JP6668803B2 - 光学部材、表示装置 - Google Patents
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第1の発明は、外界の光を透過するとともに、映像源(11)から投射された映像光を観察者側に反射する光学部材(1)であって、第1支持体(10)と、前記第1支持体の観察者側とは反対の背面側に設けられる光制御層(20)と、前記光制御層の背面側に設けられる第2支持体(40)とを備え、前記光制御層は、第1傾斜面(22b)及び第2傾斜面(22c)を有する単位光学形状部(22a)が複数配列された第1光学形状層(22)と、前記第1光学形状層の前記単位光学形状部が設けられた側の面に積層される第2光学形状層(23)とから構成され、前記第1傾斜面の少なくとも一部には、入射した光の少なくとも一部を反射する反射層(24)が設けられ、前記第1光学形状層は、ガラス転移温度Tgが、Tg≧90度の樹脂により形成されていること、を特徴とする光学部材である。
第2の発明は、第1の発明の光学部材(1)において、前記第1光学形状層(22)は、ビッカース硬度Hが、H≧15HV0.01を満たす樹脂により形成されていること、を特徴とする光学部材である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の光学部材(1)において、前記第2光学形状層(23)は、ガラス転移温度Tgが、Tg≧90度の樹脂により形成されていること、を特徴とする光学部材である。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかの光学部材(1)において、前記反射層(24)は、入射した光のうち、一部を反射し、その他を透過させること、を特徴とする光学部材である。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明までのいずれかの光学部材(1)と、前記光学部材に映像光を投影する映像源(11)と、を備える表示装置(100)である。
本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
図1は、実施形態の表示装置100を説明する図である。図1は、表示装置100において、フロントウィンドウ1の幾何学的中心を通り、フロントウィンドウ1の厚み方向に平行であって、単位光学形状部22a(後述)の配列方向に平行な断面における断面形状を示している。
なお、図1を含め以下の説明においては、理解を容易にするために、フロントウィンドウ1の左右方向(幅方向)をX方向、上下方向(高さ方向)をY方向、厚み方向をZ方向とする。また、フロントウィンドウ1を中心として、厚み方向(Z方向)の−Z側を観察者側(運転者側、表面側、車内側)とし、+Z側を背面側(裏面側、車外側)とする。
本実施形態では、光学部材を、自動車のフロントウィンドウ1として用いる例を示すが、これに限定されるものでなく、サイドウィンドウや、リアウィンドウ等に用いてもよく、また、自動車以外の乗り物等の窓等に用いるようにしてもよい。
映像源2は、映像光を表示するマイクロディスプレイであり、例えば、透過型の液晶表示デバイス、反射型の液晶表示デバイス、有機EL等により構成される。本実施形態では、映像源2は、自動車の速度や、エンジンの回転数等の情報に係る映像光を出射する。
投射光学系3は、映像源2に表示された映像光をフロントウィンドウ1に投射する複数のレンズ群から構成された光学系である。
映像源2及び投射光学系3は、一体型のプロジェクタとして構成され、フロントウィンドウ1の車内側(−Z側)に設けられたインストルメントパネル(不図示)内において、運転者の正面に配置されている。
図2は、フロントウィンドウ1の構成を説明する図である。図2(a)は、フロントウィンドウ1の部分断面図である。図2(b)は、第1光学形状層22(後述)を背面側(+Z側)から観察した様子を示す図であり、第1光学形状層22の背面側に設けられた第2光学形状層23、中間層50、第2ガラス基板40の図示は省略している。
図2(a)に示すように、フロントウィンドウ1は、観察者側(車内側、−Z側)から順に、第1ガラス基板(第1支持体)10、中間層30、光学シート(光制御層)20、中間層50、第2ガラス基板(第2支持体)40が積層されている。
光学シート20は、観察者側から順に、基材層21、第1光学形状層22、反射層24、第2光学形状層23が積層されている。
この単位光学形状部22aは、左右方向(X方向)に延在し、上下方向(Y方向)に沿って複数配列されている。また、単位光学形状部22aは、背面側(+Z側)に凸になるようにして、光学シート20の厚み方向(Z方向)に平行であって単位光学形状部22aの配列方向(Y方向)に平行な断面(YZ面)における断面形状が略三角形状、いわゆるプリズム形状に形成されている。
