以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の第1実施形態によるノック式筆記具1の筆記状態の縦断面図であり、図2は、図1のノック式筆記具1の非筆記状態の縦断面図であり、図3は、図1のノック式筆記具1の筆記状態における後端部の拡大断面図である。
ノック式筆記具1は、筒状に形成された軸筒2と、軸筒2内に配置され且つ一端に筆記部3aを備えた筆記体であるリフィル3と、リフィル3を後方へ付勢する弾性部材であるスプリング4と、軸筒2の後端部に取り付けられ且つ物品を把持するクリップを備えた内筒10と、内筒10内に配置された中空の操作部20と、操作部20の前方に配置された係合部材である主回転子30と、主回転子30の前方に配置された減速回転子40とを有する。後述するように、主回転子30は、内筒10の外カム11及び操作部20と協働し、減速回転子40は、内筒10の外カム11及び主回転子30と協働する。
なお、本明細書中では、ノック式筆記具1の軸線方向において、筆記部3a側を「前」側と規定し、筆記部3aとは反対側を「後」側と規定する。内筒、後述する前軸及び後軸を総じて軸筒と称する。特に言及のない限り、中心軸線とはノック式筆記具1の中心軸線をいう。ノック式筆記具1では、スプリング4の付勢力に抗して操作部20を前方に押圧するノック操作によって、リフィル3が軸筒2内を前後方向に移動する。このとき、筆記部3aが軸筒2から突出した状態を筆記状態(図1)と称し、筆記部3aが軸筒2内に没入した状態を非筆記状態(図2)と称する。
図4は、図1のノック式筆記具1の内筒10の斜視図であり、図5は、図1のノック式筆記具1の内筒10の縦断面図である。図5において、上方がノック式筆記具1の前側である。内筒10は、軸筒2の後端部に嵌合している。内筒10の内面には、外カム11が設けられている。外カム11は、前後方向に延在し且つ後端部において互いに連結する4つの突起部12を有する。4つの突起部12は、周方向に沿って等間隔に配置されている。突起部12の各々の前端面には、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜面13が形成されている。斜面13は、第1カム面を構成する。突起部12の各々は、前後方向に沿って延びる規制面である縦壁面14を有する。4つの突起部12を連結する部分の前端面には、当接面15が形成されている。
図6は、図1のノック式筆記具1の操作部20、いわゆるノック棒の斜視図である。図6において、上方がノック式筆記具1の前側である。操作部20の前側の外周面には、8つの突起部21が周方向に沿って等間隔に設けられている。突起部21の各々は、ノック操作によって、外カム11の突起部12間を前後方向に移動するように構成されている。また、操作部20の前端面にはカム面22が形成されている。カム面22は、対称的に形成された8つの山部23及び谷部24を有する。8つの山部23及び谷部24は、斜面25によって接続されている。
図7は、図1のノック式筆記具1の主回転子30の斜視図であり、図8は、図1のノック式筆記具1の主回転子30の別の斜視図であり、図9は、図1のノック式筆記具1の主回転子30の縦断面図である。図7乃至図9において、上方がノック式筆記具1の前側である。
主回転子30は、大径部30aと、大径部30aの後方に形成され且つ操作部20内に挿入されて芯合わせに使用される小径部30bとから成る。大径部30aは小径部30bよりも大きな直径を有する。大径部30aの外周面には、周方向に沿って等間隔に配置され且つ前後方向に沿って延びる4つの縦溝31が形成されている。縦溝31の深さは、大径部30aと小径部30bとの半径の差よりは浅い。大径部30aには、4つの縦溝31によって画成された4つの突起部32aからなる内カム32が形成されている。大径部30aの後端面には、全周に亘って、操作部20のカム面22と協働するカム受け面33が形成されている。すなわち、内カム32はカム受け面33を有する。
カム受け面33は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した8つの斜面34を有する。8つの斜面34において1つおきの斜面34aは、上述した縦溝31によって切り欠かれている。隣接する縦溝31との間の隣接する斜面34は、前後方向に沿って延びる縦壁面35によって接続されている。すなわち、カム受け面33は、4つの縦壁面35を有する。主回転子30のカム受け面33は、操作部20のカム面22と異なり非対称的な鋸刃状に形成されているが、カム面22と同じように対称的に形成してもよい。
大径部30aの平坦な前端面には、主回転子30の中心軸線と同心状の円筒の内面を有する穴36が形成されている。穴36には、減速回転子40が挿入される。穴36の円筒の内面は、2つの異なる径を有し、それぞれの径は減速回転子40の後述する中径部40b及び小径部40cよりも僅かばかり大きい。穴36において、後端側に配置された小径の部分の後端面には、第2カム面である減速カム面37が形成されている。
減速カム面37は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した8つの斜面38を有する。減速カム面37の隣接する斜面38は、前後方向に沿って延びる縦壁面39によって接続されている。減速カム面37の斜面38とカム受け面33の斜面34とは、互いに逆方向に傾斜している。
内カム32は、ノック操作によって主回転子30が中心軸線回りに回転すると、外カム11と係合し又は係合解除する。すなわち、内カム32の突起部32aは、ノック操作によって主回転子30が中心軸線回りに回転すると、外カム11の突起部12と係合し又は外カム11の突起部12間に配置される。内カム32の突起部32aが外カム11の突起部12間に配置されるとき、外カム11の突起部12は内カム32の突起部32a間、すなわち縦溝31内に配置される。
操作部20のカム面22及び主回転子30のカム受け面33は、内カム32が外カム11と係合し又は係合解除するとき、操作部20のカム面22の山部23が、周方向において、内カム32のカム受け面33の斜面34上に位置するように構成されている。すなわち、カム面22の斜面25とカム受け面33の斜面34とは、位相がずれて配置される。このため、ノック操作によってカム面22の斜面25がカム受け面33の斜面34を押圧すると、この操作荷重及びスプリング4による付勢力に起因し、主回転子30は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。一方、操作部20は、突起部21が外カム11の縦壁面14に周方向に当接することによって中心軸線回りの回転が規制されている。
図10は、図1のノック式筆記具1の減速回転子40の斜視図であり、図11は、図1のノック式筆記具1の減速回転子40の別の斜視図である。図10及び図11において、上方がノック式筆記具1の前側である。減速回転子40は、主回転子30と同一の材料によって形成されるが、異なる材料で形成してもよい。
減速回転子40は、大径部40aと、大径部40aの後方に形成された中径部40bと、中径部40bの後方に形成された小径部40cとから成る。大径部40aは中径部40bよりも大きな直径を有し、中径部40bは小径部40cよりも大きな直径を有する。中径部40b及び小径部40cは、主回転子30の穴36内に挿入される。
大径部40aの外周面には環状の突起が形成され、環状の突起の前端面には第1カム受け面である第1減速カム受け面41が形成されている。第1減速カム受け面41は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した8つの斜面42を有する。第1減速カム受け面41の隣接する斜面42は、前後方向に沿って延びる縦壁面43によって接続されている。
中径部40bの後端面には、主回転子30の減速カム面37に対向して配置され、且つ、減速カム面37と噛合するように相補的な形状の第2カム受け面である第2減速カム受け面44が形成されている。したがって、第2減速カム受け面44は、主回転子30の減速カム面37と同様に鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した8つの斜面45を有する。第2減速カム受け面44の隣接する斜面45は、前後方向に沿って延びる縦壁面46によって接続されている。第1減速カム受け面41の斜面42と第2減速カム受け面44の斜面45とは、互いに逆方向に傾斜している。第1減速カム受け面41の斜面42は、外カム11の斜面13と同一方向に傾斜している。
