以下、この発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
車両用ブレーキ液圧制御装置は、車両に搭載され、前記車両の挙動、路面状況、ブレーキの操作状況等に応じて、車輪のスリップを抑制するABS制御、前後輪各輪への液圧配分を制御するEBD制御、車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御(以下、挙動安定化制御という。)等を実行する。
図1は、この実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置10の概略構成を示している。
なお、図1では、煩雑さを回避し、且つ理解の便宜のために、4つの車輪ブレーキ(前輪右側の車輪ブレーキFR、後輪左側の車輪ブレーキRL、前輪左側の車輪ブレーキFL、後輪右側の車輪ブレーキRR)のうち、2つの車輪ブレーキFR、RLに制動力を付与するブレーキ系統K1を図示している。残りの2つの車輪ブレーキFL、RR(不図示)に制動力を付与するブレーキ系統K2は、実質的に同一の構成であるので図示を省略し、以下、主としてブレーキ系統K1について説明し、ブレーキ系統K2については適宜説明する。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置10は、基本的に、液圧源としてのマスタシリンダ12と、ブレーキ系統K1、K2と、このブレーキ系統K1、K2を制御する制御部としてのECU(Electronic Control Unit)16と、から構成されている。
マスタシリンダ12は、2つのブレーキ系統K1、K2に対応して備えられた各出力ポート24a、24bに連通する各上流側液路104、103に、ブレーキペダル20(操作子)に加えられた踏力に応じたブレーキ液圧(マスタシリンダ圧という。)Pmcを発生する。実際上、ブレーキペダル20に加えられた踏力は、ブースタ22を介して増圧され、マスタシリンダ12に作用される。マスタシリンダ12の出力ポート24a、24bは、それぞれ配管を介してアクチュエータ14と接続されている。
ブレーキ系統K1は、アクチュエータ14と、車輪ブレーキFR、RLとから構成されている。各車輪ブレーキFR、RLは、それぞれ配管を介してアクチュエータ14と接続されている。
アクチュエータ14は、基本的に、マスタシリンダ12に連通される上流側液路104、車輪ブレーキFR、RLに連通する車輪ブレーキ液路(ホイールシリンダ液路ともいう。)106a、106b、及びブレーキ液の逃がし液路108の間に設けられた制御弁ユニット30と、前記逃がし液路108に連通するリザーバ34と、ポンプ70の吸入液路110及び吐出液路118の間に設けられた前記ポンプ70と、ポンプ70を駆動するモータ72と、上流側液路104に設けられ該上流側液路104のブレーキ液圧(上流側ブレーキ液圧)であるマスタシリンダ圧Pmcを検出する圧力センサ82と、を備える。なお、ポンプ70の吐出液路118は、制御弁ユニット30の上流側液路104に連通している。
制御弁ユニット30の下流側液路である車輪ブレーキ液路106a、106bは、それぞれ、車輪ブレーキFR、RLを構成するホイールシリンダの一例としてのブレーキキャリパ18a、18bに連通している。車輪ブレーキFRは、ブレーキキャリパ18aとブレーキディスク等のブレーキ部材とから構成され、車輪ブレーキRLは、ブレーキキャリパ18bとブレーキディスク等のブレーキ部材とから構成される。
車輪ブレーキ液路106a、106b側から制御弁ユニット30を通じてブレーキ液を逃がすための逃がし液路108が、吸入液路110を介してリザーバ34に連通している。
制御弁ユニット30は、常開型の比例電磁弁である入口弁51、61と、常閉型の電磁弁である出口弁52、62と、チェック弁53、63とを備える。入口弁51、61は、ECU16からの電磁コイルへの通電量によって、弁の開弁量が自由に調整可能になっている。なお、公知のように、入口弁51、出口弁52、及びチェック弁53を、並びに入口弁61、出口弁62、及びチェック弁63を、それぞれ1個の3ポジション電磁弁で代替してもよい。
制御弁ユニット30は、上流側液路104と、車輪ブレーキ液路106a、106bと、逃がし液路108と、の交差部分に設けられていて、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a、106bを連通(開放)して逃がし液路108を遮断する増圧状態、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a、106bを遮断して逃がし液路108を連通(開放)する減圧状態、及び車輪ブレーキ液路106a、106bを上流側液路104及び逃がし液路108から遮断する保持状態を切り替える機能を有している。つまり、制御弁ユニット30は、ブレーキキャリパ18a、18bに作用する車輪ブレーキ液路106a、106bのブレーキ液圧、換言すれば、制御液圧としてのキャリパ圧Pcca、Pccbを増圧する状態、減圧する状態又は保持する状態に切り替える。なお、以下の説明において、区別して説明する必要がある場合を除き、キャリパ圧Pcca、Pccbは、代表してキャリパ圧Pccという。
チェック弁53、63は、入口弁51、61にそれぞれ並列に設けられ、車輪ブレーキ液路106a、106bから上流側液路104へのブレーキ液の流入のみを許容する。
