以下、本発明に係る構成を図1から図14に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
[第1の実施形態]
(画像形成装置)
本発明に係る画像形成装置の一実施形態について図1を参照して説明する。画像形成装置としては、例えばプリンタ、複写機、ファックス等、トナーを用いて画像形成を行う実施形態が挙げられ、記録媒体である用紙に形成されたトナー画像(未定着画像)を定着する定着装置を備えるものである。
図1は、本実施形態の画像形成装置本体100を示す概略構成図である。本実施形態の画像形成装置本体100は、タンデム型中間転写式であり、給紙トレイ44を有する給紙テーブル200を下部に備える。
また、画像形成装置本体100の内部には、複数の画像形成手段18Y、18M、18C、18Kが並設されたタンデム型中間転写式のタンデム型画像形成部11が設けられている。これらの符号に付けた添え字Y,M,C,Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色をそれぞれ示している。
画像形成装置本体100には、中央付近に無端ベルト状の中間転写体(以下、中間転写ベルト)10が設けられている。この中間転写ベルト10は、複数のローラ14、15、15’、16等に掛け回されて支持され、図1中の時計回りに回転搬送可能である。
図1の構成例では、こうした支持ローラの1つである二次転写対向ローラ16の中間転写ベルト10の回転方向下流側に、中間転写ベルト用のクリーニング装置17を設けている。クリーニング装置17は画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する。
支持ローラ14と支持ローラ15間に張り渡した中間転写ベルト10の上部には、その搬送方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成手段18Y,18M,18C,18Kが配置される。符号は以下、18(Y,M,C,K)のように略記する。
こうして、4つの画像形成手段18(Y,M,C,K)が横に並べて配置され、上述のようにタンデム型画像形成部11を構成する。このタンデム型画像形成部11の各画像形成手段18(Y,M,C,K)はそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を担持する像担持体としての感光体ドラム40(Y,M,C,K)を有している。
そして、このタンデム型画像形成部11の上部には、図1に示すように2つの露光装置12が設けられている。各露光装置12はそれぞれ2つの画像形成手段(18Yと18M、18Cと18K)に対応して設けられている。各露光装置12は、例えば半導体レーザ、半導体レーザアレイ、あるいはマルチビーム光源等の光源装置と、カップリング光学系と、ポリゴンミラー等による共通の光偏向器と、2系統の走査結像光学系等で構成される光走査方式の露光装置である。各露光装置12は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報に応じて、各感光体ドラム40(Y,M,C,K)に露光を行い、静電潜像を形成する。
また、各画像形成手段18(Y,M,C,K)の感光体ドラム40(Y,M,C,K)の周囲には、次の部材が設けられている。それは露光に先立って各感光体ドラムを均一に帯電する帯電装置と、露光によって形成された静電潜像を各色のトナーで現像する現像装置と、感光体ドラム上の転写残トナーを除去する感光体用クリーニング装置とである。
さらに、各感光体ドラム40(Y,M,C,K)から中間転写ベルト10にトナー画像を転写する一次転写位置には、一次転写ローラ62(Y,M,C,K)が設けられている。一次転写ローラ62(Y,M,C,K)は、中間転写ベルト10を間に挟んで各感光体ドラム40(Y,M,C,K)に対向するように設けられ、一次転写手段の構成要素となる。
中間転写ベルト10を支持する複数の支持ローラのうち、支持ローラ14は中間転写ベルト10を回転駆動する駆動ローラであり、例えばギヤ、プーリ、ベルト等、図示しない駆動伝達機構を介してモータと接続されている。また、ブラックの単色画像を中間転写ベルト10上に形成する場合には、図示しない移動機構により、この支持ローラ14以外の支持ローラ15、15’を移動させて、感光体ドラム40(Y,M,C)を中間転写ベルト10から離間させることが可能である。この他、バックアップローラ63も支持するローラとして設けられている。
中間転写ベルト10を挟んでタンデム型画像形成部11と反対の側には、二次転写装置13を備えている。この二次転写装置13は、図1の例では、二次転写対向ローラ16に二次転写ローラ16’を押し当てて転写電界を印加することで、中間転写ベルト10上の画像をシート状の記録媒体としての用紙に転写する。
また、二次転写装置13の横には、用紙上の転写画像を定着する定着装置20を備える。二次転写装置13で画像が転写された用紙は、2つのローラ37に支持された搬送ベルト38により、定着装置20へと搬送される。もちろん、搬送ベルト38の部分は、固定されたガイド部材でも良く、また、搬送ローラや搬送コロ等でも良い。
さらに図1の例では、タンデム型画像形成部11、二次転写装置13および定着装置20の下部に、用紙の両面に画像を記録すべく用紙を反転して搬送するシート反転装置39を備えている。
