以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は、各実施形態について、共通する箇所には共通の符号が付されており、本明細書では、重複する説明が省略されている。また、一の実施形態で既述されていることは、他の実施形態についても適宜適用することができる。なお、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<第一実施形態>
図1に示すように、本実施形態の電力変換システム1は、放電制御装置10と、直流電源20と、通常運転時駆動用電源供給部50と、制御装置70と、スイッチング素子駆動回路90とを備える。また、放電制御装置10は、平滑コンデンサ30と、電力変換器40と、放電時駆動用電源供給部60と、放電制御部80とを具備する。なお、電力変換器40には、負荷である回転電機MGが接続されている。
(直流電源20)
直流電源20は、直流電力を出力する。直流電源20は、直流電力を出力することができれば良く、限定されない。直流電源20は、例えば、鉛蓄電池(バッテリ)、リチウムイオン電池などを用いることができる。また、直流電源20は、公知の発電機を用いて直流電力を生成することもできる。この場合、直流電源20は、公知の整流回路および平滑回路などを用いて、発電機が出力する交流電力を整流し平滑して、直流電力を生成することができる。なお、直流電源20は、後述する低電圧側直流電源BATと比べて、高電圧の直流電力を出力する。
また、直流電源20は、例えば、公知の昇圧コンバータなどを用いて、低電圧の直流電力を昇圧することもできる。この場合、昇圧コンバータとして、例えば、公知のフライバック型のDC/DCコンバータ、フォワード型のDC/DCコンバータなどの絶縁型の昇圧コンバータを用いると好適である。
(平滑コンデンサ30)
平滑コンデンサ30は、直流電源20から出力された直流電力を平滑する。平滑コンデンサ30は、例えば、電解コンデンサを用いることができる。直流電源20と平滑コンデンサ30との間には、開閉器2SWが設けられている。電力変換システム1の通常運転時には、開閉器2SWが閉状態にされる。開閉器2SWが閉状態のときには、直流電源20の正極側20pと平滑コンデンサ30の正極側30pとが電気的に導通する。その結果、平滑コンデンサ30に対して、直流電力の供給が可能になる。直流電源20から供給された直流電力は、平滑コンデンサ30によって平滑されてリップルが低減される。
一方、電力変換システム1の停止時または異常時には、開閉器2SWが開状態にされる。開閉器2SWが開状態のときには、直流電源20の正極側20pと平滑コンデンサ30の正極側30pとが電気的に遮断される。その結果、平滑コンデンサ30に対して、直流電力の供給が停止される。なお、直流電源20の負極側20nおよび平滑コンデンサ30の負極側30nは、パワーグランド(直流電源20を含む高電圧側の回路の基準電位)に接続されている。
(電力変換器40)
図1に示すように、電力変換器40は、一対のスイッチング素子41を複数(本実施形態では、三つ)備えており、複数(三つ)の一対のスイッチング素子41は、フルブリッジ接続されている。電力変換器40は、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力を交流電力に変換して負荷である回転電機MGに出力する。複数(三つ)の一対のスイッチング素子41の各々は、平滑コンデンサ30の正極側に接続される正極側スイッチング素子4xpと、平滑コンデンサ30の負極側に接続される負極側スイッチング素子4xnとが直列接続されている。なお、本実施形態の電力変換器40は、三相の電力変換器であり、xは、u、v、wのうちのいずれかである。例えば、正極側スイッチング素子4upは、U相の正極側スイッチング素子を示しており、負極側スイッチング素子4unは、U相の負極側スイッチング素子を示している。
正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、公知の電力用スイッチング素子を用いることができる。正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、例えば、公知の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)などを用いることができる。
図1に示すように、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、制御端子4gと、入力端子4cと、出力端子4eとを備えている。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)では、制御端子4gは、ゲート端子に相当し、入力端子4cは、コレクタ端子に相当し、出力端子4eは、エミッタ端子に相当する。制御端子4gは、後述するスイッチング素子駆動回路90および制御信号絶縁部7pcを介して、制御装置70と接続されている。複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、制御装置70から出力される駆動信号に基づいて開閉制御される。なお、同図では、U相の正極側スイッチング素子4upの接続状態が示されているが、V相の正極側スイッチング素子4vpおよびW相の正極側スイッチング素子4wpについても同様に接続されている。
制御端子4gと出力端子4eとの間の電圧を制御電圧Vgeとする。例えば、制御電圧Vgeがローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に遮断された開状態に制御される。一方、制御電圧Vgeがハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に導通された閉状態に制御される。
複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、還流ダイオード(図示略)を備えている。還流ダイオードは、例えば、スイッチング素子のボディダイオード(寄生ダイオード)を用いることができる。また、ボディダイオードの代わりに、還流ダイオードを別途設けて、入力端子4cと出力端子4eとの間に並列接続することもできる。還流ダイオードは、スイッチング素子が開状態のときに、出力端子4e側から入力端子4c側に向かう電流経路を形成する。これにより、スイッチング素子の開閉に伴って生じる逆電流から当該スイッチング素子を保護することができる。
複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpについて上述したことは、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnについても同様に言える。また、制御装置70は、例えば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御によってデューティ比を可変して、当該デューティ比に基づいて、複数(三つ)の一対のスイッチング素子41の各々のスイッチング素子を開閉制御することができる。
