以下、この発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
車両用ブレーキ液圧制御装置は、車両に搭載され、前記車両の挙動、路面状況、ブレーキの操作状況等に応じて、車輪のスリップを抑制するABS制御、前後輪各輪への液圧配分を制御するEBD(Electronic Brake force Distribution)制御、及び車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御(以下、挙動安定化制御という。)等を実行する。
図1は、この実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置10の概略構成を示している。
なお、図1では、煩雑さを回避し、且つ理解の便宜のために、4つの車輪ブレーキ(前輪右側の車輪ブレーキFR、後輪左側の車輪ブレーキRL、前輪左側の車輪ブレーキFL、後輪右側の車輪ブレーキRR)のうち、2つの車輪ブレーキFR、RLに制動力を付与するブレーキ系統K1を図示している。残りの2つの車輪ブレーキFL、RR(不図示)に制動力を付与するブレーキ系統K2は、実質的に同一の構成であるので図示を省略し、以下、主としてブレーキ系統K1について説明し、ブレーキ系統K2については適宜説明する。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置10は、基本的に、液圧源としてのマスタシリンダ12と、ブレーキ系統K1、K2と、このブレーキ系統K1、K2を制御する制御部としてのECU(Electronic Control Unit)16と、から構成されている。
マスタシリンダ12は、2つのブレーキ系統K1、K2に対応して備えられた各出力ポート24a、24bに連通する各上流側液路104、103に、ブレーキペダル20(操作子)に加えられた踏力に応じたブレーキ液圧(マスタシリンダ圧という。)Pmcを発生する。実際上、ブレーキペダル20に加えられた踏力は、ブースタ22を介して増圧され、マスタシリンダ12に作用される。マスタシリンダ12の出力ポート24a、24bは、それぞれ配管を介してアクチュエータ14と接続されている。
ブレーキ系統K1は、アクチュエータ14と、車輪ブレーキFR、RLとから構成されている。各車輪ブレーキFR、RLは、それぞれ配管を介してアクチュエータ14と接続されている。
アクチュエータ14は、基本的に、マスタシリンダ12に連通される上流側液路104、車輪ブレーキFR、RLに連通する車輪ブレーキ液路(ホイールシリンダ液路ともいう。)106a、106b、及びブレーキ液の逃がし液路108の間に設けられた制御弁ユニット30と、前記逃がし液路108に連通するリザーバ34と、ポンプ70の吸入液路110及び吐出液路118の間に設けられた前記ポンプ70と、ポンプ70を駆動するモータ72と、上流側液路104に設けられ該上流側液路104のブレーキ液圧(上流側ブレーキ液圧)であるマスタシリンダ圧Pmcを検出する圧力センサ82と、を備える。なお、ポンプ70の吐出液路118は、制御弁ユニット30の上流側液路104に連通している。
制御弁ユニット30の下流側液路である車輪ブレーキ液路106a、106bは、それぞれ、車輪ブレーキFR、RLを構成するホイールシリンダの一例としてのブレーキキャリパ18a、18bに連通している。車輪ブレーキFRは、ブレーキキャリパ18aとブレーキディスク等のブレーキ部材とから構成され、車輪ブレーキRLは、ブレーキキャリパ18bとブレーキディスク等のブレーキ部材とから構成される。
車輪ブレーキ液路106a、106b側から制御弁ユニット30を通じてブレーキ液を逃がすための逃がし液路108が、吸入液路110を介してリザーバ34に連通している。
制御弁ユニット30は、常開型の比例電磁弁である入口弁51、61と、常閉型の電磁弁である出口弁52、62と、チェック弁53、63とを備える。入口弁51、61は、ECU16からの電磁コイルへの通電量によって、弁の開弁量が自由に調整可能になっている。なお、公知のように、入口弁51、出口弁52、及びチェック弁53を、並びに入口弁61、出口弁62、及びチェック弁63を、それぞれ1個の3ポジション電磁弁で代替してもよい。
制御弁ユニット30は、上流側液路104と、車輪ブレーキ液路106a、106bと、逃がし液路108と、の交差部分に設けられていて、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a、106bを連通(開放)して逃がし液路108を遮断する増圧状態、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a、106bを遮断して逃がし液路108を連通(開放)する減圧状態、及び車輪ブレーキ液路106a、106bを上流側液路104及び逃がし液路108から遮断する保持状態を切り替える機能を有している。つまり、制御弁ユニット30は、ブレーキキャリパ18a、18bに作用する車輪ブレーキ液路106a、106bのブレーキ液圧、換言すれば、制御液圧としてのキャリパ圧Pcca、Pccbを増圧する状態、減圧する状態又は保持する状態に切り替える。なお、以下の説明において、区別して説明する必要がある場合を除き、キャリパ圧Pcca、Pccbは、代表してキャリパ圧Pccという。
