JP6680303B2 - 見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置 - Google Patents

見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6680303B2
JP6680303B2 JP2018024095A JP2018024095A JP6680303B2 JP 6680303 B2 JP6680303 B2 JP 6680303B2 JP 2018024095 A JP2018024095 A JP 2018024095A JP 2018024095 A JP2018024095 A JP 2018024095A JP 6680303 B2 JP6680303 B2 JP 6680303B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tube
pipe
temperature
tube end
image
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018024095A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018141778A (ja
Inventor
紘明 大野
紘明 大野
貴彦 大重
貴彦 大重
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Publication of JP2018141778A publication Critical patent/JP2018141778A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6680303B2 publication Critical patent/JP6680303B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Radiation Pyrometers (AREA)

Description

本発明は、見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置に関する。
管材である鋼管の製造工程においては、鋼管の温度情報は操業上非常に重要な要素であり、同一の成分や圧延荷重にて鋼管を製造しても、温度条件が異なることによって、最終製品の材質に大きな違いが発生することがある。なお、ここで述べる温度条件というのは、鋼管の外面の温度だけではなく内面の温度も含み、特に加工発熱により加熱される内面の温度条件は重要である。そのため、従来、鋼管の管内面部の放射率を予め仮定し、撮像手段であるカメラにより得られた管内面部の輝度(光量)から温度に変換して、管内面部の温度を計測する温度計測方法が知られている。
特許文献1には、鋼管の管内面部を含む管端部における熱放射輝度を表す画像を撮影するためのカメラ、前記画像を処理して管内面部を認識するための画像処理装置、及び、画像処理装置から送られてくる管内面部の熱放射輝度信号と管内面部の認識情報とを用いて、管内面部の温度を算出するための演算装置を備えた温度計測装置が開示されている。この温度計測装置では、管内面部の熱放射輝度信号は実効的に放射率が1であるとみなして、演算装置により管内面部の温度を計算している。
特開平5−231949号公報
井内ら、「冷間、熱間圧延中における金属の非接触温度計測法」、天田金属加工機械技術振興財団研究概要報告書・国際交流報告書 第12回、平成12年、p.123-129 伊藤ら、「物体の陰影に基づく光源環境の推定」情報処理学会論文誌:コンピュータビジョンとイメージメディア、vol.41 No.SIG 10、Dec. 2000 JIS C 1612:2000「放射温度計の性能試験方法通則」
しかしながら、実際には単純に管内面部の放射率が1となることはなく、さらに鋼管の内面構造により複雑な多重反射現象が発生するため見かけの放射率の算出は困難であり、特許文献1に開示された温度計測装置では、管内面部の温度を精度良く計測することができないといった課題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、多重反射の影響を考慮して、管端部における管内面部の温度を精度良く計測することが可能となる見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置を提供することである。
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る見かけの放射率算出方法は、管形状物体の管端部における管内面部である管端内面から得られる光量を、前記管端内面から直接放射される自発光成分と、前記管形状物体の軸線方向にわたって放射光が前記管内面部で多重反射して前記管端内面から放射される多重反射成分と、の和として、前記管端内面の見かけの放射率を算出することを特徴とするものである。
また、本発明に係る温度計測方法は、管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測方法であって、前記管端内面を含む前記管端部の画像から、前記管端内面を認識するための画像処理工程と、前記画像処理工程で認識された前記管端内面の輝度値と、上記の発明の見かけの放射率算出方法によって算出された前記管端内面の見かけの放射率と、を用いて、前記管端内面の温度を算出するための温度算出工程と、を有することを特徴とするものである。
また、本発明に係る温度計測方法は、管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測方法であって、前記管端部を撮像する撮像手段の受光角θが60[°]以下であり、前記管形状物体の内径をdとし、前記管形状物体の軸線方向の長さをLとし、前記管内面部の表面性状を表すパラメータの一つをσとしたとき、下記(1)式の関係を満たすことを特徴とするものである。なお、ここで述べるσの単位は[°]とする。
また、本発明に係る温度計測方法は、上記の発明において、前記受光角θは、前記撮像手段が撮像した前記管端部の画像から、前記管端部における管端面または前記管端内面を認識して、前記管端面または前記管端内面の前記軸線方向と直交する方向における断面形状を用いて算出することを特徴とするものである。
また、本発明に係る管材の製造方法は、上記の発明の温度計測方法を用いて計測した前記管端内面の温度の情報を用いて、前記管形状物体である管材を製造することを特徴とするものである。
また、本発明に係る温度計測装置は、管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測装置であって、前記管端内面を含むように前記管端部を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像から、前記管端内面を認識するための画像処理を実施する画像処理手段と、前記画像処理によって認識された前記管端内面の輝度値と、上記の発明の見かけの放射率算出方法によって算出された前記管端内面の見かけの放射率と、を用いて、前記管端内面の温度を算出する温度算出手段と、を備えることを特徴とするものである。
本発明に係る見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置は、多重反射の影響を考慮して、管端内面の温度を精度良く計測することが可能となるという効果を奏する。
