JP6668790B2 - 内燃機関のピストン冷却システム及び内燃機関 - Google Patents

内燃機関のピストン冷却システム及び内燃機関 Download PDF

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Description

本発明は内燃機関のピストン冷却システム及びこれを備える内燃機関に関し、詳しくは、内燃機関のオイルジェット式のピストン冷却システム及びこれを備える内燃機関に関する。
従来、内燃機関のピストン冷却システムとして、シリンダブロックのピストンよりも下方側の部分に配置されたオイルジェットからピストンに向けてオイルを吹き付けて、ピストンをオイルによって冷却するオイルジェット式のピストン冷却システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
具体的には、従来のオイルジェットは、ピストンに設けられたクーリングチャンネル(オイル流路)のオイル流入口に向けて、オイルを噴射する。この噴射されたオイルは、オイル流入口からクーリングチャンネル内に流入して、クーリングチャンネル内を流動しながらピストンを冷却する。
また、オイルジェットはシリンダブロックのピストンよりも下方側の部分に配置されているので、ピストンの往復移動に伴ってピストンのオイル流入口との距離が変化する。具体的にはオイルジェットは、ピストンが上死点にある場合よりも下死点にある場合の方がピストンのオイル流入口とオイルジェットとの距離が短くなる。
また、オイルジェット用のオイルは、内燃機関のクランクシャフトの回転動力で駆動されるオイルポンプによって圧送されて、オイルジェットから噴射されている。そして、オイルジェットは、オイルポンプから圧送されたオイルを絞ることにより、流速を上昇させて、オイルをピストンのオイル流入口に向けて噴射している。
内燃機関が稼動してクランクシャフトが回転している間、オイルポンプは常時回転するので、従来のピストン冷却システムでは、内燃機関の稼動中、ピストンの位置にかかわらずにオイルジェットから常時オイルを噴射する構成となっている。
特開2008−208786号公報
ところで、従来のようにオイルジェットから常時オイルを噴射する場合には、ピストンが上死点と下死点との中間点よりも上死点に近い範囲内にある場合であっても、オイルジェットからオイルが噴射されることになる。しかしながら、この場合、ピストンの往復移動により、オイルジェットとピストンのオイル流入口との距離が相対的に長くなっている時期においてもオイルジェットからオイルが噴射されることになるので、オイルジェットから噴射されたオイルの噴霧が大きく広がった状態でピストンのオイル流入口に到達することになる。また、この場合、ピストンのオイル流入口に到達した時のオイルの噴流速度も低下してしまう。
そのため、従来の内燃機関のピストン冷却システムでは、オイルジェットから噴射されたオイルのうち、ピストンのオイル流入口によって捕集されるオイルの割合(すなわち、
ピストンのオイル流入口におけるオイル捕集率)は十分に高いとはいえなかった。したがって、ピストンのクーリングチャンネル内に流入するオイルの量も十分に多いとはいえないので、ピストンの冷却に使用するオイルを効率的に利用できているとはいえなかった。
また従来のようにオイルジェットがオイルを常時噴射する場合、オイルのトータルの噴射量が多くなるので、オイルポンプの負荷が大きくなり、その結果、このオイルポンプを駆動する内燃機関に対して、大きな駆動トルクが要求されることになる。この結果、内燃機関の燃料消費量が多くなるので、燃費が十分に良好であるとはいえなかった。
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、ピストンの冷却に使用するオイルを効率的に利用できるとともに、燃費を向上させることができる内燃機関のピストン冷却システム及び内燃機関を提供することである。
