JP6658763B2 - 測定装置の温度変位による測定誤差補正方法及び該方法を用いた質量分析装置 - Google Patents

測定装置の温度変位による測定誤差補正方法及び該方法を用いた質量分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、測定装置において各種の構成部材が熱膨張することで生じる測定データの誤差やずれを補正する方法、及び該方法を用いた質量分析装置に関する。
一般に飛行時間型質量分析装置(TOFMS)では、試料成分由来のイオンに一定の加速エネルギを付与し、フライトチューブ内に形成される無電場の飛行空間に導入して該飛行空間中を飛行させる。そして、各イオンが一定の距離を飛行するのに要する時間を測定し、その飛行時間に基づいて各イオンの質量電荷比m/zを算出する。そのため、周囲温度の上昇に伴ってフライトチューブが熱膨張して飛行距離が変化すると、各イオンの飛行時間も変動して質量電荷比のずれ(以下、単に質量ずれという)をもたらす。そこで、フライトチューブの熱膨張に起因する質量ずれを回避するために、従来、様々な対策が採られている。
上記対策は二つに大別される。第1の対策はフライトチューブの熱膨張自体を抑えるという方法であり、第2の対策は、フライトチューブの熱膨張自体は許容し、その熱膨張により生じる質量ずれをデータ処理によって補正するという方法である。
具体的には、上記第1の対策としては、フライトチューブ自体を熱膨張率の小さな材料から作製するという方法がある。また、周囲温度が変化してもフライトチューブの温度変化を抑えるように、温調された或いは外部の温度変化の影響を受けない容器内にフライトチューブを設置するという方法もある。例えば非特許文献1に記載の質量分析装置では、熱膨張率の小さなFe-Ni36%(インバー:登録商標)からフライトチューブを作製するとともに該フライトチューブを真空断熱容器内に配置することによって、フライトチューブの熱膨張を抑え、高い質量精度を実現している。
一方、上記第2の対策としては、正確な質量電荷比が既知である標準試料を測定した結果に基づいて、測定対象成分に対して得られたデータを補正するという方法がある。よく知られているように、これには、測定対象成分と同時に標準試料を測定する内部標準法と、測定対象成分とは別に標準試料を測定する外部標準法とがある。これらは、飛行距離の変化を標準試料成分由来のイオンの飛行時間の変化として間接的に測定していると捉えることができる。
また、第2の対策の別の方法として、特許文献1に記載の質量分析装置のように、レーザ式測距計を用いてフライトチューブの長さを直接計測し、その計測結果に基づいて測定対象成分に対して得られたデータを補正する方法も知られている。
上述した従来の補正方法には一長一短がある。
例えばFe-Ni36%などの熱膨張率の小さな材料は一般的なステンレスなどの金属に比べて高価である。フライトチューブはかなり大きな部材であり、こうした部材に低熱膨張率材料を使用すると、装置コストの大幅な増加が避けられない。また、非特許文献1に記載の装置のようにフライトチューブを断熱容器内に設置すると、やはり装置の大幅なコスト増加をもたらす。
一方、標準試料を測定した結果を用いた補正を行うには、分析者が標準試料を用意する必要があり、分析者に負担を強いることになる。また、測定対象成分以外の標準試料の測定を行うことで装置内の汚れが問題となったり、或いは、測定対象成分に対する分析のスループットが低下したりするおそれもある。
また、フライトチューブの長さを直接計測する方法では、比較的大きなスケール(例えば1m程度以上)に対して1ppm程度の微小な変位の測定が必要になる。特許文献1に記載されているように、こうした大きなスケールにおける高精度の測定にはレーザ式測距計が好適であるが、レーザ式測距計は高価であり装置コストの大幅な上昇に繋がる。
特開2003−68246号公報
「Agilent 7200Bシリーズ GC/Q-TOF 多様なアプリケーションで最高の定性と定量を実現」、[online]、アジレントテクノロジー株式会社、[2015年9月15日検索]、インターネット<URL: http://www.chem-agilent.com/pdf/low_5990-9898JAJP.pdf>
発明が解決すべき課題