例えば、電力変換器40は、制御装置70の指令に基づいて、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpのうちの一の正極側スイッチング素子4xpと、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnのうちの一の負極側スイッチング素子4xnとが閉状態にされ、他のスイッチング素子が開状態にされる。閉状態にされる一の正極側スイッチング素子4xpおよび一の負極側スイッチング素子4xnの相(U相、V相、W相)は、異なる。また、閉状態にされるスイッチング素子のうちの少なくとも一方のスイッチング素子は、パルス幅変調(PWM)制御される。制御装置70が閉状態にするスイッチング素子の組み合わせを順に変更することにより、電力変換器40は、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力を交流電力に変換することができる。なお、電力変換器40は、三相の電力変換器に限定されるものではなく、負荷に合わせて任意の相数にすることができる。
図1に示すように、正極側スイッチング素子4xpと負極側スイッチング素子4xnとの間には、出力端子42xが設けられている。出力端子42xと、負荷である回転電機MGの相端子43xとの間は、電力ケーブル44xによって電気的に接続されている。電力ケーブル44xは、電力変換器40によって変換された交流電力を回転電機MGに給電する。なお、xは、u、v、wのうちのいずれかである。
回転電機MGは、電動機および発電機のうちの少なくとも一方の機能を備えている。回転電機MGは、例えば、公知のブラシレスの回転電機を用いることができる。また、回転電機MGの三相の電機子コイル(図示略)は、Y結線またはΔ結線で電気的に接続することができる。さらに、各電機子コイルは、分布巻(例えば、同心巻、波巻、重ね巻など)または集中巻などの公知の方法で巻装することができる。また、回転電機MGは、例えば、回転子鉄心の内部に永久磁石が埋め込まれた埋込磁石形とすることができ、回転子鉄心の外周表面に永久磁石が設けられた表面磁石形とすることもできる。例えば、本実施形態の放電制御装置10を車両用の電力変換システム1に適用する場合(回転電機MGが車両の駆動用電動機、発電機の場合)は、埋込磁石形にすると良い。なお、固定子のスロット数および回転子の磁極数は、限定されない。また、回転電機MGは、三相の回転電機に限定されるものではなく、単相または多相の回転電機であっても良い。さらに、負荷は、交流電力を駆動源とする種々の負荷であり、回転電機MGに限定されるものではない。
(通常運転時駆動用電源供給部50)
通常運転時駆動用電源供給部50は、スイッチング素子駆動回路90に対して、電力変換システム1の通常運転時に駆動用電源を供給する。通常運転時駆動用電源供給部50は、直流の駆動用電源を供給することができれば良く、限定されない。通常運転時駆動用電源供給部50は、例えば、公知のフライバック型のDC/DCコンバータ、フォワード型のDC/DCコンバータなどを用いて、直流電力を生成することもできる。図1に示すように、本実施形態では、通常運転時駆動用電源供給部50は、トランス51と、駆動用スイッチング素子52とを備えている。
トランス51は、一次側に一次巻線51aを備え、二次側に二次巻線51bと、二次巻線51cとを備えている。一次巻線51aの一端側(巻始め側)は、駆動用スイッチング素子52を介して、低電圧側直流電源BATの負極側BATnと接続されている。一次巻線51aの他端側(巻終り側)は、低電圧側直流電源BATの正極側BATpと接続されている。低電圧側直流電源BATは、既述した直流電源20と比べて、低電圧の直流電力を出力することができれば良く、限定されない。低電圧側直流電源BATは、例えば、鉛蓄電池(バッテリ)、リチウムイオン電池などを用いることができる。なお、低電圧側直流電源BATの負極側BATnは、制御グランド(後述する制御装置70を含む低電圧側の回路の基準電位)と接続されている。制御グランドは、既述したパワーグランドと電気的に絶縁されている。
一次巻線51aの巻数および二次巻線51bの巻数は、低電圧側直流電源BATの直流電圧と、スイッチング素子駆動回路90に供給する駆動用電源の直流電圧との変圧比に合わせて設定されている。このことは、二次巻線51cについても同様であり、二次巻線51cの巻数は、二次巻線51bの巻数と同じ巻数に設定されている。トランス51は、公知の電力用トランスを用いることができ、一次側と二次側とが電気的に絶縁された絶縁トランスを用いると好適である。
駆動用スイッチング素子52は、一次巻線51aと直列接続されており、低電圧側直流電源BATの直流電力の供給を断続させる。駆動用スイッチング素子52は、例えば、既述した絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)などを用いることができる。駆動用スイッチング素子52は、既述した電力変換器40のスイッチング素子と同様にして、開状態または閉状態に開閉制御される。駆動用スイッチング素子52は、開状態と閉状態とを交互に繰り返すことにより、低電圧側直流電源BATの直流電力の供給を断続させることができる。
通常運転時駆動用電源供給部50は、例えば、擬似共振型(RCC:Ringing Choke Converter)のDC/DCコンバータを用いることができる。擬似共振型のDC/DCコンバータは、トランス51の一次巻線51aのインダクタンスと、駆動用スイッチング素子52の静電容量(寄生容量)とによる共振現象を利用して、自励発振を行う。なお、通常運転時駆動用電源供給部50は、他励式であっても良い。
また、フライバック型のDC/DCコンバータは、駆動用スイッチング素子52が閉状態のときに、トランス51のコアに電磁エネルギーを蓄える。そして、駆動用スイッチング素子52が閉状態から開状態に切り替わると、トランス51の一次側から二次側に電力が伝えられる。なお、フォワード型のDC/DCコンバータは、駆動用スイッチング素子52が閉状態のときにトランス51の一次側から二次側に電力が伝えられる。同図では、一次巻線51a、二次巻線51bおよび二次巻線51cの巻始め位置が、それぞれ黒丸で示されている。
トランス51の二次側(二次巻線51b)には、ダイオード51dとコンデンサ91aとを備える整流回路が設けられている。具体的には、二次巻線51bの一端側(巻始め側)には、ダイオード51dのアノード側が接続され、ダイオード51dのカソード側は、正極側スイッチング素子駆動回路91のコンデンサ91aの正極側に接続されている。コンデンサ91aの負極側は、二次巻線51bの他端側(巻終り側)に接続されている。ダイオード51dは、公知の整流ダイオードを用いることができ、コンデンサ91aは、公知の電解コンデンサを用いることができる。二次巻線51bから出力された交流電力は、整流回路によって整流および平滑されて直流電力が生成される。生成された直流電力は、正極側スイッチング素子駆動回路91に供給される。
