ところで、核燃料サイクルから発生する使用済廃液中のリン酸ジブチルの除去方法として、活性炭などのリン酸ジブチルを吸着する吸着材を用いた吸着法の検討がなされている。この吸着法では、吸着材を充填した吸着塔内で高濃度線量の使用済廃液中のリン酸ジブチルを吸着した後、リン酸ジブチルを吸着した吸着材を純水などにより水スラリーとして移送して廃棄する。しかしながら、従来の吸着法では、吸着材の移送後に発生する廃液中のリン酸ジブチルを効率良く処理できず、使用済廃液中のリン酸ジブチルを必ずしも効率良く処理できていない実情がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、被処理液中の被吸着物質を効率良く処理できる被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法を提供することを目的とする。
本発明の被処理液の処理装置は、被処理液中の被吸着物質を吸着する吸着材が充填された吸着部と、前記吸着部に前記被吸着物質を含有する液体又は気体を第1流体として供給して前記吸着部の内部から前記被吸着物質を吸着した前記吸着材を押出す第1流体供給部と、前記吸着部から押出された前記吸着材と前記第1流体とを分離する吸着材分離部と、前記吸着材が除去された前記吸着部に第2流体と共に新たな吸着材を充填する第2流体供給部と、を具備することを特徴とする。
本発明の被処理液の処理装置によれば、第1流体供給部から供給される第1流体と共に吸着塔から被吸着物質を吸着した吸着材を押出して吸着材を交換するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材が純水などの被吸着物質を含まない液体と接することがない。これにより、処理装置は、固液分離後の吸着材から純水などへの被吸着物質の脱着を防ぐことができるので、固液分離後の廃水中の被吸着物質の含有量を低減でき、被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記第1流体が、前記被処理液であることが好ましい。この構成により、処理装置は、被吸着物質の濃度が吸着材の吸着平衡濃度と一致する被処理液を用いて被吸着物質の吸着後の吸着材を吸着塔から押出すので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材から被処理液に被吸着物質が脱離することがない。これにより、処理装置は、固液分離後の廃水量の増大を防ぐことができるので、より一層被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記第1流体が、前記被吸着物質を含有する被吸着物質含有水であることが好ましい。この構成により、被吸着物質の濃度が純水より吸着材の吸着平衡濃度に近い被吸着物質含有水を用いて被吸着物質の吸着後の吸着材を吸着部から押出すので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材からの被処理液への被吸着物質が脱離を低減でき、より一層被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記第1流体が、圧縮空気であることが好ましい。この構成により、処理装置は、圧縮空気によって吸着塔内の被吸着物質を吸着した吸着材を乾燥させつつ押出して吸着材を交換するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材が純水などの被吸着物質を含まない液体と接することがない。これにより、処理装置は、気液分離後の吸着材から純水などへの被吸着物質の脱着を防ぐことができるので、被吸着物質を含有する廃水の水量を低減して被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。さらに、処理装置は、圧縮空気によって吸着材を乾燥させつつ吸着塔内から押出すことができるので、より一層効率良く吸着材を押出すことが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記第1流体が、加熱空気であることが好ましい。この構成により、処理装置は、加熱空気によって吸着塔内の被吸着物質を吸着した吸着材を乾燥させつつ押出して吸着材を交換するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材が純水などの被吸着物質を含まない液体と接することがない。これにより、処理装置は、気液分離後の吸着材から純水などへの被吸着物質の脱着を防ぐことができるので、被吸着物質を含有する廃水の水量を低減して被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。さらに、加熱空気によって吸着材を加温して乾燥させつつ吸着塔内から押出すことができるので、より一層効率良く吸着材を押出すことが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記第2流体が、固液分離部で分離された被吸着物質含有水を含むことが好ましい。この構成により、処理装置は、固液分離部で分離された被吸着物質を第2流体として再利用するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材からの被処理液への被吸着物質が脱離を低減でき、より一層被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記第2流体が、圧縮空気であることが好ましい。この構成により、処理装置は、純水を用いることなく新たな交換用の吸着材を充填できるので、吸着材の交換に用いる純水を削減でき、効率良く吸着材を充填することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記吸着部は、前記被処理液の流れ方向の下流側と上流側との間で前記第1流体の供給方向が可変可能に設けられたことが好ましい。