JP6661074B2 - 機能性材料、機能性材料の製造方法 - Google Patents

機能性材料、機能性材料の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6661074B2
JP6661074B2 JP2015192015A JP2015192015A JP6661074B2 JP 6661074 B2 JP6661074 B2 JP 6661074B2 JP 2015192015 A JP2015192015 A JP 2015192015A JP 2015192015 A JP2015192015 A JP 2015192015A JP 6661074 B2 JP6661074 B2 JP 6661074B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
flow path
hydrophilic
functional material
functional
liquid sample
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015192015A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017067558A (ja
Inventor
浩美 内村
浩美 内村
基 山野上
基 山野上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Kodoshi Corp
Ehime University NUC
Original Assignee
Nippon Kodoshi Corp
Ehime University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Kodoshi Corp, Ehime University NUC filed Critical Nippon Kodoshi Corp
Priority to JP2015192015A priority Critical patent/JP6661074B2/ja
Publication of JP2017067558A publication Critical patent/JP2017067558A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6661074B2 publication Critical patent/JP6661074B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Automatic Analysis And Handling Materials Therefor (AREA)
  • Micromachines (AREA)

Description

本発明は、機能性材料および機能性材料の製造方法に関する。さらに詳しくは、医学や、生化学、薬学、化学、環境などの分野における分析に広く利用される機能性材料、機能性材料の製造方法に関する。
近年の医療の進歩による平均寿命の延びには目を見張るものがある。しかし、同時に長寿命化に応じて高齢化が進むという側面も生じている。人間の寿命を考える場合、平均寿命が単に延びるということを単純に良しとするのではなく、健康で過ごせる期間をいかに延ばすかという点において、健康増進と疾患の早期発見による早期治療が重要となってきている。
また、分析技術の進歩により、人の血液や尿などの体液から得られる様々な情報に基づいて疾患の早期発見につながる診断が可能となってきている。しかし、診断に使用することができる体液の量(以下、試料という)には限界がある。とくに、高齢者や病気の患者等においては、試料採取の負担をできるだけ軽減する必要がある。このため、少ない試料量からできるだけの多くの情報(例えば、病気の早期発見や、病気の進行状況など)を得ることができる装置の開発が重要となってきている。
そこで、樹脂製の基板上に複数のマイクロチャンネル(微細流路)を形成したマイクロ流体チップを用いた装置が提案されている。この装置の基板上に設けられた各微細流路の先端部には、それぞれの病気の原因となる抗原に反応する抗体等を備えた検出部が設けられている。このため、かかる装置を用いれば、1回の分析で複数の病気の診断が可能となる。しかし、かかる装置では、流路内に試料を送液するのにポンプ等の駆動手段が必要であり、試料量もある程度必要となる上、装置も大型化するといった問題がある。
近年、ポンプを必要としないマイクロ流体チップが提案されており、その代表例が、微細流路を紙で形成した紙製マイクロ流体チップである。かかる紙製マイクロ流体チップは、紙が有する吸水性、つまり毛細管現象を利用した技術である。具体的には、紙製マイクロ流体チップの流路基端部に液体試料を供給すれば、自動的に試料が流路基端部から流路先端部の検出部まで移動する。このため、試料を送液するためのポンプを使わずに1回の分析で複数の病気の診断が可能となる。しかも、紙製マイクロ流体チップだけで病気の診断が可能になるという利点がある。
上記のごとき紙製の微細流路を形成する方法としては、ワックスプリンティング法を用いた方法や、フォトリソグラフィー法を用いた方法が提案されている。
ワックスプリンティング法は、図4に示すように、基材である紙の内部に疎水性のワックスによって形成された流路の流路壁によって紙製の微細流路を形成する技術である。
フォトリソグラフィー法は、図5に示すように、半導体製造に用いられる技術を応用したものであり、紙に感光性樹脂を浸漬させた後、所望の流路形状のマスクにより作製した露光する部分と露光しない部分の反応により、所望の形状の疎水壁を有する紙製の微細流路を形成する技術である。近年、かかる技術を用いて3次元の流路を形成したマイクロ流体チップが提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1のマイクロ流体チップは、フォトリソグラフィー法を用いて処理した紙を複数枚積層させることによって、疎水壁を有する紙製の微細流路を3次元的に形成した多層構造を有するチップである。微細流路を3次元的に形成することによって、同じ大きさのチップに2次元の流路を形成した場合と比較して、より多くの流路を形成することができるので、一度により多くの分析が可能となる。
特開2012−230125号公報
ここで、上述したようなマイクロチップ上に微細流路を形成したマイクロ流体チップを用いて病気等の検査を行う場合、通常、試料中の目的成分の検出は、上述したように抗原抗体反応等によって行われている。そして、これらの反応に用いられる検査試薬は、用途に応じで多数の試薬が存在する。しかも、試薬ごとに反応時間も異なり、瞬時に反応するものや、その逆にある反応にある程度の時間を要するものまで様々なものがある。
しかるに、上述したワックスプリンティング法やフォトリソグラフィー法を用いて形成した紙製の微細流路では、試料が検出部に到達するまでの時間の調整には、流路の長さを検査目的に応じて調整する必要があり、製作に手間と時間がかかるといった問題が生じる。しかも、基材の大きさ等によって流路の長さも制約されるので、現実的には、使用できる検査等も制限されるといった問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、液体試料の移動速度を調整する機能かつ所定の物質を高い精度で検出する機能を備えた機能性材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
(機能性材料)
第1発明の機能性材料は、基材と、該基材の配設面上に液体を通す流路部を備えており、該流路部は、複数の繊維状の親水性材料と、該親水性材料同士を連結する親水性のポリマーからなるバインダと、を備えており、該流路部の親水性の表面が露出する状態で、親水性の官能基を有する不透水性膜によって覆われた前記基材の配設面に接するように設けられていることを特徴とする。
第2発明の機能性材料は、第1発明において、前記複数の繊維状の親水性材料は、前記流路部の流路方向に沿って配置されていることを特徴とする。
発明の機能性材料は、第1発明または第2発明において、前記親水性材料は、その全面または一部に、前記バインダの層が形成されたものであることを特徴とする。
発明の機能性材料は、第1発明、第2発明または第3発明において、前記親水性材料が、カットファイバであることを特徴とする。
(機能性材料の製造方法)
