本発明の一実施形態を図1〜図20を参照して以下に説明する。図1を参照して、本実施形態の動力システム1は、輸送機器の一例としての車両(詳しくはハイブリッド車両)に搭載されたシステムである。この動力システム1は、本発明の電力供給システムの一例である。
この動力システム1は、被動負荷としての駆動輪DWを回転駆動する動力をそれぞれ発生可能な内燃機関2及び電動モータ3と、発電機4と、電動モータ3の電源としての第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6と、電動モータ3、発電機4、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の間の電力伝送を行う電力伝送回路部7、動力システム1の作動制御を行う機能を有する制御装置8とを備える。
内燃機関2は、燃料の燃焼によって発生する動力を、適宜の動力伝達機構を介して駆動輪DWに伝達することで、該駆動輪DWを回転駆動する。図示例の動力システム1における当該動力伝達機構は、内燃機関2が発生する動力を、該内燃機関2の出力軸2aからクラッチ11と複数のギヤ12,13,14,15とを順に経由して駆動輪DWに伝達するように構成されている。クラッチ11は、動力を伝達し得る接続状態と、動力伝達を遮断する遮断状態とに選択的に動作し得る。
電動モータ3は、本発明におけるアクチュエータに相当する。この電動モータ3は、電力の供給を受けた状態での力行運転により発生する動力を、適宜の動力伝達機構を介して駆動輪DWに伝達することで、該駆動輪DWを回転駆動する。図示例の動力システム1における当該動力伝達機構は、電動モータ3が発生する動力を、該電動モータ3の出力軸3aから複数のギヤ16,13,14,15を順に経由して駆動輪DWに伝達するように構成されている。
また、電動モータ3は、力行運転の他、駆動輪DW側から伝達される車両の運動エネルギーにより回生電力を出力する回生運転を行うことも可能である。
補足すると、図1では、1つの駆動輪DWだけを代表的に記載しているが、内燃機関2又は電動モータ3から複数の駆動輪DWへの動力伝達は、図示を省略するディファレンシャルギヤ装置を含む動力伝達機構を介して行われる。
発電機4は、その回転軸4aを内燃機関2の動力により回転駆動することで、発電電力を出力し得る発電機である。該発電機4の回転軸4aは、内燃機関2の出力軸2aと互いに連動して回転するように、適宜の動力伝達機構を介して該出力軸2aに接続されている。図示例の動力システム1における当該動力伝達機構は、出力軸2aと回転軸4aとの間の動力伝達を、例えば2つのギヤ17,18を介して行うように構成されている。
また、本実施形態では、発電機4は、発電機としての機能に加えて、内燃機関2の始動用アクチュエータ(始動用モータ)としての機能を併せ持つ。すなわち、発電機4に電力を供給することによって、該発電機4を電動モータとして動作させ得る。そして、電動モータとしての発電機4の動力が、回転軸4aから内燃機関2の出力軸2aに伝達されることによって、該出力軸2aが回転駆動される。
補足すると、内燃機関2又は電動モータ3と駆動輪DWとの間の動力伝達機構、あるいは、内燃機関2と発電機4との間の動力伝達機構は、図1に例示した構成のもの以外に、種々様々の構成を採用し得る。
これらの動力伝達機構は、例えば、ギヤ以外の動力伝達要素(例えば、プーリ及びベルト、あるいは、スプロケット及びチェーン等)を含んでいてもよく、さらには、変速機を含んでいてもよい。
また、電動モータ3の出力軸3aは、例えばクラッチ11と駆動輪DWとの間の動力伝達機構のいずれかの回転軸と同軸に直結され、もしくは一体に構成されていてもよい。
また、電動モータ3と駆動輪DWとの間の動力伝達機構、あるいは、内燃機関2と発電機4との間の動力伝達機構はクラッチを含んでいてもよい。
また、動力システム1は、内燃機関2の始動用アクチュエータを、発電機4とは別に備えていてもよい。
第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6は、車両に備えられた充電装置(図示省略)を介して外部電源から充電可能な蓄電装置であると共に、それぞれの特性が異なる蓄電装置である。
具体的には、第1蓄電装置5は、第2蓄電装置6よりもエネルギー密度が高い蓄電装置である。該エネルギー密度は、単位重量当たり又は単位体積当たりに貯蔵し得る電気エネルギー量である。かかる第1蓄電装置5は、例えば、リチウムイオン電池等により構成され得る。
また、第2蓄電装置6は、第1蓄電装置5よりも出力密度が高い蓄電装置である。該出力密度は、単位重量当たり、又は単位体積当たりに出力可能な電気量(単位時間当たりの電気エネルギー量又は単位時間当たりの電荷量)である。かかる第2蓄電装置6は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、キャパシタ等により構成され得る。
エネルギー密度が相対的に高い第1蓄電装置5は、第2蓄電装置6に比して、多くの電気エネルギーを貯蔵し得る。そして、第1蓄電装置5は、その出力の変動が頻繁に生じるような形態で放電を行うよりも、該出力の変動が生じ難い形態で定常的な放電を行う方が劣化の進行が抑制されるという特性を有する。
さらに、第1蓄電装置5は、第2蓄電装置6に比して、充電(特に、高レートでの充電)に対する劣化耐性が低い(充電に起因する劣化が進行しやすい)。
また、出力密度が相対的に高い第2蓄電装置6は、第1蓄電装置5に比して、内部抵抗(インピーダンス)が小さいために、瞬時的に大きな電力を出力することが可能である。そして、第2蓄電装置6は、その充電率が高容量側又は低容量側に偏った状態で放電又は充電を行うよりも、該充電率が中程度の領域に維持されるようにして放電又は充電を行う方が劣化の進行が抑制されるという特性を有する。より詳しく言えば、第2蓄電装置6は、その充電率が中程度の領域ら、高容量側又は低容量側に増加又は減少するほど、劣化が進行しやすくなるという特性を有する。
なお、各蓄電装置5,6の充電率は、満充電状態での容量に対する残容量の比率である。以降、該充電率をSOC(State Of Charge)ということがある。また、第1蓄電装置5のSOCを第1SOC、第2蓄電装置6のSOCを第2SOCということがある。
電力伝送回路部7は、本実施形態では、電動モータ3に接続されたインバータ21と、発電機4に接続されたインバータ22と、第1蓄電装置5に接続された電圧変換器23と、第2蓄電装置6に接続された電圧変換器24とを含む。
インバータ21,22は、それぞれに備えられたスイッチング素子をデューティ信号により制御することによって、直流電力及び交流電力の一方から他方への電力変換を行う公知の回路である。
電動モータ3側のインバータ21は、電動モータ3の力行運転時には、電圧変換器23,24側から入力される直流電力を交流電力に変換して、電動モータ3に出力するように制御することが可能であると共に、電動モータ3の回生運転時には、電動モータ3から入力される交流電力(回生電力)を直流電力に変換して、電圧変換器23,24側に出力するように制御することが可能である。
また、発電機4側のインバータ22は、発電機4の発電運転時には、該発電機4から入力される交流電力(発電電力)を直流電力に変換して、電圧変換器23,24側に出力するように制御することが可能であると共に、発電機4を内燃機関2の始動用アクチュエータとして運転させる時には、電圧変換器23,24側から入力される直流電力を交流電力に変換して、発電機4に出力するように制御することが可能である。
電圧変換器23,24は、それぞれに備えられたスイッチング素子をデューティ信号により制御することによって、直流電力の電圧変換(昇圧又は降圧)を行う公知の回路(スイッチング方式のDC/DCコンバータ)である。各電圧変換器23,24は、電圧の変換率(昇圧率又は降圧率)を可変的に制御し得ると共に、双方向の電力伝送(各蓄電装置5,6の放電時の電力伝送及び充電時の電力伝送)を行うことが可能である。
制御装置8は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成されている。なお、制御装置8は、相互に通信可能な複数の電子回路ユニットにより構成されていてもよい。
この制御装置8は、実装されるハードウェア構成又は実装されるプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、内燃機関2の運転制御を行う内燃機関運転制御部31と、電力伝送回路部7を制御する(ひいては、電動モータ3及び発電機4の運転制御を行う)電力伝送制御部32と、クラッチ11の動作状態の切替え制御を行うクラッチ制御部33と、車両のブレーキ装置(図示省略)を制御するブレーキ制御部34を含む。
そして、制御装置8には、上記の機能を実現するために必要な情報として、各種のセンシングデータが入力される。該センシングデータは、例えば、車両のアクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、車速、内燃機関2の出力軸2aの回転速度、電動モータ3の出力軸3aの回転速度、発電機4の回転軸4aの回転速度、第1SOC、及び第2SOCのそれぞれの検出値を示すデータを含む。
なお、制御装置8は、第1SOC及び第2SOCを検出(推定)するSOC検出器としての機能を含み得る。この場合には、制御装置8には、第1SOC及び第2SOCのそれぞれの検出値を示すセンシングデータの代わりに、第1SOC及び第2SOCを推定するためのセンシングデータ(例えば、各蓄電装置5,6毎の電圧、電流、温度等の検出値を示すデータ)が入力される。
以降、制御装置8の制御処理を具体的に説明する。
(制御装置8の制御処理の概要)
まず、制御装置8が実行する制御処理の概要を説明しておく。制御装置8が実行する制御処理は、CDモード(CD:Charge Depleting)の制御処理と、CSモード(CS:Charge Sustaining)の制御処理との2種類に大別される。該CDモード及びCSモードは、車両の走行時における動力システム1の動作態様の種別を表している。
本実施形態におけるCDモードは、駆動輪DWを駆動する動力(車両の走行用の動力)として、内燃機関2及び電動モータ3のうちの電動モータ3の動力だけを使用可能なモードである。
本実施形態におけるCDモードでは、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のうちの第1蓄電装置5の蓄電エネルギーを電動モータ3の主たる電源エネルギーとして使用して、電動モータ3の力行運転が行われる。
補足すると、本実施形態におけるCDモードでは、内燃機関2は運転停止状態に維持される(内燃機関2の運転が禁止される)。
一方、本実施形態におけるCSモードは、駆動輪DWを駆動する動力として、内燃機関2及び電動モータ3のそれぞれの動力を使用可能なモードである。より詳しく言えば、CSモードは、内燃機関2の動力を、駆動輪DWを駆動するための主たる動力として使用し、電動モータ3の動力を、駆動輪DWを駆動するための補助的な動力として使用可能なモードである。
本実施形態におけるCSモードは、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のうちの第2蓄電装置6の電力を、電動モータ3の力行運転時の主たる電源エネルギーとして使用すると共に、該第2蓄電装置6の電力を適宜、第1蓄電装置5に充電(移送)することで、該第1蓄電装置5のSOC(第1SOC)を徐々に回復させる第1CSモードと、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のうちの第1蓄電装置5の電力を、電動モータ3の力行運転時の主たる電源エネルギーとして使用すると共に、発電機4の発電電力を第2蓄電装置6に充電することで、該第2蓄電装置6のSOC(第2SOC)を回復させる第2CSモードとに分類される。
そして、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の全体の充放電の収支を適切に図りつつ、第1CSモードでの制御処理と、第2CSモードでの制御処理とが交互に実行される。さらに、第1CSモードでの制御処理と第2CSモードでの制御処理との繰り返しによって、あるいは、外部の電力系統を用いたプラグイン充電によって、第1蓄電装置5のSOCがある程度回復すると、制御処理のモードがCSモードからCDモードに復帰される。
ここで、本実施形態において、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの蓄電エネルギーをどのように使用するかのパターンを図2を参照して説明しておく。
本実施形態では、図2の左側の棒グラフで示すように、第1蓄電装置5の満充電容量(100%のSOC)のうちのB1a[%]以下の範囲の容量(蓄電エネルギー)が、電動モータ3への給電に使用し得る容量として割り付けられている。B1a[%]は、第1SOCの検出誤差、あるいは、充電制御誤差等を考慮して、100%よりも若干小さい充電率に設定されている。
