JP6678501B2 - スパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、スパッタリングに用いるスパッタリングターゲットに関し、特に水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成するためのスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
従来、アルミニウムにインジウム等を含有するアルミニウム合金からなる膜として、水分の存在する雰囲気中で溶解し、水崩壊性を発現するものが知られている。
この水崩壊性のアルミニウム合金からなる膜は、水を用いることによって溶解するものであることから、成膜した部材を損傷させることなく膜を剥離することができ、容易に部材の再利用を行うことができる。
このような水崩壊性の膜を形成する場合、従来は、水崩壊性のアルミニウム合金を溶融し、その微粒子を成膜対象物に吹き付ける溶射法を用いていた。
しかし、溶射法による膜は、100μm以上の厚さがあるとともに、その表面が凹凸を有するもので、成膜後に膜の表面を平坦化する必要がある。このため、薄く且つ均一な膜厚で、しかも表面が平坦な水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成する技術が求められている。
また、小型の部材に対して水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することや、基板上に形成された水崩壊性のアルミニウム合金膜に対して微細なパターニング等の処理を施すことも求められているが、溶射法でこのような成膜や処理を行うことは困難である。
さらに、きわめて清浄な雰囲気で使用する部材に対して水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することが求められているが、溶射法では成膜の際に雰囲気を汚染するおそれがあるという課題もある。
このような課題に対し、水崩壊性のアルミニウム合金膜を、例えばスパッタリング法によって形成することも考えられる。
従来、スパッタリング法に用いるスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットの材料を溶融してインゴットを作成し、このインゴットを加工することによって作成している。
このようなスパッタリングターゲットを用いて水崩壊性のアルミニウム合金膜を成膜した場合に溶射法による膜と同等の良好な水崩壊性を有するものが作成できれば、種々の用途に使用できるので好ましい。
特開2005−256063号公報 国際公開2012−026349号公報 特開2013−140950号公報
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、溶射膜より薄く且つ均一な膜厚で、しかも表面が平坦な水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することができる技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、溶射法によって形成した水崩壊性のアルミニウム合金膜と同等の水崩壊性を有するアルミニウム合金膜を形成可能なスパッタリングターゲットを製造する技術を提供することにある。
上記目的を達成するためになされた本発明は、アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなり、前記アルミニウム合金の前記アルミニウムの結晶粒中に、前記少なくともインジウム又はビスマスのいずれかで、かつ、粒径10nm以下の粒子が分散されているスパッタリングターゲットである。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、インジウムを0.1重量%以上20重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、ビスマスを0.1重量%以上20重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にシリコンを0.04重量%以上8重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にチタンを0.13重量%以上4重量%以下含有する場合にも効果的である。
一方、本発明は、アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなる溶射材料を用意し、前記溶射材料を用い、溶射法によってバッキングプレート上にスパッタリングターゲットを設ける工程を有するスパッタリングターゲットの製造方法である。
本発明では、前記溶射材料は、前記水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴットを加工してワイヤー状にしたものである場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、インジウムを0.1重量%以上20重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、ビスマスを0.1重量%以上20重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にシリコンを0.04重量%以上8重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にチタンを0.13重量%以上4重量%以下含有する場合にも効果的である。
本発明のスパッタリングターゲットは、アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなるものであることから、このスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、溶射膜より薄く且つ均一な膜厚で、しかも表面が平坦な水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することができる。