発明の機能性材料の製造方法は、基材の配設面上に液体を通す流路部を形成する方法であって、前記基材の配設面が親水性の官能基を有する不透水性膜によって覆われており、前記流路部を、繊維状の親水性材料と、該親水性材料同士を連結する親水性のポリマーからなるバインダと、両者を分散させる液体と、を含む混合流体を前記基材の配設面を覆った親水性の不透水性膜上にスクリーン印刷技術を用いて塗布して形成することを特徴とする。
発明の機能性材料の製造方法は、第発明において、前記親水性材料が、カットファイバであることを特徴とする。
発明の機能性材料の製造方法は、第5発明または第6発明において、前記液体が、水であことを特徴とする。
(機能性材料)
第1発明によれば、親水性材料として繊維状の部材を用いているので、繊維に沿った空隙を流路部内に複数形成することができる。そして、流路部の内部および表面が親水性を有しているので、流路部に液体試料を供給すれば、毛細管現象により液体試料を空隙内に浸透させながら基端から先端へ向かって適切に移動させることができる。しかも、親水性材料を調整すれば、空隙の大きさ等を調整できるので、流路部を移動する液体試料の移動速度つまり吸水度合が適切になるように調整することができる。また、流路部内に形成された空隙によって、流路部にフィルタ機能を付与することができるので、液体試料を移動させる間に液体試料中から目的成分以外の成分(目的外成分)を分離除去することができる。したがって、吸水機能とフィルタ機能とが付与された流路部を形成することができる。さらに、流路部は、複数の繊維状の親水性材料が親水性のバインダで連結されているので、流路部の形状をよりしっかり維持させることができる。さらに流路部の親水性の表面を親水性の基材表面に接触させて設けることにより、流路部を基材表面にしっかりと連結させることができるから、取扱性を向上させることができる。
第2発明によれば、繊維状の親水性材料が流路部の流路方向(つまり軸方向)に沿って配置されているので、親水性材料間に形成される空隙を流路方向に沿って形成することができるから、液体試料をより適切に流路部内を移動させ易くなる。
発明によれば、親水性材料の全面または一部にバインダの層が形成されているので、親水性材料同士を確実に連結することができるから、流路部内に生じるクラック等の発生を防止できる。
発明によれば、親水性材料の繊維状の材料がカットファイバにより形成されているので、繊維長や繊維幅を適切に調整することができる。すると、流路部を移動する液体試料の移動速度つまり吸水度合をより適切に調整することができる。
(機能性材料の製造方法)
5発明によれば、所定の状態の混合流体をスクリーン印刷技術を用いて流路部を形成するので、繊維状の親水性材料を流路方向に沿って配置させることができる。しかも流路部を形成する際の自由度を向上させることができる。このため、所望のパターン通りの流路部を簡便かつ大量に成形することができる。
第6発明によれば、流路部を移動する液体試料の移動速度つまり吸水度合をより適切に調整した流路部を適切に形成することができる。
発明によれば、分散させる液体として水を用いるので、取扱いやすくなり操作性を向上させることができる。
本実施形態の機能性材料1の概略説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)の概略側面図である。 (A)は本実施形態の機能性材料1の流路部10の概略断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図であり、親水性材料同士の連結状態を説明した概略説明図である。 他の実施形態の機能性材料1の概略説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)の概略側面図である。 ワックスプリンティング法を用いた従来技術の概略説明図である。 フォトリソグラフィー法を用いた従来技術の概略説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の機能性材料は、医学や、生化学、薬学、化学、環境などの分野において、試料の分析に使用されるものであって、試料中に存在する目的成分を目的成分以外の成分から簡便に分離することができる構造としたことに特徴を有する。
具体的には、本発明の機能性材料を構成する流路部が、吸水機能とフィルタ機能を有する構造とし、しかも、吸水機能とフィルタ機能を調整することができるようにしたことに特徴を有している。
なお、本発明の機能性材料を分析に用いる際に機能性材料の流路部に供給する試料は、溶液の状態または液体に溶解させた状態の試料(以下。単に液体試料という)であれば、液体試料中に存在する成分等はとくに限定されない。例えば、血液や、河川などの環境水、工場から排出される工場排水などを挙げることができる。
また、本発明の機能性材料は、液体を通す流路部と、この流路部を保持するための基材を備えたものに限定されず、流路部だけからなるものでもよい。例えば、後述するように本発明の機能性材料の流路部を形成したのち、かかる流路部だけをそのまま使用することもできる。
そして、本発明の機能性材料は、基本的に、分散液を塗布するだけという簡便な工程によって本発明の機能性材料を製造することができるので、生産性を向上させることができ、経済的にも優れる。しかも、製造工程が簡便であるので、品質を評価する際の利便性を向上させることができるという利点も有する。
以下では、本発明の機能性材料として、液体を通す流路部と、この流路部を保持するための基材を備えたものを代表例として説明する。
図1に示すように、本実施形態の機能性材料1(以下、単に機能性材料1という)は、液体を通す流路部10と、この流路部10を保持する基材2を備えたものである。
(基材2の説明)
基材2は、その表面2s上に流路部10を配設し保持することができるように形成されたものであれば、その形状および大きさはとくに限定されない。例えば、図1に示すように、平面視長方形の基材2の表面2s上に基材2の長辺方向と平行となるように平面視略Y字状の流路部10を基材2の表面2s上に配設する。このとき、流路部10が基材2の端縁よりも内方に位置するように配設する。かかる状態となるように流路部10を基材2の表面2s上に配設すれば、流路部10が基材2によって保持された状態となる。この場合、基材2の流路部10が配設されていない部分を把持して持ち運べば、流路部10に接触することなく所望の場所まで機能性材料1を移動させることができる。すると、機能性材料1の流路部10へのコンタミネーション等を防止することができるので、分析上の観点から好ましい。
しかも、流路部10を移動させる際に流路部10を直接保持しないので、流路部10の破損や機能低下を生じさせるおそれもなくなるので、機能性材料1の取扱性を向上させることができる。
また、基材2の表面2s上に流路部10を配設するので、後述するように流路部10を成形する際の自由度を向上させることができる。
なお、基材2の表面2sが、特許請求の範囲にいう基材の配設面に相当する。
上記例では、機能性材料1の基材2は、その大きさが流路部10よりも大きくなるように形成した場合について説明したが、かかる大きさに限定されず、流路部10と略同じ大きさとなるように形成してもよい。具体的には、基材2は、流路部10の基端部および先端部の端縁10eが、基材2の端縁と略面一(図3参照)または若干外方に位置するように形成してもよいが、詳細については後述する。
また、機能性材料1の基材2の材質は、上述した流路部10をその表面に配設できるものであれば、とくに限定されない。例えば、和紙、包装用紙、板紙、ダンボール原紙、ラミネート紙などの紙製のものや、表面を親水処理したポリプロピレン樹脂製フィルム、ポリエステル樹脂製フィルム、などの樹脂製のもの、金属製の板状部材、表面に金属薄膜を処理した部材や、金属蒸着部材、などを挙げることができる。
紙製のものを基材2の材質として採用すれば、取扱いや加工性の上で好ましい。ただし、かかる材質のように、液体が浸透する可能性があるものを採用する場合には、基材2の表面2sが耐水性を有するように形成するのが好ましい。この場合、機能性材料1の流路部10に供給した液体試料が、流路部10の内部から基材2との接触面を介して基材2内部に浸透するのを防止することができる。
基材2の表面2sが耐水性を有する構造としては、例えば、耐水性を有する耐水層によって表面2sの層を形成することができる。この耐水層は、基材2内部に水などの液体が浸透しないものであれば、その材質はとくに限定されない。例えば、塗布形成された合成樹脂など主成分とする耐水薬剤層や、合成樹脂製のフィルムで形成されたフィルム層などをあげることができる。
