開示の波形補間装置、方法及びプログラムでは、生体信号の間隔の時系列データに含まれるノイズ区間を検知すると共に、時系列データに含まれる基本成分であり短周期で変化する波形の短周期成分と基本成分より長周期で変化する波形の長周期成分との周期構造の位相及び振幅を推定する。また、検知されたノイズ区間のデータ列を除去し、ノイズ区間の前後のデータ列の位相を乱さないように長周期成分の変調を加えたデータ列の補間パターンをノイズ区間に挿入することで、ノイズ区間のデータ列を基準点からの周期構造単位で置換する。
時系列データが例えば心拍間隔データ列であれば、基本成分の波形の切り出し区間の基準点として吸気動作に伴う血圧変化と血圧変化のトレンドに着目し、ノイズ区間のデータ列を除去し、ノイズ区間に例えばノイズによって断続した前後のデータ列の位相を乱さないデータ列の補間パターンを挿入することで、短期間の補間で生体変動の復元性を高め、スペクトル構造の復元性を高めることができる。心拍動と呼吸動作ともに血圧変化に適応的に協調動作をすることで、心拍間隔を時系列化した心拍間隔データ列には呼吸動作にともなって生成される基本成分である短周期成分と、呼吸変動を含めた平均血圧調整の結果生じる基本成分より長周期で変化する波形の長周期成分とが含まれる。
生体信号の波形を補間する場合、一定のパターンの位相を考慮して複数個のデータ列を挿入する手法や、周期間隔を調整して長周期の変化を加えて挿入するなどの手法が考えられる。しかし、長周期の連続性を考慮したパターン補間方法であっても、ノイズ区間の切り出し方によっては、スペクトル構造に影響が生じる。例えばノイズ区間として断続した心拍ゆらぎ信号列において、補間によるスペクトル構造への影響を避けるためには、有効データサイズを長大化することが考えられるが、有効データサイズを長大化すると、状態変化への追従性が劣化するため、被評価者の状態判定に支障をきたす可能性がある。
そこで、ノイズを含む時系列データに基づき生体状態そのものの変化に追従するためには、補間手法は、より少ないデータ範囲でノイズを除去して補間することで、スペクトル構造を正しく分析可能とすることが好ましい。
本発明者らは、できるだけ短期間の補間を行いスペクトル構造を変化させないために、心拍変動のメカニズムに基づいた区間切り出しにより、心拍間隔を時系列化した心拍間隔信号の基本成分の波形より長周期の位相を乱さない補間パターンに長周期成分の変調を加えて補間する手法を見出した。つまり、連続する波形で長周期の変化を伴う波形の中にノイズの影響を受けた波形があれば、ノイズの影響を受けた波形を長周期内の変化に応じて補正した波形で補間する。
例えば、基準点として吸気動作における心拍間隔の短縮開始点、即ち、心拍起点に着目し、非定常信号であるノイズが混入しているノイズ区間を揺らぎの基本周期毎に確定する。基本周期は、呼吸性の比較的短周期を示し、以下の説明では「短周期」とも言う。そして、基本周期(即ち、短周期)の基線成分に長周期成分を重畳したデータ列をノイズ区間に挿入することで、できるだけ短期間の補間で、補間による不連続性と疑似周期構造の発生を防ぐ。長周期は、血圧性の比較的長周期を示し、言うまでもなく、短周期と比較して長い周期を言う。
心拍変動は、圧受容体からの刺激で吸気に伴う血圧増加では反射的に副交感神経の活動が遮断され心拍周期が短縮されるため、反射的に変調されることが知られている。従って、心拍変動は、吸気に伴う血圧増加では反射的に副交感神経の活動が遮断され心拍周期が短縮されるため、吸気動作の方が特徴点としての安定性が高い。逆に、副交感神経の活動が高い呼気動作時には、他の制御要因の影響が入り易いことが予想される。
また、呼吸変動の平均値の変化に血圧制御の結果が反映されると考えられることから、呼吸変動を除いた平均値の変化には、血圧に依存する変化成分が含まれると考えられる。本発明者らは、この血圧に依存する変化を揺らぎの短周期の平均値の変化として近似することで、呼吸性基本変動に血圧性変動を合成した補間データ列によって、スペクトル構造への影響が緩和または解消できることを見出した。呼吸性基本変動(または、リズム)とは、呼吸に依存する基本生体変動(または、リズム)を言い、血圧性変動(または、リズム)とは、血圧調整に依存する生体変動(または、リズム)を言う。