入口弁51、61は、それぞれ、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a、106bとの間に設けられ、液圧制御が行われない通常時の開いているとき(常開時)に、マスタシリンダ12から各車輪ブレーキFR、RLへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。
その一方、入口弁51、61は、液圧制御中に、車輪がロックしそうになったときに閉弁されることで、ブレーキペダル20から各車輪ブレーキFR、RLに伝達するブレーキ液圧を遮断する。さらに、その液圧制御中に、入口弁51、61は、ECU16によって所定の開弁量となるように制御されることで、各車輪ブレーキFR、RL内のブレーキ液圧を所定の傾きで増加させる。
出口弁52、62は、それぞれ、車輪ブレーキ液路106a、106bと逃がし液路108との間に設けられ、閉弁状態にあるときにブレーキキャリパ18a、18b側からリザーバ34側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときにブレーキキャリパ18a、18b側からリザーバ34側へのブレーキ液の流入を許容する。
リザーバ34は、吸入液路110に設けられており、ブレーキキャリパ18a、18b及び車輪ブレーキ液路106a、106bから制御弁ユニット30の出口弁52、62を介し逃がし液路108及び吸入液路110を通じて逃がされたブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。
ポンプ70は、吸入液路110と吐出液路118との間に設けられ、モータ72の回転力によって駆動され、リザーバ34に一時的に貯留されたブレーキ液を、吸入液路110を通じて吸入し圧力を高めてマスタシリンダ12側の吐出液路118に吐出する。このようにリザーバ34に貯留されたブレーキ液を上流側液路104に連通される吐出液路118に還流させることにより、ブレーキ液をマスタシリンダ12側に戻す。
ECU16は、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)とRAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器、及び駆動回路等の入出力装置、並びに計時部としてのタイマ(計時器)等を有しており、入力信号等に基づきCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、例えば制御部、演算部、及び処理部等として機能する。これらの機能は、ハードウエアにより実現することもできる。
この実施形態において、ECU16は、ハードウエアでも実現可能な圧力異常判定手段90、減圧量算出手段91、モータ負荷モニタ手段93、及びキャリパ圧推定手段96としての機能を有している。圧力異常判定手段90は、後述するフェールカウンタ102の機能をも備える。
ECU16は、また、常開型の比例電磁弁である入口弁51、61の弁体を駆動する電磁コイルを励磁する通電量に係る電流値を0値から最大値又は最大値近傍まで調節することにより、開弁量が最大の弁の全開状態から弁の閉弁状態までの間での所定量開弁(所定開弁量)状態に調節し、消磁することにより開弁状態(全開状態)にする。また、ECU16は、常閉型の電磁弁である出口弁52、62の弁体を駆動する電磁コイルを励磁することにより開弁状態とし、消磁することにより閉弁状態にする。
モータ72は、ブレーキ系統K1、K2中のポンプ70の共通の動力源であり、ECU16からのモータ駆動信号Sdに基づいて作動する。
さらに、ECU16は、4つの車輪(不図示)にそれぞれ設けられた車輪速センサ19からの車輪の回転速度(車輪速度)Vw、モータ72の回転数センサ(不図示)からの回転数(モータ回転数)Nm、及び圧力センサ82で検出したマスタシリンダ圧Pmc等の各検出信号を取り込む。
ECU16は、取り込んだ各前記検出信号に基づき、制御弁ユニット30(入口弁51、61、出口弁52、62からなる各電磁弁)、及びモータ72等を制御することで液圧制御を行う。
また、ECU16の圧力異常判定手段90は、取り込んだ各前記検出信号及びモータ負荷モニタ手段93の監視結果等に基づき、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わり等を原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているか否かを判定する。
ECU16の減圧量算出手段91は、液圧制御時に、後述するようにキャリパ圧Pccの減圧量Pdを算出する。
さらに、ECU16のモータ負荷モニタ手段93は、モータ72にかかる負荷(モータ負荷Lmという。)を監視し、監視結果を圧力異常判定手段90に知らせる(送る)。
この実施形態において、モータ負荷モニタ手段93は、監視対象のモータ負荷Lmとして、モータ回転数Nmを監視する。モータ回転数Nmは、負荷がかからない空転(空回り)状態では一定回転数(無負荷回転数Nm0)になる。また、モータ72により駆動されブレーキ液をリザーバ34から汲み上げるポンプ70の負荷が増加するとモータ回転数Nmは、無負荷回転数Nm0から比例的に下がり、減少すると比例的に上がる。
