JP6657568B2 - 曲げ部材の製造方法および製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、曲げ部材の製造方法および製造装置に関し、例えば3次元熱間曲げ焼き入れ(3DQ:3 Dimensional Hot Bending and Quench)により、多関節ロボットのマニピュレータの軌道のずれが生じても素材である鋼管の軸方向への過大な荷重が発生することを抑制しながら、良好な加工形状を有する曲げ部材を製造する方法および装置に関する。
曲がった形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材が、自動車や各種機械等に用いられる。高強度、軽量かつ小型であることがこれらの曲げ部材に要求される。従来より、この種の曲げ部材は、例えば、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される曲げ部材をさらに軽量および小型化することは、難しい。
近年では、この種の曲げ部材を、いわゆるチューブハイドロフォーミングにより製造することが積極的に検討されている(例えば非特許文献1参照)。素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった様々な課題がチューブハイドロフォーミング工法に存在するため、今後よりいっそうの開発が必要であることが、非特許文献1の28頁に開示される。
本出願人は、先に特許文献1により3次元熱間曲げ焼き入れ装置(3DQ装置ともいう)を開示し、特許文献2により3DQにおいて曲げモーメントを与える手段としてマニピュレータ(多関節ロボット)を使用することを開示した。
図5は、特許文献2により開示した3次元熱間曲げ焼き入れ装置0の一例の概略を示す説明図である。
図5に示すように、3次元熱間曲げ焼き入れ装置0は、支持手段1によりその軸方向へ移動自在に支持された素材である鋼管7を上流側から下流側へ向けて、例えばボールネジを用いた送り装置2により送りながら、(a)支持手段1の下流で加熱装置、例えば高周波誘導加熱コイル3により、鋼管7を焼入れが可能な温度域に急速に加熱し、(b)高周波誘導加熱コイル3の下流に配置される水冷装置4により鋼管17を急冷し、かつ(c)鋼管7の先端部をマニピュレータ5の効果器5aで把持し、マニピュレータ5の効果器5aの位置を例えば左右といった鋼管の送り方向を含む平面内(二次元)のみならず上下の空間内(三次元)で変更して鋼管7の加熱された部分(誘導加熱コイルと水冷装置の間の鋼管の高温部)に任意の向きと大きさの曲げモーメントまたはせん断力を付与して加工を行うことによって、鋼管内の曲げの位置と向きと大きさと範囲を自由に変化させた曲げ部材を製造することができる。ただし、曲部の強度を抑えた曲げ部材を製造する場合は、あえて焼き入れしないよう加熱温度をA変態点よりも低くすればよい。このように3次元熱間曲げ焼き入れの技術は焼き入れを伴わない熱間加工や曲げ部材にも適用可能である。
3DQ装置による鋼管7の曲げ加工過程で、多関節型産業用ロボットのマニピュレータ5により鋼管7に与えられる曲げモーメントとは別に、鋼管7の軸方向への荷重が発生する場合がある。鋼管7に与えられる曲げの曲率半径が小さく、また、マニピュレータ5の効果器5aの移動速度が大きい時に、鋼管7の軸方向への荷重が顕著に発生する。
この荷重は、鋼管7の加工に必要な曲げ変形には寄与しないばかりか、加工時の鋼管7の断面の変形や座屈等の不具合を引き起こすおそれがある。このため、特に曲げの曲率半径が小さい曲げ部材を3DQにより量産する場合には、加工時の鋼管7の軸方向への荷重の発生を抑制する必要がある。
本出願人は、特許文献3により3DQにおいて鋼管に曲げモーメントまたはせん断力を与える手段として多関節型産業用ロボットのマニピュレータを使用することを開示し、特許文献4により曲げモーメントを与える手段として多関節型産業用ロボットのマニピュレータを使用し、マニピュレータの軌道の目標値からの偏差が閾値を超えた場合に目標軌道を修正して設定することを開示した。
国際公開第2006/093006号パンフレット 国際公開第2010/050460号パンフレット 特開2012−228713号公報 特開2012−228714号公報
