以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(応力緩和剤)
本実施形態の応力緩和剤は、接続構造体を組み立てるための接合材または接着剤に用いられる材料であり、第1の鎖状高分子及び環状分子を含有する粒子を含む。このような応力緩和剤を含む接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤は、半導体装置を組み立てるにあたり、接続対象部材どうしを接続するために使用され得る。接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤が硬化して形成される接続層は、応力緩和剤を含むので、接続層にクラック等の損傷が発生しにくい。そのため、本実施形態の応力緩和剤は、上記接続された接着対象部材の反り及び剥離を抑制することを可能とし、特に、半導体装置等の接続構造体の組み立て時における冷熱サイクル時での反り及び剥離の抑制に有効である。
以下、応力緩和剤に含まれる上記粒子を「基材粒子」と呼ぶ。
上記基材粒子は、第1の鎖状高分子及び環状分子を構成成分として含む。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
第1の鎖状高分子の種類は、特に限定されず、例えば、従来から知られている各種の重合体を採用できる。
例えば、第1の鎖状高分子として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類等が挙げられる。また、第1の鎖状高分子は、上記例示列挙した各種重合体の誘導体であってもよい。
第1の鎖状高分子は、1種の重合体のみでもよいし、2種以上の重合体を含んでいてもよい。また、第1の鎖状高分子は、1種の繰り返し構成単位で構成されるホモポリマーであってもよいし、2種以上の繰り返し構成単位で構成されるコポリマーであってもよい。第1の鎖状高分子がコポリマーである場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等のいずれの構造であってもよい。
第1の鎖状高分子の重量平均分子量は特に限定的ではないが、例えば、3,000以上とすることができ、5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜50,000であることが特に好ましい。
環状分子としては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン及びこれらの誘導体又は変性体等のシクロデキストリン類、その他、環状のオリゴマー、環状のマクロモノマー等が挙げられる。環状のオリゴマーとしては、例えば、エチレングリコールのオリゴマー、エチレンオキシドのオリゴマー、プロピレングリコールのオリゴマー、多糖類等である。環状分子は、1種のみでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
前記環状分子は、重合性の官能基を有していてもよい。ここでいう重合性の官能基とは、重合性単量体と重合可能な官能基をいう。重合としては、例えば、ラジカル重合、イオン重合、重縮合(縮合重合、縮重合)、付加縮合、リビング重合、リビングラジカル重合等、その他、従来から知られている各種重合が挙げられる。
重合性の官能基の具体例としては、アルケニル基、ビニル基等の他、−OH、−SH、−NH2、−COOH、−SO3H、及び−PO4Hが挙げられる。これらは一以上の置換基をさらに有していてもよい。重合性の官能基としては、後述の架橋構造を形成しやすいという観点から、ラジカル重合可能な官能基、例えば、アルケニル基、ビニル基等が好ましい。なお、前記環状分子は、上記重合性の官能基以外の官能基を有していてもよい。
重合性の官能基を有する環状分子の他例として、下記一般式(1)
(上記式中、R5及びR6は、それぞれ独立して水素、或いは、炭素数が1又は2のアルキル基であり、R7は、水素又はメチル基である。また、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
で表わされる環状マクロモノマーが挙げられる。
重合性の官能基を有する環状分子のさらなる他例として、下記一般式(2)
(上記式中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される環状マクロモノマー等が挙げられる。
応力緩和剤に含まれる基材粒子が第1の鎖状高分子と環状分子を含む限りは各分子の存在態様は特に限定的ではない。
しかし、応力緩和剤による応力を緩和させる性能がより高まり得るという観点から、上記第1の鎖状高分子は、上記環状分子の開口部を貫通していることが好ましい。すなわち、上記第1の鎖状高分子は、上記環状分子の環内を貫通して、第1の鎖状高分子と環状分子とが、いわゆる包接化合物を形成していることが好ましい。
上記のように第1の鎖状高分子が環状分子の開口部を貫通して形成されている構造は、「ポリロタキサン」と称される。
応力緩和剤に含まれる基材粒子がポリロタキサンを含む場合、第1の鎖状高分子は、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。この場合、第1の鎖状高分子が環状分子の開口部(環内)を貫通しやすく、安定なポリロタキサンを形成しやすい。なお、第1の鎖状高分子は、上記環状分子の開口部を貫通できる程度に分岐鎖を有していてもよい。
応力緩和剤に含まれる基材粒子がポリロタキサンを含む場合、環状分子は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択される分子であることが好ましい。
応力緩和剤に含まれる基材粒子がポリロタキサンを含む場合、直鎖状分子が環状分子を貫通する際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、環状分子の貫通量は0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4とすることができる。なお、環状分子の最大包接量は、公知の方法で決定することができる。
応力緩和剤に含まれる基材粒子がポリロタキサンを含む場合、第1の鎖状高分子には、環状分子の脱落を防止するための分子が結合していることが好ましい。以下、環状分子の脱落を防止するために第1の鎖状高分子に結合した分子を、ストッパー基と称する。
ストッパー基としては、例えば、アダマンタン基、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、N−カルボベンゾキシ−L−チロシン類(Z−L−チロシン類)、トリチル基、ピレニル基、フェニル基等のアリール基、2−ブチルデシル基、フルオレセイン類、ピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。その他、ポリロタキサンにおいて環状分子の脱落を防止するために従来から知られている官能基が挙げられる。上記例示列挙したストッパー基は置換基を有していてもよい。