この構成により、処理装置は、吸着部内に供給される第1流体の供給方向を入替えながら吸着部内の吸着材を押出すことができるので、効率良く吸着材を押出すことが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記吸着材分離部は、前記吸着部に対する前記被処理液の流れ方向の下流側又は上流側の少なくとも一方から排出された前記吸着材と前記第2流体とを分離する吸着材分離部を有し、前記第1流体供給部は、前記吸着部に対する前記被処理液の流れ方向の下流側及び上流側の少なくとも一方から前記第1流体を供給することが好ましい。この構成により、処理装置は、吸着部内に供給される第1流体の供給方向を入替えながら吸着部内の吸着材を吸着材分離部に押出すことができるので、効率良く吸着材を押出すことが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置は、被処理液中の被吸着物質を吸着する吸着材が充填された吸着部と、前記吸着部内を減圧して前記吸着部の内部から前記被吸着物質を吸着した前記吸着材を取出す吸気部と、前記吸着部から取出された前記吸着材と前記被処理液とを分離する吸着材分離部と、前記吸着材が除去された前記吸着部に流体と共に新たな吸着材を充填する流体供給部と、を具備することを特徴とする。
本発明の被処理液の処理装置によれば、減圧部の減圧によって吸着塔から被吸着物質を吸着した吸着材を取出して吸着材を交換するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材が純水などの被吸着物質を含まない液体と接することがない。これにより、処理装置は、固液分離後の交換後の吸着材から純水などへの被吸着物質の脱着を防ぐことができるので、被吸着物質を含有する廃水の水量を低減して被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、さらに、前記吸着材分離部で分離された廃液を処理する廃液処理部と、前記廃液に前記被吸着物質を溶解する有機溶媒を供給する有機溶媒供給部と、を備えたことが好ましい。この構成により、処理装置は、廃液中に含まれる被吸着物質を有機溶剤によって抽出して除去できるので、固液分離後の廃液中に含まれる被吸着物質の濃度を低減でき、被処理液中の被吸着物質をより一層効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、前記廃液処理部は、前記有機溶媒と前記廃液とを混合した後、前記廃液を加温して前記廃液中の水分を蒸発させることが好ましい。この構成により、処理装置は、排水中の水分を減量又は蒸発乾固できるので、廃液中に含まれる被吸着物質を有機溶剤によって効率良く除去でき、被処理液中の被吸着物質をより一層効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置においては、さらに、廃液処理部に前記被吸着物質を分解する触媒を供給する触媒供給部を備えたことが好ましい。この構成により、処理装置は、廃液中の被吸着物質を分解除去できるので、固液分離後の廃液中の被吸着物質の濃度を低減でき、被処理液中の被吸着物質をより一層効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理装置は、被処理液中の被吸着物質を吸着する吸着材が充填された吸着部と、前記吸着部から取出された前記吸着材と前記被処理液とを分離する吸着材分離部と、前記吸着材分離部で分離された廃液を処理する廃液処理部と、前記廃液に前記被吸着物質を溶解する有機溶媒を供給する有機溶媒供給部と、を備えたことを特徴とする。
本発明の被処理液の処理装置によれば、廃液中に含まれる被吸着物質を有機溶剤によって抽出して除去できるので、固液分離後の廃液中の被吸着物質の濃度を低減でき、被処理液中の被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理方法は、被処理液中の被吸着物質を吸着する吸着材が充填された吸着部に前記被吸着物質を含有する液体又は気体を第1流体として供給して前記吸着部の内部から前記被吸着物質を吸着した前記吸着材を押出す吸着材供給工程と、前記吸着部から押出された前記吸着材と前記第1流体とを分離する吸着材分離工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の被処理液の処理方法によれば、第1流体供給部から供給される第1流体と共に吸着塔から被吸着物質を吸着した吸着材を押出して吸着材を交換するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材が純水などの被吸着物質を含まない液体と接することがない。これにより、処理方法は、固液分離後の吸着材から純水などへの被吸着物質の脱着を防ぐことができるので、固液分離後の廃液中の被吸着物質の濃度を低減でき、被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理方法は、被処理液中の被吸着物質を吸着する吸着材が充填された吸着部内を減圧して前記吸着部の内部から前記被吸着物質を吸着した前記吸着材を取出す減圧工程と、前記吸着部から取出された前記吸着材と前記被処理液とを分離する吸着材分離工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の被処理液の処理方法によれば、減圧によって吸着部から被吸着物質を吸着した吸着材を吸引して吸着材を交換するので、被吸着物質を吸着した交換後の吸着材が純水などの被吸着物質を含まない液体と接することがない。これにより、処理方法は、固液分離後の吸着材から純水などへの被吸着物質の脱着を防ぐことができるので、固液分離後の廃液中の被吸着物質の濃度を低減でき、被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明の被処理液の処理方法は、被処理液中の被吸着物質を吸着する吸着材が充填された吸着部から取出された前記吸着材と前記被処理液とを分離する吸着材分離工程と、前記吸着材分離工程で分離された廃液に前記被吸着物質を溶解する有機溶媒を供給して前記廃液中の前記被吸着物質を除去する吸着物質除去工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の被処理液の処理方法によれば、廃液中に含まれる被吸着物質を有機溶剤によって抽出して除去できるので、固液分離後の廃液中の被吸着物質の濃度を低減でき、被処理液中の被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。
