JP6679353B2 - 水栓および水栓の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水栓および水栓の製造方法に関する。
壁などに設置され、浄水器や洗濯機などに接続するためのホースを取り付ける水栓が知られている。例えば、特許文献1には、壁に設置された水栓であって、吐水口部に繋がるホースを介して洗濯機へ水を供給する洗濯機用の水栓が記載されている。
特開平11-001944号公報
ところで、このような水栓では、水栓の上流側の配管接続部を壁の壁孔に収容される上流配管の雌ねじに接続するために、配管接続部の外周部に平行ねじである雄ねじが形成されることがある。そして、それらの接続部分と壁孔と覆うためにカバー部材が設けられており、カバー部材は配管接続部の雄ねじにねじ込んで固定するように形成される。
また、このような水栓では、配管接続部の雄ねじの長さは、上流配管に対する雄ねじのねじ込み量、カバー部材の軸方向の大きさ、配管との配管接続部から漏水がないかを確認するためのカバー部材の移動代、ねじを加工する際の不完全ねじ部の範囲などを考慮して設定することになる。またねじ加工はその加工精度にバラツキが大きい課題もあり、これらの要素が水栓を小型化する上での制約となっていた。
一方で、洗濯機など水栓に接続される機器によって、水栓が占めうる空間は狭くなっており、水栓の設置壁からの出代を小さくすることも望まれている。
このように従来の水栓には、配管接続部の長さを小さくして水栓全体を小型化する観点から改善する余地があった。
なお、このような課題は、浄水器や洗濯機などに給水する水栓に限られず、他の種類の水栓についても生じうる。
本発明の目的は、配管接続部の長さを小さくして水栓全体を小型化することが可能な水栓の技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の水栓は、水栓本体と、水栓本体の上流側に設けられる配管接続部と、配管接続部に嵌合するカバー部材と、を備える。配管接続部は、上流側の配管に接続されるための雄ねじ部と、雄ねじ部の水栓本体側に連設される小径部と、を含み、小径部の外径は雄ねじ部の山径より小さく形成され、カバー部材の内径は、小径部の外径より大きく、雄ねじ部の山径より小さく形成され、小径部の外径は前記雄ねじ部の谷径以下に形成される。
この態様によると、小径部の外径は雄ねじ部の山径より小さく形成されるから、カバー部材の可動範囲を広げることで、配管接続部の長さを小さくすることができる。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の水栓を製造する方法は、上述の水栓を製造する方法であって、配管接続部に小径部を形成する工程と、小径部が形成された配管接続部に雄ねじ部を形成する工程と、を含む。
この態様によると、小径部が形成された配管接続部に雄ねじ部を形成するから、雄ねじ部の形成加工の終了位置を、小径である小径部の領域内に設定することで、不完全ねじ部の発生を抑制することができる。
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の態様の水栓を製造する方法は、上述の水栓を製造する方法であって、配管接続部に雄ねじ部を形成する工程と、雄ねじ部が形成された配管接続部に小径部を形成する工程と、を含む。
この態様によると、小径部は雄ねじ部が形成された配管接続部に形成されるから、雄ねじ部に形成された不完全ねじ部を、小径部を形成する工程で減少させることが可能になる。
本発明によれば、配管接続部の長さを小さくして水栓全体を小型化することが可能な水栓の技術を提供することができる。
本発明の実施形態に係る水栓の正面図である。 本発明の実施形態に係る水栓の側面図である。 本発明の実施形態に係る水栓の断面図である。 図4(a)は、図3の通水管部の周辺の拡大断面図である。図4(b)は、上流側弁部材と下流側弁部材が共に閉止位置に移動した状態を示す断面図である。 図3の通水管部の周辺を分解して示す断面図である。 図3の配管接続部の周辺の拡大断面図である。 比較例の配管接続部の周辺の拡大断面図である。
