JP6674741B2 - 汚染土壌のバイオレメディエーションによる浄化剤及びそれを使用した浄化方法 - Google Patents
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Description
使用する微生物は、地盤中の微生物を活性化させる方法(バイオスティミュレーション)と、微生物製剤等を使用する場合(バイオオーグメンテーション)とがある。
また、バイオレメディエーションには、主として、以下の3工法がある。
・ランドファーミング法:汚染土壌を掘削し、地上で撹拌操作により培地成分と混合させて分解処理する方法。(図1(a))
・スラリー処理法:汚染土壌を掘削し、汚染土をプラントに投入し培地成分と混合させて分解処理する方法。
・原位置処理法:汚染サイトに井戸を設置し、地盤(汚染土壌)中に培地成分を注入し、微生物を活性化させる方法。(図1(b))
この大豆ホエーは、一般的には、以下のような脱脂大豆から分離大豆蛋白を製造する工程で排出される。
1.脱脂大豆へ加水
2.pHを調整してタンパク質等を抽出
3.不溶性繊維部分(おから)を分離
4.pHを下げて大豆蛋白を凝集沈殿
5.タンパク質を分離
上記製造工程において、タンパク質を分離する際の上清が大豆ホエーとなる。
大豆ホエーには、大豆に由来する糖質をはじめとして、微生物増殖因子が含まれていると推定される。
なお、この大豆ホエーは、適宜濃縮することができる。これにより、輸送や保管が容易となる。濃縮時点での固形分は30〜40重量%であり、組成としては、タンパク質6〜7重量%、炭水化物15〜25重量%、灰分5〜10重量%等を含有する。以下に記載する「大豆ホエー」は特に断らない限り、この大豆ホエー濃縮物を指す。
・大豆ホエーの供給濃度:大豆ホエー100〜10,000mg/Lを目安として供給する。この場合、必要に応じて、大豆ホエーに窒素分やリン分等の栄養塩を添加することができる。
・分解機構:大豆ホエーが、好気性、微好気性及び嫌気性の微生物の栄養源(エネルギー源)となり、微生物の働きによって油分及び炭化水素類(揮発性有機化合物)の分解(低分子化)を促進することができる。
・大豆ホエーの供給濃度:大豆ホエー100〜100,000mg/Lを目安として供給する。この場合、酸性(pH4〜5程度)の大豆ホエーに炭酸水素ナトリウム等のアルカリ剤を添加、中和して汚染土壌に供給する(汚染土壌のpHを6以上の中性付近、酸化還元電位(ORP)を−150mV以下に維持する。)。また、必要に応じて、窒素分やリン分等の栄養塩を添加することができる。
・分解機構:大豆ホエーが、嫌気性微生物の栄養源(エネルギー源)になるとともに、水素の供給源となり、有機塩素系化合物の脱塩素分解(例えば、トリクロロエチレン(TCE)→シス−1,2−ジクロロエチレン(c1,2−DCE)→塩化ビニルモノマー(VC)→エチレン)を促進することができる。
・適用方法:汚染サイトに井戸を設置し、地盤(汚染土壌)中に培地成分である大豆ホエーを注入し、微生物を活性化させる原位置処理法に好適に用いることができる。
(1)試験内容の概要
油分汚染土壌の原位置処理法(好気性)に関する大豆ホエーの分解促進効果を確認することを目的として、A重油による模擬汚染土壌のカラム試験を行い、大豆ホエーと栄養塩を添加した促進系、栄養塩のみを添加した促進系、活性抑制剤を供給したコントロール系における油分の分解性能を比較することにより、大豆ホエーの分解促進効果を評価した。
(2−1)試験装置
試験の実施条件を表2に、カラム試験装置を図2に示す。実施手順は、以下のとおりである。
1.内径3cmのアクリルパイプに長さ20cmとなるように模擬汚染土壌(A重油500mg/L、砂質土)を充填した土壌カラムに、空気の曝気により約8mg/Lにした溶存酸素(DO)と栄養塩等からなる水溶液を上向流で70日間連続通水した。
2.模擬汚染土壌における微生物の増殖を促す目的で、促進系に対して実験開始前に、カラムに数箇所の汚染サイトの地下水を注入した。
3.開始時、最後に土壌を溶媒抽出し、油分の分析等を行った。
(2−2)培地
通水させる液相の成分は、促進系の栄養塩として、NH4Cl:0.1g/L、KH2PO4:0.1g/L、微量の必須金属及びビタミン類を溶解し、pH6.8としたものに大豆ホエーを添加あるいは添加しないもの、コントロール系では、NaN3(アジ化ナトリウム):1g/Lとした。なお、大豆ホエーは、400mg/Lとなるように供給した。
(2−3)分析項目
分析項目は、以下の3項目について行った。
1.全石油系炭化水素(TPH)(以下、「TPH」という。)
2.油臭・油膜
