図1に、本実施形態に係るバッテリ冷却システム及びこれが搭載された車両の構成を例示する。なお、図示を簡略化するために、図1では、本実施形態に係るバッテリ冷却システムとの関連性の低い構成については適宜図示を省略している。また、図1の一点鎖線は信号線を表している。
図1に示す車両は、内燃機関ENG及び回転電機MG1,MG2を駆動源とするハイブリッド車両である。しかしながら、本実施形態に係るバッテリ冷却システムが搭載される車両はこれに限らない。要するに回転電機を駆動源とし、これに電力を供給する大容量のバッテリを備えた車両であればよく、例えば電気自動車や燃料電池車に、本実施形態に係る冷却システムを搭載してもよい。
図1に示す車両(ハイブリッド車両)では、メインバッテリ10から出力された直流電力が昇降圧DC/DCコンバータ12にて昇圧される。昇圧された直流電力はインバータ14にて直交変換される。変換後の交流電力は回転電機MG1,MG2の少なくとも一方に供給される。
例えば内燃機関ENGを駆動させずに回転電機の駆動力のみにて車両を走行させるEV走行モードでは、メインバッテリ10から回転電機MG2に電力が供給され、これにより得られた駆動力が動力分配機構16を介して車輪18に伝達される。
回転電機MG2に加えて内燃機関ENGからも駆動力を出力させるHV走行モードでは、内燃機関ENGの駆動力の一部が動力分配機構16を介して車輪18に伝達される。残りの駆動力は動力分配機構16を介して回転電機MG1に伝達され、これにより回転電機MG1が発電駆動される。その発電電力が回転電機MG2に供給され、これにより得られた駆動力が動力分配機構16を介して車輪18に伝達される。
また、図1に示す車両には、メインバッテリ10と昇降圧DC/DCコンバータ12とを繋ぐ電路から分岐して、降圧DC/DCコンバータ20に接続される分岐電路が設けられる。降圧DC/DCコンバータ20によって降圧された直流電力はブロア用インバータ22にて直交変換される。変換後の交流電力はブロアモータ24に供給される。ブロアモータ24によりブロア26が回転駆動させられ、これに伴い冷却空気が取り込まれる。
<バッテリ冷却システムの構成>
本実施形態に係るバッテリ冷却システムは、メインバッテリ10、ブロア26、ブロアモータ24、ブロア用インバータ22、及びECU(電子コントロールユニット)30を備える。
メインバッテリ10は、ニッケル水素やリチウムイオン電池等の二次電池から構成される。例えばメインバッテリ10は、1〜5V程度の電池セル(単電池)が複数積層されたスタック(積層体)から構成される。また、メインバッテリ10はカバー32に収容される。カバー32には冷却空気の供給口34及び排出口36が形成されている。後述するように、ブロア26から送られた冷却空気が供給口34からカバー32内部に取り込まれてメインバッテリ10が空冷される。冷却後の空気は排出口36から排出される。
ブロア26は、冷却空気をメインバッテリ10に送り込む送風機である。ブロア26は例えばシロッコファン(多翼送風機)から構成される。本実施形態に係るブロア26の吸入口38は車室内に向けられている。メインバッテリ10及び冷却システムがリアシート下部に設置されている場合、ブロア26の吸入口38はリアシート下部を覆うカバーから車室に露出するように設置される。
ブロア26は冷却空気として車室内の空気を取り込む。取り込みに際して、空気中及びフロアマット上の塵埃の吸入を避けるために、吸入口38にはフィルタ40が取り付けられている。例えばフィルタ40は吸入口38と同径のメッシュ部材から構成される。フィルタ40を介してブロア26に取り込まれた冷却空気は、ダクト42を経由してメインバッテリ10に送り込まれる。
ブロアモータ24はブロア26を回転駆動させる。ブロアモータ24は例えば定格電圧が14[V]の3相ブラシレスモータから構成される。ブロアモータ24にはブロア用インバータ22から駆動電圧(3相電圧)が印加され、これによりブロアモータ24が回転駆動される。ブロアモータ24のロータ位置は位置センサ44により検知され、後述するフィードバック制御に用いられる。なお、以下では、理解を容易にするため、ブロアモータ24の回転数[rpm]とブロア26の回転数[rpm]は同一であるとする。