図1は、実施形態に係る鋼管の管端部における管内面部(管端内面)の温度を計測するための温度計測装置の模式図である。 図2は、鋼材サンプルの表面放射率を算出するために用いる実験装置の模式図である。 図3は、鋼材の放射角度特性を示すグラフである。 図4は、エリアセンサの受光角θについての説明図である。 図5(a)は、鋼管の表面放射率の分布を示す図である。図5(b)は、赤熱した鋼管をエリアセンサによって横から撮像した画像を示す図である。 図6は、放射角度依存性を表したグラフである。 図7は、鋼管の管内面部で発生する多重反射のシミュレーションの概要を示す図である。 図8は、管長Lと管径dとの比L/d=10として反射率を変化させた場合における、見かけの放射率の受光角特性を示すグラフである。 図9は、放射率0.9の場合における見かけの放射率の受光角特性を、放射のみと多重反射影響とに分けて評価した結果を示すグラフである。 図10は、鏡面性の高い面について、比L/dを変化させたときのグラフである。 図11は、鏡面性の低い面について、比L/dを変化させたときのグラフである。 図12(a)は、正反射方向に管内面部が存在する場合における見かけの放射率の説明図である。図12(b)は、正反射方向に管内面部が存在しない場合における見かけの放射率の説明図である。 図13は、鋼管軸線方向両端で温度を異ならせた場合における、鋼管軸線方向の温度分布の説明図である。 図14は、鋼管軸線方向両端で温度を異ならせた場合における、受光角θを変化させたときの結果を示すグラフである。 図15(a)は、鋼管の管内面部を含む管端部の画像を示す図である。図15(b)は、図15(a)の画像から生成したヒストグラムを示す図である。 図16は、管端部画像と、その画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルと、シミュレーションにより算出した放射率とを、受光角θが45[°]、60[°]について示した図である。 図17は、管端部画像と、その画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルと、その輝度プロファイルにおいて輝度がほぼ一定で横ばいの平坦部の有無とを、受光角θが45[°]、50[°]、55[°]、60[°]について示した図である。 図18は、実際の圧延ライン上で、鋼管の肉厚tと受光角θとを変化させて撮影し、管端部画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルである。 図19は、管端部画像と、その画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルにおける管内面部、平坦部、管外面部を示した図である。 図20は、輝度プロファイルにおける管内面部の長さと平坦部の長さとの算出方法の説明図である。 図21は、図18の各輝度プロファイルに対応する指標のヒストグラムである。 図22は、図18の各輝度プロファイルに対応する各受光角θ及び各肉厚tでの指標の平均及び標準偏差を示したグラフである。 図23は、放射率0.8の場合における受光角θごとのシミュレーション結果を示す図である。 図24は、鋼管に対するエリアセンサの配置位置を示した図である。 図25は、鋼管の管内面部を含む管端部の画像を示す図である。
以下に、本発明に係る見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係る鋼管10の管端部11における管内面部12(管端内面)の温度を計測するための温度計測装置1の模式図である。この温度計測装置1は、撮像手段であるエリアセンサ2や画像処理装置3や演算装置4などで構成されている。エリアセンサ2には、波長を限定するために、干渉フィルターなどの波長選択フィルターを設けてもよい。エリアセンサ2の視野は、管端部11における管内面部12が画面内に入るように設定しており、管端部11における管内面部12から直接放射される自発光成分だけではなく、鋼管10の軸線方向にわたって管内面部12の他の箇所からの放射が多重反射して合わさった多重反射成分が加算された、放射輝度を取得することになる。また、本実施形態においては、図1に示すように、エリアセンサ2の光軸Xと、鋼管軸線方向に直交する仮想直線Yとでなす角を、エリアセンサ2が管端部11から受光する際の受光角θとする。なお、ここで述べる管端部11とは、管端部11から後述するシミュレーションのメッシュ幅分内側の表面を指す。そして、得られた放射輝度を、管内面部12の表面性状に対して多重反射しない条件(以下、表面放射率と定義する。)で計測した放射率を用いて、多重反射影響を評価するためのシミュレーションにより算出した放射率(以下、見かけの放射率と定義する。)を用いて、演算装置4で温度に換算する。
本実施形態に係る温度計測装置1で用いられる温度計測方法は、次の第1処理工程〜第3処理工程の3つの処理工程によって構成される。第1処理工程では、管内面部12の表面性状について、表面放射率及び反射率を測定する。第2処理工程では、シミュレーションにより、鋼管10の管端部11における管内面部12の放射輝度を推定し、安定して測温可能な条件を導出する。第3処理工程では、第2処理工程で導出した条件を用いて、実際に温度計を設置し温度計測を実施する。
まず、本実施形態に係る温度計測方法における第1処理工程について説明する。内面の反射をシミュレーションし、多重反射影響を評価するためには、鋼材表面における放射及び反射の物理特性が予め必要である。そこで、まず表面放射率を算出する。
図2は、鋼材サンプル22の表面放射率を算出するために用いる実験装置20の模式図である。実験装置20は、エリアセンサ2、加熱炉21、鋼材サンプル22、レンガ23、熱電対24及びロガー25などによって構成されている。加熱炉21の上面には、通気孔などの開口部21aが開けられており、その開口部21aから加熱炉21内を覗き込むようにエリアセンサ2が配置されている。加熱炉21内では、加熱炉21の内側面近傍に設けられたヒーター(不図示)からの輻射熱によって加熱されるように、レンガ23上に鋼材サンプル22が設置されており、炉内背光の影響を受けないよう可能な限り加熱炉21内の上部に鋼材サンプル22を位置させている。鋼材サンプル22には、鋼材サンプル上面(エリアセンサ2によって覗き込む面)付近の複数の深さ位置に熱電対24が埋め込まれており、熱電対24からの出力値をロガー25で記録し、1次元の伝熱モデル(線形モデル)を用いて外挿することにより、鋼材サンプル22の表面温度を算出する。エリアセンサ2は、温度域に応じて波長を限定し、予め黒体炉により校正しておき、熱電対24を用いて計測及び算出した表面温度と、その時の放射輝度とにより、表面放射率を算出する。なお、疑似的に表面を黒体に近い条件にできる黒体スプレーを鋼材サンプル22の上面における一部分に塗布し、黒体スプレーを塗布した部分と塗布していない部分とで輝度を比較することにより、表面放射率を算出してもよい。
次に、鋼管10の表面放射率の角度特性を導出する。従来、鋼管10の製造に用いられる鋼材の放射角度特性に対して、図3に示すような角度依存性があることが知られている。すなわち、図4に示すように、鋼管10の軸線方向と直交する垂直方向に対して、エリアセンサ2の受光角θを大きくしていくと、放射率が変化する。また、一様かつ熱平衡状態にある表面性状が鋼管10の管内面部12と同等のサンプル放射面に対し、エリアセンサ2の受光角θを変化させて輝度を取得することによって、実験により測定してもよい。
なお、放射率は、鋼材表面に対して垂直方向への放射である垂直放射のときの放射率を、前述の表面放射率と一致させる必要がある。本実施形態では、図5(a)に示すような、鋼管10の表面放射率の分布(ヒストグラム)を、図5(b)に示すように、赤熱した鋼管10をエリアセンサ2によって横(鋼管10の軸線方向と直交する方向)から撮像した画像により表面放射率の角度特性を導出して、後述するシミュレーションで用いた。また、図6は、放射角度依存性を表したグラフであり、縦軸に鉛直方向への放射を1とした場合の相対的な放射率を示しており、横軸に鉛直方向からの角度である受光角θを示している。これは、非特許文献1に記載された図3と定性的に一致している。