チェック弁53、63は、入口弁51、61にそれぞれ並列に設けられ、車輪ブレーキ液路106a、106bから上流側液路104へのブレーキ液の流入のみを許容する。
入口弁51、61は、それぞれ、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a、106bとの間に設けられ、液圧制御が行われない通常時の開いているとき(常開時)に、マスタシリンダ12から各車輪ブレーキFR、RLへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。
その一方、入口弁51、61は、液圧制御中に、車輪がロックしそうになったときに閉弁されることで、ブレーキペダル20から各車輪ブレーキFR、RLに伝達するブレーキ液圧を遮断する。さらに、その液圧制御中に、入口弁51、61は、ECU16によって所定の開弁量となるように制御されることで、各車輪ブレーキFR、RL内のブレーキ液圧を所定の傾きで増加させる。
出口弁52、62は、それぞれ、車輪ブレーキ液路106a、106bと逃がし液路108との間に設けられ、閉弁状態にあるときにブレーキキャリパ18a、18b側からリザーバ34側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときにブレーキキャリパ18a、18b側からリザーバ34側へのブレーキ液の流入を許容する。
リザーバ34は、吸入液路110に設けられており、ブレーキキャリパ18a、18b及び車輪ブレーキ液路106a、106bから制御弁ユニット30の出口弁52、62を介し逃がし液路108及び吸入液路110を通じて逃がされたブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。
ポンプ70は、吸入液路110と吐出液路118との間に設けられ、モータ72の回転力によって駆動され、リザーバ34に一時的に貯留されたブレーキ液を、吸入液路110を通じて吸入し圧力を高めてマスタシリンダ12側の吐出液路118に吐出する。このようにリザーバ34に貯留されたブレーキ液を上流側液路104に連通される吐出液路118に還流させることにより、ブレーキ液をマスタシリンダ12側に戻す。
ECU16は、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)とRAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器、及び駆動回路等の入出力装置、並びに計時部としてのタイマ(計時器)等を有しており、入力信号等に基づきCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、例えば制御部、演算部、及び処理部等として機能する。これらの機能は、ハードウエアにより実現することもできる。
この実施形態において、ECU16は、ハードウエアでも実現可能な圧力異常判定手段90、減圧量算出手段91、スリップ判定手段92、車輪減速度算出手段94、及びキャリパ圧推定手段96としての機能を有している。圧力異常判定手段90は、後述する入力弁閉時間タイマ101(入力弁閉時間計時手段)とフェールカウンタ102の機能をも備える。
ECU16は、また、常開型の比例電磁弁である入口弁51、61の弁体を駆動する電磁コイルを励磁する通電量に係る電流値を0値から最大値又は最大値近傍まで調節することにより、開弁量が最大の弁の全開状態から弁の閉弁状態までの間での所定量開弁(所定開弁量)状態に調節し、消磁することにより開弁状態(全開状態)にする。また、ECU16は、常閉型の電磁弁である出口弁52、62の弁体を駆動する電磁コイルを励磁することにより開弁状態とし、消磁することにより閉弁状態にする。
モータ72は、ブレーキ系統K1、K2中のポンプ70の共通の動力源であり、ECU16からのモータ駆動信号Sdに基づいて作動する。
さらに、ECU16は、4つの車輪(不図示)にそれぞれ設けられた車輪速センサ19からの車輪の回転速度(車輪速度)Vw、及び圧力センサ82で検出したマスタシリンダ圧Pmc等の各検出信号を取り込む。
ECU16は、取り込んだ各前記検出信号に基づき、制御弁ユニット30(入口弁51、61、出口弁52、62からなる各電磁弁)、及びモータ72等を制御することで液圧制御を行う。
また、ECU16の圧力異常判定手段90は、取り込んだ各前記検出信号及びスリップ判定手段93等による判定結果等に基づき、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わり等を原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているか否かを判定する。
ECU16の減圧量算出手段91は、液圧制御時に、後述するようにキャリパ圧Pccの減圧量Pdを算出する。
さらに、ECU16のスリップ判定手段92は、取り込んだ各前記検出信号に基づき、各車輪がスリップ状態にあるか否かを判定する。
さらにまた、車輪減速度算出手段94は、次の(1)式に示すように、車輪減速度Aw[m/s2]を、現在の車輪速度Vw(Vwpとする。)[m/s]から微小時間(一定時間)Δt前の車輪速度Vw(Vwbとする。)を差し引いた車輪速度差ΔVw(ΔVw=Vwp−Vwb)を微小時間Δtで割った値(商)として算出する。なお、微小時間Δtは、例えば、msオーダーの時間である。
車輪減速度Aw=(現在の車輪速度−微小時間前の車輪速度)/微小時間