大径部40aの後端面、すなわち減速回転子40の前端面には、平坦なリフィル支持面47が形成されている。リフィル支持面47は、スプリング4によって後方へ付勢されたリフィル3の後端面と常に当接している。したがって、減速回転子40は、リフィル3と共に前後方向に移動する。大径部40aの前端面には、平坦な回転子当接面48が形成されている。回転子当接面48は、主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44とが噛合しているとき、主回転子30の後端面と当接している。
スプリング4の付勢力は、主として、減速回転子40のリフィル支持面47及び回転子当接面48を介して、操作部20及び主回転子30に伝達される。言い換えると、外カム11と内カム32とが係合しているとき以外は、操作部20、主回転子30及び減速回転子40は、一体となって移動する。
図12は、図1のノック式筆記具1の各カムの関係を示す模式図である。すなわち、図12は、ノック式筆記具1の筆記状態において、内筒10の外カム11と操作部20と主回転子30と減速回転子40との位置関係を示す模式図である。より詳細には、外カム11を周方向に展開したものに対して、操作部20の突起部21及びカム面22と、主回転子30のカム受け面33及び減速カム面37と、減速回転子40の第1減速カム受け面41及び第2減速カム受け面44との位置を示したものである。ただし、主回転子30の減速カム面37及び減速回転子40の第2減速カム受け面44は、その他のカムよりも径方向内方に配置されているため、便宜上、図12において、軸線方向の対応する位置に同様に示している。図中、上方がノック式筆記具1の前側であり、下方がノック式筆記具1の後側である。
ノック式筆記具1の筆記状態において、内カム32は外カム11と係合し、それによって筆記状態が維持される。すなわち、内カム32のカム受け面33の斜面34及び縦壁面35が、外カム11の突起部12の斜面13及び縦壁面14と係合することによって、主回転子30の後退及び回転が規制されている。このとき、主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44とが噛合している。
図13は、図1のノック式筆記具1の筆記状態から非筆記状態への切り替えを示す模式図である。主回転子30は、上述した操作部20のカム面22と主回転子30のカム受け面33とのカム機構によって回転力を与えられ、ノック操作毎に図の左から右へ移動する。なお、図13の模式図は、便宜上、主回転子30の減速カム面37及び減速回転子40の第2減速カム受け面44を図中の下方にずらして表示している以外、図12の模式図と同様である。
図13(a)は、筆記状態のノック式筆記具1を示しており、図12と同一の状態である。この状態から、スプリング4の付勢力に抗して操作部20を押圧し、操作部20及び主回転子30を前方へ移動させると、図13(b)に示されるように、内カム32のカム受け面33の縦壁面35の後端部が、前後方向において外カム11の突起部12の前端部を越える。このとき、主回転子30のカム受け面33の斜面34と外カム11の斜面13とが一致し、外カム11の突起部12の縦壁面14による、主回転子30の中心軸線回りの回転の規制は、解除される。主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44とは、噛合している。
図13(b)の状態から操作部20の押圧を解除すると、操作部20、主回転子30及び減速回転子40は、スプリング4の付勢力によって後退する。このとき、主回転子30の中心軸線回りの回転は、外カム11の突起部12の縦壁面14によって規制されていない。そのため、リフィル3及び減速回転子40を介したスプリング4の付勢力によって、主回転子30のカム受け面33の斜面34が外カム11の斜面13又は操作部20のカム面22の斜面25を押圧すると、主回転子30は周方向の分力を受けて中心軸線回り(ノック式筆記具1を前方から見たときに反時計回り)に回転する。
主回転子30は回転しながら後退するため、図13(c)に示されるように、内カム32の突起部32aが外カム11の突起部12間に配置され、外カム11の突起部12は内カム32の突起部32a間、すなわち縦溝31内に配置される。その結果、外カム11と内カム32との係合は解除される。突起部21が外カム11の縦壁面14に周方向に当接することによって、操作部20の中心軸線回りの回転は、常に規制されている。
図13(c)の状態から、操作部20、主回転子30及び減速回転子40が一体となってさらに勢い良く後退すると、ノック式筆記具1の非筆記状態への切り替え終了の直前、すなわちリフィル3の後方への移動中、本実施形態ではリフィル3の後方への移動の停止の直前に、図13(d)に示されるように、減速回転子40の第1減速カム受け面41の斜面42が、外カム11の斜面13と当接する。
図13(d)の状態において、リフィル3を介したスプリング4の付勢力によって減速回転子40の第1減速カム受け面41の斜面42が外カム11の斜面13を押圧すると、減速回転子40は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。すなわち、外カム11の斜面13は、リフィル3の後方への移動中に、減速回転子40の第1減速カム受け面41と協働して減速回転子40を中心軸線回りに回転させる。言い換えると、減速回転子40の第1減速カム受け面41の斜面42が、外カム11の斜面13に対してスライドする。すなわち、減速回転子40は、リフィル3の後方への移動中に第1減速カム受け面41が外カム11と作用して、それによって減速回転子40が後方へ移動しながら回転運動する。また、このスライドと同時に、減速回転子40の第2減速カム受け面44の斜面45が、主回転子30の減速カム面37の斜面38に対してスライドし、主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44との噛合は解除される。
減速回転子40の回転は、第1減速カム受け面41の縦壁面43が、外カム11の突起部12の縦壁面14と衝突することによって停止する。なお、減速回転子40の回転方向は、主回転子30の回転方向と同一である。
図13(e)は、減速回転子40の回転が停止し、非筆記状態への切り替えが終了した状態、すなわちリフィル3の後方への移動が停止した状態を示している。このとき、第1減速カム受け面41の斜面42及び縦壁面43が、外カム11の突起部12の斜面13及び縦壁面14と係合することによって、減速回転子40の後退及び回転が規制されている。そのため、操作部20及び主回転子30の後退も同様に規制される。さらに、操作部20及び主回転子30の後退は、操作部20の突起部21の後端面が外カム11の当接面15に当接することによっても、規制される。操作部20、主回転子30及び減速回転子40の後退が規制されるので、リフィル3の後退も規制される。その結果、ノック式筆記具1の非筆記状態が維持される。
図13(a)に示されたノック式筆記具1の筆記状態から、図13(d)に示されるように減速回転子40の斜面42が外カム11の斜面13と当接するまでの間、主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44とは噛合している。他方、上述したように、リフィル3の後方への移動中に減速回転子40が回転することによって、主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44との噛合は解除される。
減速回転子40の回転、言い換えると、外カム11の斜面13に対する減速回転子40の第1減速カム受け面41の斜面42のスライド、及び、主回転子30の減速カム面37の斜面38に対する減速回転子40の第2減速カム受け面44の斜面45のスライドは、これら斜面同士の摩擦抵抗に抗して行われる。すなわち、非筆記状態への切り替えの際にリフィル3はスプリング4の付勢力によって勢い良く後方へ移動するが、その運動エネルギーの一部は、リフィル3の後方への移動中に、減速回転子40の回転による運動エネルギー及び上述した斜面のスライドによって発生した摩擦熱へと変換される。その結果、リフィル3の停止時に加わる衝撃は、回転による運動エネルギー及び摩擦熱へと変換された運動エネルギーの分だけ減少し、緩和される。
また、リフィル3に加わる衝撃の結果として生じるインクバックは、特にリフィル3の停止によって加わる前後方向の衝撃によって生じやすいが、それと異なる方向の衝撃を同時に加えることで、インクバックの発生を抑制することができる。具体的には、減速回転子40の回転を停止させる際の衝撃、すなわち、第1減速カム受け面41の縦壁面43が外カム11の突起部12の縦壁面14と周方向に衝突する際の衝撃を利用することができる。