次に、反射率の角度特性を導出する。鋼管10の管内面部12で発生する多重反射をシミュレーションするためには、入射角及び反射角に対して、反射特性を物理的に評価する必要がある。そこで、入射角をθ及び反射角をθとし、下記(2)式に示す簡易化されたTorrance−Sparrowモデルを簡易化したモデル(非特許文献2参照)を用いて評価する。Torrance−Sparrowモデルは、微小面素を仮定して反射を鏡面反射と拡散反射との和で表現するモデルである。下記(2)式中のkは、それぞれの反射の寄与と鏡面反射の広がりとを表す(表面性状を表す)反射パラメータであり、下記(2)式中のK、K及びσというパラメータを有する3次元のベクトルである。このため、本明細書中では、k=(K,K,σ)とも表記する。このkは、実験により入射角に対する反射分布を測定し、下記(2)式にフィッティングすることで得られる。本実施形態では、k=(K,K,σ)=(800,200,13.2)とした。なお、ここで述べる反射率は、表面放射の角度特性とキルヒホッフの法則から算出された反射率の総和により正規化される。
次に、本実施形態に係る温度計測方法における第2処理工程について説明する。図7は、鋼管10の管内面部12で発生する多重反射のシミュレーションの概要を示す図である。なお、図7中、Lは管長(鋼管10の軸線方向長さ)であり、dは管径(鋼管10の内径)である。まず、鋼管10を軸線方向にM個の領域に分割する。次に、p+1回反射時(p=0,1,2,3,・・・)におけるm番目の領域からm番目の領域に向かう光線量Lp+1(m,m)は、p回反射時にm番目(m=1〜M)の各領域からm番目(m=1〜M)の領域に入射した光が、それぞれm番目(m=1〜M)の領域に向かって反射する際の反射率α(m,m,m)を用いて、下記(3)式で表すことができる。
例えば、鋼管10を軸線方向に6個(M=6)の領域に分割した場合において、5回(左辺のp+1=5)反射時における2番目(m=2)の領域から5番目(m=5)の領域に向かう光線量L(2,5)は、4回(右辺のp=4)反射時に1〜6番目の各領域から2番目の領域に入射した光が、5番目の領域に向かって反射する際の反射率α(m,2,5)を用いて、下記(4)式で表すことができる。
なお、上記(4)式において、L(1,2)は、4回反射時に1番目の領域から2番目の領域に入射する光線量を示すものである。L(2,2)は、4回反射時に2番目の領域から2番目の領域に入射する光線量を示すものである。L(3,2)は、4回反射時に3番目の領域から2番目の領域に入射する光線量を示すものである。L(4,2)は、4回反射時に4番目の領域から2番目の領域に入射する光線量を示すものである。L(5,2)は、4回反射時に5番目の領域から2番目の領域に入射する光線量を示すものである。L(6,2)は、4回反射時に6番目の領域から2番目の領域に入射する光線量を示すものである。
また、上記(4)式において、α(1,2,5)は、1番目の領域から2番目の領域に入射した光が、次の反射時に5番目の領域に向かって反射する際の反射率である。また、α(2,2,5)は、2番目の領域から2番目の領域に入射した光が、次の反射時に5番目の領域に向かって反射する際の反射率である。また、α(3,2,5)は、3番目の領域から2番目の領域に入射した光が、次の反射時に5番目の領域に向かって反射する際の反射率である。また、α(4,2,5)は、4番目の領域から2番目の領域に入射した光が、次の反射時に5番目の領域に向かって反射する際の反射率である。また、α(5,2,5)は、5番目の領域から2番目の領域に入射した光が、次の反射時に5番目の領域に向かって反射する際の反射率である。また、α(6,2,5)は、6番目の領域から2番目の領域に入射した光が、次の反射時に5番目の領域に向かって反射する際の反射率である。
次に、入射角θは、管長L及び管径dとメッシュMとを用いて、下記(5)式で表すことができる。また、反射角θは、管長L及び管径dとメッシュMとを用いて、下記(6)式で表すことができる。そのため、反射率α(m,m,m)は、上記(2)式に示すTorrance−Sparrowモデルに、下記(5)式及び下記(6)式の入射角θ及び反射角θを代入することによって得ることができる。なお、反射パラメータk=(K,K,σ)は、実験により導出した。また、反射率α(m,m,m)は、キルヒホッフの法則に基づき、下記(7)式を用いて反射率の総和と放射率とが足して1となるように正規化した。また、この正規化に用いる放射率は、前述の角度特性を持ち、入射角θ方向への放射率をε(θ)と定義し、各入射角ごとに正規化を実施した。
そして、最終的な管端部11における管内面部12から外部への反射光の強度I(ms,out)を、初期放射と漸化的に算出した反射光とにより、下記(8)式を用いて算出する。なお、下記(8)式中の「out」は、光が管端内面部から外部に放射される向きを表す。また、初期値であるL(m,m)は、実験により算出した表面放射率及びその角度特性より算出した。
まず、一般的な鋼材表面から算出した反射パラメータk=(K,K,σ)=(800,200,13.2)について、管長Lと管径dとの比L/d=10として反射率を変化させた場合における、見かけの放射率の受光角特性を図8に示す。なお、図8に示すグラフの縦軸は見かけの放射率とし、横軸は受光角θとし、鋼管軸線方向と直交する方向への受光を受光角θが0[°]とした。また、以下、波長は全て900[nm]とした。
表面放射率が高い場合、入射角60[°]以下で安定して計測可能なことが確認できる。60[°]を超えると放射率が低下する。図9は、放射率0.9の場合における見かけの放射率の受光角特性を、放射のみと多重反射影響とに分けて評価した結果を示すグラフである。図9から、多重反射影響ではなく、表面からの放射角度特性に起因して放射率が低下していることがわかる。したがって、対象表面の放射光強度の角度分布が一定とみなせる受光角θとなるように、計測することが望ましい。
次に、鏡面性の有無と比L/dについて説明する。鏡面性が高い面とは、拡散反射成分の係数Kと比較して鏡面反射成分の係数Kが高く、また鏡面反射の広がりを示すσが小さい面を指す。なお、σは大きければ大きいほど、鏡面反射成分が広がりを持つことを示す。図10に、反射パラメータk=(K,K,σ)=(100,1900,0.57)である鏡面性の高い面について、比L/dを変化させたときのグラフを示す。また、図11に、反射パラメータk=(K,K,σ)=(1900,100,17.2)である鏡面性の低い面について、比L/dを変化させたときのグラフを示す。なお、図10と図11ともに放射率は0.5とした。
比L/dが一定以上であれば、管内面部12の放射角度特性の影響を除けば放射率は安定しているが、比L/dが小さい場合には、受光角θの変化によって、見かけの放射率が急激に変化する場所が存在する。本特性は、鏡面性が高いほど顕著である。そのメカニズムを、図12を用いて説明する。図12(a)は、正反射方向に管内面部が存在する場合における見かけの放射率の説明図である。図12(b)は、正反射方向に管内面部が存在しない場合における見かけの放射率の説明図である。図12(a)に示すように、正反射方向、すなわち、管端面の法線に対してエリアセンサ2の光軸と対称となる方向に、管内面部12が存在する場合は、その管内面部12からの放射光成分が、エリアセンサ2で撮像する管端部11における管内面部12で正反射となり、管端部11における管内面部12からの放射光に加わって受光される。このとき、管内面部12の反射特性が高い正反射率を持つ場合は、加算される反射光量の寄与は大きい。一方、図12(b)に示すように、正反射方向、すなわち、管端面の法線に対してエリアセンサ2の光軸と対称となる方向に、管内面部12が存在しない場合は、管端部11における管内面部12からの放射光に加わって前記放射光成分が受光されることはない。したがって、正反射方向における管内面部12の存在の有無によって、見かけの放射率が大きく変動するため、安定して計測するためには、正反射方向に管内面部12が存在するような、比L/d、及び、受光角θとなる条件にすることが望ましい。そのような条件を、下記(1)式に示す。
