以下、本発明を実施するための形態の一例(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、以下の説明において、上下左右の方向は図1中に示す上下左右の方向を基準とし、前後の方向は図2中に示す前後の方向を基準とする。
まず、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の全体構成について説明する。
≪冷蔵庫の全体構成≫
図1は、本発明の実施形態における冷蔵庫の正面図である。図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2と、冷凍室3とを有している。なお、一例として、冷蔵室2は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室であり、冷凍室3は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は、左右に分割された、前方側(図1の紙面手前側)に観音開きの、いわゆるフレンチ型の冷蔵室扉2a(第一の扉)及び冷蔵室扉2b(第二の扉)を備えている。冷蔵室扉2a、2bはヒンジ5a及びヒンジ5bのまわりに回動する。左右の冷蔵室扉2a、2b同士の隙間を閉鎖するために、冷蔵室扉2aの冷蔵室扉2bに近接した辺に沿って、回転シキリ6a、6bが設けられている。
冷凍室3もまた冷蔵室2と同じように、フレンチ型の冷凍室扉3a(第三の扉)及び冷凍室扉3b(第四の扉)を備えている。
なお、以下の説明において、左右の冷蔵室扉2a、2b、および左右の冷凍室扉3a、3bは単に扉2a、扉2b、扉3a、及び扉3bと称せられる場合がある。
冷蔵庫1は、扉2a、扉2b、扉3a、及び扉3bのそれぞれの開閉状態を検知する扉センサ(図示省略)と、これらの扉2a、2b、3a、3bの少なくともいずれかが開放していると判定された状態が所定時間(例えば、1分間以上)継続された場合に、使用者にその旨を報知する報知手段(図示省略)と、冷蔵室2、冷凍室3等の温度設定をする温度設定器、所定の操作部、表示部等を備える図1に示すコントロールパネル59等を備えている。
図2は、図1のA−A断面を模式的に示す側断面図である。図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、内箱7aと外箱7bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体7により隔てられている。庫内は、温度帯の異なる上下方向に配置された冷蔵室2と冷凍室3が、断熱仕切壁8で断熱的に区画されている。扉2a、2bおよび扉3a、3bの庫内側には複数の扉ポケット9a、9bが設けられている。また、冷蔵室2は複数の棚10により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。冷蔵室2の最下部には、引き出し式の野菜収納室4と、野菜収納室4の直上には閉止時に野菜収納室4の上面を塞ぐ上面棚47と、さらに上面棚47の直上には引き出し式の収納容器11が設けられている。冷凍室3の貯蔵室の前方に設けられた扉3a、3bの後方に、引き出し式の収納容器12a、12bがそれぞれ設けられている。
図2に示すように、扉2a、2b、3a、3bは、その周囲にドアパッキン13が設けられており、各扉2a、2b、3a、3bを閉じた際、冷蔵庫1の前面の開口周縁部と密着することで貯蔵空間(冷蔵室2、及び冷凍室3)の内部を閉塞して密閉し、これらの貯蔵空間から外部への冷気の漏れを防止している。
図2に示すように、冷却器14は、冷凍室3の略背部に設けられた冷却器収納室15内に配置されている。冷却器14は、冷却器14の内部配管内の冷媒と空気との間で熱交換できるようになっている。冷却器14の上方には、庫内送風機16(例えば、モータ駆動するファン)が設けられている。冷却器14で熱交換して冷やされた空気(以下、この冷やされた低温の空気を「冷気」という)は、庫内送風機16によって冷蔵室送風ダクト17、及び冷凍室送風ダクト18を介して、冷蔵室2、及び冷凍室3の各貯蔵室へ送られるようになっている。
図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図である。
図3に示すように、冷蔵室2、及び冷凍室3への各送風ダクトは、図3中、破線で示すように冷蔵庫1の各貯蔵室の背面側に設けられている。
冷却器14の冷気がどの貯蔵室へ送られるかは、冷気制御手段19により制御されるようになっている。
ここで、冷気制御手段19は、開閉自在な単独の開口部を備えたシングルダンパであり、冷蔵室送風ダクト17への送風を制御するようになっている。具体的には、冷気制御手段19の開口が開状態のとき、冷気は、冷蔵室送風ダクト17を経て冷蔵室2に送られる。つまり、冷気は、この冷蔵室送風ダクト17の延在方向に沿って複数設けられた吹出口20から冷蔵室2に送られる。冷気制御手段19の開口aが閉状態のとき、冷気は、冷凍室送風ダクト18(図2参照)を経て、吹出口21、21から冷凍室3のそれぞれに送られる。この冷気は、冷凍室3の奥下方に設けられた後記の冷凍室戻り口22(図2参照)を介して、冷却器収納室15に流入し、冷却器14と熱交換するようになっている。これにより、温度帯の異なる貯蔵室である冷凍温度帯室(冷凍室3)及び冷蔵温度帯室(冷蔵室2)に、1つの冷却器14で冷気を供給することができるようになっている。
以上説明したように、冷蔵庫1の各貯蔵室へ送風する冷気の切り替えは、冷気制御手段19を適宜に開閉制御することにより行うことができる。
