(実施形態1)
本実施形態の電磁石装置1及び電磁石装置1を用いた電磁継電器100について、図1、図2及び図3を参照して説明する。ただし、以下に説明する電磁継電器100は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本実施形態では図1に示す上方向の矢印の向きを上方向と定義し、右方向の矢印の向きを右方向として説明するが、この方向は便宜上定めた方向であり、この方向に限定される趣旨ではない。
本実施形態の電磁継電器100は、例えば電気自動車に搭載され、電気自動車の走行用のバッテリと負荷とをつなぐ電路に接続されて用いられる。電磁継電器100は、電気自動車のECU(Electronic Control Unit)からの制御信号に応じて、走行用のバッテリと負荷との間を電気的に接続又は遮断して、走行用のバッテリから負荷への直流電力の供給状態を切り替える。
まず、電磁石装置1について説明する。電磁石装置1は、励磁コイル2と、固定子3と、可動子4と、継鉄5と、継鉄延長部6とを備える。本実施形態の電磁石装置1はさらに、復帰ばね32と、筒体53とを備えている。電磁石装置1は、励磁コイル2への通電時に励磁コイル2で生じる磁束によって固定子3に可動子4を吸引し、可動子4を第2の位置から第1の位置へ移動させる。
継鉄5と、継鉄延長部6と、固定子3と、可動子4とは各々、磁性材料から形成され、励磁コイル2の通電時に生じる磁束の磁路を形成する。
継鉄5は、継鉄上板51(第1端部)と、継鉄下板52(第2端部)と、継鉄側板50とを具備している。継鉄5は、例えば鉄、SUS(Steel Special Use Stainless)などの材料からなる。
継鉄上板51及び継鉄下板52の各々は矩形板状に形成されている。継鉄上板51及び継鉄下板52は、一方向D1に並べてられていて、かつ一方向D1と直交する面と平行に配置されている。継鉄側板50は、継鉄上板51の四辺及びその四辺の各々に対応する継鉄下板52の四辺を連結する。本実施形態の継鉄側板50と継鉄下板52とは1枚の板から一体に形成されている。以下では、励磁コイル2の中心軸方向を上下方向とし、励磁コイル2から見て継鉄上板51側を上方、継鉄下板52側を下方として説明するが、電磁継電器100の使用形態を限定する趣旨ではない。
継鉄上板51と継鉄下板52と継鉄側板50とで囲まれた空間には、励磁コイル2と、継鉄延長部6と、筒体53と、固定子3の一部とが配置されている。また筒体53内には、上述した固定子3の一部と、可動子4とが配置されている。励磁コイル2は、中心軸が一方向D1(上方向)に沿うように継鉄上板51と継鉄下板52との間に配置されている。
筒体53は、円筒状の周壁532と、周壁532の底面を構成する底板531とからなる有底円筒状に形成されている。筒体53は非磁性材料で形成されている。筒体53は、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように配置されている。筒体53の開口部の縁部分は、継鉄上板51に固定されている。筒体53の底板531は、継鉄延長部6の内側に嵌合する。周壁532の一部は継鉄延長部6に覆われている。継鉄延長部6は、その下端部が継鉄下板52の孔に嵌合している。また、継鉄下板52は、可動子4に対して固定子3とは反対側に配置されていることになる。
筒体53は、固定子3と可動子4とを周壁532の内側に収納している。可動子4は、固定子3の下端面よりも下方向に配置されている。可動子4と固定子3とは各々、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように一方向D1(上方向)に並んで配置されている。
固定子3は固定鉄心である。固定子3は、継鉄上板51の下面の中央部から下方に突出し、下方に向けて開口している有底筒状に形成されている。固定子3の上端部は、継鉄上板51の中央部に形成された嵌合孔に嵌合している。固定子3は、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように継鉄上板51に固定されている。固定子3の外径は、後述する継鉄延長部6の内径よりも小さく形成されている。固定子3における継鉄上板51の下端面から下方向に突き出た部位(固定子3の一部)は、筒体53に収納されている。
固定子3は、下方に向けて開口している有底筒状に形成されている。固定子3は、継鉄上板51と磁気的に結合されている。本実施形態の固定子3は、継鉄5と別体に形成されている。固定子3は、例えば電磁ステンレス鋼、磁性紛体(磁性粉末)、フェライトなどで形成されている。固定子3の中心軸周辺に形成されている収納空間33には、復帰ばね32が収納されている。
可動子4は可動鉄心である。可動子4は、円柱状に形成されている。可動子4は、例えば電磁ステンレス鋼、磁性紛体(磁性粉末)、フェライトなどで形成されている。なお、磁性粉末を用いる場合、可動子4及び固定子3は、磁性粉末と合成樹脂などの絶縁材料とを混合し、成型、熱硬化することによって形成される。可動子4の中央部には、可動子4と同軸となるようにねじ孔が形成されている。そのねじ孔には、後述する棒状のシャフト41がねじ込まれている。シャフト41は可動子4に固定されている。
可動子4は、筒体53に収納された状態で、固定子3の下方に配置される。可動子4の上端面は固定子3の下端面に対向している。可動子4の外径は固定子3の外径よりもわずかに小さく形成されている。そのため可動子4の外径は継鉄延長部6の内径よりも小さくなっており、継鉄延長部6の内側を継鉄延長部6の内側面に沿って上方向又は下方向に移動することができる。例えば可動子4は、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように配置された状態で、一方向D1に沿って移動できる。可動子4は、励磁コイル2に電流が流れた際に励磁コイル2に生じる磁束F3によって固定子3に吸引されて一方向D1へ移動し、かつ固定子3に接する位置まで移動する。可動子4は、その上端面が固定子3の下端面に接する第1の位置と、その上端面が固定子3の下端面から離れて接していない第2の位置との間で移動可能に構成されている。以下、固定子3における可動子4と接する下端面(固定子3における可動子4と接する部位)のことを接触面31と呼ぶ。つまり可動子4が接触面31に接した位置が第1の位置となる。また、本実施形態における第2の位置とは、シャフト41及び可動接触子113を介して可動子4を上方へ付勢する接圧ばね114のばね力と、可動子4を下方へ付勢する復帰ばね32のばね力とがつり合った状態における可動子4の位置のことである。
復帰ばね32は、固定子3の内側に配置されており、可動子4を下方へ付勢するコイルばねである。可動子4が第2の位置にある場合、復帰ばね32の下端は収納空間33から下方に突き出ている。可動子4が第1の位置にある場合、復帰ばね32は可動子4の上端面に接して可動子4から上向きの力を受けて縮み、収納空間33に収まる。そのため、可動子4は、第1の位置で固定子3と接する。
筒体53の深さは、底板531から固定子3の接触面31までの距離が可動子4の上下方向の寸法よりも大きくなるように定められている。具体的に言うと、筒体53の深さは、可動子4が固定子3に接した状態で、可動子4の下端面と筒体53の底板531との間にギャップ長G1が生じるように定められている。