=(Vwp−Vwb)/Δt
=ΔVw/Δt …(1)
ここで、車輪のスリップ率は、スリップ率=(車体速度−車輪速度Vw)/車体速度と表されるので、車体速度>車輪速度Vwである場合には、減速中であり車輪がスリップ状態であるとみなせる。そして、減速中に、車輪減速度Awが正(Aw>0)値を採った場合には、車輪が車体速度に向かう加速状態になっているので、同様に、スリップ状態にあるとみなせる。つまり、車輪ブレーキに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccが発生しているとみなせる。
なお、図1においては、煩雑さを回避するために、ECU16と各電磁弁との間、ECU16とモータ72との間、及びECU16と各種センサとの間の各配線の図示を省略している。
基本的には以上のように構成されるこの実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置10の動作について、次に、<<基本的な動作>>、及び<<制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理>>の順に説明する。
<<基本的な動作>>
車両用ブレーキ液圧制御装置10の基本的な動作は、この種の公知・周知のブレーキ制御装置と同様であるので、ここでは、その詳細な説明は省略し概略的に説明する。
例えば、ブレーキを作用させるため、ブレーキペダル20が操作されると、ペダル作動スイッチ(不図示)により、その操作に応じた検出信号がECU16に入力される。
このとき、ブレーキペダル20の操作に応じた液圧のブレーキ液がマスタシリンダ12から制御弁ユニット30を通じてブレーキキャリパ18a、18bのシリンダに供給され、車輪ブレーキFR、RLに制動力が付与される。この場合、マスタシリンダ圧Pmc及びキャリパ圧Pccは、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a(106b)の液路が連通しているので同圧である。
ECU16が、ABS制御等の液圧制御が必要であると判断し、例えば、ブレーキ液圧を減圧すべきであると判断すると、ECU16により出口弁52、62が励磁されて開弁状態にされると同時に入口弁51、61が励磁されて閉弁状態にされることで瞬時に液圧制御における減圧制御が開始される。その結果、ブレーキキャリパ18a、18bのブレーキ液が出口弁52、62を介し、逃がし液路108及び吸入液路110を通じてリザーバ34へ排出され車輪ブレーキ液路106a、106bのブレーキ液圧、すなわちキャリパ圧Pcc(Pcca、Pccb)が減圧される。キャリパ圧Pccが減圧されている場合の液圧制御の制御モードを減圧モードという。
なお、ECU16は、出口弁52、62を励磁すると同時にモータ72を駆動することにより、リザーバ34に貯留されたブレーキ液がポンプ70によって吸入液路110を通じて吸入され、吐出液路118を介して上流側液路104、換言すれば、マスタシリンダ12側に還流される。
ECU16が、ブレーキ液圧を保持すべきであると判断すると、出口弁52、62を消磁して閉弁する。これにより、車輪ブレーキ液路106a、106bは、上流側液路104及び逃がし液路108に対して非連通状態とされ、キャリパ圧Pccが一定に保持される。キャリパ圧Pccが保持されている場合の液圧制御の制御モードを保持モードという。
ECU16が、ブレーキ液圧を増圧すべきであると判断すると、出口弁52、62が消磁されて閉弁され、入口弁51、61が高めの電流値から徐々に低くされて入口弁51、61が所定の開弁量で開弁される結果、キャリパ圧Pccが徐々に増圧される。キャリパ圧Pccが増圧されている場合の液圧制御の制御モードを増圧モードという。
以下、ABS制御等の液圧制御が不要と判断されるまで、このような減圧モード、保持モード、及び増圧モードの液圧制御が適宜選択されて実行される。
<<制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理>>
制御液圧としてのキャリパ圧Pccの異常判定処理は、ECU16によりABS制御等の液圧制御が必要であると判断されたその液圧制御中に、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常(キャリパ圧Pccの顕著な不足)が生じているか否かをECU16の圧力異常判定手段90により車輪(一輪)毎に判定する処理である。
以下、A.第1実施例(キャリパ圧Pccの減圧量Pd及び判定中断条件で判定、又は入口弁51、61の閉時間及び判定中断条件で判定)、B.第2実施例(推定キャリパ圧Pecc及び判定中断条件で判定)の順に説明する。なお、煩雑さを回避し、理解の便宜のために、原則として、後輪左側の車輪ブレーキRL(入口弁61と出口弁62)を対象として説明する。
A.第1実施例(キャリパ圧Pccの減圧量Pd及び判定中断条件で判定、又は入口弁51、61の閉時間及び判定中断条件で判定)
図2のフローチャートを参照して説明する。なお、以下に説明するフローチャートに係るプログラムの実行主体は、ECU16(のCPU)である。
図2のフローチャートは、ABS制御等の液圧制御中、所定(一定)の微小な制御時間(制御サイクル、処理サイクル又はサイクルタイムという。)毎に繰り返し実行される。