冷却器14の下方には、除霜手段である除霜ヒータ23が設置されており、除霜ヒータ23の上方には、除霜水が除霜ヒータ23に滴下することを防止するために、上部カバー24が設けられている。
冷却器14及びその周辺の冷却器収納室15の壁に付着した霜の除霜(融解)によって生じた除霜水は、冷却器収納室15の下部に備えられた樋25に流入した後に、排水管26を介して機械室27に配された蒸発皿28に達し、圧縮機29(図3参照)や図示しない放熱器である凝縮器の熱により蒸発させられ、冷凍機外に排出されるようになっている。
図2に示すように、冷蔵庫1の天井壁の上面側には制御部として、CPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御手段である制御基板30が配置されている。冷蔵庫1には、冷蔵室2の温度を検出する図示しない冷蔵室温度センサ、冷凍室の温度を検出する図示しない冷凍室温度センサ、冷却器14の温度を検出する図示しない冷却器温度センサ等の温度センサが設けられ、検出した温度が制御基板30に入力されるようになっている。
また、制御基板30は、扉2a、2b、3a、3bの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示省略)、扉2aに設けられた前記のコントロールパネル40(図1参照)と接続されている。制御基板30は、前述のROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機29のON/OFFや回転速度の制御、冷気制御手段20を駆動するそれぞれの駆動モータ(図示省略)の制御、庫内送風機16のON/OFFや回転速度の制御、図示しない庫外送風機のON/OFFや回転速度等の制御、扉開放状態を報知する図示しない報知手段のON/OFF、等の制御を行うことにより、冷蔵庫全体の運転を制御する。
図4は、図1のB方向から見た冷蔵庫の平面図である。
本実施形態においては、左側の扉2aおよび扉3aに回転シキリ6a、6bが設けられている。
この回転シキリ6a、6bは、扉2aないし扉3aに設けられた回転シキリ支点6cのまわりに回動自在に軸支されている。扉2aないし扉3aが閉じた際には回転シキリ6a、6bは、扉2aないし扉3aと平行に位置して扉2aと右側の扉2b、ないし扉3aと右側の扉3bの間の隙間を塞ぐ。また、使用者が扉2aないし扉3aを開くと、回転シキリ6a、6bは図示しないカムの作用によって、回転シキリ支点6cのまわりに扉2aないし扉3aと略直交する位置まで回動する。回転シキリ6a、6bは、扉2bないし扉3aと干渉することなく開く。また冷蔵庫1は、扉2a、2bないし扉3a、3bを完全に閉じ切る前に、扉2a、2bないし扉3a、3bを閉じる方向に付勢することによって、いわゆる半ドアを防止するクローザを備えている。
次に、本実施形態における野菜収納室4の構成について、図5から図11を用いて詳細に説明する。
図5は本実施形態における野菜収納室4の構成を示す分解斜視図である。図6は本実施形態における野菜収納室4の構成を示す斜視図であり、野菜室容器31を野菜室ベース32に載置した状態で冷蔵室2の内部に前後方向に移動可能に組み込まれ、かつ野菜収納室4を前方に引き出した状態を示している。図7は図6におけるC−C断面図である。図8は野菜室容器の(a)正面図と(b)D−D断面図である。図9は、野菜室容器の上面図である。図10は野菜室容器の構成を示す縦断面図であり、(a)閉じた位置と(b)開放した位置、である。図11は野菜室の開ハンドルの構成と動作を示す縦断面図であり、(a)閉止状態、(b)ハンドル開操作途中、(c)ハンドル開操作完了、した状態を示す。
図5から図11において、冷蔵庫1の冷蔵室2の内部には前後方向に引き出し自在に支持された野菜収納室4が設けられており、冷蔵室扉2a、2bを開放した状態で前方に引出して野菜収納室4の内部に食品を出し入れすることができる。
野菜収納室4は、野菜室容器31と、野菜室容器31を載置する野菜室ベース32を備えている。
野菜室容器31は容器本体33と、容器本体33の前面に設けられた前面蓋34とを備え、前面蓋34の上端の後面側には磁石を内蔵し、表面は例えばゴムなどの柔軟な材料で構成されたマグネットパッキン35が設けられている。容器本体33は、透明な樹脂によって射出成型され、金型からの離型性を確保するために、上面の開口から下面の底面にかけての側面は、上面が広く下面が狭い所謂抜きテーパが付けられている。
野菜室ベース32は、左右両側面に沿って前後方向に設けられた例えば鉄板で構成された一対の支持レール37と、左右の支持レール37、37を接続した樹脂製の底面ワク36と、底面ワク36の中央部に嵌合された底面ガラス38とを備えており、その上部に野菜室容器31を載置して支持する構成であり、野菜室ベース32の幅は野菜室容器31底面の幅よりも大きい。野菜室ベース32の中央部には強度の大なる底面ガラス38を備えているので、野菜室ベース32は十分な強度が得られる。
支持レール37の下面は、後述する第一の支持ローラ39a、第二の支持ローラ39bに載置されることで野菜収納室4を前後方向に移動自在に支持する支持ローラ載置面40となっており、支持レール37の前端には後述する開ハンドル41を前後方向に回動自在に支持するハンドル支軸42が左右方向に沿って設けられている。
支持レール37は野菜室ベース32の左右の辺に沿って前後方向に設けられており、野菜室容器31の抜きテーパによって、野菜室容器31の底面近傍と内箱7aの内側側面との間に生じる隙間に配置されるので、支持レール37を配置するために野菜室容器31の容積を減少させないので、野菜室容器31の容積を最大化できる。