まず、本発明に至った経緯を説明する。図7は比較例に係る水栓200の配管接続部206の周辺を説明する側断面図である。配管接続部206は、水栓本体210に通水する管状部であって、上流配管48の雌ねじ部48aに接続されるための平行ねじである雄ねじ部206aを有する。配管接続部206の水栓本体210側には雄ねじ部206aに連設される非ねじ部206bが形成される。配管接続部206の非ねじ部206bの外径Dn2は雄ねじ部206aの山径Dm(=外径)と等しいか又は僅かに大きく形成される。非ねじ部206bと水栓本体210の管状部214との境界には段形状を有する段壁部206cが設けられる。また、配管接続部206の雄ねじ部206aにカバー部材108が螺合される。カバー部材108は、上流配管48と配管接続部206の接続部および上流配管48が設けられる壁46の壁孔46aを覆うための略傘状の部材である。カバー部材108の中孔には雌ねじであるカバーねじ部108bが形成される。なお、図7ではカバー部材108の一部を破断して示している。
このような水栓200について、雄ねじ部206aが備えるべき長さ寸法Ls2を説明する。雄ねじ部206aの長さ寸法Ls2は、上流配管48へのねじ込深さAに、上流配管48と配管接続部206の接続部を目視確認するための隙間代Bと、カバー部材108の厚み寸法Cと、雄ねじ部206aの不完全ねじ部代Lu2と、雄ねじ部206aの製造誤差とを加味して設定されることが求められる。ねじ込深さAは、雄ねじ部206aと上流配管48との接合強度とシール性を確保するため、雄ねじ部206aが上流配管48にねじ込まれる深さで、一例として、8mm程度に設定される。隙間代Bは、カバー部材108を水栓本体210側に寄せた状態で壁46との間から接続部の水漏れを目視で確認できる程度の隙間代で、一例として、5mm程度に設定される。カバー部材108の厚み寸法Cは、カバー部材108のX方向の寸法で、一例として、10mm程度に設定される。雄ねじ部206aの不完全ねじ部代Lu2は、一例として、2mm程度が見込まれる。これらを加味して製造誤差を考慮すると、水栓200では雄ねじ部206aの長さ寸法Ls2は27mm程度に設定される場合が多い。また、非ねじ部206bは、雄ねじ部206aを加工する際に治具や刃物によって段壁部206cに傷を付けない程度の長さとするため、配管接続部206の長さ寸法L2は35mm程度に設定される場合が多い。また、水栓200では、雄ねじ部206aに不完全ねじ部206hがあることで、カバー部材108は不完全ねじ部206hの壁46側に止まるから、水栓200の出代E2がその分増えることとなる。この場合に出代E2は26mm程度に設定される場合が多い。
本発明は、このような比較例の考察を踏まえ、配管接続部の長さ寸法を小さくして水栓を小型化することと、不完全ねじ部の影響を抑制するためになされた。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
図1は本実施形態にかかる水栓100の正面図である。図2は水栓100の側面図である。図2に示すように、水栓100は、水栓本体10と、水栓ハンドル104と、配管接続部106と、吐水管部材30と、接続部50と、カバー部材108と、を主に含む。配管接続部106は水栓本体10の上流側に設けられ上流配管に接続される。吐水管部材30は水栓本体10の下流側にホースが接続される接続部50を有する。配管接続部106から導入された給水は水栓本体10を通じて接続部50に導出される。水栓ハンドル104は、水栓本体10に設けられる水栓弁機構を操作して、水栓本体10を通過する給水量を変更するためのハンドルである。カバー部材108は配管接続部106の上流側の壁46の壁孔46aを覆う部材である(図3も参照)。
図3は水栓100の側断面図である。図3は、水栓100の配管接続部106を壁46の壁孔46aに収容される上流配管48に接続し、接続部50に着脱機構32によりホース60を接続した状態を示している。以下、図3に示すように、図3の左から右へ向かう方向をX軸、高さ方向をY軸、図3の表側から裏側に向かう方向をZ軸と表記する。また、Y軸上で正方向を上向きと、負方向を下向きと表記することがある。特に、突出管部20の内周の中心を通るY軸に沿った直線を中心軸Mと、中心軸Mに沿った方向を軸方向と、中心軸Mに垂直な平面で中心軸Mを通る方向を半径方向と、表記する。これらの表記は水栓100の使用の姿勢を制限するものではない。なお、図3は、中心軸Mを通りZ軸に垂直な平面で切断した断面を示している。
