JP6659525B2 - がん、腫瘍、および非悪性疾患を治療するためのナトリウムイオンおよびカルシウムイオンの医薬組成物 - Google Patents

がん、腫瘍、および非悪性疾患を治療するためのナトリウムイオンおよびカルシウムイオンの医薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、独自の処方の医薬組成物および腫瘍内注射の新規の治療方法に関する。本発明の医薬組成物は、ナトリウムイオンおよびカルシウムイオンの飽和イオン溶液(「薬用イオン爆弾(medicinal ion bomb)」)である。「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の発明は、少なくとも9つのヒト臓器におけるがんおよび腫瘍(皮膚および皮下組織、胸部、前立腺、甲状腺の、肺、肝臓、生殖器、脳、ならびに膵臓のがん腫および腫瘍)ならび少なくとも4つの部類の良性疾患(皮膚および皮下新生物、乳房線維嚢胞状変化、良性前立腺肥大症、ならびに甲状腺結節)の治療における第一選択治療として使用することができる。
優先権の主張および関連出願の相互参照
本願は、2011年12月4日に出願された米国仮特許出願第61/566,655号の優先権の利益を主張し、該仮出願の全ての内容は参照してその全体が本明細書に取り込まれる。
がんは、体内の異常細胞の制御されない増殖である。多くの場合、がんは血液およびリンパ管を通して、その原発部位から他の組織に浸潤し、体の他の部位に広がりうる。がんには多くの種類があり、病理学および臨床診断において、がん腫、肉腫、白血病、リンパ腫および骨髄腫、ならびに中枢神経系の悪性腫瘍に分類されうる。
患者と医療提供者の双方にとって、がん治療は依然として困難な試みである。現在の治療としては、手術、化学療法、放射線療法、免疫治療、生物学的療法、レーザー治療、凍結療法、温熱療法などが挙げられる。ここ数十年、がんの予防および治療において著しい進歩がなされてきた一方で、がん生存率は多くの種類のがんで低いままである。米国だけで2011年には150万を超える新しいがん症例があり、50万を超えるがん関連死であると推定される。よって、がんは依然として、公衆にとって大きな健康への脅威である。
2つの発表報告では、高濃度塩化ナトリウムの単一成分が、腫瘍の治療に使用されていた。1つの報告では、Siegleらは、その報告によれば高張生理食塩水を使用して、指の爪や鼓膜下グロムス小体から生じるまれな良性新生物である多発性グロムス腫瘍の1名の患者を治療した(Siegle.et al.1994 J.Dermatologic Surgery & Oncology 20:347−348)。23.4%の塩化ナトリウム溶液の単一成分が使用され、結果としてはその患者の治療は成功しなかった。その患者は、23.4%の高張生理食塩水を用いた腔内注射を6か月の間に4回受けた。もう1つの報告では、Linらは、36.5%の高張生理食塩水を使用して、ウサギの肝腫瘍を治療し、いずれの腫瘍も治療に成功しなかった(Lin.et al.2005 Am.J.Roentgenology 184:212−219)。
したがって、がんに対する新規で効果的な治療に関して、依然として喫緊の必要性がある。
本発明は部分的には、さまざまな種類のがん、悪性腫瘍、良性腫瘍、および非悪性疾患を治療するのに有用な独自の医薬組成物ならびに関連する使用方法の発見に基づく。本発明は、入手可能な価格で、速くて効果的な治療に対する長い間長望まれてきた要望に取り組む。
特に、本発明は、がん、悪性腫瘍、良性腫瘍、および非悪性疾患を治療する新規の医薬組成物の開発に関する。本発明のこの医薬組成物を、「薬用イオン爆弾」と呼ぶ。好ましい実施形態では、「薬用イオン爆弾」の組成物は、5.0479Mのナトリウムイオン(Na)(例えば、塩化ナトリウム(NaCl)から)および250mMのカルシウムイオン(Ca2+)(例えば、塩化カルシウム(CaCl)から)を、滅菌蒸留水中に含む。(1M=1mol/L;1mM=1×10−3M)。特定の好ましい実施例では、組成物は2つの追加成分を含み:腫瘍内注射を行う前に、10ミリリットル(mL)のウルトラビスト370および20ミリグラム(mg)のアドレナリンが、1リットルの「薬用イオン爆弾」溶液と混ぜられる。本明細書において、処方中のNaとCa2+の両方を利用して、がん細胞を死滅させる。
「薬用イオン爆弾」の処方中のNaとCa2+の組み合わせは、相乗的で、相補的な、二重波殺がん効果を提供する。滅菌蒸留水は、溶媒である。ウルトラビスト370は、治療したがんまたは悪性腫瘍内部の「薬用イオン爆弾」溶液の拡散を、コンピューター断層撮影(CT)スキャン誘導下で追跡するためのX線造影剤である。アドレナリンは、「薬用イオン爆弾」組成物を血液循環へ遅延して放出することによって、殺がん効果を高める血管収縮薬である。理論に縛られることを望むものではないが、アドレナリンは、血管の収縮を引き起こし、治療した腫瘍中に、一時的な「人工的腫瘍カプセル(artificial tumor capsule)」を創り出し、「薬用イオン爆弾」溶液が非カプセル(non−capsule)腫瘍塊から流れ出るのを防ぐことができると考えられる。
本明細書において、「薬用イオン爆弾」が、組織培養における18種類のヒトがん細胞系を数分以内に死滅させることができることが示される。また、「薬用イオン爆弾」は、ヌードマウスにおけるヒトがんモデルを数日以内に死滅させた。体重の約2〜3%に等しいマウス腫瘍は、0.12mLの「薬用イオン爆弾」を用いた1回の単回腫瘍内注射によって死滅した。特定のヒト患者では、50ミリメートル(mm)×70mmの大きさの良性腫瘍またはがん病変が、「薬用イオン爆弾」を用いた一回の単回腫瘍内注射によって死滅した。本発明は、6種類の悪性腫瘍またはがんおよび10種類の良性新生物または非悪性病態を患った78名のヒト患者に成功裏に適用されてきている。
1つの態様では、本発明は一般に、腫瘍内注射による投与によって、がん、悪性腫瘍、良性腫瘍、および非悪性疾患治療するのに有用な医薬組成物に関する。その組成物は、水溶液中で約2.0M〜約5.5MのNa濃度をもたらすNa源および約50mM〜約6.0MのCa2+濃度をもたらすCa2+源を、水溶液中に含む。特定の好ましい実施例では、Na源はNaClであり、Ca2+源はCaClである。
別の態様では、本発明は一般に、腫瘍を治療するための医薬組成物の調製に有用な組成物であって、NaおよびCa2+を、適切な量の水を加えたとき、室温で約5.0479MのNaおよび約250mMのCa2+を含む医薬組成物(飽和イオン溶液)を作製するような量で含む組成物に関する。
さらに別の態様では、本発明は一般に、患者における腫瘍を治療する方法であって、室温で、約5.0479MのNaおよび約250mMのCa2+を含む組成物の薬学的有効量を、腫瘍病変に腫瘍内注射または直接注射することを含む方法に関する。
図1は、C57BL6マウスにおけるMCA207マウス肉腫モデルを示す。図1A.8mm×8mmの大きさの治療前腫瘍。図1B.マウスにおける、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図1C.マウス肉腫は、0.10mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回注射によって死滅した。 図2は、ヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルを示す。図2A.マウスの体重の3%±に等しい、13mm×13mmの大きさの治療前腫瘍。図2B.マウスにおける、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図2C.ヌードマウスにおける大きなヒト乳がんモデルは、0.14mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回注射によって死滅した。 図3は、MCF7ヒト乳がん細胞における細胞外液から細胞内液へのCa2+の流入の生体外測定における蛍光Ca2+プローブ法の使用を説明する。図3A.7つの治療前がん細胞を、蛍光Ca2+プローブで標識した。図3B.7つのがん細胞のうち2つが、治療開始後14±秒で、「薬用イオン爆弾」によって死滅した。図3C.7つのがん細胞のすべてが、治療開始後18±で死滅した。Na+の流入を測定する手順は、蛍光Na+プローブを使用することを除いて上記と同様であった。 図4は、ニコンDiaphot倒立顕微鏡のビデオ画像の写真を示す。図4A.治療前MCF7ヒト乳がん細胞。図4Bでは、治療したがん細胞は、「薬用イオン爆弾」を加えた後5〜7秒、組織培養培地中でボルテックス様の回転を経ていた。図4C.がん細胞のすべてが、治療開始後16±秒で死滅した。これら3つの顕微鏡写真の細胞は、同一の視野からのものである。倍率×400。 図5は、「薬用イオン爆弾」を用いて治療した生体内MCA207マウス肉腫の病理学的特徴を描写する顕微鏡写真の一群を示す。図5A.がん細胞の周囲の白い線は、マウスのがん組織中のナトリウムイオン(塩)およびカルシウムイオン(塩)である。倍率×1000。図5B.「薬用イオン爆弾」が達した、治療したがん組織は壊死した。倍率×400。図5C.治療した腫瘍断面における多数の血栓形成。倍率×400。 図6は、ヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルの走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一群を示す。SEM1は対照がん細胞を示す。SEM2.ヒト乳がん細胞の膜は、粉々に断片または破片に壊れていた。SEM3は、腫瘍組織における激しく損傷した腫瘍血管、特に細動脈または細静脈の外皮への損傷を明らかにする。腫瘍血管の多くは、横方向に折れていた。 図7は、ヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルの透過型電子顕微鏡(TEM)写真の一群を示す。TEM1は対照がん細胞であった。TEM2は、がん細胞の大きく損傷した細胞膜、核、ミトコンドリア、および細胞質小器官を示す。TEM3は、腫瘍血管の完全に破壊された完全に外層、中間層、および内層を明らかにする。細静脈の内層の内皮細胞は剥がれた。倍率×5000。 図8は、大きな腫瘍を患った患者に、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射を行なっている臨床医を示す。図8Aは、患者の右肩の40mm×60mmの大きさの治療前腫瘍である。図8Bは、腫瘍を死滅させるための、3mLの「薬用イオン爆弾」加圧注射を示す。図8Cは、針の開口部が上向きであることを指し示し、図8Dでは、針の開口部は下向きであった。 図9は、背下部に非常に大きな扁平上皮がんを3年間患った82歳の女性の症例を示す。図9.1.治療前のがん腫は、70mm×70mmの大きさである。図9.2.26mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた単回腫瘍内注射を、がん病変に投与した。図9.3.これは、治療の5日後の、テレビ装置からのビデオ画像の複製写真である。巨視的には、治療したがん病変全体が完全に死んだ。微視的には、治療したがん組織はすべて壊死した。 図10は、左顔面に扁平上皮がんを患った70歳女性の症例を示す。図10A.治療前のがんは、15mm×15mmの大きさであった。このがんは、1.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射によって死滅した。図10B.ヒト患者における、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図10C.治療後7日、腫瘍は、黒焦げの死んだ腫瘍のように見えた凝固性壊死を示していた。傷は2週内に欠陥なしに治癒した。治療後3年の追跡調査を行った際に、がんは再発していなかった。 図11は、皮膚悪性腫瘍を患った52歳女性の症例を示す。これは、その親腫瘍(parental tumor)(黒色)から増殖している第2の腫瘍(子腫瘍(offspring tumor)、茶色)を有する珍しい腫瘍である。図11A.治療前の腫瘍は、20mm×20mmの大きさであった。図11B.ヒト患者における、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図llC.2つの腫瘍は、0.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射によって3日で死滅し、傷は治療後2週内に治癒した。3年の追跡調査は、腫瘍の再発がないことを示した。 図12は、陰茎から左鼠径部に転移がんを患った74歳男性の症例を示す。図12A.治療前のがんは、50mm×70mmの大きさであった。図12B.がん病変を、3.5mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射によって治療した。図12C.ヒト患者の大きながんは4日内に死滅し、傷は3週内に治癒した。 図13は、胸部前面に黒色腫を2年間患った82歳の男性の症例を示す。図13A.ヒト患者における典型的な治療前の蝶の模様の黒色腫。図13B.この黒色腫を死滅させるための、1.2mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を示すビデオ画像の複製写真。図13C.黒色腫は数日で死滅し、傷は治療後3週内に治癒した。9年の追跡調査は、黒色腫の再発がないことを示した。 図14は、胸部前面に基底細胞がんを患った58歳男性を示す。図14.1は、12mm×12mmの大きさの、治療前の基底細胞がんである。図14.2.基底細胞がんは、0.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射の1週後に消失した。図14.3.消失したがん腫の部位は、治療後3週内に治癒した。8年の追跡調査は、治療した基底細胞がんの再発がないことを示した。 図15.1は、62歳男性の肝臓右葉の大きな肝がんを示す、肝動脈を通した血管造影の画像を示す。図15.2.同じ患者の治療前の大きな肝臓のがん腫の画像。長いカテーテル針をこの大きな肝がんの中心に設置し、20mLの「薬用イオン爆弾」溶液を注入した。