なお、基材2の表面は、略平坦となるように形成すれば、後述する流路部10の厚さを均質にできるので、後述するように、流路部10に供給した液体試料を流路部10内で略均一に移動させることができる。
(流路部10の説明)
図2に示すように、流路部10は、親水性材料11と、この親水性材料11同士を連結するバインダ12とを備えている。
なお、流路部10は、平面視略I字状や平面視略Y字状(図1参照)、扇状、放射状など、その形状および大きさはとくに限定されない。例えば、図1に示すように、流路部10を平面視略Y字状に形成した場合、流路厚が0.02〜5mm程度、流路幅が0.5〜100mm程度となるように形成できる。もちろん、流路部10の流路厚や流路幅、流路長などは、上記範囲に限定されず、例えば、流路幅が100mm以上としてもよい。流路部10の流路幅を100mm以上とすれば、大面積を一度に生産できるゆえコストダウンできるという利点がある。
なお、流路部10は、その基端部10aが機能性材料1の流路部10に供給された液体試料を一時的に保持することができるように形成してもよい。この場合、供給された液体試料を流路部10の基端部10aで一時的に保持したのち、かかる液体試料を流路部10の先端部10b方向に向かって略均質な状態で流路部10内を移動させることができるようになるので、好ましい。基端部10aは、液体試料を一時的に保持することができれば、その形状はとくに限定されない。例えば、図1に示すように、流路部10の基端部10aを略円形状に形成し、その直径が流路幅よりも若干大きくなるように形成することができる。
また、流路部10の先端部10bには、液体試料中の目的成分と反応する検出材料を担持させてもよい。この場合、後述するように、液体試料を機能性材料1の流路部10に供給して流路部10内を基端部10aから先端部10bまで移動させれば、液体試料中に目的成分が存在するか否かを簡便に検出することができる。この検出材料は、液体試料中の目的成分により抗原抗体反応や蛍光反応など様々な反応試薬を適宜選択することができる。
(親水性材料11について)
親水性材料11は、水との間に親和性を有する材料であれば、その形状はとくに限定されない。例えば、親水性材料11の形状として、繊維状のものや粒子状の材料を挙げることができる。
繊維状の材料を親水性材料11として採用する場合、その繊維径や繊維長はとくに限定されない。例えば、繊維径が0.1μm〜50μm程度、繊維長が0.1〜10mm程度のものを採用することができる。また、粒子状の材料を親水性材料11として採用する場合、その粒子径はとくに限定されない。例えば、粒子径が0.1μm〜50μm程度のものを採用することができる。もちろん、上記範囲よりも小さい材料のものを親水性材料11として採用することもできる。この場合には、後述する流路部10内に形成される空隙13の大きさをより緻密にすることができる。
親水性材料11の材質もとくに限定されない。例えば、セルロース系材料(例えば、綿、麻、パルプ、レーヨンなど)や、合成樹脂系材料(例えば、ポリエステルや、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)などを挙げることができる。他にも、ケイ素やチタンなど酸化物、マグネシウムなどの水酸化物、カルシウムなどの炭酸塩、バリウムなどの硫酸塩等の無機化合物などといった多様な素材のものを採用することができる。
とくに、綿、麻、パルプ、レーヨンなどのセルロース系材料を採用すれば、親水性が大きい親水性材料11とすることができる。一方、ポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂系材料を採用すれば、親水性が小さい親水性材料11とすることができる。また、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの樹脂系材料を採用すれば、上述した親水性が大きい親水性材料11と親水性が小さい親水性材料11のほぼ中間程度の親水性材料11とすることができる。つまり、親水性の異なる材料を適宜採用することによって、親水性材料11の親水性の大きさを適宜調整することができるのである。もちろん、上記材料を単独で採用してもよく、適宜混合したものを採用してもよい。
また、通常、互いに連結しない、つまり自己連結しない親水性材料11であっても、後述するバインダ12を自己連結しない親水性材料11間に設けることによって、両者を互いに連結させることができる。つまり、バインダ12によって互いに連結しない性質を有する材質であっても、親水性材料11として採用することができるのである。このような、材質としては、レーヨンやポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを挙げることができる。レーヨン等は、一般的に入手が容易であり、他の物質(例えば、上述した溶液試料中の目的成分など)に影響を与え難いという性質を有するものであるので、親水性材料11の材質として好ましい。
(バインダ12について)
バインダ12は、上述したように親水性材料11同士を連結する機能を有するものであれば、とくに限定されないが、液体試料中の目的成分を検査等する上では、本発明の機能性材料1の流路部10に供給する液体試料中の成分と反応し難いものが好ましい。
例えば、バインダ12として、エーテル系ポリマーや、アルコール系ポリマー、アミド系ポリマー、エステル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、糖類、脂肪酸などの有機系化合物のほか、ケイ酸ナトリウム系の無機系化合物などを挙げることができる。もちろん、これらを適宜混合したものも使用することができる。
また、熱溶融する合成樹脂を親水性材料11として用いる場合には、熱溶融する親水性材料11をバインダ12として機能させてもよい。具体的には、親水性材料11の溶融に必要な温度と接着に必要な圧力をかけることによって、熱溶融した親水性材料11を繊維相互のバインダとして機能させることができる。
上述した化合物(上述した有機系化合物や無機系化合物など)は、溶媒に分散または溶解するものが好ましい。溶媒に分散または溶解した化合物を親水性材料11に接触させれば、親水性材料11間に侵入し易くすることができるので、親水性材料11同士を連結させ易くなる。
なお、上述した溶媒は、上述した化合物を分散または溶解させることができるものであれば、とくに限定されない。例えば、エタノールや、アセトニトリル、トルエンなどの有機溶媒や、水などの無機溶媒、または、これらの混合物を挙げることができる。例えば、溶媒として水を採用すれば、後述するように取扱い性等の観点から好ましい。
とくに、図2(B)に示すように、上述した化合物のうち、分散または溶解した溶液を被対象物に接触した場合、被対象物の表面に化合物の層を形成する機能を有するものが好ましい。親水性材料11に対してかかる化合物を分散または溶解した溶液を接触させれば、親水性材料11の表面の全面または一部に化合物の層を形成することができる。すると、かかる層を親水性材料11の表面に密着させることができるので、両者の結合性を向上させることができる。しかも、親水性材料11の表面側とは反対側の外面に位置する他の隣接する親水性材料11とも同様に強く結合させることができる。つまり、親水性材料11の表面の全面または一部に上述した化合物の層を形成すれば、層を構成する化合物と親水性材料11との結合性および親水性材料11同士の結合性をも向上させることができる。このため、親水性材料11同士をより強固に連結させることができる。
上記のごとき親水性材料11の表面にバインダ12層を形成する化合物としては、例えば、重合度から見ると、ブドウ糖などのモノマー化合物や、モノマーよりも高い重合度を有するデキストリンなどのオリゴマーや、上述した糖類やエーテル系ポリマー等のポリマーなどを挙げることができる。結合性の観点では、多数の官能基を有するポリマーが好ましい。
とくに、親水性の官能基を有するポリマー、つまり、親水性のポリマーであれば、親水性の性質を有する親水性材料11との結合性を向上させることができるので、より好ましい。親水性のポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのオキシエチレン系化合物、ポリアクリルアマイドなどのアミド系化合物、ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系化合物、アクリル系化合物、エステル系化合物、でんぷん類、親水処理オレフィン系化合物などを挙げることができる。