自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23〜28頁
特許文献2には、マニピュレータの軌道のずれやこのずれに起因して鋼管の軸方向へ過大な荷重が発生することは記載されていない。
特許文献3には、3DQでの鋼管の加工時に鋼管の軸方向へ過大な荷重が発生することは記載されていない。
さらに、特許文献4には、3DQでの加工荷重の目標値からの偏差が閾値を超えた場合に、マニピュレータの軌道を変更する方法が記載されているものの、平面内(二次元)または空間内(三次元)を移動するマニピュレータの軌道を適切に修正することは事実上困難である。なお、特許文献4により開示された発明は、素材である鋼管の寸法や鋼管の変形抵抗さらには温度のばらつきによって生じる曲げ加工力の変化を主に意図したものであり、3DQでの鋼管の加工時に鋼管の軸方向へ過大な荷重(過大な軸方向力)が発生することは記載されていない。
さらに、特許文献3,4により開示された発明は、いずれも、目標軌道を修正するため、加工後の曲げ部材の寸法精度に影響を及ぼす可能性がある。また、マニピュレータの軌道を直接測定ないしは発生した荷重からマニピュレータの軌道のずれを推定するため、精密な計測機器を用いる必要があり、装置コストが嵩むことや、種々の加工条件や複雑な軌道パターンにおいて精度よくマニピュレータの軌道のずれを予測することは事実上困難である。
このように、従来の技術では、3DQにより、マニピュレータの軌道のずれが生じた場合にも、素材である鋼管の軸方向への過大な荷重が発生することを抑制しながら、良好な加工形状を有する曲げ部材を製造することはできない。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記の知見A〜Hを得て、本発明を完成した。
(A)鋼管の先端部をマニピュレータで把持して3DQにより曲げ部材を製造する場合、マニピュレータの座標は3DQ装置における鋼管の加工履歴(曲げの位置、曲げの大きさ、鋼管の送り出し量等)から求め、マニピュレータの目標の軌道を設定していた。
3DQで鋼管の曲げ加工を行う際には、マニピュレータは、加熱装置、例えば高周波加熱装置の高周波誘導加熱コイルによる鋼管の加熱された部分を中心とする概略円弧に近い軌道を通る。しかし、マニピュレータは、その制御特性に関わる要因や慣性モーメント、さらには遠心力等の影響によって、目標の軌道に対して垂直な方向にずれた軌道を通過することがある。すなわち、サーボモータで制御されたマニピュレータの先端が円弧運動する際に、制御の応答特性、慣性モーメント、さらには遠心力等に起因して、目標の軌道に対して内回り(目標の軌道の半径よりも小さい半径の軌道を通る)が生じる場合がある。
(B)マニピュレータの軌道が目標の軌道と一致しないと、軌道のずれ分だけマニピュレータと加熱装置との間の距離に誤差が生じる。鋼管はマニピュレータと送り装置とで拘束されているため、マニピュレータの軌道のずれにより鋼管は軸方向へ圧縮荷重ないしは引張荷重を受け、鋼管の軸方向へ過大な荷重が発生する。
(C)3DQで鋼管を曲げ加工する際には、鋼管の軸方向への荷重は曲げ加工には不要な外力であるばかりか、鋼管の軸方向への荷重が大きい場合には、鋼管の断面や肉厚の変化、あるいは座屈等の加工不良の原因になる。
(D)マニピュレータの軌道のずれは、軌道の略円弧の半径が小さくなるほど、また、マニピュレータの先端部の移動速度が大きくなるほど増大し、曲率半径の小さい加工形状を加工する際に顕著となる。加工速度を低減することは上記の軌道のずれの抑制には確かに効果があるものの、生産能率の低下を招くため、根本的な解決策とはならない。
(E)さらに、3DQによる鋼管の加熱および冷却に伴う鋼管の膨張や収縮、焼入れに伴う相変態による膨張および収縮、さらには曲げ加工による中心線の伸びによっても鋼管の長さが変化し、鋼管の軸方向への荷重が発生する。
(F)加工する鋼管の先端部を把持するマニピュレータの軌道のずれ、および、鋼管自体の長さの変化が生じた際に、マニピュレータではなく送り装置の速度を制御し、マニピュレータの先端部との相対的な位置関係を変化させることにより、鋼管に生じる圧縮荷重や引張荷重を緩和することができ、鋼管の軸方向への荷重を目標値に保つことができる。