また、用紙の搬送はつぎのように行われる。まず、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択的に回転され、ペーパバンク43に多段に設けられた給紙トレイ44の1つから用紙を繰り出す。その繰り出された用紙は、分離ローラ45で1枚ずつに分離されて給紙路46に導入され、搬送ローラ対47で搬送されるとともに、画像形成装置本体100内の給紙路48に導かれた後、位置決めローラ(レジストローラ)対49に突き当てられて止められる。
また、手差しトレイ51を用いる場合には、給紙ローラ50が回転され、手差しトレイ51上の用紙が繰り出されるとともに、繰り出された用紙は、分離ローラ52で1枚ずつ分離された後、手差し給紙路53に導入され、同様にして位置決めローラ対49に突き当てられて止められる。
その後、中間転写ベルト10上のフルカラーのトナー画像形成にタイミングを合わせて位置決めローラ対49が回転され、中間転写ベルト10と二次転写ローラ16’との間の二次転写位置に用紙が送り込まれる。そして、中間転写ベルト10上のフルカラーのトナー画像が用紙上に一括転写される。
そのトナー画像が転写された用紙は、搬送ベルト38によって搬送されて定着装置20へ送り込まれ、その定着装置20で熱と圧力とが加えられて転写されたトナー画像が定着された後、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出されてスタックされる。
両面コピーの場合、片面に画像が定着された用紙は、シート反転装置39に導入されて反転された後、再び二次転写位置へ導かれ、裏面にも画像が転写され、定着装置20で定着された後、排出ローラ56によって排紙トレイ57上に排出される。
(定着装置)
本実施形態に係る定着装置は、加熱手段(加熱ローラ21のヒータ25)により加熱される定着部材(定着ベルト24)と、該定着部材の少なくとも一部を押圧可能に配置され、定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材(加圧ローラ23)と、を備え、ニップ部に未定着トナー像(未定着トナー像T)を担持した記録材(記録媒体P)を搬送して、該未定着トナー像を記録材に定着する定着装置(定着装置20)において、定着部材の表面を摺擦する摺擦部材(摺擦部材30)と、定着部材の表面状態を検出する表面状態検出手段(表面状態検出センサ32)と、表面状態検出手段による検出結果に応じて、2以上の異なる実行時間で摺擦部材により定着部材の摺擦動作を実行させる制御手段(制御手段35)と、を有するものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
図2は、定着装置20の一例を示しており、定着ローラ22の軸方向での概略断面図である。
定着装置20は、加熱ローラ21と、定着ローラ22と、加熱ローラ21、定着ローラ22およびテンションローラ27に張架される定着ベルト24と、定着ローラ22を押圧して定着ローラ22との間にニップ部を形成する加圧ローラ23等を備えている。また、加熱ローラ21は、熱源としてのヒータ25、加圧ローラ23は、熱源としてのヒータ26をそれぞれ内部に有している。
定着装置20は、定着ローラ22と加圧ローラ23との圧接によって形成される定着ベルト24と加圧ローラ23とのニップ部に未定着トナー像Tを担持した記録媒体Pを通紙して加熱定着を行うものである。なお、加熱ローラ21、定着ローラ22及び加圧ローラ23は、定着装置20の筐体の長手方向に回転可能に軸支され、各ローラの駆動手段等は、筐体に固定保持されている。
ニップ部を通紙した記録媒体Pは、定着ローラ22側に配置された分離板28または加圧ローラ23側に配置された分離板29によって先端部が分離されて、次工程に排出される。なお、定着ローラ22側、加圧ローラ23側にそれぞれ配置される分離部材としての分離板28、29は、板状の部材に限られるものではなく、分離爪を用いるようにしても良い。
加熱ローラ21は、例えば、金属材料からなる薄肉の円筒体であって、その円筒体の内部には熱源としてのヒータ25が固設されている。ヒータ25としては、例えば、ハロゲンヒータやカーボンヒータ等を用いることができる。また、ヒータ25の両端部は、定着装置20の筺体に固定されている。また、ヒータ25は、加熱ローラ21を外部から加熱する誘導加熱手段(IH加熱手段)であっても良い。
ヒータ25は、装置本体の電源部(交流電源)により出力制御され、このヒータ25からの輻射熱によって加熱ローラ21が加熱される。さらに加熱ローラ21によって加熱された定着ベルト24の表面から記録媒体P上の未定着トナー像Tに熱が加えられる。ヒータ25の出力制御は、定着ベルト24の表面に対向する位置に設けられるサーモパイル等の温度センサ31によるベルト表面温度の検出結果に基づいてなされる。温度センサの設置位置および設置数はこれに限られるものではなく、加圧ローラ23の温度を検出する温度センサや、定着ローラ22の温度を検出する温度センサ等を設けるとともに、これに基づいてヒータ25,26の制御をしてもよい。
定着ベルト24は、定着ローラ22と加熱ローラ21の周囲に掛けまわされ、加熱ローラ21および定着ローラ22に密着している。このように構成した定着ベルト24に、定着ローラ22に対応する箇所に加圧ローラ23を押し当てることで、定着ニップ部を構成する。
定着ベルト24は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂からなる層厚90μmのベース層上に、シリコーンゴムなどの弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端ベルトである。