同様の問題は飛行時間型質量分析装置におけるフライトチューブの熱膨張のみならず、オービトラップ(Orbitrap:商標)等を用いたフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析装置などの他の方式による高精度の質量分析装置でも起こり得る。また、質量分析装置のみならず、例えば温度変化によって試料溶液中の光路長が変化することで分析データに変動が生じる紫外可視分光光度計などの、別の測定装置でも同様の問題が起こり得る。即ち、上記問題は、或る構成部材が熱膨張することで、得られる測定データに誤差やずれが生じるような測定装置全般に共通する問題である。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、測定装置においてその構成部材の熱膨張に起因する測定データの誤差やずれをコスト増加を抑えつつ補正することができる測定誤差補正方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、そうした測定誤差補正方法を用い、コスト増加を抑えつつ高い質量精度を実現することができる質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された第1の発明は、その内部に測定対象物が通過する空間を形成する構成部材を有し、該空間を通過した前記測定対象物を検出することで測定データを取得する測定装置にあって、前記構成部材の熱膨張に起因して前記測定対象物が通過する空間の長さが変化したときに生じる前記測定データの誤差やずれを補正する測定誤差補正方法であって、
前記構成部材とは熱膨張率が相違する材料からなる基準部材を該構成部材と同じ温度雰囲気中に配置し、
前記構成部材及び前記基準部材が同じ温度雰囲気中でそれぞれ熱膨張したときの両部材の長さの差を計測し、該長さの差に基づいて前記測定データを補正することを特徴としている。
上記基準部材の熱膨張率は測定装置の構成部材の熱膨張率と相違していればよいが、両部材の熱膨張率の差はできるだけ大きいほうが好ましい。また、基準部材の長さ自体は既知である必要はない。また、構成部材と基準部材との長さの差は大きくてもよいが、例えばひずみゲージや静電容量センサといった廉価なセンサを用いて長さの差を計測するには、その長さの差は小さいほうが望ましい。したがって、例えば、基準温度(例えば通常の室温)の条件下において長さの差がほぼゼロとなるように基準部材の長さを定めておき、温度が該基準温度から上昇するに従い長さの差が大きくなるようにするとよい。
なお、ここでいう「長さ」とは、構成部材や基準部材が直線的に延伸する形状の部材である場合には、その延伸方向における両端部の間の間隔や距離であるが、構成部材や基準部材が曲線的に延伸する形状の部材である場合には、両端部を直線で繋いだ間隔や距離(つまりは両端部の間の最短距離)とすればよい。
第1の発明に係る測定誤差補正方法において、測定装置が飛行時間型質量分析装置である場合には、構成部材は内部に飛行空間が形成されるフライトチューブである。上述したように、従来一つの方法として、フライトチューブ自体の長さを計測しその計測結果に基づき測定データを補正する方法が知られていたが、この第1の発明に係る測定誤差補正方法では、フライトチューブ自体の長さの計測をフライトチューブと基準部材との長さの差に置き換え、その長さの差を計測する。そして、計測された長さの差に基づいて、構成部材の熱膨張に伴う測定データの誤差やずれを補正する。
上記長さの差はフライトチューブ自体の長さに比べて格段に小さくすることができる。そのため、ひずみゲージや静電容量センサといった短い距離や間隔しか計測することができない廉価なセンサを用いながら、比較的高い精度で計測することができる。また、基準部材の熱膨張率を適切に選ぶことで、或る一定の温度変化に対する長さの差の変化の割合を、フライトチューブ自体の長さの変化の割合よりも大きくすることができる。それによって、温度変化に起因する長さの差の変化を精度良く計測し、測定データの補正の精度を高めることができる。また、レーザ式測距計に比べて計測精度が劣るセンサを用いても、高い精度で測定データを補正することが可能となる。
上述したように測定装置が飛行時間型質量分析装置である場合には、上記基準部材がフライトチューブと同方向に延伸する長尺部材であり、該基準部材の一端とフライトチューブの一端とが面一に保持され、該基準部材の他端と該フライトチューブの他端との距離が両部材の長さの差として計測されるようにするとよい。この場合、フライトチューブに接触するように基準部材を設置してもよいし、フライトチューブと或る程度の距離を隔てた近傍に基準部材を設置するようにしてもよい。