上記ストッパー基は、例えば、第1の鎖状高分子の両末端に結合している。このように嵩高いストッパー基が第1の鎖状高分子の両末端に結合していると、環状分子が第1の鎖状高分子によって串刺し状に貫通された状態が保持され得る。つまり、環状分子は、第1の鎖状高分子を包接させつつ自由に動くことができ、両末端のストッパー基によって、第1の鎖状高分子から外れることはない。これにより、より優れた応力緩和効果を発揮しやすくなる。
なお、ストッパー基は、第1の鎖状高分子の両末端に直接結合していてもよいし、第1の鎖状高分子の両末端にアミド結合、エステル結合等を介して間接的に結合していてもよい。
基材粒子は、上記ストッパー基を有する第1の鎖状高分子とストッパー基を有していない第1の鎖状高分子との混合物であってもよい。
第1の鎖状高分子がストッパー基を有していない場合は、一部の環状分子は第1の鎖状高分子から脱落する場合があるが、この脱落した環状分子は、基材粒子中の高分子マトリックス間に存在し続けることが可能である。
上記の基材粒子は、第2の鎖状高分子をさらに含むことができる。
第2の鎖状高分子は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。
特に、第2の鎖状高分子は、アクリル系重合体及びスチレン系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、応力緩和剤の応力緩和の効果がより優れるものであり、また、基材粒子の製造も簡便な方法行うことができる。特に、第2の鎖状高分子は、アクリル系重合体が好ましい。
第2の鎖状高分子は、1種の繰り返し構成単位で構成されるホモポリマーであってもよいし、2種以上の繰り返し構成単位で構成されるコポリマーであってもよい。第1の鎖状高分子がコポリマーである場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等のいずれの構造であってもよい。
上記基材粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できる観点から、第2の鎖状高分子は、エチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体の重合体であることが好ましい。第2の鎖状高分子は、1種のみの重合性単量体の重合体であってもよいし、あるいは、2種以上の重合性単量体の重合体であってもよい。
第2の鎖状高分子がエチレン性不飽和基を有する単量体の重合体である場合、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;塩化ビニル、フッ化ビニル、等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート類;α−オレフィン化合物として、ジイソブチレン、イソブチレン、リニアレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン類;共役ジエン化合物として、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、ジビニルベンゼン、1,4−ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル系単量体;(メタ)アクリル化合物として、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;アリル化合物として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル;シリコーン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランアルコキシド類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキジメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルジビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド;デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;片末端変性シリコーンオイル、両末端シリコーンオイル、側鎖型シリコーンオイル等の変性(反応性)シリコーンオイル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
第2の鎖状高分子がエチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体の重合体である場合においても、得られる重合体は、アクリル系重合体及びスチレン系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、応力緩和剤の応力緩和の効果がより優れるものであり、また、基材粒子の製造も簡便な方法行うことができる。特に、第2の鎖状高分子は、アクリル系重合体が好ましい。
第2の鎖状高分子は、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法、例えばラジカル重合法等により重合させることで製造される。
第2の鎖状高分子は、上記の環状分子と結合して架橋構造を形成することができる。すなわち、応力緩和剤に含まれる基材粒子は、第2の鎖状高分子と環状分子とが結合して形成された架橋構造体を含んで形成されていてもよい。この場合、環状分子どうしが第2の鎖状高分子によって架橋された架橋構造体となる。架橋構造とは、例えば、分岐鎖構造を有する重合体、あるいは、三次元網目構造を有する重合体等である。
第2の鎖状高分子が環状分子と結合して架橋構造を形成する具体的態様としては、例えば、上述したポリロタキサンにおける環状分子に第2の鎖状高分子の末端が化学結合した構造が挙げられる。詳述すると、第2の鎖状高分子の一方の末端がポリロタキサンにおける環状分子に化学結合していると共に、第2の鎖状高分子の他方の末端が、別のポリロタキサンにおける環状分子に化学結合することで、上記架橋構造が形成され得る。このような架橋によって、ポリロタキサンと、第2の鎖状高分子との三次元網目構造を有する架橋構造体が形成される。
以上のように、基材粒子を構成する架橋構造は、ポリロタキサンどうしが第2の鎖状高分子によって架橋され得る。より詳しくは、基材粒子を構成する架橋構造は、ポリロタキサンの環状分子どうしが第2の鎖状高分子によって架橋され得る。
上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体では、環状分子が第2の鎖状高分子の架橋の起点(架橋点)となる。ポリロタキサンにおいて環状分子は、第1の鎖状高分子上を自由に動くことができる。そのため、架橋構造体における上記架橋点は、第1の鎖状高分子上を移動することが可能である。つまり、上記架橋構造体は、いわゆる、移動架橋型の高分子材料である。このような架橋構造体は、応力がかけられても、それに追従して架橋点が移動するので柔軟性を有し、しかも、応力が緩和されやすいので、より優れた伸縮性及び復元性に優れる性質を有する。
