JP6649037B2 - 検体情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、及び同プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
上述した要因によって脈動性信号が変動した場合、脈拍数の異なる状況における波形どうしの間では、それぞれの時間軸が変化しているため、これらを同等に取り扱って信号処理を行うことができない。
(2)該信号処理部は、該脈動性信号が入力されるPLL回路を備え、該PLL回路は、該脈動性信号と帰還信号との位相を比較して、位相差に対応する位相差信号を出力する位相比較器と、該位相差信号が入力されて、所定のカットオフ周波数より大きい周波数成分を除去した電圧制御信号を出力するローパスフィルタと、該電圧制御信号の電圧に対応する発振周波数を有するクロック信号を出力する電圧制御発振器と、該クロック信号が入力されて、所定の分周比で該クロック信号を分周した分周信号を出力する分周器とを有し、上記の分周信号が該帰還信号として該位相比較器に入力され、該脈動性信号と該帰還信号との位相が同期するように該電圧制御発振器の発振周波数が制御され、該クロック信号により該脈動性信号を正規化することが好ましい。
(5)該信号処理部は、上記のPLL回路に入力される脈動性信号と該帰還信号との位相が同期しているかを判定して、該PLL回路がロックしているか否かを検出するロック検出部を備えることが好ましい。
(6)該信号処理部は、該分周信号が入力されて、該分周信号の単位時間当たりのパルスをカウントする信号計数部を備えることが好ましい。
(8)該信号処理部は、上記の平均化処理部により処理された信号が入力されて、該クロック番号と該信号強度の平均値との関係を表す波形を生成して、波形番号ごとに複数の脈波を平均化した一周期の波形を該表示器に表示する波形表示部を備えることが好ましい。
(9)該信号処理部は、上記のメモリに記録した信号強度を読み出して数値微分する微分処理部を備えることが好ましい。
(10)該信号処理部は、上記のメモリに記録した信号強度を読み出して数値積分する積分処理部を備えることが好ましい。
(12)ここで開示する情報処理プログラムは、コンピュータに、検体における血管の脈波情報に基づいて検出された脈動性信号を取得して、該脈動性信号を正規化する処理を実行させる。
(13)ここで開示するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上述の情報処理プログラムを記録する。
本発明の第一実施形態に係るPLL(フェーズロックドループ)回路11、PLL回路11を備える情報処理装置1、及び検体情報処理装置5について、図1を参照して説明する。以下、第一実施形態の説明においては、第一実施形態を、単に本実施形態とも呼ぶ。
本実施形態に係るPLL回路11は、図1に示すように、位相比較器21、LPF(ローパスフィルタ)22、及びVCO(電圧制御発振器)23aを備えて構成されている。
位相比較器21は、入力される脈動性信号と帰還信号との位相を比較して、その位相差に対応する幅のパルス信号を、位相差信号としてLPF22に出力する。本実施形態に係る位相比較器21は、XOR(エクスクルーシブオア)回路により構成されている。また、位相比較器21は、脈動性信号及び帰還信号をロック検出部41に出力する。
LPF22は、位相差信号が入力されて、所定のカットオフ周波数より大きい周波数成分を除去した電圧制御信号として、VCO23aに出力する。これにより、脈動性信号と帰還信号との位相差に対応した電圧が生成されて電圧制御発振器に入力される。LPF22は、カットオフ周波数を有する一次以上のローパスフィルタであるため、PLL回路11は2次系以上の高次のループとなる。以下、入力する脈波の位相の突然のシフトに対して一定時間内の位相差ゼロでロックすることを特徴とする2次系のPLLを前提として説明する。
VCO23aは、入力された電圧制御信号の電圧に対応する発振周波数を有するクロック信号を出力する。本実施形態に係るPLL回路11では、クロック信号が、上述の帰還信号として位相比較器21に入力される。本実施形態では、VCO23aの発振周波数は、脈波の周波数と同程度の1Hzを中心として変動するよう設計されている。また、VCO23aは、クロック信号を信号計数部42に出力する。
PLL回路11は上記の通り構成されており、PLL回路11に入力される脈動性信号と、帰還信号としてのクロック信号との位相が同期するようにVCO23aの発振周波数が制御される。これにより、PLL回路11は、入力された脈動性信号にロック(同期)する。本実施形態に係るPLL回路11は、自然周波数ωnが0.5、ダンピングファクターζが0.8、引き込み時間が10秒で5%誤差である、2次系のPLLとなっている。すなわち、PLL回路11は、脈動性信号へのロック用のPLL回路である。
G1=k/s(s+a) (1)
タイプ2:
G2=k(s+a)/s2 (2)
タイプ3:
G3=k(s+a)(s+b)/s3 (3)
(イ)脈波の位相の速度変化については、タイプ2及びタイプ3が設計上の時間で追従する。
(ウ)脈波の位相の加速度的変化については、タイプ3のみが設計上の時間で追従する。
G=2×ζ×ωn (4)
式(4)より、本実施形態のPLL回路11は、ループゲインG=0.8と算出される。
本実施形態に係る情報処理装置1の構成について図1を参照して説明する。情報処理装置1は、検出された信号を処理するためのモバイル端末機としての携帯情報端末(スマートフォン)である。情報処理装置1としてのスマートフォンは、図示しない入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等のメモリ)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ、及び無線送信部等を含んで構成される。
検体情報検出ユニット101は、検体における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を検出できるセンサを有する測定装置である。本実施形態の検体情報検出ユニット101は、ヘッドホンのダイナミック型のドライバユニットをセンサとして用いており、検体の外耳道を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞となるよう検体の外耳に装着して、外耳道から脈動性信号を検出する。検体情報検出ユニット101及びセンサ並びに測定部位はこれに限定されず、例えば、発光部として発光ダイオードを用い、受光部としてフォトダイオードやフォトトランジスタを用いて、腕や指先において透過光または反射光から脈動性信号を検出する、光電式の測定器を利用することができる。または、腕の動脈上に圧電素子を押し付けて脈動性信号を検出する、圧電式の測定器を利用することができる。または、血管の脈動に伴う皮膚または鼓膜部分の振動によって生じる空気の振動を検出できるマイクロホンを用いて、マイクロホンと振動源とを閉じた状態にして脈動性信号を検出する測定器を利用してもよい。なお、上述した「血管の脈波情報」とは、血管を伝わる脈波情報のことであって、検体の心臓の拍動に伴って生じる血管内を伝わってくる振動を示す情報(信号)である。検体情報検出ユニット101は、検出した脈動性信号を情報処理装置1へ出力する。
