以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電源システム1を搭載する電動車両V(以下、単に「車両」という)の構成を示す図である。
車両Vは、第1車輪Wrと、第2車輪Wfと、第1車輪Wrに連結された第1電動発電機としての第1駆動モータMrと、第2車輪Wfに連結された第2電動発電機としての第2駆動モータMfと、これら駆動モータMr,Mfとの間で電力の授受を行う電源システム1と、第1車輪Wrに設けられた第1機械制動装置Brと、第2車輪Wfに設けられた第2機械制動装置Bfと、これら電源システム1、駆動モータMr,Mf、及び機械制動装置Br,Bfを制御する電子制御ユニット7(以下、「ECU」との略称を用いる)と、を備える。
第1車輪Wrは、左側車輪と右側車輪との2つの車輪で構成される。第2車輪Wfは、左側車輪と右側車輪との2つの車輪で構成される。以下では、第1車輪Wrを、車両Vの進行方向後方側に設けられる後輪とし、第2車輪Wfを、車両Vの進行方向前方側に設けられる前輪とした場合について説明するが、本発明はこれに限らない。例えば第1車輪Wrを前輪とし、第2車輪Wfを後輪としてもよい。
車両Vは、ECU7による電源システム1の制御下において、全輪駆動モード(以下、「AWDモード」ともいう)及び二輪駆動モード(以下、「2WDモード」ともいう)の何れかの駆動モードの下で走行可能である。AWDモードとは、第1車輪Wr及び第2車輪Wfの両方を駆動輪として走行する駆動モードであり、2WDモードとは、第1車輪Wrを駆動輪とし第2車輪Wfを従動輪として走行する駆動モードである。以下で説明するように、車両Vは、基本的にはAWDモードの下で走行し、所定の条件が成立した場合に2WDモードの下で走行する。
ECU7には、運転者が操作可能な省電力運転要求ボタンBM1及びスポーツ走行要求ボタンBM2が接続されている。運転者によって省電力運転要求ボタンBM1が押圧操作されている場合、ECU7は、駆動モードを優先的に2WDモードにして車両Vを走行させることにより、電源システム1における電力の消費を抑制する。また運転者によってスポーツ走行要求ボタンBM2が押圧操作されている場合、ECU7は、駆動モードを優先的にAWDモードにして車両Vを走行させる。なお後に詳細に説明するように、運転状態が高出力走行状態である場合、後述の第2バッテリB2に蓄えられている電力が頻繁に用いられる。そこでECU7は、スポーツ走行要求ボタンBM2が押圧されている場合には、運転者による高出力走行要求に継続的に応えられるようにするため、第2バッテリB2の蓄電量を速やかに回復させる回復モードの下で車両Vを走行させる。
第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfは、それぞれ主として車両Vが走行するための動力を発生する。各駆動モータMr,Mfの出力軸は、図示しない動力伝達機構を介して車輪Wr,Wfに連結されている。電源システム1から駆動モータMr,Mfに三相交流電力を供給することにより駆動モータMr,Mfで発生させたトルクは、図示しない動力伝達機構を介して車輪Wr,Wfに伝達され、車輪Wr,Wfを回転させ、車両Vを走行させる。また駆動モータMr,Mfは、車両Vの減速時には発電機として作用させることにより、回生電力を発電するとともに、この回生電力の大きさに応じた回生制動トルクを車輪Wr,Wfに付与する。駆動モータMr,Mfによって発電された回生電力は、電源システム1が備える後述の第1バッテリB1や第2バッテリB2に充電される。
第1機械制動装置Br及び第2機械制動装置Bfは、それぞれ第1車輪Wr及び第2車輪Wfに対し摩擦による機械制動トルクを付与するディスクブレーキシステムによって構成される。ECU7は、駆動モータMr,Mfから車輪Wr,Wfに付与される回生制動トルクと機械制動装置Br,Bfから車輪Wr,Wfに付与される機械制動トルクとを協調させる協調制御処理を行うことによって、機械制動装置Br,Bfから車輪Wr,Wfに付与する制動トルクに対する目標を設定する。機械制動装置Bf,Brは、この協調制御処理によって定められた目標に応じた機械制動トルクを車輪Wr,Wfに付与し、車両Vを減速させる。
電源システム1は、第1蓄電装置としての第1バッテリB1及び第2蓄電装置としての第2バッテリB2と、電力を消費する電気負荷としての車両補機Hと、これらバッテリB1,B2と駆動モータMr,Mfとを接続する電力回路2と、を備える。
第1バッテリB1は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電と、及び電気エネルギを化学エネルギに変換する充電との両方が可能な二次電池である。以下では、この第1バッテリB1として、電極間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う所謂リチウムイオン蓄電池を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
第1バッテリB1には、第1バッテリB1の内部状態を推定するため第1バッテリセンサユニット81が設けられている。第1バッテリセンサユニット81は、ECU7において第1バッテリB1の充電率や温度等を取得するために必要な物理量を検出し、検出値に応じた信号をECU7へ送信する複数のセンサによって構成される。より具体的には、第1バッテリセンサユニット81は、第1バッテリB1の端子電圧を検出する電圧センサ、第1バッテリB1を流れる電流を検出する電流センサ、及び第1バッテリB1の温度を検出する温度センサ等によって構成される。
ECU7は、第1バッテリセンサユニット81から送信される検出値を用いた既知のアルゴリズムに基づいて、第1バッテリB1の蓄電量に応じて大きくなる第1蓄電パラメータ、より具体的には、第1バッテリB1の蓄電量を百分率で表した充電率を算出する。以下では、第1バッテリセンサユニット81から送信される信号を用いてECU7において算出される第1バッテリB1の充電率を第1SOC(State Of Charge)という。
第2バッテリB2は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電と、及び電気エネルギを化学エネルギに変換する充電との両方が可能な二次電池である。以下では、この第2バッテリB2として、電極間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う所謂リチウムイオン蓄電池を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。第2バッテリB2は、例えばキャパシタを用いてもよい。
第2バッテリB2には、第2バッテリB2の内部状態を推定するため第2バッテリセンサユニット82が設けられている。第2バッテリセンサユニット82は、ECU7において第2バッテリB2の充電率や温度等を取得するために必要な物理量を検出し、検出値に応じた信号をECU7へ送信する複数のセンサによって構成される。より具体的には、第2バッテリセンサユニット82は、第2バッテリB2の端子電圧を検出する電圧センサ、第2バッテリB2を流れる電流を検出する電流センサ、及び第2バッテリB2の温度を検出する温度センサ等によって構成される。
ECU7は、第2バッテリセンサユニット82から送信される検出値を用いた既知のアルゴリズムに基づいて、第2バッテリB2の蓄電量に応じて大きくなる第2蓄電パラメータ、より具体的には、第2バッテリB2の蓄電量を百分率で表した充電率を算出する。以下では、第2バッテリセンサユニット82から送信される信号を用いてECU7において算出される第2バッテリB2の充電率を第2SOCという。
ここで、第1バッテリB1の特性と第2バッテリB2の特性を比較する。
先ず、第1バッテリB1の満充電時電圧は第2バッテリB2の満充電時電圧よりも高い。このため車両Vの走行中は、第1バッテリB1が直接的に接続されている後述の第1電力線21の電圧は、第2バッテリB2が直接的に接続されている第2電力線22の電圧よりも高い。
第1バッテリB1は、第2バッテリB2よりも出力重量密度が低くかつエネルギ重量密度が高い。また第1バッテリB1は第2バッテリB2よりも容量が大きい。すなわち、第1バッテリB1は、エネルギ重量密度の点で第2バッテリB2よりも優れる。また第2バッテリB2は、出力重量密度の点で第1バッテリB1よりも優れる。なお、エネルギ重量密度とは、単位重量あたりの電力量[Wh/kg]であり、出力重量密度とは、単位重量あたりの電力[W/kg]である。したがって、エネルギ重量密度が優れている第1バッテリB1は、高容量を主目的とした容量型の蓄電装置であり、出力重量密度が優れている第2バッテリB2は、高出力を主目的とした出力型の蓄電装置である。このため電源システム1では、第1バッテリB1を主電源として用い、第2バッテリB2をこの主電源たる第1バッテリB1を補う副電源として用いる。
図2は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の使用範囲を示す図である。図2の左側は第1バッテリB1の第1SOCの使用範囲を示し、右側は第2バッテリB2の第2SOCの使用範囲を示す。
第1バッテリB1及び第2バッテリB2の過充電による劣化を防止するため、第1SOC[%]及び第2SOC[%]には、それぞれ100%よりもやや低い位置に第1使用可能上限及び第2使用可能上限が設定されている。すなわち、第1SOCが第1使用可能上限より高くなると第1バッテリB1が劣化するおそれがある。また第2SOCが第2使用可能上限よりも高くなると第2バッテリB2が劣化するおそれがある。このため、第1SOCが第1使用可能上限より高い場合、第1バッテリB1への回生電力の供給は禁止され、第2SOCが第2使用可能上限より高い場合、第2バッテリB2への回生電力の供給は禁止される。
またバッテリは、蓄電量が過度に少なくなると、その電圧も過度に低下し、必要な電力を供給できなくなる場合がある。このため、第1SOC及び第2SOCには、それぞれ0%よりもやや高い位置に第1使用可能下限及び第2使用可能下限が設定されている。すなわち、第1SOCが第1使用可能下限以下になると第1バッテリB1からは必要とされる電力を出力できなくなるおそれがある。また第2SOCが第2使用可能下限以下になると第2バッテリB2から必要とされる電力を出力できなくなるおそれがある。このため、第1SOCが第1使用可能下限以下である場合、第1バッテリB1の放電が禁止され、第2SOCが第2使用可能下限以下である場合、第2バッテリB2の放電が禁止される。
以上のように、第1バッテリB1の使用可能範囲は、第1使用可能上限と第1使用可能下限との間であり、第2バッテリB2の使用可能範囲は、第2使用可能上限と第2使用可能下限との間である。
図1に戻り、電力回路2は、第1駆動モータMrとの間で電力の授受を行う第1インバータ3rと、この第1インバータ3rの直流入出力端子と第1バッテリB1とを接続する第1回路としての第1電力線21と、第2駆動モータMfとの間で電力の授受を行う第2インバータ3fと、この第2インバータ3fの直流入出力端子と第2バッテリB2と車両補機Hとを接続する第2電力線22と、第1電力線21と第2電力線22とを接続する電圧変換器4と、を備える。
第1インバータ3r及び第2インバータ3fは、例えば、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT)をブリッジ接続して構成されるブリッジ回路を備えた、パルス幅変調によるPWMインバータであり、直流電力と交流電力とを変換する機能を備える。第1インバータ3rは、その直流入出力側において第1電力線21に接続され、その交流入出力側において第1駆動モータMrのU相、V相、W相の各コイルに接続されている。第2インバータ3fは、その直流入出力側において第2電力線22に接続され、その交流入出力側において第2駆動モータMfのU相、V相、W相の各コイルに接続されている。インバータ3r,3fは、ECU7の図示しないゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って各相のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、電力線21,22における直流電力を三相交流電力に変換して駆動モータMr,Mfに供給したり、駆動モータMr,Mfから供給される三相交流電力を直流電力に変換して電力線21,22に供給したりする。
電圧変換器4は、第1電力線21と第2電力線22とを接続し、第1電力線21と第2電力線22との間で電圧を変換する。電圧変換器4は、リアクトル、平滑コンデンサ、及び複数のスイッチング素子(例えば、IGBT)等を組み合わせて構成され、これら第1電力線21と第2電力線22との間で直流電圧を変換する所謂双方向DCDCコンバータである。電圧変換器4は、ECU7の図示しないゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って上記複数のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、第1電力線21と第2電力線22との間で電圧を変換する。
本実施形態では、第1バッテリB1の満充電時電圧は第2バッテリB2の満充電時電圧よりも高い。したがって基本的には、第1電力線21の電圧は、第2電力線22の電圧よりも高い。そこでECU7は、第1電力線21における電力を第2電力線22に供給する場合には、電圧変換器4を駆動し、降圧機能を発揮させる。降圧機能とは、高電圧側である第1電力線21における電力を降圧して第2電力線22に出力する機能をいい、これにより第1電力線21側から第2電力線22側へ電流が流れる。またECU7は、第2電力線22における電力を第1電力線21に供給する場合には、電圧変換器4を駆動し、昇圧機能を発揮させる。昇圧機能とは、低電圧側である第2電力線22における電力を昇圧して第1電力線21に出力する機能をいい、これにより第2電力線22側から第1電力線21側へ電流が流れる。
車両補機Hは、例えば、第1バッテリB1を加温するバッテリヒータ、図示しない車室内の温度を調節するエアコン、及び図示しない補機バッテリを充電するDCDCコンバータ等によって構成されている。
ECU7は、マイクロコンピュータであり、車両Vの走行中に、インバータ3r、3f、電圧変換器4、及び機械制動装置Br,Bf等を操作することによって、バッテリB1,B2の充放電、ひいては電力線21,22及び電圧変換器4における電力の流れを制御する。以下では、ECU7によるエネルギマネジメント制御の詳細な手順について説明する。
図3は、ECU7に構成された複数の制御モジュールのうちエネルギマネジメント制御の実行に係る部分を示す図である。
ECU7は、各種要求電力を算出する要求電力算出部70と、主に車両Vの運転状態の判定に係る処理を実行する運転状態判定部71と、運転状態判定部71における判定結果等を用いて主に駆動モータMr,Mfによるトルク配分に係る処理を実行し、この処理結果を用いて第1インバータ3r及び第2インバータ3fを制御するインバータ制御部72と、運転状態判定部71における判定結果等を用いて主にバッテリB1,B2の充放電の負担割合に係る処理を実行し、この処理結果を用いて電圧変換器4を制御する電圧変換器制御部73と、インバータ制御部72におけるトルク配分に係る処理の結果を用いて機械制動装置Br,Bfを制御する第1機械制動制御部74r及び第2機械制動制御部74fと、回生判定部75と、を備える。
要求電力算出部70は、車両Vに搭載されている各種装置において要求されている電力である要求電力を算出する。要求電力算出部70において算出される要求電力としては、例えば、車両要求電力と、総要求電力と、がある。