従って、応力緩和剤に含まれる基材粒子が、上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を構成成分として含む場合は、当該応力緩和剤は、特に優れた応力緩和性能を有する。
このため、上記応力緩和剤を含む接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤が硬化して形成された接続層に応力が加わったとしても、その応力に追従して接続層が変形できるため、接続層にクラック等の損傷が発生しにくい。その結果、上記応力緩和剤を含む接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤によって接続された接着対象部材は、反り及び剥離の発生が抑制される。
また、ポリロタキサンを構成する第1の鎖状高分子がストッパー基を有する場合は、環状分子の脱落が起こらないので、上記応力緩和の効果が長期間にわたって維持され得る。もちろん、ポリロタキサンがストッパー基を有していない第1の鎖状高分子で構成される場合であっても、上記応力緩和の効果は発揮され得る。
上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、重合性の官能基を有する環状分子を備えるポリロタキサンと、第2の鎖状高分子を形成するための重合性単量体との混合物とを反応させることで、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を製造することができる。ここでいう重合性の官能基及び重合性単量体は上述したとおりである。
例えば、重合性の官能基が重合性単量体とラジカル重合可能な官能基(ビニル基等)であれば、ポリロタキサンと、重合性単量体とをラジカル重合反応することで、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を製造することができる。このラジカル重合反応は、例えば、公知の方法で行うことができる。
重合性の官能基を有する環状分子を備えるポリロタキサンの種類は特に制限がないが、具体例を挙げるとすれば、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社から市販されている、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSM3405P」、「セルム(登録商標)キー・ミクスチャーSM3400C」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA3405P」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA2405P」、「セルム(登録商標)キー・ミクスチャーSA3400C」、「セルム(登録商標)キー・ミクスチャーSA2400C」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA3405P」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA2405P」等である。なお、ポリロタキサンは、例えば、公知の製造方法で製造して使用することも可能である。
応力緩和剤に含まれる基材粒子において、第1の鎖状高分子及び環状分子の含有量は、第1の鎖状高分子、環状分子及び第2の鎖状高分子の総量に対して1重量%以上、70重量%以下とすることができる。第1の鎖状高分子及び環状分子の含有量が上記含有量であれば、応力緩和性能が向上しやすく、特に、基材粒子が上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含む場合であれば、より優れた応力緩和性能を発揮することができる。
従って、基材粒子が上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含む場合であっても、ポリロタキサンの含有量の下限は、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子の総量に対して1重量%であることが好ましく、5重量%であることがより好ましく、10重量%であることが特に好ましい。また、基材粒子が上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含む場合、ポリロタキサンの含有量の上限は、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子の総量に対して70重量%であることが好ましく、50重量%であることがより好ましく、30重量%であることが特に好ましい。
応力緩和剤に含まれる基材粒子の製造方法は特に制限されず、例えば、従来知られている粒子の製造方法を採用することができる。
例えば、基材粒子を合成するための重合性出発原料を重合開始剤及び水の存在下、重合する方法が挙げられる。その中でも、ラジカル重合性の出発原料を、重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法が例示される。基材粒子を合成するにあたっては、必要に応じて分散安定剤を使用してもよい。その他、非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する、いわゆるシード重合法や分散重合法等が挙げられる。
ポリロタキサンと第2の鎖状高分子とを含んで構成される基材粒子を製造する場合であれば、ポリロタキサンと、第2の鎖状高分子を得るためのラジカル重合性単量体とを、重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法が例示される。ポリロタキサンがラジカル重合可能な官能基をもつ環状分子を有して形成されている場合にあっても、ポリロタキサンと、第2の鎖状高分子を得るためのラジカル重合性単量体とを、重合開始剤の存在下で懸濁重合することができる。この場合、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含む基材粒子が得られる。
重合開始剤の種類は特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、分散重合等において一般的に使用されている化合物を使用することができる。また、重合の際、必要に応じて、分散安定剤等を使用してもよい。分散安定剤の種類も特に制限されず、例えば、公知の分散安定剤を使用できる。重合条件も特に限定的ではなく、例えば、従来から知られている適宜の条件で行うことができる。
基材粒子は、その表面に複数の突起を有していてもよい。突起を形成する方法は特に制限されず、例えば、従来から行われている方法を採用できる。