そこで、モータ負荷モニタ手段93は、モータ回転数Nmが、モータ72が空回りしているか否かを判定する上側回転数閾値としての上側閾値Nmhとの大小関係、及びモータ72に負荷がかかっていると判定する下側回転数閾値としての下側閾値Nml(Nml<Nmh)との大小関係等を監視する。
なお、図1においては、煩雑さを回避するために、ECU16と各電磁弁との間、ECU16とモータ72との間、及びECU16と各種センサとの間の各配線の図示を省略している。
基本的には以上のように構成されるこの実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置10の動作について、次に、<<基本的な動作>>、及び<<制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理>>の順に説明する。
<<基本的な動作>>
車両用ブレーキ液圧制御装置10の基本的な動作は、この種の公知・周知のブレーキ制御装置と同様であるので、ここでは、その詳細な説明は省略し概略的に説明する。
例えば、ブレーキを作用させるため、ブレーキペダル20が操作されると、ペダル作動スイッチ(不図示)により、その操作に応じた検出信号がECU16に入力される。
このとき、ブレーキペダル20の操作に応じた液圧のブレーキ液がマスタシリンダ12から制御弁ユニット30を通じてブレーキキャリパ18a、18bのシリンダに供給され、車輪ブレーキFR、RLに制動力が付与される。この場合、マスタシリンダ圧Pmc及びキャリパ圧Pccは、上流側液路104と車輪ブレーキ液路106a(106b)の液路が連通しているので同圧である。
ECU16が、ABS制御等の液圧制御が必要であると判断し、例えば、ブレーキ液圧を減圧すべきであると判断すると、ECU16により出口弁52、62が励磁されて開弁状態にされると同時に入口弁51、61が励磁されて閉弁状態にされることで瞬時に液圧制御における減圧制御が開始される。その結果、ブレーキキャリパ18a、18bのブレーキ液が出口弁52、62を介し、逃がし液路108及び吸入液路110を通じてリザーバ34へ排出され車輪ブレーキ液路106a、106bのブレーキ液圧、すなわちキャリパ圧Pcc(Pcca、Pccb)が減圧される。キャリパ圧Pccが減圧されている場合の液圧制御の制御モードを減圧モードという。
なお、ECU16は、出口弁52、62を励磁すると同時にモータ72を駆動することにより、リザーバ34に貯留されたブレーキ液がポンプ70によって吸入液路110を通じて吸入され、吐出液路118を介して上流側液路104、換言すれば、マスタシリンダ12側に還流される。
ECU16が、ブレーキ液圧を保持すべきであると判断すると、出口弁52、62を消磁して閉弁する。これにより、車輪ブレーキ液路106a、106bは、上流側液路104及び逃がし液路108に対して非連通状態とされ、キャリパ圧Pccが一定に保持される。キャリパ圧Pccが保持されている場合の液圧制御の制御モードを保持モードという。
ECU16が、ブレーキ液圧を増圧すべきであると判断すると、出口弁52、62が消磁されて閉弁され、入口弁51、61が高めの電流値から徐々に低くされて入口弁51、61が所定の開弁量で開弁される結果、キャリパ圧Pccが徐々に増圧される。キャリパ圧Pccが増圧されている場合の液圧制御の制御モードを増圧モードという。
以下、ABS制御等の液圧制御が不要と判断されるまで、このような減圧モード、保持モード、及び増圧モードの液圧制御が適宜選択されて実行される。
<<制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理>>
制御液圧としてのキャリパ圧Pccの異常判定処理は、ECU16によりABS制御等の液圧制御が必要であると判断されたその液圧制御中に、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常(キャリパ圧Pccの顕著な不足)が生じているか否かをECU16の圧力異常判定手段90により車輪(一輪)毎に判定する処理である。
以下、A.第1実施例(キャリパ圧Pccの減圧量Pd及び判定中断条件で判定、又は入口弁51、61の閉時間及び判定中断条件で判定)、B.第2実施例(推定キャリパ圧Pecc及び判定中断条件で判定)の順に説明する。なお、煩雑さを回避し、理解の便宜のために、原則として、後輪左側の車輪ブレーキRL(入口弁61と出口弁62)を対象として説明する。
A.第1実施例(キャリパ圧Pccの減圧量Pd及び判定中断条件で判定、又は入口弁51、61の閉時間及び判定中断条件で判定)
図2のフローチャートを参照して説明する。なお、以下に説明するフローチャートに係るプログラムの実行主体は、ECU16(のCPU)である。
図2のフローチャートは、ABS制御等の液圧制御中、所定(一定)の微小な制御時間(制御サイクル、処理サイクル又はサイクルタイムという。)毎に繰り返し実行される。
ステップS1にて、ECU16は、各車輪速センサ19からの各車輪速度Vw、圧力センサ82からのマスタシリンダ圧Pmc、及びモータ負荷モニタ手段93からのモータ回転数Nm等各種センサからの検出信号(各種センサ値)を取得する。取得した検出信号に基づき制御に必要になる物理量を、さらに、そのステップS1にて算出する。
ステップS2にて、ECU16は、液圧制御の制御モードが減圧モードになっているか否かを判定する。