先ず、被評価者の状態推定に用いることのできる脈波の変化について、図1と共に説明する。
図1は、車両を運転中の被評価者の脈波データの一例を解析手順に従って示す模式図である。図1において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。以下の説明では、時間軸上、左側から右側へ時間が経過する。図1中、(a)は脈波センサ、心拍センサなどのセンサで検知された被評価者の脈波を示す脈波信号、(b)は(a)の脈波信号を微分した微分信号、(c)は(b)の微分信号の間隔を時系列に配列した心拍間隔(PPI:Pulse-to-Pulse Interval)信号、(d)は補間後のPPI信号を示す。本明細書では、心拍動を基準点とした場合の基準点の間隔をPPIと呼ぶ。
なお、後述する説明において、PPI信号の代わりに、心拍間隔に依存するRRI(R-R Interval)信号、AAI(A-A Interval)信号などの他の信号を用いても良いことは言うまでもない。
図1中、一点鎖線で囲まれた領域において、(a)の脈波信号には非定常の生体変動(即ち、ノイズ)が発生しており、(b)の微分信号及び(c)のPPI信号には波形に乱れが発生している。このため、一点鎖線で囲まれた領域において、(d)の補間後のPPI信号では、ノイズ区間が補間される。しかし、従来技術の一例のように、ノイズ区間をPPI信号の平均値で補間したのでは、PPI信号の連続性が失われてしまう。なお、図1中、(a)に破線で示す脈波信号部分、(b)に破線で示す微分信号部分及び(c)に破線で示すPPI信号部分は、夫々ノイズが発生しない場合の波形を示す。また、図1中、(d)に破線で示すPPI信号部分は補間前の波形を示し、◆印で示すデータサンプルを繋ぐ太い実線はPPI信号の平均値を用いた補間部分を示す。
図2は、PPI信号のノイズ区間を短周期データ列で補間する比較例を説明する図である。図2において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。図2中、(a)はノイズ区間を含むPPI信号、(b)は補間後のPPI信号、(c)は補間後の擬似スペクトル成分を示す。
図2中、(a)のPPI信号のノイズ区間では二点鎖線で示すノイズが発生している。そこで、図2中、(b)に示すように、ノイズを含む区間中、ノイズ区間を除く区間における短周期データ列を複製して、二点鎖線で示すようにノイズ区間に合わせて拡縮して補間することで、PPI信号の連続性を保つことができる。この例では、ノイズ区間の直前の短周期データ列を3周期分複製する。この結果、図2中、(c)に示すように、補間されたノイズ区間では、心拍変動が無い。
図3は、図2中(a)の補間前のPPI信号のノイズ区間を含む周波数解析結果(または、スペクトル解析結果)の一例を示す図であり、図4は、図2中(b)の補間後のPPI信号の補間区間(即ち、ノイズ区間)を含む周波数解析結果(または、スペクトル解析結果)の一例を示す図である。図3及び図4において、縦軸はPPI信号を周波数解析(または、スペクトル解析)して、ある時間における周波数に対するパワースペクトル密度(PSD:Power Spectral Density)及び自律神経のトータルパワー(TP:Total Power)を含む、心拍揺らぎの周波数解析結果を任意単位で示し、横軸は周波数fを任意単位で示す。PPI信号の周波数解析自体は周知の周波数解析方法で行え、周波数解析方法は特に限定されない。TPは、PSD中の低周波数(LF:Low Frequency)成分と高周波数(HF:High Frequency)成分のパワーの和である。PSD中、LF成分には交感神経と副交感神経の影響が現れ、HF成分には副交感神経の影響が現れることが報告されている。LF成分には血圧変動成分(MWSA:Mayer Wave related Sinus Arrhythmia)が含まれ、HF成分には呼吸性洞性不整脈(RSA:Respiratory Sinus Arrhythmia)が含まれる。ここで、RSAは、呼吸変動成分とも呼ばれ、解析区間の呼吸周期構造を表す。MWSAは、血圧変動成分とも呼ばれ、血圧調整の結果生じる周期構造を表す。血圧変動成分と呼吸変動成分は、共に圧受容体からの刺激で反射的(または、自動的)に変調されることが知られている。また、MWSAの調整が、血流量の微妙な制御の結果で血圧全体で例えば、130mmHg→135mmHgについて行われるのに対して、RSAは、一呼吸毎に例えば10mHg〜20mHgの変化をもたらすことが分かっている。図3及び図4において、破線で示す波形はノイズが発生しない場合の理論値を示し、図3の実線で示す波形がノイズを含むPPI信号の解析により得られるPSD、図4の実線で示す波形が補間後のPPI信号の解析により得られるPSDを示す。