継鉄延長部6は、両端が開口している円筒状に形成されている。継鉄延長部6の下端部は、継鉄下板52の中央部に形成された嵌合孔に嵌合している。継鉄延長部6は、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように継鉄下板52に固定されている。つまり継鉄延長部6は継鉄下板52に設けられている。継鉄延長部6は、継鉄下板52の上面から一方向D1に沿って上方に突出している。継鉄延長部6は、継鉄下板52の上面から、固定子3の接触面31よりも一方向D1へ突出するように形成されている。つまり、継鉄延長部6における継鉄下板52の上面からの突出寸法L3が、継鉄下板52の上面から固定子3の接触面31までの寸法L2よりも大きくなるように定められている。本実施形態の継鉄延長部6の突出寸法L3は、寸法L2よりも接触面31突出寸法L1だけ突出するように定められている。継鉄延長部6は、突出寸法L1だけ接触面31より上方に突出していることにより、一方向D1と直交する方向において固定子3の外周部分と重なる重複部を有する。継鉄延長部6は、重複部において固定子3と磁気的に結合されている。また継鉄延長部6の内側には、筒体53を介して可動子4が配置されているので、継鉄延長部6は可動子4と磁気的に結合されている。つまり継鉄延長部6は、継鉄5と固定子3と可動子4との各々に磁気的に結合されている。
上述した構成により、可動子4は、励磁コイル2に通電されていないとき(非通電時)には、固定子3との間に磁気吸引力が生じないため、復帰ばね32のばね力によって第2の位置に位置することになる。一方、励磁コイル2に通電されると、可動子4は、固定子3との間に磁気吸引力が生じるため、復帰ばね32のばね力に抗して上方に引き寄せられ第1の位置に移動する。
このように、電磁石装置1は、励磁コイル2の通電状態の切り替えにより可動子4に作用する吸引力を制御し、可動子4を上方向又は下方向に移動させる。
次に、電磁継電器100について説明する。電磁継電器100は、電磁石装置1と、接点装置11とを備える。接点装置11と電磁石装置1とは一方向D1に並べて配置されている。本実施形態の電磁継電器100は、例えば電気自動車に搭載され、電気自動車の走行用のバッテリと負荷とをつなぐ電路に接点装置11を挿入するように接続されて用いられる。
本実施形態の電磁継電器100はさらに、シャフト41と、ケース16と、連結体17と、励磁用電源に接続される一対の入力端子とを備えている。一対の入力端子の各々は、励磁コイル2の両端に電気的に接続されている。一対の入力端子は、電気自動車のECUからの制御信号に応じてオンとオフとが切り替わるスイッチング素子を介して、励磁用電源に接続されている。電気自動車のECUは、スイッチング素子をオン又はオフに切り替えることにより、励磁コイル2に流す電流を制御する。
本実施形態の接点装置11は、一対の固定接点122と、一対の可動接点121と、一対の接点台111,112と、可動接触子113と、接圧ばね114とを有している。一対の接点台111,112は、導電性材料から形成されており、対応する固定接点122の各々を支持する。可動接触子113は、一対の可動接点121を支持する。接圧ばね114は、可動接点121が固定接点122に接する際の接圧を確保するために設けられている。接点装置11は、可動子4の移動に伴って可動接点121が移動することにより、可動子4が固定子3に接するときに可動接点121が固定接点122に接する閉状態となる。接点装置11は、可動子4の移動に伴って可動接点121が移動することにより、可動子4が固定子3に接していないときに可動接点121が固定接点122に接していない開状態となる。
接点装置11は、固定接点122及び可動接点121を一対ずつ備えることにより、接点装置11が閉じた状態で一対の接点台111,112間が可動接触子113を介して短絡する。したがって、接点装置11は、走行用のバッテリからの直流電力が、一対の接点台111,112及び可動接触子113を通して負荷へ供給されるように、バッテリと負荷との間に挿入されている。
接点装置11における一対の接点台111,112は、電磁石装置1の上方において一方向D1と直交する平面内に並ぶように配置されている。一対の接点台111,112の各々は、その平面内での断面形状が円形状となる円柱状に形成されている。一対の接点台111,112は、継鉄5に接合されたケース16に固定されている。ケース16は、下面が開口し、上面に上板161を有する箱状に形成されており、継鉄上板51との間に固定接点122及び可動接点121を収納する。ケース16は、たとえばセラミックなどの耐熱性材料より形成されており、その開口周部が継鉄上板51の上面の周縁部に対して、連結体17を介して接合されている。
一対の接点台111,112の各々の下端部には固定接点122が設けられている。一対の接点台111,112は、ケース16の上板161に形成された丸孔に挿通されてケース16に接合されている。一対の接点台111,112の各々の上端部は、上板161から上方に露出している。その上端部の左右方向の寸法は、上板161から下方に突き出ている一対の接点台111,112の各々の外径よりも大きくなっている。
本実施形態の電磁継電器100におけるケース16と連結体17と継鉄上板51と筒体53とは、内部に気密空間を形成する気密容器を形成している。気密容器内には水素を主体とする消弧ガスが封入されている。これにより、気密容器内に収納されている固定接点122及び可動接点121において開極する際にアークが発生したとしても、アークは消弧ガスによって急速に冷却され迅速に消弧可能になる。なお、本実施形態では、ケース16と連結体17と継鉄上板51と筒体53とにより、内部に気密空間を形成する気密容器を形成しているが、固定接点122及び可動接点121は気密容器に収納される構造に限らない。
可動接触子113は、導電性材料から矩形板状に形成されており、その長手方向の両端部を一対の接点台111,112の下端部に対向させるように一対の接点台111,112の下方に配置されている。可動接触子113のうち、各接点台111,112に設けられている固定接点122に対向する各部位には、可動接点121がそれぞれ設けられている。可動接触子113の中央部には、棒状のシャフト41を通すための孔が形成されている。その孔は、シャフト41の軸と直交する方向の寸法よりもわずかに大きくなるように形成されている。そのためシャフト41は可動接触子113に対して上下方向に移動自在となっている。
可動接触子113は、可動子4の移動に伴って上方向又は下方向に移動する。これにより、可動接触子113に設けられている各可動接点121は、それぞれ対応する固定接点122に接する閉位置と、固定接点122から離れた開位置との間で移動する。可動接点121が閉位置にあるとき、つまり接点装置11が閉じた状態では、接点台111と接点台112とは可動接触子113を介して短絡する。したがって、接点装置11が閉じた状態では、電気自動車の走行用のバッテリから負荷に直流電力が供給される。なお、本実施形態では可動接点121と可動接触子113とは別体に形成されているが、一体に形成されていてもよい。
接圧ばね114は、固定子3と可動接触子113との間に配置されており、可動接触子113を上方へ付勢するコイルばねである。接圧ばね114のばね力は復帰ばね32のばね力よりも小さく設定されている。
シャフト41は、非磁性材料にて棒状に形成されている。シャフト41は、可動子4の移動に伴って可動接触子113を移動可能な状態にする。シャフト41の上端部は、シャフト41が通されている可動接触子113の孔の周部に重なる鍔部42が形成されている。シャフト41は、接圧ばね114と固定子3と復帰ばね32との内側を通された状態で、その下端部が可動子4に固定されている。