上記オキシエチレン系化合物、アミド系化合物および/またはビニルアルコール系化合物などの親水性のポリマーをバインダ12として使用すれば、水などの水溶性の溶媒に溶解させ易くなる。そして、かかる溶液を親水性材料11と接触させれば、親水性材料11の表面にかかるポリマーの層を形成させ易くなるので、親水性材料11との結合性をより向上させることができる。
しかも、上述した親水性のポリマーをバインダ12として使用する場合、本発明の機能性材料1の流路部10において、親水性材料11を均質に分散させることができるという利点を有する。
具体的には、上述した親水性のポリマーを溶媒(水)に溶解すれば、溶媒(水)だけの場合と比べて非常に高い粘性を有する溶液を調製することができる。この溶液に対して親水性材料11を分散させた分散溶液を後述する様々な印刷手法を用いて、本発明の機能性材料1の流路部10を形成する。すると、溶液中に親水性材料11が分散した状態を維持したままま流路部10を形成することができる。つまり、親水性材料11と溶媒だけの場合と比べて印刷適性を向上させることができるのである。より具体的には、流路部10を形成した際に、溶媒成分だけが抜け落ちるといった挙動、つまり溶液と親水性材料11が分離することにより生じる親水性材料11の不均一化を防止することができる。言い換えれば、上述した親水性のポリマーをバインダ12として使用すれば、親水性材料11が均質な本発明の機能性材料1の流路部10を形成することができるという利点をも有するのである。
そして、流路部10内において均質に分散した親水性材料11は、バインダ12によって互いに連結した状態とすることができる。このため、本発明の機能性材料1の流路部10内において、親水性材料11間に後述する空隙13を連続するように形成することができる。
なお、上記親水性材料11の表面の全面または一部にかかる化合物の層が、特許請求の範囲のバインダの層に相当する。
以上をまとめると、本実施形態の機能性材料1の流路部10は、複数の親水性材料11が隣接する親水性材料11間に位置するバインダ12によって連結して形成されている。親水性材料11がバインダ12によって連結されているので、流路部10の形状を維持することができる。
この流路部10を構成する親水性材料11は、上述した太さ、長さの繊維や所定の粒子径の部材を使用することができる。このため、図2の拡大図に示すように、親水性材料11間に複数の空隙13を形成することができる。この空隙13は、親水性材料11の大きさや形状等の影響を受けるが、その空隙幅が0.1μm〜50μm程度と非常に狭くなるように形成することができる。
この空隙13は、親水性材料11の大きさ等を調整すれば、隣接する空隙13同士が互いに連通する複数の空隙13を形成することができる(図2(B)参照)。例えば、大きい繊維を使用すれば、空隙13幅が大きい網目状の空隙13を流路部10内に形成することができるし、小さい繊維を使用すれば、空隙13幅が小さい網目状の空隙13を流路部10内に形成することができる。
そして、この網目状の空隙13を有する流路部10に液体試料を接触させれば、接触した液体試料を空隙13に沿って流路部10内に侵入させることができる。侵入した液体試料は、空隙13を形成する親水性材料11の表面と液体試料との表面張力等の相互作用によって自動的に空隙13を移動させることができる。かかる現象は、いわゆる毛細管現象に相当するので、空隙13内に浸透した液体試料の移動距離は、親水性材料11の表面張力、親水性材料11表面の濡れ易さ、液体試料の密度に依存する。とくに、空隙を形成する親水性材料11の親水性に依存する。
例えば、機能性材料1の流路部10の基端部10a(図1参照)に液体試料を供給すれば、親水性材料11内の空隙13内に液体試料を浸透させることができる。すると、流路部10内に浸透しながら基端部10aから離れる方向(つまり、流路部10の先端部10b方向)に向かって液体試料を移動させることができる。
したがって、親水性材料11間をバインダ12により連結することによって、流路部10内に網目状の空隙13を形成することができるので、本発明の機能性材料1の流路部10に対して吸水機能を付与することができるのである。
また、流路部10内の連続した空隙13つまり空隙流路は、網目状となるように形成することができ、しかも、図2(B)に示すように、親水性材料11間は、バインダ12によってランダム状に連結されているので、液体試料が流れるための空隙流路の流路幅は、流路方向に向かって変化する(不均一に変化する)ように形成することができる。
このため、流路部10内に液体試料を供給すれば、液体試料が隙間流路と網目状の空隙流路を移動する間に、フィルタ効果によって液体試料中に存在する複数の成分をその大きさによって篩分けすることができる。つまり、本発明の機能性材料1の流路部10にフィルタ機能を付与するこができるので、本発明の機能性材料1の流路部10に液体試料を供給すれば、液体試料中に存在する目的成分と目的成分以外の成分(目的外成分)とを分離除去することができるのである。
とくに、親水性材料11の表面の全面または一部にバインダ12の層を形成すれば、親水性材料11同士を確実にバインダ12によって連結することができる。
このため、流路部10の形成時におけるクラックや流路剥離等が生じるのを防止することができる。とくに、流路部内に存在するクラック等の外部から確認することができないクラック等の発生を防止することができる。つまり、親水性材料11の表面の全面または一部にバインダ12の層を有する本発明の機能性材料1の流路部10を使用すれば、流路部内等におけるクラック等に起因する検査データの不具合の発生を抑制できるので、病気等の診断精度をより向上させることが可能となる。
また、流路部10における液体試料の吸水性つまり吸水度は、親水性材料11間に形成された空隙の大きさのほか、親水性材料11の親水性の強弱や、親水性材料11の濃度を調整することによっても、調整することが可能である。
例えば、親水性材料11としてレーヨン繊維を使用した場合と、レーヨン繊維よりも親水性の小さいポリエステル繊維を使用した場合のそれぞれの流路部10における吸水度を比較した場合、流路部10の吸水度は、親水性材料11の親水性の強弱に相関を有している。このため、例えば、流路部10の吸水性を強くしたい場合には、親水性の大きいレーヨン繊維を使用し、その逆に吸水性を弱くしたい場合には親水性の小さいポリエステル繊維を使用することができる。つまり、親水性材料11の親水性の度合いを調整すれば、流路部10の吸水性を所望の性質に調整できることを示しているのである。
なお、本発明の機能性材料1の流路部10における吸水性度とは、染料を蒸留水に溶解させた染料水を、流路部10の一の端部(例えば、基端部10a)を染料水に浸漬(例えば、数mm)した状態で所定の時間静置後の染料が浸透した高さで評価した値である。つまり、吸水度は、染料水の水面と、流路部10内に浸透した染料水の浸透高さ、の距離により算出することができる。
以上のように、本実施形態の機能性材料1の流路部10は、平面的、つまり2次元的な形状としつつ、吸水機能とフィルタ機能を有するように形成することができる。とくに、吸水機能を所望の状態となるように調整することができるので、液体試料を検出材料を担持させた部分(例えば、流路部10の先端部10b)まで到達するまでの時間を流路の長さで調整しなくてもよくなる。つまり、流路部10の流路長はとくに制限されないので、流路部10の形状の自由度を向上させることができる。しかも、検査目的に応じた流路部10を多種多様に形成することが可能となる。
また、液体試料は、上述したように毛細管現象により流路部10内を移動する。すると、機能性材料1を立てて配置しても、液体試料は流路部10内を移動する。例えば、図1に示すように、平面視略Y字状の流路部10において、その基端部10aが下方に位置するように機能性材料1を立てて配置する。この場合でも、液体試料を流路部10の基端部10aから先端部10b方向に向かって移動させることができる。
つまり、本実施形態の機能性材料1は、使用する際に、その配置が水平方向に限定されない。このため、液体試料を流路部10へ供給した後の機能性材料1の配置の自由度を向上させることができる。例えば、実験台において、複数の流路部10に液体試料を供給した後、流路部10内に液体試料を移動させる間、機能性材料1を立てた状態とすれば、実験台上に作業スペースを確保できる。
さらに、従来技術であるフォトリソグラフィー法では、シートを複数枚重ねて複雑な3次元構造を形成することにより、フィルタ機能を付与している。しかし、本実施形態の機能性材料1の流路部10では、従来のような複雑な構造とすることなく、フィルタ機能を付与することができる。このため、3次元構造を有する流路部の流路長に比べて、流路長を短くできるから、供給する液体試料の量を少なくすることができる。