定着ベルト24の弾性層は、層厚が200μm程度であって、シリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト24の離型層は、層厚が20μm程度であって、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等で形成されている。定着ベルト24の表層に離型層を設けることにより、トナー(トナー像)に対する離型性(剥離性)が確保されることになる。
また、定着ベルト24は、例えば、厚さ90μmの耐熱樹脂の無端フィルムであるPIベルトで構成され、表層には、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)などのオフセット防止剤がコーティングされている。
定着ローラ22は、熱源を有しておらず、金属(鉄やアルミ)などの剛性の高い芯材(芯金)を、シリコーンゴムなどの厚い弾性層で覆ったものである。
加圧ローラ23は、定着ローラ22と同様に、SUS304等の芯金上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層が形成されたローラ部材である。また、円筒体の内部には熱源としてのヒータ26が固設されている。なお、ヒータ26を有さない構成としても良い。
定着ローラ22と加圧ローラ23とは、対向して配置されるゴムローラであり、加圧ローラ23が定着ベルト24を介して定着ローラ22の中心方向に加圧されることにより、加圧ローラ23と定着ベルト24との間でニップ部が形成される。また、加圧ローラ23の定着ローラ22側への押圧力(加圧力)を制御することにより、ニップ幅の大きさを制御することが可能である。
また、制御手段35は定着装置20の各種制御を実行するコントローラである。制御手段35は、定着ローラ22を駆動させる駆動手段を制御して、定着ローラ22を時計回り方向に回転駆動させる。定着ローラ22の回転により、定着ローラ22に圧接する加圧ローラ23および定着ベルト24が同速で連れ回り回転する。
また、定着ベルト24の外周面に、所定の圧力で定着ベルト24に押し付けられ、定着ベルト24の回転に連れて回転する摺擦部材30を備えている。
摺擦部材30は、定着ベルト24に付勢されることにより、定着ベルト24の表面を摺擦して研磨し、定着ベルト24の表面性を回復させて、定着に適した表面状態とする。摺擦部材30は、例えば、金属の芯金に所定の粗さを有する表層を有し、表層は、例えば数10μmオーダの凹凸形状を有しており、その表面粗さは定着ベルト24の表面粗さより大きい。
摺擦部材30は、定着ベルト24の表面の搬送方向に直交する方向(軸方向)の全域に亘って、その表面状態を改質することができることが好ましい。このとき、摺擦部材30を軸方向の全域に設けるようにしてもよいし、所定長さの摺擦部材30に軸方向に移動可能な駆動手段を備えるようにし、軸方向の所望の位置に移動可能とすることで、軸方向の全域に亘って、その表面状態を改質するようにしてもよい。なお、通紙する記録媒体Pの幅に応じて少なくともエッジ部の通過領域について表面状態を改質することができるように設けられていてもよい。
摺擦部材30は、制御手段35にて制御される駆動手段を備えており、定着ベルト24の回転方向と順方向もしくは逆方向に、定着ベルト24と所定の線速差をつけて回転駆動される。また、摺擦部材30は、定着ベルト24に対して離間可能であることが好ましい。
表面状態検出センサ32は、少なくとも記録媒体Pのエッジ部分が通過する領域(エッジ部)の定着ベルト24の表面性を検出する表面状態検出手段である。記録媒体Pのサイズによりエッジ部は異なるため、複数のエッジ部での検出が可能となっている。また、表面状態検出センサ32は、エッジ部、および記録媒体Pのエッジ部分を除く通過領域である通紙領域(非エッジ部、通紙部ともいう)の双方の表面性を検出可能であることが好ましい。
表面状態検出センサ32としては、例えば、発光部と、該発光部からの発光に対する定着ベルト24からの反射光を検出する受光部と、を備えた光学センサを用いることができる。表面状態検出センサ32は、定着ベルト24の表面性を検出可能なものであればよく、光学センサに限られるものではない。また、定着ベルト24の回転方向における設置位置も図2の例に限られるものではない。
表面状態検出センサ32である光学センサの構成例について説明する。図3(A),(B)に、記録媒体Pのエッジ部分が通過する領域(エッジ部)、および記録媒体Pのエッジ部分を除く通過領域である通紙領域(非エッジ部)のそれぞれについての定着ベルト24の表面状態の例を示す。
表面状態検出センサ32は、発光による入射光Liに対する定着ベルト24の表面からの反射光Lrを検出する。表面が平滑な非エッジ部では、拡散光は少なく、表面の粗いエッジ部では、拡散光Ldの割合が大きくなる。したがって、表面状態検出センサ32の発光に対する反射光Lrの強度により定着ベルト24の表面の荒れを検出することができる。
検出方法の一例を説明する。記録媒体Pのエッジ部が通過する領域における検出結果は、図3(A)に示す反射光Lr1を検出したセンサ出力となる。また、通紙領域における検出結果は、図3(B)に示す反射光Lr2を検出したセンサ出力となる。
ここで、記録媒体Pのエッジ部に起因する画像不良は、記録媒体Pのエッジ部により定着ベルト24の表面が荒らされ、エッジ部と通紙領域とで定着ベルト24の表面状態が異なることにより、エッジ部に接した定着画像部と通紙領域に接した定着画像部とで光沢が変化することにより発生するものである。