図3に示すように、水栓100の上流側は、水栓本体10の配管接続部106が、例えば壁46に設けられる上流配管48に接続される。水栓100の下流側には、通水管部18の下流側に設けられる接続部50に着脱機構32を介してホース60が接続される。水栓100は、上流側の配管から供給された水などをホース60に供給する。水栓100の水栓本体10には水栓弁機構102が設けられ、ホース60への給水量を調整する。水栓弁機構102には水栓ハンドル104が接続され、水栓ハンドル104を、正面から視て、例えば時計回りにひねると給水量を減らし、あるいは給水を停止する。水栓弁機構102は、水栓ハンドル104を、例えば反時計回りにひねると給水量を増やす。水栓弁機構102は、ハンドルの代わりにレバーによって操作されてもよい。水栓弁機構102や水栓ハンドル104は公知の構成を用いることができる。
水栓本体10は、X軸方向に延在して水栓弁機構102が内蔵される管状部14と、管状部14の右側に設けられる配管接続部106と、を含む。また、管状部14と、管状部14の側面から突出する突出管部20と配管接続部106とは胴部12を構成する。胴部12は、管状部14と突出管部20と配管接続部106が、黄銅や青銅などの金属材料から一体に形成される。胴部12は、例えば鍛造や鋳造によって形成された後、加工や研磨などが施されてもよい。胴部12はニッケルクロムメッキ層などの表面層を備えてもよい。なお、胴部12はいずれかの部材が別に形成されて結合されてもよい。配管接続部106は水栓本体に通水するための管状の部分である。配管接続部106については後述する。
(カバー部材)
カバー部材108は、カバー本体108aと、カバーねじ部108bと、カバー筒状部108cとを含む。カバー本体108aは上流配管48と配管接続部106の接続部を覆う、略傘状の部分である。カバーねじ部108bはカバー本体108aの中程に設けられる孔部に形成される部分で、雄ねじ部106aに螺合可能に設けられる。
ここで、図6も参照して、カバー部材108の内径Dcについて説明する。カバー部材108の内径Dcは、カバーねじ部108bに内接する円の直径として定義される。カバー部材108の内径Dcは、後述する配管接続部106の小径部106bの外径Dn1より大きく、雄ねじ部106aの山径Dmより小さく形成される。カバーねじ部108bは、雄ねじ部106aに螺合もしくは係合可能であればその形状に制限はない。カバーねじ部108bは、例えば雌ねじであってもよい。カバーねじ部108bは、周方向に連続して設けられてもよいし、周方向に離間して断続的に設けられてもよい。カバーねじ部108bは、例えば周方向に配列される複数の内向きの突起であってもよく、この場合のカバー部材108の内径Dcは、複数(例えば3つ)の内向きの突起の内端に内接する円の直径である。
カバー筒状部108cは、後述する配管接続部106の小径部106bを環囲可能な形状を有する。カバー筒状部108cは、カバーねじ部108bとカバー本体108aとの間に設けられる中空円筒状の部分である。カバー本体108aと、カバーねじ部108bと、カバー筒状部108cとは一体に、例えばステンレス鋼などの板金材料からプレス加工によって形成される。
(突出管部)
突出管部20は、管状部14の側面からY方向に突出する略円筒形状の部分である。突出管部20は、Y軸に対して傾斜する方向に突出してもよい。突出管部20の外周面には、突縁22cが設けられる。突縁22cは中心軸Mを囲む環状に形成される。突縁22cは周方向に連続して設けられてもよく、断続的に設けられてもよい。突出管部20の上部には、中心軸Mを囲むように環状に凹む嵌合部22dが設けられる。嵌合部22dの外径は、突縁22cの外径と略同等しく形成される。嵌合部22dの外周には後述する収容管部40の突出端40dが嵌まる。
(吐水管部材)