減圧モードになっているとECU16が判定した(ステップS2:YES)場合、減圧量算出手段91は、この減圧モード下で、ステップS3にて、次の(1)式に基づき、左辺の現在の減圧量Pd(Pdは、累積した減圧量を表し、Pd≧0の値を採る。)を算出する。
減圧量Pd=前回減圧量Pd´+今回減圧分 …(1)
ここで、右辺の今回減圧分(今回減圧分も0以上の値を採る。)は、今回の制御サイクルでの出口弁62の開時間に比例する減圧量である。また、右辺の前回減圧量Pd´は、前回算出された減圧量(前回時点までに累積された減圧量)を示す。減圧量Pdは、増圧モードの開始時又は液圧制御の終了時にゼロ値にクリアされる。ステップS3の後、ステップS6に移行する。
なお、ステップS2の判定にて、制御モードが減圧モードではない(ステップS2:NO)と判定した場合には、ステップS4にて、制御モードが保持モード(入口弁61及び出口弁62が閉弁状態)になっているか否かを判定する。ステップS4の判定で制御モードが保持モードである(ステップS4:YES)場合、ステップS6へ移行する。
ステップS4の判定にて保持モードではない(ステップS4:NO)と判定した場合、ステップS5にて(2)式の左辺の現在の減圧量Pdをクリアして(減圧量Pd=0)、ステップS6の判定処理を実行する。
ステップS6の判定処理では、ステップS3で算出した減圧量Pdが次の(2)式に示すように減圧量閾値Pdth以上の値になり、且つ制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理の判定中断条件(後述)が不成立になっているか否かを判定する。
減圧量Pd≧減圧量閾値Pdth …(2)
ステップS3で算出した減圧量Pdが減圧量閾値Pdth未満の減圧量である(Pd<Pdth、ステップS6:NO)場合、又は異常判定の判定中断条件が成立している(ステップS6:NO)場合、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧(キャリパ圧Pcc)に異常(キャリパ圧Pccの顕著な不足)が生じていないと判定する。
そして、ステップS6の判定が否定的(ステップS6:NO)である場合、ステップS7にて、フェールカウンタ102のカウント値Cf(本発明の計時時間に相当)をリセット(カウント値Cf=0)し、ステップS8にて、異常判定フラグFbsをクリア(Fbs=0)して、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
なお、ステップS6の判定が否定的(ステップS6:NO)な場合とは、液圧制御中に減圧制御が発生したときの減圧量Pdが減圧量閾値Pdth未満の値(Pd<Pdth)になっている場合や、異常判定の判定中断条件{モータ回転数Nmの下降(モータ負荷Lmの上昇)、及び/又はモータ低回転数(Nm≦Nml)(モータ負荷状態)}が成立している場合である。
なお、異常判定の判定中断条件の詳細については後述するが、例えば減圧制御開始後にモータ負荷Lmが上昇した(モータ回転数Nmが下降した)ということは、減圧制御によってブレーキ液圧、すなわちキャリパ圧Pccがリザーバ34に逃がされたということであって、すなわち、減圧制御開始前までは制御液圧による制動がかかっていたことを意味することから異常ではないとして異常判定を中断する。
一方、ステップS6の判定が肯定的(ステップS6:YES)であった場合、すなわち、ステップS3で算出した現在の減圧量Pdが減圧量閾値Pdth以上の値であって、且つ異常判定の判定中断条件{モータ回転数Nmの下降及び/又はモータ低回転数(Nm≦Nml)}が不成立(Nm>Nml等)となっている場合には、ステップS9にて、フェールカウンタ102を加算(累算)する{カウント値Cfをカウントアップ(Cf=Cf+1)する}。
次いで、ステップS10にて、フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth1以上の値(Cf≧Cth1)になったか否かを判定する。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth1未満の値(Cf<Cth1)である(ステップS10:NO)場合には、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth1以上の値(Cf≧Cth1)になった(ステップS10:YES)場合、すなわち、Pd≧Pdth及び判定中断条件不成立の期間(ステップS6:YESの期間)が、カウント閾値Cth1に対応する時間継続したとき、圧力異常判定手段90は、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因として前記制御液圧(キャリパ圧Pcc)に異常が生じているとみなし、ステップS11にて異常判定フラグFbsをセット(Fbs=1)する。
この場合、ステップS12にて、制御液圧に異常が生じていると判定する。
[第1実施例の具体的動作例]
第1実施例の具体的動作例について、図3〜図5のタイムチャートを参照して説明する。
例えば、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として誤作動が生じ、この誤作動により制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常な低下状態が発生した場合、この誤作動を誘発している液圧制御を直ちに停止させなければならない。その場合、制御液圧の異常な低下状態の発生を判定することが必要になる。