例えば、図3においてLF成分のMWSAの周波数MFは0.1Hz±0.05Hzであり、HF成分のRSAの周波数RFは呼吸重心周波数GF(Hz)±0.05Hzである。一方、図4ではLF成分に新たなピーク構造δMF,δf2が発生し、HF成分のピーク構造に新たな変化(または、シフト)δf1,δRFが発生する。
心拍変動には、中枢性の生体変動に基づき、血圧変動成分と呼吸変動成分で形成されたスペクトルを基本とする構造がある。このような構造の自律神経活動は、例えば5分程度の安静状態の心拍データ(または、脈波データ)から推定するのが一般的である。
RSAは進化の過程(即ち、鰓呼吸から肺呼吸)で獲得してきたもので、呼吸性変動は、吸気タイミングで心拍周期を短縮し効率を高める作用であるといわれている。ともに中枢により制御されており、吸気活動の発生タイミングは心拍動に同期しやすい特徴がある。つまり、心拍動の基準点と呼吸性変動の基準点は一致すると考えられる。また、体内恒常性の観点から、血圧調整と呼吸変動は同期連動することが最も効率的であると考えられる。
このため、本発明者らは、心拍揺らぎの2峰性のスペクトル構造を推定する場合、呼吸の起点となっているであろう心拍動に変動の位相を合わせることを見出した。また、解析上は、非同期であるMWSAとRSAが、共に心拍動に伴う血圧変動のうねり成分に引きこまれる可能性が高いと考えられることから、本発明者らは、心拍変動と吸気変動及び血圧変動とは共に同期性であるとして還元することが原理的には妥当であると考えた。なお、突発的な変化によって生じる周期の乱れによって、中枢性の基本変動パターンが大きく変わることはないと考えられることから、この周期構造は保存すると考えた。
図5は、一実施例において、長周期の変動を考慮して短周期構造を補間したPPI信号の一例を示す図である。図5において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。図5中、LPEは血圧性の比較的長周期の変動を含む長周期推定区間を示し、FFEは呼吸性の比較的短周期の変動を含む短周期推定区間を示す。この例では、心拍の呼吸起点となる切り出し区間として、短期的な非定常信号の前後の区間を拡大して、短周期データの基準点間に、二点鎖線で示すように長周期の変動を推定したデータ列を挿入する。
図6は、図5の補間後のPPI信号のノイズ区間を含む周波数解析結果(または、スペクトル解析結果)の一例を示す図である。図6において、縦軸はPPI信号を周波数解析(または、スペクトル解析)して、ある時間における周波数に対するパワースペクトル密度PSD及び自律神経のトータルパワー(TP)を含む、心拍揺らぎの周波数解析結果を任意単位で示し、横軸は周波数fを任意単位で示す。図6において、破線で示す波形はノイズが発生しない場合の理論値を示し、実線で示す波形は補間後のPPI信号の解析により得られるPSDを示す。図6からも確認できるように、LF成分のMWSAの周波数MF及びHF成分のRSAの周波数RFに大きな変化は生じない。また、図6ではLF成分のピーク構造f2及びHF成分のピーク構造f1に大きな変化は生じない。つまり、図4に示す例の場合のように、LF成分に新たなピーク構造が発生したり、HF成分のピーク構造に新たな変化(または、シフト)が発生することはない。
このように、揺らぎの短周期データに、長周期の変動成分を推定して、長周期の変動成分毎に調整したデータ列を挿入することで、解析区間のデータ列を復元し、基本スペクトル構造の特異な変化を抑制することができる。その結果、高周波成分(HF)及び呼吸性成分(RSA,RF)と低周波ピーク成分(MWSA,MF)が維持され、スペクトル構造からの状態遷移の特異なシフトを抑制することができる。また、短期間の解析区間(即ち、短期間の補間)であっても、LF/HFまたはTP(LF+HF)などの自律神経指標の数値劣化を抑制できる。
