JP6650358B2 - 自動分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動分析装置に関する。
イオン選択性電極(Ion Selective Electrode:ISE)は、血液などに代表される生体試料中のカリウム、ナトリウム、塩化物などのイオン(電解質)の濃度を迅速かつ簡便に測定するセンサとして広く用いられている。
ISEは、イオン選択性感応膜(以下「感応膜」ともいう。)、内部電解質溶液(以下「内部液」ともいう。)、内部電極(例えば銀塩化銀)などにより構成される。フローセル型ISEは、測定対象とする試料の供給に用いる流路を筐体の内部に有している。感応膜の一面は流路に接し、感応膜の裏面(他面)は内部液に接する。内部液には内部電極の一部が接する。フローセル型ISEは、フローセル型の参照電極を組み合わせて使用される。フローセル型ISEとフローセル型の参照電極との間に生じる電位差を測定することにより、目的イオンの活量(濃度)を求める。
臨床検査の分野では、生体試料である血液(特に、血清、血漿、尿などの検体)に含まれる電解質の濃度を定量する必要性が高い。測定法には、これらの試料をそのままISEを用いて測定する方法(いわゆる非希釈法)と、所定量の試料に所定量の希釈液を添加して混合した後(希釈した後)、ISEを用いて測定する方法(いわゆる希釈法)がある。希釈法は、(1) 試料液の必要量が少なく済む、(2) 測定液中のたんぱく質や脂質などの共存物の濃度が低いため、共存物による汚れの影響が少なく済む、(3) ISEの安定性が高いなどの特長をもつ。従って、自動分析装置においては、フローセル型のISEと希釈法を組み合わせた構成が現在主流である。
特許文献1には、作用電極と比較電極を有する電極部を用いて標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定する測定部と、試料液を希釈液により希釈して試料溶液を生成するための希釈槽と、前記試料液を前記希釈槽に供給する試料供給手段と、前記希釈液を前記希釈槽に供給する希釈液供給手段と、前記標準液を前記希釈槽に供給する標準液供給手段と、前記標準液と前記試料溶液とを前記希釈槽から交互に前記電極部に供給する測定液供給手段と、前記希釈槽と前記電極部との間の前記測定液供給手段に設けられる熱交換部と、を備える電解質測定装置が記載されている(要約を参照)。また、特許文献1には、装置全体の構成を複雑化することなく、試料溶液に含まれる被測定成分の電解質濃度を温度補正演算することなく正確に測定できるとの効果が記載されている([0025]段落を参照)。
特開2012−181102号公報
自動分析装置においては、多数の試料を高いスループットで測定する要望に応えるため、1時間あたり200〜300検体程度の高い処理能力をもつ装置が実用化されている。これらの装置の多くは希釈法を採用する。このため、短い測定周期内で効率よく希釈と測定を行う必要がある。
ところで、特許文献1には、容器内の底部が平坦である希釈槽(図1を参照)に試料と希釈液を吐出した後、攪拌機構を用いて攪拌し、試料溶液を生成する電解質測定装置が記載されている([0031]段落を参照)。しかし、特許文献1には、希釈槽の詳細構成やその使用が測定に及ぼす効果は何ら記載されていない。
また、特許文献1は、希釈槽から電極部(すなわち測定部)に対する試料溶液の送液も、希釈槽に残った試料溶液の廃液も必ず電極部を経由する構成であり、電極部を経由せずに廃液する機構(希釈槽用の廃液機構)は示されていない。このため、特許文献1に記載の構成では、電極部の汚染や劣化が進みやすい。
また、特許文献1における希釈槽は、容器内の底部が平坦であるため、測定終了後に希釈槽に残った試料溶液が、希釈槽の内側面や底面に残留しやすい課題がある。特に、希釈槽の平坦な底面のうち測定液供給配管の開口部から遠い位置(すなわち希釈槽の底面の辺縁部)にある試料溶液は取り残され易い。また攪拌機能を用いるため、攪拌機構の表面にも試料溶液が取り残され易い。つまり、特許文献1の場合、試料溶液のうち測定溶液として利用できるものの割合が低い(換言すると、試料溶液の利用効率が低い)という課題がある。このことは、希釈槽の内側面や底面に試料溶液が残留し易いことも意味する。以下では、希釈槽などに溶液が残留する現象を「液残り」又は「キャリーオーバ」という。
ところで、希釈槽に液残りがあると、残液が次の試料に漏れ込んで濃度を変化させ、測定結果に悪影響を及ぼしてしまう。すなわち、特許文献1に記載の装置構成は、実際には、測定精度が低いという課題がある。また、特許文献1に記載の装置構成の場合、攪拌機構の表面における液残りが次の試料の測定結果に悪影響を及ぼし、測定精度が低くなる課題もある。
これらの課題は、試料や試薬を潤沢に用いる既存の装置においては看過されていた。しかし、試料や試薬の液量の微量化を追求するという新しいニーズに対応する場合、残液量が同じであっても、その測定液量に対する割合が高まるため、測定精度への影響が看過できない、という新しい課題が生じる。
そこで、本発明は、試料や試薬液量の微量化を図っても、高精度な測定結果を維持することができる技術を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本明細書は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、「電解質センサと、点状の最深部に向かって単調に傾斜する内壁を有する希釈槽と、前記希釈槽から前記電解質センサへ試料溶液を送液する第一の管と、前記希釈槽から外部へ試料溶液を廃液する第二の管とを有し、前記第一の管の一端部と前記第二の管の一端部は、いずれも前記希釈槽の前記最深部の近傍に配置可能である自動分析装置」である。
本発明によれば、試料や試薬液量の微量化を図っても、高精度な測定結果を維持することができる。上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
実施例1で使用する電解質自動分析装置の模式図。 実施例1における希釈槽付近の模式図。 実施例1における希釈槽付近を拡大して示す模式断面図。 実施例1における希釈槽付近を拡大して示す模式断面図。 実施例1による電解質自動分析装置の概略動作を示すフローチャート。 実施例1における校正工程の概要を示すフローチャート。 実施例1における測定工程の概要を示すフローチャート。 実施例1における検体測定工程の概要を示すフローチャート。 実施例1における内部標準液測定工程の概要を示すフローチャート。 比較例である希釈槽の断面を示す図。 比較例である希釈槽の断面を示す図。 比較例である希釈槽の断面を示す図。 実施例1による希釈槽の断面例を示す図。 実施例1による希釈槽の断面例を示す図。 実施例1による希釈槽の断面例を示す図。 実施例1による希釈槽の断面例を示す図。 希釈槽の形状が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図表。 比較例の希釈槽に生じる残液場所を可視的に示す平面図。 実施例1による希釈槽の材質が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図表。 実施例1による希釈槽の材質が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図表。 実施例1による廃液ノズルの離心距離が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図。 実施例1による廃液ノズルの鉛直方向位置が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図。 実施例2による廃液ノズルの離心距離が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図。 実施例2による廃液ノズルの鉛直方向位置が残液量に及ぼす影響の評価結果を示す図。 実施例3による電解質自動分析装置の模式図。 実施例3による電解質自動分析装置の希釈槽付近の模式図。 実施例4による電解質自動分析装置の模式図。 実施例5による電解質自動分析装置の模式図。 実施例6による電解質自動分析装置の希釈槽付近の拡大模式図。 実施例6による電解質自動分析装置の希釈槽底部の変形例を示す拡大模式図。 実施例6による電解質自動分析装置の希釈槽底部の変形例を示す拡大模式図。 実施例6による電解質自動分析装置の希釈槽底部の変形例を示す拡大模式図。 実施例6による電解質自動分析装置の希釈槽底部の変形例を示す拡大模式図。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の態様は、後述する形態例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
(1)実施例1
(1−1)装置構成
図1に、本実施例に係る電解質自動分析装置1000の概略構成を示す。電解質自動分析装置1000は、希釈槽1010、検体分注機構1020、希釈液分注機構1030、内部標準液分注機構1040、送液機構1050、参照電極液送液機構1060、フローセル型の塩化物イオン選択性電極(以下「Cl-ISE」という。)1071、フローセル型のカリウムイオン選択性電極(以下「K-ISE」という。)1072、フローセル型のナトリウムイオン選択性電極(以下「Na-ISE」という。)1073、フローセル型の液絡1080、フローセル型の参照電極1090、計測制御装置1100、希釈槽用廃液機構1200を有する。また、電解質自動分析装置1000には、検体1021、希釈液1031、内部標準液1041、参照電極液1061を収容する各容器を設置可能である。更に、電解質自動分析装置1000には、廃液溜め1059も設置される。
