JP6655695B2 - 積層フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、各種の粘着製品や粘着剤層を有する光学部材において、粘着剤層の保護に使用される離型フィルムに関する。さらに詳細には、剥離力が小さく、粘着剤層に貼合した状態で時間経過しても、剥離力が増大し難く、粘着剤層へのシリコーン成分の移行が少ないため、貼合した粘着剤層の粘着力を低下させない、剥離性に優れた離型フィルムであり、かつ、離型フィルムの取扱い時、及び離型フィルムを被着体から剥離する時の帯電量が少ない離型フィルムに関するものである。
従来から、各種の用途に対して、離型フィルム(剥離フィルムと呼ばれることもある)が使用されている。中でもセラミック積層コンデンサー、セラミック基板等の各種セラミック製電子部品の製造時に使用されるグリーンシートの成形用離型フィルム、偏光板、光学フィルター、フラットパネルディスプレーなどの製造時に使用される粘着剤層を有する光学部材用の離型フィルム、タッチパネル部材や光学部材同士を貼合するための、光学部材貼合用の粘着剤層用の離型フィルムなどに、広く使用されている。
セラミック積層コンデンサー、セラミック基板等の各種セラミック製電子部品の製造時に使用されるグリーンシートは、セラミック積層コンデンサーの小型化及び大容量化に伴い、薄膜化が進んでいる。グリーンシートを離型フィルムから剥離する際に、離型フィルムの剥離力が大きい場合には、グリーンシートが破損することから、従来に比べて剥離力の小さい離型フィルムが求められている。
一方、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板などの光学部材においては、該光学部材に形成された光学部材同士又は他の部材と貼り合わせる用途の粘着剤層を保護するために、離型フィルムが使用されている。
当該用途に使用される離型フィルムは、ディスプレイの大型化に伴い、偏光板などの光学部材及び離型フィルムの寸法が大きくなり、剥離面積が大きくても軽く剥離できることが必要とされている。そのため、従来に比べて剥離力の小さい離型フィルムが求められている。また、タッチパネルの構成部材や光学部材同士を貼合するための、光学部材用の粘着剤層については、タブレットPC、タブレット端末、タッチパネルなどの薄型化に伴い、薄膜の粘着剤層でも光学部材の段差(例えば、携帯端末のカバーガラス等に用いられる額縁印刷の段差など)に追従できるように、凝集力の弱い粘着剤層が使用されている。しかし、凝集力の弱い粘着剤層を用いた場合、離型フィルムの剥離力が大き過ぎると光学部材用の粘着剤層が変形してしまうことから、従来に比べて剥離力の小さい離型フィルムが求められている。
このように、セラミックグリーンシートの成形用離型フィルム、及び各種の粘着剤層を有する光学部材用の離型フィルムでは、従来に比べて剥離力の小さい離型フィルムが求められている。こうしたことを背景にして、特許文献1では、分子中にビニル基を1個のみ持つシリコーンを含有する硬化シリコーンを用いた離型フィルムが提案されている。
また、特許文献2では、ポリエステルフィルムの片面にオリゴマーの析出防止層を施し、その上に無溶剤系の付加反応硬化型シリコーンを含有する離型層を有し、テープ剥離力が15mN/cm以下であり、かつ、シリコーン系成分の移行性評価接着率が90%以上の離型フィルムが提案されている。
さらに、特許文献3では、官能基を有しないポリジメチルシロキサンなどの、軽剥離成分を添加していない付加反応型シリコーンを用い、50〜65℃の環境下で20時間以上熱処理を施した離型フィルムであって、アクリル系粘着剤の剥離力が0.15N/50mm以下で残留接着率が90%以上の離型フィルムが提案されている。
特許文献1〜3においては、いずれも、剥離力が小さく、かつ、貼合した粘着剤層の粘着力を低下させない離型フィルムが提案されている。しかし、特許文献1に記載の離型フィルムでは、分子中にビニル基を1個のみ持つシリコーンを含有する硬化シリコーンを用いるため、ビニル基を完全に反応させないと、ビニル基を1個のみ持つシリコーンが粘着剤層に移行してしまい、粘着剤層の粘着力が低下してしまうことが懸念される。
また、特許文献2に記載の離型フィルムについては、オリゴマーの析出防止層を設けていることが、従来の離型フィルムと異なる。しかし、無溶剤系の付加反応硬化型シリコーンを使用しているため、剥離性能に関しては、従来の離型フィルムの剥離性能を超えるものではない。さらに、特許文献3に記載の離型フィルムでは、軽剥離成分を添加していない付加反応型シリコーンをエージングすることにより軽剥離化したものである。この場合、軽剥離の割には、貼合した粘着剤層の粘着力を低下させない離型フィルムが得られるが、さらに剥離力を低減することが困難である。
また、特許文献4に記載の離型フィルムは、ポリエステルフィルムに所定の粒子径の不活性粒子を含むシリコーン剥離層を、所定の厚さに積層したものである。シリコーン剥離層を厚くした際に生じるブロッキング(離型フィルムをロール状に巻いた時に、離型フィルムの背面と剥離層が疑似接着をしてしまい、うまく巻き取れない現象)を、所定粒子径の不活性粒子をシリコーン剥離層に入れることで解決したものである。しかし、不活性粒子により、シリコーン剥離層が不連続になってしまうため、溶剤が接触すると、不活性粒子とシリコーンの界面に溶剤が浸透し、シリコーンが脱落する恐れがある。また、シリコーン剥離層の厚さに比べて粒子径の大きな不活性粒子を添加するために、離型フィルムを粘着剤層の表面保護に使用した場合に、不活性粒子が、粘着剤層側に付着し、粘着剤層の粘着力を低下させることがある。
一方、離型フィルムを、粘着剤層などの被着体から剥離させる際に、剥離帯電が発生する場合がある。このため、光学部材の加工現場においては、剥離帯電による異物等の付着、或いは巻き込みによる不具合のみならず、静電気障害によって、配設された電子素子が損傷を受け、製品不良が発生する等の不具合を生じることがあった。そのため、帯電防止機能を有した離型フィルムが求められている。こうしたことを背景にして、特許文献5〜7に記載の離型フィルムでは、基材フィルムの表面に帯電防止層を形成し、その表面にシリコーン系離型剤層を形成した離型フィルムが提案されている。これらの提案は、いずれも、基材フィルムと離型剤層との間に帯電防止層を設けることで、帯電防止性能と離型性能とを両立させたものであるが、剥離性能の点では、通常の離型フィルムの剥離性能とは大差がなく、従来技術を越えるものではない。