車両要求電力とは、車両Vを駆動するために必要な装置、より具体的には第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfにおいて要求される電力である。要求電力算出部70は、図示しないアクセルペダルの開度を検出するアクセルペダル開度センサの検出値と図示しないブレーキペダルの開度を検出するブレーキペダル開度センサの検出値とに基づいて、車両Vの要求駆動力を算出し、この要求駆動力に基づいて車両要求電力を算出する。この車両要求電力は、駆動モータMr,Mfの力行運転時には正となり、駆動モータMr,Mfの回生運転時には負となる。
総要求電力とは、電源システム1の第1電力線21及び第2電力線22において要求される電力である。要求電力算出部70は、車両補機Hにおける要求電力である補機要求電力を算出し、この補機要求電力を上記車両要求電力に加算することによって総要求電力を算出する。
回生判定部75は、回生フラグの値を更新する。回生フラグとは、駆動モータMr,Mfから車輪Wr,Wfに回生制動トルクを付与する回生走行が可能な状態であることを明示するフラグであり、“0”又は“1”の値を取り得る。回生フラグの値が“0”であることは、回生走行が可能でない状態であることを意味し、回生フラグの値が“1”であることは、回生走行が可能な状態であることを意味する。回生判定部75は、上述のアクセルペダル開度センサやブレーキペダル開度センサ等の検出値に基づいて回生フラグの値を更新する。
運転状態判定部71は、要求電力算出部70において算出される要求電力、回生判定部75において更新される回生フラグ、及びバッテリセンサユニット81,82の検出信号に基づいて算出される第1SOC,第2SOC等の様々な入力に基づいて、後に図10〜図23を参照して説明する手順に従って、車両Vの運転状態やバッテリB1,B2の使用状態等を表す各種フラグの値を更新する。
運転状態判定部71においてその値が更新されるフラグには、運転状態フラグと、第1バッテリ使用フラグと、第2バッテリ使用フラグと、第2SOC消費要求フラグと、電気パス実行フラグと、電圧変換器停止要求フラグと、第1バッテリ故障フラグと、第2バッテリ故障フラグと、がある。
運転状態フラグとは、現在の車両Vの運転状態を明示するフラグであり、“0”,“1”,“2”,“3”,“4”,“5”,の何れかの値を取り得る。電源システム1では、車両Vの運転状態として、「通常走行状態」と、「高出力走行状態」と、「低出力走行状態」と、「回生走行状態」と、「アイドル状態」と、「故障走行状態」と、の6つの運転状態が定義されている。運転状態フラグの値が“0”であることは、運転状態が通常走行状態であることを意味する。運転状態フラグの値が“1”であることは、運転状態は高出力走行状態であることを意味する。運転状態フラグの値が“2”であることは、運転状態は低出力走行状態であることを意味する。運転状態フラグの値が“3”であることは、運転状態は回生走行状態であることを意味する。運転状態フラグの値が“4”であることは、運転状態はアイドル状態であることを意味する。運転状態フラグの値が“5”であることは、運転状態は故障走行状態であることを意味する。
第1バッテリ使用フラグとは、第1バッテリB1の使用状態を明示するフラグであり、“0”,“1”,“2”の何れかの値を取り得る。第1バッテリ使用フラグの値が“0”であることは、第1バッテリB1の充電及び放電、すなわち第1バッテリB1への電力の供給及び第1バッテリB1から負荷への電力の供給が共に許可されていることを意味する。第1バッテリ使用フラグの値が“1”であることは、第1バッテリB1の放電が禁止された状態であることを意味する。第1バッテリ使用フラグの値が“2”であることは、第1バッテリB1の充電が禁止されていることを意味する。
第2バッテリ使用フラグとは、第2バッテリB2の使用状態を明示するフラグであり、“0”,“1”,“2”の何れかの値を取り得る。第2バッテリ使用フラグの値が“0”であることは、第2バッテリB2の充電及び放電、すなわち第1バッテリB1への電力の供給及び第1バッテリB1から負荷への電力の供給が共に許可されていることを意味する。第2バッテリ使用フラグの値が“1”であることは、第2バッテリB2の放電が禁止された状態であることを意味する。第2バッテリ使用フラグの値が“2”であることは、第2バッテリB2の充電が禁止されていることを意味する。
第2SOC消費フラグとは、第2バッテリB2の第2SOCが第2使用可能上限に近い状態、すなわち第2SOCの消費が要求されている状態であることを明示するフラグであり、“0”,“1”の何れかの値を取り得る。第2SOC消費フラグの値が“0”であることは、第2SOCの消費が要求されていない状態であることを意味する。また第2SOC消費フラグの値が“1”であることは、第2SOCの消費が要求されている状態であることを意味する。
電気パス実行フラグとは、第1バッテリB1から放電した電力を第2バッテリB2に供給し、第2バッテリB2を充電する電気パス制御が実行されている状態であることを明示するフラグであり、“0”,“1”,“2”の何れかの値を取り得る。電気パス実行フラグの値が“0”であることは、電気パス制御が実行されていない状態であることを意味する。電気パス実行フラグの値が“1”であることは、電気パス制御が実行されている状態であることを意味する。また電気パス実行フラグの値が“2”であることは、電気パス制御の実行が中断されている状態(すなわち、電気パス制御の実行が一時的に禁止されている状態)であることを意味する。
電圧変換器停止要求フラグとは、電圧変換器4において発生する損失を低減するため、電圧変換器4の停止が要求された状態であることを明示するフラグであり、“0”,“1”の何れかの値を取り得る。電圧変換器停止要求フラグの値が“0”であることは、電圧変換器4の停止が要求されていない状態であることを意味し、電圧変換器停止要求フラグの値が“1”であることは、電圧変換器4の停止が要求されている状態であることを意味する。
第1バッテリ故障フラグとは、第1バッテリB1が故障した状態であることを明示するフラグであり、“0”,“1”の何れかの値を取り得る。第1バッテリ故障フラグの値が“0”であることは、第1バッテリB1は正常であり使用可能な状態であることを意味する。また第1バッテリ故障フラグの値が“1”であることは、第1バッテリB1は故障しており使用不能な状態であることを意味する。
第2バッテリ故障フラグとは、第2バッテリB2が故障した状態であることを明示するフラグであり、“0”,“1”の何れかの値を取り得る。第2バッテリ故障フラグの値が“0”であることは、第2バッテリB2は正常であり使用可能な状態であることを意味する。また第2バッテリ故障フラグの値が“1”であることは、第2バッテリB2は故障しており使用不能な状態であることを意味する。
次に、図4A〜図9Bを参照して、各運転状態で実現される電力の流れについて説明する。
図4A〜図4Cは、運転状態が通常走行状態であるときに、電源システム1において実現される電力の流れを模式的に示す図である。より具体的には、図4Aは、運転状態フラグの値が“0”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示し、図4Bは、運転状態フラグの値が“0”でありかつ電気パス実行フラグが“1”である場合に実現される電力の流れを示す。図4Cは、運転状態フラグの値が“0”であり、第2バッテリ使用フラグの値が“0”であり、さらに第2SOC消費フラグが“1”である場合に実現される電力の流れを示す。
図4A〜図4Cに示すように、運転状態が通常走行状態である場合、電源システム1は、第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfの両方に電力を供給し、第1車輪Wr及び第2車輪Wfを駆動輪として走行する。すなわち、運転状態が通常走行状態である場合、車両Vの駆動モードはAWDモードである。
図4Aに示すように、運転状態が通常走行状態である場合、基本的には、第2バッテリB2から第2電力線22への放電は禁止される。従って第1駆動モータMr、第2駆動モータMf、及び車両補機Hにおいて必要とされる電力は、全て第1バッテリB1から放電される電力によって賄われる。すなわち、第1バッテリB1から第1電力線21に放電される電力の一部が電圧変換器4を介して第2電力線22に供給され、第2駆動モータMf及び車両補機Hにおいて消費される。
図4Bに示すように、運転状態が通常走行状態である間に電気パス制御が実行されると、第2バッテリB2には第1バッテリB1から放電される電力の一部が供給される。この場合、第1駆動モータMr、第2駆動モータMf、車両補機H、及び第2バッテリB2において必要とされる電力は、全て第1バッテリB1から放電される電力によって賄われる。
図4Cに示すように、運転状態が通常走行状態である間に第2SOC消費フラグの値が“1”になると、第2バッテリB2から第2電力線22へ電力が放電され、第2駆動モータMf及び車両補機Hにおいて消費される。これにより第2バッテリB2の第2SOCの消費が促進される。なお第2バッテリB2から第2電力線22へ電力を放電すると、その分だけ第1バッテリB1の負担を軽減できるので、図4Aの例よりも電圧変換器4を介して第1電力線21から第2電力線22へ流れる電力を減らすことができる。したがって図4Cの場合と図4Aの場合とを比較すると、電圧変換器4における損失は図4Cの場合の方が少ない。
図5は、運転状態が高出力走行状態であるときに、電源システム1において実現される電力の流れを模式的に示す図である。より具体的には、図5は、運転状態フラグの値が“1”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合に実現される電力の流れを示す。
図5に示すように、運転状態が高出力走行状態である場合、電源システム1は、第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfの両方に電力を供給し、第1車輪Wr及び第2車輪Wfを駆動輪として走行する。すなわち、運転状態が高出力走行状態である場合、車両Vの駆動モードはAWDモードである。
高出力走行状態では、図4A〜図4Cを参照して説明した通常走行状態と比較して、電力線21,22において要求されている電力である総要求電力が大きい。よって図5に示すように、運転状態が高出力走行状態である場合、基本的には、第2バッテリB2から第2電力線22へ電力が放電され、第2駆動モータMf及び車両補機Hにおいて消費される。これにより、総要求電力のうち第1バッテリB1のみでは賄えない不足電力は、第2バッテリB2によって補償される。
図6A〜図6Bは、運転状態が低出力走行状態であるときに、電源システム1において実現される電力の流れを模式的に示す図である。より具体的には、図6Aは、運転状態フラグの値が“2”であり、第2バッテリ使用フラグの値が“0”であり、かつ電圧変換器停止要求フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示し、図6Bは、運転状態フラグの値が“2”であり、電圧変換器停止要求フラグの値が“0”であり、かつ電気パス実行フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示す。
図6A〜図6Bに示すように、運転状態が低出力走行状態である場合、電源システム1は、第1駆動モータMrに対しては要求されている電力を供給し、第1車輪Wrを駆動輪として走行するとともに、第2駆動モータMfに対しては、駆動トルクを0として第2車輪Wfを第1車輪Wrに従動させるゼロトルク制御を行うために必要な電力のみを供給する。すなわち、運転状態が低出力走行状態である場合、車両Vの駆動モードは2WDモードである。
低出力走行状態では、第2電力線22において要求される電力は、第2駆動モータMfの駆動トルクを0で維持するために必要な電力、及び車両補機Hで要求されている電力のみであり、上述の通常走行状態や高出力走行状態と比較して小さい。このため、低出力走行状態では、第2電力線22において要求されている電力を第2バッテリB2から放電される電力のみで賄うことが可能である。そこで図6Aに示すように、運転状態が低出力走行状態である場合、基本的には、第2バッテリB2から第2電力線22への放電は許可され、第2駆動モータMfのゼロトルク制御を行うために必要な電力及び車両補機Hにおいて必要とされる電力は、第2バッテリB2のみによって賄われる。
図6Bに示すように、運転状態が低出力走行状態である間に第2SOCが所定の閾値を下回ると、第2バッテリB2から第2電力線22への放電が禁止され、さらに必要に応じて電気パス制御が実行される。これにより、第1バッテリB1から第1電力線21へ放電される電力の一部が電圧変換器4を介して第2電力線22側へ供給される。これにより、第2駆動モータMfのゼロトルク制御を行うために必要な電力と、車両補機Hにおいて必要とされる電力と、第2バッテリB2を充電するために必要な電力とは、全て第1バッテリB1から放電される電力によって賄われる。
図7A〜図7Eは、運転状態が回生走行状態であるときに、電源システム1において実現される電力の流れを模式的に示す図である。より具体的には、図7Aは、運転状態フラグの値が“3”であり、かつ第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”である場合に実現される電力の流れを示し、図7Bは、運転状態フラグの値が“3”であり、第1バッテリ使用フラグの値が“0”であり、かつ第2バッテリ使用フラグの値が“2”である場合に実現される電力の流れを示し、図7Cは、運転状態フラグの値が“3”であり、第1バッテリ使用フラグの値が“2”であり、かつ第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合に実現される電力の流れを示し、図7Dは、運転状態フラグの値が“3”であり、かつ第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“2”である場合に実現される電力の流れを示し、図7Eは、運転状態フラグの値が“3”であり、かつ電気パス実行フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示す図である。
運転状態が回生走行状態である場合、できるだけ多くの回生電力をバッテリB1,B2で回収し、機械制動装置Br,Bfにおける損失を少なくできるよう、駆動モードはAWDモードに設定される。したがって運転状態が回生走行状態である場合、図7A〜図7C及び図7Eに示すように、第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfでは回生電力が発生し、それぞれ第1電力線21及び第2電力線22に供給される。
図7Aに示すように、運転状態が回生走行状態でありかつ第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”である場合には、第1駆動モータMrから第1電力線21に供給される回生電力は第1バッテリB1の充電に消費され、第2駆動モータMfから第2電力線22に供給される回生電力は第2バッテリB2の充電及び車両補機Hの駆動に消費される。なお後に図24を参照して説明するように、減速回生時に前輪である第2車輪に付与される回生制動トルクは後輪である第1車輪に付与される回生制動トルクよりも大きい。このため第2駆動モータMfから第2電力線22に供給される回生電力は第1駆動モータMrから第1電力線21に供給される回生電力よりも大きい。このため、第2電力線22に供給される回生電力のうち第2バッテリB2及び車両補機Hで消費しきれない余剰分は、電圧変換器4を介して第1バッテリB1に供給されるようになっている。