本発明によれば、被処理液中の被吸着物質を効率良く処理できる被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法を実現できる。
核燃料サイクルなどから発生するアルカリ濃縮廃液中のリン酸ジブチルの吸着除去方法としては、活性炭などの吸着材を用いた吸着法の検討がなされている。しかしながら、従来の吸着法では、吸着処理に伴って発生する廃液中のリン酸ジブチルの濃度及び廃水の液量を十分に低減できず、廃液処理のガラス固化工程のガラス溶融炉などに悪影響を及ぼす場合がある。本発明者らは、鋭意検討した結果、吸着法を用いてアルカリ濃縮廃液中のリン酸ジブチルを効率良く処理できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明の第1態様及び第2態様の各実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の第1態様及び第2態様の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、本発明は、第1態様及び第2態様の各実施の形態をそれぞれ適宜組み合わせて実施可能である。
<第1の態様>
本発明者らは、従来の吸着法で廃液中のリン酸ジブチルを十分に低減できない原因が、リン酸ジブチルを吸着した吸着材の交換時において、リン酸ジブチルを吸着した吸着材を交換する純水中への吸着材からのリン酸ジブチルの着脱にあることに着目した。そして、本発明者らは、吸着材の交換時にリン酸ジブチルを吸着した吸着材からのリン酸ジブチルの脱着を防ぐことにより、従来の吸着法より効率良くアルカリ濃縮廃液中を処理できることを見出し、第1態様に係る発明を完成するに至った。以下、本発明の第1の態様について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る被処理液の処理装置1の模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る被処理液の処理装置(以下、単に、「処理装置」ともいう)1は、核燃料サイクルなどから廃棄された被処理液としてのアルカリ濃縮廃液(ALW:Active Liquid Waste)中のリン酸ジブチル(DPB:Dibutyl phosphate)を、吸着材を用いて被処理液中から吸着除去するものである。
被処理液の処理装置1は、核燃料サイクルから廃棄されたアルカリ濃縮廃液などの被処理液W1を貯留する被処理液貯留部(第1流体供給部)11と、被処理液貯留部11の後段に設けられ、被処理液W1中のリン酸ジブチルを吸着処理する吸着塔(吸着部)12とを備える。被処理液貯留部11と吸着塔12との間には、被処理液W1を送液する送液ラインL1が設けられている。この送液ラインL1には、送液ラインL1の上流側から下流側に向けて、被処理液貯留部11の後段に送液ポンプ(第1流体供給部)13が設けられ、送液ポンプ13の後段にフィルタ部14が設けられ、フィルタ部14の後段に吸着塔12が設けられている。
被処理液貯留部11は、貯留した被処理液W1を吸着塔12に向けて供給する。送液ポンプ13は、被処理液貯留部11から供給された被処理液W1を吸着塔12に向けて送液する。フィルタ部14は、送液ポンプ13から吸着塔12へ向けて送液される被処理液W1中の粒子を除去する。なお、フィルタ部14は、必ずしも設ける必要はなく、省略してもよい。吸着塔12は、被処理液W1中のリン酸ジブチルなどを吸着する活性炭などの吸着材が充填される。吸着塔12と被処理液貯留部11との間には、吸着塔12から排出された処理液W2が流れる循環ラインL2が設けられている。この循環ラインL2には、循環ラインL2を流れる処理液W2の流量を制御する制御弁V1が設けられている。吸着塔12は、被処理液W1中のリン酸ジブチルを吸着処理して処理液W2とし、処理液W2を循環ラインL2に送液する。
また、被処理液の処理装置1は、吸着塔12内の吸着材の交換に用いた廃水(廃液)を貯留する廃水貯留部15を備える。この廃水貯留部15と吸着塔12との間には、循環ラインL2から分岐した廃水排出ラインL3が設けられている。この廃水排出ラインL3には、廃水排出ラインL3の上流側から下流側に向けて、吸着塔12の後段に制御弁V2が設けられ、制御弁V2の後段に固液分離部(吸着材分離部)16が設けられ、固液分離部16の後段に廃水貯留部15が設けられている。
制御弁V2は、廃水排出ラインL3を流れる廃水の流量を制御する。固液分離部16は、吸着塔12内の吸着材の交換に用いられた廃水中に含まれる吸着材などの固体を固液分離し、固液分離した吸着材などの固体を廃棄固体として廃棄する。また、固液分離部16は、固液分離した廃水を廃水貯留部15に供給する。廃水貯留部15は、固体分離部16で固液分離された廃水を貯留し、貯留した廃水を被処理液貯留部11又は廃水の酸性度などを調整する廃液処理槽(不図示)に送液する。
本実施の形態では、処理装置1は、被処理液W1のリン酸ジブチルを吸着する通常運転時には、制御弁V1を開放させると共に、制御弁V2を閉止した状態で循環ラインL2を介して被処理液W1を循環させることにより、被処理液中のリン酸ジブチルを吸着処理する。そして、処理装置1は、所定時間通常運転後の吸着塔12の吸着材の交換時には、制御弁V1を閉止させると共に、制御弁V2を開放した状態で廃水排出ラインL3を介して吸着材の交換に用いた廃水と共に吸着材を固液分離部16に供給する。なお、本実施の形態では、2つの制御弁V1,V2を設けた例について説明したが、循環ラインラインL2と廃水排出ラインL3との間の分岐点に三方弁を設けてもよい。