さらに、主回転子30と減速回転子40とによって閉鎖された空間、すなわち略密閉された空間が画成されている。詳細には、主回転子30の穴36の内周面と、穴36に挿入された減速回転子40の中径部40b及び小径部40cとの間に空間S1が画成されている。上述したような、主回転子30に対する減速回転子40の回転、及び、減速回転子40の回転による主回転子30の減速カム面37と減速回転子40の第2減速カム受け面44との噛合の変化に起因し、空間S1の体積の変化、すなわち圧縮及び膨張が行われる。空間S1の体積の変化によって内部の圧力が複雑に変化し、それによってリフィル3の後方への移動中に、リフィル3の移動速度を低減させるようなダンパー効果を生じさせる。結果として、リフィル3の停止時に加わる衝撃を緩和することができる。
図14は、本発明の第2実施形態によるノック式筆記具100の筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図であり、図15は、図14のノック式筆記具100の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図16は、図14のノック式筆記具100の非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図であり、図17は、図14のノック式筆記具100の非筆記状態で且つ前端が上向きの縦断面図である。また、図18は、図16のノック式筆記具100の後端部の拡大断面図である。図14乃至図17において、上方は鉛直上方であり、下方は鉛直下方である。すなわち、重力が、各図において下方に向かって作用する。
ノック式筆記具100は、筒状に形成された軸筒102と、軸筒102内に配置され且つ一端に筆記部3aを備えた筆記体であるリフィル3と、リフィル3を後方へ付勢する弾性部材であるスプリング4と、軸筒102の後端部に取り付けられ且つ物品を把持するクリップを備えた内筒110と、内筒110内に配置された中空の操作部120と、操作部120内に配置された係合部材である主回転子130と、操作部120内において主回転子130の前方に配置された減速回転子140と、操作部120の前方に配置され且つ筒状に形成されたノックロック部材150と、ノックロック部材150と係止する係止部160と、操作部120の後端部に取り付けられた消去部材170とを有する。軸筒102は、前軸102a及び後軸102bを有している。内筒110、前軸102a及び後軸102bを総じて軸筒と称する。
主回転子130は、内筒110の外カム111及び操作部120と協働し、減速回転子140は、内筒110の外カム111及び主回転子130と協働する。また、操作部120のロックカム面122と、ノックロック部材150のロックカム受け面151とが協働してノックロック部材150を中心軸線回りに回転させ、ノックロック部材150と係止部160とを係止状態にさせる。以下、詳細に説明する。
ノックロック部材150は、重力によって軸筒102内を前後方向に移動可能である。したがって、図14及び図15は、ノック式筆記具100の同じ筆記状態を示しているが、図14では、ノック式筆記具100の前端、すなわち軸筒102の前端が上向きであることから、ノックロック部材150は、軸筒102内において後端側に寄っている。他方、図15では、ノック式筆記具100の前端、すなわち軸筒102の前端が下向きであることから、ノックロック部材150は、図14と比較して、軸筒102内において前端側に寄っている。
同様に、図16及び図17は、ノック式筆記具100の同じ非筆記状態を示しているが、図16では、ノック式筆記具100の前端、すなわち軸筒102の前端が下向きであることから、ノックロック部材150は、軸筒102内において前端側に寄っている。他方、図17では、ノック式筆記具100の前端、すなわち軸筒102の前端が上向きであることから、ノックロック部材150は、図16と比較して、軸筒102内において後端側に寄っている。
図19は、図14のノック式筆記具100の後軸102bの縦断面図である。図19において、上方がノック式筆記具100の前側である。後軸102bの内面の中間部には、係止部160が設けられている。係止部160は、後述するノックロック部材150の第1突起部152に対する第2突起部として、周方向に沿って等間隔に配置された6つの第2突起部161を有する。第2突起部161は、横断面が平行四辺形である。また、第2突起部161の後端面には、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜面162が形成されている。
図20は、図14のノック式筆記具100の内筒110の斜視図であり、図21は、図14のノック式筆記具100の内筒110の縦断面図である。図21において、上方がノック式筆記具100の前側である。内筒110は、軸筒102の後端部に嵌合している。内筒110の内面には、外カム111が設けられている。外カム111は、周方向に沿って等間隔に配置された3つの突起部112を有する。突起部112の各々の前端面には、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜面113が形成されている。斜面113は、第1カム面を構成する。突起部112の各々は、前後方向に沿って延びる規制面である縦壁面114を有する。なお、突起部112の各々は、内筒110の内面に対して、より横断面の面積の大きいガイド突起115を介して設けられている。
図22は、図14のノック式筆記具100の操作部120の斜視図であり、図23は、図14のノック式筆記具100の操作部120の別の斜視図であり、図24は、図14のノック式筆記具100の操作部120の縦断面図である。図22乃至図24において、上方がノック式筆記具100の前側である。
操作部120は、筒状の部材である。操作部120は、軸線方向の中央部分に、平滑な外周面を有する円筒部121を有する。円筒部121の前方は、僅かばかり大きい外径に形成され、その前端面には、鋸刃状のロックカム面122が形成されている。ロックカム面122は6つの山部122a及び谷部122bを有する。詳細には、ロックカム面122が、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部122cと、前後方向に沿って延びる縦壁部122dとを有するように、山部122a及び谷部122bが構成されている。操作部120のロックカム面122の山部122aは、周方向に沿って非対称であるが、対称的な形状であってもよい。
円筒部121の後方には、ガイド部123が形成されている。ガイド部123の後端には、後壁123aが設けられている。ガイド部123には、軸線方向に沿って3つのスリット123bが形成されている。3つのスリット123bは、内部まで貫通するようにして、周方向に沿って等間隔に設けられている。したがって、3つのスリット123bによって、断面が略扇形の3つの柱部124が画成される。
柱部124の各々の内面には、後壁123aの内面から前方へ向かって延びる突起部124aが形成されている。突起部124aの各々の前端面には、前方へ向かって鈍角に開いたV字形に画成されたV字形カム面125が形成されている。すなわち、ガイド部123の内面には、3つのV字形カム面125が形成されている。ガイド部123の後端面、すなわちガイド部123の後壁123aの後端面には、後方に向かって延在する中空の嵌合部126が形成されている。嵌合部126の外周面には、径方向外方へ延びる嵌合突起126aが形成されている。
操作部120は、内筒110内に前方から挿入される。その際、内筒110のガイド突起115は、操作部120のスリット123b内に配置され、したがって、操作部120の柱部124は、内筒110のガイド突起115間に配置される。内筒110のガイド突起115が、操作部120のスリット123b内に配置されることによって、操作部120は、中心軸線回りの回転が規制されると共に、スリット123bに沿って前後方向に移動可能となる。また、ガイド突起115上に設けられた突起部112の各々は、スリット123bを介して操作部120のガイド部123内に突出し、その突出量は、柱部124の内面からの突起部124aの突出量と略同一である。したがって、内筒110の突起部112と、操作部120の突起部124aとは、協働して、後述する主回転子130の内カム132に作用する。
図25は、図14のノック式筆記具100の主回転子130の斜視図であり、図26は、図14のノック式筆記具100の主回転子130の別の斜視図であり、図27は、図14のノック式筆記具100の主回転子130の縦断面図である。図25乃至図27において、上方がノック式筆記具100の前側である。