ステップS1にて、ECU16は、各車輪速センサ19からの各車輪速度Vw及び圧力センサ82からのマスタシリンダ圧Pmc等各種センサからの検出信号(各種センサ値)を取得する。また、ステップS1にて、取得した検出信号に基づき制御に必要になる(1)式で示した車輪減速度Aw等の物理量を算出する。なお、微小時間Δtは、この実施形態において、フローチャートの制御サイクルに一致させている。
ステップS2にて、ECU16は、液圧制御の制御モードが減圧モードになっているか否かを判定する。
減圧モードになっているとECU16が判定した(ステップS2:YES)場合、減圧量算出手段91は、この減圧モード下で、ステップS3にて、次の(2)式に基づき、左辺の現在の減圧量Pd(Pdは、累積した減圧量を表し、Pd≧0の値を採る。)を算出する。
減圧量Pd=前回減圧量Pd´+今回減圧分 …(2)
ここで、右辺の今回減圧分(今回減圧分も0以上の値を採る。)は、今回の制御サイクルでの出口弁62の開時間に比例する減圧量である。また、右辺の前回減圧量Pd´は、前回算出された減圧量(前回時点までに累積された減圧量)を示す。減圧量Pdは、増圧モードの開始時又は液圧制御の終了時にゼロ値にクリアされる。ステップS3の後、ステップS6に移行する。
なお、ステップS2の判定にて、制御モードが減圧モードではない(ステップS2:NO)と判定した場合には、ステップS4にて、制御モードが保持モード(入口弁61及び出口弁62が閉弁状態)になっているか否かを判定する。ステップS4の判定で制御モードが保持モードである(ステップS4:YES)場合、ステップS6へ移行する。
ステップS4の判定にて保持モードではない(ステップS4:NO)と判定した場合、ステップS5にて(2)式の左辺の現在の減圧量Pdをクリアして(減圧量Pd=0)、ステップS6の判定処理を実行する。
ステップS6の判定処理では、ステップS3で算出した減圧量Pdが次の(3)式に示すように減圧量閾値Pdth以上の値になり、且つ制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理の判定中断条件(後述)が不成立になっているか否かを判定する。
減圧量Pd≧減圧量閾値Pdth …(3)
ステップS3で算出した減圧量Pdが減圧量閾値Pdth未満の減圧量である(ステップS6:NO)場合、又は異常判定の判定中断条件(後述)が成立している(ステップS6:NO)場合、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧(キャリパ圧Pcc)に異常(キャリパ圧Pccの顕著な不足)が生じていないと判定する。
ステップS6の異常判定の判定中断条件は、2つの判定中断条件が設定されている。
一方の判定中断条件(第1の判定中断条件)は、車輪減速度算出手段94により(1)式にて算出されている車輪減速度Awが加速状態を示す値、すなわち正(Aw=ΔVw/Δt>0)の値であるということである。液圧制御中に車輪減速度Awの値が正の値(車輪減速度Awの値が加速状態を示す値)であるということは、実際上、車輪速度Vwが実車体速度に向かう加速状態にあることを意味しているので、車輪がスリップ状態にあるとみなすことができ、車輪ブレーキに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccが発生しているとみなせる。
他方の判定中断条件(第2の判定中断条件)は、液圧制御中の減速中に車輪速センサ19により検出された車輪速度Vwがゼロ値(Vw=0)であるという条件である。車輪速度Vwがゼロ値である場合、仮に実車体速度が正であれば、前記車輪がロック傾向にあり、前記車輪の車輪速度Vwが実車体速度から乖離したスリップ状態にあるとみなすことでき、車輪ブレーキに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccが発生しているとみなせる。
ステップS6の判定が否定的(ステップS6:NO)である場合、ステップS7にて、フェールカウンタ102のカウント値Cf(本発明の計時時間に相当)をリセット(カウント値Cf=0)し、ステップS8にて、異常判定フラグFbsをクリア(Fbs=0)して、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
なお、ステップS6の判定が否定的な場合とは、液圧制御中の減圧量Pdが減圧量閾値Pdth未満の値(Pd<Pdth)になっている場合、異常判定の判定中断条件(第1判定中断条件又は第2判定中断条件)が成立している(Vw≠0及び/又はAw≦0)場合である。
その一方、ステップS6の判定が肯定的(ステップS6:YES)であった場合、すなわち、ステップS3で算出した現在の減圧量Pdが減圧量閾値Pdth以上の値であって、且つ制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理の上述した判定中断条件が不成立(車輪速度VwがVw=0ではない、及び/又は車輪減速度AwがAw>0ではない。)になっている場合には、ステップS9にて、フェールカウンタ102を加算(累算)する{カウント値Cfをカウントアップ(Cf=Cf+1)する}。