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関のピストン冷却システムは、内燃機関のオイル供給部から供給されたオイルを複数のピストンのうちの1つの前記ピストンのクーリングチャンネルのオイル流入口に向けて各々噴射する複数のオイルジェットを有する内燃機関のピストン冷却システムにおいて、前記オイル供給部と複数の前記オイルジェットとを接続する円柱空洞部である接続部に配置されたオイルジェット分配器を備え、前記オイルジェット分配器は、前記ピストンが上死点と下死点との間の中間点よりも前記下死点に近い範囲内から選択された所定の領域である下死点側所定領域にある場合に前記オイル供給部と前記オイルジェットとを連通状態にし、前記ピストンが前記下死点側所定領域以外の領域にある場合には前記オイル供給部と前記オイルジェットとを遮断状態にするように構成されており、前記オイルジェット分配器は、前記接続部の側面に円柱の軸方向に異なる位置に各々接続され、前記接続部と前記オイルジェットを連通する管である複数のオイルギャラリーと、前記接続部の内部に回転できる程度のクリアランスで配置された管体であって、前記オイル供給部から供給された前記オイルが管内に流入するように構成され、前記内燃機関のクランクシャフトの回転動力が伝達されることで前記クランクシャフトと同期して回転する円筒管を備え、前記円筒管は、前記ピストンが前記下死点側所定領域以外の領域にある場合に、その前記ピストンに前記オイルを供給する前記オイルジェットに接続された前記オイルギャラリーと、前記オイル供給部とを遮断状態にする側面部を有するとともに、前記ピストンが前記下死点側所定領域にある場合に、その前記ピストンに前記オイルを供給する前記オイルジェットに接続された前記オイルギャラリーと、前記オイル供給部とを連通するように前記側面部に前記円筒管の円筒の軸方向に異なる位置に複数設けられた複数の穴部を有し、1つの前記オイルギャラリーは、前記下死点に位置するタイミングが同じ複数の前記ピストンに対応する複数の前記オイルジェットに接続されることを特徴とする。
本発明に係る内燃機関のピストン冷却システムによれば、ピストンが下死点側所定領域にある場合にのみ、すなわちピストンのオイル流入口とオイルジェットとの距離が相対的に短い場合にのみ、オイルをオイルジェットからピストンのオイル流入口に向けて噴射させることができる。これにより、オイル流入口とオイルジェットとの距離が相対的に長く、オイルがオイル流入口に捕集され難い状態でのオイル噴射がなくなり、ピストンのオイル流入口によって捕集されるオイルの割合を上昇させることができるので、ピストンの冷却に使用するオイルを効率的に利用できる。
また、ピストンの位置にかかわらずにオイルジェットがオイルを常時噴射する場合に比較して、オイルジェットのトータルのオイル噴射量を低減させることができる。これにより、オイルを圧送するオイルポンプを駆動する内燃機関に要求される駆動トルク(オイルポンプの駆動トルク)を低減させることができるので、内燃機関の燃費を向上させることができる。
また、オイルジェットは、オイルを消費する内燃機関の部位の中で最も多くのオイル流量を必要とする部位の一つである。これに対して、本発明によれば、オイルジェットのトータルのオイル噴射量を低減させることができるので、内燃機関の油圧を全体的に高い値に維持することが容易にできるようになる。これにより、内燃機関の摺動部(例えばクランクシャフト用の滑り軸受等)における油圧を高い値に維持することが容易になり、摺動部に摩耗等の不具合が発生することを効果的に抑制することができる。
また上記の目的を達成するための本発明の内燃機関は、上記のピストン冷却システムを備えることを特徴とする。この本発明に係る内燃機関によれば、上記のピストン冷却システムを備えているので、上記と同様の効果を奏することができる。
本発明の内燃機関のピストン冷却システム及び内燃機関によれば、ピストンの冷却に使用するオイルを効率的に利用できるとともに、内燃機関の燃費を向上させることができる。また、内燃機関の油圧を全体的に高く維持することが容易になり、内燃機関の摺動部における油圧を高く維持して、摺動部に摩耗等の不具合が発生することを効果的に抑制することもできる。
図1(a)は、実施形態に係る内燃機関の構成を模式的に示す概略図である。図1(b)はピストンの内部構造とオイルジェットの構成とを説明するための模式図である。なお図1(b)においてピストンは下死点にある。 実施形態に係るピストン冷却システムの全体構成を模式的に示す概略図である。 図3(a)及び図3(b)は実施形態に係るオイルジェット分配器の詳細を説明するための模式図である。 図4(a)は図3(a)のA−A線断面図であり、図4(b)は図3(a)のB−B線断面図である。 比較例に係るピストン冷却システムを説明するための模式図である。