吐水管部材30は、収容管部40と、フランジ部52と、接続部50とを含む。吐水管部材30は、収容管部40とフランジ部52と接続部50とが、黄銅や青銅などの金属材料から一体に形成される。吐水管部材30は、例えば鍛造や鋳造によって形成された後、加工や研磨などが施されてもよい。吐水管部材30は、ニッケルクロムメッキ層などの表面層を備えてもよい。なお、吐水管部材30は、いずれかの部材が別に形成されて結合されてもよい。
(収容管部)
収容管部40は、中心軸Mを囲む略中空円筒形状を有し、突出管部20を収容可能に設けられる。収容管部40は、突縁22cを環囲して突出管部20を収容する。収容管部40の上流側の縁には、突出管部20の嵌合部22dに嵌合する突出端40dが設けられる(図5も参照)。収容管部40の側面には、結合部材70が係合する開口44が設けられる(図4(a)も参照)。開口44は、一例として、Z軸方向の幅が20mmから24mmの範囲で、Y軸方向の高さが1.6mmから2.4mmの範囲の矩形形状を有する。開口44の周方向範囲は、例えば100度から180度の範囲にされる。
フランジ部52は収容管部40の下流の側面から半径方向外向きに張出す円盤状の部分である。フランジ部52の下面には着脱機構32の先端が当接する。
接続部50は中心軸Mを囲む中空円筒形状を有し、収容管部40の下流側に設けられる。接続部50には着脱機構32を介してホース60が接続される。接続部50の外周面には周状の凹部54が設けられる(図4(a)も参照)。凹部54は着脱機構32の内周部分が係合可能に形成される。
図3に示すように、着脱機構32は、一例として、継手33と、Cリング34と、レバー部35と、Uパッキン36と、スプリング37と、複数のボール38とを含む。継手33は管状の部材で、下流側の外周面に凹凸部33aを有し、ホース60が嵌め込まれる。継手33の上流側の内周面は接続部50の外周面を環囲する。Cリング34はレバー部35の上側にレバー部35の移動を規制可能に設けられる。レバー部35は継手33の上流側の外周面を環囲する管状の部材で、上下に移動可能に設けられる。Uパッキン36は樹脂製の環状部材で、接続部50の外周面と継手33の上流側の内周面の間に介在し、接続部50の外周面に対して継手33の内周面を略同心に支持する。スプリング37はレバー部35の内周に環囲されるコイルスプリングで、レバー部35を上側に付勢する。複数のボール38は接続部50の凹部54と継手33の孔部との間に設けられる。複数のボール38は継手33の孔部に半径方向に移動可能に支持される。レバー部35を下側に押し下げることで、複数のボール38が外周側に移動して接続部50の凹部54から外れることで、継手33を接続部50から容易に抜き去ることができる。
(通水管部)
次に、通水管部18について説明する。図4(a)は通水管部18の周辺の拡大断面図である。図5は通水管部18の周辺を分解して示す断面図である。図4(a)は、ホース60が接続されていない状態で下流側弁部材8が閉止位置に移動しており、上流側弁部材6が上流側弁座20aに非当接である状態を示している。図4(a)に示すように、水栓100は通水管部18を含む。通水管部18は、水栓本体10の側面から突出する管状の部分で、その内部に給水の通路である通水路16が設けられる。通水管部18は水栓本体10と接続部50との間に設けられ、内部に非常用の弁機構を有する(図3も参照)。通水管部18は、水栓本体10から突出する突出管部20と、突出管部20を環囲する収容管部40と、突出管部20に収容管部40を結合する結合部材70と、を含む。また、通水管部18は、上流側弁部材6と、下流側弁部材8と、付勢部材28と、Oリング25、26、27とを含む。通水管部18の入口である突出管部20の上流側の開口には上流側弁座20aが設けられる。通水管部18の出口である吐水管部材30の開口には下流側弁座30aが設けられる。下流側弁座30aは収容管部40と接続部50の間に設けられる。
(上流側弁部材)