次いで、ステップS10にて、フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth1以上の値(Cf≧Cth1)になったか否かを判定する。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth1未満の値(Cf<Cth1)である(ステップS10:NO)場合には今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth1以上の値(Cf≧Cth1)になった(ステップS10:YES)場合、すなわち、Pd≧Pdth及び判定中断条件不成立の状態(ステップS6:YESの期間)が、カウント閾値Cth1に対応する時間継続したとき、圧力異常判定手段90は、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因として前記制御液圧(キャリパ圧Pcc)に異常が生じているとみなし、ステップS11にて異常判定フラグFbsをセット(Fbs=1)する。
この場合、ステップS12にて、制御液圧に異常が生じていると判定する。
[第1実施例の具体的動作例]
第1実施例の具体的動作例について、図3〜図5のタイムチャートを参照して説明する。
例えば、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として誤作動が生じ、この誤作動により制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常な低下状態が発生した場合、この誤作動を誘発している液圧制御を直ちに停止させなければならない。その場合、制御液圧の異常な低下状態の発生を判定することが必要になる。
基本的には、入口弁61の閉時間(減圧時間及び保持時間)が長い状態を検知することで制御液圧の異常を判断できる。より具体的には、液圧制御中の減圧モード時における減圧量Pdを算出することで制御液圧の異常を判断できる。
図3は、この第1実施例の圧力異常判定手段90による異常判定処理を説明するタイムチャートである。
図3の例では、ブレーキペダル20が踏み込まれている(ブレーキペダル入力=1)ときに、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として、時点t1で誤作動による減圧制御が発生したものとする。時点t1で減圧制御(入口弁61が閉弁、出口弁62が開弁)が開始されると、実キャリパ圧であるキャリパ圧Pccが減圧する。ここで、減圧量Pdは、減圧を開始する時点t1のキャリパ圧Pccを基準のゼロ値として算出される。この時点t1にて、入口弁閉時間タイマ101の計時が開始され入口弁閉時間が計時される。
時点t2にて、キャリパ圧Pccの減圧量Pdが減圧量閾値Pdthを上回ってキャリパ圧Pccが小さくなった(Pcc≒0)とき、又は減圧開始(時点t1)後の入口弁閉時間タイマ101により計時されている入口弁閉時間の継続時間(t2−t1)が閾値時間Tth1になったとき、フェールカウンタ102のカウントを開始させる。なお、フェールカウンタ102のカウント値Cfは、所定量(減圧量閾値Pdth)分だけ減圧した後の入口弁閉弁継続時間を意味し、入口弁61の開弁時にはリセットされる。フェールカウンタ102のカウント値Cfがカウント閾値Cth1(予めシミュレーション等により決定しておく。)になった時点t3にて、制御液圧であるキャリパ圧PccがPcc≒0とみなされる異常状態になったものと判定される(異常判定の正しい判定が成立)。このようにすれば、偶発的な誤作動を正しく判定することができる。
・第1判定中断条件の説明
次に、上述した第1実施例の第1の判定中断条件(車輪減速度Awの値が正の値。)に関して図4のタイムチャートを参照して説明すると、時点t11近傍にて、HLジャンプ等により車輪速度Vwが急激に減少し、減圧開始条件を満たすと、減圧制御が実行され、キャリパ圧Pccが減圧される。
この時点t11近傍にて、入力弁閉時間タイマ101の計時が開始される。
時点t12にて、車輪減速度Awの値の正の値への上昇が検出されるとフェールカウンタ102がリセットされる(ステップS7対応)。
時点t13にて、キャリパ圧Pccの減圧量Pdが減圧量閾値Pdthを上回ると、ステップS6の一方の条件「減圧量Pd≧減圧量閾値Pdth」を満足するが、もう一方の条件「車輪減速度Aw>0の不成立→車輪減速度Awの値が正値ではない」が継続中(t12〜t15)となっている(ステップS6:NO対応)ので、満足せず、フェールカウンタ102はリセットされる(ステップS7対応)。
図4のフェールカウンタ、異常判定における破線は、第1判定中断条件によるリセットを行わないケースを示しており、この場合、異常判定の項中、時点t14での破線で示す0(異常判定非成立)から1(異常判定成立)への立ち上がりの異常判定の誤判定が生じてしまう。
これに対し、この図4例では、時点t15まで、車輪減速度AwがAw>0であるので、時点t14では、車体速度と車輪速度Vwとの間に上下に対向する白抜き矢印で示す差がありスリップが出ているのでキャリパ圧が異常状態ではなく、上述のように、時点t14(図3の時点t3参照)にてフェールカウンタ102のカウント値Cfがカウント閾値Cth1を上回ることがなく、時点t14における異常判定の誤判定が抑制される。
・第2判定中断条件の説明
次に、上述した第1実施例の第2の判定中断条件(車輪速度Vwがゼロ値)に関して図5のタイムチャートを参照して説明すると、時点t21近傍にて、HLジャンプ等により車輪速度Vwが急激に減少し、減圧開始条件を満たすと、減圧制御が実行され、キャリパ圧Pccが減圧される。この場合、減圧量算出手段91により時点t21のキャリパ圧Pccを基準のゼロ値として減圧量Pdが算出される。