前面蓋34の下辺に沿って、野菜室ベース32の前面には、左右方向に設けられたハンドル支軸42のまわりに前後方向に回動自在に軸支された開ハンドル41が設けられている。ハンドル支軸42は開ハンドル41の上辺近傍に沿って設けられており、開ハンドル41の下端が前方に向けて回動可能に軸支されている。
図9(b)の部分上面図に示すように、開ハンドル41の左右両端には、開ハンドル41と連動して前後に回動し、開ハンドル41の後上方に向けて延伸して配置されたハンドルアーム43が設けられている。ハンドルアーム43の先端部にはそれぞれ左右外側に向けて内箱7bの側面に近接する方向に凸し、左右方向に設けられた回転軸のまわりに回転自在に支持されたカムローラ44が配置されている。開ハンドル41の構成と動作の詳細については後述する。
野菜室ベース32と開ハンドル41の幅は互いにほぼ等しく、野菜室容器31底面の全幅よりも大となっている。開ハンドル41の左右端はそれぞれ内箱7bの左右内壁に近接している。すなわち、開ハンドル41の幅は、内箱7bの左右幅よりもやや小さいが略等しい。
内箱7bの内側側面には、前後方向に延伸した凹溝であるガイド溝45が左右対称に設けられている。
左右の支持レール37の後端近傍には、それぞれ外側に向けて凸し、左右方向の回転軸のまわりに回転自在に配置されたガイドローラ46、46が摺動部として備えられている。
野菜収納室4を冷蔵室2内部に組み込んだ際には、左右のガイドローラ46はそれぞれのガイド溝45と嵌合して回転するようころがり支持され、野菜収納室4は前後方向に移動可能である。
第一の支持ローラ39a、39aと第二の支持ローラ39b、39b(図6に図示するのは39a、39bのみ)は、冷蔵室2の底面に設けられた断熱仕切壁8上面の左右両側、かつ内箱7bの近傍に設けられた凹部に、左右方向に設けられた回転軸のまわりに回転自在に配置され、断熱仕切壁8の上面よりも円周面が凸するように配置されている。
第二の支持ローラ39b、39bは、断熱仕切壁8の前端近傍に設けられ、野菜収納室4を閉止した際には野菜室の前面蓋34よりも前方の位置に設けられている。第一の支持ローラ39a、39aは、第二の支持ローラ39b、39bより後方に、野菜収納室4を閉止した際に支持レール37、37を載置するよう配置される。ガイドローラ46、46と第一の支持ローラ39a、39aと第二の支持ローラ39b、39bとは回転しつつ野菜収納室4支持し、野菜収納室4支持を前方に移動する引出し動作、ないし後方に移動する閉止動作を行う。第一の支持ローラ39a、39aと第二の支持ローラ39b、39bの回転支軸は断熱仕切壁8に対して弾性変形を利用した所謂スナップフィットによって上方から着脱自在に設けられ、断熱仕切壁8から取り外して清掃可能とすることができる。
図7、図9、図10に示すように、野菜収納室4を閉じた状態においては、支持レール37、37の前端は後方に配置された第一の支持ローラ39a、39aに載置されており、第二の支持ローラ39b、39bには載置されない。
図7に示すように、野菜収納室4の上面には、野菜収納室4を閉止した際に、野菜室容器31の上面を覆うように上面棚47が設けられており、上面棚47の前面には例えば磁性をもつフェライト系ステンレス材で形成された棚前縁部48を備えている。
野菜収納室4を閉止した際には、前面蓋34上端のマグネットパッキン35が棚前縁部48に吸着して隙間を塞ぎ、野菜室容器31内部を密閉して気密を得る。したがって、野菜室容器31の内部を高湿に維持して収納された野菜の鮮度を維持できる。
ここで図10(a)により、野菜収納室4が閉じた状態でローラに加わる荷重について説明する。野菜収納室4の質量をm、重力加速度をg、第一の支持ローラ39aと重心Gとの距離をL1、第一の支持ローラ39aとガイドローラ46との距離をL2、左右の第一の支持ローラ39a、39aにかかる荷重の合計をF1、左右のガイドローラ46にかかる荷重の合計をF2とすると、上下方向の力のつりあいから、下向きの力の符号を正として、
mg+F1+F2=0 ・・・・(式1)
重心まわりのモーメントの釣り合いから
−F1×L1+F2×(L2−L1)=0 ・・・・(式2)
(式2)より
F2=F1×L1/(L2−L1) ・・・・(式3)
(式3)を(式1)に代入してF1を求めると、
F1=−mg×(L2−L1)/L2 ・・・・(式4)
(式4)を(式2)に代入してF2を求めると、
F2=−mg×L1/L2 ・・・・(式5)
(式4)と(式5)とから、F1とF2が求められる。
すなわち重心Gからの距離L1と(L2−L1)に比例して、野菜収納室4の自重mgがそれぞれ左右のガイドローラ46にかかる荷重の合計F2と、左右の第一の支持ローラ39a、39aにかかる荷重の合計F1とに振り分けられる。ここで、重心Gは第一の支持ローラ39aとガイドローラ46との間にあるので、ガイドローラ46はガイド溝45の下辺と当接して下向きの荷重F2をガイド溝45に与える。なお、ガイドローラ46はガイド溝45から上向きの反力を受けることになるので、(式4)と(式5)の符号は負となる。
野菜収納室4が前方にL1だけ引き出されると、重心Gは丁度第一の支持ローラ39aの直上に位置するので、全ての荷重は左右の第一の支持ローラ39a、39aのみにかかり、その荷重の合計F1は質量mgと等しく(F1=−mg)、左右のガイドローラ46にかかる荷重の合計F2=0となる。野菜収納室4がさらに前方に引き出されて重心Gが丁度第二の支持ローラ39bの直上に位置すると、全ての荷重は左右の第二の支持ローラ39b、39bのみにかかり、その荷重の合計F1は質量mgと等しく(F1’=−mg)、左右のガイドローラ46にかかる荷重の合計F2’=0となる。