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関のピストン冷却システム20、及びこれを備える内燃機関1について図面を参照しつつ説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように実際の製品から寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際の製品の比率と一致しているとは限らない。
図1(a)は、本実施形態に係る内燃機関1の構成を模式的に示す概略図である。内燃機関1の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例としてディーゼル機関を用いる。また、内燃機関1が搭載されている車両の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、バスやトラック等の大型車両を用いる。また図1(a)に図示されているX−Y−Zの直交座標のうちZ方向は紙面奥側から手前側に向かう方向である。
内燃機関1は、シリンダブロック10、シリンダブロック10の上部に配置されたシリンダヘッド11、及びシリンダブロック10の下部に配置されたオイルパン12を備えている。また内燃機関1は、シリンダヘッド11に形成された吸気ポート及び排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁13及び排気弁14を備えている。内燃機関1は、シリンダブロック10に形成された気筒(シリンダ)内に、ピストン15を備えている。なお、図1(a)においてピストン15は上死点にある。また内燃機関1は、クランクシャフト16を備えるとともに、クランクシャフト16とピストン15とを連結するコンロッド17も備えている。
ここで、本実施形態に係る内燃機関1は、気筒を複数個備えており、その結果、ピスト
ン15も複数個備えている(後述する図2参照)。複数の気筒はクランクシャフト16の軸線方向(Z方向)に、列状に配置されている。複数の気筒の具体的な個数は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として4個である。なお、図1(a)においては、複数の気筒のうち1つの気筒の内部が模式的に断面図示されている。
内燃機関1のシリンダブロック10及びシリンダヘッド11には、それぞれ冷媒(冷却水)が通過する冷媒通路(図示せず)が設けられている。この冷媒通路を通過する冷媒によって、シリンダブロック10及びシリンダヘッド11は冷却されている。
内燃機関1のピストン冷却システム20は、内燃機関1のピストン15をオイルによって冷却するシステムである。具体的には、このピストン冷却システム20は、オイルジェット21を備えており、このオイルジェット21から噴射されるオイルによってピストン15を冷却する。
図1(b)に示すように、ピストン15には、ピストン15を冷却するためのオイルが通過するクーリングチャンネル23が形成されている。このクーリングチャンネル23の具体的な形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るクーリングチャンネル23は、上面視で(−Y方向から視認して)環状に形成されている。
また、ピストン15には、クーリングチャンネル23にオイルを流入させるためのオイル流入口24が設けられている。本実施形態に係るオイル流入口24は、ピストン15の下面側から上方側に向かって延在している。
図1(a)及び図1(b)に示すように、オイルジェット21は、シリンダブロック10のピストン15よりも下方側の部分に配置されている。このため、オイルジェット21は、ピストン15が上死点にある場合よりも下死点にある場合の方がピストン15のクーリングチャンネル23のオイル流入口24とオイルジェット21との距離が短くなっている。そして、オイルジェット21は、オイルを噴射するノズル22を備えており、このノズル22からオイルをオイル流入口24に向けて噴射する。なお図1(b)に示すように、本実施形態においては、ピストン15が下死点にある場合にノズル22の先端部がオイル流入口24の入口部に挿入されるように、オイルジェット21の位置が設定されている。