基材粒子は、金属材料、無機材料及び有機材料の群から選ばれる少なくとも1種の材料で被覆されていてもよい。
金属材料としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、ルテニウム、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。
上記金属材料は、基材粒子表面を被覆して1つの層として形成されていてもよいし、あるいは、複数の層として形成されていてもよい。
基材粒子を金属材料で被覆する方法は特に限定されない。例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等によって、基材粒子を金属材料で被覆することができる。より簡便であるという観点から、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
金属材料の層の厚みは、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下である。上記金属材料の厚みは、多層である場合には全層の厚みを示す。
無機材料としては、例えば、シラス粒子、ハイドロキシアパタイト粒子、マグネシア粒子、酸化ジルコニウム粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子等の無機化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。その他、上記無機材料としては、公知の無機元素又は無機化合物で形成される粒子であってもよい。上記シリカ粒子としては、粉砕シリカ、球状シリカが挙げられる。また、シリカ粒子は表面に、例えばカルボキシル基、水酸基等の化学結合可能な官能基を有していてもよい。
無機材料は上記無機粒子に限定されず、例えば、無機化合物で形成される膜状の形態であってもよい。このような無機化合物で形成される膜は、例えば、公知の方法で形成することが可能であるが、その形成方法は特に限定されない。例えば、基材粒子の存在下、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とすることで、基材粒子を無機材料で被覆することができる。金属アルコキシドとしては、シランアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシド等が挙げられる。
上記無機材料は、基材粒子表面を被覆して1つの層として形成されていてもよいし、あるいは、複数の層として形成されていてもよい。
上記有機材料としては、例えば、樹脂材料が例示され、具体的には、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。その他、有機材料は、応力緩和剤に含まれる基材粒子を形成する樹脂と同様の樹脂であってもよい。
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、上記例示列挙した樹脂の他、それ以外のビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。
上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。なかでも、水溶性樹脂が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。
上記樹脂の形状は特に限定されない。例えば、上記樹脂の形状を粒子状であってもよいし、膜状であってもよい。粒子の平均粒子径や膜厚等は、特に制限されない。
有機材料は、高分子電解質等であってもよい。高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖又は側鎖に持つ高分子(ポリアニオン又はポリカチオン)を用いることができる。ポリアニオンとしては、一般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸等負の電荷を帯びることのできる官能基を有するものが挙げられ、導電性粒子や絶縁層の表面電位に応じて、適宜選択することができる。ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、PEI、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、PDDA、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド及びそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体等を用いることができる。
上記有機材料は、基材粒子表面を被覆して1つの層として形成されていてもよいし、あるいは、複数の層として形成されていてもよい。
基材粒子は、金属材料、無機材料及び有機材料の群から選ばれるいずれか1種の材料のみで被覆されていることで、基材粒子どうしの凝集が防止されやすくなり、応力緩和効果をより発揮しやすくなる。また、基材粒子に被覆させる材料を、金属材料、無機材料及び有機材料の群から適宜選択することで、接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤に対する親和性をより高めることができるので、当該接合材または接着剤における応力緩和剤の分散性が良好になる。これによっても、応力緩和剤は、高い応力緩和効果を発揮しやすくなる。
基材粒子は、金属材料、無機材料及び有機材料の群から選ばれるいずれか1種の材料のみで被覆されていてもよいし、あるいは、これらの2種以上が組み合わされて被覆されていてもよい。
基材粒子の平均粒子径は特に制限されないが、本実施形態の応力緩和剤が接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤に用いられるという観点から、基材粒子の平均粒子径は接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤の硬化物である接続層の厚みの1/2未満であることが好ましい。基材粒子の平均粒子径が上記の場合、応力緩和剤による応力緩和の効果が損なわれにくいので、接続層のクラック及び剥離の発生が起こりにくい上、接続層の接着力の低下も起こりにくい。
また、基材粒子の平均粒子径は0.1μm以上、15μm以下であることも好ましい。この場合も、応力緩和剤による応力緩和の効果が損なわれにくいので、冷熱サイクルにおける接続層のクラック及び剥離の発生が起こりにくい上、冷熱サイクル試験後も接続層の接着力の低下も起こりにくい。
上記でいう基材粒子の平均粒子径とは、形状が真球状である場合には直径を意味し、真球状以外の形状である場合には、最大径と最小径の平均値を意味する。そして、基材粒子の平均粒子径は、基材粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択した50個の基材粒子の粒径をノギスで測定した平均値を意味する。なお、基材粒子が上述のように他の材料で被覆されている場合の平均粒子径は、その被覆層も含める。