また、被処理液の処理装置1は、吸着塔12に純水W3を供給する水供給部(第2流体供給部)17を備える。水供給部17と吸着塔12との間には、純水供給ラインL4が設けられている。純水供給ラインL4には、純水供給ラインL4の上流側から下流側に向けて、水供給部17の後段に送液ポンプ18が設けられ、送液ポンプ18の後段に吸着材貯留部19が設けられている。送液ポンプ18は、水供給部17から供給される純水W3を吸着材供給部19に向けて送液する。吸着材貯留部19は、未使用の交換用吸着材を貯留する。また、吸着材貯留部19は、吸着塔12の吸着材の交換時に純水W3と共に交換用吸着材を吸着塔12に向けて供給する。なお、処理装置1では、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13、フィルタ部14、廃水貯留部15及び固液分離部16が高線量領域A内に配置される。
次に、本実施の形態に係る処理装置1の全体動作について説明する。通常運転時には、処理装置1は、制御弁V1を開放し、制御弁V2を閉止した状態で、送液ポンプ13によって被処理液W1を被処理液貯留部11から吸着塔12へ送液する。吸着塔12に送液された被処理液W1は、吸着塔12で吸着材によってリン酸ジブチルが吸着処理された後、処理液W2として被処理液貯留部11に循環する。これにより、被処理液W1は、被処理液貯留部11と吸着塔12との間を循環しながら、被処理液W1中のリン酸ジブチルが吸着除去される。
本実施の形態に係る処理装置1は、通常運転の所定時間経過後に、吸着塔12の吸着材が吸着平衡状態となり、吸着塔12で吸着できるリン酸ジブチルが飽和状態となる。このため、処理装置1は、通常運転の所定時間経過毎に、吸着塔12の吸着材の交換を実施する。図2は、本実施の形態に係る処理装置1の吸着材交換のフロー図である。図2に示すように、吸着材の交換時には、まず、処理装置1は、制御弁V1を閉止した状態で送液ポンプ13を運転し、被処理液貯留部(第1流体供給部)11から供給される被処理液(第1流体)W1によって吸着塔12内の吸着材を被処理液W1と共に押出す(ステップST11)。吸着塔12内から押出された吸着材は、被処理液W1と共に固液分離部16に供給されて固液分離された後、廃棄固体として焼却処理される。このように、吸着塔12から被処理液W1と共に押出した吸着材を固液分離するので、吸着材に吸着したリン酸ジブチルの純水W3などへの脱着を防ぐことができる。固液分離部16で固液分離された被処理液W1は、廃水貯留部15に貯留された後、被処理液貯留部11に供給され、又は廃液処理槽に移送された後に中和処理される。
次に、処理装置1は、送液ポンプ13を停止して制御弁V2を閉止した後、制御弁V1を開放すると共に、送液ポンプ18を運転する。これにより、水供給部(第2流体供給部)17は、吸着材貯留部19を介して純水(第2流体)W3と共に新たな交換用吸着材を水スラリーの状態で吸着塔12に向けて供給し、吸着塔12内に交換用吸着材を充填する(ステップST12)。その後、処理装置1は、送液ポンプ13を運転して被処理液貯留部11から吸着塔12に被処理液純W1を供給するリン酸ジブチルの吸着処理の通常運転を実施する。
このように、上記実施の形態に係る処理装置1によれば、被処理液供給部11から供給されるリン酸ジブチル濃度を含有する被処理液W1と共に吸着塔12から吸着材を押出して吸着材を交換するので、リン酸ジブチルを吸着した交換後の吸着材が純水などのリン酸ジブチルを含まない液体と接することがない。これにより、交換後の吸着材から純水などへのリン酸ジブチルの脱着を防ぐことができるので、リン酸ジブチルを含有する廃水中のリン酸ジブチルの含有量を低減でき、リン酸ジブチルを効率良く処理することが可能となる。また、上記実施の形態においては、リン酸ジブチルの濃度が吸着材の吸着平衡濃度と一致する被処理液W1を用いてリン酸ジブチルを吸着した吸着材を押出すので、リン酸ジブチルを吸着した交換後の吸着材から固液分離後の廃水中のリン酸ジブチルの濃度が被処理液W1と略一致する。これにより、固液分離後の廃水中へのリン酸ジブチルの脱着を防ぐことができるので、廃水量の増大を防いでリン酸ジブチルを効率良く処理することが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第1実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る処理装置2の模式図である。図3に示すように、処理装置2は、水供給部17から供給される純水W3にリン酸ジブチルを供給するリン酸ジブチル(DBP)供給部20を備える。リン酸ジブチル供給部20は、水供給部17から供給される純水W3にリン酸ジブチルを添加してリン酸ジブチル含有水(以下、「リン酸ジブチル含有水W3」ともいう)とする。リン酸ジブチル供給部20は、純水W3に固体のリン酸ジブチルを供給してもよく、リン酸ジブチルの水溶液を供給してもよい。リン酸ジブチル含有水W3の濃度としては、吸着材の交換時に吸着材から脱離するリン酸ジブチルを低減することができる観点から、リン酸ジブチルが吸着材から純水W3中に脱着する平衡吸着量相当の濃度とすることが好ましい。また、リン酸ジブチル含有水の濃度は、被処理液W1中の固形分が溶解する濃度以下のリン酸ジブチルを供給量とすることにより、リン酸ジブチルの析出を防ぐことができる。リン酸ジブチル含有水の濃度としては、リン酸ジブチルを含有する廃水を効率良く処理する観点から、例えば、処理後の処理液W2に含まれるリン酸ジブチル濃度以上、処理後の処理液W2に含まれるリン酸ジブチル濃度の2倍以下の濃度が更に好ましい。
