JP6682427B2 - 中温ナトリウム−金属ハライド電池 - Google Patents

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Description

本出願は、2013年9月25日出願の米国仮特許出願第61/882,516号(発明の名称:中温ナトリウム−ニッケルハライド電池)、2013年10月16日出願の米国仮特許出願第61/891,744号(発明の名称:中温ナトリウム−ニッケルハライド電池)、及び2013年11月1日出願の米国仮特許出願第61/898,617号(発明の名称:中温ナトリウム−金属ハライド電池)を優先権主張する。これらの出願は参照により本出願に引用される。
本発明は中温溶融ナトリウム−金属ハライド電池に関する。詳しくは、本発明は、従来のナトリウム/金属塩化物ZEBRA電池系と比較し、比較的低い融点を有するナトリウムハロアルミネート塩の溶融共晶混合物を使用し、従来のZEBRA電池系と比較して実質的により低い温度で電池を作動できる溶融ナトリウム−金属ハライド電池に関する。
電池は、種々の使用のための電気エネルギーを貯蔵し、放出するのに使用するデバイスとして知られている。電気エネルギーを生み出すために、電池は、代表的には化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。一般に、単電池は1つ以上のガルバニー電池を含み、それぞれの電池は、外部開路を通じる以外は電気的に絶縁された2つの半電池から作られる。放電中に、電気化学的還元が電池の正極で生じ、一方で負極では電気化学的参加が生じる。電池の正極および負極は、物理的に互いに接触できないが、これらの電極は、一般に少なくとも1種(またはそれ以上)のイオン伝導性で電気的に絶縁性の電解質(1種または複数)により、固体または液体状態あるいはそれらの組合せにおいて化学的に接続される。外部回路または負荷が負極の端子と正極の端子とに接続されると、イオンは電解質を移動しながら、電池は電子を外部回路に流す。
電池は種々の作動法により分類される。例えば、ただ一度だけ完全に放電するような電池は、一次電池または一時セルと呼ばれる。対照的に、放電および再充電を1回以上行う電池は二次電池または二次セルと呼ばれる。セルまたは電池の複数回の充放電特性は、それぞれの充放電サイクルのファラデー効率による。
ナトリウム系再充電可能電池は、種々の材料および設計から成るが、ほとんどの場合、ただし、全部ではないかも知れないが、高いファラデー効率を要求するナトリウム電池は、固体セラミック一次電解質膜のような固体一次電解質セパレーターを使用する。このような固体セラミック一次電解質膜を使用する主たる利点は、電池のファラデー効率を100%近くまで達成できるということである。実際に、ほとんどの他の電池において、電池の電極溶液の設計では、時間と共に混合してしまい、ファラデー効率が低下し、電池容量の損失が起る。
高いファラデー効率を必要とするナトリウム電池に使用される一次電解質セパレーターは、しばしばイオン伝導性ポリマー、イオン伝導性液体やゲルを浸透する多孔質材料または緻密セラミックから成る。これに関し、ほとんどの場合、ただし、全部ではないかも知れないが、商業的に入手可能な再充電可能ナトリウム電池は、溶融ナトリウム金属負極、ナトリウムβ’’−アルミナセラミック電解質セパレーター及び溶融正極から成る。公知の溶融正極は、溶融NiCl、NaCl及びNaAlClであり、ZEBRA電池と一般的に呼ばれる。ZEBRA電池は、通常270〜350℃の温度範囲で作動する。他の公知の溶融正極は溶融硫黄およびカーボンの複合材で、ナトリウム/硫黄電池と一般的に呼ばれる。
これらの従来の高温作動ナトリウム系再充電可能電池は、比較的高い比エネルギー密度を有すが電力密度は少なく限られているため、そのような再充電可能電池は、固定充電装置や無停電電源などの高い比エネルギー密度が必要とされ、高い電力密度が必要とされないある種の特別な応用分野に利用される。
従来のナトリウム系再充電可能電池は有利な点を有すにもかかわらず大きな欠点もある。その1つとして、ナトリウムβ’’−アルミナセラミック電解質セパレーターは、約270℃を超えるような温度においてより伝導性が高くなり、溶融ナトリウムに対する濡れ性がよくなるため、及び/又は、溶融正極が溶融状態を維持するために比較的高い温度を必要とする(例えば、約180℃を超える温度)ために、多くの従来のナトリウム系再充電可能電池は約270℃を超える高温で作動し、それにより重大な熱管理問題や熱気密問題が生じる。例えば、あるナトリウム系再充電可能電池は、電池からの熱を消散することや、負極および正極を比較的高温の作動温度に維持することが困難である。他には、ナトリウム系再充電可能電池の比較的高温の作動温度は、重大な安全性の問題が生じる。更に他には、ナトリウム系再充電可能電池の比較的高温の作動温度は、それに耐性があり、高温で作動可能な構成要素が必要である。そのような構成要素は高価である。更に他には、従来のナトリウム系電池を比較的高い作動温度に加熱するために比較的大きなエネルギーが必要であるため、そのような電池は作動が高価であり、エネルギー効率が悪い。
