本発明に係る車両用ノイズキャンセリング装置(車両用ラジオノイズ除去装置)について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る車両10の側面図である。車両10は、駆動源となるモータ12と、モータ12を駆動し、その駆動を制御するモータ駆動制御装置14とを有する電動車両である。なお、車両10は、エンジンとモータ12とを搭載したハイブリッド車両であってもよい。モータ12は、例えば、車両10の前方に配置されたボンネット16下で、前輪WFの近傍に設けられた図示しないモータルーム内に配置されている。モータ駆動制御装置14は、後輪WRの近傍に設けられている。モータ駆動制御装置14は、図示しないバッテリの直流電流を3相の交流電流に変換してモータ12を駆動するドライバ(例えば、インバータ等の電力変換器)14aと、ドライバ14aをPWM制御する制御装置(コンピュータ)14bとを有する。
ドライバ14aは、UVWの3相に応じた半導体スイッチング素子(図示略)を複数有する。制御装置14bがこのスイッチング素子のオンオフを、PWM周期Tpの範囲内で定められたデューティ比に応じて切り換えることで、ドライバ14aは前記バッテリの直流電流を3相の交流電流に変換して、モータ12を駆動させる。制御装置14bがデューティ比を変えることで、モータ12の駆動が制御される。車両10のルーフパネル18の後方には、放送信号(放送電波)を受信する放送用アンテナ20が設けられている。なお、モータ駆動制御装置14のドライバ14aとモータ12とは、ハーネス22によって接続されており、このハーネス22によって3相の交流電流がモータ12に供給される。このハーネス22を介してモータ12に供給される交流電流の電流値(実効値)Ipは、車両10に設けられた電流センサ(電流検出部)24によって検出される。なお、この電流センサ24は、モータ駆動制御装置14内に設けられていてもよい。
図2は、図1に示す車両10に搭載されるラジオ受信機30の概略構成図である。ラジオ受信機30は、放送用アンテナ20、バンドパスフィルタ(BPF)32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、ノイズ除去部44、および、チューナ46を備える。バンドパスフィルタ32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、および、ノイズ除去部44は、車両用ノイズキャンセリング装置48を構成する。
放送用アンテナ20は、少なくとも放送信号(以下、FMラジオ放送信号(FMラジオ放送電波)を例に挙げて説明する)を受信する。放送用アンテナ20が受信したアナログ受信信号はバンドパスフィルタ32に入力される。バンドパスフィルタ32は、放送用アンテナ20が受信したアナログ受信信号のうち、FMラジオ放送信号の周波数帯域幅のアナログ受信信号Arfを抽出し、抽出したアナログ受信信号ArfをAD変換器34に出力する。つまり、バンドパスフィルタ32から出力されるアナログ受信信号Arfは、FMラジオ放送信号の放送帯域である所定の周波数帯域(例えば、76MHz〜108MHz)に制限されたアナログ信号となる。
AD変換器34は、位相同期部38から出力される同期信号fsに基づくサンプリング周波数で、アナログ受信信号Arfをデジタル受信信号Drfに変換する。AD変換器34は、同期信号fsの周波数をサンプリング周波数として用いてもよいし、同期信号fsからAD変換器34の特性、性能等に応じたサンプリング周波数を生成してもよい。要は、同期信号fsの周波数と位相同期したサンプリング周波数で、AD変換を行えばよい。AD変換器34は、変換したデジタル受信信号Drfを周波数解析部36に出力する。
なお、モータ駆動制御装置14がモータ12を駆動することで車両ノイズ信号(車両ノイズ電波)が発生することから、放送用アンテナ20の受信により得られたアナログ受信信号Arfは、FMラジオ放送信号と車両ノイズ信号とを含むことになる。そのため、AD変換器34から出力されるデジタル受信信号Drfは、FMラジオ放送信号と、車両ノイズ信号とを有する信号となる。この車両ノイズ信号は、モータ駆動制御装置14がモータ12を駆動することで発生するものであることから、周波数軸上で繰り返し発生する。つまり、周期的に車両ノイズ信号が発生する。車両ノイズ信号を発生するノイズ発生源は、モータ12、モータ駆動制御装置14、および、ハーネス22のうち少なくとも1つで構成される。つまり、少なくともモータ12、モータ駆動制御装置14、および、ハーネス22の少なくとも1つから車両ノイズ信号が発生する。
周波数解析部36は、AD変換器34が出力したデジタル受信信号Drfの周波数を解析する。つまり、周波数解析部36は、デジタル受信信号Drfを時間領域から周波数領域に変換することで周波数を解析する。これにより、周波数解析部36は、時間領域のデジタル受信信号Drfを周波数領域の周波数受信信号Frfに変換することができる。周波数解析部36は、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いてデジタル受信信号Drfを周波数受信信号(周波数スペクトルの信号)Frfに変換する。図4は、周波数解析部36によって変換された周波数受信信号Frfの一例を示す図である。図4は、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域(放送帯域)の一部の周波数帯域における周波数受信信号Frfを示している。