図3は、この第1実施例の圧力異常判定手段90による異常判定処理を説明するタイムチャートである。
図3の例では、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として、時点t1で誤作動による減圧制御(例えば、入口弁61が閉弁、出口弁62が開弁)が発生したものとする。時点t1で減圧制御が開始されると、実キャリパ圧であるキャリパ圧Pccが減圧する。ここで、減圧量Pdは、減圧を開始する時点t1のキャリパ圧Pccを基準のゼロ値として算出される。
図4に図3の時点t1近傍の拡大図を示す。図3及び図4に示すように、減圧開始時点t1のキャリパ圧Pccを基準のゼロ値(Pd=0)としたキャリパ圧Pccの減圧量Pdが、減圧量閾値Pdth(値は予めシミュレーション等により定める)まで低下した時点t2にて、フェールカウンタ102のカウントを開始させる(図3参照)。なお、フェールカウンタ102のカウント値Cfは、所定量(減圧量閾値)分だけ減圧した後の入口弁閉弁継続時間を意味し、入口弁61の開弁時にはリセットされる。
フェールカウンタ102のカウント値Cfがカウント閾値Cth1(予めシミュレーション等により決定しておく。)になった時点t4にて、制御液圧であるキャリパ圧PccがPcc≒0とみなされる異常状態になったものと判定する(異常判定の正しい判定が成立)。このようにすれば、偶発的な誤作動を正しく判定することができる。なお、時点t3は、キャリパ圧がゼロ値に近くなった時点を示している。
・判定中断条件の説明
次に、上述した第1実施例の判定中断条件(モータ回転数Nmの下降)に関して図5のタイムチャートを参照して詳細に説明すると、入口弁61が開弁状態、出口弁62が閉弁状態の時点t11にて、ブレーキペダル20が踏み込まれることでキャリパ圧Pccが上昇を開始する。
これにより、車輪速度Vwは、時点t11までの一定速度の状態から該時点t11から減速状態に入る。
時点t12にて、液圧制御、例えばEBD制御が開始され、入口弁61が閉弁状態とされ、出口弁62が閉弁状態とされるキャリパ圧Pccが一定値の保持モードに制御される。
この時点t12にて、モータ72は回転を開始されるが、リザーバ34には、ブレーキ液が貯留されていないので、モータ72は、無負荷回転数Nm0に向かって上昇し、上昇後、時点t13までは無負荷回転数Nm0で回転する。つまり、モータ72は、空転(空回り)している。
上述した時点t12にて保持モードに入り、その後、時点t13にて、減圧開始条件を満たすと、入口弁61が閉弁状態のまま出口弁62が開弁状態にされることで減圧モードが開始される。
その時点t13にて、車輪ブレーキ液路106bを通じて、ブレーキキャリパ18bのブレーキ液が、出口弁62を介し、逃がし液路108及び吸入液路110を通じてリザーバ34へ排出される。そして、モータ72が駆動されているので、リザーバ34に貯留されたブレーキ液が、モータ72により駆動されるポンプ70によって吸入液路110を通じて吸入され、吐出液路118を介して上流側液路104、換言すれば、マスタシリンダ12側に還流される。このため、時点t13以降、モータ回転数Nmが、モータ無負荷回転数Nm0から低下する。
モータ回転数Nmは、時点t14にて、モータ負荷Lmが比較的に少ない(モータ72が空回りしている)とみなす上側閾値Nmhを下回る。
さらに、時点t15にてキャリパ圧Pccの減圧量Pdが減圧量閾値Pdthを下回る(図3の時点t2近傍を参照)。
このため、図5の時点t15にて、条件Pd≧Pdthを満たし、且つ判定中断条件「(Nm≦Nml)が不成立→Nm>Nml」を満たしているので、フェールカウンタ102は、部分拡大図に示すように、この時点t15にてカウントを開始する(上述したステップS6:YES、及びステップ9の処理に対応する。)。
時点t16にて、モータ回転数Nmが下側閾値Nml以下(Nm≦Nml)になると、判定中断条件「(Nm≦Nml)が不成立→Nm>Nml」を満たさなくなるので、フェールカウンタ102の時点t15からの計時が時点t16にて中断され、カウント値Cfがリセットされる(上述したステップS6:NO、及びステップS7の処理に対応する。)。
時点t16近傍にて液圧制御モードが保持モードとされ、時点t17〜時点t18近傍にてリザーバ34のブレーキ液が汲みきられると、モータ回転数Nmは、モータ無負荷回転数Nm0に向かって上昇する。その時点t17において、Nm≦Nmlが不成立(Nm>Nml)及びPd≦Pdthとなるのでフェールカウンタ102がカウントを開始する(上述したステップS6:YES、及びステップS9の処理に対応する。)。
以降、時点t19にて、保持モードから減圧モードに入ると、ブレーキ液圧がリザーバ34に逃がされることで、モータ回転数Nmがモータ負荷回転数Nm0から低下する。時点t20にてモータ回転数Nmが上側閾値Nmhを下回り、さらに時点t21にて下側閾値Nmlを下回る(Nm≦Nml)と、ステップS6の判定中断条件が成立(Nm≦Nml)し、フェールカウンタ102がリセットされる。つまり、時点t13からの減圧モード、時点t15からの保持モード、時点t19からの減圧モードの場合に対応するので、時点t21にて、ステップS6の判定が否定的(Nm≦Nmlが成立)になり、フェールカウンタ102がリセットされる。