それ故、溶融ナトリウム系再充電電池可能な電池は入手できるものの、上述の問題に対する挑戦が存在する。従って、更なに改良点を増やしたり、従来の高温溶融ナトリウム系再充電可能な電池を、約220℃未満の温度で、好ましくは約180℃未満の温度で作動可能な他の溶融ナトリウム系再充電可能な電池に置き換えることが求められている。
本発明は、中温、溶融ナトリウム−金属ハライド再充電可能な電池に関する。本発明の溶融ナトリウム−金属ハライド電池は、従来のナトリウム−金属塩化物ZEBRA電池システムと比較すると、従来のZEBRA電池系と比較して実質的に低い温度で作動する電池を実現できる比較的低い融点を有する溶融共晶ナトリウムハロアルミネート塩混合物を使用する。
本発明のある実施態様において、これに限定されないが、再充電可能ナトリウムイオン電池は溶融状態の金属ナトリウムから成る負極を含む。正極はNaX及びMXの混合物から成り、XはCl、Br及びIから選択されるハロゲンであり、MはNi、Fe及びZnから選択される金属である。正極は、一般式NaAlX’4−δX”δで示される少なくとも2種の塩から成る溶融塩正極電解質中に配置され、0<δ<4、X’及びX”はCl、Br及びIから選択される異なるハロゲンである。ナトリウムイオン伝導性固体電解質は負極および正極を分離する。
混合溶融塩正極電解質は、一般式NaAlX’及びNaAlX”で示される種々のモル比の少なくとも2種の塩から成り、X’及びX”はCl、Br及びIから選択される異なるハロゲンである。ある実施態様において、これに限定されないが、δが0.4〜3.6である場合、NaAlX”に対するNaAlX’のモル比は、9:1〜1:9の範囲である。
正極は追加のNaX又はNaX化合物の混合物から成り、混合溶融塩正極電解質に対する添加モル比は、NaX:NaAlX’4−δX”δ=1:1〜3:1である。過剰のNaXは正極電解質を高塩基性にする。電池の作動温度において、正極および溶融塩正極電解質混合物は、溶融液体または、混合溶融塩正極電解質が主として液相を形成し、追加のNaX又はNaX化合物混合物が固体相を形成するような2相混合物である。
ある実施態様において、これに限定されないが、溶融塩正極電解質はNaAlBr2.81.2から成る。
ある実施態様において、これに限定されないが、NaXはNaBrから成る。
ある実施態様において、これに限定されないが、はNiBrから成る。
ある実施態様において、これに限定されないが、溶融塩正極電解質はNaAlBr2.81.2から成り、NaXはNaBrから成り、MXはNiBrから成る。
ある実施態様において、これに限定されないが、ナトリウムイオン伝導性固体電解質はNaSICON電解質材料から成る。NaSICON電解質材料は、電池の作動温度において高いナトリウム伝導性を有する。
ある実施態様において、これに限定されないが、電池は160〜220℃の温度範囲で作動する。
本発明のある実施態様において、これに限定されないが、再充電可能ナトリウムイオン電池は、溶融状態の金属ナトリウムから成る負極を含む。正極はNaX及びMXの混合物から成り、XはCl、Br及びIから選択されるハロゲンであり、MはNi、Fe及びZnから選択される金属である。正極は、一般式NaAlX’4−δ−ωX”δX’”ωで示される少なく3種の塩から成る混合溶融塩正極電解質中に配置され、X’、X”及びX’”は、Cl、Br及びIから選択されるそれぞれ異なるハロゲンであり、0<δ<4、0<ω<4及び0<δ+ω<4である。ナトリウムイオン伝導性固体電解質は負極と正極とを分離する。
混合溶融塩正極電解質は、種々のモル比のNaAlCl、NaAlBr及びNaAlIから成る。
正極は追加のNaX又はNaX化合物の混合物から成り、混合溶融塩正極電解質に対するモル比は、NaX:NaAlX’4−δ−ωX”δX’”ω=1:1〜3:1の範囲である。過剰のNaXは正極電解質を高塩基性にする。電池の作動温度において、正極および溶融塩正極電解質混合物は、溶融液体または、混合溶融塩正極電解質が主として液相を形成し、追加のNaX又はNaX化合物混合物が固体相を形成するような2相混合物である。
ある実施態様において、これに限定されないが、NaXはNaBrから成る
ある実施態様において、これに限定されないが、MXはNiBrから成る。