主回転子130は、大径部130aと、大径部130aの後方に形成され且つ操作部120内に挿入されて芯合わせに使用される小径部130bとから成る。大径部130aは小径部130bよりも大きな直径を有する。大径部130aの外径は、挿入される操作部120の円筒部121の内径より僅かばかり小さく設定されている。
大径部130aの外周面には、周方向に沿って等間隔に配置され且つ前後方向に沿って延びる6つの縦溝131が形成されている。縦溝131の深さは、大径部130aと小径部130bとの半径の差よりは浅い。大径部130aには、3つの縦溝131によって画成された3つの突起部132aからなる内カム132が形成されている。大径部130aの後端面には、全周に亘って、操作部120のV字形カム面125と協働するカム受け面133が形成されている。すなわち、内カム132はカム受け面133を有する。
カム受け面133は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した12の斜面134を有する。3つの斜面134において1つおきの斜面134aは、上述した縦溝131によって切り欠かれている。隣接する縦溝131との間の隣接する斜面134は、前後方向に沿って延びる縦壁面135によって接続されている。すなわち、カム受け面133は、3つの縦壁面135を有する。主回転子130のカム受け面133は、非対称的な鋸刃状に形成されているが、対称的に形成してもよい。
大径部130aの平坦な前端面には、主回転子130の中心軸線と同心状の円筒の内面を有する穴136が形成されている。穴136には、減速回転子140が挿入される。穴136の円筒の内面は、2つの異なる径を有し、それぞれの径は減速回転子140の後述する中径部140b及び小径部140cよりも僅かばかり大きい。穴136において、後端側に配置された小径の部分の後端面には、第2カム面である減速カム面137が形成されている。
減速カム面137は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した6つの斜面138を有する。減速カム面137の隣接する斜面138は、前後方向に沿って延びる縦壁面139によって接続されている。減速カム面137の斜面138とカム受け面133の斜面134とは、互いに逆方向に傾斜している。
主回転子130は、操作部120内に前方から挿入される。主回転子130の内カム132は、ノック操作によって主回転子130が中心軸線回りに回転すると、外カム111と係合し又は係合解除する。すなわち、内カム132の突起部132aは、ノック操作によって主回転子130が中心軸線回りに回転すると、スリット123bを介して操作部120内に突出する外カム111の突起部112と係合し又は外カム111の突起部112間に配置される。内カム132が外カム111間に配置されるとき、外カム111の突起部112は内カム132の突起部132a間、すなわち縦溝131内に配置される。
操作部120のV字形カム面125及び主回転子130のカム受け面133は、内カム132が外カム111と係合し又は係合解除するとき、V字形カム面125とカム受け面133との位相がずれるように構成されている。このため、ノック操作によってV字形カム面125の斜面がカム受け面133の斜面134を押圧すると、この操作荷重及びスプリング4による付勢力に起因し、主回転子130は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。一方、操作部120は、上述したように、スリット123b内に内筒110のガイド突起115が配置されることによって、中心軸線回りの回転が規制される。
図28は、図14のノック式筆記具100の減速回転子140の斜視図であり、図29は、図14のノック式筆記具100の減速回転子140の別の斜視図であり、図30は、図14のノック式筆記具100の減速回転子140の縦断面図である。図28乃至図30において、上方がノック式筆記具100の前側である。減速回転子140は、主回転子130と同一の材料によって形成されるが、異なる材料で形成してもよい。
減速回転子140は、大径部140aと、大径部140aの後方に形成された中径部140bと、中径部140bの後方に形成された小径部140cとから成る。大径部140aは中径部140bよりも大きな直径を有し、中径部140bは小径部140cよりも大きな直径を有する。中径部140b及び小径部140cは、主回転子130の穴136内に挿入される。
大径部140aの外周面には環状の突起が形成され、環状の突起の前端面には第1カム受け面である第1減速カム受け面141が形成されている。第1減速カム受け面141は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した6つの斜面142を有する。第1減速カム受け面141の隣接する斜面142は、前後方向に沿って延びる縦壁面143によって接続されている。
中径部140bの後端面には、主回転子130の減速カム面137に対向して配置され、且つ、減速カム面137と噛合するように相補的な形状の第2カム受け面である第2減速カム受け面144が形成されている。したがって、第2減速カム受け面144は、主回転子130の減速カム面137と同様に鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した6つの斜面145を有する。第2減速カム受け面144の隣接する斜面145は、前後方向に沿って延びる縦壁面146によって接続されている。第1減速カム受け面141の斜面142と第2減速カム受け面144の斜面145とは、互いに逆方向に傾斜している。第1減速カム受け面141の斜面142は、外カム111の斜面113と同一方向に傾斜している。
大径部140aの後端面、すなわち減速回転子140の前端面には、平坦なリフィル支持面147が形成されている。リフィル支持面147は、スプリング4によって後方へ付勢されたリフィル3の後端面と常に当接している。したがって、減速回転子140は、リフィル3と共に前後方向に移動する。大径部140aの前端面には、平坦な回転子当接面148が形成されている。回転子当接面148は、主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とが噛合しているとき、主回転子130の後端面と当接している。
スプリング4の付勢力は、主として、減速回転子140のリフィル支持面147及び回転子当接面148を介して、操作部120及び主回転子130に伝達される。言い換えると、外カム111と内カム132とが係合しているとき以外は、操作部120、主回転子130及び減速回転子140は、一体となって移動する。
図31は、図14のノック式筆記具100のノックロック部材150の斜視図であり、図32は、図14のノック式筆記具100のノックロック部材150の別の斜視図である。図31及び図32において、上方がノック式筆記具100の前側である。ノックロック部材150は、主回転子130と同一の材料によって形成されるが、異なる材料で形成してもよい。
ノックロック部材150は、筒状の部材である。ノックロック部材150は、リフィル3によって貫通され、操作部120と軸筒102の係止部160との間を前後方向に移動可能である。ノックロック部材150の後端面には、操作部120のロックカム面122と相補的な形状のロックカム受け面151が形成されている。ロックカム受け面151は、操作部120のロックカム面122と同様に6つの山部151a及び谷部151bを有する。すなわち、ノックロック部材150のロックカム受け面151は、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜部151cと、前後方向に沿って延びる縦壁部151dとを有するように、山部151a及び谷部151bが構成されている。
ノックロック部材150の筒部150aの外周面には、6つの第1突起部152を有している。第1突起部152は、前後方向に延在し且つ周方向に沿って等間隔に配置されている。隣接する第1突起部152によって、前後方向に延在する6つのガイド溝153が画成されている。
第1突起部152の周方向における側面152a、特に前端部の側面152aには、周方向の凹部154が、それぞれ形成されている。凹部154の底面は、第1突起部152の周方向における側面152aと平行な側面155である。凹部154の後側の内面は、前後方向に対して垂直な平面に対して、周方向に傾斜した斜面156である。凹部154は、第1突起部152前方から後方に向かって見て、階段状に形成されている。第1突起部152の側面155はノックロック部材150の中心軸線回りの回転を規制する役割を果たしている。