単位光学形状部22aは、第1傾斜面22bと、第1傾斜面22bに対向する第2傾斜面22cとから構成されており、第1傾斜面22bが、単位光学形状部22aの頂部tを挟んで第2傾斜面22cより上側(+Y側)に位置している。
第2傾斜面22cは、映像源2から出射した映像光が直接入射しない面であり、第2傾斜面22cの上側(+Y側)の端部が、下側(−Y側)の端部よりも、厚み方向(Z方向)において背面側(+Z側)に位置している。
なお、第1光学形状層22の観察者側(−Z側)の面は、基材層21と接合される面であり、基材層21を介して観察者側から光学シート20へ入射する映像光の入射面となる。
ここで、本実施形態のフロントウィンドウ1は、上述したように各ガラス基板間に光学シート20を挟み込んだ合わせガラス状の形態であるため、その合わせガラス状に製造する過程(後述する)において、各層を密着させるためにオートクレーブ圧力窯等を用いて、高温環境下(例えば、130度環境下)において、高い圧力(例えば、1.3MPa)がかけられる。そのため、仮に、第1光学形状層22を形成する樹脂にガラス転移温度Tgが90度未満の樹脂を用いた場合、第1光学形状層22に形成された単位光学形状部22aが、上記温度及び圧力によって歪んでしまい、それに伴い、第1傾斜面に形成された反射層24の反射面も歪んでしまう。このように反射面が歪んだフロントウィンドウに映像光を入射させた場合、反射層により反射した像は、ぼやけてしまい、映像の鮮明さが低下してしまう場合があった。
なお、第1光学形状層22を成形した場合に成形型からの離型性が悪化してしまうため、ビッカース硬度Hは、50HV0.01以下であることが望ましい。
ここで、第2光学形状層23は、上述の第1光学形状層22と同様の樹脂、すなわち、ガラス転移温度TgがTg≧90度の樹脂を用いてもよく、また、ビッカース硬度HがH≧15HV0.01を満たすようにしてもよい。この場合、フロントウィンドウ1の製造過程における第2光学形状層23の歪みの発生も抑制することができ、反射層24が歪んでしまうのをより効率よく抑止することができる。
反射層24は、光反射性の高い金属、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル等により形成されている。本実施形態において、反射層24は、アルミニウムを蒸着することにより形成されている。また、これに限らず、反射層24は、光反射性の高い金属をスパッタリングしたり、金属箔を転写したり、金属薄膜を含有した塗料を塗布したりする等により形成されてもよい。
第2ガラス基板40は、フロントウィンドウ1の最も背面側(+Z側)に配置された透明な部材である。第2ガラス基板40としては、第1ガラス基板10と同じ材料を用いることができる。また、第2ガラス基板40の厚みは、2〜3mmの範囲とすることが好ましい。
図1に示すように、映像源2から投射された映像光Lは、投射光学系3を介して、フロントウィンドウ1の観察者側の面へ入射する。フロントウィンドウ1に入射した映像光Lは、基材層21を透過して第1光学形状層22の観察者側の面に入射する。
そして、映像光Lの一部の光L1は、第1光学形状層22に形成された単位光学形状部22aの第1傾斜面22bに入射して、反射層24において観察者側へ反射する。
また、映像光Lの他の一部の光L2は、マジックミラー状に形成された反射層24を透過した後に、第2光学形状層23、第2中間層50、第2ガラス基板40を更に透過して、フロントウィンドウ1の背面側(+Z側)の面から出射する。
更に、映像光Lの他の一部の光L3は、フロントウィンドウ1の第1ガラス基板10の表面で反射することとなるが、フロントウィンドウ1の斜め上側(+Y側)へ反射するため、そのほとんどが観察者の眼Eには届くことはない。
このように、本実施形態のフロントウィンドウ1は、反射層24により映像源11から出射された自動車の速度等の情報の映像を運転者側へ反射させるとともに、フロントウィンドウ1越しに見える景色等の光を透過させることができる。これにより、自動車を運転する運転者は、前方(自動車の進行方向)から目を逸らせることなく、走行速度等の情報を確認することができ、安全に自動車を運転することができる。
図3は、光学シート20の製造方法を説明する図である。図3(a)〜(c)は、光学シート20が製造されるまでの過程を示す図である。