次に、心拍変動から呼吸変動(または、リズム)の位相を推定する方法の一例を、図7及び図8と共に説明する。
図7は、短周期データ列の取得の一例を説明する図である。図7において、縦軸はPPI信号の分散量を任意単位で示し、横軸はPPI信号の移動平均数を示す。
PPI信号の変動成分を、PPIの移動平均、または、PPIとPPIの移動平均との差分値から分散量として定義し、3PPI周期〜11PPI周期程度までの分散量の最小平均数を用いて短周期データ列を求めることができる。図7中、4PPIは4PPI周期に同期した例、5PPIは5PPI周期に同期した例、7PPI(3PPIと4PPI)周期に同期した例を示す。
図8は、短周期構造の抽出の一例を説明する図である。図8において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。この例では、例えば図8中(a)に示す3PPI周期〜6PPI周期の例から分散量が最小である4PPI周期の例を選択し、図8中(b)に一例として示す3PPIの移動平均及び4PPIの移動平均のうち、4PPIの移動平均の図8中(c)に破線で示す心拍間隔の短縮側のゼロクロス点を吸気時の位相ゼロ(0)と定義して短周期構造を抽出する。図8中、(c)はPPI−(4PPIの移動平均)を示す。これにより、時系列データであるPPI信号から、短周期データと呼吸起点心拍(位相ゼロ)が取得され、短周期構造を抽出することができる。
PPIの移動平均ではなく、短周期単位の移動平均を求め、上記と同様に分散量が最小である周期を選択することで、長周期データ列を求めると共に、PPIの短縮側のゼロクロス点を吸気時の位相ゼロ(0)と定義して長周期構造を抽出することもできる。
次に、心拍変動から血圧変動(または、リズム)の位相を推定する方法の一例を、図9及び図10と共に説明する。
図9は、長周期の変動を推定したデータ列を挿入する方法の一例を説明する図である。図9において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。
上記の分散量の変化を時系列データとして、例えば10±2秒の範囲で平均PPIの倍数(この例では、4PPIの移動平均)による移動平均(3〜4〜5)・(4PPIデータ列)を求め、4PPIの移動平均との差から、次式で示すように、短周期データ列の短縮点を基準とする長周期変動を推定する。
長周期変動=(4PPIの移動平均のPPIデータ列)− [(3〜4〜5)×(4PPIデータ列)]
上記の式中、右辺の第1項の「4PPIの移動平均のPPIデータ列」は、呼吸性変動の影響が最も少ないPPIデータ列、即ち、血圧性変動に相当する。また、上記の式中、右辺の第2項の「(3〜4〜5)×(4PPI)」は、血圧性変動の影響が最も少ないデータ列に相当する。第1項と第2項の差分は、血圧変動振幅に相当し、血圧変動振幅の特性(以下、「振幅特性」とも言う)から血圧変動と位相の関係(以下、「位相関係」とも言う)を推定することができる。
図9中、(a)は時系列データであるPPI信号(以下、「PPI時系列データ」とも言う)を実線、4PPIの移動平均、即ち、短周期を矢印の区間で示し、(b)は血圧性変動に相当するPPI時系列データの長周期構造を実線で示す。図9中、(a)に示す細い実線はPPI時系列データの短周期構造、細い実線で示す楕円はPPI時系列データのピークとゼロクロスの点、破線は4PPIの移動平均、黒塗りの楕円は4PPIの移動平均に対する吸気起点を示す。図9中、(b)に実線で示す楕円は、血圧変動(及び吸気位相ゼロ)の位相が破線で示すゼロ(0)と定義される基準点の位置を示す。
図10は、長周期変動データ列の位相に対して、短周期データ列の基線に対するオフセットを設定する方法の一例を説明する図である。図10において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。また、図10中、黒塗りの楕円は、血圧変動(及び吸気位相ゼロ)の位相が破線で示すゼロ(0)と定義される基準点の位置を示し、△印は長周期変動の基準点を示す。