図15.3.がんは、治療後7日で、治療前67mm×67mm×80mmから治療後45mm×45mm×60mmの大きさに小さくなった。 図16は、発明者の臨床研究グループの乳房線維嚢胞状変化を患った女性の症例を示す。図16.1.治療前マンモグラフィーの画像は、左乳頭のうしろに位置した40mm×40mmの大きさの大きな嚢胞を示し、数個の小さな線維嚢胞性の病変が、大きな嚢胞を囲んでいた。図16.2.嚢胞内部の粘膜様液体を吸い取り、次に大きな嚢胞の洗浄と吸い取りを繰り返す。次に、3.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回嚢胞内注射を行った。図16.3.線維嚢胞性乳腺疾患が治療後3か月で治癒したことを示す、治療後マンモグラフィーの画像。 図17は、脂肪腫を患った78歳男性の症例を示す。この腫瘍は、18年間首後部にあった。図17A.治療前の腫瘍は、40mm×40mmの大きさであった。図17B.2.0mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を、腫瘍に投与した。図17C.大きな腫瘍は8週内に治癒した。9年の追跡調査は、治療した腫瘍の再発がないことを示した。 図18は、粉瘤を患った患者の症例を示す。図18A.頭頂の治療前の粉瘤は、18mm×18mmの大きさであった。図18B.0.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を示すビデオ画像の複製写真。図18C.粉瘤は2001年に治癒した。9年の追跡調査を行った際に、この写真を撮った。 図19は、22mm×28mmの大きさの大きな粉瘤を患った66歳男性の症例を示す。2001年に、1.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を使用して、腫瘍を治療した。9年の追跡調査は、治療した腫瘍の再発がないことを示した。 図20は、美容症状(cosmetic conditions)における、「薬用イオン爆弾」を用いた病変内注射の適用を示す。図20.1は、患者の顔面の皮膚ほくろを示す。図20.2.0.2mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回病変内注射。図20.3.ほくろは、治療後7日内に凝固性壊死になった。図20.4.皮膚ほくろは、傷跡欠陥なしに除去された。 図S1は、本発明の臨床データの説明である。 図S2は、本発明の臨床データの説明である。 図S3は、本発明の臨床データの説明である。 図S4は、本発明の臨床データの説明である。 図S5は、本発明の臨床データの説明である。 図S6は、がん治療用の「薬用イオン爆弾」の理論および機序に関する説明である。 図S7は、がん治療用の「薬用イオン爆弾」の理論および機序に関する説明である。 図S8は、本発明の臨床データの説明である。 図S9は、本発明の臨床データの説明である。 図S10は、本発明の臨床データの説明である。 図S11は、本発明の臨床データの説明である。 図S12は、本発明の臨床データの説明である。 図S13は、本発明の臨床データの説明である。 図S14は、本発明の臨床データの説明である。 図S15は、本発明の臨床データの説明である。 図S16は、本発明の臨床データの説明である。 図S17は、本発明の臨床データの説明である。 図S18は、本発明の臨床データの説明である。 図S19は、本発明の臨床データの説明である。 図S20は、本発明の臨床データの説明である。
本発明は偶然の機会からひらめいたものである。以前、発明者はマウスの実験的な腫瘍治療でヒ素の腫瘍内注射を使用したが、奏効しなかった。ある日、発明者は、中国系スーパーマーケットへ買い物に行き、1ダースの塩漬けにしたアヒルの卵を購入した。帰宅途中に、彼は、なぜ塩漬けにしたアヒルの卵が腐ることなく何年も室温で保存できるのかを思案した。その答えは、塩漬けにしたアヒルの卵中のタンパク質と卵黄が、高濃度の塩(塩化ナトリウム)、特に高濃度のナトリウムイオンによって凝結または凝固していることである。発明者は、この現象を細胞生物学、細胞生理学、膜電位、イオン科学、およびがん治療に結び付け、塩漬けにしたアヒルの卵で起こったことのように、高濃度の塩化ナトリウムが、がん細胞内のタンパク質を凝結または凝固させるかもしれないと推測した。
高濃度の塩化ナトリウム、塩化カルシウムのさまざまな溶液、およびナトリウムとカルシウムイオンをともに有する「薬用イオン爆弾」溶液を用いて、一連の実験を行った。C57BL6マウスにおいて、MCA207マウス肉腫、MC38マウス結腸直腸がん、およびB16F1マウス黒色腫の3種の動物腫瘍モデルを樹立した。腫瘍が8mm×8mmの大きさに達したとき、腫瘍内注射の治療を開始した。
36頭のC57BL6腫瘍マウスを、腫瘍の種類によって、無作為に3つの群に分けた(各群12頭の動物)。次に、各群の動物をさらに4つのサブグループに分けた(各サブグループに3頭の腫瘍マウス)。サブグループ−1の腫瘍動物は、対照として、0.1mLの通常の生理食塩水を用いた腫瘍内注射によって処置した。サブグループ−2の腫瘍動物は、0.1mLのさまざまな濃度の塩化ナトリウム溶液を用いた腫瘍内注射によって治療した。サブグループ−3の腫瘍動物は、0.1mLのさまざまな濃度の塩化カルシウム溶液を用いた腫瘍内注射によって治療した。サブグループ−4の腫瘍動物は、「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射によって治療した。
治療の24、48、および72時間後に、治療した腫瘍の壊死の面積の大きさを、定規を使用して測定することによって実験結果を評価した。腫瘍の壊死は、対照群では見られなかった。しかし、高濃度の塩化ナトリウム溶液、塩化カルシウム溶液、および「薬用イオン爆弾」溶液を用いて治療した腫瘍のすべてでは壊死が起こった。代表例では、0.1mLの5.0479Mの塩化ナトリウム溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射は、治療後48時間で治療したすべての腫瘍の平均90%±5の壊死を引き起こした。0.1mLの250mM、1.0M、1.5M、2.0M、および3.0Mの塩化カルシウム溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射は、治療後48時間で治療したすべての腫瘍の凝固壊死を引き起こした。0.1mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射は、治療後48時間で治療したすべての腫瘍の100%壊死を達した。
さらに、発明者は、ヌードマウスにおける、U87ヒト神経膠芽腫、MCF7ヒト乳がん、およびPC3ヒト前立腺がんを含む3つのヒトがんモデルに対する「薬用イオン爆弾」の治療効果を検討した。ヌードマウスの数、動物のグループ分け、ならびに実験方法および各サブグループの注射量はすべて、C57BL6マウス腫瘍モデルと同一であった。データは、0.1mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射は、ヌードマウスにおける全3種類のヒトがんモデルの各々で腫瘍を成功裏に除去したことを示した。
「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射は、治療中の78名のヒト患者に成功裏に適用された、例えば、6種類の悪性腫瘍またはがん腫(基底細胞がん、扁平上皮がん、上顎がん、黒色腫、陰茎からの転移がん、および肝がん)ならびに10種類の良性腫瘍(粉瘤、脂肪腫、新生物、嚢胞、乳房線維嚢胞状変化、リンパ節腫大、甲状腺結節、生殖器腫瘍、皮膚ほくろ、および美容(cosmetics))。「薬用イオン爆弾」は、NaおよびCa2+の2つの有効成分または塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムの2つの有効化合物を含む。好ましい実施形態では、「薬用イオン爆弾」は、5.0479Mの塩化ナトリウムおよび250mMの塩化カルシウムを、滅菌蒸留水の溶液中に含む。
好ましい実施形態では、「薬用イオン爆弾」の投与のルートは、「薬用イオン爆弾」の対象における腫瘍またはがんへの腫瘍内注射(例えば、直接注射)による。
ナトリウムイオン(例えば、NaCl)を単独で腫瘍内注射に使用する場合、Naの有効治療濃度は、室温で、約2.0M〜約5.4414Mの範囲である。カルシウムイオン(例えば、CaCl)を単独で腫瘍内注射に使用する場合、Ca2+の有効治療濃度は、室温で、約50mM〜6.0Mの範囲である。
なお、Na源はNaClに限定されず、Ca2+源はCaClに限定されないことに留意する。Naの他の例としては、無機塩または有機塩、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、および塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。Ca2+の他の源としては、無機塩または有機塩、例えば、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および酢酸カルシウムなどが挙げられる。
本明細書における「薬用イオン爆弾」組成物と、塩化ナトリウムの単一成分を使用した以前の2つの報告とには多くの違いがある。(1)本発明は、イオンであるNaおよびCa2+をがん治療に使用するものである。しかし、以前の報告は高張生理食塩水を使用した。(2)「薬用イオン爆弾」組成物は、最高で5つの成分を特定の量で含む。発明者は、NaとCa2+を医薬処方中で合わせたとき、新たに処方された「薬用イオン爆弾」が、相乗的で、相補的な、二重波殺がん効果を生み出すことを発見した。(3)カルシウムイオンは、細胞シグナル伝達生物学における二次情報伝達物質の1つであることから、本発明ではカルシウムイオンが、がん治療の「エンハンサー」として使用される。また、カルシウムイオンは多くの酵素の代謝に関与して、プロテインキナーゼCを活性化し、別の二次情報伝達物質であるcAMPの活性化を助ける。カルシウムイオンはタンパク質カルモデュリンを調節して、アルファらせん構造を作る。したがって、細胞内液のカルシウムイオンの量のわずかな増加は、細胞の内部環境における非常に大きな病態生理学的な変化および細胞の分子調節における大規模な生物学的変換を引き起こし、治療したがん細胞の病的状態またはアポトーシスもしくは死のいずれかをもたらす。(4)本明細書において開示される「薬用イオン爆弾」のイオン濃度は、大量の実験データに基づいて処方される。(5)本発明では、高濃度のNaおよびCa2+ががん細胞を死滅させる機序は、細胞生理学、分子生物学、細胞膜生物学、膜電位、イオンチャネル、病理学、走査型電子顕微鏡法(SEM)、および透過電子顕微鏡法(TEM)の方法から確かめられている。(6)本明細書における本発明は、初めて「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の適応を進め、「薬用イオン爆弾」を用いた精密誘導腫瘍内注射は、約9つのヒト臓器のがん、悪性腫瘍、良性腫瘍、および非悪性疾患(皮膚および皮下組織、胸部、前立腺、甲状腺の、肺、肝臓、生殖器、脳、ならびに膵臓のがん腫および腫瘍)ならびに4つのカテゴリーの良性疾患(皮膚および皮下新生物、乳房線維嚢胞状変化、良性前立腺肥大症、ならびに甲状腺結節)の治療に適応される。(7)「薬用イオン爆弾」の好ましい投与のルートは、がん病変または腫瘍病態への、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射または直接注射による。(8)CTスキャンまたは超音波イメージングの誘導下で、がんおよび他の良性疾患を治療するに際して、「薬用イオン爆弾」を用いた、精密誘導腫瘍内注射の概念および定義を使用するのは初めてである。(9)好ましい「薬用イオン爆弾」溶液中のNaの濃度は、以前の2つの報告の濃度と異なる(例えば、特許請求した発明の処方は、滅菌蒸留水中に5.0479MのNa+(NaCl)および250mMのCa2+(CaCl)を含み、飽和イオン溶液となる)。(10)「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の発明は、6種類のがんならびに10種類の良性腫瘍および非悪性疾患を患った78名のヒト患者の治療に成功裏に使用されてきている。したがって、種々の疾患の治療における本発明の臨床適応は、以前に報告されたものと異なる。
本明細書で使用される場合、「良性腫瘍」は、限定されないが、ヒト患者の腺腫、血管腫、粉瘤、線維腫、脂肪腫、奇形腫、甲状腺腺腫、嚢胞、ポリープ、皮膚ほくろ、スキンタッグ、および皮膚疣贅、ならびに他の新生物病態を含む、病理学的分類におけ1つまたは複数の固形腫瘍または新生物のすべてを指す。
本明細書で使用される場合、「悪性腫瘍」は、限定されないが、ヒト患者のがん、がん腫、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、脳腫瘍、ならびに他の悪性腫瘍を含む、病理学的分類における1つまたは複数の固形悪性腫瘍を指す。
「薬用イオン爆弾」の開発における細胞生理学
細胞生理学では、正常細胞、腫瘍細胞、またはがん細胞の生存は、細胞内外の浸透圧の平衡に依存する。細胞の正常な浸透圧は、細胞外液と細胞内液との間のイオン濃度の平衡に依存する。生理学的に、Na、K、およびCa2+は、生細胞の維持に重要な役割を果たす。細胞外液と細胞内液との間のイオン濃度が同一の場合、等張と呼ばれる。細胞は平衡状態にあるので、イオン濃度勾配が存在せず、水の流入は水の流出に等しい。これは、細胞の病的状態または死を引き起こさない。細胞が、細胞の内側に外側より高いイオン濃度を有する場合、高張である。これは細胞への水の純流動を引き起こす。細胞内部に外部より低いイオン濃度を、細胞が有する場合、低張であり、水は細胞から流出する(Costanzo LS、2010 Costanzo Physiology、第4版、Saunders社、フィラデルフィア)。
この原則に限定する意図はないが、細胞外液と細胞内液との間のNaおよびCa2+の濃度における重要な変化は、細胞の病的状態、アポトーシス、または死のいずれかを結果としてもたらす、細胞の生理機能に非常に大きな変換を引き起こすと考えられている。「薬用イオン爆弾」は、組織培養のがん細胞系、動物のがんモデル、およびヒト患者の大きながん腫を死滅させるのに、高濃度のNaおよびCa2+を有するように意図的に設計されている。