ノックロック部材150のガイド溝153の各々は、対応する軸筒102の係止部160の第2突起部161をその内部に収容し、ガイド溝153内を前後に相対的に移動可能とさせている。
操作部120のロックカム面122及びノックロック部材150のロックカム受け面151は、係止部160の第2突起部161が、ノックロック部材150のガイド溝153内に収容されるとき、ロックカム面122の山部122aが、周方向において、ロックカム受け面151の斜部151c上に位置するように構成されている。このため、例えば図14に示されるようにノック式筆記具100の前端を上向きにすると、ノックロック部材150が重力の作用によって操作部120に当接するが、ノックロック部材150の自重に起因し、ノックロック部材150は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。一方、操作部120は、スリット123b内に内筒110のガイド突起115が配置されることによって、中心軸線回りの回転が規制される。
図33は、図14のノック式筆記具100の消去部材170の斜視図である。図33と共に図18も参照すると、消去部材170は、保持部材171の後端部に設けられ、保持部材171を介して操作部120の後端部に取り付けられている。言い換えると、操作部120の一部が消去部として機能している。消去部材170は、保持部材171に対して接着又は二色成形等によって設けられている。
保持部材171は、保持部本体172を有している。保持部本体172の前部は、前方に開口する筒状に形成されている。筒状の部分の外周面には、3つの矩形の開口173が形成されている。また、開口173より前方の外周面には、フランジ部174が形成されている。保持部材171は、操作部120の嵌合部126に対して嵌合によって取り付けられる。すなわち、操作部120の嵌合部126の嵌合突起126aが、保持部本体172の開口173内に嵌合する。保持部本体172の後部は、消去部材170と共に全体として先細りの截頭三角錐体状に形成されている。
消去部材170には、図18に示されるように、カバー部材180が装着されている。具体的には、カバー部材180は、保持部本体172と着脱可能に嵌合している。カバー部材180の前端面は、保持部材171のフランジ部174の後端面と当接している。消去部材170は、使用時以外は、カバー部材180によって覆われていることから、消去部材170の汚れを防止することが可能となっている。なお、カバー部材180の後端の閉鎖端面には空気孔が形成されている。
消去部材170及びカバー部材180は、ノック式筆記具100が筆記状態であっても非筆記状態であっても、常に図18に示されるような位置、すなわち後退限に配置される。これに関し、上述したように、消去部材170は保持部材171を介して操作部120に取り付けられていることから、操作部120、消去部材170、保持部材171及びカバー部材180は、一体となって移動する。
図18に示されるように、操作部120の中空の嵌合部126の内部には、弾性部材である付勢スプリング190が配置されている。付勢スプリング190の一端は、主回転子130の小径部130bの後端面によって支持され、操作部120を後方へ付勢している。それによって、消去部材170及びカバー部材180は、ノック式筆記具100が筆記状態であっても非筆記状態であっても、軸線方向において常に同一位置、すなわち後退限に配置される。言い換えると、主回転子130はノック式筆記具100の状態に応じて前方又は後方に配置されるが、いずれの位置にあっても常に操作部120を後方へ付勢するように、付勢スプリング190の長さやばね定数が設定される。
消去部材170が常に後退限位置にあることから、消去部材170の軸筒102の後端部からの突出量は、非筆記状態及び筆記状態のいずれの場合も同一である。したがって、消去部材170を用いた当該ノック式筆記具100による筆跡の消去時に、筆記状態であっても非筆記状態であっても、消去部材170を等しく視認することができる。その結果、意図した箇所を容易に狙うことができ、正確な擦過動作を行うことが可能となる。
図34は図14のノック式筆記具100の各カムの関係を示す模式図である。すなわち、図34は、ノック式筆記具100の筆記状態で且つ前端が下向きの状態において、内筒110の外カム111と操作部120と主回転子130と減速回転子140とノックロック部材150と係止部160との位置関係を示す模式図である。より詳細には、外カム111を周方向に展開したものに対して、操作部120のロックカム面122及びV字形カム面125と、主回転子130のカム受け面133及び減速カム面137と、減速回転子140の第1減速カム受け面141及び第2減速カム受け面144と、ノックロック部材150のロックカム受け面151及び第1突起部152と、軸筒102の係止部160との位置を示したものである。
ただし、主回転子130の減速カム面137及び減速回転子140の第2減速カム受け面144は、その他のカムよりも径方向内方に配置されているため、便宜上、図34において、軸線方向の対応する位置に同様に示している。図34において、上方がノック式筆記具100の前側であり、下方がノック式筆記具100の後側である。また、図34において、ノック式筆記具100の前端は下向きであることから、重力は図中上方に向かって作用している。
ノック式筆記具100の筆記状態において、内カム132は外カム111と係合し、それによって筆記状態が維持される。すなわち、内カム132のカム受け面133の斜面134及び縦壁面135が、外カム111の突起部112の斜面113及び縦壁面114と係合することによって、主回転子130の後退及び回転が規制されている。このとき、主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とが噛合している。また、詳細は後述するが、ノック式筆記具100の前端が下向きであることから、ノックロック部材150は、前方へ移動し、係止部160と係止していない。すなわち、操作部120の移動が規制されることはなく、ノック操作を行うことができる。
図35は、図14のノック式筆記具100の筆記状態から非筆記状態への切り替えを示す模式図である。主回転子130は、上述した操作部120のV字形カム面125と主回転子130のカム受け面133とのカム機構によって回転力を与えられ、ノック操作毎に図の左から右へ移動する。なお、図35の模式図は、便宜上、主回転子130の減速カム面137及び減速回転子140の第2減速カム受け面144を図中の下方にずらして表示している以外、図34の模式図と同様である。
図35(a)は、ノック式筆記具100の筆記状態で且つ前端が上向きの状態を示す模式図であり、図14に示されたノック式筆記具100の状態である。主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とは、噛合している。図34に示されたノックロック部材150の状態との違いは、ノックロック部材150の位置である。すなわち、図35(a)において、ノック式筆記具100の前端が上向きであることから、重力は図中下方に向かって作用している。
ノック式筆記具100の前端を上に向けることによって、ノックロック部材150は、後方へ移動して操作部120に当接する。ノックロック部材150は、上述したように、自重に起因する周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。すなわち、操作部120のロックカム面122とノックロック部材150のロックカム受け面151とが協働してノックロック部材150を中心軸線回りに回転させる。その回転の結果、ノックロック部材150が係止部160と係止し、操作部120の前方への移動が阻止される。
詳細には、係止部160の第2突起部161が、ノックロック部材150の第1突起部152の凹部154内に収容されることによって、ノックロック部材150と係止部160とが係止状態になる。言い換えると、筆記状態において、係止部160の第2突起部161がノックロック部材150の第1突起部152の凹部154内に収容されるように、凹部154は、係止部160の第2突起部161の一部と相補的な形状となるよう構成される。したがって、第2突起部161の斜面162は、凹部154の斜面156と同じ傾きを有する。この状態で、操作部120を強く押圧して前方へ移動させようとしても、係止部160の第2突起部161がノックロック部材150の凹部154内に収容される方向の分力が強くなるだけであって、係止状態が解除されることはない。