なお、親水性材料11として繊維状の材料を使用する場合、その形状はとくに限定されない。例えば、その断面形状が、円形のものや、楕円形のもの、ドーナッツ形状のものや、屈曲した繊維を使用してもよい。例えば、親水性材料11として屈曲した繊維を使用すれば、親水性材料11間に形成される空隙を大きくすることが可能となる。
(カットファイバについて)
親水性材料11として繊維状の材料を使用する場合、上述したような、一般的な太さや長さの繊維(例えば、繊維長が数mmのもの)を親水性材料11として使用することができるが、このような一般的な大きさの繊維を所望の大きさに機械的にカットして短くした繊維(以下、単にカットファイバという)を親水性材料11として使用してもよい。
このカットファイバは、後述する様々な機器を用いて作製することができ、その繊維長も様々なものを作製することができる。このため、カットファイバを親水性材料11として使用すれば、カットファイバの繊維長に応じた空隙13幅を有する流路部10を作製することができる。例えば、空隙13幅を大きくしたい場合には繊維長の長いものを使用し、その逆に空13幅を小さくしたい場合には繊維長の短いものを使用することができる。したがって、親水性材料11としてカットファイバを使用すれば、本発明の機能性材料1の流路部10の吸水度の自由度を向上させることが可能となる。
このカットファイバの繊維長を調整する装置としては、様々なものを使用することができる。例えば、長繊維をカットするために用いられるギロチンカッターや、ECカッター、短繊維をさらに短くカットするために用いられる粉砕機、水中でパルプなどの短繊維をさらに短くカットするために用いられる叩解機などを挙げることができる。これらのカット装置は、使用する繊維状の材料に応じて適宜使いわけることができる。
(他の実施形態)
上述したように、機能性材料1は、図1に示すように流路部10の基端と先端が基材2の端縁から内方に位置するように形成されたものの他、図3に示すように、流路部10の基端10eと先端10eが基材2の端縁と略面一となるように形成してもよい。
例えば、図3に示すように、平面視長方形の基材2の表面2s上に基材2の長辺方向と平行となるように平面視略Y字状の流路部10を配設する。このとき、図3(B)に示すように、機能性材料1の側面視において、流路部10のY字状の基端部の基端縁10eと基材2の短辺が略面一となるように流路部10を基材2の表面2s上に配設する。一方、流路部10のY字状の一対の先端部の先端縁10eも基端部の基端縁10eと同様にそれぞれが基材2の長辺と略面一となるように流路部10を基材2の表面2s上に配設する。
かかる構造とすれば、基材2の流路部10の基端10eが位置する短辺部を液体試料に接するように浸漬させるだけで、簡単に流路部10に液体試料を供給することができる。しかも、供給した液体試料を途中の分岐点で分液した状態で流路部10の一対の先端10eからそれぞれ排出することができる。
その逆に、流路部10の一対の先端10eが位置する基材2のそれぞれの長辺部を、それぞれ異なる液体試料に接するように浸漬させれば、両液体を混合した状態で流路部10の基端10eから排出することができる。
このため、分析経路の一部に機能性材料1を配置するだけで、上述したように液体試料中に存在する目的成分を分離精製することが可能となる。しかも、流路部10の基端部に液体試料を保持させたり、先端部に検出材料を担持させたりする必要もないので、機能性材料1の構造を簡単にすることができるという利点がある。
(親水性材料11の官能基について)
なお、流路部10の親水性材料11としては、その表面に親水性の官能基を有するものが好ましい。
親水性材料11は、上述したように表面に存在する親水性の官能基の数等によって、親水性の強弱を調整することができ、これらを液体試料の性質に応じで適宜使い分けることができる。つまり、親水性材料11の親水性を調整すれば、液体試料の浸透つまり流路部10における移動速度を調整することが可能となる。
このため、検出時間における反応時間が異なる複数の目的成分を1回の分析で測定する場合、反応終了時間をほぼ同じにすることができるので、操作性の向上を図ることができる。例えば、図1に示すように、流路部10が、2つのルートを有する場合であって、検出部における反応時間が異なる場合には、一の検出部では反応時間を長くしたい場合には、一のルートを移動する液体試料の移動速度を速くして、液体試料を流路部10の検出部に早く到達させて反応時間を確保する。一方、他の検出部で反応時間を短くしたい場合には、他のルートを移動する液体試料の移動速度を遅くして、液体試料が流路部10の検出部に到達するのを一の液体試料に比べて遅くする。すると、1回の操作で2つの目的成分の反応終了時間をほぼ同じにすることができる。
親水性材料11の親水性の度合いは、上述したように一般的に存在する化合物により調整してもよいし、所望の親水性となるように化学処理により所定の官能基を結合したものを用いてもよい。例えば、親水性が高い官能基としては、カルボキシル基や水酸基を、中間の親水性を有する官能基としては、エステル基やアミド基、親水性が低い官能基としては、C−H結合などを挙げることができる。これらの官能基をもつ化合物等を上述したように適宜選択したり、適宜混合することにより、液体試料の浸透性つまり移動速度を調整することができるようになる。なお、上記官能基は、例示したものに限定されないのは、言うまでもない。
(機能性材料1の製造方法)
上述したように本実施形態の機能性材料1は、流路部10を基材2の表面2sに配設するようにして形成される。また、流路部10を構成する親水性材料11およびバインダ12は、上述したように様々な材質、大きさのものを使用することができる。
以下では、繊維状の親水性材料11と、この親水性材料11の表面にバインダ12層を形成するバインダ12とからなる流路部10を基材2の表面2sに配設した機能性材料1を製造する方法を代表例として説明する。
なお、本実施形態の機能性材料1を製造する方法は、以下の製造方法に限定されないのは言うまでもない。
繊維状の親水性材料11としては、上述した材質のものであれば、とくに限定されないが、例えば、親水性を有する一般的な大きさ(例えば、繊維長数mm)のレーヨン繊維やポリエステル繊維などを使用することができる。
また、バインダ12としては、上述した機能を有するものであれば、とくに限定されないが、例えば、親水性を有するポリアクリルアマイドやポリビニルアルコールなどの親水性のポリマーを使用することができる。
つぎに上述した親水性材料11と、親水性ポリマーのバインダ12と、を水に分散させて、分散液を調製する。
この分散液は、親水性材料11と親水性ポリマーのバインダ12を溶媒に溶解させることにより調製することができる。この親水性ポリマーのバインダ12は、溶媒に溶解すれば粘性を向上させるという機能を有する。このため、上記分散液は、親水性材料11と溶媒の混合液と比べて高い粘性を有する液体とすることができる。すると、かかる分散液は、分散液中に分散させた親水性材料11の不均一化を緩和する効果や、厚く塗布した際の液垂れを抑制する効果を有するほか、分散液がある程度の粘性を有しているので、操作性も向上させることができる。
なお、繊維状の親水性材料11と、親水性ポリマーのバインダ12の配合割合は、流路部10の吸水性や、液体試料中の目的成分の大きさ等によって、適宜調整することができる。例えば、繊維状の親水性材料11の配合割合を徐々に大きくすることによって、親水性材料11間に形成された空隙13率を調整することができる。
上述した方法で調製した分散液は、基材2を水平に配置して、その上面に分散液を供給する。分散液を供給する方法としては、スクリーン印刷技術を用いて分散液を塗布する方法、スプレーを用いて分散液を塗布する方法、凹印刷技術を用いる方法、フレキソ印刷技術を用いる方法、キャスティング技術を用いる方法、押し出し技術を用いる方法など様々な方法を用いて基材2の表面2sに流路部10を形成することができる。
以下では、上記方法のうち最も簡便な方法であるスクリーン印刷技術を用いて分散液を塗布する方法を説明する。
スクリーン印刷機は、一般的に用いられるものを使用することができる。具体的には、スクリーン印刷機は、転写部と、この転写部を囲むように配設された枠とをそなえている。転写部は、表裏を連通する孔(オープニング)が網目状に形成されており、かかるオープニングが感光性樹脂によって覆われている。そして、転写部は、その一部に流路部10の形状の感光性樹脂が存在しない部分を有する。つまり、感光性樹脂が存在しない部分は、転写部の表裏を連通するように複数のオープニングが配設されている。このオープニングは、一般的な大きさのもの、例えば、オープニング径が1.29mmのものを用いることができる。