特開2008−265227号公報 特開2012−136612号公報 特開2006−007689号公報 特開2013−208897号公報 特許第2801436号公報 特開2005−153250号公報 特開2014−024204号公報
本発明は、剥離力が小さく、粘着剤層に貼合した状態で時間が経過しても、剥離力が増大し難く、粘着剤層へのシリコーン成分の移行が少ないため、貼合した粘着剤層の粘着力を低下させない、剥離性に優れた離型フィルムであり、かつ、離型フィルムの取扱い時、及び離型フィルムを被着体から剥離する時の帯電量が少ない離型フィルムを提供することを課題とする。
こうした課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、粘着剤層の粘着力を低下させないためには、離型フィルムに使用するシリコーン系離型剤(剥離剤と呼ばれることもある)を、粘着剤層の表面に移行するシリコーンが少ないものにする必要があることが判明した。また、粘着剤層の表面に移行するシリコーンが少ないシリコーン系離型剤を使用した場合でも、離型剤層の厚さを特定の厚さ以上にすることにより、剥離力を小さくできることが判明した。しかし、離型剤層の厚さを厚くした場合には、離型フィルムの製造工程において、離型フィルムをロール形状に巻き取り、離型剤層が、離型フィルムの背面に合わさった際にブロッキングを起こしてしまい、離型フィルムをロール状にきれいに巻き取れないという不具合が生じた。一般的に、離型フィルムに使用される基材フィルムは、その製造工程において、基材フィルムをロール形状に巻き取ってもブロッキングを起こさないようにするために、基材フィルムには、滑剤粒子を含有させて成膜している。
このため、基材フィルムの表面は、滑剤粒子によって凹凸構造を有しているので、基材フィルム単体をロール形状に巻き取った際には、表面同士が密着せず、ブロッキングを起こさないはずである。従って、離型フィルムの背面において、基材フィルムの表面は、凹凸構造を有しているが、離型剤層の厚さを厚くしたことにより、基材フィルム表面の凹凸構造を、離型剤層が埋めてしまうことが、ブロッキングを起こした原因と考えられる。
また、剥離性と耐ブロッキング性とを両立させる方法を、さらに鋭意検討し、本発明を完成させることができた。本発明に係わる離型フィルムは、粘着剤層の表面に移行するシリコーン成分が少ない離型剤を使用した場合でも、剥離力を小さくするために、2層構成の離型剤層の総厚さを0.4μm以上としている。また、本発明に係わる離型フィルムは、2層構成の離型剤層と、離型フィルムの背面とのブロッキングを防ぐために、2層構成の離型剤層の最表面に適度な表面粗さの凹凸形状を形成することにより、剥離性と耐ブロッキング性とを両立させることを技術思想としている。このため、離型剤層に適度な凹凸形状を形成する手段として、離型剤層に、微粒子として、無機微粒子および/またはポリマー微粒子を含有させている。但し、基材フィルムに、単に微粒子を含有した離型剤層を設けるだけでは、溶剤が接触すると、微粒子と離型剤との隙間から離型剤層と基材フィルムとの界面に溶剤が浸透し、離型剤層が基材フィルムから剥離する恐れがある。このため、本発明に係わる離型フィルムでは、溶剤が離型剤層と基材フィルムとの界面まで浸透しないように、基材フィルムと、微粒子を含有した第2の離型剤層との間に、微粒子を含有しない第1の離型剤層を設けることで、耐溶剤性を改善し、かつ、剥離性と耐ブロッキング性を両立させている。
一方、離型フィルムに、帯電防止機能を付与する方法については、上記のとおり、第2の離型剤層と基材フィルムとの間(基材フィルムの表面)に、帯電防止剤層を設ければ良い。しかし、この場合、(1)基材フィルムに、帯電防止剤層を加工する工程、(2)微粒子を含有しない第1の離型剤層を加工する工程、(3)微粒子を含有した第2の離型剤層を加工する工程の、3段階の工程が必要となり、離型フィルムの製造コストが高くなるという問題がある。この問題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、粒子を含有しない第1の離型剤層に、帯電防止剤を含有させることにより、優れた剥離性能と帯電防止性能とを両立させた離型フィルムが得られることが分かり、本発明を完成させた。
本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面に、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層と、無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子を含有する第2の離型剤層とが、この順に積層された2層構成の離型剤層を有する離型フィルムであって、前記第1の離型剤層と、前記第2の離型剤層との総厚さが0.4〜2.0μmであり、前記第2の離型剤層の表面から前記微粒子の頂点までの突出高さが、前記総厚さ以上であり、かつ、前記第1の離型剤層及び前記第2の離型剤層が、シリコーン系離型剤を含むことを特徴とする離型フィルムを提供する。
前記第2の離型剤層に含有された微粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、ガラス粉末、タルクからなる無機粒子群から選択された1種以上の無機微粒子、および/または、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂からなる高分子樹脂粒子群から選択された1種以上のポリマー微粒子であることが好ましい。
また、前記基材フィルムがポリエステルフィルムであることが好ましい。
また、前記2層構成の離型剤層の最表面の表面抵抗率が1.0×1013Ω/□以下である離型フィルムが好ましい。
また、本発明は、少なくとも片面に粘着剤層が積層された、1つ以上の粘着剤層を有する積層体と、請求項1から4のいずれかに記載の離型フィルムとを備え、前記積層体の粘着剤層の表面に、前記離型フィルムの前記第2の離型剤層が貼合してなる積層フィルムを提供する。
本発明によれば、セラミックグリーンシートの成形用離型フィルム、各種の粘着剤層を有する光学部材用の剥離性に優れた離型フィルムを提供できる。本発明の離型フィルムは、剥離力が小さく、粘着剤層に貼合した状態で時間が経過しても、剥離力が増大し難く、かつ、粘着剤層へのシリコーン成分の移行が少ないため、貼合した粘着剤層の粘着力を低下させない、剥離性に優れた離型フィルムであり、かつ、離型フィルムの取扱い時、及び離型フィルムを被着体から剥離する時の帯電量が少ない離型フィルムを提供することができる。