次に、電磁継電器100の動作について説明する。図1は励磁コイル2の通電時における電磁継電器100の状態を示している。可動子4が第2の位置から第1の位置に移動すると、シャフト41の鍔部42は上方向に移動する。可動接触子113は接圧ばね114に押されて上方に移動し、一対の可動接点121が一対の固定接点122に接する。このとき、シャフト41は、可動接点121が固定接点122に接した後さらに押し上げられている。可動接触子113は、接圧ばね114によって上方へ付勢されているので、一対の可動接点121と一対の固定接点122との間の接圧(接触圧)を確保することができる。この状態(図1の状態)では、接点装置11は閉じた状態にあるので、一対の接点台111,112間は導通する。
一方、励磁コイル2の非通電時において、可動子4が第1の位置から第2の位置に移動すると、シャフト41の鍔部42は下方向に移動する。可動接触子113は鍔部42によって下方に押されて下方に移動し、可動接点121と固定接点122とが離れる。可動子4が第2の位置にあるとき、接圧ばね114のばね力と、復帰ばね32のばね力とはつり合っている。このとき、可動接触子113は、シャフト41の鍔部42にて下方に(固定子3に近づく方向に)押し下げられた状態となっている。そのため、可動接触子113は、シャフト41の鍔部42によって上方への移動が規制される。一対の可動接点121は、対応する一対の固定接点122に接していない状態となる。この状態では、接点装置11は開いた状態にあるので、一対の接点台111,112間は非導通である。
上述したように、電磁継電器100は、電気自動車のECUからの制御信号に応じて電磁石装置1の可動子4を移動させて接点装置11を開閉させることにより、走行用のバッテリから負荷への直流電力の供給状態を切り替えることができる。
ところで、継鉄延長部6の突出寸法L3は、固定子3における可動子4との接触面31から継鉄下板52の上面までの寸法L2よりも突出寸法L1だけ長く形成されている。以下、継鉄延長部6の効果について図2及び図3を参照して説明する。
図2は、励磁用電源から励磁コイル2に電流が流れた際に励磁コイル2に生じる磁束F1〜F3を模式的に示した図である。図2において、可動子4は、第1の位置にあって固定子3の接触面31と接している。
磁束F3は、継鉄上板51と、継鉄側板50と、継鉄下板52とを通る。磁束F3の一部の磁束F1が継鉄延長部6を通り、磁束F3のうち磁束F1を除く磁束F2が可動子4を通る。磁束F1と磁束F2とは固定子3を通るので、固定子3には磁束F3が通る。このように、磁束F3は、継鉄5と、継鉄延長部6と、可動子4と、固定子3とで形成される磁路を通る。なお、磁束F1及び磁束F2の各々は継鉄5を通るが、継鉄5を通る磁束は、磁束F1及び磁束F2を合成した磁束F3として図示する。
可動子4には、継鉄下板52と継鉄延長部6と固定子3とで形成される磁路と、継鉄下板52と継鉄延長部6と可動子4と固定子3とで形成される磁路とが形成されている。以下、継鉄下板52と継鉄延長部6と固定子3とで形成される磁路を第1磁路と呼ぶ。継鉄下板52と継鉄延長部6と可動子4と固定子3とで形成される磁路を第2磁路と呼ぶ。
継鉄延長部6の内側面と固定子3の外側面とは、一方向D1と直交する方向に突出寸法L1だけ重なり合うように配置されている。そのため、継鉄延長部6の内側面と固定子3の外側面とが一方向D1と直交する方向に重なり合っていない場合と比べて、第1磁路の磁気抵抗が小さくなる。継鉄延長部6の内側面と固定子3の外側面とが一方向D1と直交する方向に重なり合っていない場合と比べて、磁束F3における磁束F1の割合が大きくなり、磁束F1によって固定子3が磁気飽和状態になりやすくなる。固定子3が磁気飽和状態になると、磁束F2の大きさの変動が抑制される。
次に、可動子4が接触面31からわずかに離れた状態、つまり可動子4が第1の位置と第2の位置との間であって第1の位置に近い位置にある場合について説明する。この場合の可動子4の位置を中間位置と呼ぶ。例えば継鉄延長部6の内側面と固定子3の外側面とが一方向D1と直交する方向に重なり合っていない場合、可動子4が中間位置にある場合と第1の位置にある場合とで、磁束F2の大きさが変動する。本実施形態では、継鉄延長部6の内側面と固定子3の外側面とが一方向D1と直交する方向に重なり合っているので、可動子4が中間位置にあっても、磁束F3における磁束F1の大きさがあまり変化しない。つまり、可動子4が中間位置にあっても、磁束F1によって固定子3の磁気飽和状態が維持されているので、磁束F2の大きさの変動が抑制される。
図3に示すグラフは、可動子4が固定子3に接する第1の位置にある場合における、固定子3が可動子4を吸引する吸引力の分析結果である。図3のグラフの縦軸は、固定子3が可動子4を吸引する吸引力である。言い換えると、縦軸は、第1の位置にある可動子4が固定子3に吸引される吸引力である。図3に示すグラフの横軸は、継鉄延長部6における継鉄下板52の上面からの突出寸法L3である。点線X1は、励磁コイル2に電流I1を流した際に可動子4が第1の位置にある場合において、固定子3に可動子4を吸引する吸引力の大きさと、継鉄延長部6の突出寸法L3との関係を示している。実線X3は、励磁コイル2に電流I1のおよそ3倍の電流I3を流した際に固定子3に可動子4を吸引する吸引力の大きさと、継鉄延長部6の突出寸法L3との関係を示している。
次に、本実施形態の電磁石装置1における継鉄延長部6の効果について説明する。継鉄延長部6の突出寸法L3が、固定子3における可動子4との接触面31から継鉄下板52の上面までの寸法L2よりも小さい場合を本実施形態の比較例として説明する。比較例の電磁石装置1における継鉄延長部6の突出寸法L3は寸法L2よりも小さい。そのため、比較例の磁束F1よりも比較例の磁束F2のほうが大きくなる。つまり、比較例の電磁石装置1では、第1磁路を通る磁束F1よりも、第2磁路を通る磁束F2の方が大きくなる。
比較例の電磁石装置1では、励磁コイル2に電流I1が流れたときの吸引力(点線X1で示す吸引力)よりも、励磁コイル2に電流I3が流れたときの吸引力(実線X3で示す吸引力)のほうが大きい。継鉄延長部6の突出寸法L3が寸法L2に近づくように定められた場合であっても、実線X3で示す吸引力は、点線X1で示す吸引力の3倍以上大きくなっている。つまり従来の電磁石装置1では、励磁コイル2に流れる電流の大きさの変化に応じて、固定子3に可動子4を吸引する吸引力の大きさが変化している。
励磁コイル2に流れる電流I1,I3が変化する場合とは、例えば、励磁コイル2の周辺温度が変化する場合や、励磁コイル2の巻線抵抗によって励磁コイル2自体が発熱する場合などが考えられる。励磁コイル2に流れる電流の大きさの変化に応じて固定子3に可動子4を吸引する吸引力の大きさが変化すると、可動子4が第2の位置から第1の位置に移動して固定子3に接する際に生じる接触音の大きさが変化する可能性がある。可動子4が固定子3に接する際に生じる接触音の大きさのばらつきを抑えたいという要望があった。
一方、本実施形態の継鉄延長部6の内側面は、固定子3の外側面と一方向D1と直交する方向に突出寸法L1だけ重なり合っている。本実施形態の電磁石装置1の第1磁路の磁気抵抗は、第2磁路の磁気抵抗よりも小さい。そのため、励磁コイル2に流れる電流I1,I3が変化して磁束F3が変化しても、第1磁路を通る磁束F1によって固定子3が磁気飽和状態になりやすくなるので、磁束F2の変化が抑制される。