純水供給ラインL4には、送液ポンプ18と吸着材貯留部19との間に、純水供給ラインL4を流れる純水W3の流量を制御する制御弁V3が設けられている。また、純水供給ラインL4には、純水供給ラインL4から分岐して吸着材貯留部19をバイパスして純水供給ラインL4に接続するバイパスラインL5が設けられている。バイパスラインL5には、バイパスラインL5を流れる純水W3の流量を制御する制御弁V4が設けられている。なお、処理装置2では、固液分離部16は、高線量領域Aの範囲外に配置される。その他の構成については、図1に示した処理装置1と同様のため説明を省略する。
図4は、本実施の形態に係る処理装置2の吸着材交換時のフロー図である。図4に示すように、吸着材の交換時には、まず、処理装置2は、制御弁V1,V3を閉止し、制御弁V4を開放すると共に、送液ポンプ13を停止した状態で、送液ポンプ18を運転してリン酸ジブチル供給部20によってリン酸ジブチルが供給された純水(リン酸ジブチル含有水)W3を吸着塔12に供給して吸着塔12内の吸着材をリン酸ジブチル含有水と共に押出す(ステップST21)。吸着塔12内から押出された吸着材は、リン酸ジブチル含有水W3と共に固液分離部16に供給されて固液分離された後、廃棄固体として廃棄される。固液分離されたリン酸ジブチル含有水W3は、固液分離部16で固体が除去された後、廃水貯留部15に貯留され、被処理液貯留部11又は廃液処理槽に移送された後に中和処理される。
次に、処理装置2は、制御弁V4を閉止し、制御弁V3を開放した状態で、送液ポンプ18を運転する。これにより、水供給部17は、吸着材貯留部19を介して純水W3と共に新たな吸着材を水スラリーの状態で吸着塔12に向けて供給し、吸着塔12内に新たなスラリーを充填する(ステップST22)。これにより、処理装置2は、リン酸ジブチル濃度が高いリン酸ジブチル含有水W3と共に交換する吸着材を固液分離するので、吸着材に吸着したリン酸ジブチルのリン酸ジブチル含有水W3への脱着を防ぐことが可能となる。
なお、上述した実施の形態においては、吸着材の交換に用いたリン酸ジブチル含有水W3を被処理液貯留部11又は廃液処理槽に移送された後に中和処理する例について説明したが、図5に示すように、リン酸ジブチル含有水W3は、水供給部17に供給して再利用してもよい。これにより、リン酸ジブチル供給部20から純水W3に添加するリン酸ジブチルの供給量を削減することもできる。また、上述した実施の形態では、廃水貯留bう15は、高線量領域Aの外部に配置される。
このように、上記実施の形態に係る処理装置2によれば、リン酸ジブチルの濃度が純水W3より吸着材の吸着平衡濃度に近いリン酸ジブチル含有水W3を用いてリン酸ジブチルの吸着後の吸着材を吸着塔12から押出すので、固液分離された吸着材を低線量の廃棄物として取り扱うことが可能となると共に、リン酸ジブチルを吸着した交換後の吸着材からの固液分離後のリン酸ジブチル含有水W3へのリン酸ジブチルの脱着を低減でき、より一層リン酸ジブチルを効率良く処理することが可能となる。また、固液分離部16で分離されたリン酸ジブチル含有水W3を吸着材の交換に再利用することにより、リン酸ジブチルを吸着した吸着材の交換に用いるリン酸ジブチル含有水W3の液量を削減することができるので、より一層リン酸ジブチルを効率良く処理することが可能となる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第1実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る処理装置3の模式図である。図6に示すように、処理装置3は、吸着塔12に圧縮空気又は加熱空気を気体Gとして供給する空気供給部31と、固液分離部16に代えて設けられた気固分離部(吸着材分離部)32とを備える。空気供給部31と吸着塔12との間には、吸着塔12に気体Gを供給する気体供給ラインL6が設けられている。また、吸着塔12と気固分離部32との間には、吸着塔12内の気体Gと共に吸着材を排出する排出ラインL7が設けられている。気固分離部32は、気体Gと共に排出された被処理液W1が付着した吸着材を廃棄固体として分離し、気体を排気部33に排出する。また、処理装置3は、水供給部17に代えて流体供給部34を備える。流体供給部34は、気体G又は純水W3を吸着塔12に向けて供給する。処理装置3では、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13及びフィルタ部14が高線量領域A内に配置される。その他の構成については、図3に示した処理装置2と同様のため説明を省略する。
図7は、本実施の形態に係る処理装置3の吸着材交換時のフロー図である。図7に示すように、吸着材の交換時には、まず、処理装置3は、空気供給部31から吸着塔12に気体Gを供給して吸着塔12内の吸着材を気体Gと共に押出す(ステップST31)。ここでは、処理装置3は、吸着塔12の上部から気体Gを供給して吸着材を乾燥させてほぐした後、気固分離部32の下部に設けられたバルブ(不図示)などを開放することにより、吸着材を吸着塔12内から外部に押出す。吸着塔12内から押出された吸着材は、気体Gと共に気固分離部32に供給される。気固分離部32に供給された吸着材は、空気供給部31から供給される気体Gによって、被処理液W1が蒸発して排気部33に排出されることにより気固分離された後、廃棄固体として廃棄される。
次に、処理装置3は、制御弁V4を閉止し、制御弁V3を開放した状態で、流体供給部34から流体Fを供給する。なお、流体Fとして水を供給する場合には、図4に示した例と同様に送液ポンプを用いてもよい。流体供給部34は、吸着材貯留部19を介して流体Fと共に新たな吸着材を吸着塔12に向けて供給し、吸着塔12内に新たなスラリーを充填する(ステップST32)。これにより、処理装置3は、純水W3などを用いずに吸着材を交換できるので、吸着材に吸着したリン酸ジブチルの純水W3及びリン酸ジブチル含有水W3などへの脱着を防ぐことが可能となる。