図7Bに示すように、運転状態が回生走行状態であり、第1バッテリ使用フラグの値が“0”であり、かつ第2バッテリ使用フラグの値が“2”である場合には、第2バッテリB2の充電が禁止される。また第2電力線22における回生電力のうち、車両補機Hでは消費しきれない分は、電圧変換器4を介して第1電力線21に供給され、第1バッテリB1の充電に消費される。なお図7Bの例と図7Aの例とを比較した場合、図7Bの例では第2バッテリB2の充電が禁止されている分、図7Aの例よりも電圧変換器4の通過電力が増加する。このため、図7Bの例は図7Aの例よりも電圧変換器4における損失が大きい。
図7Cに示すように、運転状態が回生走行状態であり、第1バッテリ使用フラグの値が“2”であり、かつ第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合には、第1バッテリB1の充電が禁止される。このため、第1駆動モータMrから第1電力線21に供給される回生電力は、電圧変換器4を介して第2電力線22に供給される。また第2電力線22における回生電力は、第2バッテリB2の充電及び車両補機Hの駆動に消費される。
図7Dに示すように、運転状態が回生走行状態であり、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が何れも“2”である場合には、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の充電が禁止される。この場合、駆動モータMr,Mfから電力線21,22へ供給される回生電力は0となる。また回生電力が0となると、駆動モータMr,Mfから車輪Wr,Wfに付与される回生制動トルクも0となるが、この場合機械制動装置Br,Bfから車輪Wr,Wfに付与される機械制動トルクが増加し、これにより要求に応じた減速操作が実現される。
図7Eに示すように、運転状態が回生走行状態でありかつ電気パス実行フラグの値が“1”となった場合には、第1駆動モータMrから第1電力線21に供給される回生電力及び第1バッテリB1から第1電力線21に放電される電力は、電圧変換器4を介して第2電力線22に供給される。また第2駆動モータMfから第2電力線22に供給される回生電力及び電圧変換器4から第2電力線22に供給される電力は、第2バッテリB2の充電及び車両補機Hの駆動に消費される。
図8A〜図8Bは、運転状態がアイドル状態であるときに、電源システム1において実現される電力の流れを模式的に示す図である。より具体的には、図8Aは、運転状態フラグの値が“4”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合に実現される電力の流れを示し、図8Bは、運転状態フラグの値が“4”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示す。
図8A〜図8Bに示すように、運転状態がアイドル状態である場合、電源システム1は、駆動モータMr,Mfへの電力の供給を停止し、車両補機Hへのみ電力を供給する。
そこで運転状態がアイドル状態である場合、基本的には、第2バッテリB2から第2電力線22へ放電が許可され、車両補機Hにおいて必要とされる電力は、第2バッテリB2によって賄われる。これによりアイドル状態では、図8Aに示すように電圧変換器4を停止し、第1電力線21と第2電力線22との間の電力の流れを遮断できるので、電圧変換器4における損失を0にすることができる。
また運転状態がアイドル状態である場合において、第2バッテリB2の第2SOCが低下すると、次回の加速時に第2バッテリB2から必要な電力を放電できなくなってしまうおそれがある。そこで運転状態がアイドル状態である場合には、第2バッテリB2の第2SOCに応じて第2バッテリB2から第2電力線22への放電が禁止されるようになっている。図8Bに示すように、運転状態がアイドル状態である間に第2バッテリB2の放電が禁止されると、車両補機Hには、第1バッテリB1から放電される電力が供給される。この場合、第1バッテリB1から放電される電力は電圧変換器4を通過するため、図8Aの場合と比較して電圧変換器4において損失が発生するものの、第2バッテリB2の第2SOCの消費を抑制できる。
図9A〜図9Bは、運転状態が故障走行状態であるときに、電源システム1において実現される電力の流れを模式的に示す図である。より具体的には、図9Aは、運転状態フラグの値が“5”でありかつ第2バッテリ故障フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示し、図9Bは、運転状態フラグの値が“5”でありかつ第1バッテリ故障フラグの値が“1”である場合に実現される電力の流れを示す。
図9Aに示すように、第2バッテリB2が故障した場合、第1駆動モータMr、第2駆動モータMf、及び車両補機Hにおいて必要とされる電力は、全て第1バッテリB1によって賄われる。
また図9Bに示すように、第1バッテリB1が故障した場合、第1駆動モータMr、第2駆動モータMf、及び車両補機Hにおいて必要とされる電力は、全て第2バッテリB2によって賄われる。しかしながら上述のように第2バッテリB2の容量は第1バッテリB1よりも小さい。そこで電源システム1では、第2バッテリB2のみによる航続距離をできるだけ長くするため、第1バッテリB1が故障した場合には、第2車輪Wfを駆動輪とし第1車輪Wrを従動輪として走行する。すなわち、第1駆動モータMrについては、第2バッテリB2から放電される電力を用いてゼロトルク制御を行い、第1駆動モータMrに必要な電力をできるだけ少なくする。これにより、第1バッテリB1の故障後の航続距離を長くすることができる。
図3に戻り、インバータ制御部72は、駆動力配分算出部721と、第1ゲートドライブ回路722と、第2ゲートドライブ回路723と、を備え、これらを用いることによって第1インバータ3r及び第2インバータ3fを制御する。
駆動力配分算出部721は、要求電力算出部70によって算出される要求電力、回生判定部75によって更新される回生フラグ、電圧変換器制御部73において算出される後述のバッテリ合成制限電力、及び運転状態判定部71によって更新される各種フラグ等に基づいて、図4A〜図9Bに示す電力の流れが実現されるように、第1駆動モータMrに対する第1要求モータトルク及び第2駆動モータMfに対する第2要求モータトルクを算出する。これら第1要求モータトルク及び第2要求モータトルクは、上述の車両要求電力と同様に、駆動モータMr,Mfの力行運転時には正となり、駆動モータMr,Mfの回生運転時には負となる。なお、この駆動力配分算出部721における具体的な演算手順については、後に図24を参照して説明する。
第1ゲートドライブ回路722は、駆動力配分算出部721において算出される第1要求モータトルクに応じて第1インバータ3rのスイッチング制御を行う。これにより第1駆動モータMrから第1車輪Wrへ、第1要求モータトルクに応じた大きさの駆動トルク(第1要求モータトルクが正である場合)又は回生制動トルク(第1要求モータトルクが負である場合)が付与される。
第2ゲートドライブ回路723は、駆動力配分算出部721において算出される第2要求モータトルクに応じて第2インバータ3fのスイッチング制御を行う。これにより第2駆動モータMfから第2車輪Wfへ、第2要求モータトルクに応じた大きさの駆動トルク(第2要求モータトルクが正である場合)又は回生制動トルク(第2要求モータトルクが負である場合)が付与される。
第1機械制動制御部74rは、車両Vの減速時に第1車輪Wrに付与する制動トルクに対する目標に相当する第1目標制動トルクを算出するとともに、この第1目標制動トルクから駆動力配分算出部721によって算出される第1要求モータトルクを減算することによって第1目標機械制動トルクを算出し、これを第1機械制動装置Brに入力する。ここで第1目標制動トルクは、要求電力算出部70において算出される車両要求電力に基づいて算出される。これにより車両Vの減速時において、第1駆動モータMrから第1車輪Wrに付与される回生制動トルクのみで不足する場合には、これを補うように第1機械制動装置Brから第1車輪Wrに機械制動トルクが付与される。
第2機械制動制御部74fは、車両Vの減速時に第2車輪Wfに付与する制動トルクに対する目標に相当する第2目標制動トルクを算出するとともに、この第2目標制動トルクから駆動力配分算出部721によって算出される第2要求モータトルクを減算することによって第2目標機械制動トルクを算出し、これを第2機械制動装置Bfに入力する。ここで第2目標制動トルクは、要求電力算出部70において算出される車両要求電力に基づいて算出される。これにより車両Vの減速時において、第2駆動モータMfから第2車輪Wfに付与される回生制動トルクのみで不足する場合には、これを補うように第2機械制動装置Bfから第2車輪Wfに機械制動トルクが付与される。
電圧変換器制御部73は、合成制限電力算出部731と、エネルギ配分算出部732と、ゲートドライブ回路733と、を備え、これらを用いることによって電圧変換器4を制御する。
エネルギ配分算出部732は、要求電力算出部70において算出される要求電力、回生判定部75において更新される回生フラグ、及び運転状態判定部71において更新される各種フラグ等に基づいて、図4A〜図9Bに示す電力の流れが実現されるように、電圧変換器4を通過する電力に対する要求通過電力を算出する。この要求通過電力は、例えば第1電力線21側から第2電力線22側を正とする。なお、このエネルギ配分算出部732における具体的な演算手順については、後に図25を参照して説明する。
ゲートドライブ回路733は、エネルギ配分算出部732によって算出される要求通過電力を、電圧変換器4を第1電力線21側から第2電力線22側へ流れる電流に対する目標に換算し、この目標が実現するように電圧変換器4のスイッチング制御を行う。
次に、図10〜図23を参照して、運転状態判定部71における具体的な演算手順について説明する。
図10は、運転状態判定部71における運転状態判定処理のメインフローチャートである。図10の運転状態判定処理は、運転者により車両Vを始動するためのスタートボタン(図示せず)がオン操作されてから、このスタートボタンがオフ操作されるまでの間、運転状態判定部71において所定の制御周期で繰り返し実行される。
S1では、運転状態判定部71は、バッテリセンサユニット81,82から送信される信号に基づいて、バッテリB1,B2が正常であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S1の判定結果がYESである場合にはS2に移り、NOである場合にはS13に移り、後に図21を参照して説明する故障走行判定処理を実行する。
S2では、運転状態判定部71は、車両Vの速度である車速を検出する車速センサ(図示せず)から送信される信号に基づいて、車両Vが停止中であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S2の判定結果がNOである場合にはS3に移り、YESである場合にはS12に移り、後に図19を参照して説明するアイドル判定処理を実行する。
S3では、運転状態判定部71は、回生フラグの値が“1”であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S3の判定結果がNOである場合にはS4に移り、YESである場合にはS11に移り、後に図17A及び図17Bを参照して説明する回生走行判定処理を実行する。
S4では、運転状態判定部71は、省電力運転要求ボタンBM1が押圧操作されているか否かを判定する。運転状態判定部71は、S4の判定結果がYESである場合にはS5に移り、NOである場合にはS6に移る。S5では、運転状態判定部71は、車両Vがクルーズ状態であるか否かを判定する。より具体的には、運転状態判定部71は、アクセルペダル開度センサから送信される信号、車両Vの前後加速度を検出する前後加速度センサ(図示せず)から送信される信号、及び駆動モータMr,Mfに対する要求モータトルク等を用いることによって、要求駆動力が所定の駆動力以下であるか否かを判定することにより、車両Vがクルーズ状態であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S5の判定結果がNOである場合にはS6に移り、YESである場合にはS10に移り、後に図15を参照して説明する低出力走行判定処理を実行する。
S6では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1から出力可能な電力の上限である第1出力可能電力を算出し、S7に移る。運転状態判定部71は、例えば第1バッテリセンサユニット81から送信される信号に基づいて、第1出力可能電力を算出する。
S7では、運転状態判定部71は、総要求電力が第1出力可能電力より大きいか否か、すなわち第1電力線21及び第2電力線22で要求されている電力の全てを第1バッテリB1で賄うことができるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S7の判定結果がNOである場合にはS8に移り、後に図11を参照して説明する通常走行判定処理を実行する。また運転状態判定部71は、S7の判定結果がYESである場合にはS9に移り、後に図13を参照して説明する高出力走行判定処理を実行する。
図11は、通常走行判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図12は、運転状態が通常走行状態であるときに実現される第2バッテリB2の第2SOCの範囲を模式的に示す図である。
始めにS21では、運転状態判定部71は、現在の車両Vの運転状態が通常走行状態であることを明示するべく、運転状態フラグの値を“0”にし、S22に移る。
S22では、運転状態判定部71は、第2SOC消費フラグの値が“1”であるか否かを判定する。運転状態判定部71はS22の判定結果がYESである場合にはS23に移り、NOである場合にはS25に移る。この第2SOC消費フラグは、後述のS26において“1”に設定された後は、後述のS24の処理を実行するか又は運転状態フラグの値が“0”から他の値に変化したことに応じて“0”にリセットされる。
S25では、運転状態判定部71は、現在の第2バッテリB2の第2SOCが予め定められた第2通常上限以上であるか否かを判定する。この第2通常上限は、第2SOCに対する閾値であり、図12に示すように、回生電力の第2バッテリB2への供給が完全に禁止される第2使用可能上限よりもやや低く設定されている。運転状態判定部71は、S25の判定結果がYESである場合にはS26に移り、NOである場合にはS27に移る。
S26では、第2SOCが第2通常上限以上であると判定されたことに応じて、換言すれば第2SOCが第2使用可能上限の近傍まで上昇したと判定されたことに応じて、運転状態判定部71は、第2バッテリB2で回生電力を受け入れる余裕を確保するべく、第2SOC消費フラグの値を“1”にしかつ第2バッテリ使用フラグの値を“0”にし、図11の通常走行判定処理を終了する。
S23では、運転状態判定部71は、第2SOCが予め定められた消費終了判定SOC以下であるか否かを判定する。この消費終了判定SOCは、第2SOCに対する閾値であり、図12に示すように第2通常上限よりもやや低く設定されている。S23の判定結果がNOである場合、運転状態判定部71は、引き続き第2SOCの消費を促進するべく、S26に移る。またS23の判定結果がYESである場合、運転状態判定部71は、第2バッテリB2は回生電力を受け入れる余裕が確保されたと判断し、S24に移り、第2SOC消費フラグの値を“0”にリセットした後、S27に移る。