ブロア用インバータ22は、メインバッテリ10から降圧DC/DCコンバータ20を介して供給された、または、サブバッテリ28から直接供給された直流電力を直交変換してこれをブロアモータ24に供給する。図2に示すように、ブロア用インバータ22は複数のスイッチング素子を備えており、制御部48から送られたPWM制御信号に基づいて、これらのスイッチング素子のオン/オフ動作が制御される。
図1に戻り、ECU30は、バッテリ冷却システムを含む車両内の機器を制御する。ECU30は例えばコンピュータから構成され、演算回路であるCPU46及び記憶装置であるメモリ49を備える。CPU46はブロア26を制御する制御部48及びフィルタ40の交換要否判定を行う判定部50を備える。メモリ49はSRAM等の揮発性メモリ及びROMやハードディスク等の不揮発性メモリを含んで構成される。メモリ49には後述するフィルタ交換要否判定フローを実行するためのプログラムや、指令電圧−圧損マップ等が記憶されている。
ECU30は車両に搭載された各種センサから検出値を受信する。具体的には電圧センサ54及び電流センサ56からそれぞれメインバッテリ10の電圧値Vb及び電流値Ibを受信する。またECU30はバッテリ温度センサ58からメインバッテリ10の温度Tbを受信する。また速度センサ60から車速を受信し、MG1回転位置センサ62、MG2回転位置センサ64、及び、ブロアモータ回転位置センサ44からそれぞれ回転電機MG1、MG2、及びブロアモータ24のロータ位置θを受信する。さらにECU30はマイクロホン68から車室内の音量レベルを受信する。加えてECU30はオーディオシステムのオン/オフスイッチ70からオーディオシステムのオン/オフ状態を受信し、パワーウィンドウスイッチ72から車窓の開度を受信する。またECU30は空調システムのオン/オフスイッチ74から空調のオン/オフ状態を受信する。
<ブロア制御システム>
図2に、本実施形態に係る冷却システムの制御ブロック図を例示する。制御部48は、ブロアモータ24への印加電圧である指令電圧値V_com(t)を制御することでブロア26の回転数[rpm]を制御する。本実施形態では、指令電圧値V_com(t)がPWM制御信号に変換され、これによってブロア26の回転数[rpm]が制御される。
PWM制御は電圧制御の一種であり、オン電圧を一定値(固定値)とし、かつ、1周期当たりのオン期間の割合、すなわちデューティ比[%]を変化させることで、1周期当たりの出力電圧平均値を変化させる。ブロアモータ24への指令電圧値V_com(t)とデューティ比は対応関係にあり、指令電圧値V_com(t)が高いほどデューティ比は高くなる。デューティ比が高いほどブロアモータ24の回転数は高くなる(いわゆる電機子電圧制御)。後述するように、制御部48は指令電圧値V_com(t)の変化に応じてデューティ比を変化させ、それによりブロアモータ24及びブロア26の回転数を制御する。
図2に例示する制御ブロック図では、制御部48が仮想的に複数の機能部に分けられている。すなわち、制御部48は回転数指令生成部48A、微分演算部48B、PI制御部48C、2相→3相変換部48D、及びPWM生成部48Eを備える。
制御部48、ブロア用インバータ22、ブロアモータ24、及びブロアモータ回転位置センサ44によってフィードバックループが形成される。以下このループに沿ってブロア26の回転数制御について説明する。制御部48の回転数指令生成部48Aには、ECU30の上位演算部からメインバッテリ10の温度Tb及び車室温度が送られる。これらの値に基づいて回転数指令生成部48Aはブロアモータ24(及びブロア26)の指令回転数R_com(t)[rpm]を生成する。指令回転数R_com(t)から微分演算部48Bによるブロアモータ24の実回転数R(t)[rpm]が減算されてPI制御部48Cに送られる。