図10の長周期変動データ列を、短周期データ列の短周期(または、短周期構造)の単位に分割し、血圧変動に相当する長周期成分の振幅と短周期データ列の基線成分との差に基づいた基準点のオフセットOFSを、短周期データ列の基線成分に重畳(または、合成)しても良い。この場合、心拍起点が時系列データの心拍起点と一致する、ノイズ区間内の短周期データ列を置換するべき補間パターンを生成することができる。このように長周期の位相を乱さないようオフセット量を重畳した短周期データ列の置換を行うことで、より少ない補間データの算出と挿入でPPI時系列データの連続性と周期性を維持した復元を可能とする。
図11は、短周期及び長周期変動の補間の一例を説明する図である。図11において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。
先ず、図11中(a)において実線の楕円で示す、初期解析区間の開始と終了を長周期構造を単位として区切り、ノイズ区間があれば、ノイズ区間のデータ列を除去して、二点鎖線で示すように、例えば直前の短周期信号のデータ列の複製で補間しても良い。この場合、PPI時系列データの連続性を確保することができる。つまり、この場合は短周期信号のデータ列が、短周期変動を推定した区間の前後に挿入される。
一方、図11中(b)に示すように、その後ノイズ区間が想定している長周期範囲(例えば、3短周期分)を超えた場合は、ノイズ区間のデータ列を除去して、二点鎖線で示すように、直前の長周期信号のデータ列の複製で補間しても良い。この場合、PPI時系列データの連続性を確保して補間後のPPI時系列データの周波数解析を継続できる。
図12は、一実施例における波形補間装置の構成の一例を示すブロック図である。図12に示す波形補間装置50は、波形評価部51、波形補間処理部52及び周波数構造解析部53を有する。波形評価部51は、PPI時系列データに含まれるノイズ区間を検知すると共に、PPI時系列データに含まれる基本成分であり短周期で変化する波形の短周期成分と基本成分より長周期で変化する波形の長周期成分との周期構造の位相及び振幅を推定する。波形補間処理部52は、ノイズ区間のデータ列を除去し、ノイズ区間の前後のデータ列の位相を乱さないように長周期成分の変調を加えたデータ列の補間パターンをノイズ区間に挿入することで、ノイズ区間を基準点からの周期構造単位で置換する。波形評価部51、波形補間処理部52及び周波数構造解析部53の処理は、例えば後述するプロセッサにより実行しても良い。
波形評価部51は、波形評価手段の一例であり、例えば脈拍センサなどのセンサが出力する被評価者の心拍波形を表す脈波データ中に発生したノイズを検知する原信号品質分析部51−1及び脈波データ中の周期構造の位相と振幅を推定する脈拍間隔分析部51−2を有する。原信号品質分析部51−1は、脈波データ中の突発ノイズ及び定常ノイズを判定する脈波分析部511、脈波間隔(PPI)を計測して振幅及び間隔が正常な正常脈拍と振幅または間隔が正常ではない不整脈を判定する脈波間隔計測部512及び正常脈拍及び異常脈拍の同定を行うノイズ判定部513を有する。脈拍間隔分析部51−2は、正常脈拍データ列から例えば移動平均法により短周期がゼロ(0)の位相(または、基準点)を推定する短周期分析部514及び正常脈拍データ列から例えば移動平均法により長周期がゼロ(0)の位相(または、基準点)を推定する長周期分析部515を有する。
波形補間処理部52は、波形補間処理手段の一例であり、ノイズを含む信号区間を基準点からの周期構造単位で置換するノイズ補間処理部52−1を有する。ノイズ補間処理部52−1は、ノイズ区間の確定、データの置換及び置換率から補間の限界判定を行う補間処理部521を有する。データ置換は、心拍1拍分のデータ置換であれば、例えば直前の短周期データ列のデータで置換しても良い。データ置換は、心拍2拍分以上のデータ置換であれば、例えば直前の短周期データ列のデータに長周期の変動成分をオフセットした短周期データ列で置換、即ち、所定の基線オフセットを重畳して置換しても良い。データ置換は、ノイズの発生による例えば心拍3〜4拍分の1短周期相当の短周期データ列の欠落の場合、前後の短周期構造単位の短周期データ列で置換、即ち、長周期内の短周期の心拍起点間のデータ列で置換しても良い。データ置換は、ノイズの発生による例えば2短周期相当以上の短周期データ列の欠落の場合、欠落以前の長周期構造単位の短周期データ列で置換しても良い。補間の限界判定は、ノイズの発生により例えば1長周期以上の短周期データ列の欠落が発生した場合に、品質保証の限界であることを判定するが、品質保証の限界であると判定されても波形補間処理を停止する必要はない。