そして、B1a[%]〜B1b[%]の範囲の容量が、前記CDモードでの電動モータ3への給電用の容量として割り付けられ、B1b[%]以下の範囲が、前記CSモードにて補助的に電動モータ3への給電に使用し得る容量を含む範囲として割り付けられている。B1b[%]は0%に近いSOCに設定されている。
なお、B1b[%]以下の範囲は、CSモードにて電動モータ3への給電に使用し得る容量の他に、第1SOCの検出誤差等を考慮したマージンを含んでいる。
このように、第1蓄電装置5の満充電容量のうちの大部分の範囲(B1a[%]〜B1b[%]の範囲)が、CDモードでの電動モータ3への給電用の容量の範囲として割り付けられている。
また、本実施形態では、図2の右側の棒グラフで示すように、第2蓄電装置6の満充電容量(100%のSOC)のうちのB2a[%]〜B2b[%]の範囲の容量が、CDモードにて電動モータ3への給電に使用し得る専用的な容量として割り付けられ、B2b[%]〜B2c[%]の範囲の容量が、CSモードにて電動モータ3への給電に使用し得る容量として割り付けられている。
なお、本実施形態では、B2b[%]〜B2c[%]の範囲の容量は、その一部をCDモードでも使用可能である。ただし、B2b[%]〜B2c[%]の範囲の容量は、CDモードで一時的に使用可能な容量であり、電動モータ3への給電に使用した後、基本的には、その使用分が第1蓄電装置5から補充され得る容量である。
ここで、第2蓄電装置6は、その劣化の進行を極力抑制する上では、第2SOCが中程度近辺のSOCとなっている状態で放電又は充電を行うことが好ましい。このため、B2b[%]は、中程度のSOCに設定され、B2a[%]は、100%に近づき過ぎない範囲でB2b[%]よりも大きい値に設定され、B2c[%]は0%に近づき過ぎない範囲でB2b[%]よりも小さい値に設定されている。
さらに、B2c[%]以下の範囲は、内燃機関2の始動用の電力(始動用アクチュエータとしての発電機4への給電に使用し得る電力)を含む範囲として割り付けられている。
なお、本実施形態では、内燃機関2の始動時における発電機4への給電は、第2蓄電装置6から行われ、第1蓄電装置5の電力は使用されない。このため、第1蓄電装置5は、内燃機関2の始動用の電力を確保する必要がない。
その結果、CDモードでの電動モータ3への給電用の容量の範囲として割り付けられている第1蓄電装置5のSOCの範囲をより広くできる。すなわち、すなわち、内燃機関2の燃料消費が生じないか、もしくは抑制されるCDモードにおいて、車両の航続可能距離が増大すると共に、動力システム1の環境性能が向上する。また、内燃機関2の始動時に要求される始動用アクチュエータ(本実施形態では、発電機4)への瞬間的な給電を第2蓄電装置6が担うため、第1蓄電装置5の劣化の進行を好適に抑制できる。
図2に示す如く、CDモードにおいては、電動モータ3への給電に使用し得る第1蓄電装置5のSOCの範囲(B1a[%]〜B1b[%])は、電動モータ3への給電に使用し得る第2蓄電装置6のSOCの範囲(B2a[%]〜B2b[%])に比して広い範囲となっている。
このため、CDモードでは、第1蓄電装置5の電力を主に使用して電動モータ3の力行運転を行うことができる。また、第2蓄電装置6の電力を必要に応じて補助的に使用して、電動モータ3の力行運転を行うこともできる。
特に、第1蓄電装置5は、内燃機関2の始動用の電力を確保しておく必要が無いため、CDモードにおいて、電動モータ3への給電に使用し得るSOCの範囲(B1a[%]〜B1b[%])を極力広くすることが可能となっている。
この結果、電動モータ3の動力だけを使用して車両の走行を行うCDモードにおいて、電動モータ3への給電を持続し得る期間、ひいては、内燃機関2の燃料消費が生じないか、もしくは抑制されるCDモードでの車両の航続可能距離を極力長くすることができると共に、車両の環境性能を向上することができる。
一方、CSモードにおいては、図2に示す如く、電動モータ3への給電に使用し得る第2蓄電装置6のSOCの範囲(B2b[%]〜B2c[%])は、電動モータ3への給電に使用し得る第1蓄電装置5のSOCの範囲(B1b[%]以下の範囲のうちの一部の範囲)に比して広い範囲となっている。
このため、CSモードでは、駆動輪DWの駆動(車両の走行)のために、内燃機関2の動力を補助する動力を、主に、高出力型の第2蓄電装置6から電動モータ3への給電によってすばやく(高い応答性)で発生させることができる。
従って、動力システム1が駆動輪DWに対して高い駆動力を出力する際には、第2蓄電装置6からの給電によって電動モータ3が補助的な動力を出力することにより、内燃機関2の過剰な燃料消費の抑制のみならず、内燃機関2の排気量の縮小も実現できる。
さらに、第2蓄電装置6は、その出力密度が第1蓄電装置5よりも高いため、高い応答性が要求される充電もしくは放電に対する耐性が第1蓄電装置5よりも優れる。従って、第1蓄電装置5の劣化をより一層抑制できる。
(メインルーチン処理)
以上を踏まえて、制御装置8の制御処理を詳細に説明する。制御装置8は、車両の起動状態において、図3のフローチャートに示すメインルーチン処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。
STEP1において、制御装置8は、現在の制御処理のモードと、第1蓄電装置5のSOC(第1SOC)の検出値と、第2蓄電装置6のSOC(第2SOC)の検出値とを取得する。
なお、車両の起動前の運転停止中に、第1蓄電装置5が満充電状態まで(もしくは、後述のCS→CD切替閾値B1_mc2以上のSOCまで)充電された場合には、車両の起動後の当初の制御処理のモードはCDモードである。また、車両の起動前の運転停止中に第1蓄電装置5の充電が行われていない場合には、車両の起動後の当初の制御処理のモードは、車両の前回の運転の終了時のモードと同じモードである。
次いで、STEP2において、制御装置8は、現在の制御処理のモードがCDモードであるか否かを判断する。このSTEP2の判断結果が肯定的である場合には、制御装置8は、さらに、STEP3において、第1SOCの検出値が所定のモード切替閾値B1_mc1以上であるか否かを判断する。このモード切替閾値B1_mc1は、CDモードからCSモードへの切替えを行うか否かを規定する閾値であり、以降、CD→CS切替閾値B1_mc1という。該CD→CS切替閾値B1_mc1の設定値は、本実施形態では、図2に示したB1b[%]である。
STEP3の判断結果が肯定的である場合には、制御装置8は、STEP4において、制御処理のモードとしてCDモードを選定し、該CDモードの制御処理(詳細は後述する)を実行する。この場合、CDモードの制御処理が継続して実行されることとなる。
STEP3の判断結果が否定的である場合には、制御装置8は、次に、STEP5において、第2SOCの検出値がモード切替閾値B2_mc1以上であるか否かを判断する。このモード切替閾値B2_mc1は、第1CSモードから第2CSモードへの切替えを行うか否かを規定する閾値であり、以降、CS1→CS2切替閾値B2_mc1という。該CS1→CS2切替閾値B2_mc1の設定値は、本実施形態では、図2に示したB2c[%]である。
STEP5の判断結果が肯定的である場合には、制御装置8は、STEP6において、制御処理のモードとして第1CSモードを選定し、該第1CSモードの制御処理(詳細は後述する)を実行する。これにより、制御処理のモードがCDモードから第1CSモードに切り替えられる。
STEP5の判断結果が否定的である場合には、制御装置8は、STEP7において発電機4の発電運転を行わせる発電制御処理を実行する。
この発電制御処理では、制御装置8は、内燃機関運転制御部31及び電力伝送制御部32に対して発電機4の発電運転を行うべき旨を指示する。
このとき、内燃機関運転制御部31は、内燃機関2から発電機4を駆動するための動力を付加した動力を出力させるように該内燃機関2を制御する。また、電力伝送制御部32は、内燃機関2の動力により発電機4が発生する発電電力を第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のうちの第2蓄電装置6に優先的に充電するように電力伝送回路部7を制御する。具体的には、第1SOCの検出値が所定値(例えば後述する閾値B1_th1(図11を参照))よりも小さい場合を除いて、発電電力を第2蓄電装置6だけに充電するように電力伝送回路部7の電圧変換器24及びインバータ22を制御する。
また、第1SOCの検出値が上記所定値よりも小さい場合で、且つ、電動モータ3への給電の停止中である場合には、発電電力を第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の両方に充電するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ22を制御する。なお、この場合、第1蓄電装置5への発電電力の充電量は、該第1蓄電装置5の劣化の進化を抑制するために、低レート(低速)での充電量に制限される。
これにより、発電電力が第2蓄電装置6に優先的に充電される。また、第1蓄電装置5の充電率が低い場合に、発電電力の一部が、適宜、低レートで第1蓄電装置5に充電される。
ただし、STEP5の判断結果が否定的となったときに、内燃機関2の運転が行われているとは限らず、内燃機関2の運転が未だ開始されていない場合もある。この場合には、制御装置8は、内燃機関2を始動した後に、発電機4の発電運転を行うべき旨を内燃機関運転制御部31及び電力伝送制御部32に対して指示する。
この場合、内燃機関2の始動処理では、電力伝送回路部7は、第2蓄電装置6から発電機4に給電する(ひいては発電機4を始動用モータとして作動させる)ように、第2蓄電装置6側の電圧変換器24と、発電機4側のインバータ22とを制御する。これにより、内燃機関2の出力軸2aが、始動用アクチュエータ(始動用モータ)としての発電機4の動力により回転駆動される。このように、本実施形態では、内燃機関2の始動時における発電機4(始動用モータ)への給電は、第2蓄電装置6から行われる。
従って、内燃機関2の始動時に要求される始動用アクチュエータ(発電機4)への瞬間的な給電を第2蓄電装置6が担うため、第1蓄電装置5の劣化の進行を好適に抑制できる。
そして、内燃機関運転制御部31は、内燃機関2の出力軸2aの回転に同期して該内燃機関2に燃料を供給し、該内燃機関2の燃焼運転を開始させる。その後、内燃機関運転制御部31及び電力伝送制御部32が発電機4の発電運転を行うための前記した制御処理を実行することで、該発電機4の発電運転と、第2蓄電装置6への発電電力の充電とが開始される。
上記STEP7の発電制御処理に続いて、制御装置8は、STEP8において、制御処理のモードとして第2CSモードを選定し、該第2CSモードの制御処理(詳細は後述する)を実行する。これにより、制御処理のモードがCDモードから第2CSモードに切り替えられる。
補足すると、第2CSモードにおいて、電動モータ3の回生運転中は、発電機4の発電運転による第2蓄電装置6の充電は中断される。この場合、電力伝送回路部7のインバータ22が通電遮断状態に制御される。。ただし、電動モータ3の回生電力を第2蓄電装置6に充電することと、発電機4の発電電力を第2蓄電装置6に充電することとを並行して行ってもよい。
また、前記STEP2の判断結果が否定的である場合には、制御装置8は、次にSTEP9において、現在の制御処理のモードが第1CDモードであるか否かを判断する。
このSTEP9の判断結果が肯定的である場合には、制御装置8はさらに、STEP10おいて、第1SOCの検出値が所定のモード切替閾値B1_mc2以上であるか否かを判断する。このモード切替閾値B1_mc2は、CSモードからCDモードへの切替えを行うか否かを規定する閾値であり、以降、CS→CD切替閾値B1_mc2という。該CS→CD切替閾値B1_mc2の設定値は、本実施形態では、第1CSモード及び第2CSモードの相互間の切替えに、ヒステリシスをもたせるために、前記STEP3におけるモード切替閾値B1_mc1よりも高い値であり、例えば、図2に示したB1b[%]とB1a[%]との間の値である。
STEP10の判断結果が肯定的である場合には、制御装置8は、前記STEP4におおいて、制御処理のモードとしてCDモードを選定し、該CDモードの制御処理を実行する。これにより、制御処理のモードがCSモード(第1CSモード)からCDモードに切替えられる。
STEP10の判断結果が否定的である場合には、制御装置8は、前記したSTEP5からの処理を実行する。この場合、STEP5の判断結果が肯定的である場合には、第1CSモードの制御処理が継続的に実行されることとなる。また、STEP5の判断結果が否定的である場合には、制御処理のモードが第1CSモードから第2CSモードに切り替えられる。