情報処理装置1に入力された脈動性信号は、ゲイン切り替え部51に入力される。
ゲイン切り替え部51は、入力された信号のゲインを調節して信号の増幅または減衰を行い、信号のレベルを調整する電気回路である。中でも、ゲイン切り替え部51は、検体情報検出ユニット101により検出された信号の飽和を検出し、飽和が検出された際に信号のレベルを減少させる処理を施す。ゲイン切り替え部51は、処理した信号を周波数特性補償部61に出力する。
周波数特性補償部61は、入力された信号に位相補償を行い、周波数特性を補正する電気回路である。検体情報検出ユニット101により検出されて情報処理装置1に入力される脈動性信号には、センサの特性、信号の検出状況、及び検体情報検出ユニット101または情報処理装置1が備えるデジタルシグナルプロセッサ(DSP)による処理等に起因して信号特性に影響受けている場合がある。周波数特性補償部61は、少なくとも血管の脈波情報が検出される周波数帯域の位相補償を行い、脈動性信号が示す周波数応答を補償して、本来の脈波波形を示す脈動性信号を得る波形等化処理を行う。周波数特性補償部61による位相補償によって、脈動性容積信号、脈動性速度信号、または脈動性加速度信号を得る。周波数特性補償部61は、処理した信号を周波数補正処理部71に出力する。
周波数補正処理部71は、入力された信号に対して、脈動性信号の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なうことにより、脈動性容積信号、脈動性速度信号、および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出す電気回路である。周波数補正処理部71により脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す処理を、周波数補正処理ともいう。なお、脈動性容積信号、脈動性速度信号、および脈動性加速度信号が示す波形は、それぞれ容積脈波、速度脈波、加速度脈波ともいう。本実施形態に係る周波数補正処理部71は、速度脈波の信号を二値化処理部31に出力する。
二値化処理部31は、入力された脈動性信号をオンとオフの二値の信号に変換処理する電気回路である。二値化処理部31では、入力される脈波信号の立ち上がりまたは立下りを基準にオンの区間のデューティ比が概50%になるようなパルスに整形される。さらに、このオンの区間以降から次の立ち上がりまでをオフとするように変換する。本実施形態に係る二値化処理部31では、位相比較器21がXOR回路であるため、上述した方法で二値化をしているが、二値化の処理は、変換された脈動性信号が位相比較器21で検出できるように処理するものであれば限定されない。二値化処理部31は、処理した信号をPLL回路11に出力する。
ロック検出部41は、PLL回路11に入力される脈動性信号と帰還信号との位相が同期しているかを判定して、PLL回路11が脈動性信号にロックしているか否かを検出する電気回路である。本実施形態では、ロック検出部41は、位相比較器21から脈動性信号と帰還信号が入力されて、両信号の位相比較を行う。位相比較器21の特性がXORの論理を用いていることから、脈動性信号と帰還信号との位相が90度ずれている場合に、両信号の位相が同期していると判定する。具体的には、脈動性信号の入力をI、帰還信号をRとすると、ロックしている時には、Iが0(オフ)となりRが1(オン)となる、Iが1となりRも1となる、Iが1となりRが0となる、Iが0となりRも0となる、との関係を繰り返す。ロック検出部41は、このような関係を検出して、位相が同期しているかを判定する。
信号計数部42は、VCO23aからクロック信号が入力されて、このクロック信号の単位時間当たりのパルスをカウントする。信号計数部42は、入力されたクロック信号のパルスの数を、内部の高い周波数のクロックで計数するマイクロコンピュータによって実現される。本実施形態では、信号計数部42は、1分当たりのクロック信号のパルスの数をカウントする。信号計数部42は、信号のカウント値を表示器81に出力する。
表示器81は、脈動性信号に関連する情報を提示する表示装置である。表示器81は、ロック検出部41からロック検出信号またはアンロック検出信号が入力されて、PLL回路11がロックしているか否かを表示する。また、表示器81は、信号計数部42からカウント値が入力されて、単位時間当たりのクロック信号のカウント値を表示する。本実施形態では、情報処理装置1(スマートフォン)に備えられるディスプレイの表示画面が、表示器81として機能する。ロック検出信号が入力された場合には、表示器81はPLL回路11がロックしていることを表す緑色のアイコンを点灯する。また、アンロック検出信号が入力された場合には、表示器81はPLL回路11がロックしていないことを表す赤色のアイコンを点灯する。さらに、表示器81は、クロック信号のカウント値の数値を表示画面に表示する。
検体情報処理装置5は、上述の通り構成されており、検体情報検出ユニット101によって検出されて、情報処理装置1に入力された脈動性信号を、ゲイン切り替え部51、周波数特性補償部61、周波数補正処理部71、及び二値化処理部31を通じて、PLL回路11に入力する。PLL回路11は、VCO23aからクロック信号を出力する。情報処理装置1は、ロック検出部41及び信号計数部42からの出力を、表示器81に表示にする。
PLL回路11による、入力される脈動性信号へのロック動作の一例を説明する。
二値化処理部31は、情報処理装置1に入力された脈動性信号を二値化して、PLL回路11に入力する(ステップS11)。
位相比較器21は、二値化された脈動性信号と帰還信号との位相を比較して、位相差に対応する位相差信号を出力する(ステップS12)。
LPF22は、位相差信号から所定のカットオフ周波数より大きい周波数成分を除去した電圧制御信号を出力する(ステップS13)。
VCO23aは、電圧制御信号の電圧に対応する発振周波数を有するクロック信号を出力する(ステップS14)。このとき、ステップS14では、脈動性信号と帰還信号との位相が同期するようにVCO23aの発振周波数を制御する。VCO23aは、クロック信号を帰還信号として位相比較器21に入力するとともに、信号計数部42に出力する。
<PLL回路と外乱について>
PLL回路11の外乱に対する作用を、図2〜図4を参照して、PLL回路11に入力される波形とPLL回路11による処理を受けた波形の例を示して説明する。
検体が運動状態や興奮状態にある等して脈拍数が変化した場合には、PLL回路11に入力される脈動性信号の変動が続くことになる。この場合には、PLL回路11は、入力される信号の変動に応じて電圧制御信号が変化し、これに伴いクロック信号が追従するように構成されているため、次第にクロック信号が心臓の拍動と同期することになる。
PLL回路11の作用を、図5を参照してさらに説明する。図5(a)〜(f)では、心拍が表す複数の脈波のパターン1〜6におけるパルスの位置を示すとともに、一定の間隔でパルスが発生した場合のパルスの位置を縦の破線で示している。なお、これらのパターンは、Ken Grauer著、Daniel Cavallaro著、高尾信広訳、「不整脈判読トレーニング」、医学書院、2001年、第33頁〜第34頁より引用している。
なお、臨床的には、ほとんどの心拍リズムは上記のパターン1〜4のどれかに当てはまるとされている。