さらに、時点t23にて、t17と同様にフェールカウンタ102のカウントを開始される。
このようにして、例えば、時点t15でカウントが開始されたフェールカウンタ102は、徐々に増加する破線で示すように、時点t22のカウント閾値Cth1までカウントされなくなり、その時点t22でのステップ状の破線に示すような異常判定の誤判定を抑制できる。
B.第2実施例(キャリパ圧Pccの推定圧である推定キャリパ圧Pecc及び上述した判定中断条件で判定)
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6のフローチャートは、ABS制御等の液圧制御中、所定の微小な制御時間(制御サイクル又はサイクルタイムという。)毎に繰り返し実行される。
ステップS21にて、ステップS1と同様に、ECU16は、各車輪速センサ19からの各車輪速度Vw、圧力センサ82からのマスタシリンダ圧Pmc、及びモータ負荷モニタ手段93からのモータ回転数Nm等各種センサからの検出信号(各種センサ値)を取得する。また、ステップS1にて、取得した検出信号に基づき制御に必要になる推定キャリパ圧Pecc等の物理量を算出する。
ここで、推定キャリパ圧Peccは、液圧制御開始時におけるマスタシリンダ圧Pmcと、液圧制御開始時以降の入口弁61と出口弁62の開閉制御履歴とに基づいて算出される。
次いで、ステップS22にて、ECU16は、ステップS21で算出された推定キャリパ圧Peccが(3)式に示すようにキャリパ圧閾値Pccthを下回る値となり、且つ上述した判定中断条件(Nm下降及び/又はNm≦Nml)が不成立になっているか否かを判定する。
推定キャリパ圧Pecc<キャリパ圧閾値Pccth …(3)
推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccth以上の圧力である(ステップS22:NO)場合、又は異常判定の判定中断条件が成立している(ステップS22:NO、Pecc≧Pccth又はNm≦Nml等)場合、前記プログラムと前記メモリに記憶されたデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常(キャリパ圧Pccの顕著な不足)が生じていないと判定する。
ステップS22の判定が否定的(ステップS22:NO)である場合、ステップS23にて、フェールカウンタ102のカウント値Cfをリセット(カウント値Cf=0)し、ステップS24にて、異常判定フラグFbsをクリアして、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
その一方、ステップS22の判定が肯定的(ステップS22:YES)であった場合、すなわち、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccth未満の値であって、且つ制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常判定処理の上述した判定中断条件{モータ回転数Nmの下降(モータ負荷の上昇)、又はモータ低回転数(Nm≦Nml)(モータ負荷状態)}が不成立になっている(Pecc<Pccth and Nm>Nml等)場合には、ステップS25にて、フェールカウンタ102を加算(累算)する{カウント値Cfをカウントアップ(Cf=Cf+1)する}。
次いで、ステップS26にて、フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth2(シミュレーション等により設定)以上の値(Cf≧Cth2)になったか否かを判定する。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth2未満の値(Cf<Cth2)である(ステップS26:NO)場合には、今回の処理を終了し、次回の制御サイクルで上述のような処理を繰り返す。
フェールカウンタ102のカウント値Cfが、カウント閾値Cth2以上の値(Cf≧Cth2)になった(ステップS26:YES)場合、圧力異常判定手段90は、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因として前記制御液圧(キャリパ圧Pcc)に異常が生じているとみなし、ステップS27にて異常判定フラグFbsセットする。
この場合、ステップS28にて、制御液圧に異常が生じていると判定する。
[第2実施例の具体的動作例]
第2実施例の具体的動作例について、図7及び図8のタイムチャートを参照して説明する。
例えば、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として誤作動が生じ、この誤作動により制御液圧(キャリパ圧Pcc)の異常な低下状態が発生した場合、この誤作動を誘発している液圧制御を直ちに停止させなければならない。その場合、制御液圧の異常な低下状態の発生を判定することが必要になる。
具体的に、液圧制御における減圧時以降の推定キャリパ圧Peccを算出することで制御液圧の異常を判断できる。
図7は、この第2実施例の圧力異常判定手段90による異常判定処理を説明するタイムチャートである。