また、図11において覗き込み角を変化させていった場合、正反射方向の管内面部12の有無では離散的に変化せず、その前後のある領域にまたがって連続的に変化している。これは、管端部11において管内面部12で反射し、エリアセンサ2で受光する鏡面反射成分は、ちょうど入射角と反射角とが一致する管内面部12だけでなく、その周囲に広がりを持つためである。鏡面反射成分の広がりは、反射パラメータk=(K,K,σ)の鏡面反射の広がりを示すσに依存し、σが大きければ大きいほど、鏡面反射成分は正反射方向の管内面部12近傍の広い範囲の成分を含む、すなわち、覗き込み角の変動に対して緩やかに変化する。
したがって、上記(1)式に示すように、管内面部12の反射特性のうち鏡面反射の広がりを表すσのパラメータを考慮して、エリアセンサ2が受光する光線の中で、管端面における鏡面反射光として寄与する管内面部12のうち、正反射条件から2σ以内の条件となる反射光成分を含む、比L/d、及び、受光角θとなる条件とすれば、ほぼ97.5[%]以上の鏡面反射成分を含むことが可能となる。なお、正反射条件から3σ以内の条件となる反射光成分を含む条件とすれば、99.8[%]以上の鏡面反射成分を含むことが可能となり、より安定して計測できる。
また、図12において、1回目の正反射方向だけでなく、2回正反射して受光する位置となる管内面部12の有無の影響も、わずかではあるが見かけの放射率の変動要因となっている。そのため、管内面部12の鏡面性が極めて高い場合には、エリアセンサ2が受光する光線の中で、2回反射した鏡面反射成分が十分に含まれていることが望ましい。その場合の鏡面反射成分を含む条件は、1回目の鏡面反射成分と同様の考え方で、下記(9)式を満たせば、97.5[%]以上の鏡面反射成分を除去することが可能となる。なお、下記(9)式は、鏡面反射の広がりについてガウス分布を仮定しており、2回反射する場合の鏡面反射の広がりは、ガウス分布同士の畳み込みとなることから導出可能である。
なお、図11において、比L/dが、「2」、「3」、「5」と変化した場合、正反射方向に管内面部12が十分存在する条件で比L/dの大きいほうが、見かけの放射率が高い原因は、比L/dが小さすぎると多重反射効果が小さくなるからであると考えられる。したがって、このような受光角θの変化に対し、見かけの放射率の変動が大きいような不安定な条件における放射測温は避けたほうがよい。
次に、鋼管10の軸線方向両端における管内面部12で温度差が生じる場合について説明する。図13に示すように、鋼管軸線方向両端のうち、エリアセンサ2によって計測する側の管端部11aの温度を1200[℃]で一定とし、その反対側の管端部11bの温度を1000[℃]と1100[℃]と1200[℃]との3水準で設定して、鋼管軸線方向の位置に対して線形となるような温度分布を仮定した。図14に、管端部11bの温度が1000[℃]と1100[℃]と1200[℃]の場合において、受光角θを変化させたときの計測温度の結果を示す。なお、比L/dは10、管内面部12の反射条件はk=(K,K,σ)=(800,200,13.2)、放射率は0.7とし、輝度から温度に変換する際に用いた見かけの放射率は0.78である。
管端部11bの温度が1000[℃]と1200[℃]との場合において、受光角θが60[°]を超えたあたりから計測温度の差は若干広がるが、その差は2[℃]程度であり、測温の影響は少ないことが判明した。
以上の考察により、管端部11における管内面部12の放射率を予め測定しておけば、シミュレーションにより多重反射の影響を考慮して、見かけの放射率を設定し、測温することが可能となる。また、さらなる測温の精度向上を図るためには、以下に説明する2点の工夫を行うことが望ましい。
まず、エリアセンサ2を用いて測温する場合には、カメラのシェーディングの問題が存在する。すなわち、エリアセンサ2で撮像する場合には、カメラのシェーディングにより視野端の輝度が低下する。したがって、同じ対象でも視野位置によって受光輝度が異なるため、異なる温度として算出される。シェーディングの影響は、一般に広角になればなるほど大きい。そこで、1点目の工夫は、予め測定する波長に対して、同一光量における視野内の受光輝度を計測しておき、実際に測温する場合において、予め計測したシェーディングデータを用いて受光輝度を補正してから温度を算出する。これによって、視野端でも視野中央部と同一の温度を得ることが可能となる。なお、シェーディングデータは、黒体炉を用いて温度校正を実施する際に、各視野位置における同一温度の放射輝度データを取得しておき、補間あるいは曲面近似することによって得ることができる。
次に、2点目の工夫は、輝度の算出方法である。管内面部12の輝度は、管内面部12が一様であれば平均値などを取得すればよい。しかしながら、疵や酸化物などの異常により、管内面部12において輝度が低下している部分が存在する場合が多い。そこで、管内面部12の輝度の最大値を取得し、温度に変換することによって、疵や酸化物の影響を受けずに、温度を算出することが可能となる。また、エリアセンサ2のノイズがあり、管内面部12の輝度の最大値が安定しない場合は、最大値付近の輝度を複数平均化することによって安定させることが可能となる。例えば、輝度が10番目に大きい画素から、輝度が6番目に大きい画素までの5画素の輝度の平均値をとるなどすればよい。
また、管内面部12の温度を算出するに当たり、得られた画像から管内面部12を認識する必要がある。管内面部12を認識する手法としては、テンプレートマッチングやハフ変換などの一般的な形状認識や、管内面部12と管外面部13との輝度差を利用するなど、様々な方法が考えられる。
例えば、鋼管10の温度が一様である場合、管内面部12は多重反射の影響によって管外面部13よりも放射率が高い、あるいは、圧延中の鋼管10を空気雰囲気下で測温する場合、管外面部13のほうが管内面部12よりも冷却しやすいなど、管内面部12と管外面部13とに、温度差や見かけの放射率差に起因する輝度差が発生する場合が多い。この場合、図15(a)に示すような鋼管10の管内面部12を含む管端部11の画像から、図15(b)に示すようなヒストグラムを生成し、管内面部12の画素から構成されるピークと、管外面部13の画素から構成されるピークとを用いて、管内面部12を安定的に抽出することが可能となる。なお、ヒストグラムが輝度値に対して高周波成分を持ち、管内面部12の輝度及び管外面部13の輝度以外に複数ピークを持つような場合においては、ローパスフィルターにより高周波成分を除去することが有効である。
さらに、管内面部12を認識した後、楕円近似を実施し、長軸と短軸との比を評価することによって、受光角θを推定することが可能となる。長軸の長さをa、短軸の長さをbとすると、下記(10)式を用いて、受光角θを算出することが可能となる。ただし、管端面の軸線方向と直交する方向における断面形状が、円に近い形状であると仮定する。
そして、シミュレーション結果及び実験結果と対応させて受光角θの情報を用い、見かけの放射率を補正することにより、さらに測温の精度を向上させることが可能となる。具体的には、下記手順によって見かけの放射率を補正する。
まず、シミュレーション結果及び実験結果から、受光角θと見かけの放射率との関係を予めテーブルマップ化する。次に、エリアセンサ2によって、管内面部12を含むように管端部11の画像を取得する。次に、得られた画像から、画像処理装置3による画像処理によって管内面部12を認識する。次に、管内面部12を認識した後、演算装置4によって管端部11から楕円近似により長軸の長さaと短軸の長さbとを算出する。次に、演算装置4は、その算出した長軸の長さa及び短軸の長さbと、上記(10)式とを用いて、受光角θを算出する。そして、最後に、演算装置4は、予めテーブルマップ化しておいた受光角θと見かけの放射率との関係から、見かけの放射率を決定する。