第一実施形態に係るPLL回路11は、LPF22が一次であることにより2次系のPLLであって、入力される脈動性信号と帰還信号としてのクロック信号との位相が同期するように、VCO23aから出力されるクロック信号の発振周波数が制御される。これにより、PLL回路11は、入力された脈動性信号にロックして、心臓の拍動に同期したクロック信号を出力することができる。さらに、PLLがフライホイール効果をもたらすことによって、入力される脈動性信号に、突発性でバースト的な外乱や、不整脈による周期性の脈波のパターンの乱れによって変動が生じた場合であっても、出力されるクロック信号には直ちに大きな変動は生じず、本来の脈波と同様の間隔を示す信号を出力することができる。また、運動しているような状態であって、脈拍数自体が漸次変化する場合には、次第にクロック信号が心臓の拍動と同期する。このように、PLL回路11は、変動に対するロバスト性を有する。すなわち、PLL回路11によれば、脈波を変動によらず安定して観察することが可能である。
本発明の第二実施形態に係るPLL回路12、PLL回路12を備える情報処理装置2、及び検体情報処理装置6について、図6を参照して説明する。以下、第二実施形態の説明においては、第二実施形態を、本実施形態とも呼ぶ。本実施形態に係るPLL回路12及び情報処理装置2は、一部の構成を除いて上述の第一実施形態に係るPLL回路11及び情報処理装置1と同様に構成されており、PLL回路11及び情報処理装置1と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
本実施形態に係るPLL回路12は、図6に示すように、位相比較器21、LPF22、VCO23b、及び分周器24を備えて構成されている。
位相比較器21及びLPF22は、第一実施形態に係るPLL回路11と同様に構成されている。
VCO23bは、入力された電圧制御信号の電圧に対応する発振周波数を有するクロック信号を出力する。本実施形態に係るPLL回路12では、クロック信号が分周器24に入力される。本実施形態では、VCO23bの発振周波数は、128Hzを中心として変動するよう設計されている。
分周器24は、所定の分周比Nでクロック信号の周波数を分周して、分周した周波数を分周信号として出力する。分周信号は、帰還信号として位相比較器21に入力される。本実施形態に係る分周器24は、分周比Nを128としている。
PLL回路12は上記の通り構成されており、脈動性信号と、帰還信号としての分周信号との位相が同期するようにVCO23bの発振周波数が制御される。これにより、PLL回路12は、入力された脈動性信号にロックする。PLL回路12が脈動性信号にロックした場合、VCO23bは、1つの脈波の波形に128個のクロック数のクロック信号を発生させるようになっている。これにより、PLL回路12は、脈動性信号をクロック信号により正規化する。すなわち、PLL回路12は、脈動性信号の正規化用のPLL回路である。
本実施形態に係る情報処理装置2の構成について、図6を参照して説明する。情報処理装置2は、情報処理装置1と同様に、ゲイン切り替え部51、周波数特性補償部61、周波数補正処理部71、二値化処理部31、PLL回路12、ロック検出部41、及び信号計数部42を備え、さらに、カウンタ25、AD変換器32、第一メモリ33、フィードバックコムフィルタ34、第二メモリ35、平均化処理部36、微分処理部37、積分処理部38、及び波形表示部43を備えている。情報処理装置2の上記構成部分をあわせて信号処理部15という。さらに、情報処理装置2は、表示器81を備える。
信号計数部42は、VCO23aからの信号入力に変えて、分周器24から分周信号が入力されて、この分周信号の単位時間当たりのパルスをカウントして、単位時間当たりの分周信号のカウント値を表示器81に表示する他は、第一実施形態の場合と同様に構成されている。
カウンタ25は、分周器24から分周信号が入力されてこれをカウントし、分周信号の番号によって脈波の順番を示す波形番号を出力する。波形番号は0、1、2・・・と、0から順に1ずつ増加する整数値によってカウントされる。カウンタ25は、第一メモリ33及び第二メモリ35の記憶容量に応じて波形番号を適宜リセットして再度0からカウントする。PLL回路12にカウンタ25を加えたものを、クロックアドレス発生部ともいう。
AD変換器32は、アナログデータである脈動性信号が入力されて、脈動性信号の信号強度の値をデジタルデータに変換して取得する。AD変換器32は、VCO23bからクロック信号が入力されて、クロック信号が入力されたタイミングで信号強度を取得する。AD変換器32は取得した信号強度のデジタルデータを第一メモリ33に出力する。
第一メモリ33は、AD変換器32で得られた信号強度のデジタルデータが入力されて、このデータを記録する。第一メモリ33を、単にメモリともいう。第一メモリ33は、記憶領域を複数のバンクに分割してなるメモリバンクである。本実施形態に係る第一メモリ33は、64個のバンクを有している。第一メモリ33は、バンクに順次データが書き込まれ、容量の制限に応じて古いメモリが消去されるリングバッファである。第一メモリ33は、信号強度のデータを、クロック信号の入力されたタイミングに応じたクロック番号ごとに記録する。また、第一メモリ33は、信号強度のデータを、カウンタ25から入力される波形番号を受けて、波形番号毎に分けられたそれぞれのバンクに記録する。すなわち、第一メモリ33は、脈動性信号を脈波の一周期毎に、波形番号とクロック番号に対応付けた信号強度として記録する
フィードバックコムフィルタ34は、第一メモリ33に記録した信号強度を読み出して、特定の周波数成分を通過させるフィルタ処理を行うデジタルシグナルプロセッサ(DSP)で構成される。フィードバックコムフィルタ34は、フィルタ処理を施した信号を第二メモリ35に出力する。フィードバックコムフィルタ34は、DSPと第一メモリ33及び第二メモリ35の間の操作により実行される。
第二メモリ35は、フィードバックコムフィルタ34でフィルタ処理された信号の信号強度が入力されて、この信号強度のデータを記録する。第二メモリ35は、図7を参照して説明した第一メモリ33と同様に構成されており、フィルタ処理された信号の信号強度を、波形番号とクロック番号に対応付けて格納している。
平均化処理部36は、第二メモリ35に記録した連続する複数の波形番号の信号強度のデータを読み出し、加算して、加算したデータの数で除算することで、波形番号ごとに各クロック番号の信号強度の平均値を出力する平均化処理をするものである。平均化処理部36は、平均化処理の結果を波形表示部43に出力する。本実施形態では、連続する10個の信号強度の値の平均を取る。具体的には、第二メモリ35の所望の波形番号から10個の連続した波形番号において、各々のバンクから同じタイミングのクロック信号、すなわち同じクロック番号の信号強度を読み出し、これを加算して10個の波形分のデータの平均値を出力する。次に、クロック番号を一つ後ろにずらし、同様にして順に平均値を算出していく。一つの波形番号の最後のクロック番号まで処理し終えたら、次の10個の連続した波形番号の最初のクロック番号から順に平均値の算出を行う。このようにして、波形番号ごとの各クロック番号に対応して、10個の信号強度の値の平均を得る。ここで、ある波形番号における信号強度の平均値とは、連続する複数の波形番号に対応する平均値を算出した場合において、最後の波形番号に対応する平均値をいうものとする。