第1磁路を通る磁束F1により、固定子3は磁気飽和しやすくなる。具体的に言うと、磁束F1は磁束F2よりも大きいため、励磁コイル2を流れる電流が大きくなって磁束F3が大きくなると、磁束F1も大きくなり、かつ磁束F1は第1磁路を通って固定子3を磁気飽和状態になりやすくなる。励磁コイル2を流れる電流が大きくなって磁束F3が大きくなると、磁束F2も大きくなるが、固定子3は磁束F1によって磁気飽和状態になっているため、第2磁路を通る磁束F2の変動が抑制される。また、可動子4が第1の位置からわずかに離れた位置(中間位置)にあっても、磁束F1によって固定子3の磁気飽和状態が維持されているので、磁束F2の大きさの変動が抑制される。
本実施形態の電磁石装置1において、継鉄延長部6の突出寸法L3は、寸法L2よりも大きくなるように定められている。継鉄延長部6の突出寸法L3が寸法L2を超えると、励磁コイル2に電流I3が流れたときの吸引力(実線X3で示す吸引力)が急激に減少している。特に図3における範囲R1において、突出寸法L3が大きくなるにつれて実線X3は急激に減少して点線X1に近づく。範囲R1は、継鉄延長部6の突出寸法L3が、寸法L2以上であって、かつ実線X3と点線X1との差が最も小さくなる場合の突出寸法L4以下となる範囲である。
継鉄延長部6の内側面と固定子3の外側面とが突出寸法L1だけ対向する面の面積が増加するにつれて、継鉄延長部6と固定子3との磁気抵抗が小さくなるので、第1磁路の磁気抵抗が小さくなる。電流I1よりも大きい電流I3が励磁コイル2に流れている場合、電流I1が流れている場合よりも磁束F3は大きくなるが、第1磁路の磁気抵抗が小さいので、磁束F1も電流I3に応じて大きくなる。磁束F1が大きくなると固定子3は磁気飽和状態になりやすくなるので、可動子4と固定子3とを通る磁束F2は、比較例よりも減少する。
図3の範囲R1において、重複部の突出寸法L1を大きくしていくにつれて、実線X3は点線X1に近づく。つまり、寸法L2よりも突出寸法L3を大きくするにつれて、励磁コイル2を流れる電流が大きくなっても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動を抑制する効果が大きい。なお、範囲R1を超えてさらに突出寸法L3を大きくすると、実線X3及び点線X1の両方の場合で、可動子4を吸引する吸引力が少しずつ減少していく。これは固定子3が磁気飽和状態であって、かつ第1磁路を通る磁束F1が大きくなるので、磁束F2がさらに小さくなるためであると推考される。
励磁コイル2を流れる電流が変動しても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動が抑制されることにより、可動子4が第2の位置から第1の位置に移動して固定子3に接する際に生じる接触音の大きさのばらつきが抑制される。
以上説明したように、本実施形態の電磁石装置1は、励磁コイル2と、固定子3と、可動子4と、継鉄5と、継鉄延長部6とを備える。固定子3は、励磁コイル2と磁気的に結合されている。可動子4は、励磁コイル2に電流が流れた際に励磁コイル2に生じる磁束F3によって固定子3に吸引されて一方向D1へ移動し、かつ固定子3に接する位置まで移動する。継鉄5は、第1端部(本実施形態では継鉄上板51)が固定子3と磁気的に結合されている。継鉄5は、第1端部(継鉄上板51)と異なる第2端部(本実施形態では継鉄下板52)が、可動子4に対して固定子3とは反対側に配置されている。継鉄5は、励磁コイル2に生じる磁束F3の磁路の一部を形成する。継鉄延長部6は、継鉄5の第2端部(継鉄下板52)に設けられ、継鉄5と固定子3と可動子4との各々に磁気的に結合されている。継鉄延長部6は、固定子3における可動子4と接する部位(本実施形態では接触面31)よりも一方向D1へ突出するように形成されている。
上記構成によれば、可動子4に対して固定子3とは反対側に継鉄5の第2端部(継鉄下板52)が配置され、継鉄5の第2端部には継鉄延長部6が設けられている。継鉄延長部6は、固定子3において可動子4と接する部位(接触面31)よりも一方向D1へ突出するように形成されている。継鉄延長部6は、固定子3と継鉄5の第2端部とを磁気的に結合して、固定子3と継鉄5と継鉄延長部6とによる磁路(本実施形態では第1磁路)を形成する。励磁コイル2に流れる電流が変動して励磁コイル2に発生する磁束F3が変動しても、磁束F3の変動分の多くは固定子3と継鉄5と継鉄延長部6とによる磁路(第1磁路)を通る。そのため、継鉄延長部6及び可動子4で形成される磁路(本実施形態では第2磁路)の磁束F3の変動分は相対的に小さくなる。つまり、励磁コイル2に流れる電流が変動しても、可動子4を固定子3に吸引する吸引力の変動が抑制される。言い換えると、電磁石装置1は、励磁コイル2を流れる電流が変動しても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動を抑制できる。
本実施形態の電磁石装置1は、励磁コイル2を流れる電流が変動しても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動を抑制できるので、可動子4が固定子3の接触面31に接した際に発生する接触音の大きさのばらつきを抑えることができる。
本実施形態の電磁石装置1において、固定子3は、継鉄5と別体に形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、固定子3が継鉄5と別体に形成されていることにより、継鉄5とは異なる材料で固定子3を形成することが可能になる。
本実施形態の電磁継電器100は、上記した電磁石装置1と、接点装置11とを備える。接点装置11は、固定接点122及び可動接点121を有し、可動子4の移動に伴って可動接点121が移動することにより、可動子4が固定子3に接するときに可動接点121が固定接点122に接する閉状態となる。接点装置11は、可動子4の移動に伴って可動接点121が移動することにより、可動子4が固定子3に接していないときに可動接点121が固定接点122に接していない開状態となる。電磁石装置1と接点装置11とは一方向D1に並んでいる。
上記構成によれば、励磁コイル2を流れる電流が変動しても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動を抑制することが可能な電磁継電器100を実現することができる。
本実施形態の電磁継電器100は、接点装置11が開状態から閉状態に切り替わる際に可動子4が固定子3に接することで生じる接触音の大きさのばらつきを抑制することができる。
なお、本実施形態の継鉄延長部6と固定子3と可動子4とは各々、円筒状に形成されているが、角筒状に形成されていてもよい。また継鉄延長部6は、固定子3の外側面の周囲を全周にわたって囲む筒状に形成されることに限定されず、一方向D1と直交する方向において、固定子3の外側面と重なる部位(重複部)を有するように形成されていればよい。例えば、継鉄延長部6は、周壁の上端に突出部を有し、継鉄下板52の上面からその突出部の先端までの寸法が寸法L2よりも大きく形成されていてもよい。この場合、その突出部が、一方向D1と直交する方向において固定子3の外側面の一部と重なることにより、継鉄延長部6は、固定子3と継鉄5とを磁気的に結合する。つまり継鉄延長部6は、継鉄下板52の上面からの突出寸法L3が寸法L2よりも大きくなるように形成されて固定子3と継鉄5とを磁気的に結合できる任意の形状でよい。
本実施形態の接触面31は、一方向D1と直交する面と平行するように形成されているが、固定子3における可動子4と接する部位は、一方向D1と直交する平面に限定されない。固定子3における可動子4と接する部位は例えば、可動子4から固定子3に向く方向に外径が小さくなるテーパ状でもよいし、可動子4と固定子3とは凹凸を有する面で接してもよい。この場合、固定子3における可動子4と接する部位において、継鉄下板52の上面に近い部位から継鉄下板52の上面までの寸法が寸法L2となる。固定子3における可動子4と接する部位は平面や曲面などの適宜の形状であってもよい。継鉄延長部6は、継鉄下板52の上面からの突出寸法L3が寸法L2よりも大きくなるように形成されていればよい。