PI制御部48Cでは、指令回転数R_com(t)と実回転数R(t)の差分値(回転差分値)に基づいて、指令電圧値V_com(t)が生成される。回転差分値と指令電圧値V_com(t)との対応関係は、例えばマップデータとして予めメモリ49に記憶される。更にPI制御部48Cでは、指令電圧値V_com(t)がd軸成分Vd*及びq軸成分Vq*に変換される。例えば一般的な速度制御に用いられるid=0制御では、V_com(t)=√(Vd*2+Vq*2)(=(Vd*2+Vq*2)1/2)及びVd*=0との数式に基づいてd軸成分Vd*及びq軸成分Vq*が求められる。
2相→3相変換部48Dでは、指令電圧のd軸成分Vd*及びq軸成分Vq*ならびにブロアモータ24のロータ位置θに基づいて、3相電圧信号Vu,Vv,Vwが生成される。PWM生成部48Eでは3相電圧信号Vu,Vv,Vwに基づいてU相、V相、W相のデューティ比が各々定められたPWM制御信号が生成される。PWM制御信号はブロア用インバータ22の各スイッチング素子に送られ、これらスイッチング素子のオンオフ動作が制御される。メインバッテリ10から降圧DC/DCコンバータ20を介して降圧された、またはサブバッテリ28から直接印加された直流電圧は、ブロア用インバータ22のスイッチング素子のオン/オフによって3相の方形波電圧に変換される(直交変換)。
3相電圧がブロアモータ24に印加されることでブロアモータ24のロータが回転駆動される。ロータの回転位置θ(機械角)はブロアモータ回転位置センサ44に検知される。検知された回転位置θは微分演算部48Bにて微分(Δθ)され実回転数R(t)(回転速度)となり、指令回転数R_com(t)から実回転数R(t)が減算される。以下、実回転数R(t)が指令回転数R_com(t)に一致するようにフィードバック制御が実行される。
図2に示す制御ブロックでは、指令回転数R_com(t)を変化させる可変制御と、指令回転数R_com(t)を一定回転数R_com0に維持する一定回転数制御が可能となっている。可変制御はメインバッテリ10の温度Tbに追従した空冷を行うための制御であり、メインバッテリ10の温度Tbや車室温度等に応じて指令回転数R_com(t)が変化する。また、一定回転数制御はフィルタ40の交換要否を判定するために行われる制御であり、指令回転数が所定の高回転数に維持される。所定の高回転数とは例えば2500[rpm]以上の回転数であってよく、例えば3000[rpm]に設定される。後述するように、一定回転数制御は、ブロア26(及びブロアモータ24)の累積駆動時間に基づき所定間隔で実行可能となっている。
図3には、ブロア26の回転数別の圧損変化のグラフが例示されている。横軸は圧損[Pa]であり、縦軸は指令電圧値V_com(t)を示す。なお、指令電圧値V_com(t)の単位が%で示されているが、これは、所定の指令電圧値V_com(t)に対応するPWM信号のデューティ比[%]を示すものであり、指令電圧値をデューティ比に換算したものである。
図3のグラフではA〜Dの4つの回転数[rpm]が示されている。回転数の大小関係はA<B<C<Dとなっている。例えば回転数Aは500[rpm]、回転数Bは1000[rpm]、回転数Cは2000[rpm]、回転数Dは3000[rpm]である。
図3のグラフに示されているように、いずれの回転数も、圧損の増加に伴い指令電圧値V_com(t)が低下する。言い換えると、所定の回転数にするためにブロアモータ24に印加される指令電圧値V_com(t)が、圧損の増加に伴い低下する。これは以下の理由による。
フィルタ40の圧損が増加する、典型的には目詰まりが発生すると、同一回転数下における冷却空気の吸引量が減少する。吸引量の減少により仕事量は減少するから、同一回転数に到達させるために要する電圧は低くなる。このようにして、圧損の増加に伴い指令電圧値V_com(t)が低下する。