ある実施態様において、これに限定されないが、ナトリウムイオン伝導性固体電解質はNaSICON電解質材料から成る。NaSICON電解質材料は、電池の作動温度において高いナトリウム伝導性を有する。
ある実施態様において、これに限定されないが、電池は160〜220℃の温度範囲で作動する。
本発明の上述の要旨および利点が得られる方法を容易に理解するために、上述の簡単な説明よりも本発明のより具体的な記載を、添付の図面に示される具体的な実施態様を参照して説明する。これらの図面は本発明の代表的な実施態様を示したに過ぎず、本発明の要旨を限定するものではないと考えるべきで、本発明は、添付の図面の使用を通じて更なる特異性および詳細が説明される。
本発明の溶融ナトリウム−金属ハライド電池は、従来のナトリウム/金属塩化物ZEBRA電池系と比較し、比較的低い融点を有するナトリウムハロアルミネート塩の溶融共晶混合物を使用し、従来のZEBRA電池系と比較して実質的により低い温度で電池を作動できる。
図1は、溶融ナトリウム二次電池の代表的な実施態様の放電時におけるスキーム図である。 図2は、溶融ナトリウム二次電池の代表的な実施態様の充電時におけるスキーム図である。 図3は、正極電解質が過剰量のNaBrを含むNaAlBr:NaAlI=7:3(NaBr:AlBr:NaI:AlI〜NaAlBr2.81.2=35:35:15:15)の混合物から成るナトリウム/臭化ニッケル電池を185℃で作動させた場合のサイクル特性を示す。 図4は、図3に示す充電/放電曲線で、196.6時間において任意に選んだサイクルの詳細を示す。 図5は、図3に記載されるものと同じ方法で構築した第2のナトリウム/臭化ニッケル電池において、充電状態がより高く放電深度がより深く作動させた場合のサイクル特性を示す。
この明細書を通じて参照される「ある実施態様」、「1つの実施態様」または類似の語は、実施態様に関連して記載される具体的な要旨、構成および性能が本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。それ故、本明細書を通じて「ある実施態様において」、「1つの実施態様において」、「他の実施態様において」及び類似の語は、全て同じ実施態様を参照してもよく、また必ずしもそうでなくてもよい。更に、以下の記載は本発明に記載の種々の構成要素および要旨の幾つかの実施態様および実施例を参照するが、記載された実施態様および実施例の全ては、あらゆる点において単なる例示であり、如何なる方法においても本発明がこれらに限定されているわけではないと理解すべきである。
更に、記載される本発明の要旨、構造または性質は、一つ以上の実施態様をいかなる好適な方法で組合せてもよい。以下の記載は、本発明の実施態様の理解を通じて提供されるナトリウム負極、正極材料、液体正極電解質溶液、ナトリウムイオン伝導性電解質膜などの好適な数多くの具体例が提供される。本発明は、一つ以上の具体的な詳細なしで、又は他の方法、構成要素、材料などを伴って実施できることは当業者に理解できるであろう。他の実施態様において、よく知られた構造、材料および操作は、本発明の要旨を曖昧にすることを避けるために詳細を示したり記載したりしていない。
上述のように、二次電池は放電され再充電され、本明細書ではその両方の状態での電池配列および方法が記載される。その種々の形式において「再充電する」という語は2回目の充電を意味するが、1回目の又は最初の充電という意味にも有効で適用できる(あるいはその逆にも)と当業者は理解すべきである。それ故、この明細書では、「再充電する」、「再充電された」及び「再充電可能な」という語は、「充電する」、「充電された」及び「充電可能な」という語にそれぞれ置換えることが出来る。
本発明は、より高温(>280℃)で作動する従来のナトリウム/金属ハロゲン化物のZEBRA電池系と比較して、比較的低温(<220℃)で作動するナトリウム/金属ハライド溶融塩電解質電池に関する。本発明のナトリウム/金属ハライド電池は、液体ナトリウムから成る負極と、不溶の遷移金属ハライドから成る正極と、正極から負極を分離するNaSICON固体電解質膜とを使用し、遷移金属ハライドとしては金属臭化物(NiBr又はFeBr又はZnBr又はこれらの臭化物の混合物)が好ましい。本発明の電池と従来のZEBRA電池系との他の違いは、溶融ナトリウムテトラクロロアルミネート(NaAlCl)の第2の電解質を正極部分に含むナトリウム/金属塩化物電池と違い、本発明はナトリウムハロアルミネート塩の溶融共晶混合物を使用する点である。