また、本発明によれば、小型の部材に対して水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することや、基板上に形成された水崩壊性のアルミニウム合金膜に対して微細なパターニング等の処理を施すことができる。
さらに、本発明のスパッタリングターゲットを用いて形成した水崩壊性のアルミニウム合金膜は、水のみで剥離することができるので、きわめて清浄な環境で使用する部材に対する各種の膜として好適となるものである。
一方、本発明のスパッタリングターゲットは、アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなる溶射材料を用い、溶射法によってバッキングプレート上にスパッタリングターゲットを設けるものであることから、上述したスパッタリングターゲットを有するターゲットアセンブリを簡素な工程で作成することができる。
この場合、溶射材料として、水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴットを加工してワイヤー状にしたものを用いて溶射を行うことにより、溶射法によって形成した水崩壊性のアルミニウム合金膜と同等の良好な水崩壊性を有するアルミニウム合金膜を形成可能なスパッタリングターゲットを製造することができる。
この理由は、以下のように考えられる。
すなわち、インゴット形態の水崩壊性のアルミニウム合金は冷却速度が遅いので、冷却後にインゴットから切り出して得られたスパッタリングターゲットは、アルミニウム合金の粒界にインジウム等の添加金属が集まり、アルミニウム結晶粒中に分散するインジウム等の粒子数は少ない。
これに対し、本発明のように、水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴットを加工してワイヤー状にした材料を用いて溶射を行うと、当該アルミニウム合金が溶射によって一度溶解した後に急速に冷却されるため、得られた溶射膜中においてアルミニウムの結晶粒中にインジウム等の粒子、特に粒径10nm以下の粒子が多く分散して良好な水崩壊性が発現する。
そして、この溶射膜をスパッタリングターゲットとして使用した場合、スパッタ成膜された膜に、アルミニウムの結晶粒中にインジウム等の粒子が多く分散した状態が転写され、その結果、スパッタ成膜された膜が良好な水崩壊性を呈するようになる。
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法の一例を示す流れ図 (a)〜(d):同スパッタリングターゲットの製造方法の一例を示す工程図
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法の一例を示す流れ図である。
また、図2(a)〜(d)は、同スパッタリングターゲットの製造方法の一例を示す工程図である。
本発明では、まず、スパッタリングターゲットの材料として、水崩壊性のアルミニウム(Al)合金からなる溶射材料を用意する。
この場合、本例では、図1のプロセスP1並びに図2(a)に示すように、水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴット1を作成する。
そして、図1のプロセスP2並びに図2(b)に示すように、このインゴット1を加工してワイヤー状の溶射材料2を作成する。
なお、ワイヤー状の溶射材料2を作成する加工法としては、伸線加工、引き抜き加工、押し出し加工等があげられる。
その後、図1のプロセスP1並びに図2(c)(d)に示すように、このワイヤー状の溶射材料2を用い、例えば銅等の金属からなるバッキングプレート10上に溶射法によってスパッタリングターゲット15を作成する。
この場合、例えば図2(c)に示すように、バッキングプレート10の表面10aに対し、バッキングプレート10に対して相対移動可能な溶射装置11から、水崩壊性のアルミニウム合金の溶融微粒子12を噴出し、図2(d)に示すように、バッキングプレート10の表面10a上に、水崩壊性のアルミニウム合金の溶射膜(以下、「水崩壊性Al合金溶射膜」という。)からなるスパッタリングターゲット15を設ける。
本発明の場合、溶射の方式は、アーク溶射、フレーム溶射のいずれも採用することができる。
なお、水崩壊性Al合金溶射膜を形成するバッキングプレート10の表面10aを、例えばSiCを用いたブラスト処理によって予め粗面化しておく。
そして、以上の工程により、バッキングプレート10付きのターゲットアセンブリ5を得る。
本発明の場合、スパッタリングターゲット15を構成する水崩壊性のアルミニウム合金としては、アルミニウムに、インジウム(In)を含有するものを好適に用いることができる。
アルミニウムにインジウムを含有するアルミニウム合金から得られた溶射膜は、水分の存在する雰囲気中で溶解し、水崩壊性を発現するようになる。
本発明の場合、アルミニウム合金中におけるインジウムの含有量については特に限定されることはないが、アルミニウム100重量%に対し、インジウムを0.1重量%以上20重量%以下含有させることが好ましい。
アルミニウム100重量%に対するインジウムの含有量が0.1重量%より小さいと、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下する傾向があり、他方、アルミニウムに対するインジウムの含有量が20重量%を超えると、反応性が高過ぎて大気中の水分によって崩壊し、また溶射材料を形成することが困難になる傾向がある。
また、本発明の場合、水崩壊性のアルミニウム合金としては、アルミニウムに、ビスマス(Bi)を含有するものを好適に用いることができる。
アルミニウムにビスマスを含有するアルミニウムから得られた溶射膜は、上述したインジウムの場合と同様、水分の存在する雰囲気中で溶解し、水崩壊性を発現するようになる。