トランス51の二次側(二次巻線51c)には、ダイオード51eとコンデンサ93aとを備える整流回路が設けられている。ダイオード51eは、上述したダイオード51dに相当し、コンデンサ93aは、上述したコンデンサ91aに相当する。二次巻線51bと同様に、二次巻線51cから出力された交流電力は、整流回路によって整流および平滑されて直流電力が生成される。生成された直流電力は、負極側スイッチング素子駆動回路92の通常運転時スイッチング素子駆動回路93に供給される。
(放電時駆動用電源供給部60)
既述したように、電力変換システム1の停止時または異常時には、開閉器2SWが開状態にされる。その結果、平滑コンデンサ30に対して、直流電力の供給が停止される。しかしながら、直流電源20は、低電圧側直流電源BATと比べて、高電圧であり、電力変換システム1の停止時または異常時には、平滑コンデンサ30に残存する直流電力を放電させることが好ましい。本実施形態では、放電制御部80は、放電時駆動用電源供給部60から供給される駆動用電源を用いて、平滑コンデンサ30に残存する直流電力を放電させる。
放電時駆動用電源供給部60は、電力変換システム1の停止時または異常時に、放電時スイッチング素子駆動回路94に対して駆動用電源を供給する。具体的には、放電時駆動用電源供給部60は、平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して、放電時操作対象スイッチング素子を駆動させる駆動用電源を供給する。放電時操作対象スイッチング素子は、複数(本実施形態では、三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(本実施形態では、三つ)の負極側スイッチング素子4xnのうちのいずれか一方の複数のスイッチング素子をいう。放電時操作対象スイッチング素子は、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnであると好適である。図1に示すように、本実施形態では、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4un,4vn,4wnを放電時操作対象スイッチング素子40nとし、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4up,4vp,4wpを放電時操作非対象スイッチング素子40pとする。
放電時駆動用電源供給部60は、平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して直流電力を生成することができれば良く、限定されない。放電時駆動用電源供給部60は、例えば、公知のリニアレギュレータ、降圧型チョッパなどの非絶縁型の降圧コンバータを用いることができる。また、放電時駆動用電源供給部60は、通常運転時駆動用電源供給部50で既述したフライバック型のDC/DCコンバータなどを用いることもできる。この場合、トランスは、一次側と二次側とが電気的に絶縁されている必要はない。
図1に示すように、放電時駆動用電源供給部60は、平滑コンデンサ30に対して並列接続されている。また、放電時駆動用電源供給部60は、後述する第三フォトカプラ7pc3を介して、制御装置70と接続されている。放電時駆動用電源供給部60は、制御装置70の指令に基づいて、平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して直流電力を生成する。生成された直流電力は、放電時スイッチング素子駆動回路94のコンデンサ94aおよび放電制御部80に供給される。
(制御装置70)
制御装置70は、電力変換器40を含む電力変換システム1を制御する。図2に示すように、制御装置70は、公知の中央演算装置70a、記憶装置70bおよび入出力インターフェース70cを備えており、これらは、バス70dを介して接続されている。
中央演算装置70aは、CPU:Central Processing Unitであり、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置70bは、第一記憶装置70b1および第二記憶装置70b2を備えている。第一記憶装置70b1は、読み出しおよび書き込み可能な揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置70b2は、読み出し専用の不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。例えば、中央演算装置70aは、第二記憶装置70b2に記憶されている電力変換器40の駆動制御プログラムを第一記憶装置70b1に読み出して、駆動制御プログラムを実行する。中央演算装置70aは、入出力インターフェース70cを介して、電力変換器40に駆動信号を出力する。また、平滑コンデンサ30を放電させる際には、中央演算装置70aは、入出力インターフェース70cを介して、放電時駆動用電源供給部60、放電制御部80および負極側スイッチング素子駆動回路92に対して指令を送出する。
図1に示すように、制御装置70は、制御信号絶縁部7pcを備えている。制御信号絶縁部7pcは、制御装置70を含む低電圧側の回路と、直流電源20を含む高電圧側の回路とを電気的に絶縁する。制御信号絶縁部7pcは、例えば、公知のフォトカプラを用いることができる。制御信号絶縁部7pcは、第一フォトカプラ7pc1と、第二フォトカプラ7pc2と、第三フォトカプラ7pc3とを備えている。第一フォトカプラ7pc1の入力側は、制御装置70と接続されており、第一フォトカプラ7pc1の出力側は、正極側スイッチング素子駆動回路91と接続されている。第二フォトカプラ7pc2の入力側は、制御装置70と接続されており、第二フォトカプラ7pc2の出力側は、負極側スイッチング素子駆動回路92の通常運転時スイッチング素子駆動回路93と接続されている。第三フォトカプラ7pc3の入力側は、制御装置70と接続されており、第三フォトカプラ7pc3の出力側は、放電時駆動用電源供給部60、放電制御部80および負極側スイッチング素子駆動回路92と接続されている。
制御装置70は、電力変換システム1の通常運転時には、開閉器2SWを閉状態にする。また、制御装置70は、駆動用スイッチング素子52を開閉制御して、通常運転時駆動用電源供給部50を駆動制御する。これにより、通常運転時駆動用電源供給部50は、正極側スイッチング素子駆動回路91に直流電力を供給し、負極側スイッチング素子駆動回路92の通常運転時スイッチング素子駆動回路93に直流電力を供給する。