本発明の離型フィルムの一例を、模式的に示す断面図である。 本発明の積層フィルムの第1形態例を、模式的に示す断面図である。 本発明の積層フィルムの第2形態例を、模式的に示す断面図である。 図1におけるA部の拡大図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の離型フィルムの一例を、模式的に示す断面図である。図1において、基材フィルム1の片面に、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層2と、無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子3を含有する第2の離型剤層4とが、この順に積層され2層の離型剤層を構成している。
本発明の離型フィルム5において、基材フィルム1として用いる樹脂フィルムは、用途に合わせて選定すればよいが、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、アセテート樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムなどが挙げられる。
中でも、光学特性や耐熱特性などの特性面や価格面、外観の品位などの面から、ポリエステル樹脂フィルムが好適である。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートとポリエチレンテレフタレートの共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの中でも、コストや光学特性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。また、光学特性の点からすると、1軸延伸または2軸延伸した光学用のポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の表面に、プラズマ放電やコロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
基材フィルム1の厚さは、特に制限はないが、離型フィルム5としての取扱いの容易さや、離型フィルム5をロール状に巻き取ることを想定すると、基材フィルム1の厚さは、10〜200μmの範囲が好ましく、25〜150μmの範囲がより好ましい。
本発明の離型フィルムでは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層2と、無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子3を含有する第2の離型剤層4とが、この順に積層され2層の離型剤層を構成している。
第1の離型剤層2は、離型フィルムの離型剤処理面の耐溶剤性を向上させるために、基材フィルム1と、微粒子3を含有する第2の離型剤層4とを接着する機能と、離型剤としての機能(離型フィルムを、被着体である粘着剤層等から剥離する際に、剥離時の応力により、離型剤層の被膜がエラストマーとして微小変形し、粘着剤層と離型剤層との界面に応力が集中するようにする機能)とを有している。
また、第1の離型剤層2は、帯電防止剤を含有することにより、離型フィルムに帯電防止性能を付与している。2層構成の離型剤層2、4の表面抵抗率は、1.0×1013Ω/□以下(未満)であることが好ましい。ここで、2層構成の離型剤層2、4の表面抵抗率とは、離型フィルム5に積層された2層構成の離型剤層2、4の最表面に対して測定される、表面抵抗率(表面抵抗値ともいう)である。
第1の離型剤層2に使用する離型剤としては、シリコーン系離型剤が挙げられる。シリコーン系離型剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系離型剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系離型剤として市販されている製品には、例えば、KS−776A、KS−776L、KS−847、KS−847T、KS−779H、KS−837、KS−778、KS−830、KS−774、KS−3565、X−62−2829、KS−3650、KNS−3051、KNS−320A、KNS−316、KNS−3002、X−62−1387(信越化学工業(株)製)、SRX−211、SRX−345、SRX−357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC−300B、LTC−350G、LTC−310、LTC−750A、SP−7025、SP−7248S、SP−7015、SP−7259、LTC−1006L、LTC−1056L(東レダウコーニング(株)製)、TPR−6722、TPR−6721、TPR−6702、TPR−6700、TPR−6600、SL6625(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX−290、SYLOFF−23(東レダウコーニング(株)製)、YSR−3022(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR−6501、TPR−6502、TPR−6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62−7622、X−62−7660、X−62−7655(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、KF−2005、X62−7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。粘着剤層へのシリコーン成分の移行の少ない離型剤としては、軽剥離添加成分(付加反応に関与する有機官能基を有しないシリコーン、例えば、ポリジメチルシロキサン等)を含有しないシリコーン系離型剤が挙げられる。
第1の離型剤層2を形成するシリコーン系離型剤は、1種類を単独で使用しても良いし、複数の品種を混合して使用しても良い。また、後述する帯電防止剤と共に、シランカップリング剤や、濡れ性改良剤などシリコーン系離型剤以外の成分を添加しても良く、剥離性、塗工性、硬化性などを考慮して決めればよい。