図3のグラフにおいて、圧損P0[Pa]は例えば新品または清掃後のフィルタ40をブロア26の吸入口38に取り付けたときの値(初期値)である。また、圧損Pc[Pa]は例えばフィルタ40交換の基準値である。図3のグラフに示されているように、圧損P0[Pa]から圧損Pc[Pa]に至るまでの指令電圧値V_com(t)(実電圧)の落ち込みは、高回転数ほど大きくなる。例えば回転数Dのときの圧損P0からPcまでの指令電圧の落ち込みΔVdは、回転数Aのときの圧損P0からPcまでの指令電圧の落ち込みΔVaの2倍以上となる。このように、回転数が高くなるほど、圧損の変化に対する感度は高くなる。
したがって、圧損の変化を、指令電圧値V_com(t)の変化に基づいて検出するに当たり、ブロア26を高回転数(例えば3000rpm)にて一定回転数制御することで、低回転数(例えば500rpm)にて一定回転数制御する場合と比較して、圧損の変化を正確に検出できる。
上述の特性を利用して、判定部50は、一定回転数制御時に所定の高回転数に対応してブロアモータ24に印加される指令電圧値V_com(t)に基づいて、フィルタ40の交換要否を判定する。
具体的には、判定部50は、ブロア26の回転数を所定の高回転数R_com0(例えば3000rpm)にするために要する、ブロアモータ24への実電圧値すなわち指令電圧値V_com(t)が、所定の閾値V_comK未満となったときに、フィルタ40が閉塞されていると判定する。
所定の閾値V_comKは、フィルタ40の閉塞の有無を判定するための値であり、圧損P0からPcまでの指令電圧値V_com(t)の落ち込みΔVdに基づいて設定する。例えば圧損P0のときの指令電圧値V_com0からΔVdを引いた値を閾値V_comKとする(V_comK=V_com0−ΔVd)。
上述したように、圧損P0は新品または清掃後のフィルタ40をブロア26の吸入口38に取り付けたときの値である。したがって、新品または清掃後のフィルタ40をブロア26の吸入口38に取り付けた際に、ブロア26を回転数Dで一定回転数制御し、そのときの指令電圧値V_com(t)を、圧損P0に対応する指令電圧値V_com0としてメモリ49に記憶する。また、指令電圧の落ち込みΔVdは、ブロア26及びブロアモータ24の仕様書や実測等により予め求めることができ、これをメモリ49に記憶させる。
さらに本実施形態に係る判定部50は、フィルタ40が閉塞されていると判定された場合に、それが一時的なものであるか、または継続して閉塞されているかを判定し、前者の場合にはフィルタ交換は不要と判定し、後者の場合にフィルタ交換要と判定する。特に前者のような判定ステップを設けることで、買い物袋が貼り付く等により一時的にフィルタ40が閉塞されたときに、誤ってフィルタ交換要と判定されるのを抑制できる。
加えて本実施形態では、一時的なフィルタ40の閉塞を検知したときに、乗員に対してフィルタ40を閉塞させている障害物の除去を促すアラーム(仮アラーム)を出力する。これにより、障害物の速やかな除去が図られる。
<フィルタの交換要否判定フロー>
図4に、本実施形態に係るフィルタ40の交換要否判定フローを例示する。ここで、本フローの初期条件として、ブロア26は可変制御されているものとする。また、後述する障害物フラグiは初期値(i=0)であるとする。
図4に示す判定フロー、及びこれに伴う一定回転数制御は、ブロア26の駆動累積時間をもとに定期的に(所定間隔で)実行可能となっている。ブロア26の駆動累積時間は、例えば図5の横軸に示されるように、車両の複数トリップに跨って積算される。トリップとは、ECU30が起動(Ready−On)される時点から休止(Ready−Off)される時点までの期間を指す。
図4を参照し、制御部48は、メインバッテリ10の温度Tbが所定の閾値Tb_K0を超過するか否かを判定する(S10)。このステップでは、ブロア26を高回転数R_com0で一定回転数制御したときに、メインバッテリ10が過冷却(冷やし過ぎ)になるか否かが判定される。メインバッテリ10の温度Tbが所定の閾値Tb_K0以下である場合には、一定回転数制御には移行せずに、ブロア駆動時間ベースで所定時間待機し(S36)、次回の判定機会まで待機する。この待機期間は、例えば図5にて期間Pで示される。