S27では、運転状態判定部71は、第2SOCが予め定められた第2通常下限より低いか否かを判定する。この第2通常下限は、第2SOCに対する閾値であり、図12に示すように、消費終了判定SOCと第2使用可能下限との間に設定されている。運転状態判定部71は、S27の判定結果がYESである場合にはS28に移り、NOである場合にはS29に移る。
S28では、第2SOCが第2通常下限より低いと判定されたことに応じて、換言すれば第2SOCが第2使用可能下限の近傍まで低下したと判定されたことに応じて、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の第2SOCの回復を促進させるべく、電気パス要求フラグの値を“1”にした後、図11の通常走行判定処理を終了する。
この電気パス要求フラグは、上述の電気パス制御の実行が要求されている状態であることを明示するフラグであり、“0”,“1”の何れかの値を取り得る。電気パス要求フラグの値が“0”であることは、電気パス制御の実行が要求されていない状態であることを意味し、電気パス要求フラグの値が“1”であることは、電気パス制御の実行が要求されている状態であることを意味する。したがってS28において電気パス要求フラグの値が“1”になったことに応じて、後に図22を参照して説明するように、電気パス制御の実行の可否を判定する電気パス判定処理が実行される。
またS29では、第2SOCが第2通常下限以上であると判定されたことに応じて、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の放電を禁止するべく、第2バッテリ使用フラグの値を“1”にした後、図11の通常走行判定処理を終了する。
以上のような図11の通常走行判定処理によって実現される電力の流れについて、図4A〜図4Cを参照しながら説明する。
先ず、図10を参照して説明したように、総要求電力が第1バッテリB1から出力可能な電力である第1出力可能電力以下である場合(図10のS7参照)、すなわち第1電力線21及び第2電力線22を合わせた全体で要求される電力を、第2バッテリB2を用いることなく第1バッテリB1から放電される電力で賄うことができる場合には、運転状態は通常走行状態となる。
図11の通常走行判定処理では、第2SOCが第2通常下限以上でありかつ第2通常上限より低い場合には、第2バッテリ使用フラグの値は“1”となる(S29参照)。このように第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図4Aに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2バッテリB2から第2電力線22への放電を禁止するとともに、駆動モータMr,Mf及び車両補機Hにおいて必要とされている電力を全て第1バッテリB1によって賄う。上述のように運転状態が通常走行状態である場合、総要求電力は第1バッテリB1の第1出力可能電力以下であるので、図4Aに示すように必要とされる電力を全て第1バッテリB1で賄うことが可能となっている。
また図11の通常走行判定処理では、第2SOCが第2通常上限以上である場合には、第2バッテリ使用フラグの値が“0”に設定され、かつ第2SOC消費フラグの値が“1”に設定される。このように各種フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図4Cに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2バッテリB2の第2SOCの消費を促進するべく、第2バッテリB2から第2電力線22へ電力を放電させる。この際、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2駆動モータMfにおいて要求されている電力と車両補機Hにおいて要求されている電力とを合算することによって、第2電力線22において要求されている電力である第2要求電力を算出するとともに、この第2要求電力から第2バッテリB2より放電される電力を除いた不足電力を第1バッテリB1から電圧変換器4を介して第2電力線22に放電させるように、インバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。したがって、第2SOC消費フラグの値が“1”に設定されている間は、上記のように第2バッテリB2をあえて用いる必要がない通常走行状態であっても、第2バッテリB2の放電が促され、第2SOCが消費する。
また図11の通常走行判定処理では、第2SOC消費フラグの値は、第2通常上限より低い消費終了判定SOC以下なったことに応じて“0”にリセットされる。後に図17A〜図18等を参照して説明するように、第2SOCが第2通常上限以上である場合、第2SOCが第2通常上限より低い場合よりも、回生電力を用いた第2バッテリB2の充電が制限される。すなわち第2通常上限は、回生電力を用いた第2バッテリB2の充電の閾値となっている。そこで図11の通常走行判定処理では、第2SOCが第2通常上限より低い消費終了判定SOC以下になるまで第2SOC消費フラグの値を“1”にし続け、第2SOCの消費を促進する。これにより、運転状態が通常走行状態から回生走行状態に移行した場合、第2駆動モータMfで発生する回生電力を、第2通常上限による制限を受けることなく第2バッテリB2で充電することができる。
また図11の通常走行判定処理では、第2SOCが第2通常下限より低い場合には、電気パス要求フラグの値が“1”となる。電気パス要求フラグの値が“1”になると、電気パス判定処理(後述の図22参照)が実行され、この判定結果に応じて電気パス実行フラグの値が“1”となる。運転状態が通常走行状態であるときに電気パス実行フラグの値が“1”となると、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図4Bに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1駆動モータMr、第2駆動モータMf、車両補機H、及び第2バッテリB2において必要とされる電力が全て第1バッテリB1から放電される電力によって賄われるように、インバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。これにより、第2バッテリB2の第2SOCが回復する。
以上より、運転状態が通常運転状態である場合には、第2バッテリB2の第2SOCは、図12に示すように第2通常上限を上限とし第2通常下限を下限とした目標収束範囲内に概ね維持される。
図13は、高出力走行判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図14は、運転状態が高出力走行状態であるときに実現される第1バッテリB1の第2SOC及び第2バッテリB2の第2SOCの範囲を模式的に示す図である。
始めにS31では、運転状態判定部71は、現在の第2バッテリB2の第2SOCが第2使用可能下限より低いか否かを判定する。運転状態判定部71は、S31の判定結果がYESである場合にはS32に移り、NOである場合にはS34に移る。
S32では、運転状態判定部71は、第2SOCが第2使用可能下限よりも低いと判定されたことに応じて、第2バッテリB2の放電を禁止するべく第2バッテリ使用フラグの値を“1”にし、さらに現在の車両Vの運転状態が通常運転状態であることを明示するべく、運転状態フラグの値を“0”にし、S33に移る。図13の高出力走行判定処理は、図4を参照して説明したように、総要求電力が第1バッテリB1の第1出力可能電力より大きい場合に実行される。しかしながら第2SOCが第2使用可能下限より低い場合、第2バッテリB2から電力を放電できないため、総要求電力から第1出力可能電力を除いた不足電力を第2バッテリB2で補うことができない。換言すれば、運転状態を高出力運転状態に移行することができない。したがってS32では、運転状態判定部71は、運転状態を通常走行状態にするべく、運転状態フラグの値を“0”にする。
S33では、第2SOCが第2使用可能下限より低いと判定されたことに応じて、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の第2SOCの回復を促進させるべく、電気パス要求フラグの値を“1”にした後、図13の高出力走行判定処理を終了する。これにより、電気パス制御の実行の可否を判定する電気パス判定処理(後述の図22参照)が実行される。
S34では、運転状態判定部71は、現在の第1バッテリB1の第1SOCが予め定められた充電警告灯点灯レベルより低いか否かを判定する。この充電警告灯点灯レベルは、第1SOCに対する閾値であり、図14に示すように第1使用可能下限よりもやや高く設定されている。なお第1SOCがこの充電警告灯点灯レベルより低くなると、図示しない処理によって運転者が視認可能な位置に設けられた充電警告灯が点滅するようになっている。これにより運転者は、第1バッテリB1の第1SOCが少ない状態であり、電源システム1は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の充電が要求されている状態であることを認識することができる。運転状態判定部71は、S34の判定結果がYESである場合にはS35に移り、NOである場合にはS36に移る。
S35では、運転状態判定部71は、航続距離をできるだけ長くするため、第2バッテリB2の放電を禁止するべく、第2バッテリ使用フラグの値を“1”にする。また運転状態判定部71は、S32と同じ理由により、運転状態を通常走行状態にするべく、運転状態フラグの値を“0”にした後、図13の高出力走行判定処理を終了する。
S36では、運転状態判定部71は、第2SOCは第2使用下限以上でありかつ第1SOCは充電警告灯点灯レベル以上であると判定されたことに応じて、第2バッテリB2の放電を許可するべく第2バッテリ使用フラグの値を“0”にするとともに運転状態フラグの値を“1”にし、図13の高出力走行判定処理を終了する。
以上のような図13の高出力走行判定処理によって実現される電力の流れについて、図5を参照しながら説明する。
先ず、図13の高出力走行判定処理は、総要求電力が第1バッテリB1から出力可能な電力である第1出力可能電力より大きい場合(図10のS7参照)、すなわち第1バッテリB1と第2バッテリB2の両方を用いなければ総要求電力を実現できない場合に実行される。
図13の高出力走行判定処理では、上述のように総要求電力が第1バッテリB1の第1出力可能電力より大きく(図10のS7参照)、第2SOCが第2使用可能下限以上であり(図13のS31参照)、かつ第1SOCが充電警告灯点灯レベル以上である場合(図13のS34参照)に、第2バッテリ使用フラグの値を“0”としかつ運転状態フラグの値を“1”とする。このように運転状態フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図5に示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、総要求電力が第1バッテリB1の第1出力可能電力より大きい場合には、総要求電力から第1バッテリB1の出力分を除いた不足電力が第2バッテリB2から第2電力線22へ放電されるように、インバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。より具体的には、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1バッテリB1から第1電力線21に放電される電力を用いて第1駆動モータMrを駆動するとともに、この第1電力線21における電力が電圧変換器4を介して第2電力線22側に供給し、第2駆動モータMf及び車両補機Hを駆動する。またこの際、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2電力線22において要求される電力(すなわち、第2駆動モータMf及び車両補機Hにおいて要求される電力)のうち、電圧変換器4を介して第1電力線21側から供給される分を除いた不足分が第2バッテリB2から放電されるようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。換言すれば、運転状態が高出力走行状態である場合、第1バッテリB1では第1電力線21において要求されている電力の全てと第2電力線22において要求されている電力の一部とを賄い、第2バッテリB2では第2電力線22において要求されている電力の残りを賄う。これにより、要求されている電力を第1バッテリB1及び第2バッテリB2から供給しつつ、電圧変換器4を通過する電力を小さくできるので、この電圧変換器4における損失を小さくできる。
また図13の高出力走行判定処理では、第1SOCが充電警告灯点灯レベルより低い場合(図13のS34参照)には、第2バッテリ使用フラグの値を“1”としかつ運転状態フラグの値を“0”とする。すなわち、第2バッテリB2の放電を禁止し、運転状態を通常走行状態とする。このように運転状態フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図4Aに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわちインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、できるだけ航続距離が長くなるように、運転状態を通常走行状態にするとともに第2バッテリB2の放電を禁止する。
以上のように、図11の高出力判定処理では、図14に示すように、総要求電力が第1バッテリB1の第1出力可能上限より大きく、第1バッテリB1の第1SOCが充電警告灯点灯レベルを下限とし第1使用可能上限を上限とした第1許可範囲内であり、かつ第2バッテリB2の第2SOCが第2使用可能下限を下限とし第1使用可能上限を上限とした第2許可範囲内である場合に、運転状態を高出力走行状態とする。
図15は、低出力走行判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図16は、運転状態が低出力走行状態であるときに実現される第2バッテリB2の第2SOCの範囲を模式的に示す図である。
始めにS41では、運転状態判定部71は、現在の車両Vの運転状態が低出力走行状態であることを明示するべく、運転状態フラグの値を“2”にし、S42に移る。
S42では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の第2SOCが第2通常下限より低いか否かを判定する。運転状態判定部71は、S42の判定結果がNOである場合にはS43に移り、YESである場合にはS45に移る。
S43では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の放電を許可するべく、第2バッテリ使用フラグの値を“0”にし、S44に移る。S44では、運転状態判定部71は、電圧変換器4における損失を低減するべく、電圧変換器停止要求フラグの値を“1”にし、図15の低出力走行判定処理を終了する。なおこの電圧変換器停止要求フラグの値は、後述のS45の処理が実行されるか又は運転状態フラグの値が“2”から他の値に変化した場合には、“1”から“0”にリセットされるようになっている。
S45では、運転状態判定部71は、第2SOCが第2通常下限より低いと判定されたことに応じて、第2バッテリB2の放電を禁止するべく第2バッテリ使用フラグの値を“1”にし、さらに電圧変換器停止要求フラグの値を“0”にし、S46に移る。S46では、運転状態判定部71は、第2SOCの回復を促進させるべく、電気パス要求フラグの値を“1”にした後、図15の低出力走行処理を終了する。