ナトリウムハロアルミネートは、ナトリウムクロロアルミネート(NaAlCl)、ナトリウムテトラブロモアルミネート(NaAlBr)及びナトリウムテトライオドアルミネート(NaAlI)から選択される。設計の目的のため、ここに記載される2化合物の共晶混合物の式は、NaAlX’4−δX”で示され、X’及びX”はCl、Br及びIから選択される2種の異なるハロゲンであり、0<δ<4である。設計の目的のため、ここに記載される3化合物の共晶混合物の式は、NaAlX’4−δ−ωX”δX’”ωで示され、X’、X”及びX’”はCl、Br及びIから選択される3種の異なるハロゲンであり、0<δ<4、0<ω<4及び0<δ+ω<4である。
ここに記載されるナトリウムハロアルミネート塩は、以下のナトリウムハライド及びアルミニウムトリハライドの所定比で示される。
NaX+AlX⇔NaAlX
XはCl、Br及びIから選択される。
NaX:AlXの比率が1:1の場合、ナトリウムハロアルミネートは中性と考えられる。AlXが過剰に存在すると、混合物は酸性となる。NaXが過剰に存在すると、混合物は塩基性となる。
臭化ニッケル等の金属ハライドを使用する一つの利点は、本発明における正極は、200℃未満の温度において金属(ニッケル)塩化物系で観測される樹枝状結晶を軽減することにより、より長期間のサイクルを可能と出来ることである。更に、以下に説明するNaSICON膜の使用は、より低い温度において(<200℃)β”−アルミナよりも伝導性が良好で、本発明のナトリウム−臭化ニッケル電池で実際的な電流/電圧特性を達成できる。
本発明において提供される溶融ナトリウム−金属ハライド二次電池は、約100〜250℃の作動温度で機能する。本発明の電池はいかなる好適な構成要素から成っていてもよいが、図1は、ナトリウム金属負極20を含む負極室15と、正極から成る正極室25とから成る溶融ナトリウム二次電池10の代表的な実施態様を示す。正極は集電体30と、正極電解質35中に配置されるNi、Zn及びFeから選択される金属とを含み、当該正極電解質は、ナトリウムハロアルミネート塩(ハロゲン化アルミン酸塩、NaAlCl、NaAlBr及びNaAlI)の溶融共晶混合物から成る。ナトリウムイオン伝導性電解質膜40は正極および正極電解質35から負極を分離する。ナトリウムイオン伝導性電解質膜40は、第2の端子50から第1の端子45を分離する。記載される電池10の理解を深めるため、電池がいかに機能するかを以下に簡単に説明する。この説明に引き続いて、図1に示す電池のそれぞれの構成要素について詳細に説明する。
溶融ナトリウム2次電池10が機能する方法について、電池はいかなる好適な方法によって機能してもよい。一例において、図1は、電池10が放電時に、電子(e)は負極20から(例えば第1の端子45を通じて)流れ、ナトリウムは負極20から酸化されてナトリウムイオン(Na)を形成することを示す。図1は、これらのナトリウムイオンが、それぞれナトリウムイオン伝導性膜40を介してナトリウム負極20から正極電解質35に移送されることを示す。
対照的な例として、図2は、電池10が放電中(図1に示すような)とは逆の場合を示し、二次電池10が再充電され、電子(e)が充電器のような外部電源(図示せず)からナトリウム負極20に流れ、化学反応が起こる。具体的に、図2は、電池10が再充電される際、ナトリウムイオン(Na)が電解質膜40を介して正極電解質35から負極20にそれぞれ移送され、ナトリウムイオンは還元されてナトリウム金属(Na)を形成することを示す。
電池10の種々の構成要素に関し、電池は、上述のように負極室15及び正極室25から成る。これに関し、電池10が所望に機能するのであれば、この2室はいかなる好適な形状から成っていてもよく、いかなる好適な他の性質を持っていてもよい。例えば、負極室および正極室は、チューブ状、矩形状または他のいかなる好適な形状を有していてもよい。更に、これらの2室は、互いにいかなる好適な空間的関係を有していてもよい。例えば、図2は、負極室15及び正極室25が互いに近接する形態を示すが、他の実施態様(図示せず)において、2室の内容物が電解質膜40および他の隔壁によって分離されたまま、一つの室(例えば負極室)が、他方の室(例えば正極室)内に少なくとも一部が配置されてもよい。
負極20に関し、電池10が所望に機能する(例えば、放電および充電できる)のであれば、電池10はいかなる好適なナトリウム負極20から成っていてもよい。好適なナトリウム負極材料の例としては、これに限定されないが、実質的に純粋なナトリウム試料および他の好適なナトリウム含有負極材料から成るナトリウムアロイがあげられる。ある実施態様において、負極は実質的に純粋な所定量のナトリウムを含むか、それのみから成る。そのような実施態様において、純粋なナトリウムの融点は98℃付近であるため、ナトリウム負極はそれを超える温度で溶融する。