周波数構造解析部53は、周波数構造体解析手段の一例であり、脈拍を分析する脈拍分析部53−1を有する。脈拍分析部53−1は、補間精度保証の判定及びスペクトル構造の解析を行う揺らぎ解析部531を有する。
次に、上記実施例の波形補間を用いた被評価者の状態判定処理の一例を、図13〜図16と共に説明する。図13〜図16に示す処理は、例えばコンピュータの一例であるプロセッサにより実行可能であり、処理で用いられるパラメータなどのデータ、演算の中間結果などの各種データは、プロセッサによりアクセス可能な記憶部に格納しても良い。プロセッサの一例については、図24と共に後述する。
図13は、本実施例における波形補間を用いた被評価者の状態判定処理の一例を説明するフローチャートである。図13において、ステップS1では、プロセッサが例えば脈拍センサなどのセンサが出力する被評価者の心拍波形を表すデータ(例えば、脈波データ)に基づいてPPI時系列データを生成し、生成したPPI時系列データで記憶部に格納されたPPI時系列データを更新する。例えば、脈拍センサが出力する脈波信号の微分信号の間隔を時系列に配列したPPI時系列データが生成される。ステップS2では、プロセッサがPPI時系列データの波形を評価する。波形の評価には、例えば予め決められた時間内での波形の振幅の著しい変化、波形の周期の著しい変化などの一時的な特徴量の変化が含まれる。ステップS3では、プロセッサが波形の評価の結果、特徴量の一時的な変化がノイズであるか否かを判定する。ステップS3の判定結果がYESであると、処理はステップS4の波形補間処理へ進み、判定結果がNOであると処理は後述するステップS7の周期構造解析処理へ進む。
図14は、図13のステップS2,S3が実行する波形評価処理に含まれる原信号品質分析処理の一例を説明するフローチャートである。図14において、ステップS21では、プロセッサが突発的ノイズの判定を開始し、ステップS22では、プロセッサが脈波データ列を取得する。ステップS23では、プロセッサが脈波振幅を脈波振幅の最大値(max)及び最小値(min)から求める。ステップS24では、プロセッサが取得した脈波振幅に基づいて脈波振幅を確定する。ステップS25では、プロセッサが確定した脈波振幅が脈波振幅の平均値±50%の値以上であるか否かを判定する。ステップS25の判定結果がYESであると、ステップS26では、プロセッサが巨大歪みなどの突発ノイズの発生を判定する。ステップS25の判定結果がNO、或いは、ステップS26の後、処理はステップS27へ進む。
ステップS27では、プロセッサが定常ノイズ(または、脈波変形率)の判定を開始する。ステップS28では、プロセッサが脈波データ列を微分して微分データ列を取得する。ステップS29では、プロセッサが微分データ列の二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)を計算する。ステップS30では、プロセッサが、RMSがRMSの平均±100%の値以上であるか否かを判定する歪みチェックを行う。ステップS30の判定結果がYESであると、ステップS31では、プロセッサが波形歪みなどの定常ノイズの発生を判定する。ステップS30の判定結果がNO、或いは、ステップS31の後、処理はステップS32へ進む。
ステップS32では、プロセッサが不整脈の判定を開始する。ステップS33では、プロセッサが微分データ列から微分値の最大値を探索し、ステップS34では、プロセッサが探索した微分値の最大値を確定する。ステップS35では、プロセッサが確定した微分地の最大値に基づいて脈拍間隔を確定し、ステップS36では、脈拍間隔が脈拍間隔±30%の値以上であるか否かを判定する。ステップS36の判定結果がYESであると、ステップS37では、プロセッサが脈拍間隔異常の発生を判定する。ステップS36の判定結果がNO、或いは、ステップS37の後、ステップS38では、プロセッサが脈拍振幅、脈拍間隔、異常判定結果などを原信号品質分析処理の結果として出力し、処理は図13のステップS2へ戻る。