ノズル22から噴射されてオイル流入口24からクーリングチャンネル23内に流入したオイルは、クーリングチャンネル23内を流動しながらピストン15の熱を奪うことでピストン15を冷却する。なお、クーリングチャンネル23内のオイルは、クーリングチャンネル23に連通したオイル流出口(図示せず)から排出されるか、またはオイル流入口24を逆流することでクーリングチャンネル23から排出される。この排出されたオイルは、オイルパン12によって捕集される。オイルパン12によって捕集されたオイルは、オイルポンプによって汲み上げられて、再びオイルジェット21に供給されてピストン15の冷却に使用されたり、内燃機関1の摺動部(例えばクランクシャフト16用の滑り軸受等)に供給されて摺動部の潤滑に使用されたりする。
なお、本実施形態において、オイルジェット21から噴射されたオイルはピストン15の冷却のみならず、ピストン15の潤滑にも用いられている。この一例として、本実施形態のピストン15には、ピストン15の外周面(摺動面)の所定箇所(例えばピストンリングが嵌るリング溝の部分等)とクーリングチャンネル23とを連通する連通孔(図示せず)が形成されており、クーリングチャンネル23のオイルの一部はこの連通孔を通過してピストン15の外周面にも供給されて、ピストン15を潤滑している。
図2はピストン冷却システム20の全体構成を模式的に示す概略図である。本実施形態の内燃機関1は、#1〜#4の合計4個のピストン15を備えている。なお、各々のピストン15の内部構造は前述した図1(b)のようになっている。
図2に示すように、#1及び#4のピストン15が上死点にあるときに、#2及び#3のピストン15が下死点になるように、#1〜#4のピストン15の位置は設定されている。
ピストン冷却システム20は、前述したオイルジェット21の他に、メインギャラリー25と、円柱空洞部26と、オイルギャラリー27a,27bと、オイルジェット分配器30と、動力伝達機構40とを備えている。メインギャラリー25、円柱空洞部26、及びオイルギャラリー27a,27bは、シリンダブロック10に形成されている。メインギャラリー25には、クランクシャフト16の回転動力によって駆動されるオイルポンプ(図示せず)によって圧送されたオイルが流入する。円柱空洞部26は、メインギャラリー25の下流側端部に接続しており、円柱形状の空洞によって形成された部位である。オイルジェット分配器30は、この円柱空洞部26に回転可能に配置されている。
オイルギャラリー27aは、その上流側端部が円柱空洞部26の側面部に接続し、その流路途中から分岐して#1のピストン15用のオイルジェット21と、#4のピストン15用のオイルジェット21とに接続している。オイルギャラリー27bは、その上流側端部が円柱空洞部26の側面部に接続し、その流路途中から分岐して#2のピストン15用のオイルジェット21と、#3のピストン15用のオイルジェット21とに接続している。
動力伝達機構40は、クランクシャフト16の回転動力をオイルジェット分配器30に伝達する機構である。本実施形態においては、動力伝達機構40の一例として、複数の歯車列からなる歯車動力伝達機構を用いている。具体的には動力伝達機構40は、クランクシャフト16の端部に接続されてクランクシャフト16と一体となって回転する歯車41aと、オイルジェット分配器30の円筒管31(後述する図3等で説明する)の端部に接続して円筒管31と一体となって回転する歯車41bと、歯車41a及び歯車41bに噛み合うことで歯車41aの回転動力を歯車41bに伝達する歯車41cと、を備えている。但し、動力伝達機構40の構成はこれに限定されるものではなく、例えば動力伝達機構40の他の例として、クランクシャフト16の回転動力をオイルジェット分配器30にベルトやチェーン等を介して伝達する巻き掛け動力伝達機構等を用いることもできる。
なお、本実施形態に係るメインギャラリー25は、オイル供給部の一例である。円柱空洞部26は、オイル供給部とオイルジェット21とを接続するとともにオイルジェット分配器30が内部に配置された接続部の一例である。
続いて、図3及び図4を参照しつつ、オイルジェット分配器30の詳細について説明する。具体的には図3(a)は、オイルギャラリー27aとメインギャラリー25とが遮断状態となり、オイルギャラリー27bとメインギャラリー25とが連通状態となったときのオイルジェット分配器30の周辺構成を模式的に図示している。また、図3(b)は、オイルギャラリー27aとメインギャラリー25とが連通状態となり、オイルギャラリー27bとメインギャラリー25とが遮断状態となったときのオイルジェット分配器30の周辺構成を模式的に図示している。また、図4(a)は図3(a)のA−A線断面図であり、図4(b)は図3(a)のB−B線断面図である。