そこで、反射光Lr1と反射光Lr2との差分を演算することにより、画像不良を引き起こし得る定着ベルト24の表面状態を検出することができる。
なお、エッジ部と通紙領域の双方についての反射光の差分から定着ベルト24のエッジ部の表面の粗さを検出する例を説明したが、エッジ部についての検出値のみから定着ベルト24のエッジ部の表面の粗さを検出してもよい。
また、図3の光学センサの例では、エッジ部からの反射光Lr1の検出値は、定着ベルト24の表面が粗いほど低く、センサ出力値が低くなるが、表面が粗いほどセンサ出力値が高くなるセンサ構成であってもよい。
テンションローラ27は、2つのローラ部材に張架された定着ベルト24に一定のテンションを与える役割を有し、例えば、円筒形のアルミ管で形成される。なお、図2の例では、テンションローラ27は、定着ベルト24の内周側に設けられているが、定着ベルト24の外周側に設けられるものであってもよい。
なお、定着ベルト24表面に残留する残留トナーを除去するクリーニング手段を定着ベルト24の周囲に設けることも好ましい。また、図2に示す定着装置20は、以下に説明する摺擦制御を実行可能な定着装置の一例であって、定着装置20の構成はこれに限られるものではない。
(摺擦制御)
次に、本実施形態に係る定着装置20による摺擦制御について説明する。
すでに述べたように、近年、高速化が進む商業用の画像形成装置においては特殊紙や、その定着速度により定着ベルト24の表層へ記録媒体Pのバリによる傷がよりつきやすく、一度、表面粗さが非常に粗い状態なってから通紙されると、これまでと同じ摺擦動作時間で摺擦動作を実行しても、定着ベルト24の表面粗さが回復し難く、長時間の摺擦が必要になってきている。
そこで、本実施形態に係る定着装置20では、従来の摺擦動作に加えて、短い間隔で、短い時間、摺擦動作を実行することで、定着ベルト24の表面粗さをエッジ部と非エッジ部で均等に近い状態を保つように制御するものである。以下に詳細を説明する。
この摺擦制御は、定着装置20の制御手段35(コントローラ)により実行される。コントローラは、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータから構成される。なお、本実施形態では、制御手段35は、定着装置20に設ける構成としているがこれに限られず、画像形成装置本体100内に設ける構成としてもよい。
エッジ不利紙には、普通紙でバリの高さやバリの個数が多いもの(普通紙(不利紙)と称す)や硬度の高い透明メディアのような特殊紙などの種類がある。
図4は、普通紙、普通紙(不利紙)、特殊紙の各記録材を通紙したときの通紙枚数と定着ベルト24の表面粗さ(ベルト表面粗さ)との関係を示すグラフである。
図4に示すように、記録材の種類とベルト表面粗さには相関があり、通紙される記録材によって通紙枚数を重ねる毎にベルト表面粗さの推移が変化する。図4に示すように、特殊紙、普通紙(不利紙)、普通紙の順に荒れやすいといえる。
図5は、定着速度(線速)が異なる場合における通紙枚数とベルト表面粗さとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、定着速度とベルト表面粗さには相関があり、定着速度が速い装置で一定枚数を通紙されると早期の段階でベルト表面粗さが粗くなってしまう。
そして、表面粗さが非常に粗くなってから摺擦部材30による摺擦動作を実行しても、少ない動作時間では研磨が不十分であり定着ベルト24の表面状態を十分に回復させることができず、画像上の光沢スジが残ってしまう場合がある。また、1回の摺擦動作を長くとることは、不要な摺擦動作の増大につながるため好ましくない。
そこで、本実施形態に係る定着装置20では、定着ベルト24の表面の粗さが回復困難な粗さになる前に、少ない時間で摺擦動作を実行することで異常画像の発生を防ぐものである。具体的には、定着装置20は、上述の表面状態検出センサ32を備えており、その検出結果に応じて、異なる2以上の摺擦動作時間から摺擦動作時間を決定するようにしている。
図6は、表面状態検出センサ32のセンサ出力値と定着ベルト24の表面粗さとの関係を示す図であって、各センサ出力値と、そのときの表面粗さをプロットし、直線近似させたグラフを示している。図6に示すように、表面状態検出センサ32のセンサ出力値と定着ベルト24の表面粗さは、相関する。図6のセンサ出力値V(出力値ともいう)は、反射光Lr1と反射光Lr2の検出値との差分である。
そこで、本実施形態に係る定着装置20では、表面状態検出センサ32の検出結果(センサ出力値)に応じて、最適な摺擦動作の実行タイミングと摺擦動作の実行時間を決定するものである。
たとえば、センサ出力値がVBを超えた場合に、摺擦動作時間をS1とする摺擦動作(通常の摺擦動作ともいう)を実行する定着装置20において、センサ出力値がVA(VA<VB)を超えた場合に、摺擦動作時間をS2(S2≦S1)とする少時間の摺擦動作(追加の摺擦動作ともいう)を実行するものである。
図7は、本実施形態に係る定着装置20による摺擦動作の説明図であって、積算の通紙枚数とセンサ出力値との関係を示すグラフである。図7のセンサ出力値Vは、反射光Lr1と反射光Lr2の検出値との差分である。
図7において、●で示す(1)は、センサ出力値がVBを超えた場合に、摺擦動作時間S1の通常の摺擦動作を実行した場合を示している。また、■で示す(2)は、(1)の通常の摺擦動作に加えて、センサ出力値がVAを超えた場合には、摺擦動作時間S2の追加の摺擦動作を実行した場合を示している。