制御装置70は、電力変換器40の駆動制御プログラムに基づいて、電力変換器40の駆動信号を生成する。生成されたU相の正極側スイッチング素子4upの駆動信号は、第一フォトカプラ7pc1および正極側スイッチング素子駆動回路91を介して、U相の正極側スイッチング素子4upの制御端子4gに付与される。V相の正極側スイッチング素子4vpおよびW相の正極側スイッチング素子4wpについても同様である。
生成されたU相の負極側スイッチング素子4unの駆動信号は、第二フォトカプラ7pc2および負極側スイッチング素子駆動回路92の通常運転時スイッチング素子駆動回路93を介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに付与される。V相の負極側スイッチング素子4vnおよびW相の負極側スイッチング素子4wnについても同様である。このようにして、電力変換器40は、電力変換システム1の通常運転時に、制御装置70によって駆動制御される。
制御装置70は、電力変換システム1の停止時または異常時には、開閉器2SWを開状態にする。また、制御装置70は、第三フォトカプラ7pc3を介して、放電時駆動用電源供給部60に対して、直流電力の生成を指令する。具体的には、制御装置70は、図1に示す第三フォトカプラ7pc3のフォトダイオードのアノードとカソードとの間の端子間電圧をローレベル(所定電圧値以下の状態)にする。これにより、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタは、コレクタとエミッタとの間が電気的に遮断された開状態になる。
第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタは、抵抗器(図示略)を介してプルアップされており、フォトトランジスタは、コレクタとエミッタとの間の端子間電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)になる。放電時駆動用電源供給部60は、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときに、平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して直流電力を生成する。生成された直流電力は、放電時スイッチング素子駆動回路94のコンデンサ94aおよび放電制御部80に供給される。
なお、電力変換システム1に異常が生じたときには、制御装置70からの指令がなくても、開閉器2SWを開状態にして、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタを開状態にすると好適である。例えば、開閉器2SWは、常開型の開閉器を用いると良い。この場合、制御装置70からの指令がないときには、開閉器2SWは、開状態になる。また、第三フォトカプラ7pc3は、制御装置70からの指令がないときには、フォトダイオードのアノードとカソードとの間の端子間電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)になり、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタは、開状態になる。その結果、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)になる。
(放電制御部80)
放電制御部80は、平滑コンデンサ30に対して直流電力の供給が停止されているときに、平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電させる。図3に示すように、放電制御部80は、発振器81と、抵抗器82と、コンデンサ83と、NOT素子84と、NAND素子85とを備えている。発振器81は、一定の周波数でクロック信号(矩形波信号)を出力することができれば良く、限定されない。発振器81は、例えば、水晶振動子などの公知の発振器(オシレータ)を用いることができる。また、発振器81は、例えば、マルチバイブレータなどの公知の発振回路を用いて構成しても良い。発振器81のクロック信号の周波数およびデューティ比は、限定されない。クロック信号の周波数は、例えば、通常運転時の電力変換器40のキャリア周波数と同程度にすることができる。また、クロック信号のデューティ比は、例えば、50%にすることができる。
発振器81の出力側は、抵抗器82の一端側と接続されており、抵抗器82の他端側は、コンデンサ83の一端側と接続されている。コンデンサ83の他端側は、パワーグランド(直流電源20を含む高電圧側の回路の基準電位)と接続されている。抵抗器82およびコンデンサ83は、発振器81から出力されるクロック信号(矩形波信号)を遅延させる遅延回路を構成している。遅延回路は、当該信号を遅延させることができれば良く、上述した構成に限定されるものではない。抵抗器82の他端側およびコンデンサ83の一端側は、NOT素子84の入力側と接続されており、NOT素子84の出力側は、NAND素子85の第二入力端子85bと接続されている。NAND素子85の第一入力端子85aは、発振器81の出力側と接続されている。NAND素子85の出力端子85cから出力される出力信号は、放電制御部80の出力信号になる。なお、NOT素子84およびNAND素子85は、公知の論理素子を用いることができる。
放電制御部80は、図1に示す第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)になると、発振器81がクロック信号(矩形波信号)の出力を開始する。一方、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)になると、発振器81は、クロック信号(矩形波信号)の出力を停止する。放電制御部80による制御の詳細は、後述する。
(スイッチング素子駆動回路90)
図1に示すように、スイッチング素子駆動回路90は、正極側スイッチング素子駆動回路91と、負極側スイッチング素子駆動回路92とを備えている。正極側スイッチング素子駆動回路91は、コンデンサ91aと、駆動信号出力部91bとを備えている。既述したように、コンデンサ91aには、通常運転時駆動用電源供給部50から直流電力が供給される。駆動信号出力部91bは、通常運転時駆動用電源供給部50から供給された直流電力を用いて、U相の正極側スイッチング素子4upの駆動信号を生成し出力する。当該駆動信号は、制御装置70によって生成され第一フォトカプラ7pc1を介して入力される駆動信号に基づいて生成される。U相の正極側スイッチング素子4upの駆動信号は、正極側抵抗器91rを介して、U相の正極側スイッチング素子4upの制御端子4gに付与される。V相の正極側スイッチング素子4vpおよびW相の正極側スイッチング素子4wpについても同様である。