図2に、希釈槽1010付近を拡大して示す。検体分注機構1020は、検体分注ノズル1022と、検体分注ノズル1022を上下方向に駆動する機構(不図示)と、検体分注ノズル1022を回転方向に駆動する機構(不図示)を備えている。検体分注ノズル1022は、不図示の流路を通じてシリンジポンプ(不図示)に接続されている。「流路」は、液体が流れる経路を指し、物理的には配管又は管を意味する。
希釈液分注機構1030は、希釈液分注ノズル1032を備えている。希釈液分注ノズル1032には流路が接続されている。内部標準液分注機構1040は、内部標準液分注ノズル1042を備えている。内部標準液分注ノズル1042には流路が接続されている。送液機構1050は、測定溶液吸引ノズル1052と、当該ノズルを上下方向に駆動する機構(不図示)とを備えている。測定溶液吸引ノズル1052は、前述の上下方向駆動機構に連結されている。また、測定溶液吸引ノズル1052には流路が接続されている。
希釈槽用廃液機構1200は、廃液トラップ1201、真空ポンプ1202、電磁弁1203、排気流路1205a及び1205b、廃液流路1204b、廃液流路1204bの先端部を形成する廃液ノズル1204a、廃液ノズル用の上下方向駆動機構(不図示)を備える。真空ポンプ1202は、廃液トラップ1201に対して下流側に位置し、開状態の電磁弁1203を通じて廃液ノズル1204aから吸い込んだ廃液を廃液トラップ1201に導入する。廃液トラップ1201に一時的に溜めた廃液は、図示しない廃液移送機構によって、廃液溜め1059へ移送する。
図3及び図4は、希釈槽1010又は1010b付近の縦断面図である。希釈槽1010の内壁面のうち溶液と接触する領域(以下「接液面」という。)1011は、鉛直線に対して概回転対称形状を形成する。その縦断面は、図3及び図4に示すように概ね滑らかな曲線状であり、好ましくは半楕円状(図3)又は放物線状(図4)である。接液面1011の断面形状を概ね規定する上記の曲線等を、以下、接液面1011の「断面近似関数」と呼ぶ。
断面近似関数は、鉛直方向上向きを正とし、鉛直線(回転軸)と希釈槽1010の内壁面との交点位置に対応する鉛直方向の座標を原点とする。すなわち、この交点位置が希釈槽1010の内壁面の鉛直方向座標の最小値となる。この交点位置を、以下、希釈槽1010(又は1010b)の最深部1012という。本実施例の断面近似関数は、最深部1012を除いて水平面に対して傾いている。従って、希釈槽1010(又は1010b)の底は点状であり、平らな面ではない。換言すると、希釈槽1010(又は1010b)を形成する内壁面(特に接液面1011)は、点状の最深部1012に向かって常に(単調に)傾斜する。
この「単調」という用語の意味は、数学的な定義、すなわち関数の狭義の単調増加あるいは狭義の単調減少、の意味である。また「最深部に向かって単調に傾斜する」ことの意味を数学的に表現すると、鉛直方向高さをy、水平面方向の原点(最深部)からの距離をxとして内壁面の断面近似関数をy=f(x)と表した場合、接液面の区間において、xが正のとき狭義の単調増加、すなわちx1<x2ならばf(x1)<f(x2)を満たし、xが負のとき狭義の単調減少、すなわちx1<x2ならばf(x1)>f(x2)を満たすことを意味する。換言するとこの区間には、xが正のときx1<x2かつf(x1)≧f(x2)となる点は存在せず、xが負のときx1<x2かつf(x1)≦f(x2)となる点も存在しない。好ましい希釈槽1010の底部は、水平面と平行な平坦部を持たず、仮に当該部分を持ったとしてもその面積は、最深部1012の近傍のごく限られた領域に限定される。勿論、望ましくは、前述した半楕円状(図3)又は放物線状(図4)である。
測定溶液吸引ノズル1052の先端部分は、専用の上下方向駆動機構により、希釈槽1010の最深部1012の近傍に配置することが可能である。同様に、廃液ノズル1204aの先端部分も、専用の上下方向駆動機構により、希釈槽1010の最深部1012の近傍に配置することが可能である。図2は、測定溶液吸引ノズル1052の先端部分のみが、希釈槽1010の最深部1012の近傍に配置された状態を模式的に示している。図3は、測定溶液吸引ノズル1052の先端部分と廃液ノズル1204aの先端部分の両方が、希釈槽1010の最深部1012の近傍に配置された状態を模式的に示している。図4は、廃液ノズル1204aの先端部分のみが、希釈槽1010の最深部1012の近傍に配置された状態を示している。
本実施例の場合、測定溶液吸引ノズル1052と廃液ノズル1204aは、希釈槽1010の回転軸である鉛直線を挟んで対向する位置(180°離れた位置)に配置されている。本実施例における測定溶液吸引ノズル1052と廃液ノズル1204aは、それぞれの専用の上下方向駆動機構により鉛直線に対して平行に上下される。もっとも、移動軌跡が概V字となるように、測定溶液吸引ノズル1052と廃液ノズル1204aを配置しても良い。
(1−2)計測動作
図5に、電解質自動分析装置1000において実行される動作の概要を示す。当該動作は、計測制御装置1100が備えるプログラムにより自動的かつ連続的に実行される。本実施例の場合、装置の起動後、初期化工程11000、校正工程12000の後、検体の数だけ測定工程13000を繰り返し、全ての検体を測定し終えたかどうかを判定する工程14000の後、立下げ工程15000が実行される。
(1−2−1)初期化工程11000
初期化工程11000は、電解質自動分析装置1000を構成する各要素機構の立上げや洗浄などの準備を含む。初期化の一環として、計測制御装置1100は、参照電極1090を介して参照電極液1061をフローセル型の液絡1080まで送液する。また、計測制御装置1100は、希釈槽1010に内部標準液1041を分注し、それをCl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073を介してフローセル型の液絡1080まで送液する。この送液により、各ISEのコンディショニングを行う。初期化工程11000は、希釈槽1010に内部標準液1041を残したまま終了する。
(1−2−2)校正工程12000
図6に、校正工程12000の概要を示す。校正工程12000は、低濃度標準液測定工程12100、高濃度標準液測定工程12200、校正液測定工程12300、検量線作成工程12400などからなる。低濃度の標準液、高濃度の標準液、校正液の測定手順は、後述する測定工程13000に準じる。具体的には、各濃度の標準液や校正液を検体と同様に測定し、各ISEの起電力を記録する。
検量線作成工程12400において、計測制御装置1100は、高低2種の濃度の標準液の起電力測定結果からスロープ感度を求める。計測制御装置1100は、スロープ感度と内部標準液の起電力に基づいて、内部標準液の濃度を求める。また、計測制御装置1100は、校正液の起電力測定結果とスロープ感度に基づいて、校正液の計算上の濃度を求める。さらに、計測制御装置1100は、校正液の真の濃度(表示値)と校正液の計算上の濃度との差に基づいて、オフセット補正値を求める。以下、スロープ感度とオフセット補正値を「検量線」という。
(1−2−3)測定工程13000
図7に、測定工程13000の概要を示す。測定工程13000は、検体測定工程13100、内部標準液測定工程13200、検体濃度算出工程13300などからなる。図8に、検体測定工程13100の概要を示す。検体測定工程13100は、希釈槽廃液工程13110、検体分注工程13120、希釈液分注工程13130、測定溶液導入工程13140、希釈槽洗浄工程13150、電位計測工程13160などからなる。以下では、検体測定工程13100の各工程の詳細を説明する。
希釈槽廃液工程13110において、計測制御装置1100は、希釈槽用廃液機構1200を動作させ、希釈槽1010の内部の液(内部標準液、希釈試料、システム水など)を排出する。なお、この工程が開始されるまで、電磁弁1203は閉じられている。電磁弁1203は、希釈槽廃液以外の工程において基本的に閉じられている。電磁弁1203が開かれるまで、真空ポンプ1202の作用により、排気流路1205、廃液トラップ1201、廃液流路1204bの内部は排気され、減圧されている。
一方、電磁弁1203が閉じられているため、廃液ノズル1204a内の圧力は大気圧に維持されている。工程開始後、計測制御装置1100は、不図示の上下方向駆動機構を駆動させ、廃液ノズル1204aの先端部分を希釈槽1010に浸す(図4参照)。より具体的には、廃液ノズル1204aの先端部分を、希釈槽1010の最深部1012から半径方向(水平方向)に約1.1mm、希釈槽1010の表面から鉛直方向上方に約0.5mmの位置に配置する。