また、第1の離型剤層2に含有させる帯電防止剤としては、離型剤溶液に対して分散性又は溶解性の良いもので、かつ、離型剤の硬化を阻害しないものが好ましい。こうした帯電防止剤としてはイオン性化合物、シリケート系化合物、導電性フィラー、導電性ウィスカー、導電性高分子、各種界面活性剤などの1種又は2種以上が挙げられる。離型剤層の耐溶剤性や、シリコーン系離型剤との相性の観点から、シリコーン系離型剤に溶解して微粒子を生じない帯電防止剤が好ましく、中でもイオン性化合物、シリケート系化合物、シリコーン系界面活性剤、もしくはこれらの帯電防止剤を併用したものが好適である。
イオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等が挙げられる。含窒素オニウムカチオンは、アルキル基等の有機基や置換基を有してもよい。好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1−アルキルピリジニウム(2〜6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオンや、1,3−ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、N−アルキルピリミジニウム(2位及び4〜6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリミジニウムカチオン、1,2−ジアルキルピラゾリウム(3〜5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピラゾリウムカチオン、1,1−ジアルキルピロリジニウム(2〜5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピロリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、テトラアルキルホスホニウム等の、有機基を有するホスホニウムカチオンが挙げられる。スルホニウムカチオンとしては、トリアルキルスルホニウム等の、有機基を有するスルホニウムカチオンが挙げられる。
また、アニオンとしては、C2n+1COO、C2n+1COO、NO 、C2n+1SO 、(C2n+1SO、(C2n+1SO、RCSO 、PO 3−、AlCl 、AlCl 、ClO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 、SCN等が挙げられる。これらのイオン性化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
中でも、カチオンとしてアルカリ金属カチオンを持ったイオン性化合物(アルカリ金属塩)が好適である。アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、Li、Na、Kよりなるカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CSO、(CFSOよりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。これらのなかでも特に、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく用いられる。これらのアルカリ金属塩は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
シリケート系化合物としては、エチルシリケートや各種アルコキシシラン、そのオリゴマー(アルコキシシロキサン)等、また、これらの部分加水分解物、重縮合反応物などが挙げられる。塗布時に用いられるシリケート系化合物が、酸等の触媒やアルコール等の溶媒を含む溶液(組成物)であってもよい。シリケート系化合物の加水分解反応や重縮合反応が、離型剤の塗布後に進行してもよい。シリケート系帯電防止剤は、反応が進行した場合でも、耐溶剤性に優れた離型剤層が得られるので、好ましい。
導電性フィラーとしては、カーボンブラック、黒鉛などのカーボン系フィラー、銀・銅・ニッケルなどの金属微粉末、酸化亜鉛・酸化錫などの金属酸化物粒子などが挙げられる。
導電性ウィスカーとしては、グラファイトウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、アルミナ系ウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ホウ酸マグネシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ化チタンウィスカーなどが挙げられる。
導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。
界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン変性シリコーン類などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類などが挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩類、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、モノアルキルリン酸塩類などが挙げられる。両性系界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられる。
離型剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類や離型剤との親和性の度合いにより異なり、帯電防止性能と離型剤の硬化性および剥離性を考慮して設定すればよい。また、種類の異なる帯電防止剤を併用しても良い。