なお、鋼管10の管長L及び管径dや、表面性状による反射パラメータなどに応じて、シミュレーションを実施することにより、受光角θと見かけの放射率との関係を示すテーブルマップを更新し、画像から算出した受光角θを用いて見かけの放射率を算出することによって、さらなる見かけの放射率の算出精度の向上、ひいては、測温の精度向上を図ることが可能となる。
なお、実際に鋼管10の放射測温を加熱炉外で実施するにあたっては、自然冷却によって、管内面部12の鋼管軸線方向で最管端部分が、この最管端部分よりも鋼管軸線方向で奥側の管奥部分に比べて冷却されるケースが存在する。図16は、管端部画像と、その画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルと、シミュレーションにより算出した放射率とを、受光角θが45[°]、60[°]について示したものである。
図16に示した管端部画像内において、管内面部12の最管端部分の位置と、その最管端部分の位置よりも奥側となる管奥部分の位置とに対し、シミュレーションにより算出した放射率の変化は、受光角θが45[°]と受光角θが60[°]ともに非常に小さく0.02以下であった。これは、管内面部12の温度を1200[℃]、波長を900[nm]と仮定して温度に換算すると3[℃]以下程度である。一方、図16に示した輝度プロファイルからわかるように、最管端部分の位置と管奥部分の位置とでは、受光角θが45[°]と受光角θが60[°]ともに輝度が4倍程度変化しており、実際には管内面部12の鋼管軸線方向において温度分布が発生していると考えられる。最管端部分の位置は、切断して製品として使用しない場合が多いため、材質の作りこみなどにおける実運用上において、管内面部12の温度として必要な測温位置は管奥部分の位置である。さらに、管内面部12の測温に際して、管端部11の温度低下度合による影響を受けないことが求められる。
図17は、管端部画像と、その画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルと、その輝度プロファイルにおいて輝度がほぼ一定で横ばいの平坦部fの有無とを、受光角θが45[°]、50[°]、55[°]、60[°]について示したものである。図17に示した管端部画像からわかるように、受光角θが大きければ大きいほど、エリアセンサ2によって管内面部12の鋼管軸線方向で奥側の位置まで撮像される。また、受光角θが45[°]と受光角θが60[°]とを比較すると、まず、受光角θが45[°]の輝度プロファイルでは、管内面部12の最管端部分から、管端部画像内における管内面部12の最も奥側である最管奥部分に向かって輝度が上昇し続けており、輝度がほぼ一定で横ばいの状態となる平坦部fが殆ど無い。これに対して、受光角θが60[°]の輝度プロファイルでは、管内面部12の最管端部分から最管奥部分に至る過程で一定輝度に達し平坦部fが有る。
ここで、管内面部12の画像を取得し、輝度の最大値または輝度の最大値付近の平均輝度を用いて温度を算出した場合には、受光角θの変化によって、撮像された管端部画像内における管内面部12の最管奥部分の位置が変化する。そのため、管内面部12の最管奥部分が温度勾配を持つ場合は、受光角θのわずかな変化により測温結果が変化する。
受光角θは、光学系のアライメント及び鋼管10の位置により変化するため、測温結果が受光角θに依存して変化してしまうと誤差要因となる。そのため、なるべく管内面部12の最管奥部分が温度勾配を持たない、すなわち管内面部12の最管端部分から最管奥部分に至る過程で一定輝度に達し横ばいの状態となる条件で測温する。これにより、受光角θが多少変化しても測定温度への影響は小さくなり、管端部11の温度低下の影響を受けずに安定して実用的な管内面部12の測温が可能となる。
図18は、実際の圧延ライン上で、肉厚tが30[mm]未満以下と30[mm]以上40[mm]未満と40[mm]以上のそれぞれの鋼管10を、受光角θを45[°]、50[°]、55[°]、60[°]と変化させて、エリアセンサ2により撮像した管端部画像から生成した管径中心部長手方向の輝度プロファイルを示したものである。
受光角θが50[°]、55[°]、60[°]の輝度プロファイル形状は、いずれの肉厚tにおいても、管内面部12の最管端部分から最管奥部分に向かう途中で一定輝度に達し、グラフの勾配が横ばいの状態となっている。一方、受光角θが45[°]の輝度プロファイル形状は、いずれの肉厚tにおいても、管内面部12の最管奥部分まで達してもグラフの勾配が急なままとなっている。したがって、輝度プロファイル形状の管内面部12に対応する部分のグラフの勾配が横ばいの状態となっているかによって、安定して測温できるかどうかを判断することが可能である。
輝度プロファイル形状の管内面部12に対応する部分に平坦部fが有るか無いかの判断は、管端部画像から目視で実施してもよいが、信号処理を用いて指標を算出し、定量的に実施することも可能である。定量化の方法としては、様々な方法が考えられるが、例えば、管内面部12の最管奥部分付近での平坦部fの有無及び平坦部fの長さを評価することによって行うことが考えられる。
なお、鋼管10の管径dの変化に関しては、鋼管10の肉厚tに対して管径dが十分に大きければ、輝度プロファイル形状の管内面部12に対応する部分に平坦部fが十分存在するための受光角θに与える影響は少ない。その理由について簡単に説明する。まず、穿孔時は鋼管10が非常に高温であるため、抜熱は輻射が支配的である。鋼管10の管外面部13からの抜熱は、鋼管10の全長にわたって均一であるため、管端部11の温度低下に影響を与えない。したがって、管内面部12からの管端方向への輻射抜熱が、管端部11の温度低下の主要因となる。
ここで、受光角θを一定とし、エリアセンサ2の視野における管内面部12の最管奥部分の位置での抜熱を考える。まず、管内面部12からの管端方向への輻射抜熱は、管径dによらず管端開口部への輻射の立体角が等しいため一定である。また、管径dがa倍変化したとき、管内面部12の最管奥部分の位置での熱容量(体積)と表面積とがともにa倍となるため、抜熱速度に影響を与えない。したがって、管径dの変化は、輝度プロファイル形状の管内面部12に対応する部分に平坦部fが十分存在するための受光角θに与える影響が少ない。
まず、図19に示した管端部画像の管径中心部長手方向に沿って右端から左端に観察する。輝度プロファイルからわかるように、鋼管10が存在しない部分では輝度が殆ど0に近い。そして、その輝度が0に近い状態から管端部11に差し掛かると輝度が上昇し始め、管内面部12の最管端部分から最管奥部分に向けて輝度が大きく上昇する。管内面部12の最管奥部から管外面部13に差し掛かると輝度が急激に低下する。
ここで、輝度プロファイル形状の管内面部12に対応する部分に平坦部fが存在するかの指標Zとして、輝度プロファイル上で平坦部fの長さが管内面部12の長さに占める割合を考える。管内面部12及び平坦部fの長さを算出する方法としては、直線フィッティングするなど様々な方法が考えられるが、ここでは単純に輝度プロファイルの最大輝度値と比較して、一定割合以上の輝度値を有する部分を平坦部fとする。そして、平坦部fが管内面部12のおおよそ一定割合以上存在すれば、平坦部fが十分に存在し、十分安定的に測温可能とする。
以下、輝度プロファイルにおける管内面部12の長さと平坦部fの長さとを算出するアルゴリズムの一例を、図20を用いて説明する。