計測制御装置1100は、この状態で電磁弁1203を開き、廃液ノズル1204aを通して、希釈槽1010に減圧環境を提供する。希釈槽1010の内部の液は、廃液ノズル1204a、電磁弁1203、廃液流路1204bを通して廃液トラップ1201に排出される。約1秒間の排出の後、計測制御装置1100は電磁弁1203を閉じ、減圧を遮断する。すると、廃液ノズル1204a内の圧力は大気圧に戻る。最後に、計測制御装置1100は、上下方向駆動機構を駆動させ、廃液ノズル1204aの先端部分を希釈槽1010の鉛直上方に配置する(図2参照)。すなわち、廃液ノズル1204aの先端部分は、希釈槽1010の外に移動される。
検体分注工程13120において、計測制御装置1100は、検体分注機構1020を用いて、検体1021を5μL、検体分注ノズル1022内に吸い込む。その後、計測制御装置1100は、検体分注ノズル1022の先端部分を希釈槽1010の内壁面に接触させ、吸い込んだ検体1021の全てを吐出させる。希釈液分注工程13130において、計測制御装置1100は、希釈液分注機構1030を使用し、150μLの希釈液1031を、希釈液分注ノズル1032を通して、検体1021の斜め上方位置から検体1021に向けて吐出する。希釈液1031は、希釈槽1010の内表面に沿って螺旋状に旋回しつつ検体1021を巻き込み、希釈槽1010の内底部に流入して渦流れを形成する。結果、検体1021は、希釈液1031により希釈され、両者は均一に混合する。
換言すると、本発明は吐出攪拌方式を採用し、従来例の攪拌機構(攪拌器や攪拌子など)は採用しない。従って、本発明は攪拌機構の表面における試料溶液の取り残しや液残りが無いため、試料溶液の利用効率が高く、測定精度も高い。この工程により、希釈液1031により検体1021を所定の割合(以下、「希釈倍率」という。)で希釈した希釈試料155μLを、希釈槽1010の中に得る。本実施例の場合、希釈倍率は31倍とする。希釈試料は試料溶液の一種であり、以下、「試料溶液」という。
測定溶液導入工程13140において、計測制御装置1100は、専用の上下方向駆動機構を用いて、測定溶液吸引ノズル1052を希釈槽1010の中の試料溶液の中に浸す(図2参照)。測定溶液導入以外の工程においては、この上下方向駆動機構は基本的に測定溶液吸引ノズル1052を希釈槽1010の鉛直上方に配置し、ノズル先端を希釈槽1010の外に出している。次に、計測制御装置1100は、送液機構1050と参照電極液送液機構1060とを連動させ、26μLの参照電極液1061を、参照電極1090を経てフローセル型の液絡1080まで送液する。
続いて、計測制御装置1100は、希釈槽1010中の試料溶液のうち145μLを測定溶液として、Cl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073を順番に経てフローセル型の液絡1080まで送液する。フローセル型の液絡1080の内部の流路の合流点において、測定溶液と参照電極液1061とが接触し、フリーフロー型の液絡が形成され、電池が完成する。この後、計測制御装置1100は、フローセル型の液絡1080と送液機構1050の間の液を、廃液溜め1059へ排出する。送液終了後、計測制御装置1100は、測定溶液吸引ノズル用の上下方向駆動機構を用い、測定溶液吸引ノズル1052を希釈槽1010から引き上げる。
希釈槽洗浄工程13150において、計測制御装置1100は、まず、前述の希釈槽廃液工程13110と同様の操作を行い、希釈槽1010に残った試料溶液を廃液する。次に、計測制御装置1100は、希釈液分注機構1030や内部標準液分注機構1040を制御し、検体分注ノズル1022に接続されたシリンジポンプ(不図示)を用いて、不図示のシステム水(純水)200μLを、検体分注ノズル1022を通して希釈槽1010へ分注し、希釈槽1010を洗浄する。システム水の代わりに、希釈液1031や内部標準液1041を分注することもできる。また、希釈液1031、内部標準液1041、システム水を分注し、それらを混合して希釈槽1010を洗浄することもできる。
電位計測工程13160において、計測制御装置1100は、参照電極1090を基準とする、フローセル型のCl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073の各起電力を、内蔵する電圧アンプ、ADコンバータ、マイクロコンピュータなどを用いて計測し、記録する。
図9に、内部標準液測定工程13200の概要を示す。内部標準液測定工程13200は、希釈槽廃液工程13210、内部標準液分注工程13220、測定溶液導入工程13240、希釈槽洗浄工程13250、電位計測工程13260などからなる。内部標準液測定工程13200の各工程は、基本的に検体測定工程13100と同様であり、検体と希釈液の混合溶液の代わりに、155μLの内部標準液1041を希釈槽1010に分注して試料溶液とし、そのうち145μLを測定溶液として各ISEへ導入して測定する点と、参照電極液1061の送液量が26μLでなく4μLである点だけが異なる。従って詳細な説明は省略する。
この後、検体濃度算出工程13300(図7)が実行される。検体濃度算出工程13300において、計測制御装置1100は、検体測定工程13100の電位計測工程13160と内部標準液測定工程13200の電位計測工程13260において求めた、各ISE内の希釈検体と内部標準液に対する起電力の差と、検量線作成工程12400(図6)で求めたスロープ感度及び希釈倍率(本実施例では31倍)とに基づいて、検体と内部標準液の濃度比を求める。計測制御装置1100は、この濃度比を検量線作成工程12400(図6)で求めた内部標準液の濃度に乗じ、検体の濃度(オフセット補正前)を求める。検体の濃度にオフセット補正値を加えることにより、計測制御装置1100は、検体の濃度(オフセット補正後)を求める。以上の手順により、計測制御装置1100は、検体中のCl、K、Naの濃度をそれぞれ求め、その結果をユーザに報告する。
(1−2−4)工程14000及び15000
図5の説明に戻る。測定工程13000の後、計測制御装置1100は、全ての検体を測定し終えたかどうか判断する工程14000を実行し、全ての検体を測定し終えた場合、立下げ工程15000を実行する。立下げ工程15000において、計測制御装置1100は、各種部品の洗浄などを行い、電源遮断に備える。
(1−3)希釈槽の断面形状
希釈槽1010の内壁形状は、前述の通り、少なくとも接液面1011が鉛直線を回転軸とする概回転対称形状であり、その縦断面は概ね滑らかな曲線状であり、好ましくは半楕円状又は放物線状である。つまり、希釈槽1010の接液面1011は滑らかであり、水平面に平行な底面や屈曲部を持たない、曲面形状であることが好ましい。この曲面形状の接液面1011をもつ希釈槽1010を採用した理由を以下に説明する。
発明者らは、希釈槽1010の内面形状の影響を評価するため、各種の内面形状を有する希釈槽1010を試作した。図10A〜図10Gに、試作した希釈槽1010の縦断面構造を示す。各希釈槽の試作には、3Dシステムズ社製の3DプリンタProjet(TM) HD3500 を利用した。また、材料には、同社Ex200(ポリウレタンアクリレート、以下「UA」という。)を用いた。
比較例として図10A、図10B及び図10Cに示す3種の希釈槽の内部形状は、基本的に、上部と下部に分かれている。上部は、円筒状、すなわち内側面が鉛直な形状である。この上部空間の内径は約16mm、高さは約14mmである。下部は、概ね円錐台形、すなわち平面状の底面をもつ。特に、図10Aに示す円錐台形の下部は、その上端において上部空間と連続的につながっている。すなわち、上底の長さは約16mmである。台形の高さ(下部空間の高さ)は、約10mmである。
図10A及び図10Bの下部側面は底面に対して約65°、図10Cの下部側面は底面に対して約75°の角度をなす。なお、下部側面と底面の境界部は滑らかな曲面形状である。図10Aに示す底面部の直径(台形の下底の長さ)は約8mm、図10B及び図10Cの底面部の直径は約4mmである。これらの希釈槽、特に図10Aに示す希釈槽は、上述の通り、広い平底形の底面を持つ点で特許文献1に記載の希釈槽と類似する。このため、図10Aに示す希釈槽は、従来例を代表する形状とみなすことができる。下部の側面と上部の側面との境界線までの容積は約1200μLである。なお、図10Bと図10Cに示す希釈槽の上部の容積は図10Aの容積と同様であるが、下部の容積はそれぞれ約530μL、290μLである。
図10D及び図10Eに示す2種の希釈槽1010は、放物線状の縦断面をもつ。図10Dに示す希釈槽は内径約16mm、高さ約14mmの円筒状の上部構造をもち、この円筒部分の下端は、上部と下部の境界において、下部の放物線と連続的に接続する。換言すると、図10Dに示す希釈槽1010は、その下部のみが放物線状の縦断面をもつ。図10Dにおける放物線の部分の高さ(下部の鉛直方向の長さ)は約10mmであり、頂点(=最深部1012)から約1.47mm鉛直上方に焦点をもつ。一方、図10Eに示す希釈槽1010は、内部構造の上端まで放物線状の縦断面形状をなす。ここで、図10Eに示す希釈槽1010の内部構造を規定する放物線の高さは約25mmであり、最深部1012から約0.62mmの位置に焦点をもつ。図10Dの下部の容積は約980μLであり、図10Eの下部における同じ高さまでの容積は約410μLである。