図15は、図13のステップS2が実行する波形評価処理に含まれる脈拍間隔分析処理の一例を説明するフローチャートである。図15において、ステップS421では、プロセッサが図13のステップS1で更新されたデータに対する短周期及び位相判定処理を開始し、ステップS422では、プロセッサが脈波間隔、即ち、PPI時系列データの移動平均を算出する。ステップS423では、プロセッサが図7及び図8と共に説明したように、PPI時系列データの変動成分を、PPI時系列データの移動平均、または、PPI時系列データとPPI時系列データの移動平均との差分値から分散量として定義して、分散量を判定する。この時、移動平均による時間遅延を考慮して処理を行うステップS424では、プロセッサが例えば3PPI周期〜11PPI周期程度までの分散量の最小平均数であるか否かを判定し、判定結果がNOであると、処理はステップS421へ戻る。
脈波間隔変動の基本周期(即ち、短周期)で平均すると、脈波の変化は最小になる。そこで、ステップS422〜S424では、移動平均の個数を変えた時の値s3,s4,s5,s6,...が最小となる組み合わせ、例えば移動平均値s3を下記の移動平均値から探索して選択する。
s3=(PPI(n−2)+PPI(n−1)+PPI(n))/3,
s4=(PPI(n−3)+PPI(n−2)+PPI(n−1)+PPI(n))/4,
s5=(PPI(n−4)+PPI(n−3)+PPI(n−2)+PPI(n−1)+PPI(n))/5,
s6=(PPI(n−5)+PPI(n−4)+PPI(n−3)+PPI(n−2)+PPI(n−1)+PPI(n))/6,
...
一方、ステップS424の判定結果がYESであると、ステップS425では、プロセッサが分散量の最小平均数を用いて短周期である短周期データ列を求めると共に、PPI時系列データの短縮側のゼロクロス点近傍の点を吸気時の位相ゼロ(0)と定義して短周期構造を抽出することで、短周期と0位相心拍が同定される。
PPI時系列データとPPI時系列データの移動平均との差分値は、各PPI時系列データの大小関係を反映している。そこで、差分値が負の値に変化した点は、呼吸開始により脈波間隔が短縮した基準となる呼吸と同期した心拍であると判定しても良い。そこで、ステップS425では、例えばs3が選択された場合、PPI(n)*=PPI(n)−s3(n)に基づいてPPI時系列データから移動平均値s3を減ずることで短周期波形を求めることができる。従って、短周期波形が負となったPPI*データを位相ゼロと定義して短周期波形の属性データとして用いることができる。このPPI時系列データの位相ゼロの点は、吸気に伴い発生した心拍と高い相関性を有するため、心拍変動の基準として用いることができる。
ステップS425の後、ステップS426では、プロセッサが短周期単位の移動平均を算出し、ステップS427では、プロセッサが図7及び図8と共に説明したように、PPI時系列データの変動成分を、PPI時系列データの移動平均、または、PPI時系列データとPPI時系列データの移動平均との差分値から分散量として定義して、分散量を判定する。ステップS428では、プロセッサが例えば11PPI周期〜25PPI周期程度までの分散量の最小平均数であるか否かを判定し、判定結果がNOであると、処理はステップS426へ戻る。
ステップS426〜S428では、移動平均の個数を短周期の逓倍で変えた時の、加算範囲が例えば10秒前後の組み合わせ(I3,I4,I5,...)の値が最小となる、例えば組み合わせI4を下記の組み合わせの値から探索して選択する。
I3=(PPI(n−9)+...+PPI(n−1)+PPI(n)/9,
I4=(PPI(n−12)+...+PPI(n−2)+PPI(n−1)+PPI(n)/12,
I5=(PPI(n−15)+...+PPI(n−3)+PPI(n−2)+PPI(n−1)+PPI(n)/15,
...