離型剤と、帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。離型剤に、帯電防止剤を添加して、混合した後に離型剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、離型剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちに帯電防止剤と離型剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、離型剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後帯電防止剤を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤を添加しても良い。
本発明に係わる離型フィルムにおいて、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層2の形成は、帯電防止剤を含有した離型剤を、基材フィルム1にコーティングして設ければよい。塗工方法は、特に限定されるものではなく、微粒子3を含有しない第1の離型剤層2を形成する離型剤の粘度、塗布量に合わせて公知の塗工方法から選定すれば良い。一例としては、メイヤーバー工法、グラビア工法、リバースロール工法、エアーナイフ工法、多段ロール工法などが挙げられる。第1の離型剤層2の硬化方法は、加熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化、加熱と紫外線照射の併用などの方法が挙げられるが、離型剤の種類に合わせて、適した方法を選択して採用すればよい。第1の離型剤層2の厚さは、特に限定されないが、耐溶剤性を十分に確保するためには、0.1μm以上であることが好ましい。
図4に示すように、微粒子を含有しない第1の離型剤層2の厚さh1〔μm〕と、微粒子3を含有する第2の離型剤層4の厚さh2〔μm〕(微粒子3のない部分の平均的な厚さ)とを合計した総厚さH〔μm〕(以下、2層の離型剤層2及び4の総厚さとする)が、0.4〜2.0μmの範囲に入るのが好ましく、0.5〜1.8μmの範囲がより好ましい。
本発明では、基材フィルムの少なくとも一方の面に、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層2と、無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子3を含有する第2の離型剤層4とが、この順に積層され2層の離型剤層を構成している。無機微粒子および/またはポリマーからなる微粒子3は、シリコーン系離型剤を含む第2の離型剤層4の厚さを厚くしても、第2の離型剤層4が、離型フィルム5の背面(基材フィルム1の表面)に合わさった際にブロッキングを起こさないように、第2の離型剤層4の表面に凹凸形状を形成させるために用いるものである。
ブロッキング防止用の微粒子3である無機微粒子および/またはポリマー微粒子としては、無機化合物の微粒子である無機微粒子や、高分子樹脂の微粒子であるポリマー微粒子が挙げられる。無機微粒子とポリマー微粒子とは、いずれか一方を用いてもよく、また両者を併用してもよい。無機微粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、ガラス粉末、タルクからなる無機粒子群から選択された1種以上であることが好ましい。また、ポリマー微粒子が、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂からなる高分子樹脂粒子群から選択された1種以上であることが好ましい。
微粒子3の形状は、特に限定されるものではなく、球状、棒状、鱗片状、半球状、凸レンズ状、マッシュルーム状、不定形などいずれでも良いが、球形や球形に近い形状の方が、ブロッキング防止性能が高まるため、より好適である。
また、図4に示すように、微粒子3の体積基準平均粒子径は、第2の離型剤層4の厚さh2〔μm〕よりも大きいものが良く、第2の離型剤層4の表面から微粒子3の頂点までの高さT〔μm〕(微粒子3の突出高さ)が、第1の離型剤層2の厚さh1〔μm〕と、第2の離型剤層4の厚さh2〔μm〕とを合計した総厚さH〔μm〕以上になるような体積基準平均粒子径の微粒子を選定すれば良い。微粒子3の頂点は、第2の離型剤層4の表面から最も離れた点であればよく、頂点が尖っているか、丸みを帯びているかは、問わない。
無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子3のバインダー樹脂としても機能する、第2の離型剤層4を形成する離型剤としては、シリコーン系離型剤が挙げられる。シリコーン系離型剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系離型剤が挙げられる。
シリコーン系離型剤は、1種類を単独で使用しても良いし、複数の品種を混合して使用しても良い。また、シランカップリング剤や帯電防止剤、濡れ性改良剤などシリコーン系離型剤以外の成分を添加しても良く、剥離性、塗工性、硬化性などを考慮して決めればよい。第2の離型剤層4を形成するシリコーン系離型剤は、第1の離型剤層2を形成する離型剤と同じシリコーン系離型剤でもよく、異なるものでもよい。
微粒子3は、第2の離型剤層4を形成するシリコーン系離型剤を含有する離型剤に混合されて、第1の離型剤層2の上に塗布される。図4に示すように、微粒子3の一部(上部)は、第2の離型剤層4の厚さh2〔μm〕(微粒子3のない部分の平均的な厚さ)より突出する。微粒子3の上部表面に第2の離型剤層4の離型剤が薄く付着しても良いし、或いは付着しなくても、構わない。微粒子3の下部は、第2の離型剤層4に埋め込まれているが、基材フィルム1には接していない。これは、微粒子を含有しない第1の離型剤層2が介在するためである。
微粒子3を、離型剤に混合・分散させる方法については、離型剤および微粒子の種類に合わせて既知の方法で行えばよい。離型剤に、微粒子が分散し易い系であれば、スパチュラなどの手動の器具で撹拌混合すればよい。離型剤に、微粒子が分散し難い組み合わせや、分散し易い系であっても、離型剤および微粒子が多量の場合には、ホモジナイザーやホモミキサーなどの分散機を使用して分散混合させても良い。また、第2の離型剤層4には、微粒子および離型剤のほかに、必要に応じて着色剤、帯電防止剤、レベリング剤、密着性向上剤などを添加しても良い。