図7に示すように、追加の摺擦動作を行った(2)の例では、所定の通紙枚数N1に達したときに、センサ出力値(すなわち、ベルト表面粗さ)が、通常の摺擦動作のみ行う(1)の場合よりも良好となっている。追加の摺擦動作を行うことで、より好適に表面状態を回復させることが可能となることがわかる。したがって、定着ベルト24のエッジ部が回復困難となる前に、非エッジ部に近い状態に回復させることができる。
なお、摺擦動作の実行タイミングを所定の積算通紙枚数毎としたり、摺擦動作時間を1の固定値とした場合も、一定の効果を得ることはできるが、摺擦動作時間が過多になることで摺擦部材30の寿命が短くなってしまったり、逆に実行時間が足りなくなることにより完全に光沢スジが消えない等の問題が生じることが考えられる。
これに対し、本実施形態に係る定着装置20は、定着ベルト24の表層の記録媒体Pのエッジ部が通過する領域の表面性を検出する検出器である表面状態検出センサ32の検出結果(センサ出力値)に応じて、検出した値が第1の閾値(VB)を超えた際に、第1の実行時間(S1)だけ摺擦動作を実行する制御に加えて、第2の閾値(VA、ただし、VA<VB)を超えた場合にも第2の実行時間(S2、ただし、S2≦S1)だけ摺擦動作を実行するよう制御するものである。
このように短い間隔で通常の摺擦動作以下の時間で追加の摺擦動作を実行することで、回復困難な表面状態になるのを防ぐことが可能となる。
なお、摺擦動作の実行開始タイミングは、ジョブの通紙後(ジョブ間)とすることが好ましい。通紙後すぐに次のジョブが送られてくることがなければ、摺擦動作が入ることによる生産性の低下を軽減することができる。
また、本実施形態では、センサ出力値に2つの閾値VA,VBを設け、それぞれの閾値を超えた場合に異なる摺擦動作時間での摺擦動作を実行しているが、3以上の閾値を設け、3以上の異なる摺擦動作時間での摺擦動作をするようにしてもよい。
<制御例1>
次に、本実施形態に係る定着装置20の第1の制御例を説明する。
定着ベルト24において、記録媒体Pのエッジ部が通過する領域の表面性を表面状態検出センサ32によって検出した際の出力値をVとして、その出力値Vの結果に応じて摺擦動作を行う例を示す。
第1の制御例では、表面状態検出センサ32のセンサ出力値Vが大きいほど、定着ベルト24の表面粗さが大きく、表面状態検出センサ32のセンサ出力値Vが小さいほど、定着ベルト24の表面粗さが小さい関係となっている。
表1は、表面状態検出センサ32による出力値Vと、それに応じた摺擦動作時間(摺擦時間)の関係を表にしたものである。
表1に示すように、出力値VがVA≦V≦VBであれば摺擦動作時間S2だけ実行し、VB≦Vであれば摺擦動作時間S1だけ摺擦動作を実行している。ただし、S2≦S1,VA<VBである。
次いで、表2に、数回ジョブを繰り返したときの通紙後の表面状態検出センサ32による出力値(通紙後出力値)と、摺擦動作を実行した際の摺擦動作時間と、摺擦動作後の表面状態検出センサ32による出力値(摺擦後出力値)との関係を示す。ここでは、VA=2,VB=3とする。
1回目のジョブでは、通紙後出力値がVA,VBのいずれも超えていないため、摺擦動作は行わない。2回目のジョブでは、通紙後出力値VがV≧VAとなっているため、摺擦動作時間S2の時間分だけ摺擦動作を行う。
3〜5回目のジョブにおいても、通紙後出力値VがV≧VAとなっているため、摺擦動作時間S2の時間分だけ摺擦動作を行う。6回目のジョブでは、通紙後出力値VがV≧VBとなっているため、摺擦動作時間S1の時間分だけ摺擦動作を行う。以上の制御により、摺擦後出力値を抑えることができる。
<制御例2>
次に、本実施形態に係る定着装置20の第2の制御例を説明する。摺擦動作を開始させる2以上の出力値の閾値のうち少なくとも1つを任意に設定可能とすることが好ましい。
ここでは、2つの閾値VA,VBの組み合わせのパターンを複数、制御手段35の記憶部に記憶させておき、ユーザによってパターンを選択可能とする例を説明する。表3に出力値の閾値の組み合わせのパターンA〜Cの例を示す。
例えば、同じ紙幅区分を連続的に通紙することがほとんどのユーザにとっては、出力値の閾値を大きく(緩く)設定しておけば、頻繁に摺擦動作が実行されることがなくなり、摺擦動作の実行による待ち時間が少なくなる。
表3において、パターンAは、第1の制御例のVA,VBの値とする。これに対し、パターンBは、第1の制御例のVA,VBの値よりも小さい値としたものである。閾値を小さく(厳しく)設定し、摺擦動作を細かく実行させることで、エッジ部と通紙領域の表面性を近い状態に保つことができるため、印刷品質を重視するユーザにとっては利点が大きい。
一方、パターンCは、第1の制御例のVA,VBの値よりも大きい値としたものである。閾値を大きく(緩く)設定し、摺擦動作が頻繁に実行されることを避けることで、待ち時間が少なくなるため、生産性を重視するユーザにとっては利点が大きい。
例えば、同じ紙幅区分を連続的に通紙することがほとんどのユーザにとっては、出力値の閾値を大きく(緩く)設定しておけば、頻繁に摺擦動作が実行されることがなくなり、摺擦動作の実行による待ち時間が少なくなる。
<制御例3>
次に、本実施形態に係る定着装置20の第3の制御例を説明する。2以上の摺擦動作時間のうち少なくとも1つを任意に設定可能とすることが好ましい。
ここでは、2つの摺擦動作時間S1,S2の組み合わせのパターンを複数、制御手段35の記憶部に記憶させておき、ユーザによってパターンを選択可能とする例を説明する。表4に摺擦動作時間の組み合わせのパターンA〜Cの例を示す。