さらに、この時点t21にて、入力弁閉時間タイマ101による入力弁閉時間の計時が開始される。
時点t22にて、車輪速度Vwのゼロ値が検出されるとフェールカウンタ102がリセットされる(ステップS7対応)。なお、実際上、この時点t22では、フェールカウンタ102のカウント値Cfがリセット状態になっているので、カウント値Cf=0に変更はない。
時点t23にて、キャリパ圧Pccの減圧量Pdが減圧量閾値Pdthを上回ると、ステップS6の一方の条件「減圧量Pd≧減圧量閾値Pdth」が成立するが、もう一方の条件「車輪速度Vwがゼロではない」が時点t22以降、不成立(Vw=0)になっている(ステップS6:NO対応)ので、入口弁閉時間が閾値時間Tth1を上回る時間となっていてもフェールカウンタ102はリセットされる(ステップS7対応)。
なお、図5のフェールカウンタ、異常判定における破線は、第2判定中断条件によるリセットを行わないケースを示しており、この場合、時点t24で異常判定の誤判定が生じてしまう。
この図5例では、時点t25まで、車輪速度VwがVw=0であるので、時点t24にてフェールカウンタ102のカウント値Cfがカウント閾値Cth1を上回ることがなく、時点t24における異常判定の誤判定が抑制される。
B.第2実施例(キャリパ圧Pccの推定圧である推定キャリパ圧Pecc及び上述した判定中断条件で判定)
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6のフローチャートは、ABS制御等の液圧制御中、所定の微小な制御時間(制御サイクル又はサイクルタイムという。)毎に繰り返し実行される。
ステップS21にて、ステップS1と同様に、ECU16は、各車輪速センサ19からの各車輪速度Vw及び圧力センサ82からのマスタシリンダ圧Pmc等各種センサの検出信号(各種センサ値)を取得する。また、ステップS21にて、取得した検出信号に基づき制御に必要になる上記した車輪減速度Aw及び推定キャリパ圧Pecc等の物理量を算出する。
ここで、推定キャリパ圧Peccは、液圧制御開始時におけるマスタシリンダ圧Pmcと、液圧制御開始時以降の入口弁61と出口弁62の制御履歴とに基づいて算出される。
次いで、ステップS22にて、ECU16は、ステップS21で算出された推定キャリパ圧Peccが(4)式に示すようにキャリパ圧閾値Pccthを下回る値となり、且つ上述した判定中断条件(Vw=0及び/又はAw>0)が不成立(Vw≠0又はAw≦0)になっているか否かを判定する。
推定キャリパ圧Pecc<キャリパ圧閾値Pccth …(4)
推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccth以上の圧力である(ステップS22:NO)場合、又は異常判定の判定中断条件(車輪速度Vw=0及び/又は車輪減速度Aw>0)が成立している(ステップS22:NO)場合、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常(キャリパ圧Pccの顕著な不足)が生じていないと判定する。
ステップS22の判定が否定的(ステップS22:NO)である場合、ステップS23にて、フェールカウンタ102をリセット(カウント値Cf=0)し、ステップS24にて、異常判定フラグFbsをクリアして、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
その一方、ステップS22の判定が肯定的(ステップS22:YES)であった場合、すなわち、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccth未満の値であって、且つ制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理の上述した判定中断条件が不成立(車輪速度Vw=0ではない及び/又は車輪減速度Aw>0ではない。)になっている場合には、ステップS25にて、フェールカウンタ102のカウント値Cfをカウントアップ(Cf=Cf+1)する。
次いで、ステップS26にて、フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth2(シミュレーション等により設定)以上の値(Cf≧Cth2)になったか否かを判定する。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth2未満の値(Cf<Cth2)である(ステップS26:NO)場合には、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth2以上の値(Cf≧Cth2)になった(ステップS26:YES)場合には、圧力異常判定手段90は、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因として前記制御液圧(キャリパ圧Pcc)に異常が生じているとみなし、ステップS27にて異常判定フラグFaをセットする。
この場合、ステップS28にて、制御液圧に異常が生じていると判定する。
[第2実施例の具体的動作例]
第2実施例の具体的動作例について、図7及び図8のタイムチャートを参照して説明する。