正極集電体30に関し、電池が所望に充放電するのであれば、正極室25はいかなる好適な正極から成っていてもよい。例えば、正極は、図1及び2中でMとして示される金属と組合せて実際上いかなる集電体30から成っていてもよく、正極電解質35はナトリウムハロアルミネート塩の溶融共晶混合物から成る。ある実施態様において、これに限定されないが、金属(M)はNi、Zn及びFeから選択される。ある実施態様において、これに限定されないが、正極集電体は、ワイヤー状、フェルト状、プレート状、チューブ状、メッシュ状、発泡体および/または他の好適な集電体形状から成っていてもよい。
ある実施態様において、これに限定されないが、電池10が放電中に、負極および正極において生じる反応、ならびに総反応の例を以下に示す。
負極:2Na⇔2Na+2e
正極:M(X)+2e⇔M+2X
総反応:2Na+M(X)⇔M+2NaX
XはCl、Br及びIから選択されるハロゲンである。更に、電池10が充電中(または再充電中)に、負極および正極において生じる反応、ならびに総反応の例を以下に示す。
負極:2Na+2e⇔2Na
正極:M+2X⇔M(X)+2e
総反応:M+2NaX⇔2Na+M(X)
上述の反応において、Mは2価の酸化数(M2+)を有するが、正極は1価、3価、4価、あるいは他の酸化数を有する金属から成っていてもよい。
本発明において、ナトリウムハロアルミネート塩の溶融共唱混合物から成る正極電解質35は、電池10が所望に機能するような良好なナトリウムイオン伝導性を有することを発見した。正極電解質35は、電解質膜40よりも高いナトリウムイオン伝導性を有するように意図されている。ナトリウムハロアルミネート塩の溶融共晶混合物のナトリウム伝導性は、200mS/cm〜500mS/cmである。NaSICONの伝導性は、電池の作動温度が150〜200℃において、約80〜約220mS/cmである。
ナトリウムイオン伝導性電解質膜40に関し、膜は、ナトリウムイオンを選択的に移送し、溶融ナトリウム負極と正極電解質とを伴って電池10が機能するようないかなる好適な膜から成っていてもよい。ある実施態様において、電解質膜は、NaSICON型(sodium Super Ion CONductive:ナトリウム超イオン伝導)材料から成る。そのような実施態様において、NaSICON型材料は、記載される電池10に好適に使用できるのであれば、いかなる公知の又は新規のNaSICON型材料から成っていてもよい。ある実施態様において、これには限定されないが、NaSICON型組成物の例として、NaZrSiPO12、Na1+xSiZr3−x12(xは1.6〜2.4から選択される)、YがドープされたNaSICON(Na1+x+yZr2−ySi3−x12、Na1+xZr2−ySi3−x12−y(x=2、y=0.12)及びFeがドープされたNaSICON(NaZrFe12)が挙げられる。実際に、ある実施態様において、NaSICON型膜はNaSiZrPO12から成る。他の実施態様において、NaSICON型膜は、サーメットに支持されたNaSICON膜などの公知または新規の複合体から成る。そのような実施態様において、NaSICON膜複合体は、いかなる好適な構成要素から成っていてもよく、これに限定されないが、NiO/NaSICON又は他の好適なサーメット層と、緻密NaSICON層とから成る多孔質NaSICON−サーメット層が挙げられる。他の実施態様において、NaSICON膜は単斜セラミックから成る。
電池の電解質膜40がNaSICON型材料から成る場合、NaSICON型材料は電池10にいくつかの利点を付与する。一例として、そのような膜は、選択的にナトリウムイオンを移送しながら負極20と正極電解質35とが混ざらないように出来るため、そのような膜は、電池の最小の容量損失とすることができ、常温において比較的安定な寿命を有する。
端子45及び50に関し、電池10は、電池が外部回路(これに限定されないが、1つ以上の電池)と電気的に接続できるのであればいかなる好適な端子を有していてもよい。これに関し、端子はいかなる好適な材料、形状、サイズから成っていてもよい。
上述の構成要素に加えて、電池10は任意に他のいかなる好適な構成要素を有していてもよい。図2は、これに限定されないが、熱管理システム55、60を有する電池10の実施態様を示す。個々の独立した熱管理システムが負極室および正極室と関連している。代わりに、単独の共通の熱管理システムが一室内または電池10の外部に配置されてもよい。そのような実施態様において、電池は、電池が好適な作動温度範囲内に維持できるようないかなる好適な熱管理システムを有していてもよい。そのような熱管理システムは、これに限定されないが、例えばヒーター、クーラー、一つ以上の温度センサー及び適切な温度コントロール回路から成る。