図10F及び図10Gに示す2種の希釈槽1010は、楕円状の縦断面をもつ。図10Fに示す希釈槽1は、内径約16mm、高さ約14mmの円筒状の上部構造をもち、この円筒部分の下端は、上部と下部の境界において、下部の半楕円と連続的かつ滑らかに接続する。換言すると図10Fは、下部のみが半楕円状の断面をもつ。図10Fにおける半楕円の高さは約10mmであり、上部と下部の境界面と回転軸とが交わる位置に楕円の中心をもつ。すなわち、この楕円の長軸と短軸はそれぞれ鉛直方向、水平方向を向き、長軸、短軸の長さはそれぞれ約20mm、約16mmである。一方、図10Gに示す希釈槽は、内部構造の上端まで高さ約25mmの半楕円状の断面形状をなし、上端面と回転軸とが交わる位置に楕円の中心をもつ。この楕円の長軸と短軸はそれぞれ鉛直方向、水平方向を向き、長軸、短軸の長さはそれぞれ約50mm、約16mmである。図10Fの下部の容積は約1300μL、図10Gの下部の容積は約707μLである。
(1−4)ノズルの配置関係
続いて、廃液ノズル1204aと測定溶液吸引ノズル1052の配置関係について説明する。本実施例の場合、廃液ノズル1204aとして、先端部の外径約1.7mm、内径約1.4mmのステンレス製パイプを用いた。廃液ノズル1204aは、図3に示すとおり、概ね鉛直方向に直線的な形状を有するが、詳細には先端から約10mmの区間のみ、約20°の角度で屈曲させた。屈曲の方向は、希釈槽1010の最下部1012と回転軸との交点である。また、廃液ノズル1204aの先端の離心距離ΔR(希釈槽1010の回転軸から水平方向への距離)を約1.1mmとし、後述する鉛直方向位置ΔZを-0.5mmとする。言うまでもなく、特記する場合には、これら以外の数値を採る。真空ポンプ1202には、Ulvac社DAP-6D型(最大到達真空度6.65kPa、排気流量6L/分)を用いた。廃液トラップ1201としては容量2Lの耐圧瓶を用いた。
測定溶液吸引ノズル1052には、先端部の外径が約1.1mm、内径が約0.8mmのステンレス製パイプを用いた。測定溶液吸引ノズル1052は、図3に示すとおり、概ね鉛直方向に直線的な形状である。測定溶液吸引ノズル1052の離心距離ΔRを約1.6mm、鉛直方向位置ΔZを-0.5mmとした。
前述の通り、本実施例では、廃液ノズル1204aと測定溶液吸引ノズル1052を、希釈槽1010の最深部1012(回転軸)を挟んで180°対向する位置に配置した。すなわち、両ノズルの中心間の距離の水平方向成分は約2.7mmであり、両ノズル間の間隙の水平方向成分は約1.3mmである。
本実施例では、希釈槽廃液工程における廃液効率の指標として残液量を採用した。残液量の評価方法の概要を以下に記す。濃度Ci(mM)のマーカー(典型的にはCi=1,000mMのKCl水溶液)を一定量希釈槽1010に注入し、希釈槽廃液工程に相当する廃液操作を行った。ここで、希釈槽1010に残ったマーカーの残液量をV(μL)とする。希釈槽1010にVr(μL)の純水を注入して攪拌し、別容器に回収する操作を繰り返した。典型的には、1回あたり250μLを注入し、それらを回収する操作を4回繰り返した。よって、Vr=1,000μL(=250x4)である。この回収液中のマーカーの濃度Cr(mM)を、典型的には、別の自動分析装置に搭載したK-ISE 1072を用いて定量し、次式から残液量V(μL)を求めた。
V = Cr × Vr ÷ (Ci−Cr) …(式1)
各条件について実験を3回繰り返し、平均値と標準偏差(S.D.)を求めた。
予備的な検討として、マーカーの粘性の影響を調査した。マーカーとしては、前述の通り、濃度1,000mMのKCl水溶液を基本としたが、それに16%、30%のグリセリンを共存させ、血清に模した粘性を有するものを調製した。これらを希釈液により1/31に希釈した試料について残液量を比較した。結果、グリセリンが16%の場合と30%の場合、それぞれ0%の場合と比較して残液量は約94%と約106%となり、粘性の影響は軽微であることが判明した。従って、グリセリン0%の基本組成のマーカーは、試料としての血清を1/31に希釈する場合の残液量を概ね正確に評価できると考えられたため、以下これを用いた。
前記の希釈槽1010について廃液効率を評価した結果を図11に示す。図11〜図14の実験は、廃液ノズル1204aの離心距離ΔR=2.1mm、鉛直方向位置ΔZ=+1mmの条件下で行った。図11に示した通り、従来例に最も類似した平底型の希釈槽(図10A)の残液量は約8〜10μLであるのに対し、図10B及び図10Cに示す希釈槽の残液量は約2.3〜3.4μLと、半分ないし1/4程度であった。従って、希釈槽の底面積を小さく、また側壁の傾きを急峻にすることにより、残液量を抑制でき、廃液効率が高まることが判明した。一方、放物線型(図10D、図10E)や楕円型(図10F、図10G)などの曲面のみからなる接液面1011をもつ(すなわち平底状の構造を持たない)希釈槽の残液量は約0.2〜3.8μLであり、同程度の内容積をもつ図10Aに示す希釈槽と比較して約半分以下であった。特に、楕円型の図10Fに示す希釈槽の残液量は約0.2μLと極めて少なかった。図10Fに示す希釈槽については実施例2で詳述する。
平底型の希釈槽(図10A)の残液量が多い原因を究明するため、残液の場所の可視化を試みた結果を図12に示す。図12は、蛍光マーカーを平底型の希釈槽(図10A)に注入し、廃液操作を行った後で、希釈槽の内底面に焦点を合わせて蛍光顕微鏡により観察した結果である。蛍光マーカーとしてはベックマンコールター社製の標準蛍光粒子FlowCheck(TM)を用いた。図12から明らかな通り、蛍光強度は直径約8mmの円周上、すなわち希釈槽の底部周辺の平坦な底面から側面へ立ち上がる部分(以下「辺縁部」という。)において最も顕著であった。
蛍光強度は、蛍光粒子の数に比例し、蛍光粒子の数は残液量の指標と考えられる。このため、残液が最も顕著なのは辺縁部においてであることが判明した。辺縁部において残液量が多いのは、希釈槽1010の概ね中央付近に廃液ノズル1204aを配置して液を吸引するため、廃液ノズル1204aの先端近傍の液、すなわち希釈槽1010の中央付近の液、は排出できるものの、辺縁部の液は底面が平坦なことも手伝って廃液ノズル1204aの近傍に迅速に移動することができず、残ってしまうためと考えられる。換言すると、図10Aに示す希釈槽は、底面全体が概ね平坦であり、液が滞留する面積が広いためと考えられる。また、辺縁部において壁面の曲率がやや大きく、やや屈曲しているため、表面張力が高いことが影響する可能性も考えられる。この状況は廃液ノズル1204aを希釈槽1010の辺縁部に配置しても改善しないことが図示しない実験結果から確認されている。これは廃液ノズル1204aを辺縁部に配置すると、ノズル近傍の液は排出できるものの、回転軸を挟んで反対側の位置との距離が長くなるため、当該位置の残液が顕著となるためと考えられる。
一方、実施例で使用する曲面型の希釈槽1010は、残液の原因となる平底構造を廃し、滑らかな曲面が連続的に最深部1012まで至り、最深部1012に向かって常に傾斜する内面構造をもつ。従って、廃液動作において、廃液ノズル1204aを最深部1012の近傍に配置すると、液が最深部1012に向かって淀みなく流れ込み、効率よく液を排出でき、残液量が低減したと考えられる。以上により、平底構造を廃し、換言すると、概ね曲面形状のみからなり、最深部1012を一点のみ有する本願の希釈槽1010は、廃液効率が高いことが判明した。本実施例では、この形状を「曲面形状」と称し、曲面形状の接液面1011をもつ希釈槽1010を採用した。
希釈槽1010の材質について検討した結果を図13及び図14に示す。図13は、希釈槽1010の内面形状を平底型(図10A)に固定し、材質がガラスとUAの場合について比較した結果である。残液量の平均は、ガラス製の希釈槽1010が6.6μL、UA製が8.9μLであり、UAはガラスと同等であるかやや残液量が多かった。図14は、実施例に係る希釈槽1010の内面形状を曲面型、具体的には楕円型(図10G)か放物線型(図10E)に固定し、材質についてUA、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を比較した結果である。PCTFE製の希釈槽1010の残液量は約0.1〜0.2μLと、UAより1桁以上少なかった。また図示しない結果によると、PTFE製やPFA製の図10G型の希釈槽の残液量も、PCTFE製のそれと同等であった。PEEKはばらつきがやや大きかったが、最大でも0.9μLであり、UAと比較して格段に少なかった。PCTFE、PTFE、PFAやPEEKは撥水性の高い材料として知られており、これら材料を表面にもつ希釈槽は、水を弾いて表面に保持され難いため、効率よく排液され、廃液効率が極めて高い結果となったと考えられる。
廃液ノズル1204aの位置の影響について検討した結果を図15及び図16に示す。図15は、PCTFE製で楕円型(図10G)の希釈槽1010を用い、希釈槽廃液工程13110における廃液ノズル1204a先端の水平方向の位置(離心距離ΔR)が、残液量に及ぼす影響を評価した結果の一例である。図15の評価において、後述する鉛直方向位置ΔZとして+1mmを採用した。図15に示すとおり、ΔRが0〜1.6mmまでは残液量は約0.2μLと極めて少ないが、2.1mmでは0.8μLとやや上昇し、3.2mmでは約40μLと極めて多くなった。従って、残液量抑制の観点から、この希釈槽1010に対する廃液ノズル1204aの水平方向位置の好ましい範囲は、ΔRとして0〜約2.1mmまでであることが判明した。また、ΔRが2.1mm〜3.2mmまでの間に、残液量が許容範囲を逸脱する上限値が存在することが判明した。