また上記課題を解決するために成された第2の発明は、上記第1の発明に係る測定誤差補正方法を利用した質量分析装置であり、内部に飛行空間が形成されるフライトチューブを具備する飛行時間型の質量分析装置であって、
a)前記フライトチューブとは熱膨張率が相違する材料からなる該フライトチューブと同方向に延伸する長尺体であって、その一端が前記フライトチューブの一端と面一に保持され、該フライトチューブと同じ温度雰囲気中に配置された基準部材と、
b)前記フライトチューブの一端と面一に保持されている側と反対側の前記基準部材の端部と、同じ側の前記フライトチューブの端部とは反対側の端部と、の間の距離を計測する測距部と、
c)前記測距部による計測結果に基づいて、試料に対し質量分析を行うことで得られた飛行時間又は該飛行時間を換算して得られた質量電荷比を補正する補正処理部と、
を備えることを特徴としている。
第2の発明に係る質量分析装置では、上述したように、フライトチューブの長さと基準部材との長さの差を小さくしておくことで、測距部としてひずみゲージや静電容量センサといった短い距離しか計測することができない廉価なセンサを用いることができる。また、基準部材の熱膨張率を適切に選ぶことで、或る一定の温度変化に対する長さの差の変化の割合をフライトチューブ自体の長さの変化の割合よりも大きくすることができるから、温度変化によるフライトチューブの長さの変化を的確に捉えることができる。補正処理部は、試料由来のイオンに対する質量分析を行うことによって測定された飛行時間又は該飛行時間を換算して求めた質量電荷比を、その測定とほぼ同時刻に測距部により得られた計測結果に基づいて補正する。それによって、フライトチューブの熱膨張による質量ずれを精度よく補正することができる。
また第2の発明に係る質量分析装置では、
前記測距部による計測結果と飛行時間又は質量電荷比のずれとの関係を予め記憶しておくずれ情報記憶部を備え、
前記補正処理部は、前記測距部による計測結果に応じたずれを前記ずれ情報記憶部から取得し、飛行時間又は質量電荷比を補正する構成とすることができる。
ずれ情報記憶部に記憶される情報は、フライトチューブなどが交換されない限り更新の必要はないから、当該質量分析装置を製造するメーカーが予め実験的に求めて記憶させておくようにすればよい。
第1の発明に係る測定装置の温度変位による測定誤差補正方法によれば、その構成部材の熱膨張に起因する測定データの誤差やずれを、装置のコスト増加を抑えつつ精度よく補正することができる。また、内部標準法や外部標準法による補正のように分析者に負担を強いることも回避することができる。また、この測定誤差補正方法を用いた第2の発明に係る質量分析装置によれば、装置コストの増加を抑えつつ、高い質量精度を実現することができる。
本発明に係る測定装置の温度変位による測定誤差補正方法を用いた質量分析装置の一実施例の概略構成図。 図1中のフライトチューブ及び基準部材を簡略化して示した図。 基準部材の他の例を示す図。
以下、本発明に係る測定装置の温度変位による測定誤差補正方法を用いた質量分析装置の一実施例であるTOFMSについて、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のTOFMSの要部の構成図である。
本実施例のTOFMSでは、イオン化部11及び加速器12が内装されたイオン化チャンバ1と、検出器31が内装された検出チャンバ3とが、略円筒状であるフライトチューブ2の両端面にそれぞれ設けられている。金属製であるフライトチューブ2には所定の直流電圧+Vが印加され、フライトチューブ2の内部には無電場・無磁場で且つ高真空雰囲気の飛行空間21が形成される。
イオン化部11において試料から生成された試料成分由来のイオンは加速器12で所定の運動エネルギを付与され、飛行空間21に送り込まれる。イオンは図1中に点線で示すように飛行空間21中を飛行して検出器31に到達する。飛行空間21中のイオンの速度は該イオンの質量電荷比に依存する。そのため、略同時に飛行空間21に導入された異なる質量電荷比を有するイオンは、飛行する間に質量電荷比に応じて分離され、時間差を有して検出器31に到達する。