3.油分解菌(平板希釈法、A重油+無機塩寒天培地)
70日間におよぶカラム試験の結果、図3に示すように、初期にTPHで350mg/LあったA重油は、大豆ホエーを添加した系では50%強が低減され、160mg/Lとなった。大豆ホエーを添加していない栄養塩のみの系(BSM)では280mg/Lと20%、コントロール系では15%の低減に留まり、大豆ホエーの添加により油分の分解の促進効果が確認できた。
油膜については、図4に示すように、大豆ホエー、BSM系のいずれも70日目で消失しなかったが、油臭は、初期3に対し、大豆ホエーを添加した系では1と2段階の低減効果が得られた。これは、栄養塩のみ、あるいは、コントロール系では油臭が2までしか低減できなかったことに対し、大豆ホエーの添加により油分の分解の促進効果が確認できた。
また、実験期間中の大豆ホエー+栄養塩系での目詰まり等は特に確認されず、現場適用における悪影響についても問題ないと考えられる。
油分の分解菌は、いずれの系においても実験期間を通じて106CFU/mlオーダーに維持されていたが、定期的に測定していた酸素消費量からは2つの促進系からでは、コントロール系と較べて顕著な減少が確認されており、これらにおける油分の低減現象は好気性微生物の活性化によるものと考えられる。
1.TPHの低減度について
栄養塩のみを供給した場合と比較して、大豆ホエーの添加による油分の分解促進効果が確認できた。最適添加量については、案件毎に設定することが必要であるが、表3及び図5に示す添加量の実験結果から、大豆ホエー100〜100,000mg/Lを目安として供給することが適当であると考えられる。
2.油臭・油膜の低減度について
油膜については70日間では消失させることができなかったものの、油臭では、70日間で3→1(通常の浄化工事での目標値)と、大豆ホエーの添加による促進効果が確認できた。
(1)試験内容の概要
有機塩素系化合物(揮発性有機化合物)汚染土壌の原位置処理法(嫌気性)に関する大豆ホエーの分解促進効果を確認することを目的として、有機塩素系化合物(揮発性有機化合物)による模擬汚染地下水のバッチ実験を行った。
本試験では、大豆ホエーと栄養塩を添加した促進系、浄化剤等の栄養成分を供給しないコントロール系における有機塩素系化合物(揮発性有機化合物)の分解性能を比較することにより、大豆ホエーの分解促進効果を評価した。
(2−1)試験装置
試験装置を図6に示す。実施手順は、以下のとおりである。
1.地下水試料1000mlについて、pHを調整した後、PCE等の試薬を加える。次いで、100ml容量バイアル瓶に試薬添加済の地下水を100ml加える。気相部を窒素ガスで充填するため、地下水及び試薬の添加操作はグローブボックス内で行う。また、バイアル瓶にはフッ素樹脂コートゴム栓を用いる。
2.培養は、20℃暗所にて静置培養とする。
3.定期的に培養液に関する分析を行う。
(2−2)培地
試験を行った培地を表4に示す。
(2−3)分析項目
分析項目は、以下の2項目について行った。
1.VOC
2.栄養塩(全窒素、全リン、硫酸イオン)
7箇月におよぶバッチ試験の結果、図7に示すように、初期に7mg/LあったPCEは、大豆ホエー(DH)0.075%を添加した系(Run2)では6箇月でc1,2−DCEが基準以下、VCは7箇月で基準以下に低減した。脱塩素反応によるPCE→TCE→c1,2−DCEの移行も確実になされることを確認した。
阻害物質となる硫酸イオンは、低減はやや遅いものの低減後は安定していた。
1.有機塩素系化合物(揮発性有機化合物)の低減について
大豆ホエーの添加による促進効果が確認できた。阻害物質として懸念された硫酸イオンも分解反応の阻害作用は生じていなかったため、浄化促進剤として使用可能であることが確認できた。
2.栄養成分について
添加する必要性は認められなかった。
Claims (3)
- 脱脂大豆から分離大豆蛋白を製造する際に排出される大豆ホエーを有効成分とし、汚染土壌に存在する嫌気性微生物による有機塩素系化合物の脱塩素分解を対象とするものである、汚染土壌のバイオレメディエーションによる浄化剤。
- 脱脂大豆から分離大豆蛋白を製造する際に排出される大豆ホエーを、有機塩素系化合物を含有する汚染土壌に供給することにより、汚染土壌に存在する嫌気性微生物による有機塩素系化合物の脱塩素分解を促進させるようにすることを特徴とする汚染土壌のバイオレメディエーションによる浄化方法。
- 大豆ホエーにアルカリ剤を添加して汚染土壌に供給することを特徴とする請求項2に記載の汚染土壌のバイオレメディエーションによる浄化方法。
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