基材粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、例えば、50%以下である。上記変動係数(CV値)は下記式で表される。
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:粒子の粒子径の標準偏差
Dn:粒子の粒子径の平均値
冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生をより一層抑える観点からは、基材粒子の粒子径のCV値は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。基材粒子の粒子径のCV値の下限は特に限定されない。上記CV値は0%以上であってもよく、5%以上であってもよく、7%以上であってもよく、10%以上であってもよい。
基材粒子の硬さは、特に制限されず、例えば、10%K値で10〜1000N/mm2とすることができる。この場合、応力緩和剤による応力緩和効果が発揮されやすく、冷熱サイクルでの接続層のクラック又は剥離の発生が抑制されやすい。
ここでいう10%K値は、基材粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率である。以下のようにして測定できる。まず、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、最大試験荷重20mNを60秒かけて負荷する条件下で基材粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。
10%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:粒子の半径(mm)
上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。なお、30%K値を求める場合も、粒子を30%圧縮変形させたときの上記各パラメータを求めることで算出できる。
基材粒子は、粒子100万個あたり、凝集している粒子が100個以下であることが好ましい。上記凝集している粒子は、1つの粒子が少なくとも1つの他の粒子と接している粒子である。例えば、基材粒子100万個に、3つの粒子が凝集している粒子(3個の粒子の凝集体)が3個含まれる場合に、基材粒子100万個あたり、凝集している粒子の数は9個である。上記凝集粒子の測定方法としては、1視野に5万個程度の粒子が観察されるように倍率を設定した顕微鏡を用いて凝集粒子をカウントし、20視野の合計として凝集粒子を測定する方法等が挙げられる。
基材粒子は、200℃以上の熱分解温度を有することが好ましく、この場合、接続構造体組立用接合材または接続構造体組立用接着剤を用いて接続層を形成する際に基材粒子の熱分解が抑制されやすい。基材粒子の熱分解温度は、好ましくは220℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上である。なお、基材粒子が上述の被覆層を有する場合に、基材粒子と上記被覆層とのうち、先に熱分解する温度を、基材粒子の熱分解温度とする。
本実施形態の応力緩和剤は、上記基材粒子のみで構成されていてもよいし、応力緩和の効果が阻害されない程度であれば、その他の材料を含んでいてもよい。
(接続構造体組立用接合材)
本実施形態に係る接続構造体組立用接合材は、上記の応力緩和剤を含む。本実施形態に係る接続構造体組立用接合材によれば、半導体装置等の接続構造体を構成するための2つの接続対象部材を接続する接続層を形成することができる。
接続構造体組立用接合材は、上記応力緩和剤を含有する限りは、その他の成分は特に限定されず、例えば、従来から接続構造体を組み立てるために使用されている接合材に含まれる成分が挙げられる。
例えば、接続構造体組立用接合材は、応力緩和剤に加えて、さらに金属原子含有粒子を含む。
上記金属原子含有粒子としては、金属粒子及び金属化合物粒子等が挙げられる。上記金属化合物粒子は、金属原子と、該金属原子以外の原子とを含む。上記金属化合物粒子の具体例としては、金属酸化物粒子、金属の炭酸塩粒子、金属のカルボン酸塩粒子及び金属の錯体粒子等が挙げられる。上記金属化合物粒子は、金属酸化物粒子であることが好ましい。例えば、上記金属酸化物粒子は、還元剤の存在下で接続時の加熱で金属粒子となった後に焼結する。上記金属酸化物粒子は、金属粒子の前駆体である。上記金属のカルボン酸塩粒子としては、金属の酢酸塩粒子等が挙げられる。
上記金属粒子及び上記金属酸化物粒子を構成する金属としては、銀、銅及び金等が挙げられる。銀又は銅が好ましく、銀が特に好ましい。従って、上記金属粒子は、好ましくは銀粒子又は銅粒子であり、より好ましくは銀粒子である。上記金属酸化物粒子は、好ましくは酸化銀粒子又は酸化銅粒子であり、より好ましくは酸化銀粒子である。銀粒子及び酸化銀粒子を用いた場合には、接続後に残渣が少なく、体積減少率も非常に小さい。該酸化銀粒子における酸化銀としては、Ag2O及びAgOが挙げられる。
上記金属原子含有粒子の平均粒子径は、10nm以上、10μm以下であることが好ましい。また、接続対象部材の接続強度を高める観点から、平均粒子径の異なる2種以上の金属原子含有粒子を有することが好ましい。平均粒子径の異なる2種以上の金属原子含有粒子を有する場合、平均粒子径の小さい金属原子含有粒子の平均粒子径は10nm以上であることが好ましく、100nm以下であることが好ましい。平均粒子径の大きい金属原子含有粒子の平均粒子径は1μm以上であることが好ましく、10μm以下であることが好ましい。平均粒子径の小さい金属原子含有粒子の平均粒子径の大きい金属原子含有粒子に対する配合量の比は1/9以上、9以下であることが好ましい。なお、上記金属原子含有粒子の平均粒子径は、粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における任意に選択した50個の各粒子の最大径を算術平均することにより求められる。
上記金属原子含有粒子は、400℃未満の加熱で焼結することが好ましい。上記金属原子含有粒子が焼結する温度(焼結温度)は、より好ましくは350℃以下、好ましくは300℃以上である。上記金属原子含有粒子が焼結する温度が上記上限以下又は上記上限未満であると、焼結を効率的に行うことができ、更に焼結に必要なエネルギーを低減し、かつ環境負荷を小さくすることができる。
