第2スロット224とのコの字形状スロットのうち、アンテナ素子11の近傍に配置されている第3スロット225の開口部側に位置しているコの字形状スロットすなわち図6においては第2スロット224(アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分が金属筐体22の長手方向(Z軸方向)の真ん中よりもアンテナ素子11から離れた位置に配置されているスロット)が励起される。ここで、金属筐体22の外壁に長手方向(Z軸方向)に流れる電流は、第2スロット224にも流れ込むので、第2スロット224よりも先に位置する金属筐体22の外壁に流れる電流量は小さい値になる。したがって、金属筐体22の外壁の一方向に電流が流れた場合と同様の効果が得られる。
一方、アンテナ素子11の近傍に配置されている第3スロット225の閉口部側に位置しているコの字形状スロットすなわち図6においては第1スロット223(アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分が金属筐体22の長手方向(Z軸方向)の真ん中に位置しているスロット)は、アンテナ素子11からの主偏波と平行する第2のスロット部分の先端がアンテナ素子11と略同一の水平位置に達しているので、SRRアンテナのアンテナ素子11によって直接励起されて、金属筐体22の外壁に長手方向(Z軸方向)に流れる電流が誘記される。また、第1スロット223は、アンテナ素子11からの電波の主偏波と直交する第1のスロット部分が金属筐体22の長手方向(Z軸方向)の真ん中に位置しているので、金属筐体22の外壁の長手方向(Z軸方向)に誘記された電流は、一方向に流れることになる。
以上のように、図6に示すアンテナ装置2においては、SRRアンテナのアンテナ素子11により一方のコの字型スロットすなわち第1スロット223を直接励起させ、もう一方のコの字型スロットすなわち第2スロット224をアンテナ素子11近傍に配置した第1スロット225により誘起される電流の制御に使うことによって、金属筐体22の外壁に流れる電流を一方向とすることができるので、図7に示すように、図1のアンテナ装置1の場合と同様、良好なアンテナ放射パターン特性を得ることができる。
図7は、図6に示したアンテナ装置2のアンテナ素子11からの電波の放射パターンの一例を示す模式図であり、図7(A)は、XZ面における電波の放射パターンを示し、図7(B)は、XY面における電波の放射パターンを示している。図7に示すように、アンテナ素子11からの電波の放射効率に関しては、特に、第1スロット223、第2スロット224のコの字形状の面に対向している側面方向(図1のXZ面のX軸方向、すなわち、図7(A)の左右方向)の電波の放射効率が、図1のアンテナ装置1の場合と同様、良好な特性を有し、良好なアンテナ利得を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。