1つの戦略は、NaおよびCa2+を迅速に細胞の膜を越えて細胞内液へ運べる細胞外液または腫瘍内組織に、高濃度の両方のイオンを送達することである。
初めに、腫瘍およびがんの治療におけるNa、K、Ca2+、およびMg2+の潜在的な役割を試験した。BALB/cマウスにおける生体内実験を行った。Na、K、Ca2+、およびMg2+の高濃度溶液を筋肉内注射した。しかし、高濃度のKおよびMg2+溶液は有毒で、下肢のまひ、心血管系および肺系の不全、ならびに動物の死を引き起こした。実験を高濃度のNaおよびCa2+溶液に集中させた。
さまざまな濃度の塩化ナトリウム溶液を調製し、1.0Mから始めて、1.5M、1.711M、3.0M、4.28M、4.449M、5.0479M、5.133M、5.4414Mへと試験した。多様な濃度の塩化カルシウム溶液を調製し、25mMから始めて、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、400mM、500mM、901mM、および1.0M、1.5M、2.0M、3.0M、4.0M、5.0M、5.5M、6.0Mへと試験した。
比較試験の後、好ましい「薬用イオン爆弾」の処方は、滅菌水中で5.0479MのNaおよび250mMのCa2+であることがわかり、それは室温におけるNaおよびCa2+の組み合わせの飽和イオン溶液である。
Naを「薬用イオン爆弾」の第一の有効成分に選ぶことには、少なくとも3つの理論的根拠がある。(1)Naは必須で安全なイオンであり、体内のその濃度は非常に柔軟性がある。薬用塩化ナトリウム溶液は、ヒト患者の静脈内注入に長年使用されてきた。適切な濃度で使用されたとき、Naが有毒または突然変異誘発物質であるという証拠はない。(2)Naは、生体組織および腫瘍組織中で高速で拡散するという独自の特徴を有する。リアルタイムX線イメージングのモニターで示されるように、本発明では、5.0479Mの塩化ナトリウム溶液の拡散は、ヌードマウスにおけるヒトがんモデルでは、1.0Mおよび2.0Mの塩化カルシウム溶液より約25倍速い。(3)適応があれば、高濃度の塩化ナトリウム溶液は、C57BL6マウスおよびヌードマウスにおけるヒトがんモデルにおいて、複数の種類の動物腫瘍を死滅させることができる。
この研究では、Ca2+は、「薬用イオン爆弾」の第二の有効成分として使用される。Ca2+は細胞シグナル伝達生物学における二次情報伝達物質の1つであり、その細胞内濃度は0.0001mM未満である。我々は、250mMのCa2+を含有する組織培養培地が、18種類のヒトがん細胞系の病的状態、アポトーシス、および死を誘発することを確認した。蛍光Ca2+プローブを使用する蛍光顕微鏡観察は、250mM、1.0M、1.5M、2.0M、および3.0MのCa2+溶液が直ちにがん細胞の病的状態または死を引き起こすことを示した。
「薬用イオン爆弾」の細胞外殺傷試験
さまざまな濃度のNaおよびCa2+溶液、および好ましい「薬用イオン爆弾」溶液の役割を試験した。腫瘍細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補ったDMEMまたはRPMI1640培地中で培養した。対照群の培地には、「薬用イオン爆弾」溶液を含まない。「薬用イオン爆弾」溶液は、18つの実験がん群すべてに加えられた。がん細胞の大部分を、トリパンブルー色素排除試験またはフローサイトメトリーによって評価した。データは、「薬用イオン爆弾」が、3〜30分で、組織培養中の、A549ヒト肺がん、AROヒト甲状腺がん、CWR−22ヒト前立腺がん、HeLaヒト子宮頸がん、HL60ヒト白血病、HT−29ヒト結腸直腸がん、JurkatヒトT細胞白血病、K562ヒト白血病、M2ヒトリンパ腫、M24ヒト黒色腫、MCF7ヒト乳がん、MDA−MB−231ヒト乳腺がん、OVCAR3ヒト卵巣がん、PC3ヒト前立腺がん、SK−RC−52ヒト腎がん、T−47Dヒト胸部上皮腫瘍、LNCapヒト前立腺がん、およびU87ヒト神経膠芽腫を含む18種類のヒトがん細胞系を死滅させたことを示した。
Na およびCa 2+ の最少および最大有効治療濃度
「薬用イオン爆弾」の生体内治療効果を、3つのマウス腫瘍モデルで試験した。高濃度の塩化ナトリウム溶液、塩化カルシウム溶液、および好ましい「薬用イオン爆弾」溶液を、C57BL6マウスにおける、MCA207マウス肉腫、MC38マウス結腸直腸がん、およびB16F1マウス黒色腫に注射した。データはNa溶液を、その最小有効治療濃度は室温で2.0Mであることを示した。3Mの濃度のNa溶液は、48時間で、治療したすべての腫瘍のうち平均30%±10の壊死を引き起こした。1回の5.0479MのNa溶液を用いた単回腫瘍内注射は、48時間で、治療したすべての腫瘍のうち平均90%±5の壊死を引き起こした。最大有効治療濃度のNa(例えば、塩化ナトリウム)溶液は、室温で5.4414Mであり、48時間で、治療したすべての腫瘍のうち平均92%±5の壊死を引き起こした。腫瘍への腫瘍内注射または直接注射について、最小有効治療濃度のCa2+(例えば、塩化カルシウム)溶液は室温で50mMであり、単独で腫瘍内注射に使用した場合、最大有効治療濃度は室温で6.0Mであった。しかし、高濃度の塩化カルシウム溶液は有毒であり、注射部位に治癒しない損傷を引き起こす。
腫瘍組織における「薬用イオン爆弾」の拡散
生体外拡散実験を、新鮮なウシ肝臓で室温にて行った。30部の「薬用イオン爆弾」溶液を、1部の墨と混ぜた。ウシ肝臓に、混合した「薬用イオン爆弾」溶液を、1.0mLから始めて、2.0mL、および3.0mL注射した。注射の60分後、ウシ肝臓を切って、拡散面積の大きさを定規で測定した。
X線イメージングの誘導下で、生体内拡散実験をマウスで行なった。99mLの「薬用イオン爆弾」溶液を、1mLのX線造影増強剤ウルトラビスト370と混ぜ、0.12mLの混合「薬用イオン爆弾」溶液をヌードマウスにおけるヒトがんモデルに注射した。通常、8mm×8mm〜10mm×10mmの大きさのマウス腫瘍またはヒトがんモデルは、3〜5分で、0.12mLの混合「薬用イオン爆弾」溶液で完全に満たされた。データは、生きているマウスの腫瘍組織において、5.0479Mの塩化ナトリウム溶液の拡散時間および拡散速度が、1.0Mおよび2.0Mの塩化カルシウム溶液より約25倍速いことを示した。
NaおよびCa2+溶液に由来する異なる拡散時間、異なる拡散速度、および異なる拡散面積についての知見は、発明者に、「薬用イオン爆弾」の処方を創り出すことを促した。本発明の鍵となる考えは、NaおよびCa2+の組み合わせによって、がん、悪性腫瘍、良性腫瘍、および非悪性疾患を治療する強力な「薬用イオン爆弾」を開発することである。腫瘍組織では、Naの拡散は速く、Ca2+の拡散はゆっくりであり、且つ両種のイオンを個々に使用したとき、がんを死滅させる能力をもつので、我々は、「薬用イオン爆弾」の処方中のNaおよびCa2+の組み合わせが、相乗的で、相補的な、二重波殺がん効果を生む出すことになると仮定した。生体内殺がん効果の第1波(初期殺作用)はNaによって媒介され、それは治療後1〜12時間で起こる。生体内殺がん作用の第2波(後期殺傷効果)はCa2+によって媒介され、それは治療後6〜24時間で起こる。現在、この仮説は本明細書において開示されている病理学的知見によって証明されている。
Na −Ca 2+ の流入とがん細胞の死との関係
3つのイオンチャネル追跡手法を利用して、NaおよびCa2+細胞外液から細胞内液への流入とがん細胞の死との関係を説明した。パッチクランプ法は、心筋細胞の膜電位を測定するのに一般に使用される方法である。ここでは、パッチクランプ法を使用して、膜電位の変化とマウス心筋細胞の死との関係を示した。正常マウス心筋細胞をパッチクランプチャンバー中で前培養し、膜電位を「薬用イオン爆弾」溶液の添加前後で測定した。マウス心筋細胞の膜電位は自動的に記録された。5%および10%の「薬用イオン爆弾」培地をパッチクランプチャンバーに加えとき、マウス心筋細胞は、それぞれ5分および3分で死滅した。100%の「薬用イオン爆弾」溶液をパッチクランプチャンバーに加え、マウス心筋細胞は十数秒で死滅した。データは、「薬用イオン爆弾」の殺細胞作用は、投与量および時間依存的であることを示した。
蛍光イオンプローブ法を、がん細胞の細胞外液から細胞内液へのNaおよびCa2+の流入の試験に使用した。「薬用イオン爆弾」溶液の細胞チャンバーへの添加前後に、NaまたはCa2+プローブのがん細胞への流入の蛍光画像および時間をリアルタイムで記録した。がん細胞が死滅した場合、NaまたはCa2+プローブで標識されたがん細胞の蛍光画像は、コンピューター画面から消滅し、がん細胞の膜が崩壊したか、がん細胞全体が破裂したかのいずれかを示す。蛍光Naプローブ画像データは、5.0479MのNa溶液の単独の使用は、MCF7ヒト乳がん細胞を死滅させるのに20±4秒かかったことを示した。好ましい「薬用イオン爆弾」溶液を使用した場合、同種類のがん細胞を死滅させるのに18±4秒かかり、Ca2+がん治療におけるエンハンサー効果を有することを示し、NaおよびCa2+の組み合わせの処方は、相乗的で、相補的な殺がん効果を有することを示した。
ニコンDiaphot倒立顕微鏡観察は、生細胞の研究用のリアルタイム画像システムである。それは、ビデオイメージング装置および写真ユニットを備えている。ビデオデータは、「薬用イオン爆弾」が、がん細胞を死滅させる次の5つの病理学的段階を明らかにした:(1)がん細胞の細胞膜の急速な崩壊;(2)「薬用イオン爆弾」添加後の細胞外液中の高濃度のNaおよびCa2+によるがん細胞の急性脱水(3)大量のNaおよびCa2+の細胞外液から細胞内液への流入によるがん細胞の膨張;(4)極度に膨張したがん細胞によって引き起こされるがん細胞の破裂;ならびに(5)その後すぐのがん細胞死。がん細胞を損傷する5つの病理過程の全体は、十数秒で起こり、病理学的段階の各々はわずか3〜4秒で起こった。
生理的状態の下では、細胞外液中のNaの濃度は140mMであり、細胞内液では14mMである。好ましい「薬用イオン爆弾」溶液は、5.0479MのNaを有するので、がん細胞の細胞外液中のNaの濃度はその正常レベルより36倍高く、細胞内液中のNaの濃度はその正常濃度より約360倍高い。結果として、「薬用イオン爆弾」中の極めて高濃度のNaによって、がん細胞は十数秒で死滅する。
他方では哺乳類細胞において、細胞外液中のCa2+の正常濃度は2.5mMであり、細胞内液では0.0001mMである。「薬用イオン爆弾」は250mMのCa2+を含有し、それは細胞外液中のその生理的レベルより100倍高く、細胞内液ではその生理的濃度より約250万倍高い。Ca2+は、細胞シグナル伝達生物学における二次情報伝達物質の1つであるので、細胞内液中の高濃度のCa2+は、がん細胞に対して非常に大きな生理的損傷を引き起こすだけでなく、大規模な生物学的傷害も引き起こす。したがって、「薬用イオン爆弾」中の高濃度のCa2+は、殺がんエンハンサーであり、がん細胞の死を加速することができる。
病理学的および超微細構造的研究
「薬用イオン爆弾」を用いた治療の24時間後、顕微鏡観察、SEM、およびTEM用の標本を、がんを「薬用イオン爆弾」を用いて治療したMCF7ヒト乳がんをもつヌードマウスまたは患者から採取した。病理検査用のスライドを、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、SEMおよびTEM用の標本を、付随の取扱説明書に従って調製した。
「薬用イオン爆弾」を用いて治療したヒトがんの代表的な病理学的特徴としては、以下が挙げられる:(1)がん細胞の周辺組織に浸潤したナトリウムイオン(塩)およびカルシウムイオン(塩);(2)「薬用イオン爆弾」溶液が達した腫瘍組織およびがん細胞の壊死、「薬用イオン爆弾」溶液で腫瘍を完全に満すことが、がんを死滅させるまたは治癒させるのに必要な条件であることを示す;(3)腫瘍血管における血栓形成;ならびに(4)傷ついた腫瘍血管構造に由来する壊死領域における大量出血。
SEMは、「薬用イオン爆弾」を用いて治療したヒト乳がんモデルは、無数の微小の穴を伴ったがん細胞膜の破壊を呈することを示した。がん細胞の膜は、粉々に断片または破片に壊れた。腫瘍血管の外層組織が剥がれた。腫瘍組織の細動脈または細静脈の横方向の破裂が見られた。TEMは、がん細胞の細胞膜、ミトコンドリア、リソソーム、および核の破壊を示した。腫瘍血管の内側の内皮細胞は、血管内腔から裂けて分れた。大部分のがん細胞は幾つかの部分に破裂し、治療したがんの間質組織は粉砕された。治療したマウス腫瘍およびヒトがんモデルのこれらすべての病理学的および超微細構造的な特徴は、核爆弾の被爆地(the site of post−nuclear bombing)のように見えた。
ヒト患者における「薬用イオン爆弾」の適用
78名のヒト患者のうち11名の患者が悪性腫瘍またはがんを患い、皮膚基底細胞がんの2症例、皮膚扁平上皮がんの3症例、黒色腫の2症例、上顎腺がんの1症例、陰茎からの転移がんの1症例、および肝がんの2症例が含まれる。治療後3か月でに死亡した末期の上顎がんを患った患者1名を除いて、他の10名のがん患者が、「薬用イオン爆弾」を用いた1回の単回腫瘍内注射によって成功裏に治療された。10種類の良性腫瘍および非悪性疾患を患った他の67名の患者(生殖器新生物の1症例、甲状腺結節の1症例、リンパ節腫大の2症例、皮膚ほくろの3症例、嚢胞の4症例、乳房線維嚢胞状変化の4症例、美容症状の6症例、新生物の10症例、粉瘤の15症例、および脂肪腫の21症例)を成功裏に治療した。
良性腫瘍またはがん病態が、体表面または皮下組織に位置する場合、腫瘍は直視下で治療でき、麻酔は使用しない。患者を診療用台に来させる。腫瘍部位を70%アルコールで消毒した後、19ゲージ針を腫瘍の中心に入れる。腫瘍またはがん病変を、好ましい「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射によって治療する。腫瘍の反対側の被膜まで突き抜けないように、特に注意を払う。適切な注射圧を3〜5分間維持して、確実に腫瘍全体を「薬用イオン爆弾」溶液で完全に満たす。一般に、患者には一連の治療を通して何事も起こらない。治療の7日後、14日後、21日後、および28日後に、追跡調査を行なった。