(G)マニピュレータの軌道が鋼管の軸方向にずれた際に、鋼管に作用する圧縮変形や引張変形を、鋼管のもう後端部を把持する送り装置の速度を変更することにより、マニピュレータの先端の把持部と送り装置の把持部との同期を維持し続けることができ、鋼管の軸方向への圧縮荷重や引張荷重の発生を抑制できる。
(H)具体的には、マニピュレータの先端の把持部や送り装置の把持部に荷重センサーを配備し、この荷重センサーの測定値を用いて、オンライン、ないしは、予め求めておいた荷重パターンにしたがって送り装置の速度制御を行う。送り装置は、一軸方向のみのアクチュエータであってもよく、この場合サーボモータによる速度の増減のみで正確な制御が可能であり、複雑なモデルや制御ロジックを必ずしも必要としない。送り装置は、国際公開第2011/007810号パンフレットに開示されたように多関節ロボットでもよいが、この場合も加熱装置への鋼管の送り速度を制御可能にする必要がある。また、送り装置に荷重センサーを配備しない場合、送り装置は必ずしも鋼管の軸方向の後端部17aを把持する必要はない。例えば、鋼管の軸方向の後端部17aを把持して送る代わりに支持手段を駆動させて鋼管を送る送り装置としてもよい。
本発明は、鋼管を送り装置により加熱装置へ送りながら、加熱装置により前記鋼管を(焼入れする場合は焼入れが可能な温度域に)急速に加熱するとともに前記加熱装置よりも前記鋼管の送り方向の下流で冷却装置により前記鋼管を急冷し、かつ前記鋼管の先端部を把持するマニピュレータに二次元又は三次元の所定の軌道を与えて前記鋼管の加熱された部分に曲げモーメントまたはせん断力を付与して加工を行うことによって、少なくとも曲部を有する曲げ部材を製造する際に、前記送り装置による前記鋼管の送り速度を制御することによって前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重を制御することを特徴とする曲げ部材の製造方法である。
別の観点からは、本発明は、鋼管を加熱装置へ送る送り装置と、鋼管を(焼入れする場合は焼入れが可能な温度域に)急速に加熱する加熱装置(例えば高周波誘導加熱装置)と、前記加熱装置よりも前記鋼管の送り方向の下流に配置されて前記鋼管を急冷する冷却装置と、前記鋼管の先端部を把持するとともに二次元又は三次元の所定の軌道を移動することによって前記鋼管の加熱された部分に曲げモーメントまたはせん断力を付与して加工を行うマニピュレータとを備え、少なくとも曲部を有する曲げ部材を製造する装置において、さらに、前記送り装置による前記鋼管の送り速度を制御することによって前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重を制御する荷重制御装置を備えることを特徴とする曲げ部材の製造装置である。
これらの本発明により、3DQ加工中の鋼管の軸方向に発生する荷重を制御でき、焼入れ曲げ部材の加工形状を所望の状態とすることができる。
これらの本発明では、前記鋼管の送り速度は、(a)予め求めた、前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重の発生パターンに基づいて、制御すること、(b)前記マニピュレータの先端部に配置された荷重センサーの出力に基づいて、制御すること、(c)前記送り装置の駆動軸ないしは前記送り装置における前記鋼管を把持する部分と前記鋼管との間に配置された荷重センサーの出力に基づいて、制御することが例示される。
さらに、これらの本発明では、前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重が、引張荷重となる場合は前記送り装置による前記鋼管の送り速度を増加するように制御し、圧縮荷重となる場合には前記送り装置による前記鋼管の送り速度を減速するように制御することが望ましい。
本発明によれば、3DQ装置において、鋼管の先端部をマニピュレータで把持し、鋼管の後端側から送り装置で鋼管を加熱装置に送り、マニピュレータと送り装置を同期させて熱間曲げ加工を行う際に、マニピュレータの目標軌道と実際の軌道とのずれや、熱的要因や相変態による膨張や収縮、曲げによる伸び等といった鋼管自体の長さの変化によって発生する鋼管の軸方向への荷重を、送り装置の速度を制御することにより目標値に保つことができる。これにより、加工中における鋼管の断面変形やしわ、座屈などの形状不良といった、管軸方向の過大な荷重による有害な変形を防止し、成形品の加工精度を改善して所望の加工形状を得ることができる。