図35(b)は、ノック式筆記具100の筆記状態で且つ前端が下向きの状態を示す模式図であり、図15に示されたノック式筆記具100の状態の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。ノック式筆記具100の前端を下に向けることによって、ノックロック部材150は、操作部120との関係において自由になる。他方、ノックロック部材150は、自重によって第1突起部152を介して係止部160を押圧する。すなわち、ノックロック部材150の自重に起因し、第1突起部152の凹部154の斜面156は、係止部160の第2突起部161の斜面162から周方向の分力を受ける。その結果、ノックロック部材150は、図35(a)の場合とは逆の中心軸線回りに回転し、第2突起部161がガイド溝153内に案内される。すなわち、ノックロック部材150と係止部160との係止状態が解除され、操作部120の前方への移動が可能な状態となる。ノックロック部材150の前方への移動は、前軸102aの後端面と当接することによって、停止する。
図35(c)は、ノック式筆記具100の非筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態を示す模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング4及び付勢スプリング190の付勢力に抗して操作部120を押圧し、操作部120を前方へ移動させると、操作部120のV字形カム面125が、主回転子130のカム受け面133の斜面134と当接し、主回転子130及び減速回転子140が前方へ移動する。それによって、内カム132のカム受け面133の縦壁面135の後端部が前後方向において外カム111の突起部112の前端部を越える。このとき、主回転子130のカム受け面133の斜面134と外カム111の斜面113とが一致し、外カム111の突起部112の縦壁面114による、主回転子130の中心軸線回りの回転の規制は、解除される。主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とは、噛合している。
図35(c)の状態から操作部120の押圧を解除すると、操作部120、主回転子130及び減速回転子140は、スプリング4の付勢力によって後退する。このとき、主回転子130の中心軸線回りの回転は、外カム111の突起部112の縦壁面114によって規制されていない。そのため、リフィル3及び減速回転子140を介したスプリング4の付勢力によって、主回転子130のカム受け面133の斜面134が外カム111の斜面113又は操作部120のV字形カム面125を押圧し、主回転子130は周方向の分力を受けて中心軸線回り(ノック式筆記具1を前方から見たときに反時計回り)に回転する。
主回転子130は回転しながら後退するため、図35(d)に示されるように、内カム132の突起部132aが外カム111の突起部112間に配置され、外カム111の突起部112は内カム132の突起部132a間、すなわち縦溝131内に配置される。その結果、外カム111と内カム132との係合は解除される。
図35(d)の状態から、操作部120、主回転子130及び減速回転子140が一体となってさらに勢い良く後退すると、ノック式筆記具100の非筆記状態への切り替え終了の直前、すなわちリフィル3の後方への移動中、本実施形態ではリフィル3の後方への移動の停止の直前に、図35(e)に示されるように、減速回転子140の第1減速カム受け面141の斜面142が、外カム111の斜面113と当接する。
図35(e)の状態において、リフィル3を介したスプリング4の付勢力によって減速回転子140の第1減速カム受け面141の斜面142が外カム111の斜面113を押圧すると、減速回転子140は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。すなわち、外カム111の斜面113は、リフィル3の後方への移動中に、減速回転子140の第1減速カム受け面141と協働して減速回転子140を中心軸線回りに回転させる。言い換えると、減速回転子140の第1減速カム受け面141の斜面142が、外カム111の斜面113の斜面に対してスライドする。すなわち、減速回転子140は、リフィル3の後方への移動中に第1減速カム受け面141が外カム111と作用して減速回転子140が後方へ移動しながら回転運動する。また、このスライドと同時に、減速回転子140の第2減速カム受け面144の斜面145が、主回転子130の減速カム面137の斜面138に対してスライドし、主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144との噛合は解除される。
減速回転子140の回転は、第1減速カム受け面141の縦壁面143が、外カム111の突起部112の縦壁面114と衝突することによって停止する。なお、減速回転子140の回転方向は、主回転子130の回転方向と同一である。
図35(f)は、減速回転子140の回転が停止し、非筆記状態への切り替えが終了した状態、すなわちリフィル3の後方への移動が停止した状態を示す模式図であり、図16に示されたノック式筆記具100の状態の模式図である。このとき、第1減速カム受け面141の斜面142及び縦壁面143が、外カム111の突起部112の斜面113及び縦壁面114と係合することによって、減速回転子140の後退及び回転が規制されている。そのため、操作部120及び主回転子130の後退も同様に規制される。操作部120、主回転子130及び減速回転子140の後退が規制されるので、リフィル3の後退も規制される。その結果、ノック式筆記具100の非筆記状態が維持される。
図35(a)に示されたノック式筆記具100の筆記状態から、図35(f)に示されるように減速回転子140の斜面142が外カム111の斜面113と当接するまでの間、主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とは噛合している。他方、上述したように、リフィル3の後方への移動中に減速回転子140が回転することによって、主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144との噛合は解除される。
減速回転子140の回転、言い換えると、外カム111の斜面113に対する減速回転子140の第1減速カム受け面141の斜面142のスライド、及び、主回転子130の減速カム面137の斜面138に対する減速回転子140の第2減速カム受け面144の斜面145のスライドは、これら斜面同士の摩擦抵抗に抗して行われる。すなわち、非筆記状態への切り替えの際にリフィル3はスプリング4の付勢力によって勢い良く後方へ移動するが、その運動エネルギーの一部は、リフィル3の後方への移動中に、減速回転子140の回転による運動エネルギー及び上述した斜面のスライドによって発生した摩擦熱へと変換される。その結果、リフィル3の停止時に加わる衝撃は、回転による運動エネルギー及び摩擦熱へと変換された運動エネルギーの分だけ減少し、緩和される。
また、リフィル3に加わる衝撃の結果として生じるインクバックは、特にリフィル3の停止によって加わる前後方向の衝撃によって生じやすいが、それと異なる方向の衝撃を同時に加えることで、インクバックの発生を抑制することができる。具体的には、減速回転子140の回転を停止させる際の衝撃、すなわち、第1減速カム受け面141の縦壁面143が外カム111の突起部112の縦壁面114と周方向に衝突する際の衝撃を利用することができる。
さらに、主回転子130と減速回転子140とによって閉鎖された空間、すなわち略密閉された空間が画成されている。詳細には、主回転子130の穴136の内周面と、穴136に挿入された減速回転子140の中径部140b及び小径部140cとの間に空間S2が画成されている。上述したような、主回転子130に対する減速回転子140の回転、及び、減速回転子140の回転による主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144との噛合の変化に起因し、空間S2の体積の変化、すなわち圧縮及び膨張が行われる。空間S2の体積の変化によって内部の圧力が複雑に変化し、それによってリフィル3の後方への移動中に、リフィル3の移動速度を低減させるようなダンパー効果を生じさせる。結果として、リフィル3の停止時に加わる衝撃を緩和することができる。
ノック式筆記具100は、上述したように、操作部120の中空の嵌合部126の内部に、一端が主回転子130によって支持された付勢スプリング190を有しているが、付勢スプリング190も同様に、リフィル3の停止時に加わる衝撃を緩和する効果を奏する。