ステップS10にてメインバッテリ10の温度Tbが所定の閾値Tb_K0を超過する場合、制御部48は車室内の音量レベルNが所定の閾値N_Kを超過しているか否かを判定する(S12)。ブロア26を高回転数で一定回転数制御する場合、回転に伴うノイズ(ブロアノイズ)が車室内に伝わり、乗員の不快に繋がるおそれがある。そこでこのステップでは、ブロアノイズが十分にマスキングされる程度に車室内が賑やかであるか否かが判定される。
車室内の音量レベル判定は、例えばマイクロホン68が検出した音量レベルに基づいて行う。また、これに代えて、車室内の音源(ノイズ源)となる機器のオン/オフ状態等に基づいて音量レベル判定を行ってもよい。例えばオーディオシステムのスイッチ70がオン状態であるときに、車室内の音量レベルが閾値N_Kを超過したと判定してもよい。また、空調システムのスイッチ74がオン状態であるときに、車室内の音量レベルが閾値N_Kを超過したと判定してもよい。さらに、パワーウィンドウスイッチ72による車窓の開度情報に基づき、車窓が開いている(開度≠0)ときに車室内の音量レベルが閾値N_Kを超過していると判定してもよい。また、いわゆるロードノイズやエンジンノイズを考慮して、速度センサ60から取得した車速が所定速度(例えば時速40km以上)以上であるとき、または内燃機関ENGが駆動状態にあるときに、車室内の音量レベルが閾値N_Kを超過していると判定してもよい。
ステップS12にて車室内の音量レベルNが所定の閾値N_K以下であると判定されると、上述したステップS36に進んでブロア駆動時間ベースで所定時間待機する。音量レベルNが所定の閾値N_Kを超過すると判定されると、制御部48は、ブロア26を可変制御から一定回転数制御に切り替える(S14)。すなわち制御部48は、ブロア26及びブロアモータ24の指令回転数R_com(t)を所定の高回転数R_com0に維持する。これに伴い図2に示す制御システムにて、ブロア26及びブロアモータ24の実回転数R(t)が指令回転数R_com0に一致するようにフィードバック制御が実行される。
ブロア26及びブロアモータ24に対する可変制御から一定回転数制御への切り替え信号は、制御部48から判定部50に送られる。切り替え信号を受けて判定部50は、指令電圧値V_com(t)ならびにブロア26及びブロアモータ24の実回転数R(t)[rpm]を受信する。
判定部50は、実回転数R(t)が指令回転数R_com0に到達したときの指令電圧値V_com(t)を取得する(S16)。さらに判定部50は、指令電圧値V_com(t)が、メモリ49に記憶された閾値V_comK未満であるか否かを判定する(S18)。
なお、図4に示す例では、指令電圧値V_com(t)と閾値V_comKとの比較を行っているが、別の数式を用いてもよい。例えば、V_comK=V_com0−ΔVdであることから、V_comK−V_com(t) > ΔVdとの不等式に基づいて、いわば間接的に、指令電圧値V_com(t)が閾値V_comK未満であるか否かの判定を行ってもよい。
指令電圧値V_com(t)が閾値V_comK以上である場合には、フィルタ40の閉塞無しと判定され、後述する障害物フラグが0に設定される(S20)。また、仮アラームまたは本アラームがオン設定されている(出力中の)場合は、その出力がオフに設定される。
障害物フラグは、フィルタ40を一時的に閉塞させる障害物の有無情報を反映させる2値(0または1)のパラメータである。障害物有りと判定されたときに、障害物フラグは1に設定され、障害物無しと判定されると、障害物フラグは0に設定される。
ステップS20の後、判定部50はブロアモータ24の制御を一定回転数制御から可変制御に切り替える指令を制御部48に送信する(S34)。さらにその後、待機期間に入る(S36)。