例えば、脳腫瘍または膵がんなど、悪性腫瘍またはがん病変が体の深部組織に位置する場合、全身麻酔を使用する。好ましい「薬用イオン爆弾」を用いた精密誘導腫瘍内注射をCTスキャン誘導下で行なって、腫瘍全体がウルトラビスト370と混合した「薬用イオン爆弾」で完全に満たされるかどうかをモニターする。治療後、患者を数日間入院させ、7日後、14日後、21日後、および28日後にCTスキャンによって追跡調査を実施して、治療したがん病変が大きさを縮小するか、完全に死滅するかを決定した。
腫瘍内注射に使用される針は、サイズが19ゲージ〜26ゲージであり、深部組織の腫瘍には、腫瘍の大きさおよび位置に応じて特別に長い針を使用する。針および特別に長い針は、どの角度にも曲げることができ、外科的処置が利用不可能な場合、またはがん病態が手術不可能な場合、腫瘍またはがん病変に達することができる。
本発明の独自の有利な点は、手術、化学療法、および/または放射線療法を必要とすることなく治癒または効果的に治療しうるがん患者の第一選択治療として、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射が使用できることである。他方では、本明細書において提供される治療は、手術、化学療法、放射線療法、免疫治療、生物学的療法、および他のがん治療と組み合わせて、がん治療の治療結果を高めうる。
本明細書において開示されるNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに方法は、術前にがん患者に投与して、インサイチュでがん病変を死滅させることができる。次に、「死んだがん」を、手術によって安全に除去する。この戦略の有利な点は、外科的処置からの医原性のがん転移のリスクまたは術中にがん組織が広がるリスクを減じることであり、それにより患者生存率および腫瘍治癒の可能性が高まる。
本明細書において開示されるように適切に投与した場合、本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物は、炎症、発熱、発がん、および突然変異誘発などの副作用を引き起こさないと考えられる。
本発明におけるNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の治療方法は、限定されないが、基底細胞がん、黒色腫、肉腫、皮膚がん、および他の皮膚悪性病態を含む、皮膚および皮下のがんおよび悪性腫瘍を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。また、それらの医薬組成物および治療方法は、限定されないが、腺腫、粉瘤、血管腫、脂肪腫、皮膚ほくろ、スキンタッグ、および皮膚疣贅、ならびに他の新生物病態を含む、皮膚および皮下の良性腫瘍を患っている患者における第一選択治療としても使用されうる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、限定されないが、神経膠腫、腺腫、および他の脳腫瘍を含む脳腫瘍を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。脳腫瘍を患っている特定の患者では、本発明の医薬組成物および治療方法は、脳腫瘍を除去するためのリスクの高い脳手術を受けずに治癒する可能性の機会を患者にもたらす。神経膠腫および他の種類の脳腫瘍を患っている特定の患者は、CTスキャン誘導下で脳腫瘍中に長めの針を設置するために頭蓋骨に小さな穴を開ける小手術を受けるだけである。この治療により、患者死亡率が大きく減少し、患者生存率および腫瘍治癒の可能性が増加する。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、甲状腺がんを患っている患者における第一選択治療として使用されうる。そのような患者は、リスクの高い手術または同位体放射線療法を回避しうる。この治療は、外科的処置からの副甲状腺に対する損傷から患者を保護できる。くわえて、この治療は、甲状腺全摘除術または甲状腺亜全摘除術を受ける予定をしている患者における予防的がん治療としても使用することができる。例えば、術前に甲状腺がん病変を、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射によって、インサイチュで死滅させることができ、次に「死んだ甲状腺がん」を手術によって安全に除去することができる。この戦略は、外科的処置からの医原性のがん転移または術中にがん組織が広がることから患者を保護し、患者生存率および腫瘍治癒の可能性を高める。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、例えば、腺腫、甲状腺腺腫、嚢胞、および甲状腺の小結節を含む甲状腺の良性腫瘍を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、原発性または再発性甲状腺機能亢進症を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。患者はリスクの高い同位体放射線療法または手術を回避できる。治療前に、患者はヨウ素を口から服用する。患者の甲状腺が小さくなったとき、両甲状腺での「薬用イオン爆弾」を用いた甲状腺内注射を行った。患者は、各甲状腺における長軸方向の注射を、超音波イメージング装置またはCTスキャンの誘導下で行なうことによって簡単に治療される。甲状腺機能亢進症の治療において「薬用イオン爆弾」を使用する機序は、手術および同位体放射線療法によるのと同じように甲状腺ホルモン産生細胞の数を減らすことである。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、乳がんを患っている患者における第一選択治療として使用されうる。特定の乳がん患者では、本発明は、非外科的な介入を使用して治癒する可能性の機会をもたらす。そのような患者は、破壊手術を回避できる。また、本発明における「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射は、乳腺腫瘍摘出術または乳房切除術もしくは根治的乳房切除術を検討してきた原発性乳がんを患っている患者における予防的がん治療としても使用できる。手術の2〜3日前に、患者の乳がん病変を、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射によって、インサイチュで死滅させ、次に「死んだ乳がん」を手術によって安全に除去する。さらに重要なことには、手術からの医原性のがん転移から患者を保護し、患者生存率および腫瘍治癒の可能性を高める。患者を診療用台に来させ、局所麻酔で治療する。99mLの「薬用イオン爆弾」溶液を、1mLのウルトラビスト370媒質と混ぜ、混合「薬用イオン爆弾」溶液をCTスキャンまたは超音波イメージング装置の誘導下で乳がん病変に直接注射した。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、限定されないが、乳房の腺腫、線維腫、線維嚢胞状変化、および過形成を含む乳房の良性疾患を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、原発性前立腺がんを患う患者における第一選択治療として使用されうる。特定の患者では、本発明は、重篤な合併症、特に治療後勃起不全およびがん再発のある、従来のホルモン治療、小線源治療、手術または化学療法を受けずに治癒する可能性の機会をもたらす。正常な前立腺は重さが約17グラム〜25グラムである。「薬用イオン爆弾」を用いた精密誘導前立腺内注射は、上記の合併症または副作用を引き起こさない、最小限に侵襲を抑えた治療である。患者を、CTスキャン、超音波、または膀胱鏡の誘導下で、経尿道注射によって安全に治療できる。ヒト患者の他のがん病態の治療における臨床経験によれば、ヒト患者の前立腺がん病変を死滅させるのに、わずか約1.0mL〜2.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液を要する。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、良性前立腺肥大症(BPH)を患う患者に特に適応される。特定の患者では、本発明は、手術またはホルモン治療を受けずに、BPHを治癒する独自の機会をもたらす。本発明の臨床研究のBPHを患った患者の1名は、「薬用イオン爆弾」を用いた前立腺内注射を使用することによって、その状態が著しく改善した。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、原発性膵がんを患っている患者における第一選択治療として使用されうる。特定の乳がん患者では、本発明は、外科的介入を受けずに膵がんを治癒するの可能性の機会を提供する。膵臓は、腹部の後部を横切って胃の裏側に位置する細長い、次第に細くなる臓器である。注射経路(injection access)を背部(the posterior back)に選べば、患者の腹部臓器は損傷を受けない。患者は腹臥位になり、CTスキャンの誘導下で、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射を行った。99mLの「薬用イオン爆弾」溶液を、1mLのウルトラビスト370媒質と混ぜ、次に混合した「薬用イオン爆弾」溶液を、CTスキャンの誘導下で、長めの針または極長の針によって膵がんに直接注射した。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、手術を検討してきた膵がん患者における予防的がん治療として使用されうる。手術の2〜3日前に、患者の膵がん病変を、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射によって、インサイチュで死滅させ、次に「死んだ乳がん」を手術によって安全に除去する。この戦略は、医原性のがん転移から患者を保護し、患者生存率および腫瘍治癒の可能性を高める。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、インスリノーマ、嚢胞、腺腫、および他の膵腫瘍などの、膵臓の良性腫瘍を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、進行期の膵がんが除去不可能な場合、術中の膵がんの緩和治療として使用されうる。開腹術中、「薬用イオン爆弾」溶液を、直視で膵がんに注射する。この治療は、患者のがん病態を軽減し、患者の生活の質を向上できる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、原発性肺がん、肝がん、および腎がんを患っている患者における第一選択治療として使用されうる。治療は、術中に、CTスキャンの誘導または直視で行なう。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、大腸閉塞を伴う結腸直腸がんを患っている患者における緩和治療として使用されうる。内視鏡の誘導下で、「薬用イオン爆弾」をがん病変に直視で注射して、緊急時に際し閉塞症状を軽減する。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、子宮頸がんを患っている患者における第一選択治療として使用されうる。患者は、「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射によって、直視で治療される。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、女性生殖器および男性生殖器の前悪性腫瘍および良性腫瘍を患っている患者における直視での第一選択治療として使用されうる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、経膣的に、または腹腔内視鏡検査法の誘導もしくは低侵襲手術下で治療できる、子宮の平滑筋腫または平滑筋肉腫を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、限定されないが、卵巣がん、奇形腫、および線維性病態を含む卵巣の良性腫瘍および悪性腫瘍を患っている患者における第一選択治療として使用されうる。患者は、腹腔鏡検査の誘導下または低侵襲手術で、腫瘍に長めの針を設置することによって治療される。
本発明のNaおよびCa2+の医薬組成物ならびに治療方法は、美容治療に使用されて、体表面の皮膚ほくろ、スキンタッグ、皮膚疣贅、および新生物を除去しうる。
まとめると、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の本発明は、少なくとも9つのヒト臓器のがんおよび腫瘍(皮膚および皮下組織、胸部、前立腺、甲状腺の、肺、肝臓、生殖器、脳、ならびに膵臓のがん腫および腫瘍)、ならびに4つの部類の良性疾患(皮膚および皮下新生物、乳房線維嚢胞状変化、良性前立腺肥大症、ならびに甲状腺結節)の治療における第一選択治療として使用できる。
動物の腫瘍およびヒトのがん病態における「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の手順についての以下の代表例により、本発明をより具体的に説明する。
がん治療のための「薬用イオン爆弾」の処方は、5.0479MのNaおよび250mMのCa2+ならびに約890mLの滅菌蒸留水を含み、最終体積1リットルの「薬用イオン爆弾」溶液とする。2つの付加組成物としては、20マイクログラム(μg)/mLのアドレナリンおよび10マイクロリットル(μL)/mLのウルトラビスト370X線造影剤が挙げられる。
この処方中のNaおよびCa2+は殺傷力を構成し、蒸留水は溶媒であり、ウルトラビスト370はX線造影剤であり、アドレナリンは血管収縮薬である。研究により、室温で5.0479MのNaClおよび250mMのCaClを使用する「薬用イオン爆弾」溶液の処方が、最大限に効果的な殺がん作用をもつ完全に溶解された飽和イオン溶液であることを確認している。
本発明における「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射の治療方法は、「薬用イオン爆弾」溶液の投与の経路は、「薬用イオン爆弾」溶液の、対象の腫瘍またはがんへの腫瘍内注射(直接注射)によることを主張している。