図10(b)により、野菜収納室4が全開の状態でローラに加わる荷重について説明する。野菜収納室4が全開となって重心Gが前方にある第二の支持ローラ39bよりもさらにL1’前方に移動したとし、第二の支持ローラ39bとガイドローラ46との距離をL2’、左右の第二の支持ローラ39b、39bにかかる荷重の合計をF1’、左右のガイドローラ46にかかる荷重の合計をF2’とする。
重心Gが第二の支持ローラ39bよりもさらに前方に移動した際には、野菜収納室4は第二の支持ローラ39bのまわりに図示反時計方向のモーメントを生じるので、ガイドローラ46はガイド溝45の下面から浮上してガイド溝45の上面と当接してガイド溝に対して上向きの荷重F2’を与える。したがって、支持レール37は前方にある第二の支持ローラ39bとガイドローラ46のみによって支持され、後方にある第一の支持ローラ39aとは接しない状態である。
上下方向の力のつりあいから、下向きの力の符号を正として、
mg+F1’+F2’=0 ・・・・(式6)
重心まわりのモーメントの釣り合いから、
F1’×L1’+F2’×(L2’+L1’)=0 ・・・・(式7)
(式7)より
F2’=−F1’×L1’/(L2’+L1’) ・・・・(式8)
(式8)を(式6)に代入してF1’を求めると、
F1’=−mg×(L2’+L1’)/L2’ ・・・・(式9)
(式9)を(式7)に代入してF2’を求めると、
F2’=mg×L1’/L2’ ・・・・(式10)
すなわち、第二の支持ローラ39bには、てこの原理によって野菜収納室4の自重mgを(L2’+L1’)/L2’(>1)倍した荷重F2’がかかり、ガイドローラ46には自重mgを重心Gからの距離の比L1/L2(<1)倍の荷重が逆向きに加わる。ここでさらに食品の出し入れを容易にするために野菜収納室4の開き量をさらに大きくすると、(L2’+L1’)は一定のままL2’は小さくなるために、(L2’+L1’)/L2’も、(L1’/L2’)も、ともに大きくなり、第二の支持ローラ39b、ガイドローラ46にかかる荷重F1’、F2’は大きくなる。
上記にて説明したように、野菜収納室4の重心が第二の支持ローラ39bの直上よりも前側になるまで開くと、第一の支持ローラ39aは荷重を支持せず、第二の支持ローラ39bには野菜収納室4の自重mgより大なる荷重がかかる。その荷重は野菜収納室4の開き量が大となるほど大きくなり、全開時に最大となる。
ところで、野菜収納室4を開閉する開閉力は、第一の支持ローラ39aと第二の支持ローラ39bとガイドローラ46に生じる摩擦力の合計であり、摩擦係数と荷重とに比例する。したがって、開閉力を低減するには第一の支持ローラ39aと第二の支持ローラ39bとガイドローラ46とを全て回転式のローラとして、すべり摩擦より摩擦係数の小さいころがり摩擦とすることが望ましい。第二の支持ローラ39bがローラではなく単なる突起であって摩擦係数μ1のすべり摩擦の場合と、第二の支持ローラ39bが回転式のローラであって摩擦係数μ2(<<μ1)のころがり摩擦であった場合の開閉力の差は、荷重はともにF1’と同一のとき、摩擦係数の差を考慮してF1’×(μ1−μ2)だけローラ式の開閉力の方が小さい。そのため、第二の支持ローラ39bを回転ローラとすることで、野菜収納室4の大容量化と開き量の拡大による使い勝手の向上に効果的である。
さらに、ガイドローラ46と第一の支持ローラ39aと第二の支持ローラ39bとを回転ローラとすることによる開閉時の野菜収納室4の挙動について説明する。まず一般的に回転ローラとすべり摩擦の挙動の相違について説明する。一例として自動車を減速する際に、車輪が回転し続けていれば自動車は車輪の回転に伴って進行方向を維持したまま減速できる。しかし、車輪がロックして路面と車輪との間がすべり摩擦となった際には、前後方向も左右方向も摩擦係数が変わらなくなるために進行方向が維持されず、所謂スリップをしながら減速することは、氷上や雪上での自動車の減速時の挙動として良く知られるところである。これは、回転ローラ(車輪)が回転している際には回転方向への移動はころがり摩擦のため進行しやすいものの、左右方向への移動はすべり摩擦を伴うために進行しにくい、という回転に伴う方向性を持つためである。
図9(a)は野菜収納室4を閉じた状態における上面図を示しており、図9(b)はE部の拡大図である。
図10(a)と同様に、野菜収納室4は左右のガイドローラ46、46と第一の支持ローラ39a、39aによって載置されており、ガイドローラ46、46と第一の支持ローラ39a、39aとはともに左右方向の回転軸のまわりに回転自在なので、野菜収納室4を開く際にはこれら4つのローラが回転しつつ、手前側に引き出される。
したがって、図9の矢印に示すように、野菜室容器31の左右方向の中心から左右にずれた位置に開き力Pを加えて手前側に開いても、野菜収納室4は左右のガイドローラ46、46と第一の支持ローラ39a、39aの4つのローラによって支持されているので、開き力Pが中心からずれた位置に加えられた際にも野菜室は前方に真っ直ぐ進行しようとする。したがって、開閉が容易で使い勝手のよい野菜室を提供できる。さらに本実施形態においては、詳細を後述する開ハンドル41の作用によって野菜収納室4が開き始めに前方に平行移動するように構成したので、開き動作時の進行方向が安定してさらに使い勝手の良い野菜収納室4を提供できる。