周波数解析部36は、位相同期部38から出力される同期信号fsに基づくサンプリング周波数で、デジタル受信信号Drfを周波数受信信号Frfに変換する。周波数解析部36は、同期信号fsの周波数をサンプリング周波数として用いてもよいし、同期信号fsから周波数解析部36の特性、性能等に応じたサンプリング周波数を生成してもよい。要は、同期信号fsの周波数と位相同期したサンプリング周波数で、周波数変換を行えばよい。なお、位相同期とは、2つの信号の位相が一致していることを指す。したがって、位相が一致していれば、2つの信号が、周波数の整数(但し、1以上の自然数)倍で異なる場合であっても位相同期しているといえる。周波数解析部36は、生成した周波数受信信号Frfを空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、および、ノイズ除去部44に出力する。
位相同期部(PLL)38は、車両10に周期的に発生する車両ノイズ信号の発生タイミングを示すノイズパルスnpと位相同期させた同期信号fsを生成する。位相同期とは、2つの信号の位相が一致しており、その周波数が整数(但し、1以上の自然数)倍で異なるものを含むことから、同期信号fsの周波数は、ノイズパルスnpの周波数を整数(但し、1以上の自然数)倍したものとなる。このノイズパルスnpは、制御装置14bから位相同期部38に送られる。
具体的には、位相同期部38は、図3に示すように、位相比較器50、ローパスフィルタ(LPF)52、電圧制御発振器(VCO)54、プリスケーラ56、および、分周器58を備える。ここで、ノイズパルスnpの周波数をFe、その周期をTe(=1/Fe)で表す。位相比較器50には、制御装置14bから送られてくるノイズパルスnpと分周器58から出力される信号との位相を比較する。位相比較器50は、その比較結果(位相差)に応じた出力信号をローパスフィルタ52に出力する。ローパスフィルタ52は、位相比較器50からの出力信号を直流の電圧信号に変換して、電圧制御発振器54に出力する。電圧制御発振器54は、ローパスフィルタ52から出力される直流の電圧信号に応じた発振周波数の信号(クロック信号)を生成する。電圧制御発振器54は、生成した信号をプリスケーラ56に出力する。プリスケーラ56は、電圧制御発振器54が生成した信号を1/N1に分周する。但し、N1は、1以上の整数とする。
プリスケーラ56が分周した信号は、同期信号fsとして、AD変換器34および周波数解析部36に出力されるとともに、分周器58に入力される。分周器58は、同期信号fsを1/N2に分周する。但し、N2は、2以上の整数とする。分周器58が分周した信号は、位相比較器50に出力される。分周器58から位相比較器50に出力される信号と、ノイズパルスnpとの位相が一致している場合は、同期信号fsは、ノイズパルスnpの周波数FeをN2倍した信号となる。位相同期部38は、このような構成を有することで、ノイズパルスnpと位相が同期した同期信号fsを生成することができる。
ここで、車両ノイズ信号は、モータ12に流れる交流電流が切り換わるタイミングで発生することから、ノイズパルスnpは、例えば、制御装置14bがドライバ14aの前記した半導体スイッチング素子を駆動させるためにPWM周期Tp(=1/PWM周波数Fp)で発生するモータ駆動パルスである。この場合は、Fe=Fp、Te=Tp、となる。なお、ノイズパルスnpは、ドライバ14aの前記半導体スイッチング素子のスイッチングによって発生するスイッチングノイズに応じたパルスであってもよい。このノイズパルスnpは、理想的には矩形パルスであるが、オーバーシュート、アンダーシュート、リンギングしたパルス、および、ギザギザ波形のパルスも含まれる。
このように、AD変換器34および周波数解析部36は、ノイズパルスnpと位相同期した同期信号fsに基づくサンプリング周波数でAD変換、周波数変換を行うことから、演算処理が簡単になり、ノイズキャンセルの性能、精度が低下することを防止することができる。また、車両10の負荷電力が変動することによってノイズパルスnp(車両ノイズ信号が発生するタイミング)の周波数Feが変わった場合であっても、演算処理が複雑化したり、ノイズキャンセルの性能が低下、精度が低下することを防止することができる。また、制御装置14bが、半導体スイッチング素子をオンオフに駆動させるので、半導体スイッチング素子がオンオフになるタイミング、つまり、交流電流が切り換わるタイミングは制御装置14b自体が分かっている。したがって、制御装置14bは、車両ノイズ信号の発生タイミングを正確に示したノイズパルスnpを生成することができる。
図2の説明に戻り、空きチャネル検出部40は、周波数解析部36から送られてきた周波数受信信号Frfを周波数軸上で掃引することで、放送信号の放送帯域である前記所定の周波数帯域のうち、放送信号が受信されていない周波数帯域(空きチャネルの周波数帯域)を検出する。これにより、空きチャネルの周波数帯域を精度よく簡易に検出することができる。空きチャネル検出部40は、検出した空きチャネルの周波数帯域をノイズ推定部42に出力する。なお、空きチャネル検出部40は、経度および緯度、または、地域(東京、神奈川、千葉等の地域)に応じて、空きチャネルの周波数帯域が予め記憶されたテーブルを有し、現在の車両10の位置情報に基づいて空きチャネルの周波数帯域を検出するようにしてもよい。この場合は、車両10には、車両10の現在位置を検出するための位置検出装置(例えば、GPS(Global Positioning System)装置等)が設けられている。この場合であっても、空きチャネルの周波数帯域を精度よく簡易に検出することできる。図4においては、検出された空きチャネルの周波数帯域を図示するとともに、使用チャネルの周波数帯域(放送信号が受信されている周波数帯域)を図示している。