ステップS18にて指令電圧値V_com(t)が閾値V_comK未満である場合、つまり、フィルタ40が閉塞されたと判定された場合、判定部50は、その閉塞が急に発生した(一時的な閉塞)か否かを判定する。まず判定部50は、指令電圧値V_com(t)を取得した時刻における推定電圧値V_comES(t)を求める(S22)。
推定電圧値V_comES(t)は、図5に示すように、過去の一定回転数制御時の指令電圧値の履歴から求められる。例えば現在時刻をt5とすると、過去の時刻t1〜t4においてそれぞれ一定回転数制御が実行された際に、ブロアモータ24の実回転数R(t)が指令回転数R_com0に到達したときの、ブロアモータ24に印加された指令電圧値V_com(t1)〜V_com(t4)がそれぞれメモリ49に記憶される。これらの値V_com(t1)〜V_com(t4)から、例えば最小二乗法などにより近似直線を得る。この近似直線がブロア駆動累積時間軸で時刻t5に取る値が当該時刻t5における推定電圧値V_comES(t5)となる。
図4に戻り、判定部50は、指令電圧値V_com(t)が推定電圧値V_comES(t)を逸脱して下回るか否かを判定する(S24)。指令電圧値V_com(t)が推定電圧値V_comES(t)を逸脱して下回るということは、予想よりも早くフィルタ40が閉塞された、つまり閉塞が急に発生したことを意味する。例えばフィルタ40の前方に買い物袋等の障害物が置かれ、その袋の一部が吸引されてフィルタ40に貼り付くと、フィルタ40が閉塞されてその際の指令電圧値V_com(t)が推定電圧値V_comES(t)を大きく逸脱して下回る。
具体的には図5の時刻t5に示すように、フィルタ40が一時的に閉塞されると、推定電圧値V_comES(t5)からマージン値V_comMを引いた値よりもなお指令電圧値V_com(t5)が下回る。判定部50はステップS24にて、指令電圧値V_com(t5)が、推定電圧値V_comES(t5)からマージン値V_comMを引いた値未満となるか否かを判定する。
ステップS24にて逸脱有り、つまり当該ステップの不等式を満たす場合、判定部50は障害物フラグが1に設定されているか否か(0に設定されているか)を判定する(S28)。このステップでは、フィルタ40の急な閉塞が前回の一定回転数制御時から継続されているか否かが判定される。
ステップS28にて、障害物フラグが1ではない(0である)場合、判定部50は仮アラームを出力する(S30)。仮アラームは、乗員に対してフィルタ40前方の障害物を除去すべき旨を伝える警告信号である。仮アラームは、例えば車内のディスプレイ76に表示されるメッセージであってよく、当該メッセージは例えば「吸気口の一時的な閉塞が検出されたので周りの障害物を取り除いてください」との文言から構成される。
続いて判定部50は、障害物フラグを1に設定する(S32)。その後判定部50は、制御部48に対して、ブロア26の回転数制御を、一定回転数制御から可変制御に切り替える切り替え指令を出力する(S34)。さらにブロア駆動時間をカウントして、次回の判定機会まで待機する(S36)。
ステップS24に戻り、指令電圧値V_com(t)が推定電圧値V_comES(t)を逸脱しない(No)と判定されると、判定部50は本アラームを出力する(S26)。指令電圧値V_com(t)が推定電圧値V_comES(t)を逸脱しないということは、予想通りフィルタ40に塵埃が溜まって目詰まりに至ったことを意味する。判定部50は、フィルタ40の交換要と判定して、フィルタ交換を促す本アラームを出力する。例えば判定部50は、車内のディスプレイ76に「吸気口の閉塞が検出されました。ディーラーで車両点検を受けて下さい」等のメッセージを表示させる。