上記金属原子含有粒子が金属酸化物粒子である場合に、還元剤が用いられることが好ましい。上記還元剤としては、アルコール類(アルコール性水酸基を有する化合物)、カルボン酸類(カルボキシ基を有する化合物)及びアミン類(アミノ基を有する化合物)等が挙げられる。上記還元剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記アルコール類としては、アルキルアルコールが挙げられる。上記アルコール類の具体例としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びイコシルアルコール等が挙げられる。また、上記アルコール類としては、1級アルコール型化合物に限られず、2級アルコール型化合物、3級アルコール型化合物、アルカンジオール及び環状構造を有するアルコール化合物も使用可能である。さらに、上記アルコール類として、エチレングリコール及びトリエチレングリコールなど多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。また、上記アルコール類として、クエン酸、アスコルビン酸及びグルコースなどの化合物を用いてもよい。
上記カルボン酸類としては、アルキルカルボン酸等が挙げられる。上記カルボン酸類の具体例としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸及びイコサン酸等が挙げられる。また、上記カルボン酸類は、1級カルボン酸型化合物に限られず、2級カルボン酸型化合物、3級カルボン酸型化合物、ジカルボン酸及び環状構造を有するカルボキシル化合物も使用可能である。
上記アミン類としては、アルキルアミン等が挙げられる。上記アミン類の具体例としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン及びイコデシルアミン等が挙げられる。また、上記アミン類は分岐構造を有していてもよい。分岐構造を有するアミン類としては、2−エチルヘキシルアミン及び1,5−ジメチルヘキシルアミン等が挙げられる。上記アミン類は、1級アミン型化合物に限られず、2級アミン型化合物、3級アミン型化合物及び環状構造を有するアミン化合物も使用可能である。
上記還元剤は、アルデヒド基、エステル基、スルホニル基又はケトン基などを有する有機物であってもよく、カルボン酸金属塩などの有機物であってもよい。カルボン酸金属塩は金属粒子の前駆体としても用いられる一方で、有機物を含有しているために、金属酸化物粒子の還元剤としても用いられる。
上記金属酸化物粒子100重量部に対して、上記還元剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは500重量部以下、更に好ましくは100重量部以下である。上記還元剤の含有量が上記下限以上であると、上記金属原子含有粒子をより一層緻密に焼結させることができる。この結果、接続層における放熱性及び耐熱性も高くなる。
上記金属原子含有粒子の焼結温度(接続温度)よりも低い融点を有する還元剤を用いると、接続時に凝集し、接続層にボイドが生じやすくなる傾向がある。カルボン酸金属塩の使用により、該カルボン酸金属塩は接続時の加熱により融解しないため、ボイドが生じるのを抑制できる。なお、カルボン酸金属塩以外にも有機物を含有する金属化合物を還元剤として用いてもよい。
本実施形態の接続構造体組立用接合材を使用すれば、金属原子含有粒子を溶融させた後に固化させることで、接続層を形成することができる。なお、上記金属原子含有粒子には、上記応力緩和剤は含まない。
上記金属原子含有粒子の融点は、応力緩和剤の熱分解温度よりも低いことが好ましい。具体的には、上記金属原子含有粒子の融点が応力緩和剤の熱分解温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましく、50℃以上低いことが最も好ましい。
上記接続構造体組立用接合材は、樹脂を含むことが好ましく、この場合、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生をより一層抑えることができる。
上記樹脂は特に限定されない。上記樹脂は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を含むことが好ましく、硬化性樹脂を含むことがより好ましい。上記硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。上記光硬化性樹脂は、光硬化性樹脂及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含むことが好ましい。上記樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生をより一層抑える観点から、接続構造体組立用接合材は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
接続構造体組立用接合材において、金属原子含有粒子の含有量は、応力緩和剤の含有量よりも多いことが好ましく、この場合、応力緩和効果が発揮されやすい。上記金属原子含有粒子の含有量は、応力緩和剤の含有量よりも10重量%以上多いことがより好ましく、20重量%以上多いことが更に好ましい。
接続構造体組立用接合材において、応力緩和剤の含有量は限定的ではないが、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生を抑え易いという観点から、接続構造体組立用接合材の分散媒を除く成分100体積%中、1体積%以上とすることができ、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上である。また、接続構造体組立用接合材の分散媒を除く成分100体積%中、50体積%以下とすることができ、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。である。なお、上記分散媒は、揮発により除去される。
接続構造体組立用接合材において、上記金属原子含有粒子の含有量は限定的ではないが、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生を抑え易いという観点から、接続構造体組立用接合材の分散媒を除く成分100重量%中、70重量%以上とすることができ、より好ましくは80重量%以上であり、また、98重量%以下とすることができ、より好ましくは95重量%以下である。
接続構造体組立用接合材が樹脂を含む場合、樹脂の含有量は限定的ではないが、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生を抑え易いという観点から、接続構造体組立用接合材の分散媒を除く成分100重量%中、1重量%以上とすることができ、好ましくは5重量%以上であり、また、20重量%以下とすることができ、より好ましくは15重量%以下である。