ノイズ推定部42は、空きチャネルの周波数帯域における放送用アンテナ20の受信によって得られた周波数受信信号Frfから、使用チャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fnまたは前記所定の周波数帯域全域(放送帯域全域)における周波数ノイズ信号Fntを推定する。この周波数ノイズ信号(周波数スペクトルの信号)Fn、Fntは、放送用アンテナ20が受信した車両ノイズ信号を周波数領域で表した信号である。詳しく説明すると、ノイズ推定部42は、空きチャネルノイズ推定部60と使用チャネルノイズ推定部62とを有する。空きチャネルノイズ推定部60は、周波数解析部36が生成(変換)した周波数受信信号Frfのうち、空きチャネル検出部40が検出した空きチャネルの周波数帯域における周波数受信信号Frfから、空きチャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fn´を推定する。具体的には、空きチャネルノイズ推定部60は、図4に示す空きチャネルの周波数帯域の周波数受信信号Frfを、空きチャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fn´と推定する。
そして、使用チャネルノイズ推定部62は、空きチャネルノイズ推定部60が推定した空きチャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fn´から、使用チャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fnを推定する。ここで、周波数が変わると周波数ノイズ信号Fnも変動することから、これを考慮して、使用チャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fnを推定する。また、使用チャネルノイズ推定部62は、推定した複数の空きチャネルの周波数帯域の周波数ノイズ信号Fn´を補間することで、使用チャネルの周波数帯域の周波数ノイズ信号Fnを推定してもよい。例えば、図4に示すように、使用チャネルの周波数帯域を挟んで、空きチャネルの周波数帯域が存在する場合は、これらの2つの空きチャネルの周波数帯域の周波数ノイズ信号Fn´を補間することで、その間にある使用チャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fnを推定する。
なお、使用チャネルノイズ推定部62は、推定した空きチャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fn´と、推定した使用チャネルの周波数帯域における周波数ノイズ信号Fnとを合成することで、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域全域(例えば、76MHz〜108MHzの放送帯域全域)における周波数ノイズ信号Fntを推定してもよい。図5は、ノイズ推定部42によって推定された周波数ノイズ信号Fntの一例を示す図であり、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域(放送帯域)の一部の周波数帯域における周波数ノイズ信号Fntを示している。図5に示すように、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域(放送帯域)の周波数ノイズ信号Fntは、周波数ノイズ信号Fn´と周波数ノイズ信号Fnとが合成された信号であることがわかる。
このように、放送用アンテナ20の受信によって得られた周波数受信信号Frfから、周波数ノイズ信号Fn、Fntを推定することができるので、ノイズ用のアンテナを別途設ける必要はなく、コストが低廉になる。また、放送用アンテナ20の受信によって得られた前記所定の周波数帯域(放送帯域)の周波数受信信号Frfのうち、空きチャネルの周波数帯域の周波数受信信号Frfから、使用チャネルの周波数帯域の周波数ノイズ信号Fnまたは前記所定の周波数帯域全域(放送帯域全域)の周波数ノイズ信号Fntを推定する。これにより、精度よく周波数ノイズ信号Fn、Fntを推定することができる。
ノイズ除去部44は、周波数解析部36が出力した周波数受信信号Frfから、ノイズ推定部42が推定した周波数ノイズ信号FnまたはFntを除去(減算)する。このとき、ノイズ除去部44は、同じ周波数同士で周波数受信信号Frfから周波数ノイズ信号FnまたはFntを減算する。これにより、放送用アンテナ20で受信された受信信号から車両ノイズ信号を除去した信号を得ることができる。ノイズ除去部44は、周波数ノイズ信号FnまたはFntを除去した周波数受信信号Frfを出力信号Soutとしてチューナ46に出力する。なお、ノイズ推定部42が前記所定の周波数帯域全域の周波数ノイズ信号Fntをノイズ除去部44に出力することで、放送用アンテナ20で受信された受信信号から車両ノイズ信号を一括して除去することができる。