このように、上記実施の形態に係る処理装置3によれば、気体Gによって吸着塔12内のリン酸ジブチルを吸着した吸着材を乾燥させつつ押出して吸着材を交換するので、リン酸ジブチルを吸着した吸着後の吸着材が純水などのリン酸ジブチルを含まない液体と接することがない。これにより、交換後の吸着材から純水などへのリン酸ジブチルの脱着を防ぐことができるので、リン酸ジブチルを含有する廃水の水量を低減して被吸着物質を効率良く処理することが可能となる。さらに、圧縮空気によって吸着材を乾燥させつつ吸着塔内から押出すことができるので、より一層効率良く吸着材を押出すことが可能となる。また、加熱空気を用いた場合には、加熱空気によって吸着材を加温して乾燥させつつ吸着塔内から押出すことができるので、吸着材の廃棄物の乾燥時間の短縮が可能となる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第1実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る処理装置4の模式図である。図8に示すように、処理装置4は、圧縮空気又は加熱空気を気体Gとして吸着塔12の上部又は下部から供給する空気供給部31と、固液分離部16に代えて設けられた気固分離部(吸着材分離部)32とを備える。空気供給部31と吸着塔12との間には、吸着塔12に気体Gを供給する気体供給ラインL6が設けられている。気体供給ラインL6には、吸着塔12の上部側に設けられ、吸着塔12の上部側から供給される気体Gの流量を制御する制御弁V11と、吸着塔12の下部側に設けられ、吸着塔12の下部側から供給される気体Gの流量を制御する制御弁V12とが設けられている。また、吸着塔12と気固分離部32との間には、吸着塔12内の気体Gと共に吸着材を吸着塔12から排出する排出ラインL7が設けられている。この排出ラインL7は、吸着塔12内の気体Gと共に吸着材を吸着塔12の下部から排出し、又は吸着塔12内の気体Gと共に吸着材を吸着塔12の上部から排出する。気固分離部32は、気体Gと共に排出された吸着材を廃棄固体として分離し、気体を排気部33に排出する。また、処理装置4は、水供給部17に代えて流体供給部34を備える。流体供給部34は、圧縮空気又は純水を吸着塔12に向けて供給する。処理装置4では、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13及びフィルタ部14が高線量領域A内に配置される。その他の構成については、図1に示した処理装置1と同様のため説明を省略する。
次に、本実施の形態に係る処理装置4の吸着材交換について説明する。処理装置4の吸着材の交換時には、図7に示した例と同様に、吸着材の交換時には、まず、処理装置4は、空気供給部31から吸着塔12に気体Gを供給して吸着塔12内の吸着材を気体Gと共に押出す。ここでは、処理装置4は、吸着塔12の上部又は下部から気体Gを供給して吸着材を乾燥させてほぐした後、気固分離部32の上部又は下部に設けられたバルブ(不図示)などを開放することにより、吸着材を吸着塔12内から外部に押出す。またここでは、必要に応じて、制御弁V11及び制御弁V12の開閉を切替えて吸着塔12の上下で交互に気体Gの供給を切替えながら吸着材を押し出してもよい。これにより、吸着塔12内で気体Gによって吸着材が撹拌されるので、吸着材を効率良く排出することが可能となる。吸着塔12内から押出された吸着材は、気体Gと共に気固分離部32に供給される。気固分離部32又は気固分離部32に供給された吸着材は、空気供給部31から供給される気体Gによって、被処理液W1が蒸発して排気部33に排出されることにより気固分離された後、廃棄固体として廃棄される。
次に、処理装置4は、制御弁V4を閉止し、制御弁V3を開放した状態で、流体供給部34から流体Fを供給する。なお、流体Fとして水を供給する場合には、図4に示した例と同様に送液ポンプを用いてもよい。流体供給部34は、吸着材貯留部19を介して流体Fと共に新たな吸着材を吸着塔12に向けて供給し、吸着塔12内に新たなスラリーを充填する。これにより、処理装置4は、純水W3などを用いずに吸着材を交換できるので、吸着材に吸着したリン酸ジブチルの純水W3及びリン酸ジブチル含有水W3などへの脱着を防ぐことが可能となる。
このように、上記実施の形態に係る処理装置4によれば、吸着塔12の上部又は下部から気体Gを導入して吸着材を押し出すことができるので、吸着塔12内に供給される気体Gの供給方向を入替えながら吸着塔12内の吸着材を気固分離部32に押出すことができる。これにより、処理装置4は、吸着塔12内で吸着材を気体Gによって撹拌しながら乾燥させることができるので、更に効率良く吸着材を押出すことが可能となる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第1実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図9は、本発明の第5の実施の形態に係る処理装置5の模式図である。図9に示すように、処理装置5は、図6に示した処理装置3の構成に加えて、吸着塔12を回転させる駆動部40を備える。駆動部40は、吸着塔12を回転させて、吸着塔12に対する気体Gの流れ方向の上部と下部とを入れ替えることにより、吸着塔12に対する気体Gの供給方向を切替える。これにより、処理装置5は、吸着塔12内で吸着材を撹拌できるので、吸着塔12内から吸着材を効率良く排出することが可能となる。処理装置5では、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13、フィルタ部14及び駆動部40が高線量領域A内に配置される。その他の構成については、図6に示した処理装置3と同様の構成のため説明を省略する。