以上のような図15の低出力走行判定処理によって実現される電力の流れについて、図6A〜図6Bを参照しながら説明する。
先ず、図10を参照して説明したように、省電力運転要求ボタンBM1が押圧操作されておりかつクルーズ状態である場合(図10のS4及びS5参照)には、運転状態は低出力走行状態となる。また図6A〜図6Bを参照して説明したように、運転状態が低出力走行状態である場合、車両Vの駆動モードは2WDモードとなる。
図15の低出力走行判定処理では、運転状態が低出力走行状態でありかつ第2SOCが第2通常下限以上である場合には、第2バッテリ使用フラグの値は“0”となり(S43参照)、電圧変換器停止要求フラグの値は“1”となる(S44参照)。このように第2バッテリ使用フラグ及び電圧変換器停止要求フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図6Aに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、電圧変換器4を停止することによって第1電力線21と第2電力線22との間の電力の流れを停止するとともに、第1バッテリB1から第1電力線21へ放電される電力で第1駆動モータMrを駆動する。またインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2バッテリB2から第2電力線22に放電される電力で車両補機Hを駆動するとともに、この第2電力線22における電力を用いることによって、第2駆動モータMfから第2車輪Wfに付与される駆動トルクが0になるように第2インバータ3fを操作するゼロトルク制御を行う。このように運転状態が低出力走行状態でありかつ第2バッテリB2の第2SOCが第2通常下限以上である場合には、電圧変換器4を停止し、第2バッテリB2から放電される電力で車両補機Hの駆動と第2駆動モータMfのゼロトルク制御を行うことにより、電圧変換器4における損失を0にすることができる。
また図15の低出力走行判定処理では、運転状態が低出力走行状態でありかつ第2SOCが第2通常下限より低い場合には、第2バッテリ使用フラグの値は“1”となり、電圧変換器停止要求フラグの値は“0”となり(S45参照)、電気パス要求フラグの値が“1”となる(S46参照)。このように第2バッテリ使用フラグ、電圧変換器停止要求フラグ、及び電気パス要求フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図6Bに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r、3f及び電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1バッテリB1から第1電力線21へ放電し、この第1電力線21における電力で第1駆動モータMrを駆動するとともに、この第1電力線21における電力の一部を、電圧変換器4を介して第2電力線22へ供給する。またインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、この第2電力線22における電力を用いて、車両補機Hを駆動し、第2駆動モータMfのゼロトルク制御を行い、さらに第2バッテリB2を充電する。
以上により、運転状態が低出力走行状態である場合、図16に示すように、第2SOCが第2使用可能下限を下限とし第2使用可能上限を上限とした範囲内において消費電力の少ない2WD駆動モードでの走行を行うことが可能となっている。また特に第2SOCが第2通常下限を下限とし第2使用可能上限を上限とした範囲内である場合には、上記のように電圧変換器4が停止されるため、特に電力効率の高い走行が可能となっている。
図17A及び図17Bは、回生走行判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図18は、運転状態が回生走行状態であるときに実現される第2バッテリB2の第2SOCの範囲を模式的に示す図である。
始めにS51では、運転状態判定部71は、現在の車両Vの運転状態が回生走行状態であることを明示するべく、運転状態フラグの値を“3”にし、S52に移る。
S52では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1への回生電力の供給が禁止されている状態であるか、すなわち第1バッテリB1へ供給できる回生電力の上限である第1回生可能電力が0であるか否かを判定する。例えば降坂路の走行中、長時間にわたり回生運転が行われるとバッテリに電析が生じるおそれがある。このため、後に合成制限電力算出部731の説明において詳述するように、回生運転の実行時間が長くなるに従い、第1バッテリB1への回生電力の供給を制限するべく、この第1回生可能電力を0に近づける。そこで運転状態判定部71は、第1バッテリセンサユニット81から送信される信号や回生運転の継続時間等に基づいて、第1バッテリB1への回生電力の供給が禁止されているか否かを判定する。運転状態判定部71は、S52の判定結果がNOである場合にはS53に移り、YESである場合にはS55に移る。
S53では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1の第1SOCが第1使用上限より高いか否かを判定する。運転状態判定部71は、S53の判定結果がNOである場合にはS54に移り、YESである場合にはS55に移る。
S54では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1への回生電力の供給を許可するべく第1バッテリ使用フラグの値を“0”にし、S56に移る。またS55では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1への回生電力の供給を禁止するべく第1バッテリ使用フラグの値を“2”にし、S56に移る。以上のように、図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1バッテリB1の第1SOCが0を下限とし第1使用可能上限を上限とする第1回生許可範囲内である場合(図18参照)には、S52の判定結果がYESでない限り、第1バッテリB1への回生電力の供給が許可される。すなわち、第1SOCが第1回生許可範囲外である場合には、第1バッテリB1への回生電力の供給が禁止される。
S56では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2への回生電力の供給が禁止されている状態であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、上記S52と同様の手順により、例えば第2バッテリセンサユニット82から送信される信号や回生運転の継続時間等に基づいて、第2バッテリB2は回生電力の供給が禁止されている状態であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S56の判定結果がNOである場合にはS57に移り、YESである場合にはS65に移る。
S57では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の第2SOCが第2使用上限より高いか否かを判定する。運転状態判定部71は、S57の判定結果がNOである場合にはS58に移り、YESである場合にはS65に移る。
S58では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の第2SOCが第2通常上限より高いか否かを判定する。運転状態判定部71は、S58の判定結果がNOである場合にはS64に移る。
S64では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2への回生電力の供給を許可するべく第2バッテリ使用フラグの値を“0”にし、図17A及び図17Bの回生走行判定処理を終了する。S65では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2への回生電力の供給を禁止するべく第2バッテリ使用フラグの値を“2”にし、図17A及び図17Bの回生走行判定処理を終了する。
以上のように、図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第2バッテリB2の第2SOCが0を下限とし第2通常上限を上限とした第2基本回生許可範囲内である場合には(図18参照)、S56の判定結果がYESでない限り、第2バッテリB2への回生電力の供給が許可される。また第2SOCが第2使用可能上限より高い場合には、第2バッテリB2への回生電力の供給が禁止される。
運転状態判定部71は、S58の判定結果がYESである場合、すなわち第2SOCが第2通常上限より高くかつ第2使用可能上限以下である場合には、S59からS63の処理によって構成される回生範囲拡大処理を実行する。この回生範囲拡大処理は、第2バッテリB2への回生電力の供給を許可する回生許可範囲の上限を、第1バッテリB1の状態に応じて変化させる処理である。
S59では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1の状態を特徴付けるパラメータの1つである第1バッテリ使用フラグの値が“0”であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S59の判定結果がNOである場合、すなわち第1バッテリB1への回生電力の供給が禁止されている場合には、できるだけ多くの回生電力を回収できるよう、S64に移り、第2バッテリ使用フラグの値を“0”にする。すなわち、運転状態判定部71は、第1バッテリB1への回生電力の供給が禁止されている場合には、第2SOCが第2通常上限より高い場合であっても第2バッテリB2への回生電力の供給を許可する。これはすなわち、第2バッテリB2への回生電力の供給を許可する回生許可範囲を、第2基本回生許可範囲から、0を下限とし第2使用可能上限を上限とした第2拡大回生許可範囲へ拡大することに相当する(図18参照)。
運転状態判定部71は、S59の判定結果がYESである場合、すなわち第1バッテリB1への回生電力の供給が許可されている場合には、S60に移る。S60では、運転状態判定部71は、第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfで発生できる回生電力の上限の和である要求回生電力を算出し、S61に移る。S61では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1に供給する回生電力に対する上限である第1回生可能電力を算出し、S62に移る。この第1回生可能電力は、例えば第1バッテリセンサユニット81から送信される信号を用いることによって、運転状態判定部71によって算出することができる。S62では、運転状態判定部71は、車両補機Hにおいて要求されている電力である補機要求電力を算出し、S63に移る。S63では、運転状態判定部71は、要求回生電力は、第1回生可能電力と補機要求電力との和より大きいか否かを判定する。
運転状態判定部71は、S63の判定結果がYESである場合、すなわち第1バッテリB1及び車両補機Hだけでは要求回生電力を全て回収できない場合には、できるだけ多くの回生電力を回収できるよう、S64に移り、第2バッテリ使用フラグの値を“0”にする。すなわち、運転状態判定部71は、第1バッテリB1だけでは要求回生電力を全て回収できない場合には、第2SOCが第2通常上限より高い場合であっても第2バッテリB2への回生電力の供給を許可する。これはすなわち、第2バッテリB2の回生許可範囲を、第2基本回生許可範囲から上記第2拡大回生許可範囲へ拡大することに相当する(図18参照)。
また運転状態判定部71は、S63の判定結果がNOである場合、すなわち第1バッテリB1及び車両補機Hだけで要求回生電力を全て回収できる場合には、第2バッテリB2の回生可能範囲の上限を拡大する必要はないと判断し、S65に移り、第2バッテリ使用フラグの値を“2”にする。
以上のように、運転状態判定部71は、S59からS63で構成される回生範囲拡大処理では、第2バッテリB2への回生電力の供給を許可する回生許可範囲の上限を、第2通常上限と第2使用可能上限とで切り替える。
以上のような図17A及び図17Bの回生走行判定処理によって実現される電力の流れについて、図7A〜図7Dを参照しながら説明する。
先ず、図10を参照して説明したように、回生フラグの値が“1”である場合には、運転状態は回生走行状態となる。また図7A〜図7Dを参照して説明したように、運転状態が回生走行状態である場合、車両Vの駆動モードはAWDモードとなる。したがって、回生走行状態である場合、第1駆動モータMr及び第2駆動モータMfの両方において回生電力が発生し得る。
図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値の組み合わせに応じて、4つの状態が生じ得る。インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”である場合には図7Aに示す電力の流れを実現し、第1バッテリ使用フラグの値が“0”であり第2バッテリ使用フラグの値が“2”である場合には図7Bに示す電力の流れを実現し、第1バッテリ使用フラグの値が“2”であり第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合には図7Cに示す電力の流れを実現し、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“2”である場合には図7Dに示す電力の流れを実現する。
先ず、第1SOCが第1回生許可範囲内でありかつ第2SOCが第2基本回生許可範囲内である場合について説明する。この場合、図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”になり得る。このように第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図7Aに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわちインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1インバータ3r及び第2インバータ3fから第1電力線21及び第2電力線22に供給される回生電力が第1バッテリB1、第2バッテリB2、及び車両補機Hに供給されるように、インバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。ここでインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2SOCが第2通常下限より低い場合、すなわち第2バッテリB2の残量に余裕がある場合には、第1バッテリB1よりも第2バッテリB2を優先的に充電する。より具体的には、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2インバータ3fから第2電力線22へ供給される第2回生電力で第2バッテリB2を充電しかつ車両補機Hを駆動する。またインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2回生電力が第2バッテリB2に供給する回生電力に対する上限である第2回生可能電力と車両補機Hにおける要求電力との和より大きい場合には、第2回生電力からこの和を除いた第2余剰回生電力を、電圧変換器4を介して第1電力線21に供給する。またインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1インバータ3rから第1電力線21に供給される回生電力と電圧変換器4を介して第1電力線21に供給される電力とを合わせた電力を第1バッテリB1に供給し、第1バッテリB1を充電する。これにより第2バッテリB2は上限とする電力の下で充電されるので、速やかに第2バッテリB2の第2SOCを第2通常上限まで回復させることができる。またこのように第2バッテリB2を優先的に充電することにより、電圧変換器4を通過する電力を小さくできるので、電圧変換器4における損失を小さくできる。