微分処理部37は、第一メモリ33に記録した信号強度のデータを読み出して、数値微分をするものである。微分処理部37は、数値微分の結果を波形表示部43に出力する。数値微分は、128のクロックでサンプリングされた離散型データの傾きを出すだけであるので、公知の算出方法を適宜利用できる。一例として、最も単純な方法として前方差分をとるのであれば、注目する点とその後の点のサンプル値をf(xi),f(xi+1)とすると、下記の
(f(xi+1)−f(xi))/Δx
の公式に乗っ取り、この例であれば1/128をΔxとして、隣接するサンプル値間での演算を行えばよい。
<積分処理部>
積分処理部38は、第一メモリ33に記録した信号強度のデータを読み出して、数値積分をするものである。積分処理部38は、数値積分の結果を波形表示部43に出力する。数値積分は、128のクロックでサンプリングされた離散型データの傾き面積を出すだけであるので、台形則、シンプソン則等の公知の算出方法を適宜利用できる。シンプソン則に従えば、1/128の刻みでこれをΔxとすれば注目する点の前後の点のサンプル値をf(xi-1),f(xi),f(xi+1)とすると、下記の
Δx{f(xi-1)+4f(xi)+f(xi+1)}/3
の計算式で求めることができる。
波形表示部43は、第二メモリ35に記録した信号強度を読み出して、クロック番号と信号強度との関係を表す波形のデータを生成して、表示器81に出力する。もしくは、波形表示部43は、平均化処理部36、微分処理部37、または積分処理部38で処理された結果が入力されて、クロック番号と信号強度との関係を表す波形のデータを生成して、表示器81に出力する。波形表示部43はいずれの場合でも同様に処理を行うことができるが、本実施形態では、平均化処理部36で平均化処理された結果が波形表示部43に入力される場合について説明する。
表示器81は、波形表示部43から波形のデータが入力されて、脈動性信号を、波形番号ごとに脈波の一周期の波形として表示する他は、実施形態1の場合と同様に構成されている。なお、第二実施形態に係る表示器81では、信号計数部42からカウント値が入力されることで、単位時間当たりの分周信号のカウント値を表示する。表示器81は、第二メモリ35、平均化処理部36、微分処理部37、または積分処理部38からの信号を、波形表示部43を介して表示する。表示器81は、表示画面の波形の表示領域に、横軸に128のクロック番号をとり、縦軸に信号強度とった、脈波の一周期の波形の画像を表示する。表示器81は、波形番号の順番に順次波形のデータが入力されることで、脈波の波形を本来の時系列の順序で表示する。本実施形態では、表示器81は、波形表示部43からクロック番号と信号強度の平均値との関係を表す波形のデータが入力されて、波形番号ごとに10個分の脈波を平均化した一周期毎の波形を表示する。
検体情報処理装置6は、上述の通り構成されており、検体情報検出ユニット101によって検出されて、情報処理装置2に入力された脈動性信号を、ゲイン切り替え部51を通じて、周波数特性補償部61とAD変換器32に入力する。周波数特性補償部61で処理された脈動性信号は、周波数補正処理部71及び二値化処理部31を通じて、PLL回路12に入力される。PLL回路12は、VCO23bからクロック信号をAD変換器32とフィードバックコムフィルタ34に出力する。また、分周器24から分周信号をカウンタ25に出力する。AD変換器32に入力された脈動性信号は、第一メモリ33に信号強度として記録され、フィードバックコムフィルタ34にフィルタ処理された信号が第二メモリ35に記録される。第二メモリ35に記録された信号は、平均化処理部36、微分処理部37、または積分処理部38が読み出して、それぞれ処理を行って処理結果を出力する。情報処理装置2は、ロック検出部41、信号計数部42、及び波形表示部43からの出力を、表示器81に表示にする。
図18に示すフローチャートを参照しながら、PLL回路12による脈動性信号の正規化の動作と、情報処理装置2による正規化された脈動性信号の平均化処理と出力の動作との一例を説明する。
二値化処理部31は、情報処理装置2に入力された脈動性信号を二値化して、PLL回路12に入力する(ステップS21)。
位相比較器21は、二値化された脈動性信号と帰還信号との位相を比較して、位相差に対応する位相差信号を出力する(ステップS22)。
LPF22は、位相差信号から所定のカットオフ周波数より大きい周波数成分を除去した電圧制御信号を出力する(ステップS23)。
VCO23bは、電圧制御信号の電圧に対応する発振周波数を有するクロック信号を出力する(ステップS24)。このとき、ステップS24では、脈動性信号と帰還信号との位相が同期するようにVCO23bの発振周波数を制御する。VCO23bは、クロック信号を、分周器24とAD変換器32とフィードバックコムフィルタ34に出力する。
分周器24は、所定の分周比でクロック信号の周波数を分周して、分周信号を出力する(ステップS25)。分周器24は、分周信号を帰還信号として位相比較器21に入力するとともに、カウンタ25と信号計数部42に出力する。
AD変換器32は、クロック信号を受けたタイミングで脈動性信号の信号強度をデジタルデータとして取得して、第一メモリ33に出力する(ステップS27)。
第一メモリ33は、各クロック番号の信号強度を波形番号毎のバンクに記録する(ステップS28)。
フィードバックコムフィルタ34は、総クロック数の整数倍の周波数成分を通過させるフィルタ処理を施す(ステップS29)。
第二メモリ35は、フィルタ処理された信号を記録する(ステップS30)
平均化処理部36は、第二メモリ35に記録された信号強度のデータを読み出し、平均値を算出して、波形表示部43に出力する(ステップS31)。
波形表示部43は、クロック番号と信号強度の平均値との関係を表す波形のデータを生成して、表示器81に出力する(ステップS32)。
表示器81は、波形番号ごとに複数の脈波を平均化した一周期の波形を表示する(ステップS33)
<PLL回路について>
PLL回路12は、PLL回路11と同様に、PLL回路12に入力される信号が変動した場合であっても、フライホイール効果によってVCO23bから出力されるクロック信号が急変せずに、安定した本来の脈波を示す波形を出力することができる。PLL回路12の作用を、図2〜図4を参照して説明すると、PLL回路12では、VCO23bが128Hzを中心として変動する発振周波数を有するクロック信号を出力して、分周器24がこのクロック信号を分周比128で分周して分周信号として出力する。PLL回路12では、分周信号が、図2(c),図3(c),図4(a)〜図4(c)の下段に示す波形のように、入力された信号に外乱があったとしても大きな変化が現れずにほぼ一定の間隔となって出力される。
図11は、検体が平常時の場合の脈波の周波数スペクトルを、横軸を周波数、縦軸を信号の強度で示したものである。図11に示すように、通常、1Hz,2Hz,3Hz・・・のようにして、脈波は基本周波数Tがおよそ1Hzであってその逆数1/Tとなる1Hz付近に信号を有しており、その整数倍となる2/T、3/T、4/T、・・・の周波数にも信号を有する。