表4において、パターンAは、第1の制御例のS1,S2の値とする。これに対し、パターンBは、第1の制御例のS1,S2よりも短い時間としたものである。例えば、制御例2のパターンBと組み合わせることで、摺擦動作は細かく実行されるが、1回の摺擦動作時間が短いため、待ち時間を減らし、かつ、エッジ部と通紙領域の表面性を近い状態に保つことができる。
一方、パターンCは、第1の制御例のS1,S2の値よりも長い時間としたものである。例えば、制御例2のパターンCと組み合わせることで、摺擦動作は頻繁に実行されないが、1回の摺擦動作時間を長くして、待ち時間を減らし、かつ、エッジ部と通紙領域の表面性を近い状態に保つことができる。
以上説明した本実施形態に係る定着装置によれば、定着部材の摺擦動作を適切なタイミングおよび実行時間で行うことで、記録材のエッジ部のバリの厳しい不利紙や特殊紙を一定量通紙された際や高速で一定量通紙された際のダメージの大きい荒れに対しても、定着部材の表面状態を適切に回復させることができる。よって、光沢スジの発生を抑え、異常画像を抑制することができる。また、不要な摺擦実行動作を低減して摺擦部材の寿命を伸ばすことができる。
(その他の構成例)
以下、本発明に係る定着装置の他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
図8は、定着装置20の他の例を示しており、定着ローラ22の軸方向での概略断面図である。図2の例において、摺擦部材30は定着ベルト24を挟んで定着ローラ22に対向する位置に設けていたが、摺擦部材30の定着ベルト24の外周における設置位置はこれに限られるものではない。例えば、図8に示すように、定着ベルト24を挟んで摺擦部材30に対向する位置に対向ローラ34を設けることも好ましい。これにより良好な研磨性能を得ることができる。
また、図9は、定着装置20の他の例を示しており、定着ローラ22の軸方向での概略断面図である。図9に示すように、摺擦部材30として、表面の粗さが異なる2以上の性能の異なる摺擦部材30a,30b(図9では2つ)を設けることも好ましい。摺擦部材30a,30bはそれぞれ定着ベルト24に対して、圧接および離間可能に設けられており、制御手段35によりいずれかの摺擦部材30が選択されて摺擦動作が実行される。例えば、通常の摺擦動作では摺擦部材30aを、追加の摺擦動作では摺擦部材30bを使用する等とすることができる。
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る定着装置、画像形成装置の他の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る定着装置は、加熱手段(加熱ローラ21のヒータ25)により加熱される定着部材(定着ベルト24)と、該定着部材の少なくとも一部を押圧可能に配置され、定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材(加圧ローラ23)と、を備え、ニップ部に未定着トナー像(未定着トナー像T)を担持した記録材(記録媒体P)を搬送して、該未定着トナー像を記録材に定着する定着装置(定着装置20)において、定着部材の表面を摺擦する摺擦部材(摺擦部材30)と、記録材の表面状態を検出する表面状態検出手段(表面状態検出センサ33)と、表面状態検出手段による検出結果に応じて、2以上の異なる実行時間で摺擦部材により定着部材の摺擦動作を実行させる制御手段(制御手段35)と、を有するものである。なお、上記実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
ここまで述べた特殊紙や普通紙(不利紙)を通紙された場合に加え、比較的ニップ幅が広く、面圧が高い定着装置において、定着部材の表面荒れが生じやすく、異常画像が発生しやすい。
図10は、定着装置20のニップ面圧の違いによる通紙枚数とベルト表面粗さとの関係を示すグラフである。図10に示すように、ニップ面圧とベルト表面粗さには相関があり、ニップ面圧が高い定着装置で一定枚数通紙されると早期の段階でベルト上の表面粗さが粗くなってしまう。
そして、すでに述べたように、表面粗さが非常に粗くなってから摺擦部材30による摺擦動作を実行しても、少ない動作時間では研磨が不十分であり定着ベルト24の表面状態を十分に回復させることができず、画像上の光沢スジが残ってしまう場合がある。また、1回の摺擦動作を長くとることは、不要な摺擦動作の増大につながるため好ましくない。
そこで、本実施形態に係る定着装置20では、定着ベルト24の表面の粗さが回復困難な粗さになる前に、少ない時間で摺擦動作を実行することで異常画像の発生を防ぐものである。具体的には、定着装置20は、記録媒体Pの幅方向における端部(エッジ部)の表面性を検出する表面状態検出センサ33を備えており、その検出結果に応じて、異なる2以上の摺擦動作時間から摺擦動作時間を決定するようにしている。
図11は、第2の実施形態に係る定着装置20の一例を示しており、定着ローラ22の軸方向での概略断面図である。図11に示す定着装置20は、第1の実施形態で示した定着ベルト用の表面状態検出センサ32に替えて、搬送方向における定着装置20の上流側のいずれかの位置にて記録媒体Pのエッジ部の表面性を検出する記録媒体用の表面状態検出センサ33を備えるものである。