図3(a)に示すように、長尺状の長尺基材21’を筒状の巻取体Rから引き出しながら、長尺基材21’の上に第1光学形状層22(図2参照)を形成する樹脂をノズル110から充填する。続いて、長尺基材21’を、単位光学形状部22a(不図示)に対応する凹凸形状を有する成形ロール120により押圧して、長尺基材21’の上に第1光学形状層22が連続する第1光学形状帯22’を形成する。そして、第1光学形状帯22’を硬化させた後、長尺基材21’を巻取体Rに巻き取る。本実施形態の第1光学形状層22は、ロール状に巻かれた長尺基材21’に連続的に第1光学形状層22を形成した後、再びロール状に巻き取る、いわゆるロールツーロール方式により効率よく製造される。
そして、第1光学形状帯22’が形成された長尺基材21’を巻取体Rから引き出しながら、蒸着源140において、蒸着金属140aを加熱体140bにより加熱、溶融させて蒸発させる。蒸発した蒸着金属140aは、第1光学形状帯22’に形成された単位光学形状部22aの第1傾斜面22b(図2参照)上に付着して、反射層24となる。これにより、長尺基材21’上に第1光学形状帯22’、反射層24が順に形成された積層体F1が得られる。次に、この積層体F1を巻取体Rに巻き取り、真空蒸着装置130から取り出す。
そして、第2光学形状帯23’を十分に硬化させた後、積層体F2を裁断部170へ移動させる。裁断部170において、積層体F2を所定の大きさに裁断することにより、基材層21、第1光学形状層22、反射層24、第2光学形状層23が積層された光学シート20が完成する。
図4は、フロントウィンドウ1の製造方法を説明する図である。図4(a)、図4(b)は、フロントウィンドウ1が製造されるまでの過程を示す図である。
図5は、フロントウィンドウの製造過程において積層体に加える圧力及び温度と時間との関係を示す図である。
次に、図4(a)に示すように、光学シート20の基材層21側の面に第1中間層30を形成し、その上に第1ガラス基板10を積層する。それから、図4(b)に示すように、光学シート20の第2光学形状層23側の面に第2中間層50を形成し、その上に第2ガラス基板40を積層し、不図示の押圧ロールに挟み込んで仮圧着させて、積層体F3を得る。
図6は、実施例及び比較例の試験体の評価結果を示す表である。
評価には、ガラス転移温度の相違する複数種類の異なる材料から光学シートを作製し、その光学シートを、中間層(PVB)を介して基材に挟み込んだ試験体(比較例、実施例1、2)を使用した。
なお、各試験体は、上述の実施形態のフロントウィンドウ1と同様に、第1基材、第1中間層、光学シート、第2中間層、第2基材が順に積層された構成を有している。各試験体に用いる光学シートは、上述の実施形態で説明した光学シート20と同様に、単位光学形状部が複数配列され、第1傾斜面に反射層が設けられた第1光学形状層と、第2光学形状層とが積層されたものである(図2参照)。また、各試験体に用いる各基材は、上述の実施形態の第1ガラス基板、第2ガラス基板に対応する代替部材であり、ポリカーボネート樹脂の板材が使用されている。各試験体の相違点は、第1光学形状層及び第2光学形状層に用いる材料が相違している点である。
実施例1の試験体は、光学シートの第1光学形状層及び第2光学形状層を構成する材料が、アクリルアクリレート系樹脂(協立化学産業株式会社、5550)であり、そのガラス転移温度Tgが120.7度であり、粘度が30MPaであり、ビッカース硬度が30.3HV0.01である。また、実施例の試験体の第1光学形状層及び第2光学形状層は、500mJの紫外線の照射量により硬化させたものである。
実施例2の試験体は、光学シートの第1光学形状層及び第2光学形状層を構成する材料が、アクリルアクリレート系樹脂(協立化学産業株式会社、XIP−3)であり、そのガラス転移温度Tgが156.9度であり、粘度が35MPaであり、ビッカース硬度が18.6HV0.01である。また、実施例の試験体の第1光学形状層及び第2光学形状層は、500mJの紫外線の照射量により硬化させたものである。
図6における各試験体の歪みの評価は、加熱加圧試験後における各試験体の光学シートに設けられた単位光学形状部の第2傾斜面に歪みが生じているか否かを目視によって評価している。各試験体の歪みの評価は、この目視評価により第2傾斜面に歪が生じていないものと判断したものを「○」とし、第2傾斜面に歪が生じているものと判断したものを「×」とした。
ここで、単位光学形状部の第1傾斜面は、第2傾斜面に比較して光学シートの厚み方向(Z方向)に対して大きく傾斜しているため、厚み方向に加わる圧力に対する歪みの発生の有無を確認するのが困難となる。そのため、本評価では、光学シートの厚み方向に対して傾斜量が小さく、厚み方向に加わる圧力に対して歪みを容易に認識することができる第2傾斜面を基準にして、単位光学形状部(第1傾斜面)に歪が生じているか否かを評価している。