脈動性信号が正規化された状態にあることで、フィードバックコムフィルタ34により、128、256、384・・・のように、1周期あたりの総クロック数の整数倍の周波数成分を通過させることによって、脈波に由来する成分を通過させることができる。またこのとき、フィードバックコムフィルタ34に入力された信号から、外乱に由来する成分を除くことができる。
従来は、例えば運動をしていて脈拍数が変動している場合には、一つの波形の時間軸上の長さが変るために、そのまま複数の波形の平均をとることはできなかった。一方で、本実施形態に係る情報処理装置2では、脈動性信号が正規化された状態にあることで、平均化処理部36によって同じクロック番号の信号強度の平均値をとることによって、連続する複数の脈動性信号を平均化した波形を出力することができる。
従来の特定のカットオフ周波数を有する周波数特性の微分回路または微分回路を通すことによる処理では、脈動性信号の基本周波数との関係で、微分又は積分の動作を行うことができない場合があった。例えば、カットオフ周波数が2Hzの場合、脈動性信号の基本周波数が1Hz(60回/分)であれば、微分又は積分動作を行うことができる。一方で、例えばレーシングカーに搭乗するなどして基本周波数が3Hzとなった場合には、(不完全)微分回路のカットオフ周波数は変えられないことからすると、この場合にはカットオフ周波数以上の帯域に脈動性信号の成分が存在するために微分も積分も動作しない。このように、従来の時間軸で、同じ時定数で微分又は積分を行う場合には、基本周波数がカットオフ周波数に対して大きく変動した場合に、微分又は積分の処理ができない場合があった。一方で、本実施形態に係る情報処理装置2によれば、PLL回路12が脈動性信号にロックすることにより、常に一つの脈波の周期に一定数のクロック数があることで、カットオフ周波数と脈波の基本周波数の関係を保ったまま、安定な微分または積分の結果を得ることができる。
従来、検体から検出した脈波と脈拍数を表示する場合には、図14、図15のような表示が行われていた。なお、これらの図は、脈動性信号に外乱や不整脈等の変動がある場合の表示の例を示すものである。図14に示すように、速度脈波を示す波形は、本来の速度脈波に外乱に由来する成分が加わった状態で表示されていた。また、脈拍数を示す78の表示は、変動によって脈動性信号が乱れていることから、本来の脈拍数を示すものかは明らかではなかった。さらに、図15は、図14の状態から脈拍数が増えた場合の表示の例を示すものである。このとき、表示領域内の一定時間に表示されるパルス数が増加することによって、速度脈波を示す波形が時間軸で圧縮されており、観察を行うことが困難であった。また、脈拍数を示す150の表示は、図14と同様に、本来の脈拍数を示すものかは明らかではなかった。
第二実施形態に係るPLL回路12は、第一実施形態に係るPLL回路11と同様に、入力された脈動性信号にロックして、心臓の拍動に同期した分周信号を出力することができる。さらに、PLL回路12は、変動に対するロバスト性を有し、脈波を変動によらず安定して観察することが可能である。
本発明の第三実施形態に係る脈拍周波数検出部301、及びクロックジェネレータ303を備える情報処理装置3、並びに検体情報処理装置7について、図19を参照して説明する。以下、第三実施形態の説明においては、第三実施形態を、本実施形態とも呼ぶ。なお、後述する情報処理装置4が備える脈拍周波数検出部302と区別するため、第三実施形態に係る脈拍周波数検出部301を、第一脈拍周波数検出部301とも称する。また、第四実施形態に係る脈拍周波数検出部302を、第二脈拍周波数検出部302とも称する。本実施形態に係る情報処理装置3は、一部の構成を除いて上述の第二実施形態に係る情報処理装置2と同様に構成されており、情報処理装置2と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
情報処理装置3の信号処理部16は、図19に示すように、情報処理装置2が備える二値化処理部31、位相比較器21、LPF22、VCO23b、及びロック検出部41に替えて、AD変換器305、第一脈拍周波数検出部301、クロックジェネレータ303を備えている。第一脈拍周波数検出部301は、LPF311、微分処理部312、タイミング検出部313、間隔取得部314、周波数算出部315、及び移動平均処理部316を有している。
AD変換器305は、周波数補正処理部71から入力された脈動性信号の信号強度の値をデジタルデータに変換して、第一脈拍周波数検出部301のLPF311に出力する。
LPF311は、LPF311に入力される脈動性信号に対して、LPF処理を施す。LPF311では、血管の脈波情報の基本波が含まれる周波数帯域の基本周波数成分を通過させて、基本周波数の高調波が含まれる周波数帯域の高調波数成分を減衰させる処理を行う。LPF311により、脈波情報の基本周波数部分からなる脈動性信号が得られる。また、LPF311により、脈動性信号に含まれる脈波情報以外に由来するノイズ成分が軽減される。
微分処理部312は、LPF311によってローパスフィルタ処理した脈動性信号に対して、数値微分を施す。微分処理部312により、脈動性信号の強度の経時的な変化において、その時間変化に伴う数値変化の傾きが得られる。
タイミング検出部313は、微分処理部312によって得られた信号が0となるタイミングを検出する。タイミング検出部313により、脈動性信号の強度の時間変化におけるピーク位置のタイミングが得られる。タイミング検出部313は、脈動性信号の経時変化にあわせて、信号が0となるタイミングを順次検出する。
間隔取得部314は、タイミング検出部313で検出されたタイミングのうち、隣接するタイミングの間の時間間隔を取得する。間隔取得部314により、隣接するタイミングの間隔が、脈動性信号の隣接するピークに挟まれた脈波の1周期分の長さとして得られる。
周波数算出部315は、間隔取得部314で取得されたタイミングの間隔、すなわち脈波の1周期分の長さの逆数をとって、脈拍周波数を算出する。周波数算出部315は、脈動性信号の経時変化に合わせて、脈拍周波数を順次検出する。
移動平均処理部316は、周波数算出部315で算出された複数の脈拍周波数に対して、移動平均処理を行う。本実施形態では、直近の連続する10個の脈拍周波数の値に対して平均を取る。移動平均処理部316により、連続する複数の脈拍周波数の間で生じている変化をなだらかにした周波数が得られる。
第一脈拍周波数検出部301は、上述した各機能部を備えるDSPとして構成される。第一脈拍周波数検出部301は、入力された脈動性信号の平均化された脈拍周波数を、クロックジェネレータ303に出力する。
クロックジェネレータ303は、移動平均処理部316による移動平均処理によって得られた周波数の信号が入力されて、この信号に同期した周波数のクロック信号を発振する。本実施形態に係るクロックジェネレータ303は、第一脈拍周波数検出部301から入力された脈拍周波数の値を128倍した周波数のクロック信号を発振する。これにより、クロックジェネレータ303は、1つの脈波の波形に128個のクロック数のクロック信号を発生させる。情報処理装置3は、このクロック信号により脈動性信号を正規化する。
分周器304は、所定の分周比Nでクロックジェネレータ303から発振されたクロック信号の周波数を分周して、分周した周波数を分周信号として出力する。本実施形態に係る分周器304は、第二実施形態に係る分周器24と同様に、分周比Nを128としている。