表面状態検出センサ33は、搬送方向における定着装置20の上流側のいずれかの位置に設けられるものであればよいが、例えば、画像形成装置100の給紙部であるペーパバンク43に設けることができる。また、ペーパバンク43において、例えば、給紙トレイ44において記録媒体Pをガイドするガイド部材に取り付けることが好ましい。記録媒体Pのサイズに応じてガイド部材は変位するため、表面状態検出センサ33の検知位置を変位させる機構を備えることなく、記録媒体Pの端部位置での検知が可能となり、コストを抑えることができる。
表面状態検出センサ33としては、例えば、発光部と、該発光部からの発光に対する記録媒体Pからの反射光を検出する受光部と、を備えた光学センサを用いることができる。表面状態検出センサ33は、記録媒体Pの表面性を検出可能なものであればよく、光学センサに限られるものではない。
表面状態検出センサ33は、図12に示すように、発光による入射光Liに対する記録媒体Pからの反射光Lrを検出する。なお、表面状態検出センサ33は少なくとも記録媒体Pの裁断面近傍であるエッジ部での反射光を検出可能であればよいが、記録媒体Pのエッジ部と、記録媒体Pのエッジ部を除く非エッジ部と、の双方での反射光を検出可能とし、その差分を求めることも好ましい。
例えば、図12(B)に示すように、記録媒体Pの非エッジ部では、表面が平滑なため拡散光は少なく、図12(A)に示すように、表面の粗いエッジ部では、拡散光Ldの割合が大きくなる。したがって、表面状態検出センサ33の発光に対する反射光Lrの強度を検出することで、記録媒体Pの表面性を検出することができる。
記録媒体Pのエッジに起因する画像不良は、記録媒体Pのエッジ部により定着ベルト24の表面が荒らされることにより発生する。このため、記録媒体Pのエッジ部のバリが立っているものほどベルト表面を荒らすこととなる。本実施形態では、表面状態検出センサ33を用いて、記録媒体Pのエッジ部のバリの荒れを検出することにより、ベルト表面の荒れへの影響度を検出するものである。
図13は、表面状態検出センサ33のセンサ出力値(V)と定着ベルト24の表面粗さとの関係を示す図であって、各センサ出力値と、そのときの表面粗さをプロットし、直線近似させたグラフを示している。図13に示すように、表面状態検出センサ33のセンサ出力値と定着ベルト24の表面粗さは、相関する。
図14は、第2の実施形態に係る定着装置20による摺擦動作の説明図であって、積算の通紙枚数とベルト表面粗さとの関係を示すグラフである。
図14において、■で示す(1)は、通紙枚数N1ごとに摺擦動作時間S1の通常の摺擦動作を実行した場合を示している。また、▲で示す(2)は、(1)の通常の摺擦動作に加えて、通紙枚数N2(N2<N1)ごとに摺擦動作時間S2(S2≦S1)の追加の摺擦動作を実行した場合を示している。さらに、●で示す(3)は、(1)の通常の摺擦動作に加えて、通紙枚数N3(N3<N2<N1)ごとに摺擦動作時間S3(S3≦S1)の追加の摺擦動作を実行した場合を示している。なお、(1)の通常の摺擦動作に加えて、(2),(3)の双方の追加の摺擦動作を実行してもよい。
図14に示すように、少ない摺擦時間での摺擦動作を行った(2),(3)の例では、通紙枚数N1に達するときに、ベルト表面粗さが(1)の場合よりも良好となっているため、通紙枚数N1での摺擦動作時間S1の通常の摺擦動作実行後、より好適に表面状態を回復させることが可能となっている。
このように、予め設定された所定の通紙枚数ごとに所定の摺擦動作時間に亘り通常の摺擦動作を実行することに加えて、これよりも短い間隔で通常の摺擦動作以下の時間で追加の摺擦動作を実行することで、回復困難な表面状態になるのを防ぐことが可能となる。
すなわち、摺擦動作時間が1の固定値である場合でも光沢スジを防止する効果はあるが、実行時間が過多になることで摺擦部材30の寿命が短くなるという問題や、逆に、実行時間が足りなくなることで完全に光沢スジが消えないといったような問題が残る。また、記録媒体Pの銘柄に応じて摺擦動作時間を決定する方式では、過去に通紙されたことのない銘柄は対応できず、例えば、通紙による定着ベルト24の傷の状態の変化を確認しなければ摺擦動作時間を決定することができない。これに対し、本実施形態に係る定着装置20では、記録媒体Pの表面状態検出センサ33の出力結果により制御することで、上記問題を解決することができる。
また、エッジ部のバリの立ち方のみでなく、バリの数も定着ベルト24への傷の形成のされやすさに影響する。例えば、同程度のバリの立ち方でもその個数が多い場合、定着ベルト24へ傷が形成されやすくなる。そこで、表面状態検出センサ33は、バリの数も検出することが好ましい。これを検出結果へ反映させることで、さらに精度よく、追加の摺擦動作を実行することを可能とし、回復困難な表面状態になるのを防ぐことが可能となる。
また、表面状態検出センサ33の検出結果に応じて、加圧ローラ23の定着ローラ22側への加圧力を制御して、ニップ幅を変更制御することも好ましい。表面状態検出センサ32の検出結果に基づく制御(第1の実施形態)をする場合においても、加圧力を制御してもよいのは、勿論である。
<制御例1>
次に、第2の実施形態に係る定着装置20の第1の制御例を説明する。
第1の制御例では、表面状態検出センサ33による記録媒体Pの表面性の検出結果である出力値をV12として、出力値V12の結果に応じて、記録媒体Pの紙幅区分毎に通紙枚数を積算する際に、重みづけを行いながら積算枚数をカウントし、そのカウンタがある閾値を超えた場合には摺擦動作を行う例を説明する。