また、本発明によれば、マニピュレータ(多関節ロボット)や送り装置に対する過負荷を抑制し、設備の劣化や損傷などを未然に防止できる。
図1は、本発明に係る製造装置の構成を概念的に示す説明図である。 図2は、荷重制御装置における制御フローを示す説明図である。 図3は、実施例で用いた本発明に係る製造装置の構成を模式的に示す説明図である。 図4(a)および図4(b)はいずれも実施例の結果を示すグラフである。 図5は、3DQ装置の一例の概略を示す説明図である。
本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。なお、以降の説明における鋼管は、長方形の横断面形状を有する角管であるが、本発明は角管に限定されるものではなく、閉じた横断面形状を有する中空の鋼管であれば、等しく適用される。また、以降の説明では3DQによる加工が曲げ加工である場合を例にとるが、本発明は曲げ加工に限定されるものでなく、せん断加工にも同様に適用される。
1.本発明に係る製造装置10
図1は、製造装置10の構成を概念的に示す説明図である。
製造装置10は、支持手段11、送り装置12と、高周波誘導加熱装置13と、冷却装置14と、マニピュレータ15と、荷重制御装置19とを備える。
支持手段11は、素材である鋼管17を、鋼管17の軸方向へ移動自在に支持する。このような支持手段11として製造装置10では対向して配置された2組のロール対が例示される。
送り装置12は、鋼管17の軸方向の後端部17aを把持(固定して支持)する。送り装置12は、鋼管17を高周波誘導加熱装置13へ向けて送る。このような送り装置12として製造装置10では、一軸方向のみのアクチュエータ12aにより駆動されるボールねじ12bが例示される。これに限らず、送り装置として、WO2011/007810に開示されたような多関節型ロボットを用いることもできる。
送り装置12の駆動軸(ボールねじ)12b、ないしは、送り装置12における鋼管17の後端部17aを把持する部分と鋼管17との間には、ボールねじ12bないしは後端部17aを把持する部分が鋼管17から受ける荷重を検出できる荷重センサー12cが装着されている。
高周波誘導加熱装置13は、支持手段11よりも鋼管17の送り方向の下流に配置される。高周波誘導加熱装置13は、鋼管17を焼入れが可能な温度域に急速に加熱する。このような高周波誘導加熱装置12として製造装置10では、鋼管17の周囲に鋼管17から離間して配置される環状の高周波誘導加熱コイルが例示される。
冷却装置14は、高周波誘導加熱装置13よりも鋼管17の送り方向の下流に配置される。冷却装置14は、鋼管17を急冷する。このような冷却装置14として、加熱された鋼管17の外周面全面へ向けて冷却水を噴射するヘッダーを有する水冷装置が例示される。
なお、図1では図面を簡略化するために高周波誘導加熱装置13と冷却装置14とを一体に示しているが、もちろん別体として配置してもよい。
マニピュレータ15は、例えば多関節型の産業用ロボットのマニピュレータであり、先端に設けられた効果器15aを介して鋼管17の先端部17bを把持する。マニピュレータ15は、平面内(二次元)又は空間内(三次元)の所定の軌道を移動する。これにより、マニピュレータ15は、鋼管17の加熱された部分17cに曲げモーメントを付与して曲げ加工を行う。
マニピュレータ15の先端部には、鋼管17からマニピュレータ15が受ける荷重を検出できる荷重センサー15bが装着されている。
製造装置10は、このようにして、少なくとも焼入れされた曲部を有する焼入れ曲げ部材18を製造する。
製造装置10は、さらに、荷重制御装置19を有する。荷重制御装置19は、送り装置11による曲げ加工中の鋼管17の送り速度を制御することによって曲げ加工中の鋼管17の軸方向へ発生する荷重を制御する。
荷重制御装置19は、
(a)予め求めた、曲げ加工中の鋼管17の軸方向へ発生する荷重の発生パターンを製造する焼入れ曲げ部材18毎に実験又は計算により予め求めておき、この荷重の発生パターンに基づいて指令部からの指示により、
