JP6672117B2 - 腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物 - Google Patents

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本発明は、腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物等に関する。
腸内フローラ(細菌叢)の細菌種のバランスが、健康維持に重要な役割を持つことが明らかとなってきている。腸内フローラは比較的安定した生態系ではあるが、様々な因子の影響を受けて、その構成や活性が変化することもある。腸内フローラの細菌種のバランスが崩れると、健康に悪影響が出るおそれが高い。例えば、腸管バリア機能を高めるために働く腸内細菌種が減少すると、腸管粘膜の炎症等が起こるおそれが高まる。また例えば、フェノール類を作り出す腸内細菌種が増加すると、生産されたフェノール類が腸管から吸収されて血液に移行し、健康に影響を与えることが知られている。特に、血液に移行したフェノール類が、皮膚に到達し、特に表皮の形成過程に悪影響を及ぼす(保湿性が低下し肌荒れが起こりえる)ことが知られている。
また、ラクトフェリン(Lactoferrin:LF)は、分子量約8万の鉄結合性蛋白質である。LFは1本鎖のポリペプチドに2本の糖鎖が結合した構造からなり、分子内にFe3+を2個結合することができる。LFはヒトを含む哺乳動物の乳汁、唾液、涙液などの外分泌液、粘液、好中球および消化管粘膜の細胞表面などに存在する。
LFは、腸内環境改善に寄与することが示唆されている。例えば、腸内免疫制御機構を調整する可能性や、ラクトフェリンをペプシンで消化して得られるペプチドがビフィズス菌の増殖を促進する可能性が示唆されている。
実験医学 Vol.34 No.6 (4月号) 875−879 2016 「免疫システムによる腸内環境制御 inside−outの観点から」
本発明は、腸内フローラ細菌種バランスを改善できる新規で簡便な手段を提供することを課題とする。特に、腸内フローラ細菌種バランスを改善することで、腸管バリア機能を高めること、及び/又は腸内フェノールの産生を抑制すること、を課題とする。
本発明者らは、ラクトフェリンを経口摂取することにより、腸内フローラ細菌種バランスを改善できる可能性を見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
ラクトフェリンを含む、腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物。
項2.
クロストリジウムサブクラスターXIVa増加用、及び/又は、クロストリジウムクラスターXI減少用である、項1に記載の組成物。
項3.
クロストリジウムサブクラスターXIVa増加用、及び、クロストリジウムクラスターXI減少用である、項2に記載の組成物。
項4a.
腸内フェノール産生抑制用である、項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項4b.
腸内酪酸及び/又はポリアミン産生促進用である、項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項4c.
腸内フェノール産生抑制用、並びに、腸内酪酸及び/又はポリアミン産生促進用である、項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項5.
食品組成物又は医薬組成物である、上記項のいずれかに記載の組成物。
項6.
ラクトフェリンを含んだリポソームを含む、項1〜5のいずれかに記載の組成物。
本発明に包含される腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物は、経口摂取することにより、クロストリジウムサブクラスターXIVaを増加させるだけではなく、併せてクロストリジウムクラスターXIを減少させることもできる。
ラクトフェリン摂取群と非摂取群とで、クロストリジウムサブクラスターXIVa及びクロストリジウムクラスターXIに属する菌量がどのように変化するかを検討した結果を示す。†はP<0.10を示す。 ラクトフェリン摂取群と非摂取群とで、糞便中のフェノール量がどう変化するかを検討した結果を示す。*はP<0.05を示す。
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本発明に包含される腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物は、ラクトフェリンを有効成分として含む。
ラクトフェリンは、特に制限されず、アポラクトフェリン、天然型ラクトフェリンまたはホロラクトフェリンであってもよい。また、ラクトフェリンとしては市販品を購入して用いることもできる。例えば、森永ラクトフェリンMLF−EX(森永乳業株式会社製)を好ましく用いることができる。また、市販品の他、哺乳類(例えば、ヒト、ウシ、水牛、ウマ、ヤギ、ヒツジ等)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等、これらの処理物である脱脂乳、ホエー等からイオン交換クロマトグラフィー等の常法により分離したラクトフェリン、ラクトフェリンから常法により鉄を除去したアポラクトフェリン、アポラクトフェリンに鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属を一部キレートさせた金属結合ラクトフェリン、または前記金属を完全にキレートさせた金属飽和ラクトフェリン、等を使用することができる。 特にウシ由来又はヒト由来のラクトフェリンが好ましい。
また、本発明に用いるラクトフェリンはリポソームに内包された態様であってもよい。つまり、ラクトフェリンを含んだリポソームを好ましく用いることができ、本発明はラクトフェリンを含んだリポソームを有効成分として含む、抗ポルフィロモナス・ジンジバリス経口組成物も包含する。