スクリーン印刷機の転写部の下方に紙基材2を配設し、スクリーン印刷機の転写部に分散液を供給する。そして、スクリーン印刷機に設けられたスキージを転写部上面を摺動するように移動させる。すると、分散液は、オープニングを通って所定の形状に基材2の表面2s上に塗布される。
なお、上記操作おいて、オープニングが転写部の大きさよりも大きいもの、つまりオープニングに網目が存在しないものも用いることができる。例えば、かかる網目が存在しないものとしては、樹脂や金属を板状に加工したものに所望の形状を貫通孔を形成したものを使用することができる。
上記操作により、基材2の表面2s上に分散液が付着した基材2を乾燥すれば、機能性材料1が製造される。この機能性材料1は、基材2の背面(流路部10を配設していない面)を下方に位置するようにして水平に配置した状態の断面視において、基材2の内部層、基材2の表面2sを有する耐水層、流路部10の順となるように形成することができる。そして、この流路部10の内部断面は、例えば、図2に示すように、複数の親水性材料11をバインダ12の層が取り囲むように連結した状態となるように形成できる。つまり、複数の親水性材料11の表面がバインダ12の層に覆われた状態となるように形成することができる。そして、このバインダ12の層を有する複数の親水性材料11間に、複数の空隙13が形成される。この空隙13が、流路部10に供給した液体試料が移動する流路となる。
基材2としては、上述したような様々な材質のものを使用することができるが、透水性の材質を使用する場合には、その表面2sが不透水性の膜などで覆われたものを使用することができる。例えば、紙製の紙基材2を使用する場合には、ポリオレフィン系材料などを塗工すれば、基材2の表面2sを不透水性にすることができる。しかも、このポリオレフィン系材料は、表面に親水性の官能基を有するので、親水性を有するバインダ12を有する流路部10を基材2の表面2sに配設すれば、両者を連結させることができる。つまり、基材2の表面2s上に流路部10をしっかりと連結した状態で形成することができる。
なお、乾燥方法はとくに限定されず、熱を加えながら乾燥する公知の方法等を採用することができる。例えば、熱風による乾燥(送風乾燥)、熱ロール、ホットプレスなどを使用することができる。
また、乾燥時間もとくに限定されず、流路部10の状態や機能性材料1の要求性能などに合わせて適宜決定すればよい。例えば、吸水性およびフィルタ性を発揮させるのであれば、乾燥後の流路の水分量が0〜10%程度となるように乾燥を行えばよい。
(流路部10だけからなる機能性材料1の製造方法)
上記例では、基材2の表面2sが耐水性かつ親水性のものを用いた場合について説明したが、基材2の表面2sが耐水性かつ疎水性の材質のもの、例えば、フッ素樹脂系化合物やシリコン系化合物のものを使用してもよい。この場合、上記方法によって基材2の表面2sに流路部10を配設して乾燥すれば、基材2の表面2sから所望の形状等に成形した流路部10を簡単に剥がすことができるので、流路部10だけからなる機能性材料1を製造することができる。
本発明の機能性材料の吸水機能およびフィルタ機能を確認した。
実験では、バインダとして、ポリアクリルアマイドおよびポリビニルアルコールを使用した。
ポリアクリルアマイドは、室温の蒸留水に溶解して0.1%濃度のポリアクリルアマイド溶液を調製した。
ポリビニルアルコールは、90℃の蒸留水に溶解した後、室温まで冷却してポリビニルアルコール溶液を調製した。
実験に使用した繊維は、それぞれ親水性が異なるレーヨン繊維、ポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート繊維(以下、単にPET繊維という)、およびポリプロピレン繊維(以下、単にPP繊維という)を使用した。各繊維の親水性の大きさは、レーヨン繊維>PET繊維>PP繊維の順であった。
なお、機能性材料の吸水度は、染料を蒸留水に溶解させた染料水を、流路部の一方の先端部を染料水に3mm程度浸漬した状態で3分間放置した際の浸透高さで評価した。
また、親水性材料やバインダは、素材や原料によって取り扱う上で好ましい適正濃度が異なる。このため、実験では、以下に示すように、親水性材料と溶媒に溶解したバインダの原料を混合した分散液の濃度が、塗布における作業性において良好となるよう濃度調整を行ったものを使用した。
(実験1)
0.8デシテックス3mmレーヨン繊維1.5部、0.1%ポリアクリルアマイド水溶液97.8部、10%ポリビニルアルコール水溶液0.7部を混合し、合計100部として計量し混合することで分散液を調製した。
調製した分散液を印刷版面(印刷部として5mm×110mmの貫通孔を有する厚さ0.7mmのポリプロピレン樹脂板)を用いて、基材(コニーラップ、リンテック製)の表面上に平面視I字状の流路部を塗布形成した。
基材の表面上に形成した流路部は、105℃オーブンにて20分乾燥した。
なお、実験に使用したレーヨン繊維は、ギロチンカッターにてカットしたカットファイバである。
その結果、吸水度46mmの流路部を有する機能性材料を作製することができた。
(実験2)
0.06デシテックス3mmPET繊維1.5部、0.1%ポリアクリルアマイド水溶液97.8部、10%ポリビニルアルコール水溶液0.7部を混合し、合計100部として計量し混合することで分散液を調製した。
調製した分散液を印刷版面(印刷部として5mm×110mmの貫通孔を有する厚さ0.7mmのポリプロピレン樹脂板)を用いて、基材(コニーラップ、リンテック製)の表面上に平面視I字状の流路部を塗布形成した。
基材の表面上に形成した流路部は、105℃オーブンにて20分乾燥した。
なお、実験に使用したPET繊維は、ギロチンカッターにてカットしたカットファイバである。
その結果、吸水度23mmの流路部を有する機能性材料を作製することができた。
(実験3)
0.08デシテックス3mmPP繊維1.5部、0.1%ポリアクリルアマイド水溶液97.8部、10%ポリビニルアルコール水溶液0.7部を混合し、合計100部として計量し混合することで分散液を調製した。
調製した分散液を印刷版面(印刷部として5mm×110mmの貫通孔を有する厚さ0.7mmのポリプロピレン樹脂板)を用いて、基材(コニーラップ、リンテック製)の表面上に平面視I字状の流路部を塗布形成した。
基材の表面上に形成した流路部は、105℃オーブンにて20分乾燥した。
なお、実験に使用したPP繊維は、ギロチンカッターにてカットしたカットファイバである。
その結果、吸水度8mmの流路部を有する機能性材料を作製することができた。
なお、バインダを添加しない以外は、全て各実験と同じ条件下で流路部を形成した。その結果、いずれにおいても流路部が形成されなかった。
以上の実験結果から、機能性材料の流路部は、バインダによって繊維同士を連結させることができることが確認できた。しかも、自己連結しない繊維同士であってもバインダを用いることによって連結させることができることが確認できた。
また、バインダによって繊維間が完全に埋まるのではなく、繊維間にある程度の空隙を形成することができることが確認できた。つまり、バインダによって連結された繊維間に微差な空隙ネットワークが形成されたものと推測された。
しかも、繊維長が同じであるにもかかわらず、流路部の吸水度に差が生じたことから、かかる微細な空隙ネットワークの空隙の大きさは、繊維の親水性を調整することによって、制御することができることが確認できた。つまり、本発明の機能性材料の流路部は、フィルタ機能を有していることが確認された。このため、流路部に液体試料を供給すれば、かかる微差な空隙ネットワークを移動させつつ、所望の成分を分離除去することが可能であることが確認できた。
さらに、かかる微細な空隙ネットワークを移動する液体試料の移動速度つまり吸水度は、繊維の親水性を変えることによって調整することができることが確認できた。つまり、流路部を構成する親水性材料の親水性を調整することによって、流路部の吸水性を制御することが可能であることが確認できた。
本発明の機能性材料は、医学や、生化学、薬学、化学、環境などの分野において、試料の分析に使用する材料として適している。
1 機能性材料
2 基材
2s 基材の表面
10 流路部
10a 流路基端部
10b 流路先端部
10e 流路部端縁
11 親水性材料
12 バインダ
13 空隙