まず、輝度プロファイルの最大輝度値Tmaxを算出する。次に、輝度プロファイルを右端から左端へと探索する。具体的には、輝度プロファイルの右端から左方向に探索し、閾値p1×Tmaxを超えた部分を管内面部12の開始位置P1とする。管内面部12の開始位置P1からさらに左方向に探索し、閾値p2×Tmaxを超えた部分を平坦部fの開始位置P2とする。平坦部fの開始位置P2からさらに左方向に探索し、閾値p3×Tmaxを下回った部分を管内面部12及び平坦部fの終了位置P3とする。そして、輝度プロファイルにおける開始位置P1と終了位置P3との間の領域を管内面部12とし、開始位置P1と終了位置P3との距離を管内面部12の距離として算出する。また、輝度プロファイルにおける開始位置P2と終了位置P3との間の領域を平坦部fとし、開始位置P2と終了位置P3との距離を平坦部fの距離として算出する。そして、算出した管内面部12の距離と平坦部fの距離とから、管内面部12で平坦部fが占める割合を算出し、その割合を指標Zとする。
例えば、図18に示した各輝度プロファイルに対して、閾値p2×Tmaxは、最大輝度値Tmaxの90[%](p2=0.9)として、平坦部fの開始位置P2を設定する。また、閾値p1×Tmaxは、最大輝度値Tmaxの30[%]を超える部分(p1=0.3)として、管内面部12の開始位置P1を設定する。さらに、閾値p3×Tmaxは、平坦部fの開始位置P2よりも後に最大輝度値Tmaxの85[%]を下回った部分(p3=0.85)として、管内面部12及び平坦部fの終了位置P3を設定する。そして、これにより算出した管内面部12の距離と平坦部fの距離とから、管内面部12で平坦部fが占める割合を算出し指標Zとする。
なお、指標Zを算出するにあたって、輝度プロファイル形状がなだらかでない場合は、平均化フィルターや中央値フィルターなどを用いてなだらかにする前処理を実施してもよい。
図21は、図18の各輝度プロファイルに対応する指標Zのヒストグラムである。図22は、図18の各輝度プロファイルに対応する各受光角θ及び各肉厚tでの指標Zの平均及び標準偏差を示したグラフである。
図21及び図22に示されるような受光角θと指標Zとの関係から、受光角θが50[°]以上、より好ましくは55[°]以上であれば、平坦部fを安定的に測温することが可能となる。また、肉厚tが大きければ大きいほど、管端部11の冷却影響が少なく、より管端側の位置でも安定的に測温できるため、肉厚tが大きければ50[°]未満の受光角θでも、安定して測温が行える場合もある。
ここで述べた指標Zの算出方法はあくまで一例であり、平坦部fが十分存在するかどうかの判断が可能な指標であれば別の指標でもよい。なお、本手法において算出した指標Zに閾値を設け、安定して測温できているかどうかを判定し、指標Zが閾値未満である場合には不適合とする運用を実施してもよい。指標Zの閾値としては、例えば、0.4とすることによって、図22からわかるように、受光角θが50[°]、55[°]、60[°]において肉厚tによらず安定して測温を行うことができる。
[実施例]
本発明の鋼管10における実施例を述べる。まず、鋼材の表面放射率を測定した。鋼管10と同一の鋼材の内部且つ表面近傍の複数の深さ位置に熱電対を埋め込み、1次元の伝熱モデル(線形モデル)を用いて外挿することにより算出した表面温度に対して、予め校正されたエリアセンサ2を用いて管内面部12を含むように管端部11を撮像し比較した。波長は900[nm]を用いた。実験室で試験を実施した結果、放射率は0.7と判明した。
次に、シミュレーションに用いたパラメータについて説明する。対象となる鋼管10の管長Lは8000[mm]、管径dは400[mm]、表面性状のパラメータは実験で、K=800、K=200、σ=13.2と算出した。また、放射角度条件は図6に示す条件を用いた。
図23は、放射率0.8の場合における受光角θごとのシミュレーション結果を示す図である。図24は、鋼管10に対するエリアセンサ2の配置位置を示した図である。受光角θが60[°]以下であれば、放射率を0.87と設定して、安定して計測することが可能である。また、受光角θを55[°]以上60[°]以下とすることにより、管端部11の温度低下の影響を避けて、エリアセンサ2により管内面部12の奥側を十分に覗き込むことが可能となる。したがって、本実施例では、受光角θが60[°]となるようにエリアセンサ2を配置し、図25に示すような鋼管10の管内面部12を含む管端部11の画像を取得した。なお、本実施例では、受光角θが60[°]となるようにエリアセンサ2を配置したが、55[°]以上60[°]以下の範囲内から選択された受光角θとなるように、エリアセンサ2を配置して前記画像を取得すればよい。エリアセンサ2は、予め温度校正とシェーディングデータとを取得しており、得られた画像から管内面部12を認識してシェーディング補正をかけた後、最大輝度を算出する。管内面部12の認識方法は、画像処理的に実施してもよいが、今回は多重反射と抜熱の影響とによって、管外面部13と比較して管内面部12の温度が高いため、画像全体で最大輝度を算出した。なお、安定した計測のために、最大輝度ではなく、最大付近の輝度を複数取得して平均化してもよい。
次に、本実施形態に係る温度計測方法における第3処理工程について説明する。ここでは、得られた輝度から温度に変換する方法について述べる。エリアセンサ2などの放射温度計の校正方法は、上記非特許文献3に記された方法により規格化されている。まず、黒体炉と標準放射温度計とを用いてエリアセンサ2を校正する。すなわち、黒体炉の温度設定を、計測したい温度領域内で複数点設定し、その時における標準放射温度計の指示値とエリアセンサ2の輝度値(受光光量)とを取得する。得られた複数の温度値Tと輝度値Vに対して、下記(11)式を用いて近似曲線を算出し、パラメータA,B,Cを得る。ここで、下記(11)式中、cは放射の第二定数を示す。そして、得られたパラメータA,B,Cと輝度値Vとを用いて、下記(12)式により温度を算出する。なお、下記(12)式は、対象が黒体すなわち放射率が1となる条件における算出式であるため、実際に輝度値Vを代入する際には、見かけの放射率で割った値とする必要がある。
露光時間を2000[μsec]に設定し、カメラゲインを校正時と同じ値とした上で、エリアセンサ2として12[bit]カメラを用いた結果、パラメータA,B,Cはそれぞれ、A=8.76×10−7、B=2.61×10−5、C=6.61×10となり、前述のシミュレーションによって算出した見かけの放射率0.87を用いて温度を算出した結果、管端部11の内面温度は1320[℃]であった。
また、本実施形態に係る温度計測方法を用いて計測した管内面部12の温度の情報を用いる鋼管10の製造工程において、製造ライン上を搬送中の複数の鋼管10に対して、エリアセンサ2を用いて必要な輝度画像を取得する際には、エリアセンサ2による撮像位置に鋼管10の有無によらず、常に画像を撮像しておき、画像処理によって、エリアセンサ2による撮像位置に管内面部12を含む管端部11が位置するような必要な画像を選定し、取り込みを実施すればよい。本実施形態では、背光の影響がない空気雰囲気下における測温を仮定し、視野内に測温対象となる鋼管10以外の発光体が存在しない状態で測温を実施する。したがって、画像内の全て、あるいは、指定した範囲内の平均輝度が、予め設定された閾値を超えた場合のみ、そのときの画像をエリアセンサ2から画像処理装置3が取り込み、上述したような演算装置4による輝度を温度に換算する処理を実施することにより、製造ライン上の各鋼管10に紐付いた温度計測が可能となる。
以上、上記の実施形態で説明したように、本発明の温度計測方法によって、鋼管10の管端部11における管内面部12について、複雑な多重反射影響をモデル化し、精度よく温度を計測することが可能となった。なお、本発明の温度計測方法は、鋼管10のみならず、多角形形状の管材の管端部における管内面部の温度計測に関しても適用可能である。
1 温度計測装置
2 エリアセンサ
3 画像処理装置
4 演算装置
10 鋼管
11 管端部
12 管内面部
13 管外面部
20 実験装置
21 加熱炉
22 鋼材サンプル
23 レンガ
24 熱電対
25 ロガー