負極側スイッチング素子駆動回路92は、マルチプレクサ92mと、通常運転時スイッチング素子駆動回路93と、放電時スイッチング素子駆動回路94とを備えている。マルチプレクサ92mは、公知のマルチプレクサを用いることができる。通常運転時スイッチング素子駆動回路93は、コンデンサ93aと、駆動信号出力部93bとを備えている。既述したように、コンデンサ93aには、通常運転時駆動用電源供給部50から直流電力が供給される。駆動信号出力部93bは、通常運転時駆動用電源供給部50から供給された直流電力を用いて、U相の負極側スイッチング素子4unの駆動信号を生成し出力する。当該駆動信号は、制御装置70によって生成され第二フォトカプラ7pc2を介して入力される駆動信号に基づいて生成される。駆動信号出力部93bの出力側は、マルチプレクサ92mの一方の入力端子と接続されており、駆動信号出力部93bによって生成された駆動信号が入力可能になっている。
放電時スイッチング素子駆動回路94は、コンデンサ94aと、駆動信号出力部94bとを備えている。既述したように、コンデンサ94aには、放電時駆動用電源供給部60から直流電力が供給される。駆動信号出力部94bは、放電時駆動用電源供給部60から供給された直流電力を用いて、U相の負極側スイッチング素子4unの駆動信号を生成し出力する。当該駆動信号は、放電制御部80の出力信号に基づいて生成される。駆動信号出力部94bの出力側は、マルチプレクサ92mの他方の入力端子と接続されており、駆動信号出力部94bによって生成された駆動信号が入力可能になっている。
マルチプレクサ92mの制御端子は、第三フォトカプラ7pc3の出力側と接続されており、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧に応じて、通常運転時スイッチング素子駆動回路93の駆動信号出力部93bの出力または放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bの出力が選択可能になっている。
具体的には、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、通常運転時スイッチング素子駆動回路93の駆動信号出力部93bの出力が選択される。一方、第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bの出力が選択される。このようにして、U相の負極側スイッチング素子4unの駆動信号は、マルチプレクサ92mおよび負極側抵抗器92rを介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに付与される。U相の負極側スイッチング素子4unについて既述したことは、V相の負極側スイッチング素子4vnおよびW相の負極側スイッチング素子4wnについても同様である。
(放電制御部80による制御)
放電制御部80は、平滑コンデンサ30に対して直流電力の供給が停止されているときに、平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電させる。具体的には、放電制御部80は、放電時操作対象スイッチング素子40nのすべてのスイッチング素子を同時に開状態にする全開状態と、放電時操作対象スイッチング素子40nのすべてのスイッチング素子を同時に閉状態にする全閉状態とを交互に繰り返して、平滑コンデンサ30の残存電力を放電させる。
図3は、図1に示す放電制御部80、放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94b、負極側抵抗器92rおよびU相の負極側スイッチング素子4unを抜き出したものであり、第三フォトカプラ7pc3からU相の負極側スイッチング素子4unまでの回路構成例を示している。なお、図3に示す第三フォトカプラ7pc3の出力は、図1に示す第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧に相当する。
図4は、図3の各種信号の経時変化の一例を示すタイミングチャートである。曲線L11は、発振器81の出力の経時変化の一例を示している。曲線L12は、NAND素子85の第二入力端子85bの経時変化の一例を示している。曲線L13は、駆動信号出力部94bの出力の経時変化の一例を示している。曲線L14は、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeの経時変化の一例を示している。縦軸は、いずれも電圧を示している。また、Loは、電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)であることを示し、Hiは、電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)であることを示している。横軸は、いずれも時刻を示している。
なお、図4では、図1に示す第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)になっており、放電時駆動用電源供給部60は、制御装置70から平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して直流電力を生成する指令を受けているものとする。また、放電制御部80は、制御装置70から平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電させる指令を受けているものとする。
図4の曲線L14に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeは、時刻t11まではハイレベル(所定電圧値を超えている状態)である。そのため、放電時駆動用電源供給部60および放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bを介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに、平滑コンデンサ30の残存電力が供給される。
曲線L11に示すように、時刻t11において、発振器81のクロック信号(矩形波信号)がローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。これにより、曲線L13に示すように、駆動信号出力部94bの出力は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わる。その結果、曲線L14に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeは、次第に低下して、時刻t12において、ローレベル(所定電圧値以下の状態)になる。時刻t11から時刻t12までの時間において、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに蓄積された平滑コンデンサ30の残存電力は、放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bを介して放電される。