本発明の場合、アルミニウム合金中におけるビスマスの含有量については特に限定されることはないが、上述したインジウムの場合と同様、アルミニウム100重量%に対し、ビスマスを0.1重量%以上20重量%以下含有させることが好ましい。
アルミニウム100重量%に対するビスマスの含有量が0.1重量%より小さいと、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下する傾向があり、他方、アルミニウムに対するビスマスの含有量が20重量%を超えると、反応性が高過ぎて大気中の水分によって崩壊し、また溶射材料を形成することが困難になる傾向がある。
なお、本発明では、水崩壊性のアルミニウム合金として、アルミニウムに、インジウムとビスマスの両方を含有するものを用いることもできる。
すなわち、本発明に用いる水崩壊性のアルミニウム合金は、少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有するものであればよい。
ここで、アルミニウムに、インジウムとビスマスの両方を含有させた場合、アルミニウム合金中におけるインジウム及びビスマスの含有量については特に限定されることはないが、アルミニウム100重量%に対し、インジウム及びビスマスを0.1重量%以上20重量%以下含有させることが好ましい。
この場合、アルミニウム100重量%に対するインジウム及びビスマスの含有量が0.1重量%より小さいと、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下する傾向があり、他方、アルミニウムに対するインジウム及びビスマスの含有量が20重量%を超えると、反応性が高過ぎて大気中の水分によって崩壊し、また溶射材料を形成することが困難になる傾向がある。
一方、本発明の場合、上述した水崩壊性のアルミニウム合金には、更にシリコンを含有させることもできる。
この場合、水崩壊性のアルミニウム合金中のシリコンの含有量については特に限定されることはないが、アルミニウム100重量%に対し、シリコンを0.04重量%以上8重量%以下含有させることが好ましい。
アルミニウム100重量%に対するシリコンの含有量が0.04重量%より小さいと、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性の制御効果が低下する傾向があり、他方、アルミニウムに対するシリコンの含有量が8重量%を超えると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下する傾向がある。
なお、水崩壊性Al合金溶射膜の水崩壊性を制御する必要がない場合や、高温の水を用いて水崩壊性Al合金溶射膜を崩壊させる等の場合は、アルミニウム合金に含有させるシリコンの含有量は上述した範囲外とすることができる。
本発明の場合、水崩壊性のアルミニウム合金には、更にチタンを含有させることもできる。
この場合、水崩壊性のアルミニウム合金中のチタンの含有量については特に限定されることはないが、アルミニウム100重量%に対し、0.13重量%以上4重量%以下含有させることが好ましい。
アルミニウム100重量%に対するチタンの含有量が0.13重量%より小さいと、アルミニウム中の不純物の影響を受け、熱履歴を経た後の水崩壊性Al合金溶射膜の溶解性が低下する傾向があり、他方、4重量%を超えると、アルミニウム合金中におけるチタンの偏析が大きくなる傾向がある。
本発明に用いる水崩壊性のアルミニウム合金である、アルミニウムにインジウムを含有する合金の一例としては、例えば、Al−In−Si−Tiがあげられる。
このAl−In−Si−Tiからなる合金は、Al100重量%に対し、2.0重量%以上3.5重量%以下、好ましくは2.5重量%以上3.0重量%以下のIn、0.2重量%以上0.5重量%以下のSi、及び0.13重量%以上0.25重量%以下、好ましくは0.15重量%以上0.25重量%以下、さらに好ましくは0.17重量%以上0.23重量%以下のTiを含有するものを好適に用いることができる。
ここで、Inの含有量が2重量%未満であると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下する傾向があり、3.5重量%を超えると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が非常に高くなる傾向があり、水崩壊性Al合金溶射膜の取り扱いが難しくなる場合があるとともに、In量の増加に伴いコストが大となる。
また、Siの含有量が0.2重量%未満であると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性の制御効果が低下する傾向があり、0.5重量%を超えると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下し始める傾向があり、さらに0.6重量%を超えると水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性そのものが低下する傾向がある。
一方、Tiの含有量が0.13重量%未満であると、Al中の不純物の影響を受け、熱履歴を経た後の水崩壊性Al合金溶射膜の溶解性が低下する傾向があり、0.25重量%を超えると、Al合金におけるTiの偏析が大きくなる傾向がある。
さらに、Tiの含有量に関しては、Si添加量やCu等の不純物濃度を考慮すると、0.15重量%以上が好ましく、0.17重量%以上がさらに好ましく、また、Tiの偏析を考慮すると0.23重量%以下が好ましい。
また、本発明に用いる水崩壊性のアルミニウム合金である、アルミニウムにビスマスを含有する合金の一例としては、例えば、Al−Bi−Si−Ti−Ce−Mgがあげられる。