また、前記STEP9の判断結果が否定的である場合には、制御装置8はさらに、STEP11において、第2SOCの検出値が所定のモード切替閾値B2_mc2以上であるか否かを判断する。このモード切替閾値B2_mc2は、第2CSモードから第1CSモードへの切替えを行うか否かを規定する閾値であり、以降、CS2→CS1切替閾値B2_mc2という。該CS2→CS1切替閾値B2_mc2の設定値は、本実施形態では、図2に示したB2b[%](>CS1→CS2切替閾値B2_mc1)である。
STEP11の判断結果が肯定的である場合には、制御装置8は、前記STEP6におおいて、制御処理のモードとして第1CSモードを選定し、該第1CSモードの制御処理を実行する。これにより、制御処理のモードが第2CSモードから第1CSモードに切替えられる。
STEP11の判断結果が否定的である場合には、制御装置8は、前記したSTEP7からの処理を実行する。この場合、STEP7,8の処理より、発電機4の発電運転が継続的に実行されると共に、第2CSモードでの制御処理が継続的に実行されることとなる。
以上の如く、CDモード及びCSモードの相互間の切替えは、第1SOCに基づいて行われ、第1CSモード及び第2CSモードの相互間の切替えは、第2SOCに基づいて行われる。
(CDモードの制御処理)
次に、前記STEP4でのCDモードの制御処理を詳細に説明する。
制御装置8は、車両のアクセルペダルの操作量の検出値、ブレーキペダルの操作量の検出値、及び車速の検出値等に応じて車両全体の要求駆動力(要求推進力)又は要求制動力を決定すると共に、内燃機関2、電動モータ3、発電機4、クラッチ11及びブレーキ装置のそれぞれの目標動作状態を決定する。
CDモードにおいては、制御装置8は、内燃機関2及び発電機4を運転停止状態に維持すると共に、クラッチ11を遮断状態に維持する。
また、制御装置8は、車両全体の要求駆動力がゼロでない状況(以降、この状況を車両の駆動要求状態という)では、その要求駆動力を、電動モータ3の動力により実現するように、電動モータ3の要求出力DM_dmdを決定する。
そして、詳細は後述するが、制御装置8は、その要求出力DM_dmdと、第2蓄電装置6のSOC(第2SOC)の検出値とに応じて、図4に示す如くあらかじめ作成されたマップに従って、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の一方又は両方から電動モータ3に給電するように、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23,24とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。
なお、電動モータ3の要求出力DM_dmdとしては、車両の要求駆動力を実現し得る動力(出力トルク)を電動モータ3から出力させるために、該電動モータ3に単位時間当たりに供給すべき電気エネルギー量の要求値(換言すれば、電力要求値)、あるいは、電動モータ3から出力させるべき駆動力もしくは単位時間当たりの機械的な出力エネルギー量の要求値、あるいは、電動モータ3に通電すべき電流の要求値等を使用することができる。
本実施形態では、電動モータ3の要求出力DM_dmdの一例として、電動モータ3に単位時間当たりに供給すべき電気エネルギー量の要求値が使用される。
また、制御装置8は、車両全体の要求制動力がゼロでない状況(以降、この状況を車両の制動要求状態という)では、その要求制動力に対する電動モータ3及びブレーキ装置のそれぞれの負担分を決定する。この場合、制御装置8は、基本的には、要求制動力のうちの電動モータ3の負担分が極力大きくなるように、要求制動力の大きさ、及び第2SOCの検出値等に基づいて、電動モータ3及びブレーキ装置のそれぞれの負担分を決定する。
そして、制御装置8は、要求制動力のうちのブレーキ装置の負担分に応じて該ブレーキ装置を制御することをブレーキ制御部34により実行する。
また、制御装置8は、要求制動力のうちの電動モータ3の負担分を、該電動モータ3の回生運転により発生する回生制動力により実現するように、該電動モータ3の要求回生量G_dmdを決定する。
そして、制御装置8は、その要求回生量G_dmdと、第2蓄電装置6のSOC(第2SOC)の検出値とに応じて、図9に示す如くあらかじめ作成されたマップに従って、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の一方又は両方に、電動モータ3から出力される回生電力を充電するように、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23,24とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。この場合、本実施形態では、CDモードにおける回生電力の主たる充電対象の蓄電装置は、第2蓄電装置6である。
なお、電動モータ3の要求回生量G_dmdとしては、例えば、車両全体の要求制動力のうちの電動モータ3の負担分として、該電動モータ3が回生運転により発生する回生制動力の要求値、あるいは、電動モータ3が回生運転により発生する回生電力(単位時間当たりの発電エネルギー量)、あるいは、電動モータ3に通電すべき電流の要求値等を使用することができる。
本実施形態では、電動モータ3の要求回生量G_dmdの一例として、回生電力の要求値が使用される。
(CDモードでの力行運転時の制御処理)
CDモードにおける電動モータ3の力行運転時に電力伝送制御部32が実行する制御処理を、図4〜図8を参照して以下に詳説する。
まず、図4は、電動モータ3の要求出力DM_dmdと第2SOCとに応じて該電動モータ3に給電すべき電気量(給電量)に対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの出力の分担形態を表すマップを示している。
図4の斜線領域は、電動モータ3への給電量の全体又は一部を第1蓄電装置5が負担する領域、点描領域は、該給電量の全体又は一部を第2蓄電装置6が負担する領域を表している。
より詳しくは、下段側の斜線領域は、第1蓄電装置5だけが、電動モータ3への給電量の全体を負担する領域を表し、点描領域又は上段側の斜線領域は、電動モータ3への給電量を、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の両方が負担する領域を表している。
なお、図4のマップにおけるDM_max1は、CDモードでの要求出力DM_dmdの最大値である。この最大値DM_max1は、第2SOCが所定値B2e以上のSOCである場合は、一定値であり、第2SOCがB2eよりも小さい場合には、第2SOCの減少に伴い小さくなる。
CDモードにおける電動モータ3の力行運転時の制御処理では、図4に示すように、前記した第2蓄電装置6の使用範囲内(図2に示したB2a〜B2cの範囲内)において、第2SOCの値が、SOC≧B2_th1となる高SOC領域(高残容量領域)に属する場合と、B2_th1>SOC≧B2_th2となる中SOC領域(中残容量領域)に属する場合と、B2_th2>SOCとなる低SOC領域(低残容量領域)に属する場合とで、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの出力の分担形態が大別されている。
ここで、図4のマップにおいて、第2SOCを区分する上記閾値B2_th1,B2_th2は、CDモード用として、あらかじめ定められた閾値(固定値)である。これらの閾値B2_th1,B2_th2は、該閾値B2_th1,B2_th2により範囲が規定される中SOC領域が、第2蓄電装置6の劣化の進行を極力抑制する上で、実際の第2SOCの値が属することが好ましいSOC領域となるように、あらかじめ実験等に基づき設定されている。従って、中SOC領域は、実際の第2SOCの値を極力、該中SOC領域に維持するようにして第2蓄電装置6の充放電を行った場合に、第2蓄電装置6の劣化の進行を好適に抑制し得る領域である。
本実施形態では、CDモードでの制御処理は、第2蓄電装置6の劣化の進行を抑制するために、第2SOCを、極力、中SOC領域に維持するように行われる。
なお、高SOC領域の下限値となる閾値B2_th1は、本実施形態では、図2に示したB2b[%]に一致する。従って、第2蓄電装置6の容量のうち、高SOC領域の範囲内の容量(蓄電エネルギー)は、CDモードで専用的に使用し得る容量である。
CDモードにおける電動モータ3の力行運転時の電力伝送制御部32の制御処理は、図4に示すマップを用いて、図5〜図7のフローチャートに示す如く所定の制御処理周期で逐次実行される。
STEP21において、電力伝送制御部32は、要求出力DM_dmdと第2SOCの検出値とを取得する。そして、電力伝送制御部32は、STEP21で取得した第2SOCの検出値が、前記中SOC領域の上限値である前記閾値B2_th1以上であるか否かをSTEP22で判断する。
このSTEP22の判断結果が肯定的となる状況は、第2SOCの検出値が高SOC領域に属する状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、次に、STEP23において、要求出力DM_dmdが所定の閾値DM_th1以下であるか否かを判断する。
上記閾値DM_th1は、本実施形態では、中SOC領域及び高SOC領域の両方のSOC領域において使用される閾値である。この閾値DM_th1は、図4に示す如く、中SOC領域内の所定値B2d以上の値であるときには、あらかじめ定められた所定の一定値(固定値)である。その一定値は、それに対応する給電量が、第1蓄電装置5から出力する給電量の許容上限値に比して、十分に小さい値である。
また、閾値DM_th1は、中SOC領域のうちのB2dよりも小さい領域では、該閾値DM_th1に対応する給電量が、後述する基本給電量P1_baseに一致するように(結果的に、第2SOCに応じて変化するように)設定される。この場合、第2SOCが小さいほど、閾値DM_th1が大きくなる。
補足すると、要求出力DM_dmdの任意の閾値に対して、該閾値に対応する給電量というのは、要求出力DM_dmdが該閾値に一致する場合に、電動モータ3に給電すべき電気量を意味する。
STEP23の判断結果が肯定的となる状況は、図4の高SOC領域における下段側の斜線領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、STEP24において、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6からの放電を遮断するように制御される。
ここで、第1蓄電装置5の出力P1は、詳しくは、第1蓄電装置5から出力される電気量(放電量)であり、第2蓄電装置6の出力P2(後述する)は、詳しくは、第2蓄電装置6から出力される電気量(放電量)である。また、要求出力DM_dmdに対応する給電量というのは、要求出力DM_dmdを実現するために電動モータ3に給電すべき電気量を意味する。
STEP23の判断結果が否定的である場合には、電力伝送制御部32は、次に、STEP25において、要求出力DM_dmdが所定の閾値DM_th2以下であるか否かを判断する。
上記閾値DM_th2は、本実施形態では、前記STEP23における閾値DM_th1と同様に、中SOC領域及び高SOC領域の両方のSOC領域において使用される閾値である。この閾値DM_th2は、閾値DM_th1よりもあらかじめ定めた所定量だけ大きい閾値に設定される。
この場合、閾値DM_th2は、例えば、閾値DM_th1との差(=DM_th2−DM_th1)に相当する給電量が、CDモードにおける第2蓄電装置6の給電量の許容上限値又はそれに近い給電量となるように設定され得る。
STEP25の判断結果が肯定的となる状況は、図4の高SOC領域における点描領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、STEP26において、第1蓄電装置5の出力P1が、閾値DM_th1に対応する給電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の出力P2が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第1蓄電装置5の出力P1を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
一方、前記STEP25の判断結果が否定的となる状況は、図4の高SOC領域における上段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP27において、第2蓄電装置6の出力P2が、閾値DM_th1,DM_th2の差(=DM_th2−DM_th1)に対応する給電量に一致し、且つ、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置6の出力P2を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