例えば、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として誤作動が生じ、この誤作動により制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常な低下状態が発生した場合、この誤作動を誘発している制御を直ちに停止させなければならない。その場合、制御液圧の異常な低下状態の発生を判定することが必要になる。
具体的に、液圧制御中の減圧時以降の推定キャリパ圧Peccを算出し、推定キャリパ圧Peccが所定の閾値を下回っている状態が一定時間以上継続した場合に、制御液圧の異常が生じていると判定できる。
図7は、この第2実施例の圧力異常判定手段90による異常判定処理を説明するタイムチャートである。
図7の例では、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として、時点t31で誤作動による減圧制御が発生したものとする。時点t31以降、実キャリパ圧であるキャリパ圧Pccが減圧する。
キャリパ圧推定手段96は、時点t31から減圧する推定キャリパ圧Peccを算出し、時点t32にて、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthを下回ったとき、フェールカウンタ102のカウントを開始させる。フェールカウンタ102のカウント値Cfがカウント閾値Cth2になった時点t33にて、制御液圧であるキャリパ圧PccがPcc≒0とみなされる異常状態になったものと判定される(異常判定の正しい判定が成立)。このようにすれば、偶発的な誤作動を正しく判定することができる。
・第1判定中断条件の説明
次に、第2実施例について、上述した第1判定中断条件(車輪減速Awの値が正の値)に関して、図8のタイムチャートを参照して説明すると、時点t41にて、通常制御下(入口弁61が開弁状態、出口弁62が閉弁状態)でブレーキペダル20に踏力が加えられると、時点t41以降、実キャリパ圧であるキャリパ圧Pccが比例的に増圧される。
その後、車輪速度Vwの減少に対応して、時点t42にて液圧制御(入口弁61閉弁、出口弁開弁)が開始される。ここでは、仮に推定キャリパ圧Peccの推定精度が一時的に低下してしまい、時点t44にて、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthを下回る事態が発生するものとする。
しかし、実際上は、時点t44よりも前の時点t43から時点t46の間では、車輪減速度算出手段94により算出されている車輪減速度AwがAw>0になっている。減速中に、車輪減速度Awが正(Aw>0)値を採った場合には、図8からも分かるように、車輪速度Vwが上昇する加速状態になっているので、スリップ状態であるとみなせる(ステップS22:NO対応)。つまり、車輪ブレーキRLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pcc(Pccb)が発生しているとみなせる。
従って、時点t42以降時点t45の間で、推定キャリパ圧Peccの減圧時の推定精度が一時的に低下してしまい、時点t44から時点t45の間で、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthを下回って推定圧上は、Pecc=0値となっていても、時点t44以降、フェールカウンタ102がカウントを開始しないでリセットされている(ステップS23対応)。
図8のフェールカウンタ、異常判定における破線は、第1判定中断条件によるリセットを行わないケースを示しており、この場合、時点t45での破線で示す0から1への立ち上がりの異常判定の誤判定が生じてしまう。
これに対し、この図8例では、時点t46まで、車輪減速度AwがAw>0であるので、時点t45でフェールカウンタ102が破線で示すようにはカウントされないのでカウント値Cfがカウント閾値Cth2を上回ることがなく、時点t45における異常判定の誤判定が抑制される。
[実施形態のまとめ]
以上説明したように上述した実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置10は、液圧源としてのマスタシリンダ12に連通する入口弁51、61と車輪ブレーキFR、RLに連通する出口弁52、62を有し車輪ブレーキFR、RLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccを制御する制御弁ユニット30と、制御弁ユニット30を制御するプログラムと該プログラムにより参照されるデータを記憶するメモリとを有するECU16と、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因としてキャリパ圧Pccに異常が生じているか否かを判定する圧力異常判定手段90と、車輪がスリップ状態にあるか否かを判定するスリップ判定手段92と、を備え、スリップ判定手段92により前記車輪がスリップ状態にあると判定した場合、圧力異常判定手段90による判定を中断する。
車輪がスリップ状態にあるということは、車輪ブレーキFR、RLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccが発生しているとみなされる。従って、車輪がスリップ状態にあると判定した場合に、圧力異常判定手段90による判定を中断する。この実施形態では、フェールカウンタ102のカウント値Cfをリセットすることで、制御液圧であるキャリパ圧Pccに異常が生じていると判定してしまう誤判定を抑制できる。