くわえて、腫瘍内注射のためのNaおよびCa2+の最小および最大有効治療濃度が主張されている。Na(例えば、NaCl)を単独で腫瘍内注射に使用する場合、Naの有効治療濃度は、室温で約2.0M〜約5.4414Mの範囲である。Ca2+(例えば、CaCl)を単独で腫瘍内注射に使用する場合、Ca2+の有効治療濃度は、室温で約50mM〜6.0Mの範囲である。
実施例1
図1は、C57BL6マウスにおけるMCA207マウス肉腫モデルである。図1A.8mm×8mmの大きさの治療前腫瘍。図1B.マウスにおける、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図1C.マウス肉腫は、0.10mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回注射によって死滅した。
実施例2
図2は、ヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルである。図2A.マウスの体重の3%±に等しい、13mm×13mmの大きさの治療前腫瘍。図2B.マウスにおける、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図2C.ヌードマウスにおける大きなヒト乳がんモデルは、0.14mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回注射によって死滅した。
実施例3
図3は、MCF7ヒト乳がん細胞における細胞外液から細胞内液へのCa2+の流入の生体外測定における蛍光Ca2+プローブ法の使用を示す。図3A.7つの治療前がん細胞を、蛍光Ca2+プローブで標識した。図3B.7つのがん細胞のうち2つが、治療開始後14±秒で、「薬用イオン爆弾」によって死滅した。図3C.7つのがん細胞のすべてが、治療開始後18±で死滅した。Naの流入を測定する手順は、蛍光Naプローブを使用することを除いて上記と同様であった。
実施例4
図4は、ニコンDiaphot倒立顕微鏡のビデオ画像の一群の写真を示す。図4A.治療前MCF7ヒト乳がん細胞。図4Bでは、治療したがん細胞は、「薬用イオン爆弾」を加えた後5〜7秒、組織培養培地中でボルテックス様の回転を経ていた。図4C.がん細胞のすべてが、治療開始後16±秒で死滅した。これら3つの顕微鏡写真の細胞は、同一の視野からのものである。倍率×400。
実施例5
図5は、「薬用イオン爆弾」を用いて治療した生体内MCA207マウス肉腫の病理学的特徴を描写する顕微鏡写真の一群を示す。図5A.がん細胞の周囲の白い線は、マウスのがん組織中のナトリウムイオン(塩)およびカルシウムイオン(塩)である。倍率×1000。図5B.「薬用イオン爆弾」が達した、治療したがん組織は壊死した。倍率×400。図5C.治療した腫瘍断面における多数の血栓形成。倍率×400。
実施例6
図6は、ヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルのSEMの一群を示す。SEM1は対照がん細胞を示す。SEM2.ヒト乳がん細胞の膜は、粉々に断片または破片に壊れていた。SEM3は、腫瘍組織における激しく損傷した腫瘍血管、特に細動脈または細静脈の外皮への損傷を明らかにする。腫瘍血管の多くは、横方向に折れていた。
実施例7
図7は、ヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルのTEMの一群を示す。TEM1は対照がん細胞であった。TEM2は、がん細胞の大きく損傷した細胞膜、核、ミトコンドリア、および細胞質小器官を示す。TEM3は、腫瘍血管の完全に破壊された完全に外層、中間層、および内層を明らかにする。細静脈の内層の内皮細胞は剥がれた。倍率×5000。
実施例8
図8は、大きな腫瘍を患った患者に、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射を行なっている臨床医を示す。図8Aは、患者の右肩の40mm×60mmの大きさの治療前腫瘍である。図8Bは、腫瘍を死滅させるための、3mLの「薬用イオン爆弾」加圧注射を示す。図8Cは、針の開口部が上向きであることを指し示し、図8Dでは、針の開口部は下向きであった。
実施例9
図9は、背下部に非常に大きな扁平上皮がんを3年間患った82歳の女性の症例を示す。図9.1.治療前のがん腫は、70mm×70mmの大きさである。図9.2.26mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた単回腫瘍内注射を、がん病変に投与した。図9.3.これは、治療の5日後の、テレビ装置からのビデオ画像の複製写真である。巨視的には、治療したがん病変全体が完全に死んだ。微視的には、治療したがん組織はすべて壊死した。
実施例10
図10は、左顔面に扁平上皮がんを患った70歳女性の症例を示す。図10A.治療前のがんは、15mm×15mmの大きさであった。このがんは、1.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射によって死滅した。図10B.ヒト患者における、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図10C.治療後7日、腫瘍は、黒焦げの死んだ腫瘍のように見えた凝固性壊死を示していた。傷は2週内に欠陥なしに治癒した。治療後3年の追跡調査を行った際に、がんは再発していなかった。
実施例11
図11は、皮膚悪性腫瘍を患った52歳女性の症例を示す。これは、その親腫瘍(黒色)から増殖している第2の腫瘍(子腫瘍、茶色)を有する珍しい腫瘍である。図11A.20mm×20mmの大きさの治療前の腫瘍。図11B.ヒト患者における、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射の標準手順。図llC.2つの腫瘍は、0.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射によって3日で死滅し、傷は治療後2週内に治癒した。3年の追跡調査は、腫瘍の再発がないことを示した。
実施例12
図12は、陰茎から左鼠径部に転移がんを患った74歳男性の症例を示す。図12A.50mm×70mmの大きさの治療前のがん。図12B.がん病変を、3.5mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射によって治療した。図12C.ヒト患者の大きながんは4日内に死滅し、傷は3週内に治癒した。
実施例13
図13は、胸部前面に黒色腫を2年間患った82歳の男性の症例を示す。図13A.その患者の典型的な治療前の蝶の模様の黒色腫。図13B.この黒色腫を死滅させるための、1.2mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を示すビデオ画像の複製写真。図13C.黒色腫は数日で死滅し、傷は治療後3週内に治癒した。9年の追跡調査は、黒色腫の再発がないことを示した。
実施例14
図14は、胸部前面に基底細胞がんを患った58歳男性を示す。図14.1は、12mm×12mmの大きさの、治療前の基底細胞がんであった。図14.2.基底細胞がんは、0.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射の1週後に消失した。図14.3.消失したがん腫の部位は、治療後3週内に治癒した。8年の追跡調査は、治療した基底細胞がんの再発がないことを示した。
実施例15
図15.1.肝動脈を通した血管造影の画像は、62歳男性の肝右葉の大きな肝がんを示す。図15.2.同じ患者の治療前の大きな肝臓のがん腫の画像。長いカテーテル針をこの大きな肝がんの中心に設置し、20mLの「薬用イオン爆弾」溶液を注入した。図15.3.がんは、治療後7日で、治療前67mm×67mm×80mmから治療後45mm×45mm×60mmの大きさに小さくなった。
実施例16
図16は、発明者の臨床研究グループの乳房線維嚢胞状変化を患った女性の症例を示す。図16.1.治療前マンモグラフィーの画像は、左乳頭のうしろに位置した40mm×40mmの大きさの大きな嚢胞を示し、数個の小さな線維嚢胞性の病変が、大きな嚢胞を囲んでいる。図16.2.嚢胞内部の粘膜様液体を吸い取り、大きな嚢胞の洗浄と吸い取りを繰り返す。次に、3.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回嚢胞内注射を行った。図16.3.線維嚢胞性乳腺疾患が治療後3か月で治癒したことを示す、治療後マンモグラフィーの画像。
実施例17
図17は、脂肪腫を患った78歳男性の症例を示す。この腫瘍は、18年間首後部にあった。図17A.治療前の腫瘍は、40mm×40mmの大きさであった。図17B.2.0mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を、腫瘍に投与した。図17C.大きな腫瘍は8週内に治癒した。9年の追跡調査は、治療した腫瘍の再発がないことを示した。
実施例18
図18は、粉瘤を患った患者の症例を示す。図18A.頭頂の治療前の粉瘤は、18mm×18mmの大きさであった。図18B.0.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を示すビデオ画像の複製写真。図18C.粉瘤は2001年に治癒した。9年の追跡調査を行った際に、この写真を撮った。
実施例19
図19は、22mm×28mmの大きさの大きな粉瘤を患った66歳男性の症例を示す。2001年に、1.5mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回腫瘍内注射を使用して、腫瘍を治療した。9年の追跡調査は、治療した腫瘍の再発がないことを示した。
実施例20
図20は、美容症状における、「薬用イオン爆弾」を用いた病変内注射の適用を示す。図20.1は、患者の顔面の皮膚ほくろを示す。図20.2.0.2mLの「薬用イオン爆弾」を用いた単回病変内注射。図20.3.ほくろは、治療後7日内に凝固性壊死になった。図20.4.皮膚ほくろは、傷跡欠陥なしに除去された。
補足例および補足資料
「薬用イオン爆弾」および「薬用イオン爆弾」溶液の調製
ここで、「薬用イオン爆弾」は、表1に示される組成物を指す。
表1.「薬用イオン爆弾」溶液の調製
Figure 0006659525
「薬用イオン爆弾」の溶解度
「薬用イオン爆弾」の組成物は、約890mLの蒸留水に室温で7分内に完全に溶解する5.0479MのNaClおよび250mMのCaClを含み、最終体積1リットルの「薬用イオン爆弾」溶液(飽和イオン溶液)とする。
「薬用イオン爆弾」溶液のpH値
「薬用イオン爆弾」溶液のpH値は、室温で7.32±である。
「薬用イオン爆弾」および「薬用イオン爆弾」溶液
本研究プロジェクトにおけるがん治療用の「薬用イオン爆弾」は、2つの形態で作ることができる。1つは、「薬用イオン爆弾」と呼ばれる、NaClおよびCaClの粉末の形態であり、もう1つは、「薬用イオン爆弾」溶液と呼ばれる液体の形態である。一般に、研究プロジェクトでは「薬用イオン爆弾」および「薬用イオン爆弾」溶液という用語は、互いに交換可能である。
「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射および精密誘導腫瘍内注射
「薬用イオン爆弾」溶液を、体表面、皮膚、または皮下組織の腫瘍またはがんを治療するのに使用する場合、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射と呼ばれる治療が、直視下で行なわれる。腫瘍またはがんが深部組織または内部臓器に位置する場合、「薬用イオン爆弾」を用いた精密誘導腫瘍内注射と呼ばれる治療が、CTスキャンの誘導または超音波の誘導の手段によって正確に行なわれる。
Na 、K 、Ca 2+ 、およびMg 2+ の生体内毒性
初めに、我々は、BALB/cマウスにおける高濃度のNa、Ca2+、K、およびMg2+の生体内毒性を検討した。ここで、35%NaCl、35%CaCl、34%KCl、および35%MgClを使用する筋肉内注射のモデル(「薬用イオン爆弾」溶液中のその投与量のように、各溶液は20mgのアドレナリン/リットルを含有する)が、上記4種類のイオン溶液を用いた腫瘍内注射のモデルとなる。
BALB/cマウスは、NIH基準の規則を満たす契約大学動物施設で飼育および同系交配した。
実験時のBALB/cマウスの体重は30±グラムであった。毒性試験を、0.2mlの35%NaCl、35%CaCl、34%KClまたは35%MgClをそれぞれ用いた筋肉内注射を使用して、マウスで行なった。
合計で、20頭のBALB/cマウス(10頭の雄および10頭の雌)を、各群に4頭のマウスとし5群に無作為に分けた。
群1の動物は、0.2mLの35%NaClを用いた筋肉内注射を受け、実験後生存し、体重が30グラムのマウスでは、0.2mLの35%NaCl溶液を用いた筋肉内注射の投与量が安全であることを示した。
群2の動物は、0.2mLの35%CaClを用いた筋肉内注射を受け、治療の3時間後に死亡し、高濃度のCaClは有毒であるを示した。
群3の動物は、0.2mLの17.5%CaClを用いた筋肉内注射を受け、実験後生存し、低い投与量のCaClを用いた筋肉内注射は安全であることを示した。
群4の動物は、0.2mLの34%KClを用いた筋肉内注射を受け、治療の3時間後に心肺不全で死亡し、高濃度のKCLは有毒であり、「薬用イオン爆弾」の処方中の成分に使用できないことを示した。
群5の動物は、0.2mLの35%MgClを用いた筋肉内注射を受け、治療の3時間後に死亡し、高濃度のMgClは有毒であるを示した。
「薬用イオン爆弾」の18種類のヒトがん細胞系に対する細胞外殺作用