これに対して、各実施例の試験体は、歪みの評価、像のぼやけの評価が共に「○」となった。これは、ガラス転移温度が比較例の試験体に比して高い温度(90度以上)の材料を光学シート(各単位光学形状層)に使用し、上述の加熱加圧試験においても単位光学形状部(第1傾斜面)が変形し難くなったためと考えられる。
以上より、光学シート(各単位光学形状層)を構成する樹脂のガラス転移温度が90度以上であり、また、上述のビッカース硬度HがH≧15HV0.01を満たすことによって、高温、高圧力の環境下において、単位光学形状部に生じる歪みが抑制され、それに伴い表示される像のぼやけが抑制されることが確認された。
本実施形態のフロントウィンドウ1は、第1光学形状層22のビッカース硬度Hが、H≧15HV0.01を満たす樹脂により形成されているので、合わせガラスの製造工程における高い温度環境下において、高い圧力が加えられたとしても、単位光学形状部22aが歪んでしまうのを抑制することができる。
本実施形態のフロントウィンドウ1は、第2光学形状層23のガラス転移温度Tgが、Tg≧90度の樹脂により形成されているので、高温高圧力の環境下において、単位光学形状部22aが歪んでしまうのをより効率よく抑制することができる。
図7は、フロントウィンドウの別な形態を示す図である。
(1)上述の実施形態において、光学シート20は、第1ガラス基板10及び第2ガラス基板40間の全面に対して設けられ、また、光学シート20の各第1傾斜面22bに反射層24が設けられる例を示したが、これに限定されるものでない。
例えば、図7(a)に示すように、フロントウィンドウ1は、光学シート20が上述の実施形態と同様に、第1ガラス基板10及び第2ガラス基板40間の全面に対して設けられているが、反射層24が、フロントウィンドウの下側(−Y側)の領域の第1傾斜面22bにのみ設けられるようにしてもよい。これにより、フロントウィンドウ1の映像の反射に寄与しない部分にまで反射層24が形成されてしまうのを回避することができ、車外から入射する景色等の光をより鮮明に車内側へ透過させることができ、運転者の視界を良好にすることができる。また、反射層24が形成される範囲が、上述の実施形態のフロントウィンドウ1に比して限定されるため、光学シート20の製造コストを低減することができる。
これにより、フロントウィンドウ1の映像の反射に寄与しない部分にまで光学シート20(反射層24)が形成されてしまうのを回避することができ、車外から入射する景色等の光をより鮮明に車内側へ透過させることができる。また、光学シート20のサイズがフロントウィンドウ1のサイズよりも小さいため、光学シート20の製造コストを低減することができる。
2 映像源
10 第1ガラス基板
20 光学シート
21 基材層
22 第1光学形状層
22a 単位光学形状部
22b 第1傾斜面
22c 第2傾斜面
23 第2光学形状層
24 反射層
30 第1中間層
40 第2ガラス基板
50 第2中間層
100 表示装置
Claims (5)
- 外界の光を透過するとともに、映像源から投射された映像光を観察者側に反射する光学部材であって、
第1支持体と、
前記第1支持体の観察者側とは反対の背面側に設けられる光制御層と、
前記光制御層の背面側に設けられる第2支持体とを備え、
前記光制御層は、第1傾斜面及び第2傾斜面を有する単位光学形状部が複数配列された第1光学形状層と、前記第1光学形状層の前記単位光学形状部が設けられた側の面に積層される第2光学形状層とから構成され、
前記第1傾斜面の少なくとも一部には、入射した光の少なくとも一部を反射する反射層が設けられ、
前記第1光学形状層は、ガラス転移温度Tgが、Tg≧90度の樹脂により形成されており、
前記第1光学形状層は、ビッカース硬度Hが、50HV0.01≧H≧15HV0.01を満たす樹脂により形成されていること、
を特徴とする光学部材。 - 請求項1に記載の光学部材において、
前記第2光学形状層は、ビッカース硬度Hが、50HV0.01≧H≧15HV0.01を満たす樹脂により形成されていること、
を特徴とする光学部材。 - 請求項1又は請求項2に記載の光学部材において、
前記第2光学形状層は、ガラス転移温度Tgが、Tg≧90度の樹脂により形成されていること、
を特徴とする光学部材。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光学部材において、
前記反射層は、入射した光のうち、一部を反射し、その他を透過させること、
を特徴とする光学部材。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の光学部材と、
前記光学部材に映像光を投影する映像源と、
を備える表示装置。
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