本実施形態の継鉄延長部6と継鉄下板52とは別体に形成されているが、継鉄延長部6と継鉄下板52とは一体に形成されていてもよい。継鉄延長部6と継鉄下板52とを一体に形成することにより、継鉄延長部6を継鉄下板52の孔に嵌合させる手間を省くことができ、かつ電磁石装置1の部品点数を減らすことができる。
本実施形態の可動子4は、第1の位置と第2の位置とに移動可能に構成されているが、第2の位置よりもさらに下方に移動可能に構成されていてもよい。
電磁石装置1は、合成樹脂製であって励磁コイル2が巻き付けられるコイルボビンを有していてもよい。
本実施形態の接点装置11は、一対の固定接点122と、それに対応する一対の可動接点121とを有しているが、例えば1個の固定接点及びそれに対応する1個の可動接点とを有していてもよい。その場合、可動子4の移動によって、1個の固定接点と1個の可動接点とが接する状態と、離れた状態とに切り替わることにより、接点装置11の開閉状態が切り替わるように構成されていればよい。
ところで、可動子4と継鉄延長部6との間に隙間を設けることにより第2磁路の磁気抵抗を大きくして、第2磁路を通る磁束F2の変動を小さくしてもよい。以下、図4に示すように、可動子4に段部43を設けた電磁石装置1Aを本実施形態の変形例1として説明する。
本変形例の電磁石装置1A及びそれを用いた電磁継電器100Aについて図4を参照して説明する。
電磁石装置1Aは、可動子4の外側面に段部43が設けられている点が実施形態1の電磁石装置1と異なる。段部43は、可動子4の下端面の外径が、上端面の外径よりも小さくなるように形成されている。また段部43の一方向D1に沿う寸法は、可動子4の一方向D1に沿う寸法よりも小さくなるように定められている。これにより可動子4は、固定子3の外径よりもやや小さい外径を有する接触端45と、固定子3の外径よりも小さい外径となるように形成された非接触端44とを有する。接触端45は、可動子4における固定子3と接する上端面を有する。非接触端44は、可動子4において固定子3と反対側の下端面を有する。つまり可動子4は、固定子3の接触面31と接する接触端45と、接触端よりも外径が小さい非接触端44との2つの筒体からなる。
段部43は、非接触端44の外側面から筒体53の内側面までの距離が一定となるように設けられている。そのため非接触端44の外側面は、継鉄延長部6の内側面までの距離が一定となっている。
非接触端44は、励磁コイル2の中心軸と同軸となる円筒状に形成されている。可動子4において非接触端44より上側の接触端45の外径は、固定子3の外径よりもやや小さくなるように形成されている。
可動子4に段部43が設けられていることにより、段部43が設けられていない場合の可動子4よりも、非接触端44と継鉄延長部6とで形成される磁路の磁気抵抗が大きくなる。つまり可動子4と継鉄延長部6とで形成される第2磁路の磁気抵抗を大きくすることができる。第2磁路の磁気抵抗が大きくなると、相対的に第1磁路の磁気抵抗が小さくなるので、励磁コイル2に生じる磁束F3は、継鉄延長部6と固定子3とで形成される第1磁路を通りやすくなり、磁束F1(図2参照)を大きくしやすくなる。磁束F1が大きくなると固定子3が磁気飽和状態になりやすくなるので、励磁コイル2を流れる電流が変動した際に、第2磁路を通る磁束F2の変動が抑制される。
以上説明したように、本変形例の電磁石装置1Aの可動子4は、固定子3と接する接触端45、及び接触端45に対して固定子3と反対側の非接触端44を有する。可動子4は、一方向D1と直交する方向において、接触端45から継鉄延長部6までの距離よりも、非接触端44から継鉄延長部6までの距離が大きくなっていることが好ましい。本変形例では、可動子4に段部43が設けられていることにより、非接触端44の外側面から継鉄延長部6の内側面までの距離が、接触端45から継鉄延長部6の内側面までの距離よりも大きくなっている。
上記構成によれば、接触端45から継鉄延長部6までの距離よりも、非接触端44から継鉄延長部6までの距離が大きくなっているので、非接触端44と継鉄延長部6とで形成される磁路の磁気抵抗を大きくすることができる。つまり、非接触端44から継鉄延長部6までの距離が、接触端45から継鉄延長部6までの距離と同じ場合と比べて、第2磁路の磁気抵抗を大きくすることができる。第2磁路の磁気抵抗が大きくなると、相対的に第1磁路の磁気抵抗が小さくなるので、励磁コイル2に生じる磁束F3は、継鉄延長部6と固定子3とで形成される第1磁路を通りやすくなり、磁束F1(図2参照)を大きくしやすくなる。磁束F1が大きくなると固定子3は磁気飽和状態になりやすくなるので、励磁コイル2を流れる電流が変動した際に、第2磁路を通る磁束F2の変動が抑制される。そのため、可動子4に生じる吸引力の変動が抑制される。
変形例1のように、可動子4の外径を小さくして可動子4と継鉄延長部6との磁気抵抗を大きくする他にも、継鉄延長部6の直径を大きくすることにより第2磁路の磁気抵抗を大きくしてもよい。以下、図5に示すように、継鉄延長部6に段部61を設けた電磁石装置1B及びそれを用いた電磁継電器100Bを本実施形態の変形例2として説明する。
本変形例の可動子4において、非接触端44の外径は、接触端45の外径と同一である点が変形例1と異なる。非接触端44及び接触端45の他の構成は変形例1と同様である。
電磁石装置1Bは、継鉄延長部6の内側面に段部61が設けられている点が実施形態1の電磁石装置1と異なる。段部61は、継鉄延長部6の下端の内径が、上端の外径よりも大きくなるように形成されている。また段部61の下面から継鉄下板52の上面までの一方向D1に沿う寸法は、継鉄延長部6の突出寸法L3よりも小さくなるように定められている。これにより継鉄延長部6は、固定子3の外径よりもやや大きい内径を有する小径部62と、固定子3の外径よりも大きい内径となるように形成された大径部63とを有する。つまり継鉄延長部6は、内径の異なる2つの中空筒体からなる。
段部61は、大径部63の内側面から筒体53の外側面までの距離が一定となるように設けられている。そのため大径部63の内側面は、可動子4の外側面までの距離が一定となっている。
大径部63は、励磁コイル2の中心軸と同軸となる円筒状に形成されている。継鉄延長部6において大径部63の内径は、大径部63より上側の小径部62の外径よりも大きくなるように形成されている。
継鉄延長部6に段部61が設けられていることにより、段部61が設けられていない場合の継鉄延長部6よりも、大径部63と可動子4とで形成される磁路の磁気抵抗が大きくなる。つまり可動子4と継鉄延長部6とで形成される第2磁路の磁気抵抗を大きくすることができる。第2磁路の磁気抵抗が大きくなると、相対的に第1磁路の磁気抵抗が小さくなるので、励磁コイル2に生じる磁束F3は、継鉄延長部6と固定子3とで形成される第1磁路を通りやすくなり、磁束F1(図2参照)を大きくしやすくなる。磁束F1が大きくなると固定子3は磁気飽和状態になりやすくなるので、励磁コイル2を流れる電流が変動した際に、第2磁路を通る磁束F2の変動が抑制される。そのため、可動子4に生じる吸引力の変動が抑制される。