次に、図11および適宜図5から図10を用いて、本発明による開ハンドルの一実施形態について説明する。図11は開ハンドルの構成と動作とを示す縦断面図であり、(a)は閉止状態、(b)はハンドル開操作途中、(c)はハンドル開操作完了、のそれぞれの状態を示し、図11(a)の閉止状態は図7ないし図10(a)と同じ状態を示している。
開ハンドル41は図7、図10、ないし図11に示すように略L字型の断面形状をして左右方向に延伸しており、左右の支持レール37の前端近傍に設けられたハンドル支軸42のまわりに回動自在に軸支されている。開ハンドル41は、ハンドル支軸42から下方に延伸して設けられたハンドル操作部49と、ハンドル操作部49とは直交してハンドル支軸42から後方に延伸して設けられた補強部50を備えている。野菜収納室4を開く際には、ハンドル操作部49の後方かつ補強部50の下側に手指を挿入して前方に引くことで開ハンドル41がハンドル支軸42のまわりに手前側に回動する。開ハンドル41は断面を略L字型としたので、単純な板形状と比べると断面二次モーメントが大きくて曲げ強度が大であり、かつハンドル操作部49の後方かつ補強部50の下側に手指を挿入するスペースが十分に得られる。またさらに、ハンドル操作部49の後方下端は、後方に凸したハンドル操作突起60を設けたので、ハンドル操作部49の後方に手指を挿入して手前に引く際に、ハンドル操作突起60に指先がかかり、滑ることがないので操作性が良好である。また、開ハンドル41には下側から手指を挿入する構成としたため、手指を挿入する空間は下向けに構成されているので、食品のカスなどの汚れが堆積しにくいので清潔を保つのに好適である。
またさらに、図11に示すように開ハンドル41の重心位置51はハンドル支軸42よりもわずかに前下方に位置するような形状としたので、開き動作の後にユーザが手を離せば、開ハンドル41は図11(a)に示した閉止位置での状態、すなわちハンドル操作部49が下方を向く方向に回動復帰する。したがって開ハンドル41には特段の復帰バネなどの付勢手段が不要であり、簡素な構成で実現できる。
さらに、開ハンドル41をアルミニウムの押し出し材ないし引抜き材によって構成すれば、剛性が高いので開ハンドル41を操作した際に変形することがなく、安定した開き操作が行えるので好適である。
野菜室ベース32の前面側のうち、開ハンドル41のハンドル操作部49の後方は、ハンドル操作部49と近接して上方に、補強部50に向けて延伸された底面ワク前壁52となっている。底面ワク前壁52のうち左右方向の中心近傍は後方に向けて凹んだ手掛け部53とすることで、開ハンドル41のハンドル操作部49との間に十分な隙間を設けることで手指が挿入しやすく、開ハンドル41を操作しやすい構成としている。開き動作の際にユーザが手掛け部53を視認することで、自然と開ハンドル41の中央部に手指を挿入するよう誘導できるので、続く開き動作の際の開き力が開ハンドル41の中央近傍にかかり易く、左右のバランスがとれるので開き動作が安定する。
開ハンドル41の左右両端にはハンドル支軸42に対してハンドル操作部49と対向して後上方に向けて内箱7bの側面壁に沿って延伸されたハンドルアーム43が左右対称に設けられ、開ハンドル41と一体となってハンドル支軸42のまわりに回動する。左右のハンドルアーム43の間隔は野菜収納室4の全幅とほぼ等しく、ハンドルアーム43は内箱7bの内側に近接して設けられる。
ハンドルアーム43が延伸された先端近傍には、左右のハンドルアーム43から左右外側に向けて対称に、内箱7bの内側壁に近接する向きに、ハンドル支軸42と平行な回転軸のまわりに回動自在に軸支されたカムローラ44が設けられている。開ハンドル41を開方向に回動すると、カムローラ44は開ハンドル41とともにハンドル支軸42のまわりに回動し、ハンドル操作部49が前方に回動すると、カムローラ44は後方に回動する構成である。
図9(b)および図11に示すように、内箱7bの左右側壁には、内側に向けて凸した一対のカム板54が左右対称に設けられており、カム板54の前面側には、下方に近接するほど前方に近接するよう設けられた曲面からなるカム面55を備えている。カム面55は、野菜収納室4を閉止した状態から開ハンドル41を操作して開く際に、カムローラ44と接触して開き力が作用するように配置されている。図11(a)に示すように、野菜収納室4を閉止した状態ではカムローラ44はカム面55の上端近傍に当接するよう配置されている。
支持レール37の下面は第一の支持ローラ39aに載置される載置面56となっている。載置面56のうち、図11(a)に示す閉止状態において、第一の支持ローラ39aの前後に設けたX1範囲は後方ほど下方になるよう傾斜した傾斜面である引込面としている。野菜収納室4の自重がこの引込面に作用することによって、野菜収納室4を右方すなわち閉じ方向に移動する分力を生じる、所謂「落とし込み」形状となっている。すなわち、野菜収納室4を閉じる際に、開き量がX1以下となった場合には第一の支持ローラ39aが「落とし込み」形状の引込面に当接することにより、自重により閉じ方向の分力を生じて自動的に閉じる効果がある。
X1範囲よりも後方は水平なX2範囲としている。傾斜面である「落とし込み」の前後では支持レール37のみならず野菜収納室4全体が高さ方向にhだけ上下移動するので、その高さhには限度があり、例えば2mm程度である。またさらに図11(a)に示すように、野菜収納室4を閉止した状態で第一の支持ローラ39aが引込面の前端近傍に配置することで、閉止時にも野菜収納室4をさらに閉じ方向に付勢するので閉止が確実となる効果がある。