また、ステップS28にて既に障害物フラグが1である(フラグが立っている)場合にも、判定部50は本アラームを出力する。ステップS28にて障害物フラグが立っているということは、フィルタ40の前方に障害物が置かれている状況が複数回の一定回転数制御に亘って継続されている、言い換えると、今回の一定回転数制御時の指令電圧値V_com(t)が、前回の一定回転数制御に引き続き閾値V_comK未満かつ推定電圧値V_comES(t)を逸脱して下回ることを意味する。このような状況では、メインバッテリ10の冷却が十分に行われないおそれがある。また、フィルタ40の前方に障害物が置かれたのではなく、短期間のうちにフィルタ40に大量の塵埃が吸い込まれたという可能性もある。そこで判定部50は、フィルタ40の閉塞を解消させるために、本アラームを出力する。本アラームの出力後、ブロアモータ24の制御が、一定回転数制御から可変制御に切り替えられる(S34)。
図5には、本実施形態に係るフィルタ交換要否判定フロー実行時のタイムチャートが例示されている。なおこの例では、初期値として障害物フラグiは0に設定されているものとする。
トリップn1の開始からブロア駆動累積時間がカウントされ、時刻t1になると一定回転数制御が実行される。このとき実線の×で示す指令電圧値V_com(t1)は閾値V_comK以上であるので、図4のステップS18から、フィルタ40の閉塞は無いと判定され、可変制御に戻される。
続く時刻t2〜t4ではいずれもフィルタ40の閉塞は無いと判定される。さらに時刻t5では、指令電圧値V_com(t5)が閾値V_comKを割り込む。図4のステップS18から、フィルタ40に閉塞有りと判定される。
さらに指令電圧値V_com(t5)は推定電圧値V_comES(t5)からマージン値V_comMを引いた値よりも小さい。図4のステップS24、S28に基づき、障害物フラグの設定確認が行われる。上述したように障害物フラグの初期値は0に設定されているため、ステップS30に進んで仮アラームが出力される。
仮アラームにより、フィルタ40前の障害物が除去された後、時刻t6にて一定回転数制御が実行される。このとき、指令電圧値V_com(t6)は閾値V_comKを上回っている(回復する)ため、ステップS18及びS20の処理により、障害物フラグが0に設定される。また、時刻t5においてオン設定となった仮アラームがオフ設定される。
このように本実施形態に係るフィルタ交換要否判定フローでは、フィルタ40の閉塞を検知したときに、それが障害物等による一時的な閉塞か否かを判定している。このような判定ステップを設けることで、障害物等による一時的な閉塞が生じたときにフィルタ40の交換アラームが誤って出力されることを抑制できる。
<一定電圧制御>
上述の実施形態では、ブロア26及びブロアモータ24の回転数制御として、一定回転数制御を用いたが、これに代えて、ブロアモータ24に印加する電圧を一定にする一定電圧制御を行ってもよい。
図6には、一定電圧制御において、圧損の増加に伴うブロア26の回転数変化の例が示されている。横軸は圧損[Pa]であり、縦軸はブロア26の回転数[rpm]である。図6のグラフには3つの指令電圧値V_comE〜V_comGが示されている。指令電圧値V_comE〜V_comGの大小関係はV_comE<V_comF<V_comGである。例えば指令電圧値V_comEはデューティ比30%に対応する電圧値であり、指令電圧値V_comFはデューティ比60%に対応する電圧値であり、指令電圧値V_comGはデューティ比90%に対応する電圧値である。
図3の説明で述べた通り、圧損が増加するほど所定回転数に到達させるための指令電圧値V_com(t)は低下する。このことから、圧損が増加するほど、所定の指令電圧値V_com(t)に対応する回転数は増加する。さらに図6に示されているように、指令電圧(デューティ比)が高いほど、圧損の増加に伴う回転数の増加割合が大きくなる。そこで判定部50は、一定電圧制御を行うに当たり、ブロアモータ24に印加する電圧を所定の高電圧(例えば指令電圧値V_comG)に設定する。
判定部50は、圧損P0のときの指令電圧値V_comGにおける回転数rpm_g0から、指令電圧値V_comGにおける圧損P0からPcまでの回転数の増分Δrpm_gを足した回転数閾値R_Kを求める。