検体情報処理装置7は、上述の通り構成されており、検体情報検出ユニット101によって検出されて、情報処理装置3に入力された脈動性信号を、ゲイン切り替え部51を通じて、周波数特性補償部61とAD変換器32に入力する。周波数特性補償部61で処理された脈動性信号は、周波数補正処理部71及びAD変換器305を通じて、第一脈拍周波数検出部301に入力される。第一脈拍周波数検出部301は、移動平均処理部316により移動平均処理された脈拍周波数を、クロックジェネレータ303に出力する。クロックジェネレータ303は、クロック信号を、AD変換器32とフィードバックコムフィルタ34と分周器304に出力する。分周器304は、分周信号を、カウンタ25と信号係数部42に出力する。
図20に示すフローチャートを参照しながら、第一脈拍周波数検出部301による脈拍周波数の検出の動作と、情報処理装置3による正規化処理の動作との一例を説明する。
LPF311は、情報処理装置3に入力された脈動性信号に対して、ローパスフィルタ処理を行い、脈波情報の基本周波数部分からなる信号を出力する(ステップS41)。
微分処理部312は、ローパスフィルタ処理した信号を微分して脈動性信号の変化の傾きを得る(ステップS42)。
タイミング検出部313は、微分した信号の値が0となるタイミングを検出する(ステップS43)。
間隔取得部314は、検出された複数のタイミングのうち隣接するタイミングの間隔を取得する(ステップS44)。
周波数算出部315は、取得されたタイミングの間隔から、脈拍周波数を算出する(ステップS45)。
移動平均処理部316は、脈拍周波数に対して、移動平均処理を行う(ステップS46)。
分周器304は、所定の分周比でクロック信号の周波数を分周して、分周信号を出力する(ステップS48)。分周器304は、分周信号を、カウンタ25と信号計数部42に出力する。
以降の情報処理装置3による、分周信号、及びクロック信号を用いた処理は、情報処理装置2のステップS26〜ステップS33による処理と同様に行うことができる。
第三実施形態に係る情報処理装置3及び検体情報処理装置7によれば、前記第二実施形態で得られる効果に加えて、以下に記載の効果を奏する。
本実施形態に係る情報処理装置3は、第一脈拍周波数検出部301を備えることで、入力された脈動性信号の脈拍周波数を検出する。このとき、脈拍周波数は移動平均処理を受けていることから、入力される脈動性信号に変動が生じる状況においても、安定した脈波の周波数を得ることができる。さらに、情報処理装置3は、クロックジェネレータ303を備えることで、脈拍周波数に応じたクロック信号が出力される。これにより、心臓の拍動に同期したクロック信号を出力することができる。さらに、クロック信号によって脈動性信号を正規化することで、脈波の一波形毎に同数のクロック数を割り当てて、時間軸によらずに信号を取り扱うことが可能となる。
本発明の第四実施形態に係る脈拍周波数検出部302、及びクロックジェネレータ303を備える情報処理装置4、並びに検体情報処理装置8について、図21を参照して説明する。以下、第四実施形態の説明においては、第四実施形態を、本実施形態とも呼ぶ。本実施形態に係る情報処理装置4は、一部の構成を除いて上述の第二実施形態に係る情報処理装置2と同様に構成されており、情報処理装置2と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
情報処理装置4の信号処理部17は、図21に示すように、情報処理装置2が備える二値化処理部31、位相比較器21、LPF22、VCO23b、及びロック検出部41に替えて、AD変換器305、第二脈拍周波数検出部302、クロックジェネレータ303を備えている。第二脈拍周波数検出部302は、LPF321、周波数解析部322、ピーク検出部323、周波数取得部324、及び移動平均処理部325を有している。
AD変換器305は、周波数補正処理部71から入力された脈動性信号の信号強度の値をデジタルデータに変換して、第二脈拍周波数検出部302のLPF321に出力する。
LPF321は、第三実施形態に係るLPF321と同様に、入力される脈動性信号に対してLPF処理を施し、脈波情報の基本周波数部分からなる信号を得る。
周波数解析部322は、LPF321によってローパスフィルタ処理した脈動性信号に対して、周波数解析を施す。周波数解析部322により、脈動性信号は、周波数領域の脈波のスペクトルに変換される。周波数解析としては、例えば、FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ解析)、MEM(Maximum Entropy Method;最大エントロピー法)、もしくは自己相関解析、中でもAR(Auto-regressive;自己回帰法)を用いることができる。または、広義にはWavelet法を用いることができる。周波数解析は、所定の長さの時間の脈動性信号に対して、所定の間隔分の時間をずらして行う。
ピーク検出部323は、周波数解析部322で得られた脈波スペクトルから、スペクトル強度が最大のピークを検出する。上述したLPF321により、脈動性信号は脈波情報の基本周波数部分からなる信号となっているため、ピーク検出部323によって検出されるピークの周波数は、脈動性信号の脈拍周波数を表すことになる。ピーク検出部323は、周波数解析部322によって得られる1秒間隔の脈波スペクトルそれぞれについて、最大のピークを順次検出する。
周波数取得部324は、ピーク検出部323で検出された最大ピーク位置の周波数を読み込むことで、脈拍周波数を取得する。周波数取得部324による脈拍周波数の取得も、1秒間隔の脈波スペクトルから検出されたそれぞれのピークについて行われる。
移動平均処理部325は、周波数取得部324で取得された複数の脈拍周波数に対して、移動平均処理を行う。本実施形態では、直近の連続する10個の脈拍周波数の値に対して平均を取る。移動平均処理部325により、連続する複数の脈拍周波数の変化をなだらかにした周波数が、1秒間隔で得られる。
第二脈拍周波数検出部302は、上述した各機能部を備えるDSPとして構成される。第二脈拍周波数検出部302は、入力された脈動性信号の平均化された脈拍周波数を、クロックジェネレータ303に出力する。
クロックジェネレータ303は、移動平均処理部325による移動平均処理によって得られた周波数の信号が入力されて、第三実施形態に係るクロックジェネレータ303と同様に、この信号に同期した周波数のクロック信号を発振する。情報処理装置4は、このクロック信号により脈動性信号を正規化する。
検体情報処理装置8は、上述の通り構成されており、検体情報検出ユニット101によって検出されて、情報処理装置4に入力された脈動性信号を、ゲイン切り替え部51を通じて、周波数特性補償部61とAD変換器32に入力する。周波数特性補償部61で処理された脈動性信号は、周波数補正処理部71及びAD変換器305を通じて、第二脈拍周波数検出部302に入力される。第二脈拍周波数検出部302は、移動平均処理部325により移動平均処理された脈拍周波数を、クロックジェネレータ303に出力する。クロックジェネレータ303は、クロック信号を、AD変換器32とフィードバックコムフィルタ34と分周器304に出力する。分周器304は、分周信号を、カウンタ25と信号係数部42に出力する。