チューナ46は、逆FFTを用いて出力信号Soutを周波数領域から時間領域に逆フーリエ変換(逆FFT)し、変換後の出力信号SoutをDA変換してアナログ信号に変換した後、検波・復調する。なお、チューナ46に逆FFTの機能やDA変換の機能がない場合には、ラジオ受信機30に、出力信号Soutに対して逆FFTを行う逆FFT処理部や、逆FFTが行われた後のデジタルの出力信号Soutをアナログに変換するDA変換器を設けてもよい。このチューナ46は、一般的に市販されているRFチューナであってもよい。チューナ46の出力信号であるオーディオ信号は、オーディオ増幅器(図示略)を通じて車両10の車室内に設けられたスピーカ(図示略)に供給され、前記スピーカから音が出力される。
[第2の実施の形態]
図6は、第2の実施の形態のラジオ受信機30aの概略構成図である。上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。ラジオ受信機30aは、放送用アンテナ20、バンドパスフィルタ(BPF)32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、ノイズ除去部44、および、チューナ46を備えるとともに、さらに、ノイズ用アンテナ70、バンドパスフィルタ(BPF)72、および、波形整形器74を備える。バンドパスフィルタ32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、ノイズ除去部44、ノイズ用アンテナ70、バンドパスフィルタ72、および、波形整形器74は、第2の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48aを構成する。
ノイズ用アンテナ70は、車両ノイズ信号を受信するためのアンテナであり、少なくとも車両ノイズ信号の発振周波数帯域の信号を受信する。そのため、放送用アンテナ20に比べ、より車両ノイズ信号を受信し易い位置に設けられている。例えば、ノイズ用アンテナ70は、車両ノイズ信号のノイズ発生源を構成するモータ駆動制御装置14の近傍に設けられる。好ましくは、モータ駆動制御装置14の内部、若しくは、その筐体に隣接して配置される。ノイズ用アンテナ70が受信したアナログ受信信号は、バンドパスフィルタ72に入力される。バンドパスフィルタ72は、ノイズ用アンテナ70が受信したアナログ受信信号のうち、車両ノイズ信号の発生周波数帯域のアナログ受信信号(第1のアナログ受信信号)An1を抽出し、抽出したアナログ受信信号An1を波形整形器74に出力する。車両ノイズ信号の発生周波数帯域は、例えば、10〜100kHz程度であることから、バンドパスフィルタ72から出力されるアナログ受信信号An1は、10〜100kHz帯域に制限される。つまり、バンドパスフィルタ72から出力されるアナログ受信信号An1は、車両ノイズ信号を示す信号となり、放送信号の成分が殆ど除去されている。波形整形器74は、バンドパスフィルタ72から出力されるアナログ受信信号An1の波形を整形してノイズパルスnpを生成する。この波形整形器74は、リミッタおよび増幅器等を有する。この波形整形器74から出力されるノイズパルスnpは、位相同期部38(位相比較器50)に出力される。
このように、本第2の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48aでは、ノイズ用アンテナ70を設け、実際にノイズ用アンテナ70によって得られた車両ノイズ信号を示すアナログ受信信号An1を用いてノイズパルスnpを生成するというものである。これにより、車両ノイズ信号の発生タイミングを正確に示したノイズパルスnpを生成することができる。
[第3の実施の形態]
図7は、第3の実施の形態のラジオ受信機30bの概略構成図である。上記第2の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。ラジオ受信機30bは、放送用アンテナ20、バンドパスフィルタ(BPF)32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、ノイズ除去部44、チューナ46、バンドパスフィルタ(BPF)72、波形整形器74、および、分配器76を備える。バンドパスフィルタ32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、空きチャネル検出部40、ノイズ推定部42、ノイズ除去部44、バンドパスフィルタ72、波形整形器74、および、分配器76は、第3の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48bを構成する。