表5は、表面状態検出センサ33の出力値V12と、出力値V12に応じた積算枚数の重み付け係数の関係を示す表である。表5に示すように、出力値V12がV12<VAのときは重み付け係数をα、VA≦V12<VBのときは重み付け係数をβ、VB≦V12のときは重み付け係数をγとする。ここでは、α=0.5,β=1,γ=2,VA=3,VB=5とする。
表6は、同じ紙幅で、銘柄が異なるジョブを数回繰り返したときのセンサ出力値(V12)、重み付け係数、通紙枚数、1ジョブ毎の積算枚数、通算積算枚数の関係を表すグラフである。
1回目のジョブでは、センサ出力値が2.2であるため重み付け係数はαとなる。また、通紙枚数が1000枚であるため、1回目のジョブでの積算枚数は0.5×1000=500である。また、2回目のジョブでは、センサ出力値が4.3であるため重み付け係数はβとなる。また、通紙枚数が100枚であるため、2回目のジョブでの積算枚数は1.0×100=100である。同様に、3回目のジョブでの積算枚数は400、4回目のジョブでの積算枚数は300となる。
また、5回目のジョブでは、センサ出力値が5.3であるため重み付け係数はγとなる。また、通紙数が200枚であるため、5回目のジョブでの積算枚数は2.0×200=400である。同様に、6回目のジョブでは積算枚数は300となる。
また、表7は摺擦動作を開始する通紙枚数の閾値(L)とそれぞれの摺擦動作時間の例を記す。すなわち、積算枚数が10000枚(閾値L1)ごとにS1時間の摺擦動作を実行するとともに、積算枚数が4000枚(閾値L2)ごとにS2時間(S2≦S1)の摺擦動作を実行することを示している。例えば、表5の6回目のジョブ終了後は、通算積算枚数が2000枚のため、閾値L1,L2ともに越えていない。よって、この時点では摺擦動作は行われない。
表8は紙幅区分毎の積算枚数のカウンタの例である。ここでは、紙幅区分を5つ設けている。ケース1〜5はある時点でのカウンタの値を示している。
ケース1では、紙幅区分4が閾値L2を超えている。すなわち、S2時間の摺擦動作が1回実行されている。
ケース2では、いずれの紙幅区分も閾値L1,L2を超えていないため、まだ摺擦動作は実行されていない。
ケース3では、紙幅区分2および5で閾値L2を超えている。このため各紙幅区分での積算枚数がL2を超えた各タイミングでS2時間の摺擦動作が実行されている(合計2回)。
ケース4では、紙幅区分2で閾値L1およびL2を超えている。この場合は、S2時間の摺擦動作が2回、S1時間の摺擦動作が1回実行されている。
ケース5では、紙幅区分3で閾値L1およびL2を超えているとともに、紙幅区分5でも閾値L2を超えている。この場合は、S2時間の摺擦動作が3回、S1時間の摺擦動作が1回実行されている。
なお、紙幅毎に積算枚数をカウントする場合であって、摺擦部材30を軸方向に移動可能とした場合は、摺擦部材30を軸方向に適宜移動させて、少なくとも該当する紙幅区分のエッジ部の周辺位置について摺擦動作を実行すればよい。
また、各摺擦動作での閾値L1,L2、摺擦時間S1,S2は、制御手段35に記憶されており、この値は、ユーザが任意に設定、変更可能であることも好ましい。
例えば、予め設定された摺擦時間では十分に表面荒れによる光沢スジの異常画像が解消できない場合に、ユーザによって摺擦時間を長く設定変更することで、最適な研磨時間に設定することが可能となる。一方、表面荒れのつきにくい記録材を主に使用する場合であれば、摺擦時間を短く設定変更することで、摺擦部材30と定着ベルト24の寿命を延ばすことも可能になる。
<制御例2>
次に、第2の実施形態に係る定着装置20の第2の制御例を説明する。第2の制御例では、表面状態検出センサ33の検出結果に応じて、ニップ幅を可変する例について説明する。なお、本制御を行う際には、通紙枚数の重み付けは行わなくてもよい。ニップ幅を変更することにより、定着ベルト24上への傷が形成されにくくなるためである。
表9は、表面状態検出センサ33の出力値V12と、出力値V12に応じた定着装置20のニップ幅の関係を示す表である。表9に示すように、出力値V12がV12<VAのときのニップ幅をa、VA≦V12<VBのときのニップ幅をb、VB≦V12のときのニップ幅をcとする(ただし、a>b>cである)。ここでは、VA=3,VB=5とするが、制御例1と異なる閾値であってもよいのは勿論である。
また、表10はそれぞれのジョブでのセンサ出力値とニップ幅の関係を示したものである。
1回目のジョブでは、センサ出力値は5.1であるので、ニップ幅はcに変更される。また、2回目のジョブでは、センサ出力値は3.1であるので、ニップ幅はbに変更される。また、3回目のジョブでは、センサ出力値は4.5であるので、ニップ幅はbのままである。また、4回目のジョブでは、センサ出力値は5.5であるので、ニップ幅はcに変更される。また、5回目のジョブでは、センサ出力値は1.2であるので、ニップ幅はaに変更される。
以上説明した第2の実施形態に係る定着装置によれば、定着部材の摺擦動作を適切なタイミングおよび実行時間で行うことで、記録材のエッジ部のバリの厳しい不利紙や特殊紙を一定量通紙された際や高速で一定量通紙された際のダメージの大きい荒れに対しても、定着部材の表面状態を適切に回復させることができる。特に、比較的高速の、ニップ幅が広く高面圧の定着装置20に好適である。よって、光沢スジの発生を抑え、異常画像を抑制することができる。また、不要な摺擦実行動作を低減して摺擦部材の寿命を伸ばすことができる。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。