このAl−Bi−Si−Ti−Ce−Mgからなる合金は、Al100重量%に対し、0.2重量%以上2重量%以下、好ましくは0.5重量%以上1.5重量%以下のBi、1.5重量%以上8重量%以下、好ましくは3重量%以上5重量%以下のSi、0.2重量%以上4重量%以下、好ましくは1重量%以上2重量%以下のTi、0.2重量%以上2重量%以下、好ましくは0.2重量%以上0.5重量%以下のCe、及び0.2重量%以上2重量%以下、好ましくは0.5重量%以上2重量%以下のMgを含有するものを好適に用いることができる。
ここで、Biの含有量が0.2重量%未満であると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性が低下する傾向があり、0.2重量%以上0.5重量%未満であれば、若干水との反応性が低い傾向はあるが、0.5重量%以上であれば水との反応性は満足される傾向があり、2重量%を超えると水との反応性が高くなる傾向がある。
また、Siの含有量が1.5重量%未満であると、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性の制御効果が低下する傾向があり、5重量%を超えると、インゴット状の水崩壊性アルミニウム合金をワイヤーに加工する場合、伸線加工が難しくなる傾向があり、そして8重量%を超えるとワイヤーに加工することができない傾向がある。
一方、Tiの含有量が0.2重量%未満であると、水崩壊性Al合金溶射膜が熱履歴を経た場合において、水崩壊性Al合金溶射膜の溶解性が低下する傾向があり、Tiの含有量が大きいほど熱履歴を経た後の水崩壊性Al合金溶射膜の溶解性は向上する傾向があるが、インゴット状の水崩壊性アルミニウム合金をワイヤーに加工する場合に、Tiの含有量が4重量%程度より大きくなるに従い伸線加工が困難になる傾向がある。
また、Ceが未添加であると、熱履歴を経た後の水崩壊性Al合金溶射膜の溶解性が劣る傾向があり、0.5重量%を超えると格別の溶解性の向上は得られなくなり、2重量%を超えると、インゴット状の水崩壊性アルミニウム合金をワイヤーに加工する場合、伸線加工が難しくなる傾向がある。
さらに、Mgが未添加であると、熱履歴を経た後の水崩壊性Al合金溶射膜は安定性が低く、大気中の水分と反応し、粉化現象が発生する。Mgの含有量が0.2重量%未満であると、熱履歴後の水崩壊性Al合金溶射膜の表面に若干の粉化現象が観察されるが、0.5重量%以上ではこのような粉化現象は発生しない。Mgの含有量が2重量%を超えると、インゴット状の水崩壊性アルミニウム合金をワイヤーに加工する場合、伸線加工が難しくなる傾向がある。
本発明の場合、特に限定されることはないが、水崩壊性Al合金溶射膜と水との反応性を向上させる観点からは、上述した溶射工程において、インジウム、ビスマスを、上述した水崩壊性のアルミニウム合金のアルミニウム結晶粒中に粒径10nm以下の粒子が分散されるように溶射することが好ましい。
この場合、粒径10nmより大きいインジウム、ビスマスの粒子が存在していたり、インジウム、ビスマスの粒子の一部が結晶粒中に存在している場合であっても、アルミニウム結晶粒中に、粒径10nm以下のインジウム、ビスマスの粒子が分散していれば、水崩壊性は発現する。
本発明の場合、水崩壊性のアルミニウム合金からなるスパッタリングターゲット15の厚さは、1mm〜20mmに設定することが好ましい。
以上述べた本実施の形態のスパッタリングターゲット15は、アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなるものであることから、このスパッタリングターゲット15を用いてスパッタリングを行うことにより、溶射膜より薄く(1μm程度)、かつ、均一な膜厚で、しかも表面が平坦な水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することができる。
また、本実施の形態によれば、小型の部材に対して水崩壊性のアルミニウム合金膜を形成することや、基板上に形成された水崩壊性のアルミニウム合金膜に対して微細なパターニング等の処理を施すことができる。
さらに、本実施の形態のスパッタリングターゲット15を用いて形成した水崩壊性のアルミニウム合金膜は、水のみで剥離することができるので、きわめて清浄な環境で使用する部材に対する各種の膜として好適となるものである。
一方、本実施の形態のスパッタリングターゲット15は、アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなる溶射材料を用い、溶射法によってバッキングプレート10上に設けるものであることから、上述したスパッタリングターゲット15を有するターゲットアセンブリ5を簡素な工程で作成することができる。
特に、本実施の形態においては、水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴット1を加工してワイヤー状にした溶射材料2を用いて溶射を行うことから、溶射法によって形成した水崩壊性のアルミニウム合金膜と同等の良好な水崩壊性を有するアルミニウム合金膜を形成可能なスパッタリングターゲット15を製造することができる。
すなわち、インゴット形態の水崩壊性のアルミニウム合金は冷却速度が遅いので、冷却後にインゴットから切り出して得られたスパッタリングターゲットは、アルミニウム合金の粒界にインジウム等の添加金属が集まり、アルミニウム結晶粒中に分散するインジウム等の粒子数は少ないが、本実施の形態のように、水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴット1を加工してワイヤー状にした溶射材料2を用いて溶射を行うと、当該アルミニウム合金が溶射によって一度溶解した後に急速に冷却されるため、得られた溶射膜中においてアルミニウムの結晶粒中にインジウム等の粒子が多く分散して良好な水崩壊性が発現する。