リポソームは脂質小胞体であり、リン脂質を主体とした脂質を十分量の水で水和することにより形成される。リポソームは水溶性薬物をその内水層に、脂溶性薬物を脂質二重層へ取り込むことができ、薬物のターゲティング、徐放化、副作用の軽減などを目的にDDS製剤の薬物運搬体としてその応用が試みられている。また、リポソームは生体膜の成分から構成されているため安全性が高いことも知られている。
一般的に、リポソームは脂質二重層の数に基づいて分類され、多重膜リポソーム(MLV)と一枚膜リポソームに分類される。一枚膜リポソームは、そのサイズに応じて、更にSUV(small unilamella vesicle)、LUV(large unilamella vesicle)、GUV(giant unilamella vesicle)などに分類される。本発明のリポソームは、これらのいずれであってもよい。好ましいのはMLVである。本発明では、リポソームの大きさは、通常30〜1000nm、好ましくは30〜600nm、より好ましくは50〜200nmである。
本発明において使用されるラクトフェリンを含んだリポソームにおいて、ラクトフェリンはリポソーム膜に囲まれる空間に封入されていることが好ましいが、ラクトフェリンがリポソーム膜構成成分として含まれていてもよいし、多重膜リポソームを構成する多重膜の間に含まれていてもよいし、リポソーム膜のうちの最も外側の膜にラクトフェリンが付着又は結合する形態で含まれていてもよい。
ラクトフェリンを含んだリポソームは、従来の方法により製造することができる。例えば、所望量のレシチン及び必要に応じて所望量のステロールを、例えばエタノールなどの適当な有機溶媒で可溶化し、減圧下に溶媒を除去し、膜脂質を作成後、これにラクトフェリンや任意の生理活性物質を含む水溶液を添加して、例えば、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌して、リポソーム懸濁液を調製することにより、ラクトフェリンを封入したリポソームを得ることができる。
また、この方法とは別に、所望量のレシチン及び必要に応じて所望量ステロールを少量のエタノールに溶解後、水溶液又は緩衝液に分散して予備乳化を行った後、高圧で分散させて脂質二重層を形成させてリポソーム懸濁液を調製することによってもラクトフェリンを封入したリポソームを得ることができる。
得られた懸濁液に対しては、必要に応じて、リポソーム外液中のラクトフェリンを除去する操作、例えば懸濁液を濾過後,得られた濾液を透析する操作を行ってもよい。
リポソームの懸濁液は、液状のままでも使用できるが、凍結乾燥した乾燥物として使用することもできる。リポソームは、その乾燥物を錠剤やカプセル化したものをはじめ、様々な経口摂取に適した形態とすることが可能である。
ラクトフェリンを含んだリポソーム中におけるラクトフェリンの含有量は好ましくは10〜99重量%程度、より好ましくは20〜95重量%程度、さらに好ましくは30〜90重量%程度である。
レシチンとしては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、ナタネレシチン、コーンレシチン、ひまわりレシチン、ピーナッツレシチンなどを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができるがこれらに限定されない。本発明では、これらの水素添加物を用いることもできる。レシチンはホスファチジルコリン又は1,2−ジアシルグリセロール 3−ホスホコリンとも称され、一般的に、グリセロールの1位及び2位に脂肪酸が結合している。本発明では、上記例示のレシチンに加えて、1位及び2位の両方又は片方に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが好ましく、1位に炭素数12〜24の飽和脂肪酸、2位に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが特に好ましい。ここで、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は直鎖状及び分枝状のいずれでもよい。好ましい不飽和脂肪酸としては、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸を使用できる。特に2位にオレイン酸、リノール酸が多く結合したレシチンが好ましい。具体的には、卵黄レシチン、大豆レシチンが好ましい。
ステロールとしては、コレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロールなどの動物由来のステロール;β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、エルゴスタディエノール、シトステロール、ブラシカステロールなどの植物由来のステロール(フィトステロール);チモステロール、エルゴステロールなどの微生物由来のステロール等が挙げられ、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、コレステロール又はフィトステロールが好ましく用いられる。
リポソームにおけるレシチンとステロールのモル比は、55:45〜95:5程度が好ましく、60:40〜90:10程度がより好ましく、75:25〜85:15程度が最も好ましい。モル比がこれらの範囲にあるとリポソーム膜の安定性が向上する。
ラクトフェリンを含んだリポソームにおけるレシチンの含有量は、好ましくは1〜80重量%程度、より好ましくは3〜65重量%程度、さらに好ましくは5〜50重量%程度である。
ラクトフェリンを含んだリポソームにおけるステロールの含有量は、好ましくは0〜40重量%程度、より好ましくは0.1〜30重量%程度、さらに好ましくは1〜20重量%程度である。
レシチン又はステロールの含有量は既知の方法で測定できる。例えば、レシチンの含有量はFiske−Subbarow法など、ステロールの含有量はHPLC、比色法などによって定量できる。
さらに、ラクトフェリンを含んだリポソームの表面をコーティングすることができ、このコーティング物も有効成分として利用できる。好ましいコーティングとしては、硫酸基を含有する多糖類によるコーティングがあげられる。硫酸基含有多糖類としては、フコイダン、カラギーナン、寒天、ヘパリンなどが挙げられる。また、該硫酸基含有多糖類としては、硫酸基を含まない多糖を硫酸化したものも包含され、例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸などであってもよい。
硫酸基含有多糖類としては、分子量が5000〜300000程度のものが好ましく用いられる。これらの硫酸基含有多糖類の中でもフコイダン及びカラギーナンを好ましく用いることができ、特にフコイダンが好ましい。
硫酸基含有多糖類の使用量は、例えば、リポソームに含有されるレシチン100重量部に対して、10〜500重量部程度が好ましく、20〜200重量部程度がより好ましい。
コーティングは、例えば、ラクトフェリンを含んだリポソームを含む懸濁液に、硫酸基含有多糖類を加え、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌することにより行うことができる。なお、1つのコーティング膜の中に複数のリポソームが含まれていてもよい。
リポソームが硫酸基含有多糖類でコーティングされていることは、例えば、リポソーム溶液のゼータ電位が、硫酸基含有多糖類を添加して撹拌したさいに変化することにより確認できる。
ラクトフェリンを含んだリポソームにはレシチン、フィトステロール以外にも必要に応じて、トコフェロール、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマーなどの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオール等を加えることができる。
当該腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物(及び含有されるラクトフェリン)は、経口摂取することにより、腸内フローラの細菌種のバランスを改善することができる。腸内フローラの細菌種のバランスが崩れている対象はもちろん、それほど崩れてはいない対象であっても、より好ましい細菌種バランスとなるよう促進することができる。
特に、クロストリジウムサブクラスターXIVaに属する細菌種を増加させる効果、及びクロストリジウムクラスターXIに属する細菌種を減少させる効果、を好ましく奏する。
クロストリジウムサブクラスターXIVaは、腸内環境の恒常性維持に寄与するクラスターと考えられており、特に酪酸産生菌のほとんどを含むとされる。そして、産生された酪酸は、大腸Treg細胞を誘導して腸管粘膜の炎症を抑制するとされている。また、クロストリジウムサブクラスターXIVaに属する最優性菌種は、腸管内ポリアミンを産生する。ポリアミンは、炎症抑制作用や腸管バリア機能維持作用があるとされている。
クロストリジウムクラスターXIは、いわゆる腐敗菌を多く含むとされており、その中には病原性のある菌も存在すると考えられている。クロストリジウムクラスターXIに属する細菌種により、タンパク質に含まれているアミノ酸の一種であるチロシンからフェノール類が産生されるとされる。そのフェノール類の一部は腸から吸収され、血液を介して体内を循環し、生体内で様々な悪影響を示すことから、腸内におけるフェノール類の産生は腸内環境の悪化の指標になるものと考えられている。
本発明に包含される腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物は、経口摂取することにより、クロストリジウムサブクラスターXIVaを増加させるだけではなく、併せてクロストリジウムクラスターXIを減少させることもできる点で、優れている。このために、腸内炎症抑制作用や腸管バリア機能維持作用のみならず、腸内のフェノール類産生抑制作用も奏することができる。腸内のフェノール類産生により、肌荒れ(特に保湿性低下、ハリ喪失、吹き出物、ターンオーバー低下等)が起こるおそれが知られており、よってフェノール産生抑制により肌荒れ改善効果が期待できる。また、腸内炎症は、生活習慣病の引き金になる可能性があることが近年わかってきており、例えば動脈硬化、糖尿病、肝臓病といった生活習慣病の予防にも効果を発揮するものと考えられる。
当該腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物におけるラクトフェリンの含有量は本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限されない。例えば、1〜10000mg、5〜5000mg、10〜2000mg、又は20〜1000mg程度が例示できる。また、含有割合も特に制限はされず、例えば0.1〜100重量%、1〜99重量%、又は10〜80重量%程度、が例示できる。またさらに、当該腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物を摂取する場合のラクトフェリンの摂取量も特に制限はされず、例えば成人一日あたり10〜10000mg、20〜5000mg、30〜2000mg、又は50〜1000mg程度が例示できる。
また、当該腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物は、1回又は複数回(好ましくは2〜3回)に分けて摂取することができる。適用対象はヒトが好ましいが、ヒト以外の非ヒト哺乳動物であってもよい。適用対象が非ヒト哺乳動物(例えばペット又は家畜、より具体的には、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ等)の場合も、当該ヒトの投与又は摂取量を参考として適宜設定することができる。
当該腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物は、医薬組成物、又は食品組成物(飲料組成物及び食品添加物組成物を包含する)として好ましく用いることができる。
医薬組成物として用いる場合、他の成分としては、薬学的に許容される基剤、担体、及び/又は添加剤(例えば溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等)等が例示できる。また、当該医薬組成物の形態も特に制限されず、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が例示できる。これらの形態の医薬製剤は、必要に応じて当該他の成分と、ラクトフェリンを組み合わせて常法により調製することができる。