本発明に係わる離型フィルムにおいて、第2の離型剤層4は、帯電防止剤を含まなくてもよい。これは、2層の離型剤層2及び4の総厚さが、例えば0.4〜2.0μmの範囲と薄いので、第1の離型剤層2が帯電防止性能を有すれば、離型フィルム5の2層構成の離型剤層2,4の最表面に帯電防止性能を付与できるためである。また、第2の離型剤層4に帯電防止剤を添加する場合、その帯電防止剤としては、第1の離型剤層2に添加されるのと同様な帯電防止剤が挙げられる。また、第1の離型剤層2の上に第2の離型剤層4を積層する際、または積層後に、第1の離型剤層2に含有される帯電防止剤の一部が、第2の離型剤層4の内部に移行してもよい。
微粒子3を含有した第2の離型剤層4を形成する方法は、微粒子3を含有した離型剤を、基材フィルム1に形成された第1の離型剤層2の上にコーティングして設ければよい。塗工方法は、特に限定されるものではなく、微粒子3を含有した離型剤の粘度、塗布量に合わせて公知の塗工方法から選定すれば良い。一例としては、メイヤーバー工法、グラビア工法、リバースロール工法、エアーナイフ工法、多段ロール工法などが挙げられる。
微粒子3を含有した第2の離型剤層4の硬化または固化は、離型剤の種類に合わせて行えばよい。例えば、加熱乾燥による溶剤または水などの除去や、紫外線照射や電子線照射などによる離型剤層の硬化などを行えばよい。
第2の離型剤層4の厚さは、特に限定されないが、無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子3のバインダー樹脂としての機能を十分確保するためには、微粒子3の体積基準平均粒子径の25%以上であることが好ましい。微粒子3の体積基準平均粒子径と、2層の離型剤層2及び4の総厚さ(0.4〜2.0μmの範囲)とを考慮しながら設定すればよい。2層の離型剤層2及び4の総厚さが0.4μmより小さいと、剥離力が増大し易い。また、2層の離型剤層2及び4の総厚さの上限は、特に問題とならないが、2層の離型剤層2及び4の総厚さを大きくした場合には、コストが高くなる問題や、微粒子3の体積基準平均粒子径を大きくすることにより離型フィルムの外観が白っぽくなるという問題がある。このため、2層の離型剤層2及び4の総厚さを、2.0μm以下までに抑えるのが好ましく、1.8μm以下がより好ましい。
本発明の離型フィルム5を、各種セラミック製電子部品の製造時に使用されるグリーンシートの成形用離型シートに使用する場合、グリーンシートは、セラミック粒子を有機溶剤に分散したスラリーの塗布、乾燥により形成される。このような、グリーンシートを保護する用途に使用される離型フィルム5では、第2の離型剤層4に対して、耐溶剤性が要求される。本発明の離型フィルム5は、基材フィルム1と、微粒子3を含有する第2の離型剤層4との間に、微粒子を含有しない第1の離型剤層2を設けている。このため、溶剤が、第2の離型剤層4の離型剤と微粒子3との隙間から第2の離型剤層4と第1の離型剤層2との界面に浸透しても、第1の離型剤層2と基材フィルム1との界面には溶剤は達しないため、第1の離型剤層2が基材フィルム1から剥離することがなく、耐溶剤性も良好であり、グリーンシートを保護する用途に好適に使用できる。また、本発明の離型フィルム5は、グリーンシートに限らず、導体ペースト、絶縁体ペースト等、各種粉体を分散した塗膜や、溶剤を含む塗膜の表面を保護する用途に好適に使用できる。
図2は、本発明の積層フィルムの第1形態例を、模式的に示す断面図である。図2の粘着付き光学フィルム8は、本発明の離型フィルム5を、光学フィルム7に積層した粘着剤層6を保護する用途に使用したものである。図1の本発明の離型フィルム5に、粘着剤層6を介して光学フィルム7が貼合されている。このような粘着付き光学フィルム8の製造方法は、離型フィルム5に溶剤型粘着剤を塗布、乾燥した後、光学フィルム7を貼合してもよい。このような、粘着剤層6を保護する用途に使用される離型フィルム5では、離型剤層2、4に対して、耐溶剤性が要求される。本発明の離型フィルム5は、基材フィルム1と、微粒子3を含有する第2の離型剤層4との間に、微粒子を含有しない第1の離型剤層2を設けている。このため、溶剤が、第2の離型剤層4の離型剤と微粒子3との隙間から第2の離型剤層4と第1の離型剤層2との界面に浸透しても、第1の離型剤層2と基材フィルム1との界面には溶剤は達しないため、第1の離型剤層2が基材フィルム1から剥離することがなく、耐溶剤性も良好である。粘着剤層6を含む積層体は、1又は2以上の樹脂フィルムと、1又は2以上の粘着剤層とを含むことができる。例えば、光学フィルム7の両面に粘着剤層6を設け、それぞれの粘着剤層6に、本発明の離型フィルム5を貼合してもよい。他の製造方法としては、光学フィルム7の片面に粘着剤層6を設けた積層体10に、本発明の離型フィルム5を貼合してもよい。あるいは、無溶剤型粘着剤を塗布した後、離型フィルム5と光学フィルム7との間で、光や熱等により粘着剤層6を硬化させることもできる。使用時には、粘着付き光学フィルム8から離型フィルム5を剥離することにより、離型フィルム5から積層体10を分離し、粘着剤層6の表面(粘着面)を露出することができる。一般に、光学フィルム7と粘着剤層6との間の密着力は、粘着剤層6から離型フィルム5を剥離する時の剥離力より大きい。
また、図3は、本発明の積層フィルムの第2形態例を、模式的に示す断面図である。図3の光学粘着シート9は、タッチパネル部材や光学部材の貼合に用いられる粘着剤層6に、本発明の離型フィルム5を、該粘着剤層6を保護するために貼り合わせたものである。光学粘着シート9は、2枚の離型フィルム5で粘着剤層6を挟んだ形態になっている。このような光学粘着シート9の製造方法では、一方の離型フィルム5に溶剤型粘着剤を塗布、乾燥した後、もう一方の離型フィルム5を貼合するのが一般的である。このような、粘着剤層6を保護する用途に使用される離型フィルム5では、離型剤層2、4に対して、耐溶剤性が要求される。本発明の離型フィルム5は、耐溶剤性も良好なため、粘着剤層6を保護する用途に好適に使用できる。
本発明の積層フィルムの粘着剤層6に使用される粘着剤は、水系、非水系(溶剤系)でも無溶剤タイプでも良い。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤等、いずれでもよい。アクリル系粘着剤は、透明性、耐候性に優れるため、好ましい。