Claims (7)

  1. 基材と、該基材の配設面上に液体を通す流路部を備えており、
    該流路部は、
    複数の繊維状の親水性材料と、該親水性材料同士を連結する親水性のポリマーからなるバインダと、を備えており、
    該流路部の親水性の表面が露出する状態で、親水性の官能基を有する不透水性膜によって覆われた前記基材の配設面に接するように設けられている
    ことを特徴とする機能性材料。
  2. 前記複数の繊維状の親水性材料は、
    前記流路部の流路方向に沿って配置されている
    ことを特徴とする請求項1記載の機能性材料。
  3. 前記親水性材料は、
    その全面または一部に、前記バインダの層が形成されたものである
    ことを特徴とする請求項1または2記載の機能性材料。
  4. 前記親水性材料が、カットファイバである
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の機能性材料。
  5. 基材の配設面上に液体を通す流路部を形成する方法であって、
    前記基材の配設面が親水性の官能基を有する不透水性膜によって覆われており、
    前記流路部を、
    繊維状の親水性材料と、該親水性材料同士を連結する親水性のポリマーからなるバインダと、両者を分散させる液体と、を含む混合流体を前記基材の配設面を覆った親水性の不透水性膜上にスクリーン印刷技術を用いて塗布して形成する
    ことを特徴とする機能性材料の製造方法。
  6. 前記親水性材料が、カットファイバである
    ことを特徴とする請求項記載の機能性材料の製造方法。
  7. 前記液体が、水であ
    ことを特徴とする請求項5または6記載の機能性材料の製造方法。
JP2015192015A 2015-09-29 2015-09-29 機能性材料、機能性材料の製造方法 Active JP6661074B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015192015A JP6661074B2 (ja) 2015-09-29 2015-09-29 機能性材料、機能性材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015192015A JP6661074B2 (ja) 2015-09-29 2015-09-29 機能性材料、機能性材料の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017067558A JP2017067558A (ja) 2017-04-06
JP6661074B2 true JP6661074B2 (ja) 2020-03-11