次に、第1SOCが第1回生許可範囲内でありかつ第2SOCが第2通常上限と第2使用可能上限との間である場合について説明する。この場合、第2SOCが第2使用可能上限に近いため、第2バッテリB2には、積極的に回生電力を供給する必要は無いといえる。しかしながら図17A及び図17Bの回生走行判定処理の回生範囲拡大処理(S59〜S63)によれば、第1バッテリB1のみでは要求回生電力を回収しきれない場合には、機械制動装置Br,Bfにおける損失を少なくするため、第2バッテリB2の回生許可範囲は第2拡大回生許可範囲に拡大され、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”になり得る。このように第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、上記の例と同様に図7Aに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。ただしこの場合、第2SOCは第2使用可能上限に近いため、第2バッテリB2よりも第1バッテリB1を優先的に充電する。より具体的には、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2インバータ3fから第2電力線22に供給される第2回生電力の一部を、電圧変換器4を介して第1電力線21に供給するとともに、電圧変換器4から第1電力線21に供給される電力と第1インバータ3rから第1電力線21に供給される電力とを合わせた電力を第1バッテリB1に供給し、第1バッテリB1を充電する。この際インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1バッテリB1はその上限とする電力(すなわち、第1回生可能電力)で充電されるように、電圧変換器4の通過電力を調整する。またインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2インバータ3fから第2電力線22に供給される第2回生電力のうち、電圧変換器4を介して第1電力線21に供給される電力を除いた第2余剰回生電力で第2バッテリB2を充電するとともに車両補機Hを駆動する。これにより、第2バッテリB2の過充電を防止しながら、できるだけ多くの回生電力をバッテリB1,B2で回収し、機械制動装置Br,Bfにおける損失を小さくできる。
次に、第1SOCが第1回生許可範囲内でありかつ第2SOCが第2使用可能上限より高い場合について説明する。この場合、図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1バッテリ使用フラグの値は“0”となり、第2バッテリ使用フラグの値は“2”となり得る。このように第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図7Bに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわちインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2バッテリB2の充電を禁止するとともに、第2インバータ3fから第2電力線22に供給される第2回生電力のうち、車両補機Hで消費される分を除いた第2余剰回生電力を、電圧変換器4を介して第1電力線21に供給する。これにより、第1バッテリB1には、第1インバータ3rから第1電力線21に供給される第1回生電力と電圧変換器4から第1電力線21に供給される第2余剰回生電力とを合わせた電力が供給され、第1バッテリB1は充電される。これにより、第2バッテリB2の過充電を防止できる。
なお図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1SOCが第1回生許可範囲内でありかつ第2SOCが第2使用可能上限と第2通常上限との間である場合においても、図7Bに示すような電力の流れが実現され得る。すなわち、回生範囲拡大処理(S59〜S63)において、第1バッテリB1のみで要求回生電力を回収できると判断された場合、換言すれば回生範囲拡大処理において第2バッテリB2の回生許可範囲を第2拡大回生許可範囲まで拡大する必要がないと判断された場合にも、第1バッテリ使用フラグの値は“0”となり、第2バッテリ使用フラグの値は“2”となり、第2バッテリB2への回生電力の供給が禁止される。これにより、第2バッテリB2の過充電を防止できる。
次に、第1SOCが第1回生許可範囲外でありかつ第2SOCが第2通常上限より低い場合について説明する。この場合、図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1バッテリ使用フラグの値が“2”となり、第2バッテリ使用フラグの値が“0”になり得る。このように第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図7Cに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわちインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1バッテリB1への回生電力の供給を禁止するとともに、第1インバータ3rから第1電力線21に供給される第1回生電力の全てを、電圧変換器4を介して第2電力線22に供給する。これにより、第2バッテリB2及び車両補機Hには、第2インバータ3fから第2電力線22に供給される第2回生電力と電圧変換器4から第2電力線22に供給される電力とを合わせた電力が供給され、これにより第2バッテリB2が充電されかつ車両補機Hが駆動される。これにより、第1バッテリB1の過充電を防止しながら、できるだけ多くの回生電力を第2バッテリB2及び車両補機Hで回収することができるので、その分、機械制動装置Br,Bfにおける損失を小さくできる。
なお図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1SOCが第1回生許可範囲外でありかつ第2SOCが第2使用可能上限と第2通常上限との間である場合においても、図7Cに示すような電力の流れが実現され得る。この場合、第2SOCは第2使用可能上限に近く、積極的に第2バッテリB2へ回生電力を供給する必要はないといえる。しかしながら上記回生範囲拡大処理(S59〜S63)によれば、第1バッテリB1の回生が禁止される場合には、第2バッテリB2の回生許可範囲が第2拡大回生許可範囲に拡大されるので、第1バッテリ使用フラグの値が“2”となり、第2バッテリ使用フラグの値が“0”となり、図7Cに示すような電力の流れが実現され得る。これにより、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の過充電を防止しながら、できるだけ多くの回生電力を第2バッテリB2及び車両補機Hで回収し、ひいては機械制動装置Br,Bfにおける損失を小さくできる。
次に、第1SOCが第1回生許可範囲外でありかつ第2SOCも第2拡大回生許可範囲外である場合について説明する。この場合、図17A及び図17Bの回生走行判定処理によれば、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値は共に“2”となる。このように第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図7Dに示すような電力の流れを実現するようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。すなわちインバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1インバータ3rから第1電力線21に供給される第1回生電力及び第2インバータ3fから第2電力線22に供給される第2回生電力がともに0になるように、インバータ3r,3fを操作する。これにより、機械制動装置Br,Bfにおける損失が増加するものの、第1バッテリB1及び第2バッテリB2へ回生電力が供給されないようにし、ひいてはこれらの過充電が確実に防止される。
図19は、アイドル判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図20は、運転状態がアイドル状態であるときに実現される第2バッテリB2の第2SOCの範囲を模式的に示す図である。
始めにS71では、運転状態判定部71は、現在の車両Vの運転状態がアイドル状態であることを明示するべく、運転状態フラグの値を“4”にし、S72に移る。
S72では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の第2SOCが第2通常下限より低いか否かを判定する。運転状態判定部71は、S72の判定結果がNOである場合にはS73に移り、YESである場合にはS75に移る。
S73では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の放電を許可するべく、第2バッテリ使用フラグの値を“0”にし、S74に移る。S74では、運転状態判定部71は、電圧変換器4における損失を低減するべく、電圧変換器停止要求フラグの値を“1”にし、図19のアイドル判定処理を終了する。なおこの電圧変換器停止要求フラグの値は、後述のS76の処理が実行されるか又は運転状態フラグの値が“4”から他の値に変化した場合には、“1”から“0”にリセットされる。
S75では、運転状態判定部71は、第2バッテリB2の放電を禁止するべく、第2バッテリ使用フラグの値を“1”にし、S76に移る。S76では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1から供給される電力で車両補機Hを駆動するべく、電圧変換器停止要求フラグの値を“0”にし、図19のアイドル判定処理を終了する。
以上のような図19のアイドル判定処理によって実現される電力の流れについて、図8A〜図8Bを参照しながら説明する。
図19のアイドル判定処理によれば、第2バッテリB2の第2SOCが第2通常下限以上である場合には、運転状態フラグの値は“4”となり、第2バッテリ使用フラグの値は“0”となる。これらフラグの値が以上のように設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図8Aに示すような電力の流れを実現するように電圧変換器4を操作する。すなわち、電圧変換器4を停止し、第1電力線21と第2電力線22との間の電力の流れを遮断するとともに、第2バッテリB2から放電される電力で車両補機Hを駆動する。これにより、電圧変換器4における損失を0にしながら、車両補機Hを駆動することができる。
また図19のアイドル判定処理によれば、第2バッテリB2の第2SOCが第2通常下限より低い場合には、運転状態フラグの値は“4”となり、第2バッテリ使用フラグの値は“1”となる。これらフラグの値が以上のように設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図8Bに示すような電力の流れを実現するように電圧変換器4を操作する。すなわち、第2バッテリB2の放電を禁止するとともに、第1バッテリB1から第1電力線21に供給される電力を、電圧変換器4を介して第2電力線22に供給し、この第2電力線22における電力で車両補機Hを駆動する。これにより、第2バッテリB2の第2SOCが低い状態であっても、車両補機Hを駆動することができる。
以上により、運転状態がアイドル状態でありかつ第2SOCが第2通常下限を下限とし第2使用可能上限を上限とした範囲内である場合には、電圧変換器4を停止しながら車両補機Hを駆動することができる。
図21は、故障走行判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
始めにS81では、運転状態判定部71は、現在の車両Vの運転状態が故障走行状態であることを明示するべく、運転状態フラグの値を“5”にし、S82に移る。
S82では、運転状態判定部71は、故障しているバッテリが第1バッテリB1であるか否かを判定する。S82の判定結果がNOである場合、すなわち第2バッテリB2が故障している場合には、運転状態判定部71は、S83に移り、第2バッテリ故障フラグの値を“1”にし、図21の故障走行判定処理を終了する。
またS82の判定結果がYESである場合、すなわち第1バッテリB1が故障している場合には、運転状態判定部71は、S84に移り、第1バッテリ故障フラグの値を“1”にし、図21の故障走行判定処理を終了する。
以上のような図21の故障走行判定処理によって実現される電力の流れについて、図9A〜図9Bを参照しながら説明する。
図21の故障走行判定処理によれば、第2バッテリB2が故障した場合には、運転状態フラグの値が“5”となり、第2バッテリ故障フラグの値が“1”となる。これらフラグの値が以上のように設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図9Aに示すような電力の流れを実現するように電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第1駆動モータMr、第2駆動モータMf、及び車両補機Hにおいて必要とされる電力が全て第1バッテリB1から供給されるように、インバータ3r,3f及び電圧変換器4を操作する。これにより、第2バッテリB2が故障した場合であっても、車両Vの走行を継続することができる。
また図21の故障走行判定処理によれば、第1バッテリB1が故障した場合には、運転状態フラグの値が“5”となり、第1バッテリ故障フラグの値が“1”となる。これらフラグの値が以上のように設定されたことに応じて、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、図9Bに示すような電力の流れを実現するように電圧変換器4を操作する。すなわち、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2バッテリB2から放電される電力で第2駆動モータMf及び車両補機Hを駆動する。また、インバータ制御部72及び電圧変換器制御部73は、第2バッテリB2から第2電力線22に放電される電力の一部を、電圧変換器4を介して第1電力線21に供給するとともに、この第1電力線21における電力を用いて第1駆動モータMrから第1車輪Wrに付与される駆動トルクが0になるように第1インバータ3rを操作するゼロトルク制御を行う。これにより、第1バッテリB1が故障した場合であっても、車両Vの走行を継続することができる。
図22は、電気パス判定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。この電気パス判定処理は、第1バッテリB1から放電される電力を用いて第2バッテリB2を充電する電気パス制御の実行を許可又は禁止する処理である。この電気パス判定処理は、電気パス要求フラグの値が“1”になった後、後述のS99の処理によって電気パス要求フラグの値が“0”なるまでの間、運転状態判定部71において、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図23は、電気パス判定処理において、電気パス制御の実行が許可される第1SOC及び第2SOCの範囲を示す図である。