図22に示すフローチャートを参照しながら、第二脈拍周波数検出部302による脈拍周波数の検出の動作と、情報処理装置4による正規化処理の動作との一例を説明する。
LPF321は、情報処理装置4に入力された脈動性信号に対して、ローパスフィルタ処理を行い、脈波情報の基本周波数部分からなる信号を出力する(ステップS61)。
周波数解析部322は、ローパスフィルタ処理した信号に対して、周波数解析を行い、脈波のパワースペクトルを得る(ステップS62)。
ピーク検出部323は、脈波のパワースペクトルから、スペクトル強度が最大のピークを検出する(ステップS63)。
周波数取得部324は、検出された最大のピークから脈拍周波数を取得する(ステップS64)。
移動平均処理部325は、脈拍周波数に対して、移動平均処理を行う(ステップS65)。
分周器304は、所定の分周比でクロック信号の周波数を分周して、分周信号を出力する(ステップS67)。分周器304は、分周信号を、カウンタ25と信号計数部42に出力する。
以降の情報処理装置4による、分周信号、及びクロック信号を用いた処理は、情報処理装置2のステップS26〜ステップS33による処理と同様に行うことができる。
第四実施形態に係る情報処理装置4及び検体情報処理装置8によれば、前記第二実施形態で得られる効果に加えて、以下に記載の効果を奏する。
本実施形態に係る情報処理装置4は、第二脈拍周波数検出部302を備えることで、入力された脈動性信号の脈拍周波数を検出する。このとき、脈拍周波数は移動平均処理を受けていることから、入力される脈動性信号に変動が生じる状況においても、安定した脈波の周波数を得ることができる。さらに、情報処理装置4は、クロックジェネレータ303を備えることで、脈拍周波数に応じたクロック信号が出力される。これにより、心臓の拍動に同期したクロック信号を出力することができる。またさらに、クロック信号によって脈動性信号を正規化することで、脈波の一波形毎に同数のクロック数を割り当てて、時間軸によらずに信号を取り扱うことが可能となる。
[5−1.装置の構成について]
<情報処理装置について>
上記の実施形態では、情報処理装置1〜4としてスマートフォンを例示したが、情報処理装置1〜4はこれに限るものではない。例えば、タブレット型の端末(タブレットPC)、デスクトップパソコン、ノートパソコン等、またはその他の測定機器、表示機器にも適用できる。
上記の実施形態では、VCO23a、位相比較器21、平均化処理部36、微分処理部37、及び積分処理部38からの出力について、ロック検出部41、信号計数部42、及び波形表示部43を介して、表示器81に表示にする場合について説明した。VCO23a、位相比較器21、平均化処理部36、微分処理部37、及び積分処理部38からの信号の出力はこれに限定されず、情報処理装置1〜4の内部での信号処理に利用してもよく、または記録媒体に保存したり、もしくは無線又は有線を利用したりすることで、外部の情報処理装置に情報を送って信号処理に供してもよい。
上記の実施形態においては、情報処理装置1〜4に備えられるディスプレイの表示画面が表示器81として機能する場合について説明した。表示器81の構成はこれに限定されず、例えば、情報処理装置1〜4に備えられる緑色と赤色のLEDランプであって、これらの点灯によって、PLL回路11,12のロック状態を表示してもよい。または、表示器81は、情報処理装置1〜4に備えられる複数の7セグメントディスプレイにより構成され、これらの点灯によりクロック信号のカウント値を表示してもよい。また、波形表示部43からの出力を、液晶ディスプレイ、CRT、プリンタ、オシロスコープ、又はペンレコーダ等の外部の波形表示器に入力することで波形の表示を行ってもよい。
<信号処理部の構成について>
上記の実施形態においては、ゲイン切り替え部51、周波数特性補償部61、周波数補正処理部71、PLL回路11,12による処理をアナログ回路による処理について説明したが、デジタル回路、例えばDSPを含む回路とアナログ回路とを組み合わせたり、演算処理装置(CPU)やDSPを組み合わせたりして、このデジタル回路を含む回路により信号を処理する構成としてもよい。または、情報処理装置1〜4が備えるメモリ上に信号処理用のアプリケーションソフトが展開されてCPUにより実行されることで、ゲイン切り替え手段、周波数特性補償手段、周波数補正処理手段、PLLとして機能するようにしてもよい。
上記の実施形態においては、PLL回路11,12が2次系のPLLである場合について説明したが、PLL回路11,12はこれに限定されず、2次系以上の高次のループであればよい。これによりPLL回路11,12は、入力する脈動性信号の脈波の位相が突然にシフトした場合であっても、一定時間内に位相差ゼロでロックすることができる。
上記の実施形態においては、VCO23bの発振周波数が128Hzを中心として変動するよう設計されており、分周器24の分周比Nが128である場合について説明したが、クロック信号の単位時間あたりのクロック数及び分周比はこれに限定されず適宜変更してもよい。例えば、クロック数及び分周比を256、512、または1024としてもよい。また、分周器24は、VCO23bの発振周波数にあわせて分周比Nを変更できるプログラマブル分周器であってもよい。このとき、クロック数が多いほど、PLLの特性を決めるループゲインがその分低下することになるためにいわゆるロックレンジが小さくなる傾向にあるが、波形判定の精度が高くなる点からは好ましい。また、クロックが小さいほど、低周波でのVCOを安定に発振させるよう制御が必要となる傾向にあるが、ループゲインの低下がない点からは好ましい。
上記の実施形態においては、速度脈波の信号を二値化処理部31、AD変換器32、またはAD変換器305に出力する場合について説明したが、二値化処理部31、AD変換器32、またはAD変換器305に入力される信号は、容積脈波、速度脈波、または加速度脈波のいずれの脈波の信号でもよい。
上記の実施形態においては、平均化処理部36が、10個の波形分の信号強度の平均値を出力する場合について説明したが、平均値を算出する個数はこれに限定されず、適宜変更してよい。平均化する信号の数が多い場合には、信号の変化に対して緩やかに応答する特性を示す信号を得ることができる。これは、検体が運動をしている状態など、信号に対して変動が大きい場合に適している。平均化する信号の数が少ない場合には、信号の変化に対して追従しやすい特性を示す信号を得ることができる。これは、検体が安静にしている状態など、脈波の変化を観察したい場合に適している。または、平均化処理部36による平均化を行わずに、一つの波形分の信号の出力を行ってもよい。
上記の実施形態においては、第一メモリ33に記録された脈動性信号の信号強度を、フィードバックコムフィルタ34が読み出してフィルタ処理を行い、フィルタ処理後の信号強度のデータを第二メモリ35に記録する場合について説明した。さらに、第二メモリ35に記録された信号強度を、平均化処理部36、微分処理部37、及び積分処理部38がそれぞれ読み出して処理する場合について説明した。脈動性信号の処理の順序及び内容はこれに限定されず、適宜変更して行ってよい。例えば、フィードバックコムフィルタ34によりフィルタ処理を行わずに、第一メモリ33に記録された脈動性信号の信号強度を、平均化処理部36、微分処理部37、及び積分処理部38がそれぞれ読み出して処理してもよい。また、平均化処理部36によって算出された平均値の信号強度について、微分処理部37、及び積分処理部38がそれぞれ処理してもよい。