「薬用イオン爆弾」のがん細胞を死滅させるに際しての役割を、組織培養において試験した。10%FCSを補ったDMEMまたはRPMI1640培地を使用して、腫瘍細胞をペトリ皿に播種した。各種の腫瘍細胞系を、5mLプラスチックチューブ中で2×10細胞/mLに調製した。上澄みを遠心分離によって除去し、次に1.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液を各チューブに加えた。3〜5分後、0.5%トリパンブルーを加え、細胞懸濁液と2分間混ぜた。死んだがん細胞の数を倒立顕微鏡下で数えた。フローサイトメトリー用の処理したがん細胞懸濁液の特定の試料をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で調製し、細胞の死亡率を、フローサイトメーター(ベックマン・コールター社、カリフォルニア州)を使用して分析した。
この実験は1つの対照群を含み、その群では、がん細胞は通常の生理食塩水で処理し、他の18種類のヒトがん細胞系を、「薬用イオン爆弾」溶液を用いて処理した。データは、対照群ではがん細胞は死ななかったことを示した。しかし、A549ヒト肺がん、AROヒト甲状腺がん、CWR−22ヒト前立腺がん、HeLaヒト子宮頸がん、HL60ヒト白血病、HT−29ヒト結腸直腸がん、JurkatヒトT細胞白血病、K562ヒト白血病、M2ヒトリンパ腫、M24ヒト黒色腫、MCF7ヒト乳がん、MDA−MB−231ヒト乳腺がん、OVCAR3ヒト卵巣がん、PC3ヒト前立腺がん、SK−RC−52ヒト腎がん、T−47Dヒト胸部上皮腫瘍、LNCaPヒト前立腺がん、およびU87ヒト神経膠芽腫を含む18種類すべてのヒトがん細胞系は、「薬用イオン爆弾」溶液によって3〜30分で死滅した。
マウスおよびヒトにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50
毒物学では、毒素、放射線、または病原体の半数致死量(LD50)は、特定のテスト期間後に試験した集団の構成員の半分を死滅させるのに必要な投与量である。LD50図は、物質の急性毒性の一般的な指標として、しばしば使用される。
この研究においてLD50の実験法を行なう前に、数百頭を超える、腫瘍をもつヌードマウスが「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射を受けた。
実験的治療からの経験は、腫瘍内注射の「薬用イオン爆弾」のLD50は、体重が20±グラムのヌードマウスでは0.15±mLであることを示した。
この群では、12頭のMCF7ヒト乳がんをもつヌードマウスを試験した。ヌードマウスは各々、皮下にMCF7ヒト乳がんを播種された。腫瘍が8mm×8mmの大きさに達したとき、0.15mLの「薬用イオン爆弾」溶液を腫瘍に注射して実験を開始した。動物の死亡および生存の期間および数、腫瘍サイズ、ならびに病理用サンプルを、統計分析のために集めた。
NaClおよびCaClは一般に有毒ではないと考えられている。我々のデータは、「薬用イオン爆弾」の腫瘍内注射LD50が、マウスでは7.5mL/キログラム(kg)であることを確認している。薬理学および毒素学、業界向けガイダンス:成人健常ボランティアにおける治療薬の初回治験での最大安全開始用量の推定(Pharmacology and Toxicology、Guidance for Industry:Estimating the maximum safe starting dose in initial clinical trials for therapeutics in adult healthy volunteers)、FDA、2005年7月、によれば、マウス薬物投与量のヒト等価用量への換算係数は0.081であるので、ヒトにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は次式によって算出される:
7.5mL/kg マウス薬物投与量×0.081=0.6075mL/kg ヒト等価用量(HED)
=179.213mg/kg NaCl+16.86mg/kg CaCl(HED)
本発明のデータは、「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50が、体重が20±グラムのヌードマウスでは0.15mLであることを確認した。下記に示すのは、「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50の、マウス薬物投与量からHEDへの計算ステップである。
マウスにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は次のように算出される。
ヌードマウスの平均体重〜20グラム。
1.0kg=1,000グラム。
1,000グラム/20グラム=50倍。
ヌードマウスにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は0.15mLである。
マウスでは、0.15mL×50倍=7.5mL/kg「薬用イオン爆弾」溶液。
マウスLD50では、7.5mL/kg×295=2212.5mg/kg NaCl。
ここで、295は、「薬用イオン爆弾」溶液の1リットル中の295グラムのNaClを意味する。
マウスLD50では、7.5mL/kg×27.75=208.125mg/kg CaCl
ここで、27.75は、「薬用イオン爆弾」溶液の1リットル中の27.75グラムのCaClを意味する。
ヌードマウスにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は、
7.5mL/kg体重または
=2212.5mg/kg NaCl+208.125mg/kg CaClである。
ヒトにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は次のように算出される。
マウスにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は、7.5mL/kg体重である。
ここで、0.081は、mg/kgでのマウス薬物投与量のmg/kgでのHEDへの換算係数である。
HEDでは、7.5mL×0.081=0.6075mL/kg「薬用イオン爆弾」溶液。
HEDでは、0.6075mL/kg×295=179.213mg/kg NaCl。
ここで、295は、「薬用イオン爆弾」溶液の1リットル中の295グラムのNaClを意味する。
HEDでは、0.6075mL/kg×27.75=16.86mg/kg CaCl
ここで、27.75は、「薬用イオン爆弾」溶液の1リットル中の27.75グラムのCaClを意味する。
ヒトにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射LD50は、
0.6075mL/kg体重または
=179.213mg/kg NaCl+16.86mg/kg CaClである。
・業界向けガイダンス。成人健常ボランティアにおける治療薬の初回治験での最大安全開始用量の推定、薬理学および毒素学、FDA、2005年7月。
「薬用イオン爆弾」溶液のマウスおよびヒトにおける腫瘍内注射最大耐量
最大耐量(MTD:Maximum Tolerated Dose)は、許容不可能な毒性を伴わずに所望の効果を生み出すことになる放射線学的または薬理学的治療の最高用量を指す。
この群では、15頭のMCF7ヒト乳がんをもつヌードマウスを、各サブグループに3頭の動物として5群に分けた。サブグループ−1の動物は、対照として、0.15mLの通常の生理食塩水を用いた腫瘍内注射を受けた。
サブグループ−2の動物は、0.12mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射を受けた。サブグループ−3の動物は、0.13mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射を受けた。サブグループ−4の動物は、0.14mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射を受けた。そして、サブグループ−5の動物は、0.15mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射を受けた。ヌードマウスは各々、皮下にMCF7ヒト乳がんを播種された。腫瘍増殖が8mm×8mmの大きさで実験を開始した。実験データは、体重が20グラムのヌードマウスにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射最大耐量が0.14mLであることを確認した。下記に示すのは、「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射最大耐量の、マウスからヒトへの計算ステップである。
ヌードマウスの平均体重〜20グラム。
1.0kg=1,000グラム。
1,000グラム/20グラム=50倍。
ヌードマウスにおける「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射最大耐量は0.14mLである。
マウスでは、0.14mL×50倍=7.0mL/kgの「薬用イオン爆弾」溶液。
ここで、0.081は、mg/kgでのマウス薬物投与量のmg/kgでのHEDへの換算係数である。
ヒトでは、7.0mL×0.081=0.567mL/kg「薬用イオン爆弾」溶液。
ヒトでは、0.567mL/kg×295=167.265mg/kg NaCl。
ここで、295は、「薬用イオン爆弾」溶液の1リットル中の295グラムのNaClを意味する。
ヒトでは、0.567mL/kg×27.75=15.734mg/kg CaCl
ここで、27.75は、「薬用イオン爆弾」溶液の1リットル中の27.75グラムのCaClを意味する。
「薬用イオン爆弾」溶液の腫瘍内注射最大耐量は、マウスにおいて7.0mL/kgであり、マウス薬物投与量のHEDへの換算係数は0.081である。ここで、ヒトにおける「薬用イオン爆弾」の腫瘍内注射最大耐量は次のように計算される:
HEDでは、7.0mL/kgのマウス薬物投与量×0.081=0.567mL/kg
=HEDでは、167.265mg/kg NaCl+15.734mg/kg CaCl
腫瘍サイズ、腫瘍重量、血液量、および「薬用イオン爆弾」溶液の量
前述のように、我々は、ウシの肝臓における「薬用イオン爆弾」溶液の拡散の生体外実験、生きているラットおよびウサギの肝臓における「薬用イオン爆弾」の拡散の生体内実験、ならびに78名の多種の腫瘍を患ったヒト患者における臨床研究を行なった。ヒト生理学によれば、血液量は成人で約80mL/kg体重である。データは、ヒト患者の2.5cm×2.5cm×3.0cmの腫瘍は、約1.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液で死滅することを示した。約5〜6mLの「薬用イオン爆弾」溶液によって死滅した固形腫瘍は、ヒト患者において大きさが4.5cm×6cmであった。さらに、大きさが7cm×8cmの固形腫瘍は、約20mLの「薬用イオン爆弾」溶液によって死滅した。さまざまな大きさの腫瘍における「薬用イオン爆弾」の推定量は、下記の表2に計算されている。
表2.さまざまな大きさの腫瘍における「薬用イオン爆弾」の必要量の計算
Figure 0006659525
表2は、新鮮なひとまとめのブタ肉を使用して検討した生体外腫瘍サイズおよび腫瘍重量の3回反復測定を示す。腫瘍組織中の血液量の算出は、オックスフォード食品・栄養学辞典(Oxford Food & Nutrition Dictionary)から引用し、そこでは平均血液量は、雄で5.3L(78mL/kg体重)および雌で3.8L(56mL/kg体重)である。ここで、体重1キログラム当たり一定の血液量「80mL」を使用して、さまざまな大きさの腫瘍における血液量を計算する。
図S1.この群の写真は、治験担当医師、医師、腫瘍医が、さまざまな大きさの腫瘍における「薬用イオン爆弾」の必要量を推定するのに有用な、本発明の臨床データの説明である。図S1.1は、2.5cm×2.5cm×3.0cmの大きさ(10.1グラムの重さ)の大きなぶどうの写真である。臨床的に、そのような大きさのがんまたは良性腫瘍は、1.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた1回の単回腫瘍内注射によって死滅する。図S1.2は、4.5cm×4.5cm×6.0cmの大きさ(69グラムの重さ)の卵の写真であり、治療に約6.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液を必要とする。図S1.3は、7.0cm×7.0cm×8.0cmの大きさ(290グラムの重さ)の新鮮なガーラアップルの写真であり、約20mLの「薬用イオン爆弾」溶液を要する。
「薬用イオン爆弾」溶液の注射部位における組織損傷
「薬用イオン爆弾」溶液のみを用いた筋肉注射は、注射部位において、正常筋組織に軽度の損傷を引き起こす。顕微鏡的に、一時的な炎症細胞の浸潤を除いて、筋組織への損傷は目立たなかった。詳細な説明については、図S5を参照されたい。
「薬用イオン爆弾」の急性毒性試験および慢性毒性試験
この試験では、肝機能、腎機能、膵臓および肺の機能、ならびに血中電解質(Na、K、およびCa2+)を含む急性毒性試験を、ラットで検討した。
36頭の、重さが220±グラムの正常なスプラーグドーリー(SD)ラットを、対照群に4頭の動物および各実験群に8ラットとして5つの群に分けた。対照群の動物は各々、筋肉内注射によって、1.0mLの通常生理食塩水(実験群の「薬用イオン爆弾」溶液と同量)を与えられた。
実験群2、3、4、および5の動物は、ラットにおいて、1.0mLの「薬用イオン爆弾」溶液(20μg/mLアドレナリンを含有する最大耐量「薬用イオン爆弾」溶液)を筋肉内注射によって治療した。
群1の動物は対照であり、0日目に動脈(腹部大動脈)血液試料用に犠牲にした。急性毒性試験用に、群2の動物は1日目に試料採取し、群3の動物は2日目に試料採取し、および群4の動物は治療後3日目に試料採取した。慢性毒性試験用に、群5の動物は治療後66日目に試料採取した。臨床パラメーターは以下を含む:
肝機能(血液ALT、総ビリルビン、および全タンパク質)
腎機能(血中尿素窒素、BUN)
膵機能(血糖が膵機能を部分的に反映する)
肺機能(CO分圧、PCO)および
電解質(K、Na、およびCa2+)。
試料は、日立生化学自動分析装置717(ロシュ・ダイアグノスティックス)を使用して試験した。