始めにS91では、運転状態判定部71は、回復モードの実行中であるか否かを判定する。より具体的には、運転状態判定部71は、例えばスポーツ走行要求ボタンBM2が押圧操作されているか否かによって、回復モードの実行中であるか否かを判定する。
運転状態判定部71は、S91の判定結果がNOである場合にはS92に移る。S92では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1から放電した電力が電圧変換器4を介して第2駆動モータMfに供給されているか否かを判定する。
運転状態判定部71は、S92の判定結果がYESである場合にはS93に移る。また運転状態判定部71は、S92の判定結果がNOである場合、すなわち第1バッテリB1から放電した電力が電圧変換器4を介して第2駆動モータMfに供給されていない場合には、S99に移る。S99では、運転状態判定部71は、電気パス制御を実行するのに適した時期ではないと判断し、電気パス実行フラグ及び電気パス要求フラグの値を共に“0”にリセットし、図22の電気パス判定処理を終了する。
ここでS92における判定処理において、電気パス制御の実行が許可されない場合、すなわち第1バッテリB1から放電した電力が電圧変換器4を介して第2駆動モータMfに供給されない場合とは、具体的には、例えば電圧変換器4が停止している状態である。したがって、運転状態が、電圧変換器4を停止する運転状態である場合、より具体的には駆動モードを2WD駆動モードとする低出力走行状態(図6A参照)や、アイドル状態(図8A参照)である場合には、電気パス制御の実行が許可されない。
運転状態判定部71は、S91の判定結果がYESである場合には、S92の判定を経ずにS93に移る。すなわち運転状態判定部71は、第2SOCを速やかに回復させる回復モードの実行中である場合には、第2駆動モータMfから第2車輪Wfに0より大きな駆動トルクが付与されていない場合であっても、電気パス制御の実行を許可する。これにより、回復モードの実行中である場合には、電気パス制御の実行が許可される機会が多くなるので、これにより第2SOCを速やかに回復させることができる。
S93では、運転状態判定部71は、電気パス実行フラグの値が“1”又は“2”であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S93の判定結果がNOである場合、すなわち電気パス制御の実行中又は中断中でない場合にはS94に移る。運転状態判定部71は、S93の判定結果がYESである場合にはS95に移る。
S94では、運転状態判定部71は、第1バッテリB1の第1SOC及び第2バッテリB2の第2SOCを取得し、これら第1SOC及び第2SOCがそれぞれ所定の電気パス許可範囲内であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S94の判定結果がYESである場合にはS95に移り、NOである場合にはS99に移る。
図23を参照して、第1及び第2SOCに対する電気パス許可範囲について説明する。
先ず、電気パス制御を実行すると、第1バッテリB1から電力が放電されるため、第1SOCが減少する。また電気パス制御を実行すると、電圧変換器4を電力が流れるため損失が発生する。そこで運転状態判定部71は、第1SOCが充電警告灯点灯レベルより低い場合には、車両Vの航続距離を確保するべく、電気パス制御の実行を禁止する。従って、第1SOCに対する第1電気パス許可範囲は、充電警告灯点灯レベル以上の範囲である。また上記のように電気パス制御を実行すると損失が生じることから、電気パス制御を頻繁に実行することは、エネルギ効率上好ましくない。そこで運転状態判定部71は、第2SOCが第2通常下限以上である場合には、電気パス制御の実行を禁止する。したがって、第2SOCに対する第2電気パス許可範囲は、第2通常下限未満の範囲である。運転状態判定部71は、S94では、第1SOC及び第2SOCの少なくとも何れかが、その電気パス許可範囲外である場合には、S99に移り、電気パス制御の実行を禁止する。また運転状態判定部71は、第1SOC及び第2SOCの両方が、その電気パス許可範囲内である場合には、S95に移る。
S95では、運転状態判定部71は、運転状態が高出力走行状態であるか否か、換言すれば総要求電力が第1バッテリB1の第1出力可能電力より大きいか否かを判定する。上述のように運転状態が高出力走行状態である場合、総要求電力が第1バッテリB1の第1出力可能電力を超えるため、この要求に応えるためには第2バッテリB2から電力を放電する必要がある。このため、電気パス制御を実行することができない。そこで運転状態判定部71は、S95の判定結果がYESである場合にはS100に移る。S100では、運転状態判定部71は、電気パス制御の実行を中断(すなわち、一時的に禁止)するべく、電気パス実行フラグの値を“2”にし、図22の電気パス判定処理を終了する。
S95の判定結果がNOである場合、運転状態判定部71は、S96に移る。S96では、運転状態判定部71は、上述のS91と同様の手順によって回復モードの実行中であるか否かを判定する。運転状態判定部71は、S96の判定結果がNOである場合にはS97に移る。
S97では、運転状態判定部71は、運転状態が回生走行状態であるか否かを判定する。上述のように運転状態が回生走行状態である場合、できるだけ多くの回生電力が第1及び第2バッテリB1,B2によって回収されるようにインバータ3r,3f及び電圧変換器4が操作される。従って運転状態が回生走行状態であるときに電気パス制御を実行しようとすると、効率的に回生電力を回収できなくなり、機械制動装置Br,Bfの損失が増加するおそれがある。そこで運転状態判定部71は、S97の判定結果がYESである場合にはS100に移り、電気パス制御の実行を中断(すなわち、一時的に禁止)するべく、電気パス実行フラグの値を“2”にし、図22の電気パス判定処理を終了する。
またS96の判定結果がYESである場合には、運転状態判定部71は、S97の処理を実行せずにS98に移る。すなわち、運転状態判定部71は、回復モードの実行中である場合には、この要求に応えるべく、運転状態が回生走行状態であっても電気パス制御の実行を許可する。これにより、回復モードの実行中である場合には、電気パス制御の実行が許可される機会が多くなるので、これにより第2SOCを速やかに回復させることができる。
S98では、運転状態判定部71は、電気パス制御の実行を終了する時期に達したか否かを判定する。より具体的には、運転状態判定部71は、例えば、第2SOCが第2通常上限以上である場合には、電気パス制御の実行を終了する時期に達したと判定する。S98の判定結果がYESである場合には、運転状態判定部71は、S99に移り、電気パス実行フラグ及び電気パス要求フラグの値を共に“0”にリセットし、図22の電気パス判定処理を終了する。
またS98の判定結果がNOである場合には、運転状態判定部71は、S101に移る。S101では、運転状態判定部71は、電気パス制御を実行するべく、電気パス実行フラグの値を“1”にし、図22の電気パス判定処理を終了する。
図3に戻り、合成制限電力算出部731は、バッテリセンサユニット81,82から送信される信号や、運転状態判定部71において更新される第1及び第2バッテリ使用フラグの値や第1及び第2バッテリ故障フラグの値等を用いることによって、第1バッテリB1と第2バッテリB2とを合わせた仮想的なバッテリのバッテリ合成制限電力を算出する。このバッテリ合成制限電力は、出力可能電力と回生可能電力とによって構成される。
出力可能電力とは、第1バッテリB1と第2バッテリB2とを合わせた仮想的なバッテリから出力可能な電力の上限であり、正である。また回生可能電力とは、第1バッテリB1と第2バッテリB2とを合わせた仮想的なバッテリへ供給可能な電力の上限であり、負である。
合成制限電力算出部731は、以下の手順によって出力可能電力を算出する。先ず、合成制限電力算出部731は、第1バッテリセンサユニット81及び第2バッテリセンサユニット82から送信される信号を用いて、例えば図示しないマップを検索することによって第1バッテリB1の出力可能な電力である第1出力可能電力と、第2バッテリB2の出力可能な電力である第2出力可能電力と、を算出する。また合成制限電力算出部731は、第1バッテリ使用フラグ、第1バッテリ故障フラグ、第2バッテリ使用フラグ、及び第2バッテリ故障フラグを参照することによって、第1バッテリB1及び第2バッテリB2のうち放電禁止又は放電不能であるバッテリを特定する。
また車両補機Hにおいて電力が要求されている場合には、この車両補機Hの要求電力だけ第1バッテリB1及び第2バッテリB2の出力可能電力が制限される。よって合成制限電力算出部731は、車両補機Hの要求電力を取得する。そして合成制限電力算出部731は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2ともに放電禁止又は放電不能でない場合には第1出力可能電力と第2出力可能電力との和から車両補機Hの要求電力を減算したものを出力可能電力とし、第1バッテリB1のみが放電禁止又は放電不能である場合には第2出力可能電力から車両補機Hの要求電力を減算したものを出力可能電力とし、第2バッテリB2のみが放電禁止又は放電不能である場合には第1出力可能電力から車両補機Hの要求電力を減算したものを出力可能電力とし、第1バッテリB1及び第2バッテリB2がともに放電禁止又は放電不能である場合には出力可能電力を0とする。
また合成制限電力算出部731は、以下の手順によって回生可能電力を算出する。先ず、合成制限電力算出部731は、第1バッテリセンサユニット81及び第2バッテリセンサユニット82から送信される信号を用いて、例えば図示しないマップを検索することによって、第1バッテリB1に供給可能な電力である第1回生可能電力に対する基本値と、第2バッテリB2に供給可能な電力である第2回生可能電力に対する基本値と、を算出する。また例えば降坂路の走行中、長時間にわたり回生運転を行い、バッテリB1,B2に回生電力を供給し続けると、これらバッテリB1,B2に電析が生じるおそれがある。そこで合成制限電力算出部731は、回生運転の実行時間が長くなるに従い上記第1、第2回生可能電力が0に近づくように、回生運転の実行時間に基づいて補正値を算出する。また合成制限電力算出部731は、上述のようにしてマップに基づいて算出した基本値と、回生運転の実行時間に基づいて算出した補正値とを合算することによって、第1回生可能電力及び第2回生可能電力を算出する。また合成制限電力算出部731は、第1バッテリ使用フラグ、第1バッテリ故障フラグ、第2バッテリ使用フラグ、及び第2バッテリ故障フラグを参照することによって、第1バッテリB1及び第2バッテリB2のうち回生禁止又は回生不能であるバッテリを特定する。
また車両補機Hにおいて電力が要求されている場合には、車両補機Hによって回生電力を消費することが可能であるから、この車両補機Hの要求電力を回生可能電力に上積みすることができる。そして合成制限電力算出部731は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2ともに回生禁止又は回生不能でない場合には第1回生可能電力と第2回生可能電力と車両補機Hの要求電力の和を回生可能電力とし、第1バッテリB1のみが回生禁止又は回生不能である場合には第2回生可能電力と車両補機Hの要求電力との和を回生可能電力とし、第2バッテリB2のみが回生禁止又は回生不能である場合には第1回生可能電力と車両補機Hの要求電力との和を回生可能電力とし、第1バッテリB1及び第2バッテリB2がともに回生禁止又は回生不能である場合には回生可能電力を0とする。
次に、図24を参照して駆動力配分算出部721における具体的な演算手順について説明する。
図24は、駆動力配分算出部721において、第1要求モータトルク及び第2要求モータトルクを算出する要求モータトルク演算処理の具体的な手順を示すフローチャートである。駆動力配分算出部721では、図24に示す処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行することにより、第1要求モータトルク及び第2要求モータトルクを算出する。
始めにS201では、駆動力配分算出部721は、回生フラグ及び運転状態フラグの値を参照することによって、全トルクに対する第1駆動モータMrのトルクの割合を示す第1トルク比Rr及び全トルクに対する第2駆動モータMfのトルクの割合を示す第2トルク比Rfを算出し、S202に移る。
駆動力配分算出部721は、回生フラグの値が“0”でありかつ運転状態フラグの値が“2”でない場合(すなわち、駆動モードが2WDモードとなる低出力走行状態でない場合)には、第1駆動モータMrのトルクと第2駆動モータMfのトルクの比が、例えば第1駆動モータMrのトルクの方が第2駆動モータMfのトルクよりも大きくなるように、より具体的には、例えば75:25となるように、第1トルク比Rr及び第2トルク比Rfを算出する。すなわちこの場合、第1トルク比Rrは0.75となり、第2トルク比Rfは0.25となる。
駆動力配分算出部721は、回生フラグの値が“0”でありかつ運転状態フラグの値が“2”である場合には、第1駆動モータMrのトルクと第2駆動モータMfのトルクの比が、100:0となるように、第1トルク比Rr及び第2トルク比Rfを算出する。すなわちこの場合、第1トルク比Rrは1.00となり、第2トルク比Rfは0.00となる。これにより、駆動モードを2WDモードとする低出力走行状態では、第2要求モータトルクが0となり、第2駆動モータMfのゼロトルク制御が実行される(図6A及び図6B参照)。
また駆動力配分算出部721は、回生フラグの値が“0”であり、運転状態フラグの値が“5”であり、かつ第1バッテリ故障フラグの値が“1”である場合には、第1駆動モータMrのトルクと第2駆動モータMfのトルクの比が、0:100となるように、第1トルク比Rr及び第2トルク比Rfを算出する。すなわちこの場合、第1トルク比Rrは0.00となり、第2トルク比Rfは1.00となる。これにより、第1バッテリB1が故障した場合には、第1要求モータトルクが0となり、第1駆動モータMrのゼロトルク制御が実行される(図9B参照)。
駆動力配分算出部721は、回生フラグの値が“1”である場合には、第1駆動モータMrのトルクと第2駆動モータMfのトルクの比が、例えば第1駆動モータMrのトルクの方が第2駆動モータMfのトルクよりも小さくなるように、より具体的には、例えば30:70となるように、第1トルク比Rr及び第2トルク比Rfを算出する。すなわちこの場合、第1トルク比Rrは0.30となり、第2トルク比Rfは0.70となる。駆動力配分算出部721では、このように第2トルク比Rfを第1トルク比Rrよりも大きくすることにより、減速回生時に第2インバータ3fから第2電力線22に供給される第2回生電力を、第1インバータ3rから第1電力線21に供給される第1回生電力よりも大きくすることができる。
次にS202では、駆動力配分算出部721は、要求電力算出部70によって算出される車両要求電力に、第1トルク比Rr又は第2トルク比Rfを乗算することによって、第1要求電力及び第2要求電力を算出する。すなわち、要求電力算出部70は、車両要求電力に第1トルク比Rrを乗算したものを第1要求電力とし、車両要求電力に第2トルク比Rfを乗算したものを第2要求電力とする。ただし、上記のようにゼロトルク制御を実行する場合には、対象とする駆動モータに対する要求電力に、ゼロトルク制御を行うために必要な電力を加算する。