図7の例では、プログラム及び/又はデータの偶発的な書き換わりを原因として、時点t31で誤作動による減圧制御が発生したものとすると、時点t31以降、実キャリパ圧であるキャリパ圧Pccが減圧する。
キャリパ圧推定手段96は、時点t31から減圧する推定キャリパ圧Peccを算出し、時点t32にて、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthを下回ったとき、フェールカウンタ102のカウントを開始させる。フェールカウンタ102のカウント値Cfがカウント閾値Cth2になった時点t33にて、制御液圧であるキャリパ圧PccがPcc≒0とみなされる異常状態になったものと判定される(異常判定の正しい判定が成立)。このようにすれば、偶発的な誤作動を正しく判定することができる。
・判定中断条件の説明
次に、この第2実施例について、上述した判定中断条件(モータ回転数Nm≦Nml)に関して、図8のタイムチャートを参照して説明すると、時点t41にて、通常制御下(入口弁61が開弁状態、出口弁62が閉弁状態)でブレーキペダル20に踏力が加えられると、時点t41以降、実キャリパ圧であるキャリパ圧Pccが比例的に増圧される。
時点t41にてブレーキペダル20に踏力が加えられた後、車輪のスリップ量が所定値以上になると、時点t42にてモータ72の駆動が開始され、以降モータ回転数Nmが無負荷回転数Nm0まで高められる。
その後、時点t43にて、車輪速度Vwのさらなる急減に対応して液圧制御が開始され、入口弁61が閉弁状態、出口弁62が減圧パルスによる開弁状態である減圧モードに制御される。図8の例では、時点t43から時点46の間で推定キャリパ圧Peccの減圧時の推定精度が一時的に低下して実キャリパ圧Pccと推定キャリパ圧Peccが乖離するものとする。
この結果、時点46にて、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthを下回る。
一方、時点t43で減圧モードが開始されるとリザーバ34にブレーキ液圧が逃がされることで、モータ回転数Nmがモータ無負荷回転数Nm0から下降し、時点t44では上側閾値Nmhを下回り、さらに時点t45で下側閾値Nmlを下回る。
時点t46前後ではNm≦Nmlとなっており、判定中断条件が成立している(上述したステップS22:NOに対応する。)ので、時点t46にて、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthを下回っても、フェールカウンタ102はカウントを開始しない(上述したステップS23のフェールカウンタ リセットに対応する。)。
時点t46以降、時点t50まで、保持モードに制御される。
時点t46近傍にて液圧制御モードが保持モードとされ、時点t47〜時点t48近傍にてリザーバ34のブレーキ液が汲みきられると、モータ回転数Nmは、モータ無負荷回転数Nm0に向かって上昇する。その時点t48において、Nm≦Nmlが不成立(Nm>Nml)及びPd≦Pdthとなるのでフェールカウンタ102がカウントを開始する(上述したステップS22:YES、及びステップS25の処理に対応する。)。
時点t48では、推定キャリパ圧Peccもキャリパ圧閾値Pccth未満になっているので、フェールカウンタ102がカウントを開始する(上述のステップS22:YES、及びステップS25に対応する。)。
以降、時点t50近傍において液圧制御が増圧モードにされると、時点t50において、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccth以上の値となるので、フェールカウンタ102のカウント値Cfがリセットされる。
このようにして、例えば、時点t46からカウント値Cfが、徐々に増加する破線で示すように、推定キャリパ圧Peccが時点t46でキャリパ圧閾値Pccthを下回っても、フェールカウンタ102のカウントが開始されることがない。
その結果、時点t49でカウント閾値Cth2までカウントされなくなり、その時点t49でのステップ状の破線に示すような異常判定の誤判定を抑制できる。
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、上述した実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置10は、車輪ブレーキFR、RLに作用する制御液圧としてのキャリパ圧Pccを制御する入口弁51、61と出口弁52、62とを有し液圧源としてのマスタシリンダ12と車輪ブレーキFR、RLとの間に設けられた制御弁ユニット30と、出口弁52、62を通じて車輪ブレーキFR、RLから逃がされたブレーキ液を貯留するリザーバ34と、リザーバ34に貯留された前記ブレーキ液を吸入してマスタシリンダ12側に吐出するポンプ70と、ポンプ70を駆動するモータ72と、制御弁ユニット30及びモータ72を制御するプログラムと該プログラムにより参照されるデータとを記憶するメモリを有するECU16と、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因としてキャリパ圧Pccに異常が生じているか否かを判定する圧力異常判定手段90と、モータ72にかかるモータ負荷Lmを監視するモータ負荷モニタ手段93と、液圧制御における減圧制御の直後にモータ負荷Lmの上昇が発生したか否かを判定し、モータ負荷Lmの上昇が発生したと判定された場合、圧力異常判定手段90による判定を中断するようにしている。