接続構造体組立用接合材には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、溶剤、カップリング剤、消泡剤、硬化助剤、低応力化剤、顔料や染料等の着色剤、光安定剤、界面活性剤、その他の各種添加剤が例示される。これらの各添加剤はいずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の接続構造体組立用接合材は、上記応力緩和剤を含むので、接着剤が硬化して形成される接続層にクラック等の損傷が発生しにくい。そのため、上記接続構造体組立用接合材を使用して接続構造体の構成要素である各種接続対象部材どうしを接着しても、接続対象部材の反り及び剥離が発生しにくく、接続構造体組立用接合材は、接続構造体組立用として適した接着剤である。
(接続構造体組立用接着剤)
本実施形態に係る接続構造体組立用接着剤は、上記の応力緩和剤を含む。本実施形態に係る接続構造体組立用接着剤によれば、半導体装置等の接続構造体を構成するための2つの接続対象部材を接続する接続層を形成することができる。
接続構造体組立用接着剤は、上記応力緩和剤を含有する限りは、その他の成分は特に限定されず、例えば、従来から接続構造体を組み立てるために使用されている接着剤に含まれる成分が挙げられる。
例えば、接続構造体組立用接着剤は、応力緩和剤に加えて、さらに金属原子含有粒子を含む。
金属原子含有粒子の種類は特に限定的ではなく、例えば、銀粉が挙げられる。接続構造体組立用接着剤が銀粉を含むことで、熱伝導性が付与され得る。銀粉の種類は特に限定されず、従来から接続構造体を組み立てるために使用されている銀粉と同様とすることができる。なお、接続構造体組立用接着剤には、銀粉に加えて他の金属成分がさらに含まれていてもよい。
接続構造体組立用接着剤は、樹脂成分、溶剤を含むことができる。
上記樹脂は特に限定されない。上記樹脂は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を含むことが好ましく、硬化性樹脂を含むことがより好ましい。上記硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。上記光硬化性樹脂は、光硬化性樹脂及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含むことが好ましい。上記樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生をより一層抑える観点から、接続構造体組立用接合材は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
溶剤の種類も特限定されず、接続構造体組立用接着剤として従来開ら使用されている溶剤と同様とすることができる。
接続構造体組立用接着剤において、金属原子含有粒子の含有量は、応力緩和剤の含有量よりも多いことが好ましく、この場合、応力緩和効果が発揮されやすい。上記金属原子含有粒子の含有量は、応力緩和剤の含有量よりも10重量%以上多いことがより好ましく、20重量%以上多いことが更に好ましい。
接続構造体組立用接着剤において、応力緩和剤の含有量は限定的ではないが、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生を抑え易いという観点から、接続構造体組立用接着剤の分散媒を除く成分100体積%中、1体積%以上とすることができ、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上である。また、接続構造体組立用接着剤の分散媒を除く成分100体積%中、50体積%以下とすることができ、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。である。なお、上記分散媒は、揮発により除去される。
接続構造体組立用接着剤において、上記金属原子含有粒子の含有量は限定的ではないが、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生を抑え易いという観点から、接続構造体組立用接着剤の分散媒を除く成分100重量%中、70重量%以上とすることができ、より好ましくは80重量%以上であり、また、98重量%以下とすることができ、より好ましくは95重量%以下である。
接続構造体組立用接着剤が樹脂を含む場合、樹脂の含有量は限定的ではないが、冷熱サイクルでのクラック又は剥離の発生を抑え易いという観点から、接続構造体組立用接着剤の分散媒を除く成分100重量%中、1重量%以上とすることができ、好ましくは5重量%以上であり、また、20重量%以下とすることができ、より好ましくは15重量%以下である。
接続構造体組立用接着剤には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、カップリング剤、消泡剤、硬化助剤、低応力化剤、顔料や染料等の着色剤、光安定剤、界面活性剤、その他の各種添加剤が例示される。これらの各添加剤はいずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の接続構造体組立用接着剤は、上記応力緩和剤を含むので、接着剤が硬化して形成される接続層にクラック等の損傷が発生しにくい。そのため、上記接続構造体組立用接着剤を使用して接続構造体の構成要素である各種接続対象部材どうしを接着しても、接続対象部材の反り及び剥離が発生しにくく、接続構造体組立用接着剤は、接続構造体組立用として適した接着剤である。
(接続構造体)
本実施形態に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続層とを備える。上記半導体装置では、上記接続層が、上半導体装置組立用接着剤により形成されている。上記接続層は、接続構造体組立用接着剤の硬化物、又は、接続構造体組立用接合材の硬化物を含んで形成されている。接続構造体組立用接合材である場合の硬化物は、例えば、加熱処理によって形成された焼成物(焼結体)である。
上記接続構造体の構造は特に限定されず、例えば、公知の接続構造体とできる。
図1は、本実施形態の接続構造体の一例を模式的に示した断面図である。図1に示す接続構造体Aは、第1の接続対象部材21と、第2の接続対象部材22と、第1,第2の接続対象部材21,22を接続している接続層3とを備える。
接続層3は、上述した応力緩和剤1と、ギャップ制御粒子61と、金属接続部62とを含む。
接続層3では、1つのギャップ制御粒子61が、2つの第1,第2の接続対象部材21,22の双方に接している。一方、応力緩和剤1は、2つの第1,第2の接続対象部材21,22の双方に接していない。このように、応力緩和剤1は、2つの上記接続対象部材の双方に接しないように、上記接続層を形成するために用いられることが好ましい。即ち、1つの応力緩和剤1が、2つの上記接続対象部材のうちの少なくとも一方に接しないように、上記接続層を形成するために用いられることが好ましい。