記載される電池10はいかなる好適な温度で機能してもよい。換言すれば、電池が放電および/または再充電する際、ナトリウム負極および正極電解質はいかなる好適な温度であってもよい。負極室および正極室は同じ温度で作動させても異なる温度で作動させてもよい。実際に、ある実施態様において、電池は、約260℃、約240℃、約220℃から選択される作動温度以下で機能する。更に、そのような実施態様において、電池が機能する際、負極室および/または正極室の温度は、約160℃、約170℃、約180℃および約200℃から選択される温度以上である。実際に、ある実施態様において、電池が機能する際、負極室および/または正極室の温度は約160℃〜約260℃である。他の実施態様において、電池は、約180℃〜約220℃の温度で機能する。更に他の実施態様において、電池が機能する際、負極室および/または正極室の温度は約200℃±約10℃である。
ある実施態様において、温度範囲は使用する電解質の融点による。例えば、ある実施態様において、電池は、電解質の融点よりも少なくとも10〜20℃高く作動させる。電解質は温度が高くなるとその伝導性が高くなるため、電解質に関する限り温度の上限はない。ある実施態様において、例えば、ナトリウムが約98℃で溶融し、NaAlClI電解質は約85℃の融点を有する。それ故、電池を100℃以下で作動させることが可能である。
以下の実施例は、本発明の要旨および範囲の種々の実施態様を示すために記載される。これらは、例示の目的のみで与えられるものであり、本発明に従った数多くの実施態様を総合するものではなく、除外するものでもないと理解すべきである。
実施例1:
この実施例で使用した溶融ナトリウム−金属臭化物二次電池の構成の一つは、NaSICON(Na Super Ionic Conductor、ナトリウム超イオン伝導)ナトリウム電解質膜で、ガラスチューブ(又はアルミナチューブ)にガラスで封入されており、溶融状態のナトリウム金属(負極)が充填されている。ステンレススチール又はNi或いはMo金属集電体棒がナトリウム金属に浸され、負極に電気的に接触している。ガラスチューブは他のガラスチューブの内側に配置され、チューブの周りを密封するための蓋を備え付けた別のガラス瓶の中に配置し、それをつり下げ、ガラス瓶の中に空間を作った。
不溶正極がNaSICON膜に対して反対側の瓶の内部に配置される。不溶正極は、Ni金属粒子とNaBr粉末とを十分に混合し、プレスしてペレットにして構築されている。正極の多孔性は、15〜70%の範囲で、好ましくは35〜55%の範囲である。棒状、メッシュ又は他の好適な形状のニッケル又はカーボン集電体が使用され、正極と電気的に接続する。NaBrの初期量に基づく本実施例で使用される正極の理論容量は約200mAhである。ある実施態様において、Niの初期量は1.31gであり、NaBrの初期量は0.77gである。
溶融塩電解質を含む正極部分はNaSICON固体電解質膜によって負極部分から分離され、NaSICON固体電解質膜のNaイオンが伝導する活性部分の径が0.72cm)で、厚さが0.1cmである。
実施例2:
数種の異なるNaAlBr+NaAlI(又はNaAlCl)溶融塩電解質混合物が、正極が電解質の内側に浸されるように実施例1で使用された瓶中に配置された。この電解質は、正極内でナトリウムイオンを固体電解質から金属臭化物反応サイトに伝導させるのを助ける。混合NaAlBr+NaAlI(又はNaAlCl)溶融塩電解質は共晶型であり、混合組成により150℃〜180℃の温度で融解する。これらの融点は、以下の表1に示すように、個々の塩の融点よりも低い。表1は、化合物単体と共に、NaAlBrとNaAlIの種々の混合比を有する三種の異なる混合物の融点を示す。NaAlBrがリッチな組成(組成物2又は3)は、本発明の電池の作動において好適である。特に、過剰なナトリウムハライド(NaBr:NaIの比が3:1)を有し、NaBr:AlBr:NaI:AlIを35:35:15:15の比で混合したNaAlBr2.81.2混合物に対応する、表3行目の組成物3が開示される電池の作動で使用された。具体的には、この実施例では、NaAlBr2.81.2の1モルに対しNaBrを0.91モルとNaIを0.39モル過剰に添加した。
Figure 0006682427
過剰な臭化ナトリウム及びヨウ化ナトリウムの添加目的は以下の5つである。
[1]ニッケル−ニッケルハライドカソードの高い充電/放電レートを達成するためには、ニッケルハライドの溶解性は、溶融塩電解質中で最小とすべきである。電解質の過飽和は、ニッケルハライドの溶解性を更に減少させ、充電/放電プロセス中に、NiのNiX(本実施例においてNiBr)への速やかな可逆変換電極反応速度を可能とする。