次に、前記STEP22の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部32は、さらに、第2SOCの検出値が、前記中SOC領域の下限値である前記閾値B2_th2以上であるか否かをSTEP28で判断する。
このSTEP28の判断結果が肯定的となる状況は、第2SOCの検出値が中SOC領域に属する状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、次に、図6に示すSTEP29において、第1蓄電装置5の出力P1の基本値である基本給電量P1_baseを第2SOCの検出値に応じて決定する。
ここで、上記基本給電量P1_baseは、第2SOCの検出値が中SOC領域又は低SOC領域に属する状態で、電動モータ3の要求出力DM_dmdによらずに、第1蓄電装置5から出力させる下限の電気量である。すなわち、本実施形態では、第2SOCの検出値が中SOC領域又は低SOC領域に属する状態では、要求出力DM_dmdによらずに、第1蓄電装置5から、基本給電量P1_base、又はそれよりも大きい給電量が出力されるように電力伝送回路部7が制御される。
上記基本給電量P1_baseは、例えば図4に破線で示すパターンで第2SOCに応じて変化するように、該第2SOCの検出値から、あらかじめ作成されたマップ又は演算式に基づいて決定される。この場合、基本給電量P1_baseは、中SOC領域では、第2SOCの減少に伴いゼロから最大値P1bまで連続的に増加し、低SOC領域では、最大値P1bで一定に維持されるように決定される。なお、最大値P1bは、第2SOCが、中SOC領域の前記所定値B2d以上である場合の前記閾値DM_th1に対応する給電量よりも大きい値である。
上記の如く基本給電量P1_baseを決定した後、電力伝送制御部32は、次に、要求出力DM_dmdに対応する給電量が上記基本給電量P1_baseよりも小さいか否かをSTEP30で判断する。
STEP30の判断結果が肯定的となる状況は、図4の中SOC領域の下段側の斜線領域のうちの破線の下側領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP31において、第1蓄電装置5の出力P1が、基本給電量P1_baseに一致し、第2蓄電装置6の入力Pc2、すなわち充電量が、基本給電量P1_baseから要求出力DM_dmdに対応する給電量を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
STEP30の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部32は、さらに、要求出力DM_dmdが前記閾値DM_th1以下であるか否かをSTEP32で判断する。
このSTEP32の判断結果が肯定的となる状況は、図4の中SOC領域の下段側の斜線領域のうち、破線の下側領域を除いた領域(詳しくは、破線上と、該破線の上側の領域とを合わせた領域)の状況である。
この状況では、電力伝送制御部32は、STEP33において、前記STEP24と同様に、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6からの放電を遮断するように制御される。
STEP32の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部32は、さらに、要求出力DM_dmdが前記閾値DM_th2以下であるか否かをSTEP34で判断する。
このSTEP34の判断結果が肯定的となる状況は、図4の中SOC領域の点描領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP35において、前記STEP26と同様に、第1蓄電装置5の出力P1が、閾値DM_th1に対応する給電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の出力P2が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第1蓄電装置5の出力P1を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
一方、STEP34の判断結果が否定的となる状況は、図4の中SOC領域の上段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP36において、前記STEP27と同様に、第2蓄電装置6の出力P2が、閾値DM_th1,DM_th2の差(=DM_th2−DM_th1)に対応する給電量に一致し、且つ、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置6の出力P2を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
次に、前記STEP28の判断結果が否定的となる状況は、第2SOCの検出値が低SOC領域に属する状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、次に、図7に示すSTEP37において、前記STEP29と同じ処理により基本給電量P1_baseを決定する。さらに電力伝送制御部32は、要求出力DM_dmdに対応する給電量が上記基本給電量P1_baseよりも小さいか否かをSTEP38で判断する。
STEP38の判断結果が肯定的となる状況は、図4の低SOC領域の下段側の斜線領域のうちの破線の下側領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP39において、前記STEP31と同様に、第1蓄電装置5の出力P1が、基本給電量P1_baseに一致し、第2蓄電装置6の入力Pc2、すなわち充電量が、基本給電量P1_baseから要求出力DM_dmdに対応する給電量を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
STEP38の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部32は、さらに、要求出力DM_dmdが所定の閾値DM_th3以下であるか否かをSTEP40で判断する。
このSTEP40の判断結果が肯定的となる状況は、図4の低SOC領域の斜線領域のうち、破線の下側領域を除いた領域(詳しくは、破線上と、該破線の上側の領域とを合わせた領域)の状況である。
この状況では、電力伝送制御部32は、STEP41において、前記STEP24,33と同様に、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6からの放電を遮断するように制御される。
一方、STEP40の判断結果が否定的となる状況は、図4の低SOC領域の点描領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP42において、第1蓄電装置5の出力P1が、閾値DM_th3に対応する給電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の出力P2が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第1蓄電装置5の出力P1を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
CDモードでの電動モータ3の力行運転時の制御処理は、以上の如く実行される。この制御処理によれば、第2SOCの検出値が高SOC領域に属する場合には、要求出力DM_dmdが閾値DM_th2以下となる範囲(比較的常用性が高い範囲)では、要求出力DM_dmdが比較的小さな閾値DM_th1以下となる場合を除いて、第2蓄電装置6から電動モータ3に給電される。また、高SOC領域では、第2蓄電装置6が第1蓄電装置5により充電されることがない。
このため、第2SOCを、第2蓄電装置6の劣化の進行が好適に抑制される中SOC領域に近づけていくようにすることができる。
また、第2SOCの検出値が中SOC領域又は低SOC領域に属する場合には、要求出力DM_dmdに対応する給電量が基本給電量P1_base以下である場合において、第1蓄電装置5の出力P1は、第2SOCの検出値に応じて設定された基本給電量P1_baseに保持される。
そして、要求出力DM_dmdに対応する給電量が、基本給電量P1_baseよりも小さい場合には、基本給電量P1_baseのうちの要求出力DM_dmdに対応する給電量が第1蓄電装置5だけから電動モータ3に給電されると同時に、基本給電量P1_baseから要求出力DM_dmdに対応する給電量を差し引いた給電量が第2蓄電装置6に充電される。
さらに、第2SOCが低下していくに伴い、第1蓄電装置5から第2蓄電装置6への充電が行われることとなる要求出力DM_dmdの範囲が拡大すると共に、第2蓄電装置6の充電量が増加しやすくなる。
この結果、第2SOCが、中SOC領域又は低SOC領域に属する場合には、第2蓄電装置6から電動モータ3への給電が行われても、その後、基本的には、第2蓄電装置6は、適宜、第1蓄電装置5からの充電によって電力が補充され得ることとなる。そのため、第2SOCを、中SOC領域に極力保たれるようにすることができる。ひいては、第2蓄電装置6の劣化の進行を極力抑制することができる。また、第2蓄電装置6の容量のうち、後述するCSモードでの使用分を極力保存しておくことができる。
また、第2蓄電装置6の充電時に、第1蓄電装置5から出力させる基本給電量P1_baseは、要求出力DM_dmdによらずに、第2SOCに応じて設定される。このため、第2蓄電装置6の出力P2又は入力Pc2は、要求出力DM_dmdの変動に追従して変動する一方、第1蓄電装置5の出力P1の変動は、要求出力DM_dmdの変動に対して低感度なものとなる。
特に、低SOC領域における基本給電量P1_baseは、一定値(=P1b)である。このため、第1蓄電装置5の出力P1は、要求駆動力DT_dmdの変動に応じた変動が生じないものとなる。
この結果、第2蓄電装置6の充電を行う状況(要求出力DM_dmdが第1蓄電装置5の出力P1は、頻繁な変動を生じ難い、安定性の高いものとなる。ひいては、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制できることとなる。
また、本実施形態では、第2SOCが所定値B2d以上となる状態では、要求出力DM_dmdに対応する給電量が閾値DM_th1以下である場合に、第1蓄電装置5だけから電動モータ3に給電される。このため、第2SOCが所定値B2d以上となる状態での第2蓄電装置6の負担を軽減し、ひいては、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のトータルの発熱量を軽減できる。
ここで、図8は、一定の要求出力DM_dmdに対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの負担率X1,X2の変化に対して、各蓄電装置5,6の発熱量と、トータルの発熱量とがどのように変化するかを示すグラフである。
なお、負担率X1は、一定の要求出力DM_dmdに対応する給電量のうちの、第1蓄電装置5の負担割合、負担率X2は、一定の要求出力DM_dmdに対応する給電量のうちの、第2蓄電装置6の負担割合を意味する。
出力密度が相対的に高い第2蓄電装置6は、エネルギー密度が相対的に高い第1蓄電装置5よりもインピーダンス(内部抵抗)は低いものの、並列接続したセル数が第1蓄電装置5よりも少ないため、出力電圧が第1蓄電装置5よりも低い。このため、ある一定値の要求出力DM_dmdに対して、第2蓄電装置6の負担率X2を増加させた場合には、第1蓄電装置5の負担率X1を増加させた場合よりも、第2蓄電装置6の発熱量が大きくなりやすい(図8の細線の2つのグラフを参照)。
その結果、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のトータルの発熱量は、図8の太線のグラフで示すように、負担率X1が負担率X2よりも大きくなる状態で最小となる。
そこで、本実施形態では、第2SOCが所定値B2d以上となる状態では、要求出力DM_dmdに対応する給電量が閾値DM_th1以下である場合に、第1蓄電装置5だけから電動モータ3に給電することで、第1蓄電装置5の負担が過剰にならない程度で、第2蓄電装置6の負担を軽減するようにした。