オイルジェット分配器30は、メインギャラリー25から供給されたオイルを、オイルギャラリー27a及びオイルギャラリー27bに分配するための部材である。具体的には
、本実施形態に係るオイルジェット分配器30は、円柱空洞部26の内部に配置された円筒管31を備えている。円筒管31の側面部32と円柱空洞部26の内壁面との間には、円筒管31が円柱空洞部26内を回転できる程度の微小なクリアランスが設けられている。なお図3(a)及び図3(b)では、このクリアランスが実際よりも大きく図示されている。
円筒管31の−Z方向側の端部は動力伝達機構40の歯車41bに接続している。クランクシャフト16の回転動力が動力伝達機構40を介して円筒管31に伝達されることで、円筒管31は円柱空洞部26内をクランクシャフト16と同期して回転する。この結果、円筒管31は気筒内におけるピストン15の往復移動と連動して回転する。
円筒管31の内部には、メインギャラリー25を経由したオイルが流入する。また円筒管31の側面部32には、穴部33a及び穴部33bが形成されている。
具体的には、穴部33aは、#1及び#4のピストン15が上死点と下死点との間の中間点よりも下死点に近い範囲内から選択された所定の領域である下死点側所定領域にある場合に、メインギャラリー25とオイルギャラリー27aとを穴部33aによって連通するように(図3(b))、側面部32に形成されている。これにより、#1及び#4のピストン15が下死点側所定領域にある場合に、メインギャラリー25と#1及び#4のピストン15用のオイルジェット21とは連通状態になる。この結果、#1及び#4のピストン15が下死点側所定領域にある場合に、メインギャラリー25のオイルは、円筒管31の穴部33aを通過して、オイルギャラリー27aに流入して、#1及び#4のピストン15用のオイルジェット21から#1及び#4のピストン15のオイル流入口24に向けて噴射される。
また穴部33bは、#2及び#3のピストン15が下死点側所定領域にある場合に、メインギャラリー25とオイルギャラリー27bとを穴部33bによって連通するように(図3(a))、側面部32に形成されている。これにより、#2及び#3のピストン15が下死点側所定領域にある場合に、メインギャラリー25と#2及び#3のピストン15用のオイルジェット21とは連通状態になる。この結果、#2及び#3のピストン15が下死点側所定領域にある場合に、メインギャラリー25のオイルは、円筒管31の穴部33bを通過して、オイルギャラリー27bに流入して、#2及び#3のピストン15用のオイルジェット21から#2及び#3のピストン15のオイル流入口24に向けて噴射される。
また、円筒管31の側面部32(穴部33a及び穴部33b以外の部分)は、#1及び#4のピストン15が下死点側所定領域以外の領域にある場合には、メインギャラリー25とオイルギャラリー27aとを側面部32によって遮断することで(図3(a))、メインギャラリー25と#1及び#4のピストン15用のオイルジェット21とを遮断状態にする。この場合、#1及び#4のピストン15用のオイルジェット21からのオイル噴射は行われない。
また、側面部32は、#2及び#3のピストン15が下死点側所定領域以外の領域にある場合には、メインギャラリー25とオイルギャラリー27bとを側面部32によって遮断することで(図3(b))、メインギャラリー25と#2及び#3のピストン15用のオイルジェット21とを遮断状態にする。この場合、#2及び#3のピストン15用のオイルジェット21からのオイル噴射は行われない。
以上のように、#1〜#4のピストン15用の各オイルジェット21は、#1〜#4のピストン15が下死点側所定領域にある場合のみオイルを噴射し、下死点側所定領域以外
の領域にある場合にはオイルを噴射しないように構成されている。
なお、上述した下死点側所定領域の具体的な範囲(クランク角)は、上死点と下死点との中間点よりも下死点に近い範囲内(すなわち下死点±90度(クランク角)の範囲内)であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、上死点と下死点との中間点よりも下死点に近い範囲全体(下死点±90度の範囲全体)を用いている。すなわち、本実施形態に係るピストン冷却システム20は、ピストン15が下死点±90度の範囲内にある場合にオイルジェット21からオイルを噴射し、ピストン15がこの範囲外にある場合にはオイルを噴射しないように構成されている。