(b)マニピュレータ15の先端部に配置された荷重センサー15bの出力に基づいて演算部により演算し、演算結果を指令部へ伝達し、指令部からの指示により、または
(c)送り装置12の駆動軸12bないしは送り装置12における鋼管17を把持する部分と鋼管17との間に配置された荷重センサー12cの出力に基づいて演算部により演算し、演算結果を指令部へ伝達し、指令部からの指示により、
送り装置12による曲げ加工中の鋼管17の送り速度を、制御する。
さらに、荷重制御装置19は、演算部および指令部により、曲げ加工中の鋼管17の軸方向へ発生する荷重が、引張荷重となる場合は送り装置12による鋼管17の送り速度を増加するように制御し、圧縮荷重となる場合には送り装置12による鋼管17の送り速度を減速するように制御する。
図2は、荷重制御装置19における制御フローを示す説明図である。
図2に示すように、ステップ(以下Sと略記する)1において、荷重センサー15bまたは荷重センサー12cにより曲げ加工中の荷重が測定され、S2へ移行する。
S2において、荷重制御装置19の演算部により荷重の測定値に基づいて鋼管17の軸方向へ発生する荷重が演算され、S3へ移行する。
S3において、荷重制御装置19の演算部により送り装置12の速度補正量が演算され、S4へ移行する。
さらに、S4において、荷重制御装置19の指令部により送り装置12へ変更された速度パターンが指示されて、送り装置12による曲げ加工中の鋼管17の送り速度が修正される。
製造装置10は、以上のように構成される。次に、本発明に係る製造方法を説明する。
2.本発明に係る製造方法
図1に示すように、支持手段11により軸方向へ移動自在に支持された鋼管17の軸方向の後端部17aを把持する送り装置12により、鋼管の後端部17aを押して支持手段11の下流にある高周波加熱装置13に送り続ける。その結果、鋼管の先端部17bは押し出される。
支持手段11よりも下流に配置された高周波誘導加熱装置13により鋼管17を(焼き入れする場合は焼入れが可能な温度域に)急速に加熱するとともに高周波誘導加熱装置13よりも下流に配置された冷却装置14により鋼管17を急冷(焼き入れ)する。
さらに、鋼管17の先端部17bを把持するマニピュレータ15に二次元又は三次元の所定の軌道を与えて鋼管17の加熱された部分17cに曲げモーメントを付与して曲げ加工を行う。
このようにして、少なくとも曲部を有する焼入れ曲げ部材18を製造する。
本発明では、このように鋼管17に3DQによる曲げ加工を行っている際に、送り装置12による鋼管17の送り速度を制御することによって曲げ加工中の鋼管17の軸方向へ発生する荷重を制御して、3DQ加工中の鋼管17の軸方向に過大な荷重(過大な軸方向力)が発生することを防止する。
本発明に係る製造方法および製造装置10によれば、3DQ加工中の鋼管17の軸方向に発生する荷重を制御でき、焼入れ曲げ部材18の加工形状を所望の状態とすることができる。
また、本発明に係る製造方法および製造装置10によれば、マニピュレータ15の軌道のずれによるマニピュレータ15の先端部に装着される効果器15aと送り装置12の相対的な位置の変化や、熱的要因や相変態による膨張や収縮、曲げによる伸び等といった鋼管17自体の長さの変化によって不可避的に発生する鋼管17の軸方向への荷重を、送り装置12の速度を制御することにより目標値(加工精度を悪化させない範囲)に保つことができる。これにより、加工中における鋼管17の断面変形やしわ、座屈などの形状不良といった、管軸方向の過大な荷重による有害な変形を防止し、成形品の加工精度を改善して所望の加工形状を得ることができる。
さらに、本発明に係る製造方法および製造装置10によれば、マニピュレータ15や送り装置12に対する過負荷を抑制でき、設備の劣化や損傷などを未然に防止できる。
図3に示す本発明に係る製造装置20を用いて、以下に列記の条件で鋼管17に3DQによる曲げ加工を行った。なお、図3における符号は、図1に示す製造装置10に付けた符号と同じである。
鋼管17:断面の幅45.5mm,高さ13mm,肉厚2.4mmの角管
鋼管17の送り速度:70mm/secで一定
焼入れ曲げ部材18の平面視形状:曲げ半径60mm,曲げ角度60°の円弧形状