以上説明したように、本変形例の電磁石装置1Bの可動子4は、固定子3と接する接触端45、及び接触端45に対して固定子3と反対側の非接触端44を有する。可動子4は、一方向D1と直交する方向(本変形例では左右方向)において、接触端45から小径部62(継鉄延長部6)までの距離よりも、非接触端44から大径部63(継鉄延長部6)までの距離が大きくなっていることが好ましい。本変形例では、継鉄延長部6に段部61が設けられていることにより、非接触端44の外側面から大径部63の内側面までの距離が、接触端45から小径部62の内側面までの距離よりも大きくなっている。
上記構成によれば、接触端45から小径部62(継鉄延長部6)までの距離よりも、非接触端44から大径部63(継鉄延長部6)までの距離が大きくなっているので、非接触端44と継鉄延長部6とで形成される磁路の磁気抵抗を大きくすることができる。つまり、非接触端44から継鉄延長部6までの距離が、接触端45から継鉄延長部6までの距離と同じ場合と比べて、第2磁路の磁気抵抗を大きくすることができる。以下、変形例1と同様に、磁束F1が大きくなると固定子3が磁気飽和状態になりやすくなるので、励磁コイル2を流れる電流が変動した際に、第2磁路を通る磁束F2の変動が抑制される。
なお、実施形態1の電磁石装置1に、段部43及び段部61の両方が設けられていてもよい。段部43及び段部61によってさらに可動子4と継鉄延長部6との磁気抵抗を大きくすることが可能である。
また、筒体53の周壁532を及び可動子4の各々を、下方に向けて先細りとなる形状にすることで可動子4と継鉄延長部6との間に隙間を形成してもよい。他にも例えば、可動子4と継鉄延長部6との間に適宜の部材を配置して可動子4と継鉄延長部6との距離を大きくしてもよい。
本実施形態の段部43は、非接触端44の外側面から継鉄延長部6の内側面までの距離が一定となるように設けられているが、例えば非接触端44の外側面がテーパ面を形成するように設けられていてもよい。例えば、非接触端44は、下端面から上端面に向かうにつれて外径が大きくなるようなテーパ面を有する円筒状に形成されてもよい。また、段部43は、可動子4の外周全周にわたって設けられることに限定されず、例えば溝状に形成されてもよい。つまり段部43は、継鉄延長部6と可動子4とで形成される磁路の磁気抵抗を大きくするために設けられていればよい。具体的に言うと、段部43は、継鉄延長部6と可動子4との距離を大きくする適宜の形状となるように設けられていてもよい。
(実施形態2)
本実施形態の電磁石装置1C及びそれを用いた電磁継電器100Cについて、図6及び図7を参照して説明する。なお、実施形態1の電磁石装置1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
電磁継電器100Cは、一例として、電気自動車に搭載されて用いられる。電磁継電器100Cは、図7に示すように、走行用のバッテリ101から負荷102への直流電力の供給路上に接点装置11を挿入するように接続されている。負荷102は例えばインバータなどである。この電磁継電器100Cの励磁コイル2は、電気自動車のECU103からの制御信号に応じてオンとオフとが切り替わるスイッチング素子104を介して、励磁用電源105に接続されている。これにより、電磁継電器100Cは、ECU103からの制御信号に応じて接点装置11が開閉し、走行用のバッテリ101から負荷102への直流電力の供給状態を切り替えることができる。
電磁継電器100Cは、異常電流が流れた場合に励磁コイル141に生じる磁束を利用して可動子4を強制的に第1の位置から第3の位置に移動させるので、異常電流の発生を速やかに検出して電路(接点装置11)を迅速に遮断できる。
電磁継電器100Cは、電磁石装置1Cと、接点装置11と、トリップ装置14とを備える。電磁継電器100Cはさらに、図7に示すように、走行用のバッテリ101から負荷102への直流電力の供給路上に挿入される一対の出力端子510,520と、励磁用電源105に接続される一対の入力端子530,540とを備えている。
接点装置11は、一対の固定接点122と、一対の可動接点121と、一対の接点台111,112と、可動接触子113と、接圧ばね114とを有している。一対の接点台111,112の各々の下端部には固定接点122が設けられている。接点装置11は、可動子4の移動に伴って可動接点121が移動することにより、可動子4が固定子3に接していないときに可動接点121が固定接点122に接していない開状態となる。
接点台111には、励磁コイル141を介して出力端子510が接続されている。接点台112には、出力端子520が接続されている。つまり励磁コイル141は、接点台111と出力端子510との間に挿入されている。
電磁石装置1Cは、実施形態1の電磁石装置1の継鉄側板50に代えて継鉄側板50Cを備えている。励磁コイル2は、その両端が一対の入力端子530,540に接続されている。つまり一対の入力端子530,540を流れる電流によって励磁コイル2に磁束F3が生じる。
継鉄側板50Cは、継鉄側板50よりも上下方向の寸法が小さくなるように形成されていて、継鉄上板51と継鉄下板52との距離は電磁石装置1に比べて小さくなる。そのため筒体53は継鉄下板52よりも下方に突き出る。この場合でも、継鉄延長部6の突出寸法L3は、継鉄下板52の上面から固定子3における接触面31までの寸法L2よりも大きく定められている。継鉄下板52よりも下方に突き出た筒体53の下側部分は、トリップ装置14の中央部に嵌合している。
トリップ装置14は、接点装置11と直列に接続された励磁コイル141と、保持装置7とを有している。本実施形態のトリップ装置14はさらに、可動子4に対して固定子3とは一方向D1の反対側に配置された固定子143と、継鉄144とをさらに有している。継鉄144と固定子143とはいずれも磁性材料から形成されている。可動子4と励磁コイル141と固定子143とは、全て一方向D1に沿った同一直線上に中心軸を有するように構成されている。
トリップ装置14は、一方向D1に沿った同一直線上に接点装置11及び電磁石装置1Cと並べて配置されており、かつ電磁石装置1Cに対して接点装置11とは反対側に配置されている。つまり、トリップ装置14は、電磁石装置1Cの下方に配置されている。
トリップ装置14は、可動子4が第1の位置にある状態で接点装置11を通して流れる規定値以上の異常電流により励磁コイル141で生じる磁束によって、可動子4を第3の位置へ移動させる。第3の位置は、第2の位置よりもさらに下方に位置する。
継鉄144は、固定子143及び可動子4と共に、励磁コイル141の通電時に生じる磁束が通る磁路を形成する。継鉄5の継鉄下板52及び継鉄延長部6が継鉄144の上板として兼用されており、継鉄144は、励磁コイル141の下方に設けられて継鉄5の継鉄下板52に対向する下板442を具備している。以下では、継鉄144の上板として兼用される継鉄下板52及び継鉄延長部6については、継鉄5の一部としてだけでなく、継鉄144の一部を構成する部材として説明する。
継鉄144は、継鉄下板52と下板442との周縁部同士を連結する側板443をさらに具備している。ここでは、継鉄下板52及び下板442はそれぞれ矩形板状に形成されている。側板443は、継鉄下板52の四辺及びその四辺の各々に対応する下板442の四辺を連結する。本実施形態の側板443と下板442とは1枚の板から連続一体に形成されている。
励磁コイル141は、継鉄144(継鉄下板52と継鉄延長部6と下板442と側板443)で囲まれた空間に配置されている。励磁コイル141の内側には筒体53の下端部が配置されている。つまり、筒体53は、継鉄5の継鉄下板52を貫通しており、その下端部が励磁コイル141の内側に突き出ている。