検出器31による検出信号はアナログデジタル変換器(ADC)4において所定のサンプリング時間間隔でデジタルデータに変換され、データ処理部8に入力される。データ処理部8は、機能ブロックとして、TOFスペクトルデータ収集部81、質量換算部82、質量補正部83、マススペクトル作成部84、質量ずれ情報記憶部85など、を備える。
フライトチューブ2が熱によって膨張し、その軸方向(図1では左右方向)の長さが変化すると飛行距離が変化する。それに伴い同一の質量電荷比を有するイオンの飛行時間は変化するから、それが質量電荷比のずれ、つまり質量ずれになる。本実施例のTOFMSは、この質量ずれを補正するための特徴的な構成として、上述した質量補正部83、質量ずれ情報記憶部85のほか、基準部材5及び測距センサ7を備える。
基準部材5は円柱棒状等の長尺部材であり、フライトチューブ2とは熱膨張率が異なる材料から成る。この基準部材5はフライトチューブ2と同方向に延伸するように該フライトチューブ2に接して設置され、その基準部材5の一端とフライトチューブ2の一端(図1ではイオンの出口側端部である右端)とは固定部6によって固定されている。基準部材5をフライトチューブ2に接して設置しているので、両者はほぼ同じ温度であるとみなせる。
上述した特許文献1に記載の質量分析装置では、フライトチューブが熱膨張する際にその長さをレーザ式測距計によって計測し、その計測結果に基づいて質量ずれを補正していた。これに対し、本実施例のTOFMSでは、以下のような計測を行って質量ずれを補正している。フライトチューブ2及び基準部材5を簡略化した図2を参照して説明する。
いま、図2に示すように、フライトチューブ2の長さをL、基準部材5の長さをRとする。両者の長さL、Rは近い(又は特定の温度において同一である)ことが望ましい。ここでは、L>Rであるとする。フライトチューブ2の右端と基準部材5の右端とは面一に揃えられ且つ固定部6で固定されているから、フライトチューブ2と基準部材5の長さの差d(=L−R)は図2に示すようにそれら部材の左端側に現れる。その長さの差d(=L−R)はLに比べれば格段に小さい。L、R、dはいずれも温度によって変化する、つまり温度の関数であるから、L(t)、R(t)、d(t)と記す。
いま、或る基準温度t0において、d(t0)=d0、L(t0)=L0、R(t0)=R0、とする。このとき、次の(1)〜(3)式のように書ける。
d(t)=L(t)−R(t) …(1)
L(t)=L0+αL0(t−t0)=L0{1+α(t−t0)}=L0(1+αΔt) …(2)
R(t)=R0+βR0(t−t0)=R0{1+β(t−t0)}=R0(1+βΔt) …(3)
ここで、αはフライトチューブ2の熱膨張率、βは基準部材5の熱膨張率、Δt(=t−t0)は基準温度t0からの温度変化である。(1)式に(2)、(3)式を代入して(4)式が求まる。
d(t)=L0−R0+Δt(αL0−βR0) …(4)
基準部材5の熱膨張率βがフライトチューブ2の熱膨張率αに比べて十分に小さければ、0<β<<αであって、βは無視できる。そこで、(4)式は(5)式に書き換えられる。
d(t)=d0+ΔtαL0 …(5)
フライトチューブ2及び基準部材5がそれぞれ熱膨張したときの長さの差dの変位を比で表すと(6)式となる。
{d(t)−d(t0)}/d(t0)={d(t)/d(t0)}−1={d(t)/d0}−1=α(L0/d0)Δt …(6)
一方、フライトチューブ2の長さを計測する場合における、温度変化に起因するその長さの変位の比は次の(7)式である。
{L(t)−L(t0)}/L(t0)={L(t)/L(t0)}−1=αΔt …(7)
(6)式と(7)式とを比較すると、本実施例のように長さの差dを計測する場合、温度変化に起因する変位は比率にして(L0/d0)倍大きくなっている。つまり、これは同じ温度変化に対して測定すべき変位の比が大きくなっていることを意味するから、従来のようにフライトチューブ2全体の長さを計測する場合に比べて、計測が容易であって精度を高め易いということができる。また、基準温度t0における長さの差d0はフライトチューブ2の長さL0と比べて格段に小さいので、レーザ式測距計のように長い距離を精度良く計測することが可能な測距計を用いる必要はなく、ごく短い距離や間隔を測定可能である様々な方式のセンサ、例えば、ひずみゲージ、静電容量センサなどを利用することができる。
上記計算では、基準部材5の熱膨張率βを無視したが、このβがαに比べて無視できない程度に大きい場合には、(5)式ではなく次の(8)式となる。