放送用アンテナ20は、少なくとも前記所定の周波数帯域(放送帯域)と車両ノイズ信号の発生周波数帯域(例えば、10〜100kHzの帯域)との信号を受信することができるアンテナである。分配器76は、放送用アンテナ20とバンドパスフィルタ32との間に介装されている。分配器76は、放送用アンテナ20が受信したアナログ受信信号をバンドパスフィルタ32とバンドパスフィルタ72とに出力する。分配器76は、バンドパスフィルタ32に出力するアナログ受信信号の強度を、バンドパスフィルタ72に出力するアナログ受信信号の強度より強くする。バンドパスフィルタ32に出力されるアナログ受信信号は、放送信号として車両10の図示しないスピーカから出力される音の元となる信号であり、音質を良くするためにもその強度は強い方がよい。一方で、バンドパスフィルタ72に出力するアナログ受信信号は、ノイズパルスnpを生成するためのものであり、車両ノイズ信号の発生タイミングさえ分ればよいので、その強度は弱くてもよい。
バンドパスフィルタ72に出力されたアナログ受信信号は、上記第2の実施の形態で説明したように、バンドパスフィルタ72によって、車両ノイズ信号の発生周波数帯域に制限されたアナログ受信信号(第1のアナログ受信信号)An1が抽出される。そして、波形整形器74によって、アナログ受信信号An1からノイズパルスnpが生成されて、位相同期部38(位相比較器50)に出力される。
このように、本第3の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48bでは、放送用アンテナ20が受信したアナログ受信信号から車両ノイズ信号の発生周波数帯域のアナログ受信信号An1を抽出し、抽出したアナログ受信信号An1を用いてノイズパルスnpを生成するというものである。これにより、車両ノイズ信号の発生タイミングを正確に示したノイズパルスnpを生成することができ、ノイズ用アンテナ70を別途設ける必要がないので、コストが低廉になる。
[第4の実施の形態]
図8は、第4の実施の形態のラジオ受信機30cの概略構成図である。上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。ラジオ受信機30cは、放送用アンテナ20、バンドパスフィルタ(BPF)32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、ノイズ除去部44、チューナ46、ノイズ推定部80、および、テーブル82を備える。バンドパスフィルタ32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、ノイズ除去部44、ノイズ推定部80、および、テーブル82は、第4の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48cを構成する。
ノイズ推定部80は、電流センサ24が検出した交流電流の電流値(実効値)Ipと、モータ駆動制御装置14のPWM周波数Fp(またはPWM周期Tp)とから前記所定の周波数帯域全域(放送帯域全域)の周波数ノイズ信号Fntを推定する。この電流値Ipは、電流センサ24からノイズ推定部80に送られ、PWM周波数Fp(またはPWM周期Tp)は、制御装置14bからノイズ推定部80に送られる。この周波数ノイズ信号Fntは、放送用アンテナ20が受信した前記所定の周波数帯域全域(例えば、FMラジオ放送信号が放送される76MHz〜108MHzの放送帯域全域)における車両ノイズ信号を周波数領域で表した信号である。ノイズ推定部80は、車両10におけるモータ駆動制御装置14の配置位置、車両10における放送用アンテナ20の配置位置、車両10におけるモータ12の配置位置、車両10の形状、放送用アンテナ20の仕様、および、ハーネス22のレイアウトのうち、少なくとも1つ以上の条件に基づいて、放送用アンテナ20で受信される車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数ノイズ信号(周波数スペクトルの信号)Fntを推定する。
具体的には、ノイズ推定部80は、発生源ノイズ推定部84と、アンテナ端ノイズ推定部86とを有する。発生源ノイズ推定部84は、前記ノイズ発生源で発生する車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数ノイズ信号(以下、発生源ノイズ信号)Fnt´を推定する。アンテナ端ノイズ推定部86は、放送用アンテナ20で受信される前記ノイズ発生源で発生した車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数ノイズ信号(以下、放送用アンテナ端ノイズ信号と呼ぶ場合がある)Fntを推定する。
発生源ノイズ推定部84は、電流センサ24が検出した交流電流の電流値(実効値)Ipと、モータ駆動制御装置14のPWM周波数Fp(またはPWM周期Tp)とから、発生源ノイズ信号Fnt´を推定する。発生源ノイズ信号Fnt´は、モータ12に流れる交流電流が切り換わるタイミングで発生し、且つ、その交流電流の電流値(実効値)Ipの大きさに応じて大きくなる。つまり、発生源ノイズ信号(周波数スペクトルの信号)Fnt´は、PWM周波数Fpと同期して発生し、その大きさは、交流電流の電流値Ipが大きくなる程大きくなる。また、発生源ノイズ信号Fnt´は、図9に示すように、PWM周波数Fpにおいて最も大きくなり、それ以外の周波数帯域においては、PWM周波数Fpから離れるにしたがって小さくなる。したがって、発生源ノイズ推定部84は、この特性を利用して、PWM周波数Fp(またはPWM周期Tp)と交流電流の電流値Ipとから、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域全域(例えば、76MHz〜108MHz)における発生源ノイズ信号Fnt´を推定する。図9の四角で囲った枠は、推定した前記所定の周波数帯域(放送帯域)における発生源ノイズ信号Fnt´を示している。なお、図9に示す例では、交流電流の電流値Ipは一定とする。発生源ノイズ推定部84は、推定した前記ノイズ発生源における前記所定の周波数帯域における発生源ノイズ信号Fnt´をアンテナ端ノイズ推定部86に出力する。