これにより、第2蓄電装置6が過剰に発熱するのを防止しつつ、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のトータルの発熱量を極力少なくすることができる。換言すれば、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の一方に負担が集中しないようにできる。
(CDモードでの回生運転時の制御処理)
次に、CDモードにおける電動モータ3の回生運転時に電力伝送制御部32が実行する制御処理を、図9及び図10参照して以下に詳説する。
まず、図9は、CDモードにおいて、電動モータ3が回生運転時に出力する回生電力に対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の充電量の分担形態を、電動モータ3の要求回生量G_dmdと第2SOCとに応じて規定するマップを示している。
図9の斜線領域は、電動モータ3が発生する回生電力の全体又は一部を第1蓄電装置5に充電する領域、点描領域は、該回生電力の全体又は一部を第2蓄電装置6に充電する領域を表している。
より詳しくは、第2SOCの中SOC領域及び高SOC領域における下段側の斜線領域は、第1蓄電装置5だけに回生電力の全体を充電する領域を表している。また、第2SOCの中SOC領域及び高SOC領域における点描領域、あるいは、低SOC領域及び中SOC領域における上段側の斜線領域は、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の両方に回生電力を充電する領域を表している。また、第2SOCの低SOC領域における点描領域は、第2蓄電装置6だけに回生電力の全体を充電する領域を表している。
なお、図9のマップにおけるG_max1は、CDモードでの要求回生量G_dmdの最大値である。この最大値G_max1は、第2SOCが高SOC領域内の所定値B2f以下のSOCである場合には一定値であり、第2SOCがB2fよりも大きい場合には、第2SOCの増加に伴い小さくなる。
CDモードにおける電動モータ3の回生運転時の電力伝送制御部32の制御処理は、図9に示すマップを用いて、図10のフローチャートに示す如く所定の制御処理周期で逐次実行される。
STEP51において、電力伝送制御部32は、要求回生量G_dmdと第2SOCの検出値とを取得する。
次いで、電力伝送制御部32は、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th1以下であるか否かをSTEP52で判断する。
上記閾値G_th1は、本実施形態では、第2SOCに応じて設定される。具体的には、閾値G_th1は、図9に例示する如く、第2SOCが高SOC領域に属する場合には、あらかじめ定められた所定の一定値に設定される。
また、第2SOCが中SOC領域に属する場合には、閾値G_th1は、第2SOCの低下に伴い、上記一定値からゼロまで連続的に減少していくように設定される。そして、第2SOCの低SOC領域では、閾値G_th1はゼロとされる。
なお、閾値G_th1の最大値(高SOC領域での一定値)に対応する充電量は、回生電力による第1蓄電装置5の充電量の上限値である。該上限値は、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制するために、第1蓄電装置5の充電を低レート(低速)で充電し得るように、比較的小さい値に定められている。
補足すると、要求回生量G_dmdの任意の閾値に対応する充電量というのは、要求回生量G_dmdが閾値に一致する場合に、電動モータ3から出力されるトータルの回生電力の電気量を意味する。
STEP52の判断結果が肯定的となる状況は、図9の下段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP53において、第1蓄電装置5の入力P1cが、要求回生量G_dmdに対応する充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6への充電を遮断するように制御される。
ここで、第1蓄電装置5の入力Pc1は、詳しくは、第1蓄電装置5に充電する電気量(充電量)であり、第2蓄電装置6の入力Pc2(後述する)は、詳しくは、第2蓄電装置6に充電する電気量(充電量)である。また、要求回生量G_dmdに対応する充電量というのは、要求回生量G_dmdに従って電動モータ3の回生運転を行ったときに、該電動モータ3から出力される回生電力の電気量を意味する。
補足すると、電動モータ3の回生運転時の第2SOCの検出値が低SOC領域に属する場合には、閾値G_th1はゼロであるので、STEP52の判断結果は肯定的にはならない。従って、この場合には、STEP53の処理は実行されない。
STEP52の判断結果が否定的である場合には、電力伝送制御部32は、次に、STEP54において、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th2以下であるか否かを判断する。
上記閾値G_th2は、本実施形態では、前記STEP52における閾値G_th1と同様に、第2SOCに応じて設定される。具体的には、閾値G_th2は、図9に例示する如く、第2SOCが低SOC領域に属する場合には、あらかじめ定められた所定の一定値に設定される。該一定値は、要求回生量G_dmdの最大値G_max1との差(=G_max1−G_th2)に対応する充電量が、前記閾値G_th1の最大値(高SOC領域におけるG_th1の値)に対応する充電量、すなわち、第1蓄電装置5の充電量の前記上限値に一致するように設定されている。
また、第2SOCが中SOC領域に属する場合には、閾値G_th2は、閾値G_th1の変化パターンと同様のパターンで、第2SOCの増加に伴い、最大値G_max1まで増加していくように設定される。そして、第2SOCの高SOC領域では、閾値G_th1は一定の最大値G_max1に維持される。
なお、中SOC領域では、最大値G_max1と閾値G_th2との差(=G_max1−G_th2)に対応する充電量と、前記閾値G_th1に対応する充電量と総和が、第1蓄電装置5の充電量の前記上限値に一致するように、閾値G_th1,G_th2が設定されている。
STEP54の判断結果が肯定的となる状況は、図9の点描領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP55において、第1蓄電装置5の入力Pc1が、閾値G_th1に対応する充電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の入力Pc2が、要求回生量G_dmdに対応する充電量から、第1蓄電装置5の入力Pc1を差し引いた充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
一方、前記STEP54の判断結果が否定的となる状況は、図9の低SOC領域又は中SOC領域における上段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP56において、第2蓄電装置6の入力Pc2が、閾値G_th1,G_th2の差(=G_th2−G_th1)に対応する充電量に一致し、且つ、第1蓄電装置5の入力Pc1が、要求回生量G_dmdに対応する充電量から、第2蓄電装置6の入力Pc2を差し引いた充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
補足すると、電動モータ3の回生運転時の第2SOCの検出値が高SOC領域に属する場合には、閾値G_th2は最大値G_max1に一致するので、STEP54の判断結果は否定的にならない。従って、この場合には、STEP56の処理は実行されない。
CDモードでの電動モータ3の回生運転時の制御処理は、以上の如く実行される。この制御処理によれば、第2SOCの検出値が中SOC領域の下限値B2_th2よりも大きい場合には、要求回生量G_dmdが閾値G_th1以下となる範囲で、第1蓄電装置5に優先的に回生電力が充電される。
また、第2SOCの検出値が中SOC領域の上限値B2_th1よりも小さい場合には、要求回生量G_dmdが閾値G_th2よりも大きい範囲で、第1蓄電装置5に回生電力が充電される。
そして、第1蓄電装置5に対する回生電力の充電量は、所定の上限値(高SOC領域における閾値G_th1に対応する充電量)以下に制限される。
このため、第1蓄電装置5に回生電力を低レートで充電することができる。ひいては、第1蓄電装置5の劣化の進行を抑制しつつ、該第1蓄電装置5のSOCを回復させることができる。
また、第2SOCの検出値が、中SOC領域の下限値B2_th2よりも小さい場合には、第2蓄電装置6に回生電力が優先的に充電される。さらに、第2SOCの検出値が、中SOC領域の下限値B2_th2よりも大きい場合には、要求回生量G_dmdが閾値G_th1よりも大きい範囲で、第2蓄電装置6に回生電力が充電される。
このため、第2蓄電装置6のSOCを極力、中SOC領域に保つように、回生電力を第2蓄電装置6に充電することができる。この結果、第2蓄電装置6の劣化の進行を極力抑制できると共に、第2蓄電装置6の容量のうち、後述するCSモードでの使用分を極力保存しておくことができる。
(第1CSモードの制御処理)
次に、前記STEP6での第1CSモードの制御処理を、図11〜図15を参照しつつ詳細に説明する。
制御装置8は、車両全体の要求駆動力(要求推進力)又は要求制動力をCDモードと同様に決定すると共に、内燃機関2、電動モータ3、発電機4、クラッチ11及びブレーキ装置のそれぞれの目標動作状態を決定する。
第1CSモードにおいては、制御装置8は、車両全体の要求駆動力又は要求制動力、あるいは、第2SOCの検出値等に応じて、適宜、内燃機関2の運転の要否、及び発電機4の発電運転の要否を決定し、その決定に従って、内燃機関2及び発電機4の運転を制御する。
この場合、内燃機関2の始動及び発電機4の発電運転は、前記STEP7の処理に関して説明した如く行われる。
また、内燃機関2の運転中における車両の駆動要求状態(要求駆動力がゼロでない状態)では、制御装置8は、車両全体の要求駆動力に対する電動モータ3及び内燃機関2のそれぞれの負担分を、車両全体の要求駆動力、第1SOC及び第2SOCの検出値等に応じて決定する。
この場合、基本的には、第2SOCが比較的高い場合を除いて、要求駆動力の全体もしくは大部分を内燃機関2が負担し、電動モータ3の負担は補助的なものとなるように、電動モータ3及び内燃機関2のそれぞれの負担分が決定される。
そして、制御装置8は、要求駆動力のうちの内燃機関2の負担分に応じて該内燃機関2の動力(出力トルク)を制御することを内燃機関運転制御部31により実行すると共に、クラッチ11の動作状態を制御することをクラッチ制御部33により実行する。なお、発電機4の発電運転を行う状況では、内燃機関2の動力には、発電機4の発電運転に必要な動力が付加される。
また、制御装置8は、要求駆動力のうちの電動モータ3の負担分を、該電動モータ3の力行運転により発生する動力により実現するように、該電動モータ3の要求出力DM_dmdを決定する。
そして、制御装置8は、その要求出力DM_dmdと、第1蓄電装置5のSOC(第1SOC)の検出値とに応じて、図11に示す如くあらかじめ作成されたマップに従って、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の一方又は両方から電動モータ3に給電するように、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23,24とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。
なお、第1CSモードでは、制御装置8は、要求駆動力のうちの電動モータ3の負担分をゼロとする状況(電動モータ3の力行運転を行わない状況)であっても、第1SOCの検出値が比較的小さい場合には、第2蓄電装置6から第1蓄電装置5に充電を行うように、電力伝送回路部7の電圧変換器23,24を制御することを電力伝送制御部32により実行する。
また、内燃機関2の運転停止中における車両の駆動要求状態では、制御装置8は、車両全体の要求駆動力を、電動モータ3の力行運転により発生する動力により実現するように、該電動モータ3の要求出力DM_dmdを決定する。
そして、制御装置8は、内燃機関2の運転中の場合と同様に、要求出力DM_dmdと、第1SOCの検出値とに応じて、図11に示すマップに従って、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23,24とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。
また、車両の制動要求状態(要求制動力がゼロでない状態)では、制御装置8は、車両全体の要求制動力に対する電動モータ3及びブレーキ装置のそれぞれの負担分を決定する。この場合、制御装置8は、基本的には、要求制動力のうちの電動モータ3の負担分が極力大きくなるように、要求制動力の大きさ、及び第1SOCの検出値等に基づいて、電動モータ3及びブレーキ装置のそれぞれの負担分を決定する。