一方で野菜収納室4を開く際には、野菜収納室4の自重による第一の支持ローラ39aと第二の支持ローラ39b、ガイドローラ46のころがり摩擦抵抗の他に、開き始めの際には「落とし込み」による閉じ方向の力が加わるので開き力は増加する。本実施形態においては、以下に説明するように、開ハンドル41の作用によって開き力を低減することができる。
開ハンドル41を操作して野菜収納室4を開き始めた状態を図11(b)に示す。ユーザがハンドル操作部49の後方に指先を挿入して前方に力P1を加えつつ引く動作を行うことで、開ハンドル41は手前側に回動してハンドル支軸42のまわりに図示時計回りに角度θ1だけ回動する。
開ハンドル41とともにハンドルアーム43と、ハンドルアーム43先端に設けられたカムローラ44が共に回動する。ハンドルアーム43の回動に伴ってカムローラ44の位置は下方向にカム面55に沿って移動する。カム面55は下方に近接するほど前方に近接するよう設けられているので、カムローラ44は前方にもb1だけ移動し、ハンドル支軸42を前方に移動する。
ハンドル支軸42は左右の支持レール37、37に設けられているので、支持レール37がやはりu1だけ前方に移動し、結果として野菜収納室4全体をu1だけ開く。ここで、ハンドル操作部49の下端の移動量をs1とすれば、s1>u1、となるようにハンドル操作部49の長さ、ハンドルアーム43の長さ、カムローラ44の位置、カム面55の曲面形状を適宜定める。第一の支持ローラ39aは載置面56のX1範囲内にあって閉じ方向の分力を生じており、図11(b)の状態で開ハンドル41から指を外せば野菜収納室4は自重によって閉じ、図11(a)に示す閉止状態となる。
開ハンドル41の操作による野菜収納室4の開き動作が完了した状態を図11(c)に示す。ユーザがハンドル操作部49に力P2を加えつつさらに前方に引く動作を継続することで、開ハンドル41はさらに回動して、ハンドル支軸42のまわりに図示時計回りに最大回動角度である角度θ2まで回動し、開ハンドル41は図示しないストッパに当接して、角度θ2以上は回動しないよう構成されている。カムローラ44の位置はさらに下方向にカム面55に沿って移動し、カム面55の最下端の近傍に至る。カムローラ44は前方に最大u2まで移動し、ハンドル支軸42をさらに前方に移動して野菜収納室4全体をu2だけ開く。ここで、ハンドル操作部49の下端の移動量をs2とすれば、s2>u2、となるようにカム面55の曲面形状を適宜定める。
ここで、第一の支持ローラ39aは支持レール37下面の載置面56に設けられた傾斜面であるX1範囲と水平なX2範囲との境界近傍に位置している。したがって、図11(c)に示した位置よりもさらに野菜収納室4を前方に引き出した際には、第一の支持ローラ39aは載置面56のうち水平なX2範囲と接するので「落とし込み」による閉じ力は生じることなく、軽微な力で野菜収納室4の開き動作を行うことができる。
次に、開ハンドル41のハンドル操作部49をユーザが前方に引いて野菜収納室4を開こうとする操作力P1、P2と、「落とし込み」による閉じ力を含めて野菜収納室4を開くために要する開き力Q1、Q2との関係について説明する。換言すれば開き力Q1、Q2とは、開ハンドル41を用いないか、あるいは開ハンドル41以外の部分に力を加えて野菜収納室4を前方に開く際に要する力である。なお、この説明では簡単のために摩擦力を考慮していない。
先に述べたように、図11(a)に示した閉止位置から図11(b)、(c)に示すように開ハンドル41を角度θ1、θ2回動すると、ハンドル操作部49の下端には力P1、P2が加わって前方にs1、s2移動し、野菜収納室4は前方にu1、u2移動し、このときs1>u1およびs2>u2の関係となるようカムローラ44の位置とカム面55の曲面形状を構成している。
ここで、一般的な「テコの原理」について説明すると、回転支軸である支点から力点までの距離をz1、支点から作用点までの距離をz2、力点に加わる力をW1、作用点に加わる力をW2とすれば、z1×W1=z2×W2の関係があることは、周知のことである。ここで、力点に加わった力によってテコが支点のまわりに回転し、力点と作用点とがそれぞれ支点のまわりに移動したとすれば、支点から力点までの距離z1と支点から作用点までの距離z2との比率は、力点の移動量e1と作用点の移動量e2の比率に等しくなる。したがって、z1×e1=z2×e2の関係はe1×W1=e2×W2の関係と書き直すことができる。
このテコの原理により、図11(b)においてはs1×P1=u1×Q1、図11(c)においてはs2×P2=u2×Q2、の関係が得られる。ここでs1>u1およびs2>u2の関係となるように構成しているから、P1<Q1、P2<Q2の関係が得られ、野菜収納室4を開こうとする操作力P1、P2は、野菜収納室4の開き力Q1、Q2よりも小となるので、開ハンドル41を操作することによって小さな力で野菜収納室4を開くことができる。ここで、操作力P1と野菜収納室4の開き力Q1の比率はs1とu1の比率に等しくなるので、一例としてs1=2×u1、s2=2×u2、となるようにカムローラ44の位置とカム面55の曲面形状を構成すれば、開ハンドル41の作用によって、開き力Q1、Q2の1/2の操作力P1、P2で野菜収納室4を開くことができる。
すなわち、開ハンドル41の作用によって野菜収納室4を閉止位置から開く際に、ハンドル操作部49の移動量がハンドル支軸42の移動量ないし野菜収納室4の移動量より大、となるように構成することによって、開ハンドル41はテコの原理に従って作用し、野菜収納室4の開き力よりもユーザがハンドル操作部49に加える開操作力を低減することができるので、開きやすく使い勝手のよい冷蔵庫を提供できる。