例えば、車輪がスリップ状態にあって、車両が、液圧制御をかけながら摩擦係数が大きい路面から小さい路面に入り進行していること(HLジャンプ)を原因として減圧時間(もしくは減圧後の保持時間)が長くなったとしても、制御液圧であるキャリパ圧Pccに異常が生じていると判定してしまう誤判定を抑制できる。
このようにこの実施形態によれば、スリップ判定手段92により車輪がスリップ状態にあるか否かを判定することで制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているか否かを判定するという構成で、車輪ブレーキFR、RLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccの異常の有無の誤判定が抑制される。
ここで、車輪減速度算出手段94を備えているので、スリップ判定手段92は、液圧制御中に、車輪減速度算出手段94により算出された、車輪減速度Aw=(現在の車輪速度−微小時間前の車輪速度)/微小時間の値が、加速状態を示す値(例えば、正の値)である場合には、実車体速度から乖離して減少した車輪速度Vwが車体速度に近づいていく状態にあるので車輪がスリップ状態にあるとみなせる。このため、車輪減速度Awにより、車輪がスリップ状態にあるか否かを簡易に判定することができる。
車両用ブレーキ液圧制御装置10は、車輪速センサ19を備えている。スリップ判定手段92は、液圧制御中に、車輪速センサ19により検出された車輪速度Vwがゼロ値である場合には、実車体速度が正であるとき車輪がロック傾向にあるので、車輪ブレーキFR、RLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccが発生している(制動力が有る)とみなすことができる。よって、車輪速度Vw=0を検出することにより、車輪がスリップ状態にあると簡易に判定することができる。なお、実車体速度がゼロ(0[km/h])で車輪速度Vwがゼロ(0[km/h])であるときには、車両が停止している状態であるので、キャリパ圧Pccの異常の有無を判定する必要がない。
さらに、圧力異常判定手段90は、液圧制御中に、入口弁51、61の閉弁後の制御液圧であるキャリパ圧Pccの減圧量Pd{減圧量算出手段91により(2)式にて算出される。}が液圧閾値としての減圧量閾値Pdthより低下した後(図5の時点t23)からの時間をフェールカウンタ102によりカウント(計時)し、カウント値Cf(計時時間)がカウント閾値Cth1(第1閾値時間)を上回ったとき、制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとみなし、車輪がスリップ状態にあると判定された場合には、カウント値Cfをリセットすることが好ましい。
例えば、入口弁51、61の閉弁後の制御液圧であるキャリパ圧Pccの液圧閾値Pdthより低下後(例えば、減圧量Pdや減圧時間の累積が一定以上になった後)からのカウント値Cf(計時時間)がカウント閾値Cth1(第1閾値時間)を上回ったとき、制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じていると判定する場合において、前記HLジャンプを原因として減圧時間(もしくは減圧後の保持時間)が長くなったとしても、車輪がスリップ状態にあるときはカウント値Cf(計時時間)がリセットされるので、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとする誤判定を抑制できる(図5の時点t24)。
さらにまた、圧力異常判定手段90は、液圧制御中に、車輪ブレーキFR、FLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccを推定し、推定キャリパ圧Peccが液圧閾値であるキャリパ圧閾値Pccthより低下(図7の時点t32)後からの時間をフェールカウンタ102によりカウント(計時)し、カウント値Cf(計時時間)がカウント閾値Cth2(第2閾値時間)を上回ったとき(図7の時点t33)、制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとみなし、前記車輪がスリップ状態にあると判定された場合には、カウント値Cf(計時時間)をリセットするように制御している。
このように制御することで、例えば、一時的なノイズ等によって一時的に制御液圧の推定値である推定キャリパ圧Peccの推定精度が低くなったとしても、車輪がスリップ状態にある(車輪速度Vwがゼロ値又は車輪減速度Awの値が正の値である)と判定された場合には、たとえ、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthより低下したとしてもその場合にはフェールカウンタ102のカウント値Cf(計時時間)がリセットされるので、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因としてキャリパ圧Pccに異常が生じているとする誤判定を抑制できる(図8の時点t45)。
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。