通水管部18の上流側には、通水路16(中心軸M)に沿って移動することで通水路16の上流側弁座20aに当接し、突出管部20の上流側の開口を閉止可能な上流側弁部材6が設けられる。上流側弁部材6は主に突出管部20の内周部に設けられる。上流側弁部材6は、例えばポリアセタール等の樹脂材料からモールド成型工程により形成することができる。上流側弁部材6の上流側の面には弁部6aが設けられ、弁部6aは上流側弁座20aと共に逆止弁機構2を構成する。通水路16の水圧が上流側より高い場合に、その圧力差により上流側弁部材6が上流側(閉止位置)に移動し、弁部6aが上流側弁座20aに当接することで逆流を防止する(図3参照)。通水時は上流側の水圧が通水路16の水圧よりも高いため、上流側弁部材6は下流側(開弁位置)に移動し、弁部6aと上流側弁座20aが非当接になるため、上流側の水栓本体10から下流側の接続部50へ通水される。上流側弁部材6の下流側の端面には上流側に窪む環状の溝部である第1当接部6eが形成される。第1当接部6eは下面視で付勢部材28の一部を収容可能な略円形状を有する。第1当接部6eには付勢部材28の上流端28aが当接する。上流側弁部材6には、第1当接部6eの中心部に下流側に延伸する円柱形状を有する棒状部17が設けられる。棒状部17は、下流側弁部材8の収容孔11に進退自在に収容される部分を含む。
(下流側弁部材)
通水管部18の下流側には、通水路16(中心軸M)に沿って移動することで通水路16の下流側弁座30aに当接し、接続部50に連通する開口を閉止可能な下流側弁部材8が設けられる。下流側弁部材8は主に突出管部20と収容管部40と接続部50の内周部に上流側弁部材6と略同軸に設けられる。下流側弁部材8は、例えばポリアセタール等の樹脂材料からモールド成型工程により形成することができる。下流側弁部材8の下流側の面には弁部8aが設けられ、弁部8aは下流側弁座30aと共に止水弁機構を構成する。ホース60が外れた際に通水路16の水圧により下流側弁部材8が下流側(閉止位置)に移動し、下流側弁座30aに当接することで、ホースが外れた際の漏水を防止する。下流側弁部材8の下流側の端面には下流側に延伸する押棒部8fが一体に設けられる。押棒部8fは接続部50から突出しており、ホース60が装着される際は、継手33により接続部50内に押し込まれ、弁部8aと下流側弁座30aが非当接になり上流側の水栓本体10から下流側の接続部50へ通水される(図3参照)。下流側弁部材8の上流側の端面には下流側に窪む環状の溝部である第2当接部8eが形成される。第2当接部8eは上面視で付勢部材28の一部を収容可能な略円形の溝形状を有する。第2当接部8eには付勢部材28の下流端28bが当接する。
(付勢部材)
付勢部材28は、その上流端28aと下流端28bとの間で付勢力を生じるコイルスプリングである。特に、付勢部材28は通水路16の延在方向に伸縮するコイルスプリングである。上流端28aが上流側弁部材6の端面と対向し、下流端28bが下流側弁部材8の端面と対向する。付勢部材28は、上流側弁部材6が下流側へ過度に移動しようとする場合に上流側に押し返し、下流側弁部材8が上流側へ過度に移動しようとする場合に下流側に押し返すように作用する。つまり、付勢部材28は上流側弁部材6と下流側弁部材8とを適切な位置に保持する。
ホース60が外れた際に、逆止弁機構2が閉じると、通水路16内に過度に水圧が籠り、再度ホースを差し込む際に強い力を必要とするため上流側弁部材6は閉止しない方が好ましい。そこで、本実施の形態にかかる水栓100では、図4(a)に示すように、下流側弁部材8が閉止位置に移動した状態で上流側弁部材6は閉止位置にない(開弁位置にある)。これは、仮に上流側弁部材6と下流側弁部材8が共に閉止位置に移動した場合における第1当接部6eと第2当接部8eの間の距離Lvが付勢部材28の自然長Lsよりも大きい寸法で設定されているためであり、下流側弁部材8が閉止位置に移動した状態で上流側弁部材6の弁部6aと上流側弁座20aの間には隙間ができ、非当接になる。なお、図4(b)に、仮に上流側弁部材6と下流側弁部材8が共に閉止位置に移動した状態を示す。
(Oリング)
確実に止水をするためにOリング25、26、27が設けられる。Oリング25、26、27は、例えばゴム製のリングで公知のOリングを用いることができる。Oリング25は突出管部20の外周面に形成された周溝に嵌め込まれ、収容管部40との隙間を埋める。Oリング26は下流側弁部材8の弁部8aに形成された周溝に嵌め込まれ、下流側弁座30aとの隙間を埋める。Oリング27は上流側弁部材6の弁部6aに形成された周溝に嵌め込まれ、上流側弁座20aとの隙間を埋める。