そして、この溶射膜をスパッタリングターゲット15として使用した場合、スパッタ成膜された膜に、アルミニウムの結晶粒中にインジウム等の粒子が多く分散した状態が転写され、その結果、スパッタ成膜された膜が良好な水崩壊性を呈するようになる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態では、バッキングプレート10の表面に水崩壊性のアルミニウム合金の溶射膜からなるスパッタリングターゲット15を形成する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、所定の基板上に本発明の方法によって上述した水崩壊性のアルミニウム合金の溶射膜からなるスパッタリングターゲット15を形成し、この基板をバッキングプレート10の表面に取り付けることもできる。
<水崩壊性アルミニウム合金からなるスパッタ膜の形成>
Al100重量%に対し、Inを3重量%、Siを0.4重量%、Tiを0.2重量%含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴットを作成し、このインゴットをスライス加工してワイヤー状の溶射材料を作成した。
なお、このアルミニウム合金の全体の配合比(重量%)は、Al:96.53、In:2.90、Si:0.39、Ti:0.19である。
このワイヤー状の溶射材料を用い、銅(Cu)からなるバッキングプレートの表面に、フレーム溶射法によって厚さ1.5mmの溶射膜からなるスパッタリングターゲットを設けた。
この場合、バッキングプレートの表面を、SiCを用いたブラスト処理によって予め粗面化した。
このスパッタリングターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタリング法によって、ガラス基板(コーニング#7059 無アクリルガラス)上に直径120mm、厚さ1μmのアルミニウム合金膜を形成し、アルミニウム合金からなるスパッタ膜のサンプルとした。
このアルミニウム合金膜の表面を目視で観察したところ、金属光沢が確認された。
また、アルミニウム合金膜の組成を蛍光X線分析法によって分析したところ、Inを2.50重量%含有することが確認された。
このアルミニウム合金膜は、Al100重量%に対し、Inを2.6重量%含有するものであり、成膜に用いたスパッタリングターゲットにおけるInの含有量と殆ど変化がないことが確認された。
<水崩壊性の確認>
上記アルミニウム合金からなるスパッタ膜が形成されたガラス基板を、温度70〜80℃の一般水道水に10分間浸漬してスパッタ膜の水崩壊性を観察した。
その結果、アルミニウム合金からなるスパッタ膜は、ガラス基板上から消失し、これによりこのスパッタ膜の水崩壊性が確認された。
以上より、本発明の効果を確認することができた。
1…インゴット
2…ワイヤー状の溶射材料
5…ターゲットアセンブリ
10…バッキングプレート
11…溶射装置
15…スパッタリングターゲット

Claims (11)

  1. アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなり、
    前記アルミニウム合金の前記アルミニウムの結晶粒中に、前記少なくともインジウム又はビスマスのいずれかで、かつ、粒径10nm以下の粒子が分散されているスパッタリングターゲット。
  2. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、インジウムを0.1重量%以上20重量%以下含有する請求項1記載のスパッタリングターゲット。
  3. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、ビスマスを0.1重量%以上20重量%以下含有する請求項1又は2のいずれか1項記載のスパッタリングターゲット。
  4. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にシリコンを0.04重量%以上8重量%以下含有する請求項2又は3のいずれか1項記載のスパッタリングターゲット。
  5. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にチタンを0.13重量%以上4重量%以下含有する請求項2乃至4のいずれか1項記載のスパッタリングターゲット。
  6. アルミニウムに少なくともインジウム又はビスマスのいずれかを含有する水崩壊性のアルミニウム合金からなる溶射材料を用意し、
    前記溶射材料を用い、溶射法によってバッキングプレート上にスパッタリングターゲットを設ける工程を有するスパッタリングターゲットの製造方法。
  7. 前記溶射材料は、前記水崩壊性のアルミニウム合金からなるインゴットを加工してワイヤー状にしたものである請求項6記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  8. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、インジウムを0.1重量%以上20重量%以下含有する請求項6又は7のいずれか1項記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  9. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、アルミニウム100重量%に対し、ビスマスを0.1重量%以上20重量%以下含有する請求項6乃至8のいずれか1項記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  10. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にシリコンを0.04重量%以上8重量%以下含有する請求項8又は9のいずれか1項記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  11. 前記水崩壊性のアルミニウム合金は、更にチタンを0.13重量%以上4重量%以下含有する請求項8乃至10のいずれか1項記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
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