回転数rpm_g0について、新品または清掃後のフィルタ40をブロア26の吸入口38に取り付けた際に、ブロアモータ24に指令電圧値V_comGを印加したときのブロアモータ24(及びブロア26)の実回転数を回転数rpm_g0としてメモリ49に記憶させる。また、回転数の増分Δrpm_gは、ブロア26及びブロアモータ24の仕様書や実測等により予め求めることができる。
図7には、一定電圧制御を組み込んだフィルタ交換要否判定フローが例示されている。図4と同様に、本フローの初期条件として、ブロア26は可変制御されているものとする。また、後述する障害物フラグiは初期値(i=0)であるとする。
制御部48は、メインバッテリ10の温度Tbが所定の閾値Tb_K0を超過するか否かを判定する(S110)。メインバッテリ10の温度Tbが所定の閾値Tb_K0以下である場合には、一定電圧制御には移行せずに、ブロア駆動時間ベースで所定時間待機し(S136)、次回の判定機会まで待機する。
ステップS110にてメインバッテリ10の温度Tbが所定の閾値Tb_K0を超過する場合、制御部48は車室内の音量レベルNが所定の閾値N_Kを超過しているか否かを判定する(S112)。車室内の音量レベル判定は、図4に示したステップS12と同様の基準で行われる。ステップS112にて車室内の音量レベルNが所定の閾値N_K以下であると判定されると、上述したステップS136に進んでブロア駆動時間ベースで所定時間待機する。
音量レベルNが所定の閾値N_Kを超過すると判定されると、制御部48は、ブロア26を可変制御から一定電圧制御に切り替える(S114)。すなわち制御部48は、ブロア26及びブロアモータ24の指令電圧値V_com(t)を所定の高回転数V_com0に維持する。また制御部48は、可変制御から一定電圧制御に切り替わったことを示す制御指令を判定部50に送信する。
判定部50は、指令電圧値V_com0のときの実回転数R(t)をブロアモータ回転位置センサ44から取得する(S116)。さらに判定部50は、実回転数R(t)が、メモリ49に記憶された閾値R_Kより大となるか否かを判定する(S118)。
実回転数R(t)が閾値R_K以下である場合には、フィルタ40の閉塞無しと判定され、障害物フラグが0に設定される(S120)。また、仮アラームまたは本アラームがオン(出力中)の場合は、その出力がオフに設定される。その後、ブロアモータ24の制御が一定電圧制御から可変制御に切り替わり(S134)、さらに待機期間に入る(S136)。
ステップS118にて実回転数R(t)が閾値R_Kより大である場合、つまり、フィルタ40が閉塞されたと判定された場合、判定部50は、実回転数R(t)を取得した時刻における推定回転数R_ES(t)を求める(S122)。さらに判定部50は、実回転数R(t)が、推定回転数R_ES(t)にマージン値R_Mを加えた値より大であるか否かを判定する(S124)。
ステップS124にて逸脱有り、つまり当該ステップの不等式を満たす場合、判定部50は障害物フラグが1に設定されているか否か(0に設定されているか)を判定する(S128)。障害物フラグが1ではない(0である)場合、判定部50は仮アラームを出力する(S130)。その後、判定部50は、障害物フラグを1に設定する(S132)。さらにブロア26の回転数制御が、一定電圧制御から可変制御に切り替わる(S134)。次に制御部48はブロア駆動時間をカウントして、次回の判定機会まで待機する(S136)。
ステップS124に戻り、実回転数R(t)が、推定回転数R_ES(t)にマージン値R_Mを加えた値以下である場合、判定部50は本アラームを出力する(S126)。また、ステップS28にて既に障害物フラグが1である(フラグが立っている)場合にも、判定部50は本アラームを出力する(S126)。本アラームの出力後、ブロアモータ24の制御が、一定電圧制御から可変制御に切り替わる(S134)。