対照群および実験群のデータは、平均値±標準偏差として表わす。正常対照群と実験群との結果を、エクセル統計ソフトウェアを使用して、分散分析およびスチューデントのt検定によって比較した。p値<0.05を統計的に有意とみなし、p<0.01を高度に有意とした。
肝臓
結果は、最大耐量「薬用イオン爆弾」溶液を、筋肉内投与したとき、「薬用イオン爆弾」溶液は、肝機能に一時的な軽度の損傷を引き起こし、それは治療の4日後に回復することを示した。詳細なデータについては、図S2を参照されたい。図S2.1.肝機能の急性毒性試験に関して、ピークレベルの血中ALTが治療の1日後および2日後に見られ、治療の4日後に正常範囲に戻った。図S2.2.血中総ビリルビンレベルの増加(それでも正常範囲内である)が、初めの2日間に見られ、治療の4日後に正常に戻った。図S2.3.血中全タンパク質の減少が、初めの3日間に見られ、治療の4日後に正常に戻った。これらのパラメーターは、血中ALTおよびビリルビン増加、ならびに血中全タンパク質のレベルの減少は一時的であることを示す。治療の66日後、血中ALT、ビリルビン、および全タンパク質のレベルは正常であり、「薬用イオン爆弾」は、肝機能に対して慢性毒性がないことを示している。
図S2に見られるように、肝機能に対する、「薬用イオン爆弾」溶液にって引き起こされる慢性毒性の証拠はない。
腎臓
BUNのレベルは(正常範囲10〜20mg/dl)、治療の1日後に、対照レベルの7.73から11.82mg/dl(まだ正常範囲であった)に増加した。BUNは2日で8.0mg/dlに劇的に下がり、治療の4日後に対照レベルに戻った。
図S3.1に見られるように、「薬用イオン爆弾」溶液が腎臓に慢性毒性を引き起こす証拠はない。
膵臓
血糖のレベルは、膵臓の機能を部分的に反映することができる。治療1日後および2日後、血糖のレベルは対照レベルより低かった。血糖は、治療の4〜5日後内に対照レベルに戻った。図S3.2に見られるように、膵臓に対する「薬用イオン爆弾」溶液の慢性毒性の証拠はない。

治療後1日目にPCOを調べたのみであった。図S3.3に見られるように、対照レベルと治療後レベルとの間で、PCOに有意差はなく、肺機能に対して、最大耐量「薬用イオン爆弾」治療の急性毒性はないことを示した。
図S3.3.黄色のバーは対照群のPCOを表わし、青色のバーは最大耐量薬用イオン爆弾」溶液を用いて治療した実験群のPCOを表わす。
実験群と対照との間のPCOレベルを比較すると、P>0.05であり、統計的な差はない。
心臓
SDラットで、心拍数、血圧、および呼吸への「薬用イオン爆弾」の効果を、治療中および治療後に、コンピューター支援Buxco Max II Biosystem(Buxco Electronics社、シャロン、コネチカット州)を使用して検討した。上記3つのパラメーターで、異常な結果は見られなかった。
これらのパラメーターの結果は、最大耐量「薬用イオン爆弾」に由来することは指摘されなければならない。これは、臨床診療で問題ではない。一般に、治療されるヒト腫瘍の大きさは、「薬用イオン爆弾」の量が最大耐量に比べて非常に少量であることを要する、直径が10cm×10cm未満である。したがって、最大耐量「薬用イオン爆弾」による軽度で一時的な肝機能の副作用は無視することができる。
「イオン爆弾溶液」の薬物動態
薬物動態モデルは、薬物の投与に続くその体液中の濃度の時間依存性を予測する。薬物動態は主として、吸収、分布、代謝、および排泄(ADME)の程度および速度を含む4つの領域に分けられる。この研究では、「薬用イオン爆弾溶液」を用いた腫瘍内注射の薬物動態を、ラットで調べた。
雄雌両方の重さが200±グラムのSDラット60頭を、各サブグループに2動物として、無作為に30サブグループに分けた。対照群の動物は、0.5mLの通常の生理食塩水を筋肉内に受けた。実験群の動物はすべて、0.5mLの「薬用イオン爆弾」溶液(20μg/mLアドレナリン含有)を用いた筋肉内注射を臀部に受けた(体重が200±グラムのラットにおける「薬用イオン爆弾」溶液の最大耐量は、1.0mLである。この実験では、最大耐量「薬用イオン爆弾溶液」の1/2量を使用した)。開始時点0から治療後15時間の終了時点まで継続して30分毎の間隔で、腹部大動脈を通して血液試料を得た。血液試料中の血漿NaおよびCa2+の濃度を、日立生化学自動分析装置717を使用して分析した。統計的に、対照群および全実験群の平均値を使用して、血漿NaおよびCa2+薬物動態パターンをプロットした。
図S4に示されるように、血漿Naの濃度の50%、63%、および95%への上昇がそれぞれ、2.0、2.5、および3.0時間の治療後の時点で見られた。血漿Naのピークレベルが、治療後3.5時間で認められた。血漿Naのレベルは、治療後7.0、8.0および11時間でそれぞれ、50%、37%、および5%に減衰した。
血漿Ca2+の濃度の50%、63%、および95%への上昇がそれぞれ、2.0、2.5、および3.0時間の治療後の時点で見られた。血漿Ca2+の濃度は、治療後7.0、8.0および11時間でそれぞれ、50%、37%、および5%に減衰した。
データは、注射したNaおよびCa2+の、血液からの95%排除が、「薬用イオン爆弾」を用いた筋肉内注射後11時間で見られた。NaClおよびCaClの大部分は、腎臓および消化管を通して排泄される。血漿NaおよびCa2+の濃度は両方とも、筋肉内注射後15時間で対照レベルに戻った。
図S4.1およびS4.2は、SDラットの「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射のモデルにおける、血漿NaおよびCa2+の濃度が50%、63%、および95%へ上昇した時点、ならびに血漿NaおよびCa2+の濃度が50%、37%、および5%へ排除された時点を示す。
「薬用イオン爆弾」溶液からの血漿Na およびCa 2+ の半減期
生物学的半減期または消失半減期は、薬物がその薬理活性の半分を失うのにかかる時間である。図S4に示されるように、SDラットにおいて、「薬用イオン爆弾」溶液からの血漿NaおよびCa2+の半減期は、腫瘍内注射後7.0時間で検知される。
「薬用イオン爆弾溶液」に関する薬力学研究
薬力学モデルは、薬物がいったんその標的臓器に到達した際の薬物の作用を扱う。「薬用イオン爆弾」溶液の、がん細胞を死滅させる薬力学作用は、複数方向である。しかし、パッチクランプ法、蛍光NaおよびCa2+チャネルプローブモニタリング、リアルタイム顕微鏡ビデオ、病理学、ならびにSEMおよびTEMのデータによって示されるように、主に細胞膜、ならびに核、ミトコンドリア、リソソームおよびがん細胞の他の小器官の組成物、ならびに腫瘍血管を標的とする。
細胞膜は、すべての細胞の内部を外部環境から隔てている生物学的な膜である。細胞膜は、イオンおよび有機分子に対して選択的に浸透可能であり、細胞内外の物質の移動を制御する。細胞膜の基本的な機能は、細胞をその周囲から保護することである。細胞の膜が傷ついたり、壊れたりすると、細胞の運命は死である。
膜電位は、細胞の内部と外部との間の電位の差である。細胞の膜電位は、細胞における個々または複数のイオンチャネルの研究を可能にするパッチクランプ法によって測定でき、そのパッチクランプ法は、特に、ニューロン、心筋細胞、筋線維、および膵臓ベータ細胞などの興奮性細胞の研究に使用される。また、膜電位の変化は、インビトロで心筋細胞の死を評価するのにも使用できる。
以前、我々は、マウス心筋細胞の膜電位の測定にパッチクランプ法の適用を導入した。低濃度の「薬用イオン爆弾」溶液が投与されたとき、治療した細胞の死は、亜急性病理過程で特徴づけられる。例えば、マウス心筋細胞は、5%の濃度(252.4mMのNaおよび12.5mMのCa2+)の「薬用イオン爆弾」溶液を用いて、治療後5分で死滅した。マウス心筋細胞は、10%の濃度(504.79mMのNaおよび25mMのCa2+)の「薬用イオン爆弾溶液」用いて、治療後3分で死滅した。100%の「薬用イオン爆弾」溶液(5.0479MのNaおよび250mMのCa2+)を使用したとき、治療したがん細胞の死は、急性病理過程で特徴づけられる。リアルタイム倒立顕微鏡下において、組織培養のMCF7ヒト乳がん細胞は、標準「薬用イオン爆弾」溶液中で12〜18秒で死滅した。この事実は、「薬用イオン爆弾」溶液の、がん細胞を死滅させる薬力学作用が、投与量依存的および時間依存的であることを示す。
重要臓器に関する病理組織学的研究
病理組織学的研究を、「薬用イオン爆弾」を用いて治療したマウスの6つの重要臓器で行った。「薬用イオン爆弾」溶液を用いた治療の24時間後に、標本を採取し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、2名の経験豊かな病理学者がデジタル光学顕微鏡下で読み取った。治療した動物は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、および子宮に対する病的損傷の証拠を示さなかったことをデータは明らかにした(図S5)。
図S5.1は、マウスの「薬用イオン爆弾」溶液の注射部位の筋組織である。筋組織は、炎症細胞の浸潤を伴った軽度の損傷を示す。図S5.2.心臓の正常な顕微鏡的な特徴。図S5.3.正常な肺。倍率×200。
図S5.4〜S5.6は、肝臓、膵臓、および腎臓の正常な顕微鏡的特徴を示す。倍率×200。
がん、腫瘍、新生物の治療用「薬用イオン爆弾」の理論および機序
がん治療用の「薬用イオン爆弾」の理論および機序に関して、図S6およびS7に示されるように、それら機序は、生化学、細胞生物学、細胞生理学、細胞膜、細胞膜電位、イオンチャネル、イオン追跡手法、ならびに細胞外液と細胞内液との間に高濃度のNaおよびCa2+を使用する「薬用イオン爆弾」溶液の処方に関する。
本発明は偶然の機会からひらめいたものである。ある日、発明者は、中国系スーパーマーケットへ買い物に行き、1ダースの塩漬けにしたアヒルの卵を購入した。帰宅途中に、彼は、なぜ塩漬けにしたアヒルの卵が腐ることなく何年も室温で保存できるのかを思案した。その答えは、塩漬けにしたアヒルの卵中のタンパク質と卵黄が、高濃度の塩(塩化ナトリウム)、特に高濃度のNaによって凝結または凝固していることである。発明者は、塩漬けにしたアヒルの卵で起こったことのように、高濃度のNaが、がん細胞内のタンパク質を凝結または凝固させるかもしれないと推測した。
細胞生理学では、正常細胞、腫瘍細胞、またはがん細胞の生存は、細胞内外の浸透圧の平衡に依存する。細胞の正常な浸透圧は、細胞外液と細胞内液との間のイオン濃度の平衡に依存する。細胞外液と細胞内液との間のイオン濃度が同一の場合、等張と呼ばれる。細胞は平衡状態にあるので、イオン濃度勾配が存在せず、水の流入は水の流出に等しい。これは、細胞の病的状態または死を引き起こさない。
生理的状態の下では、細胞外液中のNaの濃度は140mMであり、細胞内液では14mMである。「薬用イオン爆弾」溶液は、5.0479MのNaを有するので、がん細胞の細胞外液中のNaの濃度は正常レベルより36倍高く、細胞内液中のNaの濃度は正常濃度より約360倍高い。大量のNaが、浸透作用によって細胞外液から細胞内液に細胞膜を越えるとき、「薬用イオン爆弾」からの高濃度Naの非常に大きな流入によって、がん細胞は十数秒で死滅する(図S6およびS7)。この理論は、膜電位に関するパッチクランプ法および蛍光イオンチャネルプローブモニターシステムによって証明されている。
図S6.1は、2年前に塩化ナトリウムを用いて作られた塩漬けにしたアヒルの卵である。図S6.2は、調理され、切られた塩漬けにしたアヒルの卵を示す。2年間室温で保存されていたにもかかわらず、そのアルブミンと卵黄は腐っていない。図S6.3は、がん細胞ならびに細胞外液中の5.0479MのNaおよび250mMのCa2+からなる「薬用イオン爆弾」の写真を示す。
他方では哺乳類細胞において、細胞外液中のCa2+の正常濃度は2.5mMであり、細胞内液では0.0001mMである。「薬用イオン爆弾」は250mMのCa2+を含有し、それは細胞外液中のその生理的レベルより100倍高く、細胞内液ではその生理的濃度より約250万倍高い。結果として、高濃度のCa2+が細胞外液から細胞内液へ細胞膜を極度に横切って、がん細胞は即時に死滅する。この理論もまた、本発明におけるパッチクランプ法およびイオン追跡手法によって確認されている(図S8〜S10)。
図S7は、細胞外液中の正常レベルのNaおよびCa2+ならびに「薬用イオン爆弾」中の高濃度のNaおよびCa2+が見られるときの細胞膜の一片を示す。Naチャネル、Ca2+チャネル、Kチャネル、および他のチャネルが、細胞膜に埋め込まれている。極度に高いレベルのNaおよびCa2+が細胞外液から細胞内液へ流入した場合、がん細胞は十数秒で死滅する。
さらに重要なことには、Ca2+は、細胞シグナル伝達生物学における二次情報伝達物質の1つである。細胞内液中の高濃度のCa2+は、がん細胞に対して非常に大きな生理的損傷を引き起こすだけでなく、大規模な生物学的作用も引き起こす。したがって、「薬用イオン爆弾」溶液中の高濃度のCa2+は、がん細胞の死を加速することができ、殺がんエンハンサーとみなされている。
図S8.さまざまな濃度の「薬用イオン爆弾」溶液を用いて治療したマウス心筋細胞の膜電位を試験する際のパッチクランプ法の3つの図。図S8.1は、タイロード液中の正常マウス心筋細胞の対照膜電位である。図S8.2は、マウス心筋細胞が、5%の濃度の「薬用イオン爆弾」溶液を用いた治療の5分後に死んだことを示す。図S8.3.マウス心筋細胞、10%の濃度の「薬用イオン爆弾」溶液を用いた治療の3分後に死んだことを示す。データは、腫瘍細胞に対する「薬用イオン爆弾」溶液の殺作用が、投与量依存的および時間依存的であることを示す。
図S9は、蛍光Naチャネルプローブ系を使用したNa流入の動画の一群である。図S9.1は、ゲート開閉した(gated)6つの治療後MCF7ヒト乳がん細胞を示す。図S9.2は、それらの細胞のうち2つが「薬用イオン爆弾」溶液を用いた治療の開始後10秒内に死ぬことを示す。図S9.3は、ゲート開閉したがん細胞はすべて、「薬用イオン爆弾」溶液を用いた治療の開始後16秒内に死ぬこと示す。これらの写真は、マッキントッシュコンピューターの画面からの複写である。