この製造装置20による焼入れ曲げ部材18の製造では、送り装置12に装着したロードセル12cの出力値には、マニピュレータ15による曲げ力の水平方向成分は付加されているため、曲げ加工が進行するに伴って、鋼管17には軸方向への圧縮力が発生している。
そこで、この圧縮力を低下するために、送り装置12による鋼管17の送り速度を低下して、本発明の効果を検証した。すなわち、鋼管17の軸方向への荷重の測定値に基づいて、送り装置12による鋼管17の送り速度の送り速度を2.5%,6.0%低下したものをそれぞれ本発明例1,2とし、送り装置12による鋼管17の送り速度を変更しなかったものを従来例とした。
結果を図4にグラフで示す。図4(a)は、加工開始時からの経過時間と、荷重センサー15bが検出した軸方向力との関係を示すグラフであり、図4(b)は、加工開始時からの経過時間と、荷重センサー12cが検出した荷重との関係を示すグラフである。
図4(a)および図4(b)のグラフに示すように、本発明例1,2は、比較例に対して、鋼管17に生じる軸方向への荷重を顕著に低下できたことがわかる。
10 本発明に係る製造装置
11 支持手段
12 送り装置
13 高周波誘導加熱装置
14 冷却装置
17 鋼管
17a 後端部
17b 先端部
18 焼入れ曲げ部材

Claims (7)

  1. 鋼管を送り装置により加熱装置へ送りながら、前記加熱装置により前記鋼管を加熱するとともに前記加熱装置よりも前記鋼管の送り方向の下流で冷却装置により前記鋼管を急冷し、かつ前記鋼管の先端部を把持するマニピュレータに二次元又は三次元の所定の軌道を与えて前記鋼管の加熱された部分に曲げモーメントまたはせん断力を付与して加工を行うことによって、少なくとも曲部を有する曲げ部材を製造する際に、
    前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重が緩和されるように、前記送り装置による前記鋼管の送り速度を制御すること
    を特徴とする曲げ部材の製造方法。
  2. 前記鋼管の送り速度は、予め求めた、前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重の発生パターンに基づいて、制御する請求項1に記載された曲げ部材の製造方法。
  3. 前記鋼管の送り速度は、前記マニピュレータの先端部に配置された荷重センサーの出力に基づいて、制御する請求項1に記載された曲げ部材の製造方法。
  4. 前記鋼管の送り速度は、前記送り装置の駆動軸ないしは前記送り装置における前記鋼管を把持する部分と前記鋼管との間に配置された荷重センサーの出力に基づいて、制御する請求項1に記載された曲げ部材の製造方法。
  5. 前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重が、引張荷重となる場合は前記送り装置による前記鋼管の送り速度を増加するように制御し、圧縮荷重となる場合には前記送り装置による前記鋼管の送り速度を減速するように制御する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された曲げ部材の製造方法。
  6. 鋼管を加熱装置へ向けて送る送り装置と、
    該鋼管を加熱する加熱装置と、
    前記加熱装置よりも前記鋼管の送り方向の下流に配置されて前記鋼管を急冷する冷却装置と、
    前記鋼管の先端部を把持するとともに二次元又は三次元の所定の軌道を移動することによって前記鋼管の加熱された部分に曲げモーメントまたはせん断力を付与して加工を行うマニピュレータと
    を備え、少なくとも曲部を有する焼入れ曲げ部材を製造する装置において、さらに、
    前記加工中の前記鋼管の軸方向へ発生する荷重が緩和されるように、前記送り装置による前記鋼管の送り速度を制御する制御装置を備えること
    を特徴とする曲げ部材の製造装置。
  7. 前記鋼管の軸方向に発生する荷重を測定する荷重測定装置を備え、前記制御装置は前記荷重測定装置の出力に応じて前記鋼管の送り速度を制御する請求項6に記載された曲げ部材の製造装置。
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