d(t)=d0+Δt(αL0−βR0) …(8)
ここで、L0≒R0と近似できるから、(8)式を(9)式に書き換える。
d(t)=d0+Δt(α−β)L0 …(9)
フライトチューブ2及び基準部材5がそれぞれ熱膨張したときの長さの差dの変位を比で表すと、(10)式となる。
{d(t)−d(t0)}/d(t0)={d(t)/d0}−1=(α−β)(L0/d0)Δt …(10)
また、フライトチューブ2の熱膨張率αが基準部材5の熱膨張率βに比べて無視できる程度に小さい場合、つまりβ>>αである場合には、フライトチューブ2及び基準部材5がそれぞれ熱膨張したときの長さの差dの変位の比は次の(11)式となる。
{d(t)−d(t0)}/d(t0)=−β(L0/d0)Δt …(11)
即ち、基本的には、α=βである場合以外は、長さの差dを計測することでフライトチューブ2の熱膨張の度合いを把握することができる。ただし、αとβの差が小さくなると、上述したように変位が(L0/d0)倍大きくなった効果がそれだけ薄れるから、αとβの差は大きいことが望ましい。
図1に戻り説明すると、本実施例のTOFMSでは、測距センサ7としてひずみゲージや静電容量センサなどを用い、フライトチューブ2のイオン入口側端部2aと基準部材5の端部5aとの間の距離(つまり上記長さの差d)を計測する。この測距センサ7による計測信号は質量ずれ情報記憶部85に入力される。質量ずれ情報記憶部85には、計測信号の大きさと質量ずれ量との関係を示すデータが予めテーブル形式や計算式で格納されている。計測信号の大きさと質量ずれ量との関係は再現性があり経時的な変化も殆どないから、この関係を示すデータは例えば、本装置の製造メーカーが予め実験的に求めて質量ずれ情報記憶部85に記憶しておくようにすればよい。
上述したように、試料成分由来のイオンを飛行空間21中を飛行させることによって飛行時間スペクトルデータを収集する際に、それと並行して、測距センサ7はそのときの端部2a、5a間の距離を計測し、質量ずれ情報記憶部85はその計測信号に対応した質量ずれ量を出力する。質量換算部82は、予め与えられた飛行時間と質量電荷比との対応関係を示す質量較正情報に基づいて、TOFスペクトルデータ収集部81により収集されたデータの飛行時間を質量電荷比に変換し、質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトルデータを求める。さらに質量補正部83は、質量ずれ情報記憶部85から得られる質量ずれ量の情報に基づいて質量電荷比を補正する。これによって、フライトチューブ2の熱膨張に起因する質量ずれが補正される。そしてマススペクトル作成部84は、質量ずれが補正されたマススペクトルデータに基づいてマススペクトルを作成し、表示部9の画面上に表示する。
上述したように、測距センサ7による計測信号はほぼリアルタイムで得られるから、例えばフライトチューブ2の温度が上昇する過程においても、質量分析が実施されたときのフライトチューブ2の温度に対応した精度の良い質量ずれ補正が可能である。
なお、上記実施例では、基準部材5をフライトチューブ2に接するように設けていたが、基準部材5がフライトチューブ2とほぼ同じ温度になりさえすれば、基準部材5はフライトチューブ2に接している必要はなく、単に近接して設置されていてもよい。
また、基準部材5は必ずしもフライトチューブ2と同方向に直線的に延伸する形状である必要はなく、温度変化に対する変位の再現性が確保されていればよい。そこで、例えば図3に示すように、基準部材5Aをコイル状とし、フライトチューブ2の外周に巻き付けるように設置してもよい。この場合にも、基準部材5Aの一端はフライトチューブ2の一端に固定部6により固定され、基準部材5Aの他端とフライトチューブ2の他端との間の距離(最小距離又はフライトチューブ2の軸方向の距離)を測距センサ7により計測すればよい。
もちろん、基準部材5、5Aの一端とフライトチューブ2の一端とは固定されていなくてもよいが、両部材の長さの差dを簡便に計測するには、一端が固定されているほうが都合がよい。
また、本発明に係る測定装置の温度変位による測定誤差補正方法は、TOFMS以外の様々な測定装置に利用可能である。
例えばTOFMSと同様に高い精度での測定が可能な質量分析装置として、オービトラップ型質量分析装置やフーリエ変換サイクロトロン共鳴型質量分析装置が知られている。こうした装置では、オービトラップ(電場セル)や磁場セルにおける電極間の距離や電極の長さ、或いは円筒状電極の内径などの変化が精度低下をもたらす。そこで、上述したような方法で、例えば電極の長さや電極間の距離と基準部材の長さとの差を計測し、この計測結果に基づいて質量ずれを補正するとよい。