励磁コイル141には、一対の出力端子510,520間において接点装置11と直列に接続されている。本実施形態では、励磁コイル141は、接点台111と出力端子510との間に接続されている。これにより、励磁コイル141は、接点装置11が閉じた状態で、走行用のバッテリ101から負荷102へ供給される負荷電流の経路の一部を形成し、この負荷電流によって励磁される。本実施形態の励磁コイル141には、励磁コイル141以外の経路でも負荷電流を流すことができるように、バイパス経路60が電気的に並列に接続されている。バイパス経路60を設けることで、電磁継電器100は、走行用のバッテリ101から負荷102へ供給される負荷電流の一部をバイパス経路60に流すことができ、励磁コイル141での損失を抑えることができる。
固定子143は、下板442の上面の中央部から上方に突出する形の円柱状に形成された固定鉄心であって、その下端部が下板442の中央部に形成された孔に嵌合することにより、継鉄144に固定されている。固定子143の外径は、可動子4の外径よりもやや大きく形成されている。
保持装置7は、永久磁石からなる保持磁石71を具備している。保持装置7は、トリップ装置14が可動子4を第3の位置へ移動させた場合に、保持磁石71で生じる磁束によって可動子4を第3の位置に保持する。トリップ装置14がトリップして可動子4が第3の位置へ移動すると、可動子4は保持装置7によって第3の位置に保持(ラッチ)されることになる。
保持磁石71は、固定子3と可動子4とが並ぶ一方向D1において可動子4に対して固定子3とは反対側に配置されている。つまり保持磁石71は、固定子143と底板531との間に配置される。保持磁石71は、その上面である第1磁極面711を筒体53の底板531に接触させるように配置されている。保持磁石71は、その下面である第2磁極面712を固定子143に接触させるように配置されている。つまり保持磁石71は、一方向D1において、固定子3及び可動子4と一直線上に並びつつ、可動子4に対して固定子3とは反対側の下方に配置されている。保持磁石71は、励磁コイル141の中心軸と同軸となる円盤状に形成されている。保持磁石71の外径は、固定子143の外径とほぼ同一に形成されている。保持磁石71は、一方向D1(上方向)における両面に、互いに異極性の第1磁極面711及び第2磁極面712を有している。本実施形態では第1磁極面711をN極、第2磁極面712をS極として説明するが、N極とS極とは反対の関係でもよい。
次に、トリップ装置14の動作について説明する。トリップ装置14は、励磁コイル141で生じる磁束によって固定子3とは一方向D1の反対側(下方)に可動子4を吸引することにより、固定子3が可動子4を吸引する吸引力とは逆向きの吸引力を固定子143が可動子4に作用させる。すなわち、トリップ装置14は、励磁コイル141への通電時に励磁コイル141で生じる磁束によって可動子4を第3の位置へ移動させ、これにより、接点装置11を強制的に開状態にする。以下、トリップ装置14が、第1の位置に有る可動子4を第3の位置に移動させる動作をトリップ動作と呼ぶ。つまりトリップ装置14はトリップ動作により閉状態の接点装置11を強制的に開状態にする。
第3の位置は、第1の位置と第2の位置とを結ぶ可動子4の移動軸の延長線上にある。第3の位置は、第2の位置に対して第1の位置とは一方向D1の反対側(下方)の位置である。言い換えれば、第2の位置は第1の位置と第3の位置との間の位置である。トリップ装置14がトリップ動作していない状態においては、可動子4は、励磁コイル2の通電時に第1の位置に位置し、励磁コイル2の非通電時に第2の位置に位置する。トリップ装置14がトリップ動作すると、可動子4は第3の位置に位置する。つまり、可動子4が第1の位置にある状態でトリップ装置14がトリップ動作することにより、可動子4は、第1の位置から第2の位置を通って第3の位置まで移動することになる。
励磁コイル141で生じた磁束は、継鉄144と固定子143と可動子4とで形成される磁路を通る。
トリップ装置14は、この磁路の磁気抵抗が小さくなるように可動子4を移動させる向きの吸引力を、可動子4に作用させる。言い換えれば、トリップ装置14は、磁気回路のうち固定子143の上端面と継鉄延長部6の下端面との間のギャップを可動子4で埋めるように、第1の位置から第3の位置へ移動させる向きの吸引力を可動子4に作用させる。
電磁継電器100Cは、励磁コイル2に通電されており接点装置11が閉じた状態(可動子4が第1の位置にある状態)において、可動子4には固定子3との間の吸引力が上向きに作用する。また、復帰ばね32のばね力及び固定子143との間の吸引力は下向きに作用する。
トリップ装置14は、可動子4が第1の位置にある状態において、可動子4と固定子3との間の吸引力よりも、復帰ばね32のばね力及び可動子4と固定子143との間の吸引力との合成力が上回ったときにトリップ動作を行う。トリップ動作により可動子4は第1の位置から第3の位置に移動する。固定子143から可動子4に作用する吸引力は、励磁コイル141を流れる電流(負荷電流)の大きさに応じて変化する。そこで、トリップ装置14は、励磁コイル141を流れる電流が、規定値以上の異常電流となったときにトリップ動作を行うように構成される。規定値は、たとえば電磁継電器100の定格電流に対して過電流となる値、あるいは短絡電流となる値に設定される。ここでいう過電流は、たとえば定格電流の5倍から10倍程度の大きさの電流であって、短絡電流は、たとえば定格電流の数十倍程度の大きさの電流である。これにより、電磁継電器100は、過電流や短絡電流等の異常電流が接点装置11を通して流れた場合、トリップ装置14により可動子4を第3の位置へ移動させ、接点装置11を強制的に開状態とすることができる。
ところで、可動子4と固定子3との間の吸引力が変化すると、トリップ装置14におけるトリップ動作の開始タイミングが変化する。可動子4と固定子3との間の吸引力が大きくなっている場合には、励磁コイル141を流れる電流の電流値が、規定値よりもさらに大きくならなければトリップ装置14がトリップ動作を行わない場合がある。逆に、可動子4と固定子3との間の吸引力が小さくなっている場合には、励磁コイル141を流れる電流の電流値が、規定値未満でもトリップ装置14がトリップ動作を行う場合がある。
本実施形態の電磁継電器100Cは、電磁石装置1Cを備えているので、電磁石装置1の励磁コイル2を流れる電流の大きさが変動しても、可動子4と固定子3との間の吸引力が変動しにくくなっている。そのため、トリップ装置14におけるトリップ動作の開始タイミングの変動が抑制される。つまりトリップ装置14は、励磁コイル141を流れる電流が規定値を超えたタイミングで安定してトリップ動作を行うことができる。
電磁継電器100Cは、一例として、電気自動車に搭載されて用いられる。電磁継電器100Cは、図7に示すように、走行用のバッテリ101から負荷102への直流電力の供給路上に接点装置11を挿入するように接続されている。負荷102は例えばインバータなどである。この電磁継電器100Cの励磁コイル2は、電気自動車のECU103からの制御信号に応じてオンとオフとが切り替わるスイッチング素子104を介して、励磁用電源105に接続されている。これにより、電磁継電器100Cは、ECU103からの制御信号に応じて接点装置11が開閉し、走行用のバッテリ101から負荷102への直流電力の供給状態を切り替えることができる。
以上説明したように、本実施形態の電磁石装置1Cは、励磁コイル2と、固定子3と、可動子4と、継鉄5と、継鉄延長部6とを備える。