次にS203では、駆動力配分算出部721は、S202において算出された第1要求電力及び第2要求電力に対し、それぞれモータリミット処理を施す。このモータリミット処理とは、車両要求電力を駆動モータMr,Mfの状態に合わせて制限する処理である。より具体的には、駆動力配分算出部721は、既知のアルゴリズムに従って各駆動モータMr,Mfで出力可能なトルクの上限である第1トルクリミット及び第2トルクリミットを算出し、これらを電力に換算することによって第1出力リミット及び第2出力リミットを算出する。駆動力配分算出部721は、下記式(1)に示すように、第1要求電力及び第1出力リミットのうち小さい方をモータリミット後の第1要求電力とする。駆動力配分算出部721は、下記式(2)に示すように、第2要求電力及び第2出力リミットのうち小さい方をモータリミット後の第2要求電力とする。なお以下では、モータリミット後の第1要求電力を、「第1要求電力´」と表記し、モータリミット後の第2要求電力を、「第2要求電力´」と表記する。
第1要求電力´=MIN[第1要求電力,第1出力リミット] (1)
第2要求電力´=MIN[第2要求電力,第2出力リミット] (2)
次にS204では、駆動力配分算出部721は、S203において算出された第1要求電力´及び第2要求電力´を用いることによって、リミット後第1トルク比Rr´及びリミット後第2トルク比Rf´を算出する。より具体的には、駆動力配分算出部721は、第1要求電力´を第1要求電力´と第2要求電力´との和で除算したものをリミット後第1トルク比Rr´とし、第2要求電力´を上記和で除算したものをリミット後第2トルク比Rf´とする。
次にS205では、駆動力配分算出部721は、駆動力配分算出部721は、S203において算出された第1要求電力´及び第2要求電力´に対し、それぞれバッテリリミット処理を施す。このバッテリリミット処理とは、車両要求電力を第1バッテリB1及び第2バッテリB2の状態に合わせて制限する処理である。より具体的には、駆動力配分算出部721は、合成制限電力算出部731によって算出されるバッテリ合成制限電力(すなわち、出力可能電力及び回生可能電力の組み合わせ)を取得する。また駆動力配分算出部721は、下記式(3)に示すように、バッテリ合成制限電力にリミット後第1トルク比Rr´を乗算したもの及び第1要求電力´のうち何れか小さい方をバッテリリミット後第1要求電力とする。また駆動力配分算出部721は、下記式(4)に示すように、バッテリ合成制限電力にリミット後第2トルク比Rf´を乗算したもの及び第2要求電力´のうち何れか小さい方をバッテリリミット後第2要求電力とする。なお下記式(3)及び(4)の演算では、駆動力配分算出部721は、モータリミット後第1要求電力及びモータリミット後第2要求電力が正である場合には、バッテリ合成制限電力として正の出力可能電力を用い、モータリミット後第1要求電力及びモータリミット後第2要求電力が負である場合には、バッテリ合成制限電力として負の回生可能電力を用いる。また以下では、バッテリリミット後の第1要求電力を、「第1要求電力´´」と表記し、バッテリリミット後の第2要求電力を、「第2要求電力´´」と表記する。
第1要求電力´´
=MIN[バッテリ合成制限電力×Rr´,第1要求電力´] (3)
第2要求電力´´
=MIN[バッテリ合成制限電力×Rf´,第2要求電力´] (4)
次にS206では、駆動力配分算出部721は、モータ回転数を用いることによって、S205において算出された第1要求電力´´及び第2要求電力´´の単位を換算することにより、第1要求モータトルク及び第2要求モータトルクを算出する。
次に、図25を参照してエネルギ配分算出部732における具体的な演算手順について説明する。
図25は、エネルギ配分算出部732において要求通過電力を算出する手順を示す機能ブロック図である。
エネルギ配分算出部732は、基本通過電力を算出する基本通過電力算出部7321と、回生時通過電力を算出する回生走行時通過電力算出部7322と、高出力走行時通過電力を算出する高出力走行時通過電力算出部7323と、電気パス時通過電力を算出する電気パス時通過電力算出部7324と、アイドル時通過電力を算出するアイドル時通過電力算出部7325と、これら基本通過電力と回生時通過電力と高出力走行時通過電力とアイドル時通過電力とを合算することによって要求通過電力を算出する要求通過電力算出部7326と、を備える。
基本通過電力算出部7321は、要求通過電力に対する基本値に相当する基本通過電力を算出する。基本通過電力算出部7321は、運転状態フラグの値が“0”、“2”及び“5”の何れかである場合に以下の手順に従って基本通過電力を算出する。また基本通過電力算出部7321は、運転状態フラグの値が“0”、“2”及び“5”の何れかでない場合には、基本通過電力を0とする。
基本通過電力算出部7321は、運転状態フラグの値が“0”又は“5”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“1”又は第2バッテリ故障フラグの値が“1”である場合には、駆動力配分算出部721において算出される第2要求電力´´と車両補機Hにおける要求電力とを合算したものを基本通過電力とする。これにより、例えば図4A又は図9Aに示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=0、第2使用バッテリフラグ=1]
[運転状態フラグ=5、第2バッテリ故障フラグ=1]
基本通過電力=第2要求電力´´+補機要求電力
基本通過電力算出部7321は、運転状態フラグの値が“0”であり、第2バッテリ使用フラグの値が“0”であり、かつ第2SOC消費フラグの値が“1”である場合、すなわち運転状態が通常走行状態でありかつ第2バッテリB2の第2SOCの消費が要求されている場合には、図4Cに示す電力の流れが実現されるように、以下の手順に従って基本通過電力を算出する。この場合、基本通過電力算出部7321は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2から放電される電力に対する第2バッテリB2から放電される電力の割合である目標電力割合rを、第2バッテリB2の第2SOCに基づいて算出する。基本通過電力算出部7321は、第2SOCに基づいて、図26に示すようなマップを検索することによって目標電力割合rを算出する。図26に示すマップの例によれば、第2SOCが大きくなるほど目標電力割合rも高くなる。すなわち、第2SOCが大きくなるほど、第2バッテリB2の負担が大きくなる。基本通過電力算出部7321は、以上のようにして算出した目標電力割合r用いることによって、下記式によって基本通過電力を算出する。これにより、図4Cに示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=0、第2バッテリ使用フラグ=0、第2SOC消費フラグ=1]
基本通過電力
=(1−r)×(第2要求電力´´+補機要求電力)−r×第1要求電力´´
基本通過電力算出部7321は、運転状態フラグの値が“2”でありかつ電圧変換器停止要求フラグの値が“0”である場合には、図6Bに示す電力の流れが実現されるように、第2駆動モータMfのゼロトルク制御行うために必要な第2要求電力´´と車両補機Hの要求電力とを合わせたものを基本通過電力とする。これにより、電気パス実行フラグの値が“1”となり、後述の電気パス時通過電力が加わると、図6Bに示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=2、電圧変換器停止要求フラグ=0]
基本通過電力=第2要求電力´´+補機要求電力
基本通過電力算出部7321は、運転状態フラグの値が“5”でありかつ第1バッテリ故障フラグの値が“1”である場合には、図9Bに示す電力の流れが実現されるように、第1駆動モータMrのゼロトルク制御を行うために必要な第1要求電力´´に“−1”を乗じたものを基本通過電力とする。これにより、図9Bに示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=5、第1バッテリ故障フラグ=1]
基本通過電力=−第1要求電力´´
回生走行時通過電力算出部7322は、運転状態フラグの値が“3”である場合に、以下の手順に従って回生走行時通過電力を算出する。回生走行時通過電力算出部7322は、運転状態フラグの値が“3”でない場合には、回生走行時通過電力を0とする。なお運転状態フラグの値が“3”である場合、第1要求電力´´及び第2要求電力´´は共に負となる。
回生走行時通過電力算出部7322は、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”であり、かつ第2SOCが第2基本回生許可範囲内である場合には、第2バッテリB2が優先的に充電されるように、負である第2要求電力´´と正である補機要求電力との和から、負である第2回生可能電力を減算したものを回生走行時通過電力とする。これは、第2駆動モータMfから第2電力線22に供給される回生電力のうち車両補機Hの駆動及び第2バッテリB2の充電に消費しきれない分を第1バッテリB1へ供給することに相当する。これにより、図7Aに示す電力の流れを実現しつつ、第1バッテリB1よりも第2バッテリB2を優先的に充電できる。
[運転状態フラグ=3、第1及び第2バッテリ使用フラグ=0、第2SOCは第2基本回生許可範囲内]
回生走行時通過電力=第2要求電力´´+補機要求電力−第2回生可能電力
回生走行時通過電力算出部7322は、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“0”であり、かつ第2SOCが第2基本回生許可範囲外である場合には、第1バッテリB1が優先的に充電されるように、負である第1回生可能電力から負である第1要求電力´´を減算したものを回生走行時通過電力とする。これは、第1駆動モータMrから第1電力線21に供給される回生電力を全て第1バッテリB1に供給してもなお余力がある場合に、この不足する分を第2電力線22から第1バッテリB1に供給することに相当する。これにより、図7Aに示す電力の流れを実現しつつ、第2バッテリB2よりも第1バッテリB1を優先的に充電できる。
[運転状態フラグ=3、第1及び第2バッテリ使用フラグ=0、第2SOCは第2基本回生許可範囲外]
回生走行時通過電力=第1回生可能電力−第1要求電力´´
回生走行時通過電力算出部7322は、第1バッテリ使用フラグの値が“0”であり、第2バッテリ使用フラグの値が“2”である場合には、負である第2要求電力´´と正である補機要求電力との和を回生走行時通過電力とする。これは、第2駆動モータMfから第2電力線22に供給される回生電力のうち車両補機Hの駆動に消費しきれない分を第1バッテリB1へ供給することに相当する。これにより、図7Bに示す電力の流れを実現することができる。
[運転状態フラグ=3、第1バッテリ使用フラグ=0、第2バッテリ使用フラグ=2]
回生走行時通過電力=第2要求電力´´+補機要求電力
回生走行時通過電力算出部7322は、第1バッテリ使用フラグの値が“2”であり、第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合には、負である第1要求電力´´に“−1”を乗じたものを回生走行時通過電力とする。これは、第1駆動モータMrから第1電力線21に供給される回生電力の全てを第2電力線22に供給し、車両補機Hの駆動及び第2バッテリB2の充電に用いることに相当する。これにより、図7Cに示す電力の流れを実現することができる。
[運転状態フラグ=3、第1バッテリ使用フラグ=2、第2バッテリ使用フラグ=0]
回生走行時通過電力=−第1要求電力´´
回生走行時通過電力算出部7322は、第1バッテリ使用フラグ及び第2バッテリ使用フラグの値が共に“2”である場合には、回生走行時通過電力を0とする。これにより、図7Dに示す電力の流れを実現することができる。
[運転状態フラグ=3、第1バッテリ使用フラグ=2、第2バッテリ使用フラグ=2]
回生走行時通過電力=0
高出力走行時通過電力算出部7323は、運転状態フラグの値が“1”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“0”ある場合に、以下の手順に従って高出力走行時通過電力を算出する。また高出力走行時通過電力算出部7323は、運転状態フラグの値が“1”でない場合には、高出力走行時通過電力を0とする。上述のように、総要求電力が第1バッテリB1の出力可能な電力の上限である第1出力可能電力を超える場合には、運転状態は高出力走行状態となる。そしてこの高出力走行状態では、第2バッテリB2は第1バッテリB1による不足分を補うように放電する。そこで高出力走行時通過電力算出部7323は、第1出力可能電力から第1要求電力´´を減算したものを高出力走行時通過電力とする。これにより、図5に示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=1、第2バッテリ使用フラグ=0]
高出力走行時通過電力=第1出力可能電力−第1要求電力´´
電気パス時通過電力算出部7324は、電気パス実行フラグの値が“1”である場合にのみ、以下の手順に従って正の電気パス時通過電力を算出する。また電気パス時通過電力算出部7324は、電気パス実行フラグの値が“1”でない場合には、電気パス時通過電力を0とする。これにより、例えば運転状態が通常走行状態である時に電気パス実行フラグの値が“1”となった場合には、図4Bに示す電力の流れが実現され、電気パス時通過電力が第2バッテリB2に供給される。また運転状態が低出力走行状態である時に電気パス実行フラグの値が“1”となった場合には、図6Bに示す電力の流れが実現され、電気パス時通過電力が第2バッテリB2に供給される。また運転状態が回生走行状態である時に電気パス実行フラグの値が“1”となった場合には、図7Eに示す電力の流れが実現され、電気パス時通過電力が第2バッテリB2に供給される。
この電気パス時通過電力の大きさは、予め定められた固定値としてもよいし、可変値としてもよい。また可変値とする場合、例えば回復モードの実行の有無に応じて電気パス時通過電力の大きさを変えてもよい。すなわち回復モードの実行中である場合には、回復モードの実行中でない場合よりも電気パス時通過電力を大きくすることが好ましい。これにより、回復モードの実行中である場合には、回復モードの実行中でない場合よりも、電気パス制御を実行することによって第2蓄電装置に充電される電力を大きくできるので、これにより第2SOCを速やかに回復させることができる。また可変値とする場合、例えば第2SOCに応じて電気パス時通過電力の大きさを変えてもよい。
アイドル時通過電力算出部7325は、運転状態フラグの値が“4”である場合に、以下の手順に従ってアイドル時通過電力を算出する。またアイドル時通過電力算出部7325は、運転状態フラグの値が“4”でない場合には、アイドル時通過電力を0とする。
アイドル時通過電力算出部7325は、運転状態フラグの値が“4”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“0”である場合には、アイドル時通過電力を0とする。これにより、図8Aに示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=4、第2バッテリ使用フラグ=0]
アイドル時通過電力=0
アイドル時通過電力算出部7325は、運転状態フラグの値が“4”でありかつ第2バッテリ使用フラグの値が“1”である場合には、車両補機Hにおける要求電力をアイドル時通過電力とする。これにより、図8Bに示す電力の流れが実現される。
[運転状態フラグ=4、第2バッテリ使用フラグ=1]
アイドル時通過電力=補機要求電力
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。