また、例えば紫外可視分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計、赤外ガス分析計などでは、金属製の試料セルの長さが熱膨張によって変化することで試料中の光路長が変化したり、レンズ等の光学素子を固定した定盤が熱膨張することで試料に照射される光の強度が変化したりする場合があり、そうした要因によって測定データに変動が生じることがある。こうした測定装置においても、上述したような方法で、例えば試料セルと基準部材の長さとの差を計測し、この計測結果に基づいて測定データを補正すればよい。
さらにまた、それ以外の点において、本発明の趣旨の範囲で適宜に修正、変更、追加などを行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
1…イオン化チャンバ
11…イオン化部
12…加速器
2…フライトチューブ
21…飛行空間
3…検出チャンバ
31…検出器
5、5A…基準部材
6…固定部
7…測距センサ
8…データ処理部
81…TOFスペクトルデータ収集部
82…質量換算部
83…質量補正部
84…マススペクトル作成部
85…情報記憶部
9…表示部

Claims (6)

  1. その内部に測定対象物が通過する空間を形成する構成部材を有し、該空間を通過した前記測定対象物を検出することで測定データを取得する測定装置にあって、前記構成部材の熱膨張に起因して前記測定対象物が通過する空間の長さが変化したときに生じる前記測定データの誤差やずれを補正する測定誤差補正方法であって、
    前記構成部材とは熱膨張率が相違する材料からなる基準部材を該構成部材と同じ温度雰囲気中に配置し、
    前記構成部材及び前記基準部材が同じ温度雰囲気中でそれぞれ熱膨張したときの両部材の長さの差を計測し、該長さの差に基づいて前記測定データを補正することを特徴とする、測定装置の温度変位による測定誤差補正方法。
  2. 請求項1に記載の、測定装置の温度変位による測定誤差補正方法であって、
    前記測定装置は飛行時間型質量分析装置であり、前記構成部材は内部に飛行空間が形成されるフライトチューブであることを特徴とする、測定装置の温度変位による測定誤差補正方法。
  3. 請求項2に記載の、測定装置の温度変位による測定誤差補正方法であって、
    前記基準部材は前記フライトチューブと同方向に延伸する長尺部材であり、該基準部材の一端と前記フライトチューブの一端とが面一に保持され、該基準部材の他端と該フライトチューブの他端との距離が両部材の長さの差として計測されることを特徴とする、測定装置の温度変位による測定誤差補正方法。
  4. 内部に飛行空間が形成されるフライトチューブを具備する飛行時間型の質量分析装置であって、
    a)前記フライトチューブとは熱膨張率が相違する材料からなる該フライトチューブと同方向に延伸する長尺体であって、その一端が前記フライトチューブの一端と面一に保持され、該フライトチューブと同じ温度雰囲気中に配置された基準部材と、
    b)前記フライトチューブの一端と面一に保持されている側と反対側の前記基準部材の端部と、同じ側の前記フライトチューブの端部とは反対側の端部と、の間の距離を計測する測距部と、
    c)前記測距部による計測結果に基づいて、試料に対し質量分析を行うことで得られた飛行時間又は該飛行時間を換算して得られた質量電荷比を補正する補正処理部と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  5. 請求項4に記載の質量分析装置であって、
    前記測距部による計測結果と飛行時間又は質量電荷比のずれとの関係を予め記憶しておくずれ情報記憶部を備え、
    前記補正処理部は、前記測距部による計測結果に応じたずれを前記ずれ情報記憶部から取得し、飛行時間又は質量電荷比を補正することを特徴とする質量分析装置。
  6. 請求項5に記載の質量分析装置であって、
    前記測距部はひずみゲージ又は静電容量センサであることを特徴とする質量分析装置。
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