テーブル82は、ノイズ伝達関数HVを記憶している。このノイズ伝達関数HVは、前記所定の周波数帯域全域における発生源ノイズ信号Fnt´が放送用アンテナ20に伝達される周波数応答特性を示すものであり、予め実験を行うことによって求められたものである。つまり、前記ノイズ発生源で発生した車両ノイズ信号が放送用アンテナ20に伝達されるまでの周波数応答特性を示したものである。このノイズ伝達関数HVは、車両10におけるモータ駆動制御装置14の配置位置、車両10における放送用アンテナ20の配置位置、車両10におけるモータ12の配置位置、車両10の形状、放送用アンテナ20の仕様、および、ハーネス22のレイアウトのち、少なくとも1つの条件に基づいて決定される。テーブル82は、車種毎にノイズ伝達関数HVを記憶している。これにより、複数の車種に対応することができる。図10は、図1に示す車両10の車種に対応したノイズ伝達関数HVを示すグラフである。
アンテナ端ノイズ推定部86は、発生源ノイズ推定部84が推定した前記所定の周波数帯域全域(放送帯域全域)における発生源ノイズ信号Fnt´から、放送用アンテナ20で受信される前記所定の周波数帯域全域における放送用アンテナ端ノイズ信号(周波数スペクトルの信号)Fntを推定する。アンテナ端ノイズ推定部86は、前記所定の周波数帯域全域における発生源ノイズ信号Fnt´を、ラジオ受信機30c(車両用ノイズキャンセリング装置48c)が搭載された車両10のノイズ伝達関数HVを用いて補正することで、放送用アンテナ端ノイズ信号Fntを推定する。具体的には、アンテナ端ノイズ推定部86は、ラジオ受信機30c(車両用ノイズキャンセリング装置48c)が搭載された車両10の車種に対応したノイズ伝達関数HVをテーブル82から取得する。そして、アンテナ端ノイズ推定部86は、前記所定の周波数帯域全域における発生源ノイズ信号Fnt´に、取得したノイズ伝達関数HVを乗算することで、前記所定の周波数帯域全域における放送用アンテナ端ノイズ信号Fntを推定する。つまり、Fnt=Fnt´×HV、の関係式を用いて、放送用アンテナ端ノイズ信号(周波数ノイズ信号)Fntを推定する。図11は、アンテナ端ノイズ推定部86が推定した前記所定の周波数帯域全域における放送用アンテナ端ノイズ信号Fntの一例を示す図である。アンテナ端ノイズ推定部86は、推定した放送用アンテナ端ノイズ信号(周波数ノイズ信号)Fntをノイズ除去部44に出力する。
ノイズ除去部44は、上記第1の実施の形態で述べたように、周波数解析部36が出力した周波数受信信号Frfから、前記所定の周波数帯域における周波数ノイズ信号(放送用アンテナ端ノイズ信号)Fntを除去(減算)する。ノイズ除去部44は、周波数ノイズ信号(放送用アンテナ端ノイズ信号)Fntを除去した周波数受信信号Frfを出力信号Soutとしてチューナ46に出力する。
このように、本第4の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48cにおいては、ノイズ推定部80が、モータ駆動制御装置14からモータ12に供給される交流電流の電流値(実効値)Ipを取得し、PWM周波数Fp(またはPWM周期Tp)と電流値Ipとから放送用アンテナ端ノイズ信号(周波数ノイズ信号)Fntを推定する。これにより、ノイズ用のアンテナを別途設ける必要はなく、コストが低廉になる。
ノイズ推定部80は、車両用ノイズキャンセリング装置48cが搭載される車両10におけるモータ駆動制御装置14の配置位置、車両10における放送用アンテナ20の配置位置、モータ12の車両10における配置位置、車両10の形状、放送用アンテナ20の仕様、および、ハーネス22のレイアウトのうち、少なくとも1つ以上の条件に基づいて、放送用アンテナ20で受信される前記所定の周波数帯域の車両ノイズ信号を周波数領域で表した放送用アンテナ端ノイズ信号Fntを推定する。これにより、放送用アンテナ20で受信される車両ノイズ信号を精度よく推定することができる。
ノイズ推定部80は、PWM周波数Fp(またはPWM周期Tp)と電流値Ipとから、モータ駆動制御装置14、モータ12、および、ハーネス22のうち少なくとも1つで構成される前記ノイズ発生源で発生する発生源ノイズ信号Fnt´を推定する発生源ノイズ推定部84と、発生源ノイズ推定部84が推定した発生源ノイズ信号Fnt´から、放送用アンテナ20で受信される車両ノイズ信号を周波数領域で表した放送用アンテナ端ノイズ信号Fntを推定するアンテナ端ノイズ推定部86とを備える。これにより、放送用アンテナ20で受信される前記所定の周波数帯域の周波数ノイズ信号Fntを精度よく推定することができる。
アンテナ端ノイズ推定部86は、発生源ノイズ推定部84が推定した発生源ノイズ信号Fnt´を、発生源ノイズ信号Fnt´が放送用アンテナ20に伝達されるノイズ伝達関数HV(周波数応答特性)を用いて補正することで、放送用アンテナ端ノイズ信号Fntを推定する。これにより、放送用アンテナ20で受信される周波数ノイズ信号Fntを精度よく推定することができる。