積層フィルムに用いられる樹脂フィルムは、光学フィルム7に限らず、不透明の樹脂フィルムであってもよい。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、高透明フィルム等が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、離型フィルムの離型剤層が粘着剤層の表面(粘着面)に貼り合わせてなる積層フィルムであり、図3に示すように、離型フィルム5と粘着剤層6とのみからなる積層フィルムでもよく、図2に示すように、光学フィルム7のような樹脂フィルム(粘着剤層6の支持体)などを含む積層フィルムでもよい。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(実施例1の離型フィルム)
付加反応型シリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−345)5重量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド0.75重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の第1の離型剤層(以下、離型剤層Aとする)を形成する塗料を調整した。
厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の離型剤層Aを形成する塗料を、乾燥後の厚みが0.1μmになるようにメイヤーバーにて塗布した後、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間加熱して離型剤層Aを形成した。
その後、離型剤層Aの表面に、付加反応型シリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製、LTC−1056L)30重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒70重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)1重量部と平均粒子径(体積基準平均粒子径)が2μmのシリコーン系樹脂ポリマー微粒子(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製、品名:トスパール(登録商標)120)0.0166重量部を混ぜ合わせて、実施例1の第2の離型剤層(以下、離型剤層Bとする)を形成する塗料を調整した。
実施例1の離型剤層Bを形成する塗料を、離型剤層B(微粒子の突出高さを除いた付加反応型シリコーン系離型剤)の乾燥後の厚さが0.9μmになるように、メイヤーバーにて離型剤層Aの表面に塗工した後、120℃の熱風循環式乾燥器にて1分間加熱して離型剤層Bを形成し、実施例1の離型フィルムを得た。
(実施例2の離型フィルム)
離型剤層Aに含有させる帯電防止剤として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド0.75重量部の代わりに、エチルシリケート系帯電防止剤(コルコート(株)製コルコート(登録商標)N−103X)を20重量部にし、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒を75重量部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の離型フィルムを得た。
(実施例3の離型フィルム)
離型剤層Aの乾燥後の厚さを0.3μmにし、離型剤層Bの乾燥後の厚さを0.7μmにし、シリコーン系樹脂ポリマー微粒子(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製、品名:トスパール(登録商標)120)の代わりに体積基準平均粒子径2.7μmの無定形シリカ(富士シリシア化学(株)製、品名:サイリシア(登録商標)310P)にした以外は、実施例2と同様にして実施例3の離型フィルムを得た。
(実施例4の離型フィルム)
離型剤層Bの乾燥後の厚さを0.4μmにした以外は、実施例2と同様にして実施例4の離型フィルムを得た。
(実施例5の離型フィルム)
離型剤層Aの乾燥後の厚さを0.3μmにし、離型剤層Bの乾燥後の厚さを1.7μmにし、シリコーン系樹脂ポリマー微粒子(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製、品名:トスパール(登録商標)120)の代わりに、体積基準平均粒子径4.5μmのシリコーン系樹脂ポリマー微粒子(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製、品名:トスパール(登録商標)145)にした以外は、実施例2と同様にして実施例5の離型フィルムを得た。
(比較例1)
離型剤層Aを設けなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の離型フィルムを作成した。
(比較例2)
離型剤層Bの乾燥後の厚さを1.2μmにした以外は、実施例1と同様にして比較例2の離型フィルムを得た。
(比較例3)
厚さ38μmの、片面にコロナ処理を施したポリエステルフィルムのコロナ処理面に、実施例1の離型剤層Bを形成する塗料から微粒子を除いた付加反応型シリコーン系離型剤及び白金触媒の溶液のみを、乾燥後の厚さが0.2μmとなるように、メイヤーバーにて塗工した後、120℃の熱風循環式乾燥器にて1分間加熱し、比較例3の離型フィルムを得た。
(比較例4)
離型剤層Aに帯電防止剤として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含有させなかった以外は、実施例1と同様にして比較例4の離型フィルムを得た。
(離型剤層の表面抵抗率の測定)
離型フィルムの測定用サンプルの、2層構成の離型剤層の最表面の表面抵抗率(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)−UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。
(ブロッキングの有無の確認)
離型フィルムを3枚重ねたサンプルを作成し、ステンレス板(SUS304)2枚の間に挟む。このサンプルに20g/cm{0.196N/cm}の荷重を掛けた状態で、23℃、50%RHの環境で24時間放置する。その後、3枚重なった離型フィルムを取り出し、離型フィルムを1枚ずつ手で剥がすことによりブロッキング状態を確認した。
ブロッキング状態の判定基準として、ブロッキングがなく、離型フィルムが軽く剥がれたものをブロッキング性良好(○)、離型フィルムの剥離時に抵抗があったものをブロッキング性不良(×)とした。