Family

ID=58492313

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015192015A Active JP6661074B2 (ja) 2015-09-29 2015-09-29 機能性材料、機能性材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6661074B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021032659A (ja) * 2019-08-22 2021-03-01 国立大学法人信州大学 センサ用流路機構

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6657556B2 (ja) * 2013-09-19 2020-03-04 株式会社リコー 流体デバイス、検査装置、および流体デバイスの製造方法
JP6252751B2 (ja) * 2013-12-18 2017-12-27 株式会社リコー 検査用流体デバイス、転写材、および検査用流体デバイスの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017067558A (ja) 2017-04-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5231567B2 (ja) マイクロ流体デバイス、マイクロ流体デバイスを製造する方法及びマイクロ流体デバイスを含むセンサ
JP7120515B2 (ja) 血液染色パッチ、それを使用する血液検査のための方法及びデバイス
CA2957414C (en) Lateral flow assay device
JP5907979B2 (ja) 補助チャネルおよびバイパス・チャネルを含むマイクロ流体デバイス
DE102013106596B4 (de) Verfahren für die Ausbildung von Biochips mit nicht-organischen Kontaktauflagen für einen verbesserten Wärmehaushalt
WO2003015890A1 (en) Fluidic arrays and method of using
Patari et al. Liquid wicking in a paper strip: An experimental and numerical study
KR20070097458A (ko) 미세유체 분석 장치
JP2009098058A (ja) マイクロチップ
JP6444377B2 (ja) 機能性材料、機能性材料の製造方法および機能性液体
EP2955519B1 (en) Lateral flow membrane for multiparameter readouts and immunoassay device comprising the same
WO2014053237A1 (en) Multilayer microfluidic device and assay method
CN109937092B (zh) 具有微珠集成系统的微流体芯片和芯片中集成受体的方法
US8967853B2 (en) Method and apparatus for mixing fluids
JP6661074B2 (ja) 機能性材料、機能性材料の製造方法
EP3341128B1 (en) Device and method for analysing liquid samples
KR101252940B1 (ko) 조합적 시험용 스트립
JP2008298598A (ja) 微小流体素子とその利用方法およびその製造方法
US11517897B2 (en) Functional material for testing liquid sample
JP2005207938A (ja) 検出素子及び検出方法
EP2012126A1 (en) Porous biological assay substrate and method for producing such substrate
WO2022065086A1 (ja) 構造体
US20150168391A1 (en) Method for treating a porous membrane and uses thereof
JP2004279375A (ja) 生化学解析用ユニット
JP2015068750A (ja) デバイス

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180531

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190402

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20190517

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191204

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20191218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20191218

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6661074

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250