[2]中性ナトリウムハロアルミネート溶液(NaX:AlXの比率が1:1、単独または混合ハロゲンが存在するにかかわらず、例えば、NaAlBr2.81.2)の使用は、充電プロセス中にナトリウムが失われるために、酸性環境下に進み(すなわちNaX欠乏)ニッケルハライドの溶解性においてリスクが存在する。溶液を中性の状態で作動を始めたとしても、電解質は部分的に酸性と成り得る。そのハライドが形成された後にカソードからナトリウムハライド(本実施例においてはNaBr)が消失されてしまうため、これはカソードの容量損失につながる。ニッケルハライドの溶解性もまた、酸性ナトリウムハロアルミネート溶液においてより高くなる。電解質への過剰なナトリウムハライドの添加は、カソードからのNaBr及びNiBrの消失を防ぐ。
[3]過充電によってカソードの容量が増加することが可能な電位を出力する。電解質中の過剰なNaハライドは、過充電後の電極において新たなニッケルハライドを形成させる。この形成により、サイクルを引き続き長く行った際にカソードの電池容量を維持できる。
[4]ZEBRA電池はほぼ中性/若干の塩基性の塩化アルミネート正極液を使用し、本発明では「高い塩基性」の電解質を使用する。実質的な違いは、過剰な塩を伴う中性電解質対塩基性電解質の液相組成物間の違いである。二種の液相組成物の相違が電池特性を向上させることも可能である。ある実施例において、これに限定されないが、若干塩基性の電解質は約50.1%〜53%のナトリウムハライドを含む。高い塩基性の電解質は、約55%以上のナトリウムハライド(例えば、NaX:AlX=55:45)から成る。ある実施態様において、過剰のナトリウムハライド塩の比率は70:30(NaX:AlX)である。
米国特許出願公開第2014/0170443A1号に記載されているように、電解質中に過剰のナトリウムハライドを有することは、NaSICON膜の高温における高い腐食保護性を付与し、電池の作動寿命を長くする。NaX溶液でのNaSICONの高温安定性は、Nal>NaBr>NaClの順となる。
実施例3:
ニッケル金属正極の充電/放電中の実施例1に記載される溶融ナトリウム−金属臭化物二次電池における電極反応を以下に示す。
[0080]
NiBr+2Na→Ni+2NaBr 約180℃においてE=2.48V
放電状態に初期の正極組成がNi金属および臭化ナトリウムとして電池は構成される。電池は、過剰のNaBrを含むNaAlBr:NaAlI=7:3(NaBr:AlBr:NaI:AlI〜NaAlBr2.81.2=35:35:15:15)の混合物から成る正極電解質を含んでいた。図3は、電池を185℃で作動させた際のサイクル特性を示す。電池の最初のC/10レート(正極の容量が200mAhを基準に)における充電は60%充電状態(SOC)とし、次いで、60〜40%>SOC(20%>放電深度)の充電範囲状態でサイクルを行った。充放電Cレートは、電池がNaSICON膜面積1cmあたり100mAの電流密度に対応するC/3レートにサイクルするまで徐々に増加した。
図3は、電池をこのC/3レートで100サイクル作動させた際のサイクル特性を示す。100サイクル後に、電池は更に、91サイクルを超えるまで同じ電流密度においてより広い充電状態(SOC、60〜20%>)のサイクルを行った。任意に選択した196.6時間におけるサイクルの詳しい充電/放電曲線を図4に示す。このサイクルの分析により、クーロン効率は約100%、エネルギー効率は83.1%を示した。充電および放電での膜面積で規格化した単位面積当たりの比抵抗(ASR)の平均は、それぞれ2.3V及び2.17Vであった。
上述と同じ方法で二次電池を構築し、更に高い充電状態(SOC)範囲(90−10%>)、すなわち高い放電深度(約80%)において作動させた。作動結果のデータを図5に示す。この電池の電流効果は98%を超え、更に93サイクルを超えて電池は実用的なクーロン効率を示した。両実施例の電池のエネルギー効率は80%を超えた。
本発明の具体的な実施態様および実施例が示され、記述されたが、本発明の要旨から逸脱しない範囲において数多くの改変が可能であり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ保護されるものである。

Claims (18)

  1. 溶融の金属ナトリウムから成る負極と、NaX及びMX(XはCl、Br及びIから選択されるハロゲンであり、MはNi、Fe及びZnから選択される金属である)の混合物から成る正極と、負極および正極の間に配置されるナトリウムイオン伝導性固体電解質とから成る再充電可能ナトリウムイオン電池であって、NaAlX’4−δX”δ(0<δ<4で、X’及びX”は、Cl、Br及びIから選択される異なるハロゲンである)の式で示される混合溶融塩正極電解質中に正極が配置され、正極がさらに追加のNaX又はNaX化合物の混合物から成り、追加のNaX又はNaX化合物の混合物のNaXと溶融塩正極電解質とのモル比がNaX:NaAlX’4−δX”δ=1:1〜3:1であることを特徴とする再充電可能ナトリウムイオン電池。