図36は、図14のノック式筆記具100の非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。図36の模式図は、図35と同様の模式図であり、図中、上方がノック式筆記具100の前側であり、下方がノック式筆記具100の後側である。
図36(a)は、ノック式筆記具100の非筆記状態で且つ前端が上向きの状態を示す模式図であり、図17に示されたノック式筆記具100の状態の模式図である。主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とは、図35(e)及び図35(f)を参照しながら上述したように、噛合していない。重力は図中下方に向かって作用している。そのため、図35(a)を参照しながら上述したように、ノックロック部材150は、係止部160と係止し、操作部120の前方への移動が阻止されている。すなわち、図36(a)の模式図は、ノックロック部材150が係止部160と係止している以外、図35(f)の模式図と同様である。
図36(b)は、ノック式筆記具100の非筆記状態で且つ前端が下向きの状態を示す模式図であり、図16に示されたノック式筆記具100の状態の模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。ノック式筆記具100の前端を下に向けることによって、図35(b)を参照しながら上述したように、ノックロック部材150と係止部160との係止状態が解除され、操作部120の前方への移動が可能な状態となる。
図36(c)は、ノック式筆記具100の筆記状態に移行中で且つ前端が下向きの状態を示す模式図である。したがって、重力は図中上方に向かって作用している。スプリング4及び付勢スプリング190の付勢力に抗して操作部120を押圧し、操作部120、主回転子130及び減速回転子140を前方へ移動させると、減速回転子140が中心軸線回りに回転する。すなわち、操作部120の押圧前は、主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とは噛合していない、すなわち位相がずれていることから、減速回転子140の第2減速カム受け面144が、主回転子130の減速カム面137から周方向の分力を受ける。その結果、減速回転子140は、図35(e)を参照しながら上述した方向と逆の方向、すなわち主回転子130の減速カム面137と減速回転子140の第2減速カム受け面144とが噛合する方向に、減速回転子140が中心軸線回りに回転する。
この状態からさらに操作部120を押圧すると、内カム132のカム受け面133の縦壁面135の後端部が前後方向において外カム111の突起部112の前端部を越える。このとき、主回転子130のカム受け面133の斜面134と外カム111の斜面113とが一致し、外カム111の突起部112の縦壁面114による、主回転子130の中心軸線回りの回転の規制は、解除される。
図36(c)の状態から操作部120の押圧を解除すると、操作部120、主回転子130及び減速回転子140は、スプリング4の付勢力によって後退する。このとき、主回転子130の中心軸線回りの回転は、外カム111の突起部112の縦壁面114によって規制されていない。そのため、リフィル3及び減速回転子140を介したスプリング4の付勢力によって、主回転子130のカム受け面133の斜面134が外カム111の斜面113又は操作部120のV字形カム面125を押圧し、主回転子130は周方向の分力を受けて中心軸線回り(ノック式筆記具1を前方から見たときに反時計回り)に回転する。すなわち、主回転子130の内カム132は、外カム111の斜面113の斜面に沿って移動する。その結果、主回転子130の内カム132は外カム111と係合し、それによって筆記状態が維持される(図36(d))。なお、操作部120は、付勢スプリング190の付勢力によって後退し、元の位置に復帰する(図36(e))。
上述した実施形態では、互いに協働する外カム及び減速回転子の第1減速カム受け面の組み合わせと、互いに協働する主回転子の減速カム面及び減速回転子の第2減速カム受け面の組み合わせとを有していたが、いずれか一方の組み合わせのみを有するようにしてもよい。また、外カム及び減速回転子の第1減速カム受け面の対応するそれぞれの形状、及び、主回転子の減速カム面及び減速回転子の第2減速カム受け面の対応するそれぞれの形状は、リフィルの後方への移動中に、互いに協働して減速回転子を回転させることができる限りにおいて、任意に採用し得る。
さらに、上述した実施形態による構成を、その他のタイプのノック式筆記具に適用してもよい。例えば、上述した主回転子は、軸筒に設けられた外カムと係合し又は係合解除することで筆記状態と非筆記状態とが切り替えられたが、軸筒に取り付けられた別体の部材に設けられた外カムと係合し又は係合解除するようにしてもよい。また、上述した係合部材である主回転子は、ノック操作に応じて回転したが、これに代えて、回転しない係合部材を用いて、軸筒に設けられた外カムと係合し又は係合解除することで筆記状態と非筆記状態とを切り替えるようにしてもよい。まとめると、係合部材が軸筒側に設けられた外カムと係合し又は係合解除することで筆記状態と非筆記状態とが切り替えられるノック式筆記具に適用可能である。さらに、操作部とは別の解除部を押圧することで非筆記状態に切り替えられるノック式筆記具に対しても適用可能である。別の解除部とは、例えば、軸筒の外周面に設けられた解除ボタンである。
さらに、上述した実施形態では、減速回転子を、第1カム面としての外カムと協働させて中心軸線回りに回転させた。すなわち、主回転子と係合又は係合解除する係合部と、減速回転子を回転させる第1カム面とが同一であったが、それぞれ別体に設けてもよい。この場合、係合部及び第1カム面のいずれか一方又は両方を、軸筒側、すなわち軸筒の内面に設けてもよく、軸筒に取り付けられた別体の部材に設けてもよい。
ノック式筆記具100がノックロック部材150を有することによって、筆記状態で且つ前端が上向き状態において、操作部120の前方への移動が阻止され、ノック操作ができない。したがって、消去部材170を用いた当該ノック式筆記具100による筆跡の消去時に、安定した擦過動作を行うことが可能となる。すなわち、ノック式筆記具100を持ち替えて消去部材170を筆記面に対して押圧して擦過動作を行っても、消去部材170ががたつくことがない。
ノックロック部材150は、重力によって軸筒102内を前後方向に移動可能であれば任意の形状であってもよい。ノックロック部材150の第1突起部152の数及び対応する係止部160の第2突起部161の数は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、任意に設定可能である。それぞれ1つでもよく、2つ以上の複数であってもよい。また、ノックロック部材150の第1突起部152の一部及び対応する係止部160の第2突起部161の凹部の形状は、相補的でなくても互いに係止可能であれば任意の形状を採用可能である。
ノックロック部材150について以上をまとめると、ノック式筆記具100によれば、軸筒102と、操作部120と、主回転子130とを具備し、操作部120を前方に押圧するノック操作を行うことによって、筆記状態と非筆記状態とが切り替え可能であり、重力によって軸筒102内を前後方向に移動可能なノックロック部材150と、軸筒102の内面に設けられ、ノックロック部材150と係止可能な係止部160とをさらに具備し、軸筒102の前端を上方へ向けると、ノックロック部材150が後方へ移動して係止部160と係止し、操作部120の前方への移動が阻止される。
ノックロック部材150は筒状の部材であってもよい。操作部120がノックロック部材150に対向するロックカム面122を有し、ノックロック部材150がロックカム面122と協働するロックカム受け面151を有し、ノックロック部材150が後方へ移動すると、ロックカム面122とロックカム受け面151とが協働してノックロック部材150を中心軸線回りに回転させ、ノックロック部材150と係止部160とが係止状態になるようにしてもよい。操作部120がノックロック部材150に対向するロックカム面122を有し、主回転子130が操作部120内に配置されるようにしてもよい。ノックロック部材150が第1の突起部152を有し且つ係止部160が第2の第2突起部161を有し、ノックロック部材150が中心軸線回り回転すると第1の突起部152と第2の第2突起部161とが係止することによって、ノックロック部材150と係止部160とが係止状態になるようにしてもよい。操作部120の全部又は一部が、当該ノック式筆記具100の筆跡を消去可能な消去部材170であってもよい。第1の突起部152又は第2の第2突起部161の側面には凹部が形成され、該凹部によって第1の突起部152と第2の第2突起部161とが係止するようにしてもよい。複数の第1の突起部152及び複数の第2の第2突起部161が、それぞれ周方向に沿って等間隔に配置され、第1の突起部152又は第2の第2突起部161の一方の突起部間に前後方向に延在するガイド溝を画成し、他方の突起部が、ノックロック部材150の前後方向の移動に応じてガイド溝内を移動するようにしてもよい。凹部が、係止する突起部をガイド溝内へ案内する斜面を有するようにしてもよい。