そして、制御装置8は、要求制動力のうちのブレーキ装置の負担分に応じて該ブレーキ装置を制御することをブレーキ制御部34により実行する。
また、制御装置8は、要求制動力のうちの電動モータ3の負担分を、該電動モータ3の回生運転により発生する回生制動力により実現するように、該電動モータ3の要求回生量G_dmdを決定する。
そして、制御装置8は、その要求回生量G_dmdと、第2SOCの検出値とに応じて、図14に示す如くあらかじめ作成されたマップに従って、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の一方又は両方に、電動モータ3から出力される回生電力を充電するように、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23,24とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。本実施形態では、第1CSモードにおける回生電力の主たる充電対象の蓄電装置は、第2蓄電装置6である。
なお、電動モータ3の回生運転時、あるいは、第2蓄電装置6から電動モータ3への給電時には、発電機4の発電運転は停止される。ただし、電動モータ3の回生電力を第2蓄電装置6に充電することと、発電機4の発電電力を第2蓄電装置6に充電することとを並行して行ってもよい。
(第1CSモードにおける力行運転時の制御処理)
第1CSモードにおける電動モータ3の力行運転時に電力伝送制御部32が実行する制御処理を、図11〜図13を参照して以下に詳説する。
まず、図11は、第1CSモードにおいて、電動モータ3の要求出力DM_dmdと第1SOCとに応じて該電動モータ3に給電すべき電気量(給電量)に対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの出力の分担形態を表すマップを示している。
図11の斜線領域は、電動モータ3への給電量の全体又は一部を第1蓄電装置5が負担する領域、点描領域は、該給電量の全体又は一部を第2蓄電装置6が負担する領域を表している。
より詳しくは、下段側の斜線領域は、第1蓄電装置5だけが、電動モータ3への給電量の全体を負担する領域を表し、点描領域は、電動モータ3への給電量を、第2蓄電装置6だけが負担するか、もしくは、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の両方が負担する領域を表している。また、上段側の斜線領域は、電動モータ3への給電量を、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の両方が負担する領域を表している。
なお、図11のマップにおけるDM_max2は、第1CSモードでの要求出力DM_dmdの最大値である。この最大値DM_max2は一定値である。
第1CSモードにおける電動モータ3の力行運転時の制御処理では、図11に示すように、前記したCD→CS切替閾値B1_mc2(図2を参照)とCS→CD切替閾値B1_mc2(図2を参照)との間の範囲内において、第1SOCの値が、SOC≧B1_th1となる高SOC領域(高残容量領域)に属する場合と、SOC<B1_th1となる低SOC領域(低残容量領域)に属する場合とで、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの出力の負担形態が大別されている。上記B1_th1は、CD→CS切替閾値B1_mc2とCS→CD切替閾値B1_mc2との間で、あらかじめ定められた閾値(固定値)である。
第1CSモードにおける電動モータ3の力行運転時の電力伝送制御部32の制御処理は、図11に示すマップを用いて、図12及び図13のフローチャートに示す如く所定の制御処理周期で逐次実行される。
STEP61において、電力伝送制御部32は、要求出力DM_dmdと第1SOCの検出値とを取得する。そして、電力伝送制御部32は、STEP61で取得した第1SOCの検出値が、前記閾値B1_th1以上であるか否かをSTEP62で判断する。
このSTEP62の判断結果が肯定的となる状況は、第1SOCの検出値が高SOC領域に属する状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、次に、STEP63において、要求出力DM_dmdが所定の閾値DM_th5以下であるか否かを判断する。
上記閾値DM_th5は、図11に示す如く、第1SOCが閾値B1_th1よりも若干大きい所定値B1c以上の値であるときには、あらかじめ定められた所定の一定値(固定値)である。その一定値は、第1蓄電装置5から出力する給電量の許容上限値に比して、十分に小さい値である。
また、閾値DM_th5は、B1cよりも小さい領域(B1c〜B1_th1の範囲)では、第1SOCの減少に伴いゼロまで減少するように設定される。
STEP63の判断結果が肯定的となる状況は、図11の高SOC領域における下段側の斜線領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、STEP64において、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6からの放電を遮断するように制御される。
STEP63の判断結果が否定的である場合には、電力伝送制御部32は、次に、STEP65において、要求出力DM_dmdが所定の閾値DM_th6以下であるか否かを判断する。
上記閾値DM_th6は、本実施形態では、第2SOCの高SOC領域及び低SOC領域の両方のSOC領域において使用される閾値である。この閾値DM_th6は、高SOC領域では、閾値DM_th5よりもあらかじめ定めた所定量だけ大きい閾値に設定され、低SOC領域では、ゼロよりも当該所定量だけ大きい閾値(=当該所定量)に設定される。
この場合、閾値DM_th6は、例えば、上記所定量に対応する給電量が、第1CSモードにおける第2蓄電装置6の給電量の許容上限値又はそれに近い給電量となるように設定され得る。
なお、閾値DM_th6以下の要求出力DM_dmdは、第1CSモードにおける電動モータ3の常用域の範囲である。
STEP65の判断結果が肯定的となる状況は、図11の高SOC領域における点描領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、STEP66において、第1蓄電装置5の出力P1が、閾値DM_th5に対応する給電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の出力P2が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第1蓄電装置5の出力P1を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
一方、前記STEP65の判断結果が否定的となる状況は、図11の高SOC領域における上段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP67において、第2蓄電装置6の出力P2が、閾値DM_th5,DM_th6の差(=DM_th6−DM_th5)に対応する給電量に一致し、且つ、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置6の出力P2を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
次に、前記STEP62の判断結果が否定的となる状況は、第1SOCの検出値が低SOC領域に属する状況である。この場合には、電力伝送制御部32は、さらに、図13に示すSTEP68において、第2蓄電装置6の出力P2の基本値である基本給電量P2_baseを第1SOCの検出値に応じて決定する。
ここで、上記基本給電量P2_baseは、第1SOCの検出値が低SOC領域に属する状態で、電動モータ3の要求出力DM_dmdによらずに、第2蓄電装置6から出力させる下限の電気量である。すなわち、本実施形態では、電動モータ3の力行運転時において、第1SOCの検出値が低SOC領域に属する状態では、要求出力DM_dmdによらずに、第2蓄電装置6から、基本給電量P2_base、又はそれよりも大きい給電量が出力されるように電力伝送回路部7が制御される。
なお、本実施形態では、第1CSモードでは、電動モータ3の力行運転を行わない状況(車両全体の要求駆動力を内燃機関2だけで負担する状況)においても、第1蓄電装置5の充電のために、第2蓄電装置6から上記基本給電量P2_baseを出力させるように電力伝送回路部7が制御される。
上記基本給電量P2_baseは、例えば図11に破線で示すパターンで第1SOCに応じて変化するように、該第1SOCの検出値から、あらかじめ作成されたマップ又は演算式に基づいて決定される。この場合、基本給電量P2_baseは、第1SOCが、前記閾値B1_th1とそれよりも若干小さい所定値B1dとの間の範囲のSOCである場合には、第1SOCの減少に伴いゼロから最大値P2bまで連続的に増加し、第1SOCが、所定値B1d以下となる領域では、最大値P2bで一定に維持されるように決定される。なお、最大値P2bは、第1SOCの低SOC領域での要求出力DM_dmdの前記閾値DM_th6に対応する給電量よりも小さい値である。該最大値P2bは、その大部分を第1蓄電装置5に充電したとしても、該第1蓄電装置5を、その劣化の進行を抑制可能な低レートで充電し得るように設定されている。
上記の如く基本給電量P2_baseを決定した後、電力伝送制御部32は、次に、要求出力DM_dmdに対応する給電量が上記基本給電量P2_baseよりも小さいか否かをSTEP69で判断する。
STEP69の判断結果が肯定的となる状況は、図11の低SOC領域の点描領域のうちの破線の下側領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP70において、第2蓄電装置6の出力P2が、基本給電量P2_baseに一致し、第1蓄電装置5の入力Pc1(充電量)が、基本給電量P2_baseから要求出力DM_dmdに対応する給電量を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
STEP69の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部32は、さらに、要求出力DM_dmdが前記閾値DM_th6以下であるか否かをSTEP71で判断する。
このSTEP71の判断結果が肯定的となる状況は、図11の低SOC領域の点描領域のうち、破線の下側領域を除いた領域(詳しくは、破線上と、該破線の上側の領域とを合わせた領域)の状況である。
この状況では、電力伝送制御部32は、STEP72において、第2蓄電装置6の出力P2が、要求出力DM_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器24及びインバータ21を制御する。この場合、第1蓄電装置5側の電圧変換器23は、第1蓄電装置5からの放電を遮断するように制御される。
一方、STEP71の判断結果が否定的となる状況は、図11の低SOC領域における上段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP73において、第2蓄電装置6の出力P2が、低SOC領域での閾値DM_th6に対応する給電量に一致し、且つ、第1蓄電装置5の出力P2が、要求出力DM_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置6の出力P2を差し引いた給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
第1CSモードでの電動モータ3の力行運転時の制御処理は、以上の如く実行される。この制御処理によれば、第1SOCの検出値が低SOC領域に属する場合には、要求出力DM_dmdに対応する給電量が基本給電量P2_base以下である場合において、第2蓄電装置6の出力P2は、第1SOCの検出値に応じて設定された基本給電量P2_baseに保持される。
そして、要求出力DM_dmdに対応する給電量が、基本給電量P2_baseよりも小さい場合には、基本給電量P2_baseのうちの要求出力DM_dmdに対応する給電量が第2蓄電装置6だけから電動モータ3に給電されると同時に、基本給電量P2_baseから要求出力DM_dmdに対応する給電量を差し引いた給電量が第1蓄電装置5に充電される。これにより、第1SOCを徐々に回復させていくことができる。