このように、液圧制御における減圧制御の直後にモータ負荷Lmの上昇が発生したことがモータ負荷モニタ手段93により検出された場合には、前記減圧制御により車輪ブレーキFR、RLから逃がされリザーバ34に貯留されたブレーキ液がモータ72により駆動されるポンプ70を通じて吸入され入口弁51、61の上流側液路104(マスタシリンダ12)側に吐出されていると判断できるので、減圧制御の前は車輪ブレーキFR、RLに制御液圧としてのキャリパ圧Pccによる制動力がかかっていたとみなせる。
したがって、この場合には、圧力異常判定手段90による判定を中断する。これにより、制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとする誤判定を抑制できる。
この実施形態によれば、液圧制御における減圧制御の前後のモータ負荷Lmをモータ負荷モニタ手段93により監視し、減圧後にモータ負荷Lmが上昇した場合には、減圧前には、車輪ブレーキFR、RLに制御液圧であるキャリパ圧Pccがかかっていたとみなせるので、少なくとも減圧前には圧力異常判定手段90による判定を中断することができ、車輪ブレーキFR、RLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccの異常の有無の誤判定が抑制される。
この場合、圧力異常判定手段90及びモータ負荷モニタ手段93は、キャリパ圧Pccの減圧制御の直前でのモータ負荷として監視されるモータ回転数Nmが上側閾値Nmh以上であることにより、モータ負荷Lmが小さくモータ72が空回り(空転)しているとみなし、且つ前記減圧制御の直後に、モータ回転数Nmが上側閾値Nmhより低い下側閾値Nml以下になった場合には、モータ負荷Lmの上昇があったとみなし、リザーバ34に貯留されたブレーキ液がモータ72により駆動されるポンプ70により確実に汲み上げられてマスタシリンダ12側の上流側液路104に吐出されているとより確実に判定することができる。これによりモータ72の負荷Lmの上昇をより確実に判定することができる。
また、圧力異常判定手段90は、液圧制御中に、入口弁51、61の閉弁後の制御液圧としてのキャリパ圧Pccの低下開始(図3の時点t1)からフェールカウンタ102によりカウントを開始することで時間を計時し、圧力異常判定手段90による判定の前記中断がされないまま、計時時間(例えば、カウント値Cf)が第1閾値時間Cth1を上回ったとき、制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとみなし(時点t4)、その一方、モータ負荷Lmの上昇が発生したと判定された(図5の時点t16、時点t21)場合には、前記計時時間(カウント値)がリセットされるので、プログラムとデータの偶発的な書き換わりを原因として前記制御液圧に異常が生じているとする誤判定を抑制できる。
このように、入口弁51、61閉弁後の制御液圧としてのキャリパ圧Pccの低下後からの計時時間(又はカウント値Cf)が、圧力異常判定手段90による判定の前記中断処理がされないまま、第1閾値時間(例えば、カウント閾値Cth1)を上回った(図3の時点t4)とき、キャリパ圧Pccに異常が生じていると判定するので、プログラムとデータの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとする誤判定を抑制できる。
さらにまた、圧力異常判定手段90は、液圧制御中に、車輪ブレーキFR、FLに作用する制御液圧であるキャリパ圧Pccを推定し、推定キャリパ圧Peccが液圧閾値であるキャリパ圧閾値Pccthより低下(図7の時点t32)後からの時間をフェールカウンタ102によりカウント(計時)し、カウント値Cf(計時時間)がカウント閾値Cth2(第2閾値時間)を上回った(時点t33)とき、制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとみなし、モータ負荷Lmの上昇が発生したと判定された場合には、計時時間をリセット(図8の時点t45〜t48)するように制御している。
このように制御することで、例えば、一時的なノイズ等によって一時的に制御液圧の推定値である推定キャリパ圧Peccの推定精度が低くなり、推定キャリパ圧Peccがキャリパ圧閾値Pccthより低下したとしても、減速制御前後(図8の時点t48の前後)にモータ負荷Lmの上昇(モータ回転数Nmの下降)を検出した場合にはフェールカウンタ102のカウント値(計時)がリセット(時点t45〜t48)されるので、前記プログラムと前記データの偶発的な書き換わりを原因として制御液圧としてのキャリパ圧Pccに異常が生じているとする誤判定を抑制できる。
なお、モータ負荷モニタ手段93による監視対象のモータ負荷Lmとしては、モータ負荷Lmの変動に応じて比例的に変動する物理量を監視すればよい。したがって、上述したモータ負荷Lmの増加に負比例して減少するモータ回転数Nmの他、例えば、モータ負荷Lmの増加に比例して増加するモータ電流Im、モータ電圧Vm、あるいはモータ駆動信号Sdのデューティ比により監視することとしてもよく、簡易且つ廉価に監視することができる。トルクセンサによりモータトルクを監視してもよい。
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。