ギャップ制御粒子61の種類は特に限定されず、例えば、公知の粒子が挙げられる。ギャップ制御粒子61は導電性粒子であってもよく、導電性を有さない粒子であってもよい。金属接続部62は、金属原子含有粒子を溶融させた後に固化させることにより形成されている。金属接続部62は、金属原子含有粒子の溶融固化物である。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。この製造方法の一例としては、上記第1の接続対象部材21と上記第2の接続対象部材22との間に上記接続構造体組立用接着剤、又は、接続構造体組立用接合材を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
接続対象部材としては、具体的には、半導体ウエハ、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方は、半導体ウエハ又は半導体チップであることが好ましい。
上記第1の接続対象部材は第1の電極を表面に有していてもよい。上記第2の接続対象部材は第2の電極を表面に有していてもよい。上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、チタン電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、チタン電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、チタン電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
上記のような接続構造体では、その信頼性試験において、2つの接続対象部材を接続している接続層が冷熱サイクル条件に晒される。この点、本実施形態の接続構造体では、上述の特定構造を有する粒子を含む応力緩和剤が接続層に含まれることで、接続層のクラックや剥離が生じにくく、その結果、接続構造体を構成する接続対象部材の剥離及び反り等の発生が生じにくいものである。
上記の接続構造体(例えば、半導体装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
電子機器としては、上記接続構造体を含む限りは特にその種類は限定されない。例えば、電子機器の一例として、圧力センサが挙げられる。圧力センサとしては、静電容量式圧力センサが例示できる。
上述のように、電子機器に含まれる接続構造体は、冷熱サイクル条件に晒されても接続構造体を構成する接続対象部材の剥離及び反り等の発生が生じにくいものであるから、電子機器の性能が低下しにくい。特に、静電容量式圧力センサ等の電子機器では、接続構造体の接続層の剥離や反りが生じると、圧力センサの感度が低下するが、本実施形態の接続構造体が組み込まれれば、接続対象部材間の接続層の剥離や反りが低減されるので、圧力センサの感度が低下しにくい。加えて、応力緩和効果によって接続層は、例えば外部応力によって変形したとしても、元の形状に復元しやすいので、圧力センサの感度が長期にわたって維持され、良好な測定精度が保持される。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(実施例1〜7、比較例1〜3)
重合性の官能基を有する環状分子を含むポリロタキサンとして、「セルム(登録商標)SA1313P」(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)及び各種の重合性単量体を、表1に示す配合量(基材粒子の製造用原料、固形分換算))で混合し、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(株式会社日本ファインケム製、以下「ABN−V」と略記する)1重量部及び過酸化ベンゾイル0.5重量部との混合物を加えて油相を調製した。また、水性媒体としての脱イオン水500重量部と、分散剤としてポリビニルアルコール5重量%水溶液100重量部とを混合して、水相を調整した。上記油相を上記水相中に分散させて分散液を得た後、該分散液を重合反応器に投入し、撹拌回転数及び撹拌時間の調整によって、所望の液滴サイズに制御した。
その後、重合反応器60℃に昇温して撹拌を続け、必要に応じて界面活性剤10重量部を上記懸濁液に追加した後、重合反応器の内部温度を85℃に昇温して撹拌を続けた。上記懸濁液を冷却後、適宜の方法で洗浄及び乾燥することで、基材粒子を得た。得られた基材粒子を分級操作することで、平均粒子径3.0μmの基材粒子を得た。
各実施例及び比較例で得られた基材粒子の平均粒子径を表1に示す。
(評価方法)
(1)10%K値及び30%K値
フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」を用いて、粒子の10%K値を測定した。導電性粒子に関しては、導電部を有する粒子の10%K値を測定した。
(2)平均粒子径
基材粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における無作為に選択した50個の各粒子の最大径をノギスで測定して、算術平均することにより求めた。
(3)CV値
基材粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における無作為に選択した50個の各粒子の粒径の標準偏差を求め、上述した式により粒子の粒子径のCV値を求めた。
(4)基材粒子の回復率
得られた基材粒子及び導電粒子の回復率は、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。具体的には、粒子1個に対して最大試験荷重10mNを付加した後、荷重を除荷する。この時の圧縮変位L1(mm)と回復変位L2(mm)を測定する。得られた測定値から下記の計算式
回復率(%)=(L2/L1)×100
により、算出した。
(5)接続強度
4mm×4mmのシリコンチップ及び接合面に金蒸着層を設けた裏面金チップを、半導体用樹脂ペーストを用いて、無垢の銅フレーム及びPPF(Ni−Pd/Auめっきした銅フレーム)にマウントし、200℃、60分で硬化した。なお、上記半導体用樹脂ペーストは、上記基材粒子を含有量が10重量%となるように、三井化学社製「ストラクトボンドXN−5A」に添加し、遊星式攪拌機を使って分散させることで得た。硬化及び吸湿処理(85℃、相対湿度85%、72時間)後、マウント強度測定装置を用い、260℃での接続強度を測定した。接続強度は判定基準で評価した。
○○:シェア強度が150N/cm2以上
○:シェア強度が100N/cm2以上、150N/cm2未満
×:シェア強度が100N/cm2未満
(6)冷熱サイクル特性(接続信頼性)
上記(5)の接続強度測定において得られた接続構造体を−65℃から150℃に加熱し、−65℃に冷却する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を1000サイクル実施した。超音波探傷装置(SAT)により、クラック及び剥離の発生の有無を観察した。クラック又は剥離の発生から冷熱サイクル特性を以下の基準で判定した。
[冷熱サイクル特性の判定基準]
○○:クラック及び剥離ありの数が5サンプル中0個
○:クラック及び剥離ありの数が5サンプル中1〜2個
×:クラック及び剥離ありの数が5サンプル中3〜5個