車種毎に、周波数応答特性を示すノイズ伝達関数HVを記憶したテーブル82を備え、アンテナ端ノイズ推定部86は、ラジオ受信機30c(車両用ノイズキャンセリング装置48c)が搭載された車種に対応するノイズ伝達関数HVをテーブル82から取得する。これにより、複数の車種に対応した車両用ノイズキャンセリング装置48cを提供することができる。
なお、ラジオ受信機30c(車両用ノイズキャンセリング装置48c)が搭載される車種が予め決まっている場合は、テーブル82には、ラジオ受信機30c(車両用ノイズキャンセリング装置48c)が搭載される車種に対応するノイズ伝達関数HVのみを記憶してもよい。
[第5の実施の形態]
図12は、第5の実施の形態のラジオ受信機30dの概略構成図である。上記第1〜第4の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。ラジオ受信機30dは、放送用アンテナ20、バンドパスフィルタ(BPF)32、AD変換器(第1のAD変換器)34、周波数解析部(第1の周波数解析部)36、位相同期部38、ノイズ除去部44、チューナ46、ノイズ用アンテナ70、バンドパスフィルタ(BPF)72、波形整形器74、分配器88、バンドパスフィルタ(BPF)90、AD変換器(第2のAD変換器)92、周波数解析部(第2の周波数解析部)94、ノイズ推定部96、および、テーブル98を備える。バンドパスフィルタ32、AD変換器34、周波数解析部36、位相同期部38、ノイズ除去部44、ノイズ用アンテナ70、バンドパスフィルタ72、波形整形器74、分配器88、バンドパスフィルタ90、AD変換器92、周波数解析部94、ノイズ推定部96、および、テーブル98は、本第5の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48dを構成する。
ノイズ用アンテナ70は、上記第2の実施の形態で説明したように、車両ノイズ信号を受信し易いように、放送用アンテナ20に比べモータ駆動制御装置14の近傍に設けられている。ノイズ用アンテナ70は、少なくとも前記所定の周波数帯域(放送帯域)と車両ノイズ信号の発生周波数帯域との信号を受信することができるアンテナである。ノイズ用アンテナ70が受信したアナログ受信信号は分配器88に送られる。分配器88は、ノイズ用アンテナ70が受信したアナログ受信信号をバンドパスフィルタ72とバンドパスフィルタ90とに出力する。分配器88は、バンドパスフィルタ90に出力するアナログ受信信号の強度を、バンドパスフィルタ72に出力するアナログ受信信号の強度より強くする。バンドパスフィルタ90に出力されるアナログ受信信号は、後述するように車両ノイズ信号の元となる信号であることからその強度は強い方がよい。一方で、バンドパスフィルタ72に出力するアナログ受信信号は、ノイズパルスnpを生成するためのものであり、車両ノイズ信号の発生タイミングさえ分ればよいので、その強度は弱くてもよい。
バンドパスフィルタ72に出力されたアナログ受信信号は、上記第2の実施の形態で説明したように、バンドパスフィルタ72によって、車両ノイズ信号の発生周波数帯域に制限されたアナログ受信信号(第1のアナログ信号)An1が抽出される。そして、波形整形器74によって、アナログ受信信号An1からノイズパルスnpが生成されて、位相同期部38(位相比較器50)に出力される。
一方で、バンドパスフィルタ90は、ノイズ用アンテナ70が受信したアナログ受信信号のうち、前記所定の周波数帯域(例えば、FMラジオ放送信号が放送される76MHz〜108MHzの放送帯域)のアナログ受信信号(第2のアナログ受信信号)An2を抽出する。つまり、バンドパスフィルタ90から出力されるアナログ受信信号An2は、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域に制限されたアナログ信号となる。そして、バンドパスフィルタ90は、抽出したアナログ受信信号An2をAD変換器92に出力する。
AD変換器92は、位相同期部38から出力される同期信号fsに基づくサンプリング周波数で、アナログ受信信号An2をデジタル受信信号(第2のデジタル受信信号)Dn2に変換する。AD変換器92は、同期信号fsの周波数をサンプリング周波数として用いてもよいし、同期信号fsからAD変換器92の特性、性能等に応じたサンプリング周波数を生成してもよい。要は、同期信号fsの周波数と位相同期したサンプリング周波数でAD変換を行えばよい。AD変換器92は、変換したデジタル受信信号Dn2を周波数解析部94に出力する。
周波数解析部94は、AD変換器92が出力したデジタル受信信号Dn2の周波数を解析する。つまり、周波数解析部94は、デジタル受信信号Dn2を時間領域から周波数領域に変換することで周波数を解析する。これにより、周波数解析部94は、時間領域のデジタル受信信号Dn2を周波数領域の周波数受信信号(第2の周波数受信信号)Fn2に変換することができる。周波数解析部94は、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いてデジタル受信信号Dn2を周波数受信信号(周波数スペクトルの信号)Fn2に変換する。周波数解析部94は、位相同期部38から出力される同期信号fsに基づくサンプリング周波数で、デジタル受信信号Dn2を周波数受信信号Fn2に変換する。周波数解析部94は、同期信号fsの周波数をサンプリング周波数として用いてもよいし、同期信号fsから周波数解析部94の特性、性能等に応じたサンプリング周波数を生成してもよい。要は、同期信号fsの周波数と位相同期したサンプリング周波数で、周波数変換を行えばよい。周波数解析部94は、生成した周波数受信信号Fn2をノイズ推定部96に出力する。この周波数受信信号Fn2は、ノイズ用アンテナ70端で受信された所定の周波数帯域全域における車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数ノイズ信号(ノイズ用アンテナ端ノイズ信号)である。