(結合部材)
次に、結合部材70について説明する。結合部材70は、突出管部20と収容管部40とに係合して、突出管部20に収容管部40を結合する。図4に示すように、結合部材70は、円周上の一部が切り欠かれた略Cリング形状の部材で、例えばステンレス鋼など金属板からプレス加工によって形成される。結合部材70は、突出管部20の小径管部24cの外周面と収容管部40の内周面40bとの間に介在する二つの介在部72を含む。二つの介在部72は突出管部20の小径管部24cを挟むように当接し、突出管部20に係合する。突出管部20を収容した状態の収容管部40の開口44に結合部材70を挿入することによって、収容管部40は突出管部20に結合される。
(配管接続部)
次に、配管接続部106について説明する。図6は配管接続部106の周辺の拡大断面図である。図6は、カバー部材108が最も水栓本体10側に寄った状態を示している。配管接続部106は、筒部106dと、段壁部106cと、雄ねじ部106aと、小径部106bとを含む。筒部106dは、上流から下流に向かって延在する中空のパイプ状の部分で、その内側が通水可能に形成される。段壁部106cは、小径部106bと水栓本体10の管状部14との境界に設けられる段形状を有する壁部分である。雄ねじ部106aは上流配管48に接続されるための雄ねじで、筒部106dの外周面に形成される。雄ねじ部106aは上流配管48の雌ねじ部48aに螺合可能に形成される。小径部106bは、筒部106dの外周面のうち雄ねじ部106aの水栓本体10側に隣接して、ねじ溝が形成されていない非ねじ部分である。小径部106bは雄ねじ部106aの水栓本体10側に連設される。小径部106bは雄ねじ部106aの完全ねじ部に連設されてもよいし、不完全ねじ部に連設されてもよい。
カバー部材108の可動範囲を広くすることによって、配管接続部106の長さを小さくして水栓全体を小型化することができる。そこで、本実施形態の配管接続部106では、小径部106bの外径Dn1はカバーねじ部108bの内径Dcより小さく形成される。小径部106bの外径Dn1がカバーねじ部108bの内径Dcより小さいため、カバー部材108は小径部106bの領域まで移動可能になり、その可動範囲を広くすることができる。
雄ねじ部106aには、その水栓本体10側に不完全ねじ部が形成されることがある。不完全ねじ部があるとそこでカバー部材108の可動範囲が制限される。このため不完全ねじ部の範囲は小さい方が好ましい。そこで、本実施形態の配管接続部106では、雄ねじ部106aの山径Dm(=外径)より小さい外径Dn1を有する小径部106bを設けている。小径部106bを雄ねじ部106aの完全ねじ部に連設させ不完全ねじ部を無いものにするか、小径部106bを不完全ねじ部の途中位置に連設させることで不完全ねじ部を少なくすることができる。小径部106bを形成することにより、不完全ねじ部の範囲を狭くすることが可能になる。
不完全ねじ部の範囲はより小さい方が好ましい。そこで、本実施形態の配管接続部106では、小径部106bの外径Dn1は雄ねじ部106aの谷径Dv以下に形成される。小径部106bを一層小径に形成することにより、不完全ねじ部の範囲をさらに狭くすることが可能になる。
小径部106bと段壁部106cの接続部分には、製造上の要請により角部106eが形成されることがある。また、角部106eによってカバー部材108の可動範囲が制限されることがある。そこで、本実施形態の配管接続部106では、カバー部材108は、カバーねじ部108bから水栓本体10側に延在するカバー筒状部108cを含み、カバー筒状部108cは小径部106bを環囲可能な形状を有する。カバー筒状部108cが角部106eを環囲可能に形成されることによって、カバー部材108の可動範囲を一層広くすることができる。
このように構成された水栓100の配管接続部106の寸法の一例を説明する。
水栓100によれば、ねじ込深さA、隙間代Bおよび厚み寸法Cについて比較例の水栓200と同条件とした場合に以下のように設定することが可能になる。