図S10は、MCF7ヒト乳がん細胞における蛍光Ca2+チャネルプローブ系を使用したCa2+流入の動画の一群である。図S10.1は、ゲート開閉した7つの治療前のがん細胞を示す。図S10.2は、7つのうち2つのがん細胞が、「薬用イオン爆弾」溶液を用いた治療の開始後9秒内に死ぬことを示す。図S10.3.7つのうち4つのがん細胞が、治療開始後12秒内に死ぬ。図S10.4は、7つのうち5つのがん細胞が、治療開始後16秒内に死ぬことを示す。図S10.5.7つのすべてのがん細胞が、治療開始後18±秒内に死ぬ。これらの写真は、マッキントッシュコンピューターの画面からの複写である。
Na およびCa 2+ の組み合わせの殺がん作用の増強
本発明において、我々は、がん細胞の細胞外液から細胞内液へのNaおよびCa2+の流入を調べた。5.0479MのNa溶液の単独の使用は、MCF7ヒト乳がん細胞を死滅させるのに20±4秒かかったことを、蛍光NaまたはCa2+プローブのモニタリングは示した。「薬用イオン爆弾」溶液を使用した場合、同種のがん細胞を死滅させるのに18±4秒しかかからず、Ca2+が、がん治療におけるエンハンサー効果を有し、NaおよびCa2+の組み合わせの処方が、相乗的で相補的な殺がん効果を有することを示す。
我々は、生きている動物の腫瘍組織中のNaの拡散が速く、Ca2+の拡散が遅く、高濃度で両種のイオンを別々に使用したとき、がんを死滅させることができることを観察した。我々は、「薬用イオン爆弾」の処方中のNaおよびCa2+の組み合わせが、相乗的で、相補的な、二重波殺がん効果を有することを確認している。殺がん効果の第1波(初期殺作用)はNaによって媒介され、それは治療後1〜12時間で起こる。殺がん殺作用の第2波(後期殺がん効果)はCa2+によって媒介され、それは治療後6〜24時間で起こる。
「薬用イオン爆弾」の、がん細胞を死滅させる5つの段階
リアルタイム倒立顕微鏡観察のビデオデータは、「薬用イオン爆弾」が、がん細胞を死滅させる次の5つの病理学的段階を明らかにした:(1)がん細胞の膜の急速な崩壊;(2)細胞培養チャンバーへの「薬用イオン爆弾」添加後の細胞外液中の高濃度NaおよびCa2+のためのがん細胞の急性細胞内脱水;(3)大量のNaおよびCa2+の細胞外液から細胞内液への流入のためのがん細胞の膨張;(4)極度に膨張したがん細胞によって引き起こされるがん細胞の破裂;ならびに(5)結果としてのがん細胞の死。がん細胞を損傷する5つの病理過程の全体は、十数秒で起こり、病理学的段階の各々はわずか3〜4秒で起こった(図S11〜S13)。
病理所見
巨視的に、ヒト患者における「薬用イオン爆弾」溶液を用いた腫瘍内注射の病理学的特徴について、下の写真に示されるように、治療した腫瘍は、4つの病理学的特徴を経る。(1)治療の1〜12時間後、腫瘍細胞またはがん組織は、インサイチュの変性および壊死ならびに腫瘍血管の崩壊を経る。治療した腫瘍の表面は、淡い青色のように見える。(2)腫瘍またはがんが、10mm×10mm未満の大きさの場合、1回の「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射によって、24〜48時間で完全に除去されることになる。腫瘍またはがんが、20mm×20mmを越える大きさの場合、治療した腫瘍は、黒焦げた暗色の死腫瘍残部を伴って凝固性壊死になる。(3)治療後7〜10日で、死腫瘍またはがん残部は剥がれ、小さな損傷が残る。(4)治療した腫瘍の損傷は、一般に、治療後2〜3週内に治癒する。
「薬用イオン爆弾」を用いて治療したヒトがんの病理組織学的な所見は、以下を特色とする:(I)NaおよびCa2+塩ががん細胞の周辺組織に浸潤した(図S14);(II)「薬用イオン爆弾」溶液が達したところで腫瘍組織およびがん細胞の壊死が見られ、腫瘍を「薬用イオン爆弾」溶液で完全に満たすことが、原発がんを死滅させるのに必要な要因であることを示している;(III)腫瘍血管における血栓形成;ならびに(IV)傷ついた腫瘍血管構造に由来する壊死領域における大量出血。詳細なデータに関しては、図S15およびS16を参照されたい。
図S11.これは、MCF7ヒト乳がん細胞に関するリアルタイム倒立顕微鏡観察の動画の一群である。図S11.1は、対照としての治療前がん細胞を示す。図S11.2は、「薬用イオン爆弾」を用いた治療の開始後3秒で細胞形態のわずかな変化を示す。図S11.3は、治療開始後5秒である。治療したがん細胞はすべて、大きく損傷している。図S11.4は、治療開始後16秒である。この写真の治療したがん細胞はすべて、死んで、細かく砕けている。倍率×200。
図S12は、細胞培養チャンバー中で「薬用イオン爆弾」を使用して1回治療したMCF7ヒト乳がん細胞に関するリアルタイム倒立顕微鏡観察の動画の一群である。図S12.1は、治療前がん細胞の画像である。図S12.2は、治療開始後6秒内の治療したがん細胞の急性細胞内脱水を示す。図S12.3.治療開始後12秒内の治療したがん細胞の細胞膜に対する重い浮腫および損傷が見られる。図S12.4.細胞膜が壊れ、死んだがん細胞が、治療開始後16秒内に見られた。倍率×400。
図S13は、リアルタイム倒立顕微鏡観察の写真の一群である。図S13.1は、対照としての未治療のがん細胞の写真である。図S13.2.「薬用イオン爆弾」を用いて治療した、非常に膨張したがん細胞の破裂。図S13.3は、「薬用イオン爆弾」によって治療した、2つの完全に壊れたがん細胞を示す。写真の上部の1つの細胞は、損傷した細胞膜を示し、細胞の表面の大きな破裂が見られ;細胞全体が腐ったパイナップルのように見える。写真の下部の細胞は、細胞の外見のみを示し、その細胞質、核、および細胞構成要素が失われている。図S13.4は、2つの壊れたがん細胞である。上の細胞は、細胞の上部分および下部分を失っている。2番目の細胞の下部分は欠損している。顕微鏡的に、これらの病理学的特徴は、核爆弾の爆発が起こった場所(the sites where an explosion of nuclear bombing occurred)のようにみえる。倍率×400。
図S14.治療したマウス腫瘍モデルにおける腫瘍細胞の周囲の「薬用イオン爆弾」の生体内分布(白い線)。図S14.1およびS14.2は、「薬用イオン爆弾」溶液で完全に満たされた2つの腫瘍断面を示す。図S14.3は、細胞間の隙間のNa塩およびCa2+塩の結晶構造体を示す。倍率×1000。
図S15は、「薬用イオン爆弾」を用いた腫瘍内注射を使用して治療したMC38マウス腺がんに関する光学顕微鏡観察の写真の一群である。標本は治療の1日後に採取した。図S15.1.対照としての治療前腫瘍スライド。図S15.2は、依然として生存がん組織の小さな領域が存在する、治療した腫瘍の縁から採取された標本であり、治療した腫瘍組織が、「薬用イオン爆弾」で完全に満たされていないことを示す。図S15.3は、腫瘍組織がすべて完全に死滅しているマウス腫瘍モデルであり、腫瘍を「薬用イオン爆弾」溶液で完全に満たすことが、がんを死滅させるのに必要な要因であることを示す。倍率×200。
図S16は、上顎洞がん腫を患った患者の光学顕微鏡観察の病理所見を示す。標本は、「薬用イオン爆弾」を用いた治療の3日後に採取した。図S16.1.腫瘍組織はすべて、完全に死滅し、治療したがん組織の明らかな炎症性反応および鬱血を伴う。赤血球が、血管の内腔に並び、炎症細胞の浸潤が見られる。倍率×400。図S16.2は、治療した腫瘍血管の複数の血栓形成を示す。倍率×200。図S16.3は、小静脈における代表的な血栓症を示す。倍率×400。
電子顕微鏡所見
SEMは、「薬用イオン爆弾」を用いて治療したヒト乳がんモデルの超微細構造的な損傷を明らかにした。がん細胞の膜のがん細胞の表面の破壊および無数の微小の穴が見られた。がん細胞の膜は、断片または破片に裂けた。腫瘍血管の外層組織は剥がれた。腫瘍組織の細動脈または細静脈の横方向の破裂が見られた。図S17およびS18を参照されたい。
図S17は、「薬用イオン爆弾」を用いて治療したヌードマウスにおけるヒト乳がんモデルの細胞膜のSEMの写真の一群である。標本は治療の24時間後に採取した。図S17.1.がん細胞の膜が損傷していない未治療の腫瘍組織。図S17.2.治療後のがん細胞の膜に対する重度の損傷。図S17.3.死んだがん細胞の膜に多くの微小の穴が見られた。倍率×2000。
図S18は、「薬用イオン爆弾」を用いて治療したヌードマウスにおけるヒト乳がんモデルの腫瘍血管のSEMの写真の一群である。標本は治療の24時間後に採取した。図S18.1は、未治療の腫瘍中の腫瘍血管の写真であり、腫瘍血管のすべてが、形状がハス様であり、これらの腫瘍血管の表面は滑らかで無傷である。倍率×1000。図S18.2は、腫瘍血管の外層組織の分断を示す、治療した腫瘍組織の写真である。また、腫瘍組織における多くの細動脈または細静脈の横方向の破裂が見られる。倍率×2000。図S18.3は、「薬用イオン爆弾」を用いた治療後の損傷した大きな腫瘍血管である。多くのタンパク質物質および血液細胞が、血管内腔内部に堆積する。倍率×1000。
TEMは、治療したがん細胞の細胞膜、ミトコンドリア、リソソーム、および核の破壊を示した。腫瘍血管の内側の内皮細胞が、血管壁からから裂けて分れた。治療したがん細胞の大部分は幾つかの部分に断片化された。治療したがんの間質組織は細かく砕けた。治療したマウス腫瘍およびヒトがんモデルのこれらすべての病理学的および超微細構造的な特徴は、核爆弾後の被爆地のように見えた(図S19およびS20)。
図S19は、「薬用イオン爆弾」を使用して治療したヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルの腫瘍細胞のTEMの写真の一群である。標本は治療の24時間後に採取した。図S19.1は、対照としての2つの未治療のがん細胞を示す。倍率×5000。図S19.2は、細胞の膜および核が失われている、重度に損傷したがん細胞を示す。核およびクロマチンは断片化され、細胞質、ミトコンドリア、および他の超微細構造的な小器官が破壊されている。倍率×5000。図S19.3.一群のがん細胞が、「薬用イオン爆弾」(ナトリウム塩およびカルシウム塩、雪景色のように見えている)によって覆われた不規則な表面を示す。2つの暗色の物体が、変形した赤血球である。倍率×2000。
図S20は、「薬用イオン爆弾」を用いた治療したヌードマウスにおけるMCF7ヒト乳がんモデルの損傷した腫瘍血管のTEMの写真の一群である。図S20.1は、損傷した血管壁をもつ、小さな細動脈である。7つの暗色の物体が、変形した赤血球である。倍率×2000。図S20.2は細動脈壁の破裂を明らかにし、損傷した内皮細胞が血管壁から剥がれている。倍率×2000。図S20.3は、その壁に多くの裂け目を伴う損傷した細静脈を示す。倍率×2000。
本明細書および添付の請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の参照を含む。
別途定義されない限り、本明細書において使用する技術用語及び科学用語はすべて、当業者が通常理解しているものと同じ意味を持つ。本明細書において記載されているものに同様または同等の、いかなる方法および材料も本開示の実施または試験に際して使用できるが、好ましい方法および材料が差し当り説明されている。本明細書において詳述されている方法は、開示されている特定の順序にくわえて、論理的に可能な任意の順序で実施されうる。
参照による取り込み
この開示において、特許、特許出願、特許刊行物、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書への参照および引用がなされている。かかる文書はすべて、参照によりその全体がすべての目的にために本明細書に取り込まれる。参照により本明細書に取り込まれると言及されているが、本明細書において明確に記載されている既存の定義、記述、または他の開示材料と矛盾する、あらゆる材料またはその一部は、取り込まれた材料と本開示材料との間に矛盾が生じない程度においてのみ取り込まれる。矛盾がある場合、その矛盾は、好ましい開示として本開示に有利に解消されるべきである。
均等物
代表例は本発明を説明するのを助けることを意図し、本発明の範囲を限定することを意図するものでもなく、代表例はそのように解釈されるべきでもない。
実際に、本明細書において示され、記載されているものにくわえて、本発明のさまざまな変更およびその多くのさらなる実施形態が、例ならびに本明細書に包含されている科学文献および特許文献への参照を含む本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。例は、本発明のさまざまな実施形態およびその均等物において、本発明を実施するように構成できる重要な追加情報、例証、および指導を含む。

Claims (6)

  1. 悪性腫瘍、がん、良性腫瘍、および非悪性疾患の腫瘍内注射治療に使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が室温で5.0479M〜5.5MのN、250mM〜2.0のC2+ 、適切な量の蒸留水、10mlのイオプロミド、20mgのアドレナリンを含むことを特徴とする医薬組成物。
  2. 請求項1に記載の医薬組成物において、室温の水溶液中で、Na の有効治療濃度が5.0479Mであり、Ca 2+ の有効治療濃度が250mMであることを特徴とする医薬組成物。
  3. 請求項1に記載の医薬組成物において、前記腫瘍内注射治療用のNa源がNaCl及び有機ナトリウム塩であることを特徴とする医薬組成物。
  4. 請求項1に記載の医薬組成物において、前記腫瘍内注射治療用のCa2+源がCaC び有機カルシウム塩であることを特徴とする医薬組成物。
  5. 請求項1に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、脳、甲状腺、乳房、肺、肝臓、膵臓、腎臓、結腸、直腸、卵巣、前立腺、子宮、子宮頚部、皮膚、及び皮下組織のがんからなる群から選択される悪性腫瘍およびがんの状態を有する患者の治療に使用するためのものであることを特徴とする医薬組成物。
  6. 請求項1に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、腺腫、血管腫、粉瘤、線維腫、脂肪腫、胸腺腫、嚢胞、ポリープ、皮膚新生物、乳房線維嚢胞状変化、良性前立腺肥大症、甲状腺結節、および甲状腺機能亢進症からなる群から選択される良性腫瘍および非悪性疾患の治療に使用するためのものであることを特徴とする医薬組成物。
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