またさらに一例として、開ハンドル41のθ2に至るまでの回動角度と、野菜収納室4のb2に至るまでの移動量とが比例関係となるようにカム面55の曲面形状を構成すれば、開ハンドル41をユーザが操作した際に野菜収納室4の開き量が開ハンドル41の回動角度に比例するので、開き動作を自然なものと感じ、違和感がなく好適である。
先に説明したように、「落とし込み」の範囲x1においては斜面による引込力が生じるので、開く際の操作力はその分増加するものの、開ハンドル41の作用によって開操作力を低減することができる。ここで特に、開ハンドル41の操作による野菜収納室4の開き量b2と落とし込み範囲x1とを、u2>x1と設定すれば、開ハンドル41の操作によって落とし込み範囲Aは操作力P1、P2が低減されるので、「落とし込み」にも係らず、開ハンドル41の作用によって開き力を低減することができるので、使い勝手が良く好適である。
ここで、図8、図9にて説明したように、開ハンドル41は野菜収納室4の全幅とほぼ等しく設けられ、ハンドルアーム43、カムローラ44、カム面55は左右対称に、内箱7bの左右側面内側に設けられている。また開ハンドル41は例えばアルミニウム製で十分な剛性を備えているから、ユーザが開ハンドル41を操作した際には開ハンドル41は撓むことなくハンドル支軸42のまわりに回動し、開ハンドル41左右両端のハンドルアーム43とカムローラ44とを回動させる。
カム板54も左右対称に設けられているから、図11(c)に示すように開ハンドル41の作用によって野菜収納室4がb2だけ開いた際には、左右両側は同期して動作し、左右ともに同じくb2だけ開く。すなわち、野菜収納室4は開ハンドル41の作用によって前方に平行を保ったまま引き出される。したがって野菜収納室4の幅を拡大した場合でも、野菜収納室4内部の食品の収納状態に偏りがあった場合でも、あるいは開ハンドル41の左右中心からずれた位置で開ハンドル41を操作しても、野菜収納室4は平行に引き出されるので、動作が安定しており、使い勝手が良く信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
開ハンドル41は断熱仕切り壁8に載置された野菜収納室4の下端近傍に配置された構成なので、開ハンドル41は断熱仕切り壁8の上面のすぐ上部にあり、その床面からの高さは例えば70cm程度と目線よりも低く、前下方に腕を伸ばせば自然に開ハンドル41に手指をかけやすい高さに配置されているので開きやすい。
さらに、開ハンドル41を前方に開く際の開扉力P1、P2は野菜収納室4の底面近傍に加わるので、野菜収納室4内の食品が少なく軽量であっても、例えば上端を急激に前方に引いた際に生じるモーメントによって野菜収納室4が手前に倒れて後部が浮いてがたつく、といった現象は生じない。したがって、開ハンドル41による開扉動作が安定する効果がある。
さらに、開ハンドル41を操作して野菜収納室4を開く際には、図11(a)の閉止状態から図11(c)に示した状態までユーザは開ハンドル操作部49の先端を前方に引き続けるから、図11(c)の状態において野菜収納室4は前方に向けた初速をもち、さらに野菜収納室4は平行を保って移動しているから、慣性によってそのまま前方に真っ直ぐ進行しようとする運動エネルギをもつ。さらに加えて野菜収納室4は第一の支持ローラ39a、第二の支持ローラ39b、ガイドローラ46によって前後方向に回転支持されているから直進性が高く、そのため左右に傾斜することなく開くので動作が安定しており、使い勝手が良く信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
第二の実施形態について図12を用いて説明する。図12は野菜収納室4の開き動作の際の支持レール37と第一の支持ローラ39a、第二の支持ローラ39bとを示す側面図であり、第一の実施形態との相違は、「落とし込み」のために設けたX1範囲の斜面が2つの異なる角度を備えた二段傾斜面としたことであり、x3範囲に設けた傾斜角φ1の第一の斜面57と、第一の斜面57の後方に連続したx4範囲に設けた傾斜角φ2の第二の斜面58とを備え、φ1>φ2、かつx3<x4としたことである。図12(a)は図11(a)と同様に閉止状態であり、図12(b)は第一の支持ローラ39aは第一の斜面57と接しており、図12(c)は第一の支持ローラ39aは第二の斜面58と接しており、図12(d)は図11(c)と同様に第一の支持ローラ39aは水平面x2と接している。
第二の実施形態においては、図12(a)に示した閉止状態においては、第一の支持ローラ39aは傾斜角度φ1の大なる第一の斜面(x3範囲)で支持レール37下面の支持ローラ載置面40と当接するので、閉じ方向への分力が大であり、十分な閉止力が得られるので閉じた時の密閉度が高いという効果がある。一方、先に述べたように「落とし込み」の高さhには限度があるので、傾斜の大なる傾斜角度φ1でX1範囲全体を構成すると高さhが過大となる。またさらに、閉じ力が過大となって、野菜収納室4を閉じた際に必要以上に急激に閉じる。
そこで、密閉度を高めたい閉止状態の近傍のみ傾斜角度φ1の大なる第一の斜面57を備えたx3範囲とし、x3範囲よりも後方のx4範囲は傾斜角度φ2の小なる第二の傾斜面58とすることで、「落とし込み」による閉止効果の生じるX1範囲を確保しつつ、高さhを所定の範囲内に収めることができ、かつ閉じ力が過大になることもないので好適である。またさらに、開き始めのx3範囲において、開き力は大なるものの開ハンドル41によるテコの効果によってハンドル操作部49の操作力は小であり、さらに傾斜角φ2の小なるx4範囲においては落とし込みによる閉止力は低減するので開ハンドル41の操作力はさらに小とすることができるので、確実に閉止するとともに開き操作力を低減した野菜収納室4を提供できる。