水栓100の雄ねじ部106aの長さ寸法Ls1=22mm
配管接続部106の長さ寸法L1=26mm
出代E1=18mm。
(配管接続部の製造工程)
次に、本実施形態の配管接続部106を製造する工程の一例について説明する。
配管接続部106は胴部12の他の部分と一体に鍛造や鋳造によって形成され、その後に機械加工される。まず、機械加工(例えば旋盤加工)により、配管接続部106の雄ねじ部106aとなるべき大径部分と小径部106bとを円筒形に形成する。このとき、小径部106bは雄ねじ部106aとなるべき大径部分より小径に形成される。次に、機械加工(例えば旋盤加工やダイス加工)により、配管接続部106の大径部分に雄ねじ部106aを形成する。次に、所定のバリ取り工程や検査工程を経て配管接続部106が製造される。
次に、本実施形態の配管接続部106を製造する工程の別の一例について説明する。
配管接続部106は胴部12の他の部分と一体に鍛造や鋳造によって形成され、その後に機械加工される。まず、機械加工(例えば旋盤加工)により、配管接続部106の雄ねじ部106aとなるべき部分と小径部106bとなるべき部分とを円筒形に形成する。このときこれらの部分の直径は、同径であっても異径であってもよい。次に、機械加工(例えば旋盤加工やダイス加工)により、円筒形に形成された配管接続部106に雄ねじ部106aを形成する。次に、機械加工(例えば旋盤加工)により、配管接続部106の小径部106bを形成する。次に、所定のバリ取り工程や検査工程を経て配管接続部106が製造される。
なお、上述したこれらの工程は一例であり、必要に応じて順序を変更し、別の工程を追加し、一部の工程を省いてもよい。
(通水管部の製造工程)
次に、図5を参照して通水管部18を製造する工程の一例について説明する。まず、収容管部40の内周部に下流側弁部材8と付勢部材28と上流側弁部材6及びOリング25、26、27などの所定の部材を搭載する。次に、収容管部40に突出管部20を挿入する。この状態で開口44から小径管部24cが可視できるように収容管部40の位置を調整する。この状態で、結合部材70を開口44から挿入し、介在部72が小径管部24cを環囲する位置まで押し込む。結合部材70を押し込んだ後、必要に応じて検査などの所定の付帯作業を施してもよい。これらの工程は一例であり、必要に応じて順序を変更し、別の工程を追加し、一部の工程を省いてもよい。
次に、本実施の形態にかかる水栓100の特徴を説明する。
本実施の形態にかかる水栓100では、配管接続部は、上流配管48に接続されるための雄ねじ部106aと、雄ねじ部106aの水栓本体10側に連設される小径部106bと、を含み、小径部106bの外径Dn1は雄ねじ部106aの山径Dmより小さく形成される。また、カバー部材108の内径Dcは、小径部106bの外径Dn1より大きく、雄ねじ部106aの山径Dmより小さく形成される。この構成によれば、カバー部材108は小径部106bの領域まで移動可能になり、その可動範囲を一層広くすることが可能になる。また、雄ねじ部106aに形成される不完全ねじ部を小さくするか、不完全ねじ部をなくし、カバー部材の可動範囲を広げることで、配管接続部106の長さを小さくすることができる。配管接続部106の長さを小さくすることで、材料費や加工の手間を少なくすることが可能になりコストダウンや省資源化に有利になる。水栓100が小型化されることで、水栓に接続される機器への対応が容易になる。水栓100の設置壁からの出代が小さくなることで外観上の違和感を緩和することができる。
本実施の形態にかかる水栓100では、小径部106bの外径Dn1は雄ねじ部106aの谷径Dv以下に形成される。この構成によれば、小径部106bを一層小径に形成することにより、不完全ねじ部の範囲をさらに狭くすることが可能になる。
本実施の形態にかかる水栓100では、カバー部材108はカバーねじ部108bから水栓本体10側に延在するカバー筒状部108cを含み、カバー筒状部108cは小径部106bを環囲可能な形状を有する。この構成によれば、カバー筒状部108cが角部106eを環囲可能に形成されることによって、カバー部材108の可動範囲を一層広くすることが可能になる