Claims (8)

  1. 管形状物体の管端部における管内面部である管端内面から得られる光量を、前記管端内面から直接放射される自発光成分と、前記管形状物体の軸線方向にわたって放射光が前記管内面部で多重反射して前記管端内面から放射される多重反射成分と、の和として、前記管端内面の見かけの放射率を算出する見かけの放射率算出方法であって、
    前記多重反射成分は、前記管内面部での鏡面反射と拡散反射とから求めることを特徴とする見かけの放射率算出方法。
  2. 管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測方法であって、
    前記管端内面を含む前記管端部の画像から、前記管端内面を認識するための画像処理工程と、
    前記画像処理工程で認識された前記管端内面の輝度値と、請求項1に記載の見かけの放射率算出方法によって算出された前記管端内面の見かけの放射率と、を用いて、前記管端内面の温度を算出するための温度算出工程と、
    を有することを特徴とする温度計測方法。
  3. 請求項2に記載の温度計測方法を用いて計測した前記管端内面の温度の情報を用いて、前記管形状物体である管材を製造することを特徴とする管材の製造方法。
  4. 管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測装置であって、
    前記管端内面を含むように前記管端部を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段によって撮像された画像から、前記管端内面を認識するための画像処理を実施する画像処理手段と、
    前記画像処理によって認識された前記管端内面の輝度値と、請求項1に記載の見かけの放射率算出方法によって算出された前記管端内面の見かけの放射率と、を用いて、前記管端内面の温度を算出する温度算出手段と、
    を備えることを特徴とする温度計測装置。
  5. 管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測方法であって、
    前記管端内面を含む前記管端部の画像から、前記管端内面を認識するための画像処理工程と、
    前記画像処理工程で認識された前記管端内面の輝度値と、前記管端内面の見かけの放射率と、を用いて、前記管端内面の温度を算出するための温度算出工程と、
    を有し、
    前記管端内面の見かけの放射率は、前記管端内面から得られる光量を、前記管端内面から直接放射される自発光成分と、前記管形状物体の軸線方向にわたって放射光が前記管内面部で多重反射して前記管端内面から放射される多重反射成分と、の和として算出しており、
    前記管端部を撮像する撮像手段の受光角θが60[°]以下であり、
    前記管形状物体の内径をdとし、前記管形状物体の軸線方向の長さをLとし、前記管内面部の表面性状を表すパラメータの一つをσとしたとき、下記(1)式の関係を満たすことを特徴とする温度計測方法。
  6. 請求項5に記載の温度計測方法において、
    前記受光角θは、前記撮像手段が撮像した前記管端部の画像から、前記管端部における管端面または前記管端内面を認識して、前記管端面または前記管端内面の前記軸線方向と直交する方向における断面形状を用いて算出することを特徴とする温度計測方法。
  7. 請求項5または6に記載の温度計測方法を用いて計測した前記管端内面の温度の情報を用いて、前記管形状物体である管材を製造することを特徴とする管材の製造方法。
  8. 管形状物体の管端部における管内面部である管端内面の温度を計測する温度計測装置であって、
    前記管端内面を含むように前記管端部を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段によって撮像された画像から、前記管端内面を認識するための画像処理を実施する画像処理手段と、
    前記画像処理によって認識された前記管端内面の輝度値と、前記管端内面の見かけの放射率と、を用いて、前記管端内面の温度を算出する温度算出手段と、
    を備えており、
    前記管端内面の見かけの放射率は、前記管端内面から得られる光量を、前記管端内面から直接放射される自発光成分と、前記管形状物体の軸線方向にわたって放射光が前記管内面部で多重反射して前記管端内面から放射される多重反射成分と、の和として算出しており、
    前記撮像手段の受光角θが60[°]以下であり、
    前記管形状物体の内径をdとし、前記管形状物体の軸線方向の長さをLとし、前記管内面部の表面性状を表すパラメータの一つをσとしたとき、下記(1)式の関係を満たすことを特徴とする温度計測装置。
JP2018024095A 2017-02-24 2018-02-14 見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置 Active JP6680303B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017033757 2017-02-24
JP2017033757 2017-02-24