本実施形態によれば、支持レール37は野菜室ベース32の左右端に設けられており、野菜室容器31の抜きテーパによって野菜室容器31の底面近傍と内箱7bとの間に生じる隙間に配置されるので、支持レール37を配置するために野菜室容器31の容積を減少させないので、野菜室容器31の容積を最大化できる、という効果がある。
本実施形態によれば、開動作時における開ハンドル41のハンドル操作部49の移動量を野菜収納室4の移動量よりも大としたので、開ハンドル41はテコの原理に従って作用し、野菜収納室4の開き力よりもユーザがハンドル操作部49に加える開操作力を低減することができるので、開きやすく使い勝手のよい冷蔵庫を提供できる。
またさらに、本実施形態によれば、開ハンドル41の操作による野菜収納室4の開き量u2を、傾斜面を用いた自重による落とし込み範囲x1より大としたので、開ハンドル41の作用によって開き力を低減することができる効果がある。
またさらに、本実施形態によれば、野菜収納室4の野菜室ベース32の左右両側に前後方向に沿って設けられた支持レール37は、回動軸のまわりに回動自在に軸支された第一の支持ローラ39a、第二の支持ローラ39bとガイドローラ46によって前後方向に移動可能に支持されているので、僅かな力で開閉できるとともに、野菜収納室4を前後方向に移動して開閉動作した際の直進性が良好であり、左右に傾斜しにくいので開閉しやすく、使い勝手のよい野菜室を提供できる。
またさらに、本実施形態によれば、野菜収納室4を閉止した際には、前面蓋34上端のマグネットパッキン35が上面棚47に設けられた磁性を備えた棚前縁部48に吸着して隙間を塞ぎ、野菜室容器31内部を密閉して気密を得ることで、野菜室容器31の内部を高湿に維持して収納された野菜の鮮度を維持する効果がある。
またさらに、本実施形態によれば、前後方向に回動可能に軸支された開ハンドル41の左右両端に設けられたハンドルアーム43の先端近傍には、内箱7bの内側側壁に近接する向きにカムローラ44が設けられて、開ハンドル41と一体となって回動する。内箱7bの内側左右側壁には左右対称に、内側に向けて凸したカム板54の前面側に設けられた曲面であるカム面55と接しつつ移動することで、開ハンドル41を操作して手前側に引く動作と連動して野菜収納室4が手前に移動する構成としたので、開き易く操作性の良好な野菜収納室4を提供できる。
またさらに、本実施形態によれば、開ハンドル41は断面を略L字型としたので、単純な板形状と比べると断面二次モーメントが大きくて曲げ強度が大であり、かつハンドル操作部49の後方かつ補強部50の下側に手指を挿入するスペースが十分に得られる、という効果がある。
またさらに、本実施形態によれば、開ハンドル41をアルミニウムの押し出し材ないし引抜き材によって構成したので、剛性が高く開ハンドル41を操作した際に変形することがなく、安定した開き操作が行えるので好適である。
またさらに、本実施形態によれば、開ハンドル41の重心位置51はハンドル支軸42よりもわずかに前下方に位置するような形状としたので、開き動作の後にユーザが手を離せば、開ハンドル41はハンドル操作部49が下方を向く方向に回動復帰する。したがって開ハンドル41には特段の復帰バネなどの付勢手段が不要であり、簡素な構成が実現できる効果がある。
またさらに、本実施形態によれば、開ハンドル41の幅は野菜収納室4の全幅とほぼ等しく、かつアルミニウム製で十分な剛性を備えているから、ユーザが開ハンドル41を操作した際には開ハンドル41は撓むことなくハンドル支軸42のまわりに回動する。開ハンドル41左右両端のハンドルアーム43とカムローラ44とは回動して野菜収納室4はカムローラ44とカム面55との作用によって左右両端が同期して開くので、野菜収納室4の幅を拡大しても野菜収納室4は平行に引き出され、動作が安定して使い勝手が良く、信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
開ハンドル41は断熱仕切り壁8の上面のすぐ上部にあり、その床面からの高さは例えば70cm程度と目線よりも低く、前下方に腕を伸ばせば自然に開ハンドル41に手指をかけやすい高さに配置されているので開きやすい。さらに、開ハンドル41を前方に開く際の開扉力P1、P2は野菜収納室4の底面近傍に加わるので、開ハンドル41による開扉動作が安定する効果がある。
またさらに、本実施形態によれば、開ハンドル41を操作して野菜収納室4を開いた際には、野菜収納室4は前方に向けた初速をもち、さらに野菜収納室4は平行を保って移動しているから、慣性によってそのまま前方に真っ直ぐ進行しようとする運動エネルギをもつ。さらに加えて野菜収納室4は第一の支持ローラ39a、第二の支持ローラ39b、ガイドローラ46によって前後方向に回転支持されているから直進性が高く、そのため左右に傾斜することなく開くので動作が安定しており、使い勝手が良く信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
またさらに別の実施形態によれば、「落とし込み」のための傾斜面を、前方近傍の傾斜角度の大なる第一の斜面57と、第一の斜面57の後方に第一の斜面57と連続しかつ第一の斜面57よりも傾斜角度の小なる第二の斜面58を設けた二段傾斜面とした。密閉度を高めたい閉止状態の近傍のみ傾斜角度を大とし、その後方の傾斜角度を小とすることで、「落とし込み」による閉止効果の生じる範囲を確保しつつ、「落とし込み」の高さ変化を所定の範囲内に収めることができる、という効果がある。