上述した実施形態におけるリフィル3は、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容してもよい。この場合、ノック式筆記具はノック式熱変色性筆記具であり、消去部材として摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、ノック式筆記具の筆跡を熱変色可能である。
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば−5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いたノック式筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
熱変色性色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス( 4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
より具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)等の少なくとも1種が挙げられる。
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1〜100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2〜3μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2〜5μm、さらに好ましくは、0.3〜3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2〜5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9〜1.3、好ましくは1.0〜1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
筆記具用水性インク組成物において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。グリセリンによる作用のメカニズムは不明だが、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性、光変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
筆記具用水性インク組成物の粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500〜2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20〜100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2〜0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
筆記具用水性インク組成物の表面張力は、25〜45mN/m、さらには30〜40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
リフィル内においては、インクのすぐ後方にインク追従体を配置してもよい。追従体を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα−オレフィン、エチレンα−オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS−100、PW−32、PW−90、NR−68、AH−58(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV−15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリα−オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P−26、P−46,P−56、P−150,P−350,P−1500、P−2200、(P−10000、P−37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なエチレンα−オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC−10、HC−20、HC−100、HC−150、(HC−600、HC−2000) (以上、三井化学社製)などが挙げられる。
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン−ブタジエンラバー、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP−301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−300、AEROSIL−380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−974D、AEROSIL−972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
また、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG−1901X、クレイトンGG−1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG−1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
水添スチレン−ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
これらの増粘剤の中で、本発明の効果をさらに発揮させる点から、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
本発明では、さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1〜63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7〜3.4とすることがさらに好ましい。
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1〜63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。本発明では、上記1〜63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
摩擦体を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を用いることができ、これを、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS−17でのテーバー摩耗量が10mg以上となるように構成し、摩擦体を形成する。さらに、テーバー摩耗量が10mg以上となるように調整するために、摩擦体の材料に対して、より柔軟性を出すためのアルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルやフタル酸系可塑剤を添加してもよい。摩擦体が、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルやフタル酸系可塑剤を含むことによって、摩擦体がより摩耗しやすくなるため、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。さらに、摩擦体は、JIS K6203に規定されたデュロメータD硬度が30以上であることが好ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、摩擦体は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能である。