ノイズ推定部96は、周波数受信信号(ノイズ用アンテナ端ノイズ信号)Fn2から、放送用アンテナ20で受信される前記所定の周波数帯域全域における車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数ノイズ信号(放送用アンテナ端ノイズ信号)Fntを推定する。ノイズ推定部96は、車両用ノイズキャンセリング装置48dが搭載される車両10における放送用アンテナ20およびノイズ用アンテナ70の配置位置、車両10の形状、および、放送用アンテナ20およびノイズ用アンテナ70の仕様のうち、少なくとも1つの条件に基づいて、周波数ノイズ信号(放送用アンテナ端ノイズ信号)Fntを推定する。これにより、放送用アンテナ20で受信される車両ノイズ信号を精度よく推定することができる。
具体的には、ノイズ推定部96は、周波数受信信号Fn2を、ラジオ受信機30d(車両用ノイズキャンセリング装置48d)が搭載された車両10のノイズ伝達関数HV1を用いて補正することで、周波数ノイズ信号Fntを推定する。このノイズ伝達関数HV1は、ノイズ用アンテナ70端における車両ノイズ信号が放送用アンテナ20に伝達されるまでの周波数応答特性を示したものであり、予め実験を行うことによって求められたものである。このノイズ伝達関数HV1は、車両10における放送用アンテナ20およびノイズ用アンテナ70の配置位置、車両10の形状、および、放送用アンテナ20およびノイズ用アンテナ70の仕様のうち、少なくとも1つの条件に基づいて決定される。テーブル98は、車種毎にこのノイズ伝達関数HV1を記憶してもよいし、車両用ノイズキャンセリング装置48dが搭載される車両10に応じたノイズ伝達関数HV1のみを記憶してもよい。
詳しく説明すると、ノイズ推定部96は、ラジオ受信機30d(車両用ノイズキャンセリング装置48d)が搭載された車両10の車種に対応したノイズ伝達関数HV1をテーブル98から取得する。そして、ノイズ推定部96は、周波数受信信号Fn2にノイズ伝達関数HV1を乗算することで、周波数ノイズ信号Fntを推定する。つまり、Fnt=Fn2×HV1、の関係式を用いて、周波数ノイズ信号Fntを推定する。ノイズ推定部96は、推定した周波数ノイズ信号(放送用アンテナ端ノイズ信号)Fntをノイズ除去部44に出力する。
ノイズ除去部44は、上記第1の実施の形態で述べたように、周波数解析部36が出力した周波数受信信号Frfから、前記所定の周波数帯域における周波数ノイズ信号Fntを除去(減算)する。ノイズ除去部44は、周波数ノイズ信号Fntを除去した周波数受信信号Frfを出力信号Soutとしてチューナ46に出力する。
このように、第5の実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置48dでは、ノイズ用アンテナ70で実際に受信される前記所定の周波数帯域における車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数受信信号(ノイズ用アンテナ端ノイズ信号)Fn2を得る。そして、この周波数受信信号Fn2から、放送用アンテナ20で受信される車両ノイズ信号を周波数領域で表した周波数ノイズ信号(放送用アンテナ端ノイズ信号)Fntを算出する。これにより、放送用アンテナ20で受信される車両ノイズ信号を精度よく推定することができる。
なお、第1〜第5の実施の形態では、車両10に電流センサ24を設けるようにしたが、上記1〜第3、および第5の実施の形態では、モータ12に供給される交流電流の電流値(実効値)Ipを使用しないので、電流センサ24を設けなくてもよい。
また、上記第4、第5の実施の形態では、FMラジオ放送信号が放送される前記所定の周波数帯域全域(例えば、76MHz〜108MHzの放送帯域全域)における周波数ノイズ信号Fntを推定するようにしたが、放送信号が受信されている周波数帯域における周波数ノイズ信号Fnを推定するようしてもよい。この場合は、車両用ノイズキャンセリング装置48c、48dは、上記第1〜第3の実施の形態で示した空きチャネル検出部40を備える。そして、車両用ノイズキャンセリング装置48c、48dのノイズ推定部80、96は、前記所定の周波数帯域(放送帯域)のうち、空きチャネル検出部40が検出した空きチャネルの周波数帯域以外の周波数帯域、つまり、使用チャネルの周波数帯域のみにおける周波数ノイズ信号Fnを推定する。また、空きチャネル検出部40に代えて、使用チャネルの周波数帯域を検出する使用チャネル検出部を設けてもよい。なお、空きチャネルおよび使用チャネルのうち一方を検出すれば、同時に他方も検出していることになるので、空きチャネル検出部40と使用チャネル検出部とは実質的には機能は同一である。