但し、下死点側所定領域の具体的な範囲は上記構成に限定されるものではない。他の例を挙げると、下死点側所定領域の具体的な範囲として、下死点近傍(例えば下死点±45度の範囲内)等を用いることもできる。
続いて本実施形態の作用効果について、図5に示す比較例に係る内燃機関のピストン冷却システム100と比較しつつ説明する。具体的には図5は、ピストン15が上死点と下死点との中間点よりも上死点に近い範囲内にある場合、より具体的にはピストン15が上死点にある場合において、比較例に係るピストン冷却システム100のオイルジェット110からオイルが噴射された様子を模式的に図示している。
この比較例に係るピストン冷却システム100は、本実施形態に係るオイルジェット分配器30を備えておらず、この結果、オイルジェット110が内燃機関の稼動中、ピストン15の位置にかかわらずにオイルをピストン15のオイル流入口24に向けて常時噴射する構成となっている点において、本実施形態に係るピストン冷却システム20と異なっている。具体的には、比較例に係るピストン冷却システム100において、オイルジェット110のオイルは、クランクシャフト16の回転動力によって駆動されるオイルポンプによって圧送されることで、常時、噴射されている。
ここで、ピストン15が上死点と下死点との中間点よりも上死点に近い範囲内にある場合には、オイルジェット110とピストン15のオイル流入口24との距離が相対的に長くなるので、オイルジェット110から噴射されたオイルの噴霧が大きく広がった状態でオイル流入口24内に到達する。また、この場合には、ピストン15のオイル流入口24に到達した時におけるオイルの噴流速度も低下してしまう。
これらの理由により、比較例に係るピストン冷却システム100のように、ピストン15が中間点よりも上死点に近い範囲内でオイルジェット110からオイルが噴射される場合、オイルジェット110から噴射されたオイルのうち、オイル流入口24によって捕集されるオイルの割合(すなわち、オイル流入口24におけるオイル捕集率)は十分に高いとはいえない。この結果、ピストン15のクーリングチャンネル23内に流入するオイルの量が十分に多いとはいえないので、ピストン15の冷却に使用するオイルを効率的に利用できているとはいえない。
また比較例に係るピストン冷却システム100のように、オイルジェット110からオイルを常時噴射する場合、オイルジェット110から噴射されるオイルのトータルの噴射量が多くなるので、オイルポンプの負荷が大きくなり、その結果、このオイルポンプを駆動する内燃機関に対して、大きな駆動トルクが要求されることになる。このため、比較例の場合、燃費が十分に良好であるとはいえない。
これに対して本実施形態によれば、ピストン冷却システム20はオイルジェット分配器30を備えており、このオイルジェット分配器30は、ピストン15が下死点側所定領域
にある場合にメインギャラリー25とオイルジェット21とを連通状態にし、ピストン15が下死点側所定領域以外の領域にある場合にはメインギャラリー25とオイルジェット21とを遮断状態にするので、ピストン15のオイル流入口24とオイルジェット21との距離が相対的に短い下死点側所定領域にある場合のみ、オイルをオイルジェット21からオイル流入口24に向けて噴射させることができる。
これにより本実施形態によれば、オイル流入口24とオイルジェット21との距離が相対的に長く、オイルがオイル流入口24に捕集され難い状態でのオイル噴射がなくなり、ピストン15のオイル流入口24によって捕集されるオイルの割合を上昇させることができるので、ピストン15の冷却に使用するオイルを効率的に利用することができる。
また本実施形態によれば、比較例に係るピストン冷却システム100のように、ピストン15の位置にかかわらずにオイルジェット110がオイルを常時噴射する場合に比較して、オイルジェット21のトータルのオイル噴射量を低減させることができる。これにより、オイルポンプを駆動する内燃機関1に要求される駆動トルク(オイルポンプの駆動トルク)を低減させることができるので、内燃機関1の燃費を向上させることができる。
また、オイルジェット21は、オイルを消費する内燃機関1の部位の中で最も多くのオイル流量を必要とする部位の一つである。これに対して、本実施形態によれば、オイルジェット21のトータルのオイル噴射量を低減させることができるので、内燃機関1の油圧を全体的に高い値に維持することが容易にできる。これにより、内燃機関1の摺動部(例えばクランクシャフト16用の滑り軸受等)における油圧を高い値に維持することが容易になり、摺動部に摩耗等の不具合が発生することを効果的に抑制することができる。