曲線L12に示すように、時刻t12において、NAND素子85の第二入力端子85bは、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わる。この変化は、上述した時刻t11における発振器81のクロック信号(矩形波信号)の立ち上りが、抵抗器82およびコンデンサ83によって構成される遅延回路によって遅延され、NOT素子84によって反転されてNAND素子85の第二入力端子85bに入力されることによって生じる。
これにより、曲線L13に示すように、時刻t12において、駆動信号出力部94bの出力は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。曲線L14に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeは、次第に増加して、放電時駆動用電源供給部60および放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bを介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに平滑コンデンサ30の残存電力が供給される。上述した制御が、以降、繰り返される。
U相の負極側スイッチング素子4unについて既述したことは、V相の負極側スイッチング素子4vnおよびW相の負極側スイッチング素子4wnについても同様に言える。さらに、これらのスイッチング素子を開状態にするタイミングは一致しており、これらのスイッチング素子を閉状態にするタイミングは一致している。
また、放電時操作対象スイッチング素子40nの制御電圧Vgeがハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に導通された閉状態になる。そのため、負荷(本実施形態では、回転電機MG)にエネルギー(例えば、回生エネルギーなど)が残存している場合には、当該エネルギーが放出される。当該エネルギーは、放電時操作対象スイッチング素子40nを介して放出される。なお、放電時操作対象スイッチング素子が複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの場合には、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpと、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnの各還流ダイオード(図示略)とを介して放出される。
本実施形態の放電制御装置10によれば、放電制御部80は、放電時操作対象スイッチング素子40nのすべてのスイッチング素子を同時に開状態にする全開状態と、放電時操作対象スイッチング素子40nのすべてのスイッチング素子を同時に閉状態にする全閉状態とを交互に繰り返して、平滑コンデンサ30の残存電力を放電させる。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、放電時に放電時操作対象スイッチング素子40nの電気的な開放状態または短絡状態を等価に維持することができる。よって、本実施形態の放電制御装置10は、負荷(本実施形態では、回転電機MG)の挙動を不安定にすることなく、電力変換器40の入力側の平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電することができる。
また、本実施形態の放電制御装置10によれば、放電制御部80は、放電時操作対象スイッチング素子40nの各々のスイッチング素子の制御電圧Vgeの充放電によって、平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電させることができる。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、特許文献1に記載の発明と比べて、平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電させる際の放電電流が過大にならず、放電電流の制御を簡素化することができる。
さらに、特許文献1に記載の発明では、放電時に第1電源および第2電源の両方の電源(高電位側のスイッチング素子および低電位側のスイッチング素子の両方を駆動させる電源)が必要になる。そのため、放電時に駆動用電源を供給する電源装置が大型化する可能性があり、製造コストの上昇を招く可能性がある。本発明に係る放電制御装置10によれば、放電時駆動用電源供給部60は、平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して、放電時操作対象スイッチング素子を駆動させる駆動用電源を供給する。放電時操作対象スイッチング素子は、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnのうちのいずれか一方の複数のスイッチング素子である。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnの両方のスイッチング素子を用いて平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電する場合と比べて、放電時駆動用電源供給部60を小型化することが容易である。
なお、放電時操作対象スイッチング素子が複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの場合には、各々のスイッチング素子毎に駆動用電源を設ける必要があり、放電時駆動用電源供給部60に相当する電源供給部が複数(三つ)必要になる。本実施形態の放電制御装置10によれば、放電時操作対象スイッチング素子は、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnである。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、放電時操作対象スイッチング素子40nの基準電位を共通にすることができ、放電時駆動用電源供給部60を集約(本実施形態では、一つの放電時駆動用電源供給部60)することができる。よって、本実施形態の放電制御装置10は、放電時駆動用電源供給部60を小型化することができる。
また、放電制御部80が放電時操作対象スイッチング素子40nを全開状態にする時間である全開時間は、放電時操作対象スイッチング素子40nが全閉状態のときに放電時操作対象スイッチング素子40nの各々の制御端子4gに印加された制御電圧Vgeを消失させるのに必要な最短時間に設定されていると好適である。さらに、全開時間は、放電時操作対象スイッチング素子40nの各々の制御端子4gに設けられる一つまたは複数の抵抗器(本実施形態では、一つの負極側抵抗器92r)の抵抗値R1と、制御端子4gと出力端子4eとの間の静電容量C1とを乗じた時定数τに基づいて設定されていると好適である。