図16は、図15の場合と同じく、PCTFE製で楕円型(図10G)の希釈槽1010を用い、希釈槽廃液工程13110における廃液ノズル1204aの鉛直方向の位置が、残液量に及ぼす影響を評価した結果の一例である。特定の離心距離ΔRにおいて、廃液ノズル1204aが希釈槽1010の内側表面に接する位置を鉛直方向の起点(原点)とし、そこから廃棄ノズル1204aを押し付ける距離を、鉛直方向位置ΔZ(単位mm)と定義した。ΔZが0(ゼロ)の場合は、ノズル先端を希釈槽表面に接する高さに配置し、ΔZが負の場合は、ノズル先端を希釈槽表面からΔZの絶対値の距離だけ浮かせて配置することを意味する。ΔZが正の場合は、ノズル駆動機構を、ノズル先端を希釈槽表面より鉛直下方の高さに配置する様に駆動するが、廃液ノズル1204aはノズル駆動機構の上に乗ってばねで下方に押しつけられているだけであるため、実際にはノズル先端は希釈槽表面に接した位置で停止し、ΔZに対応するばねの弾力で希釈槽の表面に押し付けられる。図16に示すとおり、ΔRが約2.1mmにおいては、ΔZ=+1mmにおける残液量は前述の通り約0.8μLと少ないが、ΔZを0又は負にすると、残液量が次第に多くなった。ΔRが約1.6mmにおいては、ΔZ=+1mmだけでなく0mmでも残液量は1μL以下と少ないが、ΔZ ≦-0.5mm、すなわちノズルを希釈槽表面からやや浮かせると残液量が1μLを超え、多くなった。ΔRが約1.1mmないし0mmにおいては、ΔZが+1mmから-0.5mmの範囲で残液量は1μL以下と少なく、ΔZが-0.5mm〜-1.5mmの範囲でも残液量は約1.2μLと、1μLを大きく超えなかった。従って、残液量抑制の観点から、この希釈槽1010に対する廃液ノズル1204aの鉛直方向位置ΔZの最適な範囲は、ΔRに大きく依存することが判明した。
なお、希釈槽をPCTFEなどの樹脂製とし、廃液ノズル1204aをステンレスなどの固い材料とする場合、希釈槽表面の摩耗や変形、破壊を防ぐ観点から、ΔZ≦0mm又はより好ましくはΔZ<0mm、すなわち廃液ノズル1204aを希釈表面に接するか接しない位置、より好ましくは表面からやや浮かせた位置に配置することが好ましい、という境界条件を考慮する必要がある。この条件と、好ましい残液量としてたとえば1.2μL以下の条件を加味すると、図16から、ΔRの好ましい条件が0〜約1.6mmであること(ただし、ΔRが約1.6mmの場合、ΔZは0mmとする必要があること)が判明する。また、ΔZに尤度があるという観点からのΔRのより好ましい条件は、0〜約1.1mmであること(この場合、ΔZは-1.5〜0mmの範囲であればよいこと)が導かれる。
本実施例では、希釈槽1010に配置すべきノズルは、廃液ノズル1204a、測定溶液吸引ノズル1052、検体分注ノズル1022、希釈液分注ノズル1032、内部標準液分注ノズル1042の合計5本存在する。このうち、廃液ノズル1204a以外にも配置位置に細心の注意を要するノズルとして、測定溶液吸引ノズル1052が挙げられる。なぜなら、本実施例は、試料量、試薬量の微量化を目的としており、そのためには希釈槽1010の中の試料溶液を極力余さずCl-ISE 1071などのセンサへ送り届け、測定に供する必要があるためである。つまり、廃液工程における液残りばかりでなく、測定溶液導入工程13140及び13240における残液量も極力低減する必要がある。
そのためには、測定溶液吸引ノズル1052も、希釈槽1010の最深部1012のなるべく近傍に配置した方が好ましいことは、廃液ノズル1204aで検討した結果から明らかである。逆に言うと、廃液ノズル1204aと測定溶液吸引ノズル1052は、残液量が著しく増大しない範囲で、互いになるべく離して配置できた方が、設計自由度が高まる効果がある。極端な例を挙げると、廃液ノズル1204aのΔRを0mmとすると、測定溶液吸引ノズル1052との干渉が問題となる。そこで、廃液ノズル1204aのΔRを0mmではなく、なるべく大きな値にできれば、測定溶液吸引ノズル1052の配置の自由度が高まり、好ましい。
この境界条件を加味すると、ΔRの更に好ましい条件は、約1.1mmであること、この場合、ΔZは-1.5〜0mmの範囲であればよいこと、さらに希釈槽1010とノズルの接触を防止しつつ、極めて少ない残液量を実現するためには、ΔZを約-0.5mmとすればよいことが図16より導かれる。上記検討に基づき、本実施例では、廃液ノズル1204aの標準的な配置条件としてΔR=1.1mm、ΔZ=-0.5mmを採用した。また、同様の理由により、測定溶液吸引ノズル1052の配置の標準的な条件としてΔR=1.6mm(ただし、角度は回転軸をはさんで廃液ノズル1204aの180°反対側)、ΔZ=-0.5mmを採用した。この様にして求めたΔRは液体の毛管長、又は、遮蔽長のオーダー(約2mm)と概ね一致することから、離心距離ΔRは毛管長、又は、遮蔽長と同等以下に設定すればよい、と表現することもできる。
上記の検討は、廃液ノズル1204aの先端位置について、離心距離ΔRを指標として影響を評価したが、同じ結果を別の観点から解析することも可能である。廃液ノズル1204aの先端の離心距離ΔRの代わりに、第1の代案として、ノズル先端の鉛直方向の座標が最深部1012からどの位の高さに位置するのかについて注目する。換言すると、希釈槽1010の縦断面形状を規定する断面近似関数について、最深部1012を原点とし、水平方向の座標(すなわち、離心距離ΔR)に対応する鉛直方向の座標をΔYと定義して検討する。本実施例の希釈槽1010は、楕円型(図10G)であり、ΔR=0、1.1、1.6、2.1、3.2mmに対応するΔYはそれぞれ0、0.23、0.52、0.93、2.15mmである。すると、前述の議論におけるΔRを、全てΔYに置き換えて表現することができる。
例えば図15の結果については、ΔYが0〜0.52mmまでは残液量は約0.2μLと極めて少ないが、0.93mmにおいて0.8μLとやや上昇し、2.15mmにおいては約40μLと極めて多くなった。従って、残液量抑制の観点から、この希釈槽1010に対するノズルの最下点を原点とする鉛直方向座標の好ましい範囲は、ΔYとして0〜約0.9mmまでであることが判明した。また、ΔYが0.9mm〜2.15mmまでの間に、残液量が許容範囲を逸脱する上限値が存在することが判明した。同様に、図16の結果については、ΔYが約0.93mmにおいては、ΔZ=+1mmにおける残液量は約0.8μLと少ないが、ΔZ を0又は負にすると、残液量が次第に多くなった。ΔY が約0.52mmにおいては、ΔZ=+1mmだけでなく0mmでも残液量は1μL以下と少ないが、ΔZ≦-0.5mm、すなわち廃液ノズル1204aを希釈槽1010の内表面(最深部1012)からやや浮かせると残液量が1μLを超え、多くなった。ΔYが約0.23mm〜0mmにおいては、ΔZが+1mmから-0.5mmの範囲で残液量は1μL以下と少なく、ΔZが-0.5mm〜-1.5mmの範囲でも残液量は約1.2μLと、1μLを大きく超えなかった。
また、境界条件としてΔZ<0mm、残液量1.2μL以下の条件を加味すると、ΔYの好ましい条件が0〜約0.52mmであること(ただし、ΔYが約0.52mmの場合、ΔZは0mmとする必要があること)が判明する。また、ΔZに尤度をもたせるという観点からのΔYのより好ましい条件は、0〜約0.23mmであること(この場合、ΔZは-1.5ないし0mmの範囲であればよいこと)が導かれる。さらに、ΔRがなるべく大きいという境界条件を加味すると、ΔYのさらに好ましい条件は、約0.23mmであること、この場合、ΔZは-1.5ないし0mmの範囲であればよいこと、さらに、希釈槽とノズルの接触を防止しつつ、極めて少ない残液量を実現するためには、ΔZを約-0.5mmとすればよいことが図16より導かれる。上記検討に基づき、本実施例では廃液ノズル1204aの標準的な配置条件としてΔY=0.23mm、ΔZ=-0.5mmを採用した。また、同様の理由により、測定溶液吸引ノズル1052の配置の標準的な条件としてΔY=0.52mm(ただし、角度は回転軸を挟んで廃液ノズル1204aの180°反対側)、ΔZ=-0.5mmを採用した。
第2の代案として、廃液ノズル1204aの先端の離心距離ΔRの代わりに、離心距離ΔRの廃液ノズルの内径との比について注目する。換言すると、離心距離ΔRを廃液ノズル1204aの内径で除した値を、離心距離内径比ΔFと定義して検討する。本実施例の廃液ノズル1204aの内径は約1.4mmであるから、ΔR=0、1.1、1.6、2.1、3.2mmに対応するΔFは、それぞれ0、0.76、1.1、1.5、2.3である。すると、前述の議論におけるΔRを、全てΔFに置き換えて表現することができる。例えば図15の結果については、ΔFが0〜1.1までは残液量は約0.2μLと極めて少ないが、ΔFが1.5においては0.8μLとやや上昇し、ΔFが2.3においては約40μLと極めて多くなった。