(剥離力の測定)
離型フィルムの2層構成の離型剤層の最表面に、ポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製、商品名:ポリエステルテープNo.31B)を貼り合わせ、20g/cmの荷重下、70℃で20時間エージングした後、卓上型精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ(登録商標))にて剥離速度300mm/分、剥離角度180°にて引き剥がした際の剥離強度を、剥離力(mN/50mm)として測定した。
(残留接着率の測定)
上記(剥離力の測定)による試験後の、離型フィルムから引き剥がした粘着テープを被着体(ステンレス板)に対してローラで圧着し、23℃、55%RHの環境下で1時間放置した後、卓上型精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ(登録商標))にて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°にて当該被着体から剥離するときの剥離力を測定して残留接着力とした。
これとは別に、未使用の粘着テープを、同一材質の被着体に圧着して剥離するときの剥離力を、残留接着力と同様に測定して基準粘着力とした。
残留接着率は、残留接着率=(残留粘着力)/(基準粘着力)×100(%)という式により算出した。
(離型剤層の密着性の確認)
上記(剥離力の測定)による試験後の、離型フィルムの2層構成の離型剤層の最表面を、指の腹で強く3回擦った後、擦った部分を目視で観察した。基材フィルムから、離型剤層が脱落していることの有無を目視にて確認し、離型剤層の脱落がほとんどなかったものを(○)、離型剤層の脱落が著しかったものを(×)として評価した。
(離型剤層の耐溶剤性の確認)
離型フィルムの2層構成の離型剤層の最表面を、酢酸エチルを染み込ませた不織布(旭化成せんい社製ベンコット(登録商標)M−1)を用いて、200gの分銅で荷重を掛けた状態で一往復擦る。その後、離型フィルムの2層構成の離型剤層の最表面を目視で観察することにより、離型フィルムの2層構成の離型剤層の耐溶剤性を確認した。2層構成の離型剤層の最表面を目視にて確認し、外観に変化の無かったものを(○)、2層構成の離型剤層が脱落したものを(×)と判定した。
(評価結果)
実施例1〜5の離型フィルム、および比較例1〜4の離型フィルムの評価結果を、表1に示す。表1において、「オーバーレンジ」の意味は、表面抵抗計(ハイレスタ−UP)の測定範囲を越えたことを意味し、すなわち、2層構成の離型剤層の最表面の表面抵抗率が1.0×1013Ω/□以上であることを意味する。また、表面抵抗率は、JIS X 0210に規定する指数表現により表記した。例えば、3.2E+11は3.2×10の11乗を意味する。
Figure 0006655695
(まとめ)
本発明に係わる実施例1〜5の離型フィルムは、剥離力が小さく、かつ、残留接着率が高い数値を示した。さらに、2層構成の離型剤層の最表面の表面抵抗率が、低い値となった。また、実施例1〜5の離型フィルムは、ブロッキングの有無の確認試験において、第2の離型剤層と離型フィルムの背面とがブロッキングを起こしておらず、微粒子を含有する第2の離型剤層の密着性、耐溶剤性が良好であった。
これに対して、比較例1の離型フィルムは、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層を設けなかったために、微粒子を含有する第2の離型剤層が、基材フィルムに接した構造となっていて、耐溶剤性が悪く、かつ、帯電防止性能が劣る結果となった。
また、比較例2の離型フィルムは、微粒子を含有する第2の離型剤層の凹凸が小さく、離型フィルムがブロッキングしてしまい、剥離力も大きい結果となった。
また、比較例3の離型フィルムは、帯電防止剤及び微粒子を含有しないシリコーン系離型剤層のみを、一般的な塗布量で塗工して離型剤層が形成されており、本発明に係わる実施例1〜5の離型フィルムよりも剥離力が極めて大きく、かつ、帯電防止性能が劣る結果となった。
また、比較例4の離型フィルムは、第1の離型剤層及び第2の離型剤層に、帯電防止剤を含有していないために、2層構成の離型剤層の最表面の表面抵抗率がオーバーレンジ(1.0×1013Ω/□以上)であり、帯電防止性能が劣る結果であった。
1…基材フィルム、2…第1の離型剤層、3…微粒子、4…第2の離型剤層、5…離型フィルム、6…粘着剤層、7…光学フィルム、8…粘着付き光学フィルム、9…光学粘着シート、10…積層体。

Claims (2)

  1. 基材の片面に粘着剤層が積層された積層体の、前記粘着剤層の表面に、離型剤層が設けられた表面保護用離型フィルムが、前記離型剤層を介して貼り合せてなる積層フィルムであって、
    前記積層フィルムから、前記積層体を剥がした表面保護用離型フィルムが、被着体の表面保護に使用されるものであり、
    前記表面保護用離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、帯電防止剤を含有し微粒子を含有しない第1の離型剤層と、無機微粒子および/またはポリマー微粒子からなる微粒子を含有する第2の離型剤層とが、この順に積層された2層構成の離型剤層を有してなり、
    前記第1の離型剤層と、前記第2の離型剤層との総厚さが0.4〜2.0μmであり、前記第2の離型剤層の表面から前記微粒子の頂点までの突出高さが、前記総厚さ以上であり、かつ、前記第1の離型剤層及び前記第2の離型剤層が、シリコーン系離型剤を含むことを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記第2の離型剤層に含有された微粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、ガラス粉末、タルクからなる無機粒子群から選択された1種以上の無機微粒子、および/または、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂からなる高分子樹脂粒子群から選択された1種以上のポリマー微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
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