食品組成物として用いる場合、他の成分としては、食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤や、その他食品として利用され得る成分・材料が例示できる。また、当該食品組成物の形態も特に制限されず、例えば加工食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示商品等)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食又は介護食等)等が例示できる。これらは常法により調製することができる。特に、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示商品等)、又はサプリメントとして、食品組成物を調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒、カプセル、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(飲料パウダー、ドリンク剤等)等の形態で調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、錠剤、飲料パウダー、ドリンク剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。なお、食品組成物の中でも食品添加物組成物として用いる場合には、その形態として、例えば液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状のものが挙げられる。
特に制限はされないが、当該腸内フローラ細菌種バランス改善用経口組成物の上記その他の成分としては、デキストリン、セルロース、レシチン(特に大豆由来)、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム等が特に好ましく例示される。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
クロストリジウムクラスターにラクトフェリンが与える影響の検討
試験組成物として、森永ラクトフェリンMLF−EX(森永乳業株式会社製)を用いた。 MLF−EXは、既存の天然食品添加物であるウシ由来LFを90%以上含む食品用原料である。
まずMLF−EXをリポソームに内包させ、次に当該ラクトフェリン内包リポソームに賦形剤等を配合して錠剤を調製した。具体的には、大豆レシチンをエタノールに溶解させ、ラクトフェリン水溶液に分散して予備乳化を行った後、140MPa程度の高圧で分散させてラクトフェリンを封入したリポソーム懸濁液を調製し、これにデキストリンを混和し凍結乾燥して乾燥粉末を得た。当該粉末にセルロース、微粒化二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウムなどの腑形剤を配合して打錠して、ラクトフェリン内包リポソーム含有錠剤(300mg)を得た。なお、当該錠剤6錠あたり、LFとして270mgを含むように原材料量を調整した(すなわち、1錠300mgあたりラクトフェリン45mgを含有する)。また、プラセボとして、MLF−EXをデキストリンで置き換えた錠剤も同様に製造した。これらの錠剤を一日6錠づつ、4週間被験者に摂取させた。また試験開始0、2、4週後を検査日として、各検査日の前後3日間以内において、採便キットを用いて各被験者に自身の糞便検体約1gを採取させ、凍結した状態で回収した。そして、当該糞便検体を用いて、腸内フローラの細菌種の解析、及び糞便中のフェノールの濃度測定を行った。腸内フローラの細菌種の解析は、T−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism Analysis)法を用いて行った。フェノール濃度測定はGC−MSで行った。これらの解析及び測定は、いずれも株式会社テクノスルガ・ラボ(静岡県静岡市)に委託した。
なお、当該試験の被験者は、60名(男性31名、女性29名、年齢40.5±11.0歳)であった。当該被験者は、2週間の事前調査において、排便回数が1週間に3〜5回程度であった者を選出した。また、当該試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較法で実施した。
結果を図1及び図2にそれぞれ示す。図1左に、0週と4週とを比較したときのクロストリジウムサブクラスターXIVaの変化率を示す。図1右に、0週と4週とを比較したときのクロストリジウムクラスターXIの変化率を示す。変化率100%は、0週目と同じであることを示す。また、ラクトフェリンを摂取した群をLLF群と標記することがある。
図1から分かるように、LLF群では、0週目に対して4週目ではクロストリジウムサブクラスターXIVaが有意に増加した。また、LLF群では、0週目に対して4週目ではクロストリジウムクラスターXIが有意に減少した。
また、図2から分かるように、LLF群では、0週目に対して4週目ではフェノールが有意に減少し、LLF非摂取群(placebo群)では変化がなかった。
以上のように、ラクトフェリンを摂取することにより、クロストリジウムサブクラスターXIVaを増加させるだけではなく、併せてクロストリジウムクラスターXIを減少させることもできること、また腸内におけるフェノール産生を抑制できることがわかった。

Claims (3)

  1. ラクトフェリンを含んだリポソームを含む
    クロストリジウムサブクラスターXIVa増加用経口組成物。
  2. クロストリジウムサブクラスターXIVa増加用、及び、クロストリジウムクラスターXI減少用である、請求項1に記載の組成物。
  3. 食品組成物又は医薬組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
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