なお、本実施形態においてオイルジェット分配器30として、穴部33a及び穴部33bを有する円筒管31を用いているが、オイルジェット分配器30の構成はこれに限定されるものではない。他の一例を挙げると、オイルジェット分配器30として、ECU等の制御装置によって制御される電磁バルブ等を用いることもできる。
しかしながら、このような電磁バルブ等を用いる場合、内燃機関1の一回転当たりに数回開閉を行うことが可能な、応答性の高い電磁バルブ等を用いることが必要となる。そのため、ピストン冷却システム20のコストが大幅に増加する可能性がある。また、このような応答性の高い電磁バルブ等は信頼性や耐久性が高いとはいえない。これに対して、本実施形態のような円筒管31を用いる場合、応答性の高い高価な電磁バルブ等を用いていないので、コストの大幅な上昇を抑制でき、且つ高い信頼性や耐久性を確保することができる。この点において、オイルジェット分配器30として、本実施形態のような円筒管31を用いることが好ましい。
またオイルジェット分配器30として、本実施形態のような円筒管31を用いる場合、1つの円筒管31の複数箇所に穴部を設けるという簡単な構成で、複数個のオイルジェット21に対してオイルの供給、停止を行うことができるので、ピストン冷却システム20の構成を簡素化することができる。この点においても、本実施形態のような円筒管31を用いることが好ましい。
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
1 内燃機関
15 ピストン
20 ピストン冷却システム
21 オイルジェット
23 クーリングチャンネル
24 オイル流入口
25 メインギャラリー(オイル供給部)
26 円柱空洞部(接続部)
30 オイルジェット分配器
31 円筒管
32 側面部
33a,33b 穴部

Claims (2)

  1. 内燃機関のオイル供給部から供給されたオイルを複数のピストンのうちの1つの前記ピストンのクーリングチャンネルのオイル流入口に向けて各々噴射する複数のオイルジェットを有する内燃機関のピストン冷却システムにおいて、
    前記オイル供給部と複数の前記オイルジェットとを接続する円柱空洞部である接続部に配置されたオイルジェット分配器を備え、
    前記オイルジェット分配器は、前記ピストンが上死点と下死点との間の中間点よりも前記下死点に近い範囲内から選択された所定の領域である下死点側所定領域にある場合に前記オイル供給部と前記オイルジェットとを連通状態にし、前記ピストンが前記下死点側所定領域以外の領域にある場合には前記オイル供給部と前記オイルジェットとを遮断状態にするように構成されており、
    前記オイルジェット分配器は、
    前記接続部の側面に円柱の軸方向に異なる位置に各々接続され、前記接続部と前記オイルジェットを連通する管である複数のオイルギャラリーと、
    前記接続部の内部に回転できる程度のクリアランスで配置された管体であって、前記オイル供給部から供給された前記オイルが管内に流入するように構成され、前記内燃機関のクランクシャフトの回転動力が伝達されることで前記クランクシャフトと同期して回転する円筒管を備え、
    前記円筒管は、
    前記ピストンが前記下死点側所定領域以外の領域にある場合に、その前記ピストンに前記オイルを供給する前記オイルジェットに接続された前記オイルギャラリーと、前記オイル供給部とを遮断状態にする側面部を有するとともに、
    前記ピストンが前記下死点側所定領域にある場合に、その前記ピストンに前記オイルを供給する前記オイルジェットに接続された前記オイルギャラリーと、前記オイル供給部とを連通するように前記側面部に前記円筒管の円筒の軸方向に異なる位置に複数設けられた複数の穴部を有し、
    1つの前記オイルギャラリーは、前記下死点に位置するタイミングが同じ複数の前記ピストンに対応する複数の前記オイルジェットに接続されることを特徴とする内燃機関のピストン冷却システム。
  2. 請求項1に記載のピストン冷却システムを備えることを特徴とする内燃機関。
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