また、この場合、第1蓄電装置5の充電のレートは、電力伝送制御部32が電圧変換器23,24を制御することで高精度に調整できる。従って、第1蓄電装置5は、低レートで充電されるので、内燃機関2の動力により発電機4が出力する発電電力によって第1蓄電装置5を充電する場合に比べて、第1蓄電装置5の劣化の進行を効果的に抑制することができる。
また、第1SOCの検出値が低SOC領域に属する場合には、要求出力DM_dmdが閾値DM_th5以下ならば、第1蓄電装置5から優先的に電動モータ3に給電される。
このため、第1CSモードでの第2蓄電装置6の負担を軽減し、該第2蓄電装置6が過剰に発熱するのを抑制することができる。
(第1CSモードでの回生運転時の制御処理)
次に、第1CSモードにおける電動モータ3の回生運転時に電力伝送制御部32が実行する制御処理を、図14及び図15参照して以下に詳説する。
まず、図14は、第1CSモードにおいて、電動モータ3が回生運転時に出力する回生電力に対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の充電量の分担形態を、電動モータ3の要求回生量G_dmdと第1SOC(前記CD→CS切替閾値B1_mc1とCS→CD切替閾値B1_mc2との間の範囲の第1SOC)とに応じて規定するマップを示している。
図14の斜線領域は、電動モータ3が発生する回生電力の全体又は一部を第1蓄電装置5に充電する領域、点描領域は、該回生電力の全体又は一部を第2蓄電装置6に充電する領域を表している。
なお、図14のマップにおけるG_max2は、第1CSモードでの要求回生量G_dmdの最大値である。この最大値G_max2は、第1SOCが前記CS→CD切替閾値B1_mc2よりも若干小さい所定値B2e以下のSOCである場合には一定値であり、第2SOCがB2eよりも大きい場合には、第1SOCの増加に伴い小さくなる。
第1CSモードにおける電動モータ3の回生運転時の電力伝送制御部32の制御処理は、図14に示すマップを用いて、図15のフローチャートに示す如く所定の制御処理周期で逐次実行される。
STEP81において、電力伝送制御部32は、要求回生量G_dmdと第1SOCの検出値とを取得する。
次いで、電力伝送制御部32は、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th4以下であるか否かをSTEP82で判断する。
上記閾値G_th4は、本実施形態では、第1SOCに応じて設定される。具体的には、閾値G_th4は、図14に例示する如く、第1SOCが前記所定値B2e以下のSOCである場合には、あらかじめ定められた所定の一定値に設定される。該一定値は、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制するために、第1蓄電装置5の充電を低レート(低速)で充電し得るように、比較的小さい値に定められている。
また、第1SOCが所定値B1eよりも大きい場合には、閾値G_th4は、第1SOCの低下に伴い、上記一定値からゼロまで連続的に減少していく(前記CS→CD切替閾値B1_mc2でゼロに達する)ように設定される。
STEP82の判断結果が肯定的となる状況は、図14の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP83において、第1蓄電装置5の入力P1cが、要求回生量G_dmdに対応する充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6への充電を遮断するように制御される。
一方、STEP82の判断結果が否定的となる状況は、図14の点描領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP84において、第1蓄電装置5の入力Pc1が、閾値G_th4に対応する充電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の入力Pc2が、要求回生量G_dmdに対応する充電量から、第1蓄電装置5の入力Pc1を差し引いた充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
第1CSモードでの電動モータ3の回生運転時の制御処理は、以上の如く実行される。この制御処理によれば、要求回生量G_dmdが閾値G_th4以下であれば、第1蓄電装置5に優先的に回生電力が充電される。また、第1蓄電装置5の充電量は、閾値G_th4に対応する充電量以下に制限される。このため、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制しつつ、第1SOCを回復させることができる。
(第2CSモードの制御処理)
次に、前記STEP8での第2CSモードの制御処理を、図16〜図20を参照しつつ詳細に説明する。
制御装置8は、車両全体の要求駆動力(要求推進力)又は要求制動力をCDモードと同様に決定すると共に、内燃機関2、電動モータ3、発電機4、クラッチ11及びブレーキ装置のそれぞれの目標動作状態を決定する。
第2CSモードにおいては、制御装置8は、内燃機関2の運転を連続的に行うように、内燃機関2を内燃機関運転制御部31により制御する。併せて、電動モータ3の回転運転中を除いて、発電機4の発電運転を継続的に行うように、発電機4を電力伝送制御部32により制御する。この場合、電力伝送制御部32は、目標値の発電電力を第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のうちの第2蓄電装置6にだけ充電するように電力伝送回路部7の電圧変換器24及びインバータ22を制御する。
また、車両の駆動要求状態(要求駆動力がゼロでない状態)では、制御装置8は、車両全体の要求駆動力に対する電動モータ3及び内燃機関2のそれぞれの負担分を、車両全体の要求駆動力及び第1SOCの検出値等に応じて決定する。
この場合、基本的には、要求駆動力の全体又は大部分を内燃機関2が負担し、電動モータ3の負担は補助的なものとなるように、電動モータ3及び内燃機関2のそれぞれの負担分が決定される。
そして、制御装置8は、内燃機関2の動力(出力トルク)を、要求駆動力のうちの内燃機関2の負担分の動力と、発電機4の発電運転に必要な動力とを含む動力となるように制御することを内燃機関運転制御部31により実行すると共に、クラッチ11を接続状態に制御することをクラッチ制御部33により実行する。
また、制御装置8は、要求駆動力のうちの電動モータ3の負担分を、該電動モータ3の力行運転により発生する動力により実現するように、該電動モータ3の要求出力DM_dmdを決定する。
そして、制御装置8は、その要求出力DM_dmdと、第1蓄電装置5のSOC(第1SOC)の検出値とに応じて、図16に示す如くあらかじめ作成されたマップに従って、第1蓄電装置5だけから電動モータ3に給電するように、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。
また、車両の制動要求状態(要求制動力がゼロでない状態)では、制御装置8は、車両全体の要求制動力に対する電動モータ3及びブレーキ装置のそれぞれの負担分を決定する。この場合、制御装置8は、基本的には、要求制動力のうちの電動モータ3の負担分が極力大きくなるように、要求制動力の大きさ、及び第1SOCの検出値等に基づいて、電動モータ3及びブレーキ装置のそれぞれの負担分を決定する。
そして、制御装置8は、要求制動力のうちのブレーキ装置の負担分に応じて該ブレーキ装置を制御することをブレーキ制御部34により実行する。
また、制御装置8は、要求制動力のうちの電動モータ3の負担分を、該電動モータ3の回生運転により発生する回生制動力により実現するように、該電動モータ3の要求回生量G_dmdを決定する。
そして、制御装置8は、その要求回生量G_dmdと、第1SOCの検出値とに応じて、図18に示す如くあらかじめ作成されたマップに従って、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の一方又は両方に、電動モータ3から出力される回生電力を充電するように、電力伝送回路部7の電動モータ3側のインバータ21と電圧変換器23,24とを制御することを電力伝送制御部32により実行する。本実施形態では、第2CSモードにおける回生電力の主たる充電対象の蓄電装置は、第2蓄電装置6である。
(第2CSモードにおける力行運転時の制御処理)
第2CSモードにおける電動モータ3の力行運転時に電力伝送制御部32が実行する制御処理を、図16及び図17を参照して以下に詳説する。
まず、図16は、第2CSモードにおいて、電動モータ3の要求出力DM_dmdと第1SOCとに応じて該電動モータ3に給電すべき電気量(給電量)に対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれの出力の分担形態を表すマップを示している。
図16の斜線領域は、電動モータ3への給電量の全体を第1蓄電装置5が負担する領域を表している。なお、図16のマップにおけるDM_max3は、第2CSモードでの要求出力DM_dmdの最大値である。この最大値DM_max1は一定値である。
第2CSモードにおける電動モータ3の力行運転時の制御処理では、図16に示すように、第1SOCに関する前記CD→CS切替閾値B1_mc1(図2を参照)とCS→CD切替閾値B1_mc2(図2を参照)との間の範囲の全体において、電動モータ3への給電量を、常時、第1蓄電装置5だけが負担するものとなっている。従って、第2CSモードでは、第2蓄電装置6から電動モータ3への給電が禁止される。
そして、第2CSモードにおける電動モータ3の力行運転時の電力伝送制御部32の制御処理は、図17のフローチャートに示す如く所定の制御処理周期で逐次実行される。
STEP91において、電力伝送制御部32は、要求出力DM_dmdを取得する。そして、電力伝送制御部32は、STEP92において、第1蓄電装置5の出力P1が、要求出力DM_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。
第2CSモードでの電動モータ3の力行運転時の制御処理は、以上の如く実行される。この制御処理によれば、第2蓄電装置6から電動モータ3への給電は禁止されるので、第2蓄電装置6のSOCを、発電機4の発電電力により速やかに回復させることができる。
(第2CSモードでの回生運転時の制御処理)
次に、第2CSモードにおける電動モータ3の回生運転時に電力伝送制御部32が実行する制御処理を、図18及び図19参照して以下に詳説する。
まず、図18は、第2CSモードにおいて、電動モータ3が回生運転時に出力する回生電力に対する第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6の充電量の分担形態を、電動モータ3の要求回生量G_dmdと第1SOC(前記CD→CS切替閾値B1_mc1とCS→CD切替閾値B1_mc2との間の範囲の第1SOC)とに応じて規定するマップを示している。
図18の斜線領域は、電動モータ3が発生する回生電力の全体又は一部を第1蓄電装置5に充電する領域、点描領域は、該回生電力の全体又は一部を第2蓄電装置6に充電する領域を表している。
なお、図18のマップにおけるG_max3は、第2CSモードでの要求回生量G_dmdの最大値である。この最大値G_max3は一定値である。
第2CSモードにおける電動モータ3の回生運転時の電力伝送制御部32の制御処理は、図18に示すマップを用いて、図19のフローチャートに示す如く所定の制御処理周期で逐次実行される。
STEP101において、電力伝送制御部32は、要求回生量G_dmdと第1SOCの検出値とを取得する。
次いで、電力伝送制御部32は、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th5以下であるか否かをSTEP102で判断する。
上記閾値G_th5は、本実施形態では、第1SOCに応じて設定される。具体的には、閾値G_th5は、図18に例示する如く、第1SOCが前記閾値B1_th1よりも若干小さい所定値B1f以下のSOCである場合には、あらかじめ定められた所定の一定値に設定される。該一定値は、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制するために、第1蓄電装置5の充電を低レート(低速)で充電し得るように、比較的小さい値に定められている。
また、第1SOCが所定値B1fよりも大きい場合には、閾値G_th5は、第1SOCの増加に伴い、上記一定値からゼロまで連続的に減少していく(B1_th1でゼロに達する)ように設定される。そして、閾値G_th5は、第1SOCがB1_th1以上のSOCである場合には、ゼロに維持される。