図3に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gには、負極側抵抗器92rが設けられている。負極側抵抗器92rの抵抗値を抵抗値R1とする。また、制御端子4gと出力端子4eとの間の静電容量を静電容量C1とする。時定数τは、抵抗値R1と静電容量C1とを乗じて得られる。制御端子4gに蓄積された電荷の放電前(下記数1における時刻tが0のとき)の駆動信号出力部94bの出力電圧を電圧V0(既述したハイレベルに相当)とし、時刻tのときの制御電圧Vgeを制御電圧Vge(t)とする。このとき、制御電圧Vge(t)は、下記数1で示される。
(数1)
Vge(t)=V0×exp(−t/τ)
数1から分かるように、制御電圧Vgeは、放電が開始されると電圧V0から次第に低下していく。また、制御電圧Vgeは、時定数τ経過後に所定電圧(放電前の電圧V0の約36.8%)になる。このように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに蓄積された電荷(平滑コンデンサ30の残存電力)を放電するのに要する所要時間を概算することができる。なお、既述した遅延回路の抵抗器82の抵抗値と、コンデンサ83の静電容量とを乗じた時定数は、時定数τと一致している。U相の負極側スイッチング素子4unについて既述したことは、V相の負極側スイッチング素子4vnおよびW相の負極側スイッチング素子4wnについても同様に言える。
本実施形態の放電制御装置10によれば、放電制御部80が放電時操作対象スイッチング素子40nを全開状態にする時間である全開時間は、放電時操作対象スイッチング素子40nが全閉状態のときに放電時操作対象スイッチング素子40nの各々の制御端子4gに印加された制御電圧Vgeを消失させるのに必要な最短時間に設定されている。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、放電時操作対象スイッチング素子40nの各制御端子4gに蓄積された電荷(平滑コンデンサ30の残存電力)を放電するのに要する所要時間を確保しつつ、全開時間を最短化することができる。
また、本実施形態の放電制御装置10によれば、放電制御部80が放電時操作対象スイッチング素子40nを全開状態にする時間である全開時間は、放電時操作対象スイッチング素子40nの各々の制御端子4gに設けられる一つまたは複数の抵抗器(本実施形態では、一つの負極側抵抗器92r)の抵抗値R1と、制御端子4gと出力端子4eとの間の静電容量C1とを乗じた時定数τに基づいて設定されている。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、時定数τに基づいて、全開時間を容易に設定することができる。
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態と比べて、放電制御部80の構成が異なる。以下、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
図5に示すように、放電制御部80は、発振器81と、Dフリップフロップ86と、NOT素子87と、コンパレータ88と、NAND素子89とを備えている。発振器81は、第一実施形態で既述した発振器81と同様である。Dフリップフロップ86は、公知のDフリップフロップを用いることができる。Dフリップフロップ86のD端子(入力端子)は、抵抗器86rを介してプルアップされている。また、Dフリップフロップ86のC端子(クロック端子)は、発振器81の出力側と接続されており、発振器81のクロック信号(矩形波信号)が入力可能になっている。さらに、Dフリップフロップ86のQ端子(出力端子)は、NOT素子87を介して、放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bの入力側と接続されている。NOT素子87は、公知の論理素子を用いることができる。
駆動信号出力部94bの出力側は、第一実施形態と同様に、負極側抵抗器92rを介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gと接続されている。コンパレータ88は、公知のコンパレータ(比較器)を用いることができる。コンパレータ88の非反転入力端子88aは、基準電圧Vrefと接続されており、コンパレータ88の反転入力端子88bは、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gと接続されている。基準電圧Vrefは、コンパレータ88のオフセット電圧を考慮して設定されており、制御電圧Vgeのローレベル(所定電圧値以下の状態)の閾値となる。基準電圧Vrefは、例えば、放電時駆動用電源供給部60から供給される直流電力の直流電圧を、複数の抵抗器によって分圧して生成することができる。
NAND素子89は、公知の論理素子を用いることができる。NAND素子89の第一入力端子89aは、発振器81の入力側と接続されており、NAND素子89の第二入力端子89bは、コンパレータ88の出力端子88cと接続されている。NAND素子89の出力端子89cは、Dフリップフロップ86のRB端子(リセット端子)と接続されている。
図6は、図5の各種信号の経時変化の一例を示すタイミングチャートである。曲線L21は、発振器81の出力の経時変化の一例を示している。曲線L22は、駆動信号出力部94bの出力の経時変化の一例を示している。曲線L23は、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeの経時変化の一例を示している。曲線L24は、コンパレータ88の出力(出力端子88c)の経時変化の一例を示している。縦軸は、いずれも電圧を示している。また、Loは、電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)であることを示し、Hiは、電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)であることを示している。横軸は、いずれも時刻を示している。
なお、図6では、図1に示す第三フォトカプラ7pc3のフォトトランジスタのコレクタとエミッタとの間の端子間電圧は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)になっており、放電時駆動用電源供給部60は、制御装置70から平滑コンデンサ30の残存電力を降圧して直流電力を生成する指令を受けているものとする。また、放電制御部80は、制御装置70から平滑コンデンサ30に残存する残存電力を放電させる指令を受けているものとする。