従って、残液量抑制の観点から、この希釈槽1010に対する廃液ノズル1204aの最下点を原点とする鉛直方向座標の好ましい範囲は、ΔFとして0〜約1.5までであることが判明した。また、ΔYが1.5〜2.3までの間に、残液量が許容範囲を逸脱する上限値が存在することが判明した。同様に、図16の結果については、ΔFが1.5においては、ΔZ=+1mmにおける残液量は約0.8μLと少ないが、ΔZを0又は負にすると、残液量が次第に多くなった。ΔFが1.1においては、ΔZ=+1mmだけでなく0mmでも残液量は1μL以下と少ないが、ΔZ≦-0.5mm、すなわち廃液ノズル1204aを希釈槽表面からやや浮かせると残液量が1μLを超え、多くなった。ΔFが0.76〜0においては、ΔZが+1mmから-0.5mmの範囲で残液量は1μL以下と少なく、ΔZが-0.5mm〜-1.5mmの範囲でも残液量は約1.2μLと、1μLを大きく超えなかった。
また、境界条件としてΔZ<0mm、残液量1.2μL以下の条件を加味すると、ΔFの好ましい条件が0〜約1.1であること(ただし、ΔYが約0.52mmの場合、ΔZは0mmとする必要があること)が判明する。また、ΔZに尤度をもたせるという観点からのΔFのより好ましい条件は、0〜0.76であること(この場合、ΔZは-1.5〜0mmの範囲であればよいこと)が導かれる。さらに、ΔRがなるべく大きいという境界条件を加味すると、ΔFのさらに好ましい条件は、約0.76であること、この場合、ΔZは-1.5〜0mmの範囲であればよいこと、さらに、希釈槽1010とノズルの接触を防止しつつ、極めて少ない残液量を実現するためには、ΔZを約-0.5mmとすればよいことが図16より導かれる。上記検討に基づき、本実施例では、廃液ノズル1204aの標準的な配置条件としてΔF=0.76、ΔZ=-0.5mmを採用した。また、同様の理由により、測定溶液吸引ノズル1052の配置の標準的な条件としてΔF=1.5(ただし、角度は中心をはさんで廃液ノズル1204aの180°反対側)、ΔZ=-0.5mmを採用した。
次に、本実施例の効果を説明する。本実施例は、希釈槽1010に残留した溶液を廃液専用のノズルを経由して真空(減圧)吸引することにより、液の排出流量が高く、効率よく残液を排出できる。従って、廃液専用ノズルを用いない場合や真空吸引を行わない場合と比較して残液量を低減しやすい、という効果がある。また、残液の排出には廃液専用の流路を用い、ISEに至る測定溶液用の流路を用いないため、廃液中に含まれる試料成分や洗浄液成分などがISEの感応膜へ付着して応答性を劣化させるおそれがない。また、感応膜成分が廃液中へ溶出して感応膜性能が劣化するおそれもない。従って、ISEの安定性が高く寿命が長い効果がある。本実施例は、検体の希釈に希釈液の吐出攪拌を利用し、攪拌器や攪拌子などを希釈槽の内部に入れない。従って、攪拌子などの表面に試料溶液が付着して残留するおそれがなく、残液量が少ない効果がある。
本実施例による希釈槽1010の接液面の断面は楕円又は放物線などの滑らかな曲面状であり、平坦な底面を持たず、辺縁部も持たず、その最深部1012は概一点である。さらに、希釈槽の材料として撥水性の高いPCTFEなどの材料を用いた。この構成により、廃液工程において希釈槽内の液を、廃液ノズル1204aを介して廃液トラップへ真空廃液する際に、ほとんど全ての溶液が重力により希釈槽1010の内壁面を流下して最深部に集めることができ、接液面への付着や残留を極微量に抑制できる。本実施例では、廃液ノズル1204aは、希釈槽1010の最深部1012近傍に配置した。具体的には、最深部1012から半径方向に約1.1mm、希釈槽表面から鉛直上方約0.5mmの位置に配置した。従って、廃液ノズル1204aから真空吸引することにより、希釈槽1010の最深部1012近傍に配置した廃液ノズル1204aを通して、希釈槽内部の溶液のほとんど全てを効率よく廃液トラップへ排出できる。換言すると、廃液工程での希釈槽における液残りは1μL以下と極めて少ないという特有の効果がある。
また、本実施例による測定溶液吸引ノズル1052の先端を、希釈槽1010の最深部1012近傍に配置した。具体的には、最深部1012から半径方向に約1.6mm、かつ、回転軸をはさんで廃液ノズル1204aの180°反対側、また、希釈槽表面から鉛直上方約0.5mmの位置に配置した。この構成により、希釈槽内の溶液を、測定溶液吸引ノズル1052を介してISEへ送液する際に、実質的にほとんど全ての試料溶液が重力により希釈槽の内壁面を流下し、最深部1012に集まる。従って、最深部1012の近傍に配置した測定溶液吸引ノズル1052を通して、実質的にほとんど全ての溶液をISEへ送液することができ、希釈槽に残す試料溶液をわずか10μLと極微量に抑制しつつ、測定溶液吸引ノズル1052への気泡の混入による不具合などを防止できる。換言すると試料液の利用効率が高く、かつ測定精度が高いという特有の効果がある。
さらに、本実施例特有の効果として以下が挙げられる。廃液ノズル1204aは、希釈槽廃液工程以外は基本的に希釈槽の外部に出ているため、電磁弁1203に万一リークが生じた場合でも、希釈槽内の試料溶液を誤って排出するおそれが無い、という特有の効果がある。また、測定溶液導入工程13140の最後において、測定溶液吸引ノズル1052を希釈槽1010から引き上げる。つまり、電位計測工程13160において、測定溶液吸引ノズル1052は、希釈槽1010内の溶液に浸っておらず、希釈槽1010内の溶液と、測定溶液吸引ノズル1052とは電気的に絶縁される。従って、例え希釈槽1010内の溶液に電気的なノイズが混入したとしても、それが測定溶液吸引ノズル1052を経由して、Cl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073に伝導するおそれが無い。従って、本実施例はノイズの影響を受けにくく、高精度な電位計測が可能である、という特有の効果がある。
(2)実施例2
本実施例による電解質自動分析装置の構成は実施例1の構成と基本的に同じである。本実施例による希釈槽1010cも実施例1による希釈槽1010と基本的に同じであるが、下記の点が異なる。
実施例1では、希釈槽として楕円状(図3参照)や放物線状(図4参照)など様々な形状(具体的には図10参照)を採用し、更にUA、ガラス、PCTFEなど様々な材質との組み合わせを比較検討した。また、一部の実験では、UA製の楕円形状品(図10F型)についてもスクリーニング的な評価を行った(図11の4行目)。
なお、実施例1では、廃液ノズル1204aの位置の影響の観点については、PCTFE製の楕円形状(図10G型)についてのみ詳細に液残りを検討した(図15、図16)。一方、本実施例では、UA製の楕円形状(図10F型)の希釈槽を採用し、その残液特性について、廃液ノズル1204aの位置の影響も含めて詳細に検討した。
図11の説明においては、前述した通り、UAを材料として用いる希釈槽を比較すると、特に楕円状の図10F型希釈槽の残液量は約0.2μLであった。この残液量は、同じ材質(UA)を用いる従来の平底形状品(図10A)の約1/40〜1/49程度であり、つまり廃液効率が従来比で約1.6〜1.7桁高い、という驚くべき結果となった。図10Fの残液量は、同じ材質(UA)を用い、基本的に同じ楕円型に基づく内面形状をもつ図10Gと比較しても、約1/17〜1/19であり、換言すると廃液効率が従来比で一桁以上高い。これも驚くべき進歩を伴う結果と言える。
以下では、図10Fの残液量が格段に少ない理由について考察する。離心距離ΔR=2.1mmに対応する断面近似関数の最深部1012を原点とした鉛直方向の座標ΔYを、図10A、図10D、図10E、図10F、図10Gの形状を有する各希釈槽について比較すると、それぞれ0、1.72、4.09、0.89、2.15mmである。換言すると、図10Fに示す希釈槽1010は、最下点から横方向にΔR=2.1mm離れた廃液ノズル1204aの先端の鉛直方向の高さが、最下点から約0.9mmであるのに対し、図10Aに示す希釈槽は0mmであり、残りの3種はいずれも図10Fの約2倍かそれ以上高い。図10Aに示す希釈槽1010の残液量が極めて多い理由は、前述の通り、その平底型構造に起因する、換言するとΔY=0となる離心距離ΔRが底面全体に及ぶため、液が滞留する面積が広いためと考えられる。
一方、曲面状の内面形状をもつ図10D〜図10Gに示す希釈槽1010の残液量が総じて少ないのは、前述の通り、滑らかな曲面が連続的に最深部1012まで至り、最深部1012に向かって常に傾斜する内面構造をもつのに加え、最深部1012の近傍に廃液ノズル1204aの先端を配置するためと考えられる。また、実施例に係る希釈槽1010のうち図10Fに示す希釈槽の残液量が格段に少ないのは、図10Fに示す希釈槽1010は最下点と廃液ノズル1204aとの間の鉛直距離ΔYが約0.9mmと、他の3種よりも約半分と短く、希釈槽1010の最深部1012から液を最も効率よく吸い出せるためと考えられる。換言すると、ΔYの値は0mmでは平坦すぎて不良、また1.7mm以上でも最下点との鉛直距離が大きすぎて残液量がやや多いが、両者の中間にΔYの最適値があることを、図10Fに示す希釈槽1010の実験的検討により見いだしたことにより、極めて少ない残液量が実現した。
次に、廃液ノズル1204aの位置の影響について検討した。図17は、UA製で図10Fに示す希釈槽1010を用い、希釈槽廃液工程13110における廃液ノズル1204aの水平方向の位置(離心距離ΔR)が、残液量に及ぼす影響を評価した結果の一例である。鉛直方向位置ΔZは+1mmとした。図17に示すとおり、ΔRが0〜2.1mmまでは、残液量は約0.2μLと極めて少なく、3.2mmにおいても0.5μLと、ほとんど増大しなかった。従って、残液量抑制の観点から、この希釈槽1010に対する廃液ノズル1204aの水平方向位置ΔRとして0〜約3.2mmまでの範囲は好適な条件であることが判明した。