STEP102の判断結果が肯定的となる状況は、図18の下段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP103において、第1蓄電装置5の入力P1cが、要求回生量G_dmdに対応する充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23及びインバータ21を制御する。この場合、第2蓄電装置6側の電圧変換器24は、第2蓄電装置6への充電を遮断するように制御される。
補足すると、第1SOCの検出値がB1_th1以上である場合には、閾値G_th5はゼロであるので、STEP102の判断結果は肯定的にはならない。従って、この場合には、STE103の処理は実行されない。
STEP102の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部32は、次に、STEP104において、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th6以下であるか否かを判断する。
上記閾値G_th6は、本実施形態では、前記STEP102における閾値G_th5と同様に、第1SOCに応じて設定される。具体的には、閾値G_th6は、図18に例示する如く、第1SOCがB1_th1以上のSOCである場合には、あらかじめ定められた所定の一定値に設定される。該一定値は、要求回生量G_dmdの最大値G_max3との差(=G_max3−G_th6)に対応する充電量が、前記閾値G_th5の最大値(第1SOCがB1f以下である場合のG_th5の値)に対応する充電量(第1蓄電装置5を低レートで充電し得る充電量)に一致するように設定されている。
また、第1SOCがB1_th1よりも小さい場合には、閾値G_th6は、閾値G_th5の変化パターンと同様のパターンで、第1SOCの減少に伴い、最大値G_max3まで増加していく(B1fで最大値G_max3に達する)ように設定される。そして、第2SOCがB1f以下である場合には、閾値G_th6は最大値G_max3に維持される。
なお、第1SOCのB1f〜B1_th1の範囲では、最大値G_max3と閾値G_th6との差(=G_max3−G_th6)に対応する充電量と、前記閾値G_th5に対応する充電量と総和が、閾値G_th5の最大値に対応する充電量(第1蓄電装置5を低レートで充電し得る充電量)に一致するように、閾値G_th5,G_th6が設定されている。
STEP104の判断結果が肯定的となる状況は、図18の点描領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP105において、第1蓄電装置5の入力Pc1が、閾値G_th5に対応する充電量に一致し、且つ、第2蓄電装置6の入力Pc2が、要求回生量G_dmdに対応する充電量から、第1蓄電装置5の入力Pc1を差し引いた充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
一方、前記STEP104の判断結果が否定的となる状況は、図18の上段側の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部32は、STEP106において、第2蓄電装置6の入力Pc2が、閾値G_th5,G_th6の差(=G_th6−G_th5)に対応する充電量に一致し、且つ、第1蓄電装置5の入力Pc1が、要求回生量G_dmdに対応する充電量から、第2蓄電装置6の入力Pc2を差し引いた充電量に一致するように電力伝送回路部7の電圧変換器23,24及びインバータ21を制御する。
補足すると、第1SOCが所定値B1f以下である場合には、閾値G_th6は最大値G_max3に一致するので、STEP104の判断結果は否定的にならない。従って、この場合には、STEP106の処理は実行されない。
第2CSモードでの電動モータ3の回生運転時の制御処理は、以上の如く実行される。この制御処理によれば、第1SOCの検出値が、閾値B1_th1よりも大きい場合には、回生電力の全体又は大部分が、第2蓄電装置6に充電される。このため、第2蓄電装置6のSOCを、回生電力により効果的に回復させることができる。
そして、第2CSモードでは、電動モータ3の回生運転中以外は、発電機4による発電電力により第2蓄電装置6が充電されるので、該発電電力と回生電力との両方によって、第2蓄電装置6のSOCを、前記CS2→CS1切替閾値B2_mc2に向かって速やかに回復させることができる。
また、第1SOCの検出値が、閾値B1_th1よりも小さい場合には、要求回生量G_dmdが閾値G_th5以下となる範囲で、第1蓄電装置5に優先的に回生電力が充電される。また、第1SOCの検出値が、所定値B1fよりも大きい場合には、要求回生量G_dmdが閾値G_th6以上となる範囲で、第1蓄電装置5に回生電力が充電される。そして、第1蓄電装置5の充電量は、閾値G_th5の最大値に対応する充電量以下に制限される。このため、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制しつつ、第2CSモードでの第1SOCの低下を抑制できる。
以上が、本実施形態における制御装置8の制御処理の詳細である。
ここで、本実施形態と本発明との対応関係について補足しておく。本実施形態では、第1CSモード、第2CSモードは、それぞれ本発明における第1モード、第2モードに相当する。
また、電動モータ3は、本発明における電気負荷又はアクチュエータに相当する。また、第1SOCに関する閾値B1_th1が本発明における第1充電率に関する所定の閾値に相当する。
また、第1CSモードの給電用の分担マップ(図11)において、第1SOCの低SOC領域における閾値DM_th6が、本発明における第A閾値に相当し、高SOC領域における閾値DM_th5,DM_th6がそれぞれ本発明における第B閾値、第C閾値に相当する。
また、第1CSモードの充電用の分担マップ(図11)におけるB1_mc1〜B1_mc2の範囲と、第2CSモードにおける充電用の分担マップ(図18)におけるB1_mc1〜B1_th1の範囲とが、本発明における第1充電率に関する所定範囲に相当する。この場合、第1CSモード(第1モード)における所定範囲B1_mc1〜B1_mc2は、第2CSモード(第2モード)における所定範囲B1_mc1〜B1_th1よりも、第1SOCの大きい側に拡大された範囲となっている。
かかる本実施形態では、CDモードで電動モータ3の給電のために使用する第1SOCの範囲(図2のB1a[%]〜B1b[%]の範囲)は、CDモードで電動モータ3の給電のために使用する第2SOCの範囲(図2のB2a[%]〜B2b[%]の範囲)に比して大きい。また、CSモードで電動モータ3の給電のために使用する第2SOCの範囲(図2のB1b[%]〜B2c[%]の範囲)は、CSモードで電動モータ3の給電のために使用する第1SOCの範囲(図2のB1b[%]以下の範囲のうちの一部の範囲)に比して大きい。
また、CSモードで内燃機関2を始動するときに、始動用アクチュエータとしての発電機4に給電する電力は、第2蓄電装置6だけに確保される。
このため、エネルギー密度が相対的に高い第1蓄電装置5は、その大部分の電力(蓄電エネルギー)を、CDモードにて電動モータ3に給電する電力として活用することができる。その結果、CDモードで電動モータ3に第1蓄電装置5から給電し得る期間、ひいては、内燃機関2の燃料消費が生じないか、もしくは抑制されるCDモードでの車両の航続可能距離を極力長くすることができると共に、動力システム1の環境性能が向上する。
また、第2蓄電装置6の一部の電力(図2のB2a[%]〜B2b[%]の範囲の蓄電エネルギー)を、CDモードでの電動モータ3の給電用の専用的な電力として使用できるので、必要に応じて補助的に、出力密度が相対的に高い第2蓄電装置6から電動モータ3に給電することができる。ひいては、CDモードでの車両の走行性能(駆動輪DWの駆動性能)を高めることができる。
一方、CSモードのうちの第1CSモードでは、第2蓄電装置6を電動モータ3の主たる電源として使用できるので、車両の要求駆動力の変動に対して、高い応答性で、電動モータ3の動力を補助的に駆動輪DWに伝達することができる。その結果が、第1CSモードでの車両の走行性能(駆動輪DWの駆動性能)を高めることができる。
さらに、第1蓄電装置5の一部の電力(図2のB1b[%]以下の範囲のうちの一部の範囲)と、CSモードでの電動モータ3の給電用の電力として使用できるので、特に、第2CSモードにおいて、第2蓄電装置6の代わりに、第1蓄電装置5から電動モータ3に適宜給電を行うことができる。このため、第2CSモードで、第2蓄電装置6から電動モータ3に給電することを省略することができる。ひいては、第2CSモードでの第2蓄電装置6のSOCの回復を早めることができる。
また、本実施形態では、発電機4の発電電力は、第2CSモードにおいて、第2蓄電装置6だけに充電される。そして、このように第2蓄電装置6に充電される電力の一部が、第1CSモードにおいて、第2蓄電装置6から第1蓄電装置5に移送される。この場合、第1CSモードでは、第1蓄電装置5を低レートで安定に充電することができる。このため、第1蓄電装置5の劣化の進行を極力抑制することができる。
図20は、車両の走行時の、第1蓄電装置5及び第2蓄電装置6のそれぞれのSOCの概略的な経時変化を例示するグラフである。
時刻t1までの期間は、CDモードの期間である。この期間では、第1SOCは、基本的には減少していく。また、第2SOCは、第2蓄電装置6の放電及び充電が適宜行われることで変動する。
そして、時刻t1で第1SOCがCD→CS切替閾値B1_mc1まで低下すると、制御装置8の制御処理のモードは、第1CSモードに切替わる。時刻t1〜t2の期間が、第1CSモードの期間である。この第1CSモードの期間では、第2SOCは、第1蓄電装置5及び電動モータ3の一方又は両方への給電に伴い、基本的には減少していく。また、第1SOCは、第1蓄電装置5が第2蓄電装置6から適宜充電されることで、徐々に回復していく。
時刻t2で第2SOCが第1CS→第2CS切替閾値B2_mc1まで低下すると、制御装置8の制御処理のモードは、第2CSモードに切替わる。時刻t2〜t3の期間が、第2CSモードの期間である。この第2CSモードの期間では、第2SOCは、発電電力及び回生電力が第2蓄電装置6に充電されることによって、上昇していく。
なお、第2CSモードでの第1SOCは、第1蓄電装置5から電動モータ3の給電を行う状況では減少する。ただし、第2CSモードでは、第2SOCが発電電力及び回生電力によって早期に回復されることにより、第1蓄電装置5から電動モータ3の給電を必要とする状況の発生頻度は、一般に少ない。このため、第2CSモードでの第1SOCの減少は、一般には少ない。
時刻t3で第2SOCが第2CS→第1CS切替閾値B2_mc2まで回復すると、制御装置8の制御処理のモードは、再び、第1CSモードに切替わる。時刻t2〜t4の期間が、第1CSモードの期間である。この第1CSモードの期間では、時刻t1〜t2の期間と同様に、第1蓄電装置5及び電動モータ3の一方又は両方への給電に伴い、第2SOCは減少していき、第1SOCは徐々に回復していく。
図示例では、時刻t4において、第1SOCがCS→CD切替閾値B1_mc2まで回復する。これにより、制御装置8の制御処理のモードは、CDモードに復帰する。
以上の如く、CDモードの後のCSモードでは、基本的には、第1CSモード及び第2CSモードの交互の繰り返しによって、第1SOCを徐々に回復させることができる。その結果、電動モータ3の動力だけを使用して駆動輪DWを駆動するCDモードでの車両の走行を再開することができる。
[変形態様]
次に、以上説明した実施形態に関連する変形態様をいくつか説明する。
前記実施形態では、発電機4を始動用アクチュエータとして作動させるための電力を第2蓄電装置6だけで負担するようにした。ただし、発電機4への給電用の電力の一部を、第1蓄電装置5にも負担させるようにしてもよい。この場合には、第2蓄電装置6の負担分よりも、第1蓄電装置5の負担分の方が小さくなることが望ましい。
なお、第1蓄電装置5の電力を極力、CDモードで活用する上では、発電機4への給電用の電力の全体を第2蓄電装置6で負担することが望ましい。
また、前記実施形態では、第2CSモードでの電動モータ3の力行運転時に、第1蓄電装置5だけから電動モータ3に給電する(第2蓄電装置6の放電を禁止する)ようにした。ただし、要求出力DM_dmdが大きい場合等に、要求出力DM_dmdの一部に対応する給電量を、第2蓄電装置6から電動モータ3に給電するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、動力システム1を搭載する輸送機器が、ハイブリッド車両である場合を一例として説明した。ただし、当該輸送機器は、車両に限らず、船舶、鉄道車両等であってもよい。また、被動負荷は、車両の駆動輪DW以外のものであってもよい。また、アクチュエータは、電動モータ以外のアクチュエータであってもよい。