本実施の形態にかかる水栓100の製造方法では、配管接続部106に小径部106bを形成する工程と、小径部106bが形成された配管接続部106に雄ねじ部106aを形成する工程と、を含むことがある。この製造方法によれば、小径部106bが形成された配管接続部106に雄ねじ部106aを形成するから、雄ねじ部106aの形成加工の終了位置を、小径である小径部106bの領域内に設定することで、不完全ねじ部の発生を抑制することができる。
本実施の形態にかかる水栓100の製造方法では、配管接続部106に雄ねじ部106aを形成する工程と、雄ねじ部106aが形成された配管接続部106に小径部106bを形成する工程と、を含むことがある。この製造方法によれば、小径部106bは雄ねじ部106aが形成された配管接続部106に形成されるから、雄ねじ部106aに形成された不完全ねじ部を、小径部106bを形成する工程で減少させることが可能になる。
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、色々な変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
(変形例)
実施の形態の説明では、配管接続部106が水栓本体10と一体に形成される例について説明したがこれに限られない。配管接続部106を別に形成して、水栓本体10に結合してもよい。配管接続部は、例えば水栓本体とキッチンや浴室等の壁面等との間に取付けられる取付脚等の接続部材に形成されてもよい。
説明に使用した図面では、部材の関係を明瞭にするために一部の部材の断面にハッチングを施しているが、当該ハッチングはこれらの部材の素材や材質を制限するものではない。
100 水栓、 2 逆止弁機構、 4 止水弁機構、 6 上流側弁部材、 6a 弁部、 6e 第1当接部、 8 下流側弁部材、 8a 弁部、 8e 第2当接部、 10 水栓本体、 12 胴部、 16 通水路、 18 通水管部、 20 突出管部、 20a 上流側弁座、 28 付勢部材、 30 吐水管部材、 30a 下流側弁座、 50 接続部、 60 ホース、 106 配管接続部、 106a 雄ねじ部、 106b 小径部、 106c 段壁部、 106d 筒部、 106e 角部、 108 カバー部材、 108a カバー本体、 108b カバーねじ部、 108c カバー筒状部。

Claims (4)

  1. 水栓本体と、
    前記水栓本体の上流側に設けられる配管接続部と、
    前記配管接続部に嵌合するカバー部材と、を備え、
    前記配管接続部は、上流側の配管に接続されるための雄ねじ部と、前記雄ねじ部の前記水栓本体側に連設される小径部と、を含み、
    前記小径部の外径は前記雄ねじ部の山径より小さく形成され、
    前記カバー部材の内径は、前記小径部の外径より大きく、前記雄ねじ部の山径より小さく形成され
    前記小径部の外径は前記雄ねじ部の谷径以下に形成されることを特徴とする水栓。
  2. 前記カバー部材は前記雄ねじ部に螺合するためのカバーねじ部と、前記カバーねじ部から前記水栓本体側に延在するカバー筒状部を含み、
    前記カバー筒状部は前記小径部を環囲可能な形状を有することを特徴とする請求項1に記載の水栓。
  3. 請求項1または2に記載の水栓を製造する方法であって、
    配管接続部に小径部を形成する工程と、
    小径部が形成された配管接続部に雄ねじ部を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする水栓の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の水栓を製造する方法であって、
    配管接続部に雄ねじ部を形成する工程と、
    雄ねじ部が形成された配管接続部に小径部を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする水栓の製造方法。
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