上記の実施形態においては、波形表示部43が一周期分の波形を表示するデータを生成し、表示器81が脈動性信号を一周期の波形として表示場合について説明したが、一周期の一脈波だけではなく所望の数の脈波の波形を表示する様に構成してもよい。この場合、波形表示部43が複数の波形番号における信号強度について、波形の数に応じた128の整数倍のクロック番号を横軸にとることで、複数の周期分の波形を二次元に表示するデータを生成すればよい。
上記の実施形態においては、ロック検出部41は、位相比較器21から脈動性信号と帰還信号が入力されて、両信号の位相比較を行う場合について説明したが、脈動性信号と帰還信号との位相の同期の判定と、PLL回路11,12のロックの検出はこれに限定されない。ロック検出部41は、位相比較器21から位相差信号が入力されて、この入力された位相差信号の大きさを所定の設定値と比較して、PLL回路11,12が脈動性信号にロックしているか否かを判定してもよい。このとき、入力された位相差信号の大きさと所定の設定値とを比較して、入力された位相差信号の大きさが所定の設定値よりも小さいときに、ロックしていると判定する。また、入力された位相差信号の大きさが所定の設定値以上のときに、ロックしていないと判定する。また、ロック状態の表示は、一定時間の連続した状態でロックしている状態またはロックが外れている状態が継続した場合に、それぞれロック状態の変化を検出したとして表示器81に表示するようにしてもよい。
情報処理装置2は、平均値より大きく外れた脈動性信号を表示する手段を有していてもよい。稀に生じる不整脈のように生体信号として意味のある外乱は、その部分だけを表示することが求められる場合がある。情報処理装置2に入力される脈動性信号と、平均化処理部36により得られた信号強度の平均値とを比較して、平均値より一定以上離れた波形を示す脈動性信号は、通常の脈波の波形とは別に表示器81に表示することが好ましい。
上記の実施形態では、検体情報検出ユニット101が脈動性信号を検出して、この脈動性信号が情報処理装置1〜4に入力されることで、情報処理装置1〜4が脈動性信号を取得する場合について説明した。脈動性信号の取得は、情報処理装置1〜4の内部または外部の記憶手段に保存された脈動性信号データを読み出すことで取得してもよい。
5,6,7,8 検体情報処理装置
11,12 PLL回路
13 信号記録部
14,15 信号処理部
21 位相比較器
22 LPF(ローパスフィルタ)
23a,23b VCO(電圧制御発振器)
24 分周器
25 カウンタ
31 二値化処理部
32 AD変換器
33 第一メモリ
34 フィードバックコムフィルタ
35 第二メモリ
36 平均化処理部
37 微分処理部
38 積分処理部
41 ロック検出部
42 信号計数部
43 波形表示部
81 表示器
301,302 脈拍周波数検出部
303 クロックジェネレータ
Claims (8)
- 検体における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を検出する検体情報検出ユニットと、
該脈動性信号を正規化する信号処理部とを備え、
該信号処理部は、該脈動性信号が入力されるPLL回路を備え、
該PLL回路は、
該脈動性信号と帰還信号との位相を比較して、位相差に対応する位相差信号を出力する位相比較器と、
該位相差信号が入力されて、所定のカットオフ周波数より大きい周波数成分を除去した電圧制御信号を出力するローパスフィルタと、
該電圧制御信号の電圧に対応する発振周波数を有するクロック信号を出力する電圧制御発振器と、
該クロック信号が入力されて、所定の分周比で該クロック信号を分周した分周信号を出力する分周器とを有し、
上記の分周信号が該帰還信号として該位相比較器に入力され、
該脈動性信号と該帰還信号との位相が同期するように該電圧制御発振器の発振周波数が制御され、
該クロック信号により該脈動性信号を正規化し、
該信号処理部は、更に、
該脈動性信号の信号強度をデジタルデータとして取得するAD変換器と、該AD変換器で得られた該データを蓄積するメモリとを有する信号記録部と、
該分周器から該分周信号が入力されて、該分周信号をカウントして脈波の順番を示す波形番号を出力するカウンタと、
上記のメモリに記録した信号強度を読み出してフィルタ処理するフィードバックコムフィルタとを備え、
該AD変換器は、該電圧制御発振器から該クロック信号が入力されたタイミングで該信号強度を取得して該メモリに出力し、
該メモリは、該カウンタから入力される該波形番号を受けて、該脈動性信号を該波形番号と上記のクロック信号の入力されたタイミングに応じたクロック番号とに対応付けた信号強度として記録し、
該フィードバックコムフィルタは、該電圧制御発振器から該クロック信号が入力されて、該脈動性信号の一周期あたりの総クロック数の整数倍の周波数成分を通過させる
ことを特徴とする検体情報処理装置。 - 該信号処理部は、上記のメモリに記録した複数の波形番号の信号強度を読み出して、同じクロック番号の信号強度を加算して波形番号ごとに平均値を出力する平均化処理部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の検体情報処理装置。 - 該信号処理部は、上記のPLL回路に入力される脈動性信号と該帰還信号との位相が同期しているかを判定して、該PLL回路がロックしているか否かを検出するロック検出部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の検体情報処理装置。 - 該信号処理部は、該分周信号が入力されて、該分周信号の単位時間当たりのパルスをカウントする信号計数部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の検体情報処理装置。 - 該脈動性信号に関連する情報を提示する表示器をさらに備え、
該ロック検出部が、ロックしているか否かを該表示器に表示し、
該信号計数部が、単位時間当たりの該分周信号のカウント値を該表示器に表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の検体情報処理装置。 - 該信号処理部は、上記の平均化処理部により処理された信号が入力されて、該クロック番号と該信号強度の平均値との関係を表す波形を生成して、波形番号ごとに複数の脈波を平均化した一周期の波形を該表示器に表示する波形表示部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の検体情報処理装置。 - 該信号処理部は、上記のメモリに記録した信号強度を読み出して数値微分する微分処理部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の検体情報処理装置。 - 該信号処理部は、上記のメモリに記録した信号強度を読み出して数値積分する積分処理部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の検体情報処理装置。
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