このように、上記実施の形態に係る処理装置5によれば、吸着塔12内に供給される気体Gの供給方向を入替えながら吸着塔12内の吸着材を押出すことができるので、更に効率良く吸着材を押出すことが可能となる。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第1実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図10は、本発明の第6の実施の形態に係る処理装置6の模式図である。図10に示すように、処理装置6は、図1に示した固液分離部16に代えて設けられた気固分離部32と、廃水貯留部15に代えて設けられ、廃水貯留部15に接続された吸気部35とを備える。吸着塔12の上部と気固分離部32との間には、排気ラインL11が設けられ、吸着塔12の下部と気固分離部32との間には、排気ラインL12が設けられている。吸気部35は、気固分離部32を介して吸着塔12内を減圧することにより、排気ラインL11又は排気ラインL12を介して吸着塔12内の吸着材を気固分離部32に排出する。処理装置6では、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13及びフィルタ部14が高線量領域A内に配置される。その他の構成については、図1に示した処理装置1と同様のため説明を省略する。
図11は、本実施の形態に係る処理装置6の吸着材交換時のフロー図である。図11に示すように、吸着材の交換時には、まず、処理装置6は、吸気部35から排気ラインL11及び排気ラインL12の少なくとも一方から吸着塔12内を減圧して吸着材を吸着塔12内から取出す(ステップST41)。ここでは、処理装置6は、吸気部35によって吸着塔12内を真空にして吸着材に付着した被処理液W1を乾燥させて吸着材をほぐした後、吸着塔12内から吸着材を取出す。吸着塔12内から取出された吸着材は、吸着塔12内に存在する気体Gと共に排気ラインL11又は排気ラインL12を介して気固分離部32に供給される。気固分離部32に供給された吸着材は、気固分離部32で気固分離された後、廃棄固体として廃棄される。
次に、処理装置6は、送液ポンプ18を運転する。これにより、水供給部17は、吸着材貯留部19を介して純水W3と共に新たな吸着材を水スラリーの状態で吸着塔12に向けて供給し、吸着塔12内に新たなスラリーを充填する(ステップST42)。これにより、処理装置6は、純水W3などを用いずに吸着材を交換できるので、吸着材に吸着したリン酸ジブチルの純水W3及びリン酸ジブチル含有水W3などへの脱着を防ぐことが可能となる。
このように、上記実施の形態に係る処理装置6によれば、吸気部による減圧により吸着塔12からリン酸ジブチルを吸着した吸着材を取出して吸着材を交換するので、リン酸ジブチルを吸着した交換後の吸着材が純水などのリン酸ジブチルを含まない液体と接することがない。これにより、交換後の吸着材から純水などへのリン酸ジブチルの脱着を防ぐことができるので、リン酸ジブチルを含有する廃水の水量を低減してリン酸ジブチルを効率良く処理することが可能となる。また、減圧によって吸着材を乾燥させることにより、吸着材の廃棄物の軽量化を図ることができると共に、吸着材の廃棄物の焼却処理が容易となる。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第6の実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第6の実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図12は、本発明の第7の実施の形態に係る処理装置7の模式図である。図12に示すように、処理装置7は、図10に示した処理装置6に加えて、吸着塔12に圧縮空気又は加熱空気を気体Gとして供給する空気供給部31とを備える。空気供給部31と吸着塔12との間には、吸着塔12に気体Gを供給する気体供給ラインL6が設けられている。その他の構成については、図10に示した処理装置6と同様のため説明を省略する。
次に、処理装置7の吸着材交換について説明する。吸着材の交換時には、まず、処理装置7は、空気供給部31から気体Gを供給すると共に、必要に応じて吸気部35により排気ラインL11及び排気ラインL12の少なくとも一方から吸着塔12内を減圧して吸着材を吸着塔12内から排出する。吸着塔12内から排出された吸着材は、吸着塔12内に存在する気体Gと共に気固分離部32に供給される。気固分離部32に供給された吸着材は、吸気部35による減圧によって、被処理液W1が蒸発して排気部33に排出されることにより気固分離された後、廃棄固体として廃棄される。処理装置7では、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13及びフィルタ部14が高線量領域A内に配置される。その他については、処理装置6と同様であるため説明を省略する。
このように、上記実施の形態に係る処理装置7によれば、吸気部35による減圧によって吸着塔12からリン酸ジブチルを吸着した吸着材を取出して吸着材を交換するので、リン酸ジブチルを吸着した交換後の吸着材が純水などのリン酸ジブチルを含まない液体と接することがない。これにより、交換後の吸着材から純水などへのリン酸ジブチルの脱着を防ぐことができるので、リン酸ジブチルを含有する廃水の水量を低減してリン酸ジブチルを効率良く処理することが可能となる。また、減圧によって吸着材を乾燥させることにより、吸着材の廃棄物の軽量化を図ることができると共に、吸着材の廃棄物の焼却処理が容易となる。
<第2の態様>
本発明者らは、従来の吸着法で廃液中のリン酸ジブチルを十分に低減できない原因が、リン酸ジブチルを吸着した吸着材を固液分離した廃液中に残存するリン酸ジブチルにあることに着目した。そして、本発明者らは、有機溶剤を用いて吸着材の固液分離後の廃液中に残存するリン酸ジブチルを処理することにより、従来の吸着法より効率良くアルカリ濃縮廃液中のリン酸ジブチルを処理できることを見出し、第2態様に係る発明を完成するに至った。以下、本発明の第2の態様について詳細に説明する。
(第8の実施の形態)
本発明の第8の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第1実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