この結果を実施例1(図15)と比較すると、ΔRが小さい領域(1.6mm以下)においては、両者はいずれも約0.2μLと概ね同等の残液量を示したが、ΔRが大きい領域(2.1mm以上、特に3.2mm)において、本実施例の残液量の方が格段に少ない結果となった。
図18は、UA製で図10Fに示す希釈槽1010を用い、希釈槽廃液工程13110における廃液ノズル1204aの鉛直方向位置ΔZが、残液量に及ぼす影響を評価した結果の一例である。図18に示すとおり、ΔZ=+1mmにおける残液量は、前述の通り、約0.5μL以下と少ないが、ΔZを0又は負にすると、残液量が次第に増加する傾向がみられた。ΔR=1.6mmにおいては、残液量はΔZ=0mmにおいて約0.3μL、ΔZ=-0.5mmにおいても約0.8μLと、1μL未満の良好な値が維持された。従って、ΔR=1.6mmは、ΔZに尤度があって残液量も少なく、ΔRもなるべく大きいという境界条件を満たす、好適な値と考えられる。さらに、希釈槽とノズルの接触を防止しつつ、極めて少ない残液量を実現するためには、ΔZを約-0.5mmとすればよいことが図18より導かれる。
上記検討に基づき、本実施例では、廃液ノズル1204aの標準的な配置条件としてΔR=1.6mm、ΔZ=-0.5mmを採用した。本実施例2のΔR、ΔZの最適値は、実施例1のそれと同じである。従って、ΔR、ΔZを指標とする廃液ノズル1204aの最適配置条件は、希釈槽1010の形状や材質に大きく依存せず、多様な希釈槽に適用可能な汎用的な条件である可能性がある。一方、前述のΔYについては、本実施例2における残液量が少ないΔRの範囲(3.2mm以下)に対応するΔYの範囲は0.89mm以下、すなわち約0.9mmである。このΔYの範囲は、実施例1における残液量が少ない範囲(約0.9mm以下)とほぼ一致する。
一方、ΔZとの兼ね合いを考えると、廃液ノズル1204aのΔRの最適値は前述の通り、約1.6mmであり、これに対応する本実施例2のΔYの最適値は約0.22mmである。この値は、実施例1におけるΔYの最適値(約0.23mm)と概ね一致する。従って、ΔYを指標とする残液量が少ない範囲や最適値は、希釈槽の形状や材質に大きく依存せず、多様な希釈槽に適用可能な汎用的な条件である可能性がある。ΔRと廃液ノズル1204aの内径との比、すなわち離心距離内径比ΔFについても、本実施例2の最適値は、実施例1の最適値(約0.76)と同様である。
以上の通り、本実施例2によるUA製で図10F型の希釈槽により、残液量が極めて少ないという効果が得られた。この事実は、希釈槽1010の形状と材料が残液量に及ぼす影響に関して、示唆に富む、極めて興味深い結果である。つまり、本実施例の効果は、当業者が容易に想到しえない、発見的な実験事実によってもたらされた効果とも言える。その理由は以下の通りである。
図15に示す実施例1の希釈槽の液残りが少ないのは、曲面形状と、撥水性の高いPCTFE材料の組合せによって初めて達成された効果と考えられる。一方、図17に示す実施例2の希釈槽1010の液残りが少ない事実に対しては、材料の効果は含まれていないと考えられる。なぜなら、図13の結果および考察で示したとおり、実施例2で採用した材料であるUAは、材料の観点からはガラス同等の残液量が多い、不利な材料であるからである。この様な不利な材料を使っているにもかかわらず、実施例2の希釈槽1010は、実施例1の希釈槽と同等水準の極めて少ない残液量を示した。従って、この効果は、ひとえに希釈槽2の構造の優位性が極めて高い事実に起因すると考えられるものの、その事実は当業者が容易に予見することはできなかった。換言すると、発見的なステップを経て初めてもたらされた効果である。
さらに、この事実から推論すると、ガラスなど親水性の高い材料を用いて、本実施例2に係る構造(すなわち図10F)の希釈槽1010を構成すれば、材料が親水性であるにもかかわらず、図15と同様、残液量が極めて少ない結果が得られると考えられる。つまり材料の選択肢が増えるばかりでなく、表面状態や、使用に伴う表面状態の変化の影響も受け難いと考えられる。換言すると、本実施例は、残液量が極めて少ない性能が長期間安定に維持される希釈槽1010を実現できる、という特有の効果がある。
(3)実施例3
図19及び図20に、実施例3に係る電解質自動分析装置1000bの概略構成を示す。本実施例による電解質自動分析装置1000bの構成は、実施例1による電解質自動分析装置1000のそれと基本的に同じであるが、下記の点が異なる。すなわち、希釈槽用廃液機構1200の廃液ノズル1204aはノズル状の開口部を備えず、先端部が希釈槽1010dの底部に設けた開口部1013に直接接続され、希釈槽内部の最深部1012に連通する。また、電解質自動分析装置1000bは、廃液ノズル用の上下方向駆動機構をもたない。測定溶液吸引ノズル1052の開口部は、希釈槽1010dの回転軸上、かつ、最深部1012の近傍に配置可能に設けられ、測定溶液吸引ノズル1052の開口部の中心は、希釈槽1010dの回転軸の位置と一致する。
本実施例3による電解質自動分析装置1000bの動作の概略は、実施例1による電解質自動分析装置1000のそれと類似であるが、下記の点が異なる。すなわち、希釈槽廃液工程13110及び13210以外の工程においては、電磁弁1203を閉じ、真空ポンプ1202の作用により廃液流路1204bを減圧し、廃液ノズル1204aは大気圧とする。希釈槽廃液工程13110及び13210において、電磁弁1203を開ける。すると、廃液流路1204bから電磁弁1203、廃液ノズル1204a、開口部1013を通して希釈槽1010dに減圧環境が提供され、希釈槽1010dの内部の液は開口部1013、廃液流路1204a、電磁弁1203、廃液ノズル1204bを通して廃液トラップ1201に排出される。
本実施例の効果は実施例1の効果と同様である。また、本実施例には、廃液ノズル1204aを希釈槽1010dの内部に配置する必要がないため、希釈槽1010dに配置すべきノズルの数が1本少なく済み、測定溶液吸引ノズル1052の配置の自由度が高まる、という特有の効果がある。さらに、本実施例には、廃液ノズル用の上下方向駆動機構を省略でき、構造が簡単になるという特有の効果がある。
(4)実施例4
図21に、実施例4に係る電解質自動分析装置1000cの概略構成を示す。本実施例による電解質自動分析装置1000cの構成は、実施例1に係る電解質自動分析装置1000の構成と基本的に同じであるが、下記の点が異なる。すなわち、送液機構1050は、測定溶液吸引ノズル1052を備えておらず、測定溶液吸引流路1053が希釈槽1010dの底部に設けた開口部1013に直接接続する。すなわち、測定溶液吸引流路1053が、希釈槽内部の最深部1012に直接連通する。また、電解質自動分析装置1000cは、測定溶液吸引ノズル用の上下方向駆動機構はもたない。
本実施例4による電解質自動分析装置1000cの動作の概略は、実施例1による電解質自動分析装置1000のそれと類似であるが、下記の点が異なる。すなわち、測定溶液導入工程13140や測定溶液導入工程13240において、送液機構1050を駆動し、希釈槽1010dの内部の溶液のうち150μLを測定溶液として、Cl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073を経てフローセル型の液絡1080まで送液する。この際、測定溶液吸引ノズル1052やその上下方向駆動機構は用いないため、測定溶液吸引流路1053に気泡が混入するおそれが少ない。
本実施例の効果は、実施例1の効果と同様である。また、希釈槽1010dに用意した155μLの溶液の内150μLの溶液を、気泡混入などの不具合無しにセンサに送ることができるため、液の利用効率が高く、より高精度な測定が行える、という特有の効果がある。
(5)実施例5
図22に、実施例5による電解質自動分析装置1000dの概略構成を示す。本実施例による電解質自動分析装置1000dの構成は、実施例4による電解質自動分析装置1000cの構成と類似するが、以下の点が異なる。すなわち、送液機構1050は、測定溶液吸引流路1053を備えず、フローセル型のCl-ISE 1071、同K-ISE 1072、同Na-ISE 1073の内部の流路が直接、希釈槽1010dの底部に設けた開口部1013を通して、希釈槽内部の最深部1012に連通する。
本実施例5による電解質自動分析装置1000dの動作の概略は、実施例3による電解質自動分析装置1000bのそれと類似であるが、下記の点が異なる。すなわち、測定溶液導入工程13140において、送液機構1050と参照電極液送液機構1060とを連動し、希釈槽1010dの中の試料溶液のうち75μLを、測定溶液として、Cl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073を経てフローセル型の液絡1080まで送液する。
本実施例の効果は、実施例3の効果と同様である。さらに、本実施例では、測定溶液吸引流路1053が存在しないため、この流路における液残り(キャリーオーバ)も生じず、測定液量が75μLと極少量で済むという特有の効果がある。