継鉄延長部6において継鉄上板51(第1端部)及び継鉄下板52(第2端部)を連結する継鉄側板50の一方向D1に沿う寸法は、筒体53の一方向D1に沿う寸法よりも小さく定められている。筒体53は一方向D1の反対側に継鉄下板52(第2端部)から突出している。継鉄延長部6は、固定子3における可動子4と接する部位(接触面31)よりも一方向D1へ突出するように形成されている。
上記構成によれば、電磁石装置1Cは、励磁コイル2を流れる電流が変動しても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動を抑制できる。
本実施形態の電磁継電器100Cは、上記した電磁石装置1Cと、接点装置11と、トリップ装置14とを備える。トリップ装置14は、接点装置11と直列に接続された励磁コイル141と、保持装置7とを有している。可動子4と励磁コイル141と保持装置7とは、全て一方向D1に沿った同一直線上に中心軸を有するように構成されている。接点装置11は、可動子4の移動に伴って可動接点121が移動することにより、可動子4が固定子3に接していないときに可動接点121が固定接点122に接していない開状態となる。トリップ装置14は、接点装置11と直列に接続された励磁コイル141と、保持装置7とを有している。トリップ装置14は、可動子4が第1の位置にある状態で接点装置11を通して流れる規定値以上の異常電流により励磁コイル141で生じる磁束によって、可動子4を第3の位置へ移動させる。第3の位置は、第2の位置よりもさらに下方に位置する。
上記構成によれば、励磁コイル2を流れる電流が変動しても固定子3に可動子4を吸引する吸引力の変動が抑制され、安定しやすくなっている。
第1の位置に可動子4がある状態で、可動子4に対して一方向D1の吸引力が安定することにより、可動子4を一方向D1の逆向きに移動させる際に必要な一方向D1と逆向きの吸引力が安定する。そのため、接点装置11を通して流れる電流の電流値が規定値に達するとトリップ装置14がトリップ動作を開始しやすくなるので、トリップ動作が安定する。
本実施形態の電磁継電器100Cは、永久磁石からなる保持磁石71を有する保持装置7を備えている。保持装置7は、トリップ装置14が可動子4を第3の位置へ移動させた場合に、保持磁石71で生じる磁束によって可動子4を第3の位置に保持する。トリップ装置14が動作(トリップ動作)すると、その後、励磁コイル141への通電が停止しても、保持装置7は、保持磁石71で生じる磁束によって可動子4を第3の位置に保持する。そのため、電磁継電器100Cは接点装置11に異常電流が流れた際に、接点装置11を開状態に維持することが可能になる。
なお、本実施形態の電磁継電器100Cにおけるトリップ装置14は、励磁コイル141で生じる吸引力によって固定子3とは反対側に可動子4を吸引する適宜の構成でよい。例えば、励磁コイル141で生じる磁束の方向は、励磁コイル2で生じる磁束の方向と同方向でもよいし、逆方向でもよい。励磁コイル141で生じる磁束の方向が励磁コイル2で生じる磁束の方向と逆方向である場合、トリップ装置14は、可動子4に生じる磁束を打ち消す。トリップ装置14は、復帰ばね32のばね力及び保持磁石の磁束で生じる吸引力で可動子4を第3の位置に移動させることによりトリップ動作を行う。一方、励磁コイル141で生じる磁束の方向が励磁コイル2で生じる磁束の方向と同方向である場合、トリップ装置14は、固定子3が可動子4を吸引する吸引力よりも大きな吸引力で可動子4を固定子143に吸引することによりトリップ動作を行う。
本実施形態の接点装置11は、バッテリ101の正極(プラス極)と負荷102との間に挿入されているが、バッテリ101の負極(マイナス極)と負荷102との間に挿入されていてもよい。
なお、実施形態1と、実施形態1の変形例1と、実施形態1の変形例2との各々に本実施形態のトリップ装置14を適用可能である。
(実施形態3)
ところで、図1に示すように、継鉄上板51と固定子3とは別体に形成されることに限定されず、図8に示すように、継鉄上板51と固定子3とは一体に形成されていてもよい。図8に示す本実施形態の電磁石装置1Dは、電磁石装置1における継鉄上板51及び固定子3に代えて、固定子541が一体に形成された継鉄上板54を備えている。また、電磁石装置1Dは、電磁石装置1の可動子4と復帰ばね32とに代えて可動子400と復帰ばね401とを備えている。
継鉄上板54は、継鉄上板54は矩形板状に形成されていて、中央部分に固定子541が形成されている。なお、継鉄上板54の他の構成は継鉄上板51と同様であるため説明を省略する。
固定子541は、継鉄上板54の下面の中央部から下方に突出する有底筒状に形成されている。固定子541は継鉄上板54から下方向に突き出るように形成されている。固定子541は、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように形成されている。固定子541の外径は、実施形態1の固定子3の外径とほぼ同じ寸法に形成されている。固定子541における継鉄上板54の下端面から下方向に突き出た部位(固定子541の一部)は、筒体53に収納されている。固定子541の下端面には、励磁コイル2の中心軸と同軸となる孔が形成されている。その孔にシャフト41が通されている。
可動子400は、円柱状に形成された可動鉄心である。可動子400は、筒体53に収納された状態で、固定子541の下方に配置される。可動子400の上端面は固定子541の下端面に対向している。可動子400の外径は固定子541の外径とほぼ同一に形成されている。可動子400は、励磁コイル2の中心軸と同軸となるように配置された状態で、一方向D1に沿って移動できる。可動子400は、その上端面が固定子541の下端面に接する第1の位置と、その上端面が固定子541の下端面から離れて接していない第2の位置との間で移動可能に構成されている。固定子541における可動子400と接する下端面のことを接触面542と呼ぶ。つまり可動子400が接触面542に接した位置が第1の位置となる。
可動子400には、その上端面に開口する有底筒状の収納空間402が形成されている。収納空間402の中心軸は、可動子400と同軸となっている。収納空間402には、復帰ばね401が収納されている。復帰ばね401は、固定子541と可動子400とに接して、可動子400を下方(第2の位置)へ付勢するコイルばねである。復帰ばね401は、可動子400が固定子541に吸引されて第2の位置から第1の位置へと移動する際、圧縮されながら収納空間402に収まるため、可動子400は固定子541に接することができる。復帰ばね401の内側には、シャフト41が通されている。可動子400には、収納空間402及び復帰ばね401の内側を通されたシャフト41の先端部分が固定されている。
以上説明したように、本実施形態の固定子541は、継鉄5の第1端部(本実施形態では継鉄上板54)と一体に形成されている。
上記構成によれば、継鉄5の第1端部(継鉄上板54)と固定子541とを一体に形成することにより、固定子541と継鉄5の第1端部(継鉄上板54)とを磁気的に結合させ、かつ継鉄5に対して固定子541の位置を固定することが容易になる。
本実施形態では、復帰ばね401を収納する収納空間402が可動子4に形成されている。そのため、固定子541に復帰ばねを収納するための収納空間を形成しなくてもよいので、固定子541の形成が容易になる。また、固定子541と継鉄上板54とを一体に形成することにより、電磁石装置1Dの部品点数を減らすことができる。
なお、実施形態1と、実施形態1の変形例1と、実施形態1の変形例2と、実施形態2との各々についても本実施形態と同様に、継鉄上板51と固定子3とを一体に形成してもよい。