図13は、本発明の第8の実施の形態に係る処理装置8Aの模式図である。図13に示すように、処理装置8Aは、図1に示した処理装置1の構成に加えて、廃水貯留部15に貯留した廃水中にリン酸ジブチルを溶解する有機溶剤を供給する有機溶剤供給部50を備える。このように、廃水貯留部15の廃水中に有機溶剤を供給することにより、廃水中に残存するリン酸ジブチルを有機溶剤によって液−液抽出することができる。廃水貯留部15は、有機溶剤供給部50から供給された有機溶剤と被処理液W1とを攪拌機で混合した後、水相を廃水として廃棄し、リン酸ジブチルが溶解した有機相を有機系廃液として廃棄する。処理装置8Aでは、被処理液貯留部11、吸着塔12、送液ポンプ13、フィルタ部14、廃液処理部15及び固液分離部16が高線量領域A内に配置される。その他の構成については、図1に示した処理装置1と同様であるため説明を省略する。
有機溶剤供給部50が供給する有機溶剤としては、リン酸ジブチルを溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば、ケロシン及びn−ドデカンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機溶剤としては、廃水からリン酸ジブチルを効率良く抽出して除去する観点から、n−ドデカンが好ましい。
図14は、本実施の形態に係る処理装置8Aの吸着材交換時のフロー図である。図13に示すように、吸着材の交換時には、処理装置8Aは、制御弁V1を閉止した状態で送液ポンプ13を運転して被処理液W1によって吸着塔12内の吸着材を被処理液W1と共に押出す(ステップST101)。次に、処理装置8Aは、吸着塔12内に純水W3と共に新たな吸着材を供給して吸着塔12内に吸着材を充填する(ステップST102)。吸着塔12内から押出された吸着材は、被処理液W1と共に固液分離部16に供給されて固液分離される(ステップST103)。固液分離された吸着材は、廃棄固体として焼却処理される。固液分離された被処理液W1は、固液分離部16で固体が除去された後、廃水貯留部15に貯留される。次に、有機溶剤供給部50が、廃水貯留部15に有機溶剤Sを供給し、廃液貯留部15で被処理液W1と有機溶剤Sとを撹拌して抽出した後、有機相を有機系廃液として分液し、水相を排水として分液する(ステップST104)。これにより、廃水中のリン酸ジブチルを有機溶剤によって抽出して除去することができるので、廃水中のリン酸ブチルの含有量を効率良く低減することが可能となる。
図15は、本発明の第8の実施の形態に係る処理装置8Bの他の例を示す図である。図15に示す処理装置8Bは、廃水貯留部15が、被処理液W1を加熱する加熱部を有する。廃液処理部15は、被処理液W1を加熱することにより、被処理液W1の水分を水蒸気として蒸発させてリン酸ジブチルを油状物として分離させる。ここでは、廃液処理部15は、被処理液W1を蒸発乾固してもよく、被処理液の水分量を低減してもよい。このように、廃液処理部15によって被処理液W1中の水分量を低減することにより、被処理液W1中のリン酸ジブチルを効率良く有機溶剤中に抽出することができる。次に、有機溶剤供給部50は、被処理液W1の水分量が低減した被処理液W1中に有機溶剤Sを供給する。次に、廃液処理部15は、有機溶剤にリン酸ジブチルを溶解させた後に、有機溶剤を有機系廃液として排出する。
このように、上記実施の形態に係る処理装置8Aによれば、廃液中に含まれるリン酸ジブチルを有機溶剤によって液−液抽出して除去できるので、固液分離後の廃液中のリン酸ジブチルの濃度を効率良く低減でき、固液分離部16で分離した分離後の被処理液中W1のリン酸ジブチルをより一層効率良く処理することが可能となる。また、上記実施の形態に係る処理装置8Bによれば、廃液処理部15で有機溶剤を添加した固液分離後の被処理液W1を加熱して水分を蒸発させるので、固液分離部16で分離した分離後の被処理液中W1のリン酸ジブチルを更に効率良く処理することが可能となる。そして、処理装置8A,8Bによれば、リン酸ジブチルを抽出した抽出後の廃水を再利用することもできるので、リン酸ジブチルを含有する廃水の処理系統が不要となる。また、リン酸ジブチルを含有する有機溶剤は一般的な有機系廃液として処理することができる。
(第9の実施の形態)
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第8の実施の形態との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。また、上述した第8の実施の形態と共通する構成要素には同一の符号を付している。
なお、図16は、本発明の第9の実施の形態に係る処理装置9の模式図である。図16に示した処理装置9では、更に廃液処理部15にリン酸ジブチルを分解する触媒を供給する触媒供給部51を備えていてもよい。触媒としては、例えば、銅、銅及び過酸化水素、ルテニウム及びルテニウムと過酸化水素との触媒などの金属触媒及びアルカリフォスファターゼなどの酵素などを用いることができる。これらの触媒の添加により、有機溶剤に液−液抽出されたリン酸ジブチルを分解処理して無害化できるので、有機系廃液中のリン酸ジブチルの濃度を効率良く低減することが可能となる。
このように、上記実施の形態に係る処理装置9によれば、固液分離後の廃水中のリン酸ジブチルを触媒によって分解除去できるので、固液分離部16で固液分離した分離後の廃水中のリン酸ジブチルを効率良く低減することが可能となる。そして、処理装置9によれば、リン酸ジブチルを分解除去した廃水を再利用することもできるので、リン酸ジブチルを含有する廃水の処理系統が不要となる。また、有機溶剤は一般的な有機系廃液として処理することができる。
なお、上述した各実施の形態においては、被処理液W1が核燃料サイクルで廃棄されるアルカリ濃縮廃液である例について説明したが、本発明は、アルカリ濃縮廃液以外の各種被処理液W1に適用可能である。