本実施例の変形例として、実施例5と実施例3を折衷した構成、すなわち送液機構1050が例えば長さ5mmとごく短い測定溶液吸引流路1053を備える電解質自動分析装置も実施可能である。具体的には、フローセル型のCl-ISE 1071、K-ISE 1072、Na-ISE 1073の内部の流路が、この短い測定溶液吸引流路1053を経て、希釈槽1010dの底部に設けた開口部1013を通して、希釈槽内部の最深部1012に連通する。本変形例は、測定溶液吸引流路1053がごく短いため、この流路における液残りも極わずかであり、測定液量が少量で済むという特有の効果がある。
(6)実施例6
図23に、実施例6による希釈槽1010eの模式図を示す。図23は、希釈槽1010eの最深部1012付近の拡大模式図を含む。本実施例による希釈槽1010eの構成は、実施例3による希釈槽1010の構成、より具体的には図20等に示した構成と類似するが、以下の点が異なる。すなわち、希釈槽1010eの最深部1012と、希釈槽1010eの底部1015に設けた開口部1013との間に、流出防止要素1014を備える。本実施例では、流出防止要素1014として、撥水性を有するフッ素系樹脂に直径約0.05mmの毛細管を複数穿った部材を採用した。
本実施例6の動作は、実施例3の動作と同様であるが、以下の点が異なる。すなわち、希釈槽廃液工程13110(希釈槽洗浄工程13150における希釈槽廃液工程も含む)において、電磁弁1203を開けると、廃液流路1204a、希釈槽1010の底部に設けた開口部1013、そして流出防止要素1014の毛細管を通して、希釈槽1010eに減圧環境が提供され、希釈槽1010eの内部の液は流出防止要素1014の毛細管、廃液流路1214a、電磁弁1203、廃液流路1204bを通して廃液トラップ1201に排出される。
一方、希釈液分注工程13130において、希釈液分注機構1030を用いて、150μLの希釈液1031を、希釈液分注ノズル1032から、検体の斜め上方の位置から検体に向けて吐出する。検体は希釈液により希釈され、両者は均一に混合する。この際、流出防止要素1014の流路には減圧環境が提供されていないため、また検体や希釈液は水溶液であるため、撥水製のフッ素系樹脂から形成された流出防止要素1014の毛細管に侵入せず、流出防止要素1014の上面(希釈槽1010eの内側底部である最深部1012近く)より上に保持される。
本実施例の効果は、基本的に実施例3のそれと同様である。また、本実施例特有の効果として、真空吸引しない限り検体や希釈液は流出防止要素1014の上面より上に保持されるため、希釈槽1010の底部1015に設けた開口部1013に、それらが侵入するおそれが無い。従って、検体や希釈液の一部がこの開口部1013に滞留するおそれがなく、混合されないままとなるおそれも無い。つまり、検体と希釈液の混合が常に効率よく行われ、所定の希釈倍率で希釈された均一な測定溶液が安定して得られる、という特有の効果がある。
本実施例6の変形例を、図24A、図24B、図24C、図24Dを用いて説明する。図24A、図24B、図24C、図24Dは、それぞれ実施例6の第1、第2、第3の変形例による希釈槽1010eの最深部1012付近の拡大模式図である。それぞれの変形例は、流出防止要素1014として、それぞれ流出防止要素1014b、1014c、1014dを採用した。具体的には、第1の変形例は、流出防止要素1014bとして、撥水性を有するフッ素系樹脂の細粒を焼結して形成した目皿状の部材を採用した。すなわち、この変形例は流出防止要素1014bの内部に撥水性を有する連続した空隙を多数有する。
第2の変形例は、流出防止要素1014cとして、撥水性を有するフッ素系樹脂に、上面が直径約0.1mm、下面が直径約0.5mmの逆テーパー状の円錐台形様の流路を形成した部材を採用した。第3の変形例は、流出防止要素1014dとして、撥水性を有するフッ素系樹脂板に直径約0.5mmの貫通孔を設けた部材を採用し、その部材を可動せしめるスライド弁様の構造を採用した。図24Cは、その部材(以下「スライド板」という。)の貫通孔が、希釈槽1010eの最深部1012と開口部1013との間を連通させる位置にある状態、換言するとスライド弁が開いた状態を示す。図24Dは、スライド板の貫通孔が、希釈槽1010eの最深部1012と開口部1013との間を封鎖する位置にある状態、換言するとスライド弁が閉じた状態を示す。
変形例において廃液を行う際は、流出防止要素1014b、1014c、1014dに(1014dの場合はスライド弁を開いた上で)減圧環境を提供することにより、希釈槽内の試料溶液などを効率よく排出可能である。変形例において希釈を行う際は、流出防止要素1014b、1014c、1014dに(1014dの場合はスライド弁を閉じ)減圧環境を提供しないため、検体や希釈液が流出防止要素1014b、1014c、1014dの流路や空隙に侵入せず、検体や希釈液を流出防止要素1014b、1014c、1014dの上面より上に保持できる。
従って、実施例6と同様、検体や希釈液が開口部1013に侵入するおそれが無く、検体と希釈液の混合が効率よく行われ、所定の希釈倍率で希釈された均一な希釈液が安定して得られる、という特有の効果がある。
本実施例6並びに変形例は、実施例3に流出防止要素1014を追加する例を説明したが、本実施例並びに変形例の適用範囲は実施例3に限らない。本実施例ならびに変形例の流出防止要素は、実施例4、実施例5にも同様に適用可能であり、類似の効果をもたらす。
(7)他の実施例
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例に他の構成を追加し、各実施例構成の一部を削除し、又は、各構成の一部を他の構成で置換することが可能である。
1000、1000b、1000c、1000d:電解質自動分析装置
1010、1010b、1010c、1010d、1010e:希釈槽
1011:接液面
1012:最深部
1013:開口部
1014、1014b、1014c、1014d:流出防止要素
1015:希釈槽の底部
1020:検体分注機構
1021:検体
1022:検体分注ノズル
1030:希釈液分注機構
1031:希釈液
1032:希釈液分注ノズル
1040:内部標準液分注機構
1041:内部標準液
1042:内部標準液分注ノズル
1050:送液機構
1052:測定溶液吸引ノズル
1060:参照電極液送液機構
1061:参照電極液
1071:フローセル型のCl-ISE
1072:フローセル型のK-ISE
1073:フローセル型のNa-ISE
1080:フローセル型液絡
1090:フローセル型の参照電極
1100:計測制御装置
1200:希釈槽用廃液機構
1201:廃液トラップ
1202:真空ポンプ
1203:電磁弁
1204a:廃液ノズル
1204b、1214a:廃液流路
1205a、1205b:排気流路

Claims (8)

  1. 電解質センサと、
    点状の最深部に向かって単調に傾斜する内壁を有する希釈槽と、
    前記希釈槽から前記電解質センサへ試料溶液を送液する第一の管と、
    前記希釈槽から外部へ試料溶液を廃液する第二の管と
    を有し、
    前記第一の管の一端部と前記第二の管の一端部は、いずれも前記希釈槽の前記最深部の近傍に配置可能であり、
    前記最深部を通る前記希釈槽の縦断面は滑らかな曲線であり、
    前記第一の管と前記第二の管を、前記最深部からの水平距離が、試料溶液に対する毛管長又は遮蔽長だけ離れるように配置する
    自動分析装置。
  2. 請求項1に記載の自動分析装置において、
    前記希釈槽へ検体を送液する第三の管と、
    前記希釈槽へ希釈液を送液する第四の管と
    を更に有することを特徴とする自動分析装置。
  3. 請求項1に記載の自動分析装置において、
    前記希釈槽のうち少なくとも試料溶液と接する表面部分は撥水性材料で形成される
    ことを特徴とする自動分析装置。
  4. 請求項1に記載の自動分析装置において、
    前記希釈槽は、前記最深部の位置に開口部を有し、
    前記第一の管の一端部が前記開口部の近接位置に配置可能に設けられ、
    前記第二の管の一端部が前記希釈槽の外側で前記開口部に接続される
    ことを特徴とする自動分析装置。
  5. 請求項に記載の自動分析装置において、
    前記希釈槽と前記第二の管との接続部に液体流出防止部材を設ける
    ことを特徴とする自動分析装置。
  6. 請求項に記載の自動分析装置において、
    前記液体流出防止部材が、撥水性材料からなる
    ことを特徴とする自動分析装置。
  7. 請求項に記載の自動分析装置において、
    前記液体流出防止部材は、複数の毛細管、焼結された微粒子、逆テーパー状の管及びスライダーバルブのうちのいずれかである
    ことを特徴とする自動分析装置。
  8. 請求項1に記載の自動分析装置において、
    前記希釈槽は、前記最深部の位置に開口部を有し、
    前記第一の管の一端部が前記希釈槽の外側で前記開口部に接続され、
    前記第二の管の一端部が前記希釈槽の近傍位置に配置され、
    前記第一の管の他端部は前記電解質センサに接続される
    ことを特徴とする自動分析装置。
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