  2. 溶融塩正極電解質が、一般式NaAlX’とNaAlX”との少なくとも二種の混合物であり、δの値が0.4〜3.6の場合NaAlX” に対するNaAlX’ のモル比が9:1〜1:9である請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  3. 正極および混合溶融塩正極電解質が溶融液体または2相混合物であり、混合溶融塩正極電解質が主として液体相であり、追加のNaX又はNaX化合物の混合物が固体状態である請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  4. 溶融塩正極電解質がNaAlBr2.81.2から成る請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  5. NaXがNaBrから成る請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  6. MXがNiBrから成る請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  7. 溶融塩正極電解質がNaAlBr2.81.2から成り、NaXがNaBrから成り、MXがNiBrから成る請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  8. 正極が更に追加のNaBrから成り、追加のNaBrと混合溶融塩正極電解質とのモル比が、NaBr:NaAlBr2.81.2=1:1〜3:1の範囲である請求項7に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  9. ナトリウムイオン伝導性固体電解質がNaSICON電解質材料から成る請求項8に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  10. ナトリウムイオン伝導性固体電解質がNaSICON電解質材料から成る請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  11. 電池の作動温度が160〜220℃である請求項1に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  12. 溶融状態の金属ナトリウムから成る負極と、NaX及びMX(XはCl、Br及びIから選択されるハロゲンであり、MはNi、Fe及びZnから選択される金属である)の混合物から成る正極と、負極および正極の間に配置されるナトリウムイオン伝導性固体電解質とから成る再充電可能ナトリウムイオン電池であって、正極は、NaAlX’4−δ−ωX”δX’”ω(X’、X”及びX’”はCl、Br及びIから選択される3種の異なるハロゲンであり、0<δ<4、0<ω<4及び0<δ+ω<4である)の式で示される混合溶融塩正極電解質中に配置されることを特徴とする再充電可能ナトリウムイオン電池。
  13. 混合溶融塩正極電解質が種々のモル比のNaAlCl、NaAlBr及びNaAlI の混合物から成る請求項12に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  14. 正極がさらに追加のNaX又はNaX化合物の混合物から成り、追加のNaX又はNaX化合物の混合物のNaXと溶融塩正極電解質とのモル比がNaX:NaAlX’4−δ−ω X” δ X’”ω=1:1〜3:1である請求項12に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  15. 正極および混合溶融塩正極電解質が溶融液体または2相混合物であり、混合溶融塩正極電解質が主として液体相であり、追加のNaX又はNaX化合物の混合物が固体状態である請求項14に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  16. ナトリウムイオン伝導性固体電解質がNaSICON電解質材料から成る請求項14に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  17. 電池の作動温度が160〜220℃である請求項14に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
  18. NaXがNaBrから成り、MXがNiBrから成る請求項14に記載の再充電可能ナトリウムイオン電池。
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