図6の時刻t21までは、Dフリップフロップ86のQ端子(出力端子)は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)とする。曲線L22に示すように、駆動信号出力部94bの出力は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)である。このとき、曲線L24に示すように、コンパレータ88の出力端子88cは、ローレベル(所定電圧値以下の状態)であり、NAND素子89の出力端子89cは、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)である。よって、Dフリップフロップ86のRB端子(リセット端子)は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)であり、Dフリップフロップ86のリセットは、解除されている。
曲線L23に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeは、時刻t21まではハイレベル(所定電圧値を超えている状態)である。そのため、放電時駆動用電源供給部60および放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bを介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに、平滑コンデンサ30の残存電力が供給される。
曲線L21に示すように、時刻t21において、発振器81のクロック信号(矩形波信号)がローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。これにより、Dフリップフロップ86のQ端子(出力端子)は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。また、曲線L22に示すように、駆動信号出力部94bの出力は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わる。その結果、曲線L23に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeは、次第に低下して、時刻t22において、ローレベル(所定電圧値以下の状態)になる。時刻t21から時刻t22までの時間において、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに蓄積された平滑コンデンサ30の残存電力は、放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bを介して放電される。
時刻t22において、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeがローレベル(所定電圧値以下の状態)になり、基準電圧Vref以下になると、曲線L24に示すように、コンパレータ88の出力端子88cは、ローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。その結果、NAND素子89の出力端子89cは、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わる。よって、Dフリップフロップ86のRB端子(リセット端子)は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わり、Dフリップフロップ86は、リセットされる。
Dフリップフロップ86がリセットされると、Dフリップフロップ86のQ端子(出力端子)は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わる。また、曲線L22に示すように、時刻t23において、駆動信号出力部94bの出力は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。曲線L23に示すように、U相の負極側スイッチング素子4unの制御電圧Vgeは、次第に増加して、放電時駆動用電源供給部60および放電時スイッチング素子駆動回路94の駆動信号出力部94bを介して、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに平滑コンデンサ30の残存電力が供給される。
また、曲線L24に示すように、コンパレータ88の出力端子88cは、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)からローレベル(所定電圧値以下の状態)に切り替わる。その結果、NAND素子89の出力端子89cは、ローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わる。よって、Dフリップフロップ86のRB端子(リセット端子)は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)からハイレベル(所定電圧値を超えている状態)に切り替わり、Dフリップフロップ86のリセットは、解除される。上述した制御が、以降、繰り返される。なお、U相の負極側スイッチング素子4unについて既述したことは、V相の負極側スイッチング素子4vnおよびW相の負極側スイッチング素子4wnについても同様に言える。
本実施形態の放電制御装置10によれば、放電制御部80が放電時操作対象スイッチング素子40nを全開状態にする時間である全開時間は、放電時操作対象スイッチング素子40nが全閉状態のときに放電時操作対象スイッチング素子40nの各々の制御端子4gに印加された制御電圧Vgeを消失させるのに必要な最短時間に設定されている。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、第一実施形態で既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態の放電制御装置10によれば、放電制御部80が放電時操作対象スイッチング素子40nを全開状態にする時間である全開時間は、放電時操作対象スイッチング素子40nの各々の制御電圧Vgeが、制御電圧Vgeの消失を示す所定電圧値(本実施形態では、基準電圧Vref)以下になった直後に終了する。そのため、本実施形態の放電制御装置10は、制御電圧Vgeに基づいて、全開時間を容易に設定することができる。
<その他>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。また、本発明の放電制御装置10は、例えば、車両の駆動用電動機、発電機などの電力変換システム1に用いることができる。この場合、電力変換システム1の異常時の一例として、車両の衝突時、直流電源20の電圧異常時(例えば、過電圧異常時)などが挙げられる。なお、電力変換システム1の異常は、上述した異常に限定されるものではない。