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018141778A JP2018141778A (ja) 2018-09-13
JP6680303B2 true JP6680303B2 (ja) 2020-04-15

Family

ID=63528085

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018024095A Active JP6680303B2 (ja) 2017-02-24 2018-02-14 見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6680303B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6988841B2 (ja) * 2018-02-14 2022-01-05 Jfeスチール株式会社 温度計測システム、温度計測方法及び管材の製造方法
JP6973426B2 (ja) * 2018-02-14 2021-11-24 Jfeスチール株式会社 温度計測システム、温度計測方法及び管材の製造方法
US11852538B2 (en) 2018-11-05 2023-12-26 Sony Corporation Temperature estimation device, temperature estimating method, and temperature estimating program

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58171643A (ja) * 1982-04-01 1983-10-08 Nippon Steel Corp 管状物体の温度測定方法及び装置
JPS58131523A (ja) * 1981-12-28 1983-08-05 Nippon Steel Corp 管状物体の温度測定法
JPS58167929A (ja) * 1982-03-30 1983-10-04 Nippon Steel Corp 管状物体の温度測定方法
JPS5987329A (ja) * 1982-11-10 1984-05-19 Nippon Kokan Kk <Nkk> 鋼板の温度測定方法
JPS59160724A (ja) * 1983-03-04 1984-09-11 Nippon Steel Corp 管状物体の温度測定方法
JPS6196425A (ja) * 1984-10-18 1986-05-15 Kawasaki Steel Corp 鋼板温度計測方法
JPS62180232A (ja) * 1986-02-04 1987-08-07 Nippon Steel Corp 管状物体の温度測定方法
US5282017A (en) * 1990-01-05 1994-01-25 Quantum Logic Corporation Reflectance probe
JPH05203497A (ja) * 1992-01-29 1993-08-10 Nkk Corp 鋼板の温度測定方法
JPH05231949A (ja) * 1992-02-19 1993-09-07 Nippon Steel Corp 管状物体の温度測定装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018141778A (ja) 2018-09-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6680303B2 (ja) 見かけの放射率算出方法、温度計測方法、管材の製造方法及び温度計測装置
CN103604504B (zh) 一种红外辐射精确测温方法
JP7062339B2 (ja) 温度測定方法及び温度測定装置
US11359967B2 (en) Method for measuring actual temperature of flame by using all information of radiation spectrum and measurement system thereof
GB2548998A (en) Temperature measurement system for furnaces
Usamentiaga et al. Temperature measurement using the wedge method: Comparison and application to emissivity estimation and compensation
JP2021179404A (ja) 温度測定システム
Lane et al. Calibration and measurement procedures for a high magnification thermal camera
CN113865717B (zh) 一种基于高速相机的瞬态高温比色测温装置
TWI442032B (zh) 非接觸式溫度量測方法
Wang et al. Improvement method of high-temperature digital image correlation measurement accuracy based on image processing
JP6787419B2 (ja) 温度計測システム、温度計測方法及び管材の製造方法
CN106248214A (zh) 一种红外热像仪测量物体表面发射率的方法
CN114509165A (zh) 一种光谱发射率测量装置及表面温度测量方法
Campello et al. Validation of a multimodal set‐up for the study of zirconium alloys claddings' behaviour under simulated LOCA conditions
US11493439B2 (en) Optical sensing calibration system and method
JP6988841B2 (ja) 温度計測システム、温度計測方法及び管材の製造方法
JP6973426B2 (ja) 温度計測システム、温度計測方法及び管材の製造方法
RU2659457C2 (ru) Способ обследования поверхности объекта инфракрасным прибором
WO2003087885A2 (en) Apparatus and method for true temperature estimation
KR101863498B1 (ko) 고온계측이 가능한 교정곡선 산출 시스템
CN111272296B (zh) 一种降低光路中粉尘对红外测温影响的校正方法及系统
CN117268563B (zh) 一种基于黑体辐射的辐射出射度与灰度关系曲线测量方法
JP2007256099A (ja) 表面温度測定装置および表面温度測定方法
KR101947256B1 (ko) 고온계측이 가능한 교정곡선 산출 방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180920

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190718

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190730

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190913

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200302

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6680303

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250