一方、ステップS428の判定結果がYESであると、ステップS429では、プロセッサが分散量の最小平均数を用いて長周期である長周期データ列を求めると共に、PPI時系列データの短縮側のゼロクロス点を吸気時の位相ゼロ(0)と定義して長周期構造を抽出することで、長周期と0位相心拍が同定され、処理は図13のステップS2へ戻る。
長周期成分は、血圧変動を反映する周期構造を有するため、呼吸動作による血圧変動の影響を受ける。連続的な同期は保証されないが、被評価者の安静状態では、血圧変動は呼吸動作に連動するため、長周期成分は短周期の逓倍であると仮定することができる。つまり、長周期成分は、単純に呼吸周期で分割した周期構造を有すると仮定する。そこで、ステップS429では、例えば組み合わせI4が選択された場合、PPI(n)**=PPI(n)−I4(n)に基づいてPPI時系列データから移動平均値I4を減ずることで長周期波形の振幅と位相を推定する。この時、短周期波形の0位相のPPI*値が長周期上で正から負の値となるPPI**値を長周期波形の0位相と定義し、0位相間の区間での脈波振幅の最大値及び最小値から脈波振幅を求める。
なお、ステップS429において、図10と共に説明したように、長周期変動データ列の位相に対して、短周期データ列の基線に対するオフセットを設定するようにしても良い。
図16は、図13のステップS4が実行する波形補間処理の一例を説明するフローチャートである。この例では、説明の便宜上、波形補間処理は、ステップS5の補間処理の結果を保証できるか否かの判定処理を含む。図16において、ステップS41では、プロセッサがステップS1で更新されたデータに対する波形補間処理を開始し、ステップS42では、図15と共に説明した波形評価処理の脈拍間隔分析処理の結果に基づいて、プロセッサが短周期とその0位相及び長周期とその0位相を取得する。
ステップS43では、プロセッサがPPI時系列データの短周期内にノイズが含まれているか否かを図14の原信号品質分析処理の結果に基づき判定する。ステップS43の判定結果がYESであると、ステップS44では、プロセッサが非定常信号(即ち、ノイズ)が混入しているノイズ区間を短周期毎に判定する。ステップS45では、プロセッサがノイズ区間が1短周期内の単発であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、処理は後述するステップS47へ進む。
ステップS43またはステップS45の判定結果がNOであると、ステップS46では、プロセッサが図15のステップS429の同定処理に基づき長周期位相を判定し、ステップS47では、プロセッサが短周期データ列に長周期位相に応じたバイアスオフセットを施す。具体的には、ステップS47では、プロセッサが心拍の呼吸起点となる切り出し区間として、短期的な非定常信号(または、異常信号)の前後の区間を拡大して、短周期データの基準点間に長周期の変動を推定したデータ列を挿入するための区間を作成する。また、短周期データ列の基準点に、長周期の位相に合わせたオフセット量を重畳する。
ステップS48では、プロセッサが補間率が閾値より大きいか否かを判定し、判定結果がNOであると処理はステップS49へ進み、判定結果がYESであると処理はステップS50へ進む。補間率が閾値以下の場合、補間するべきデータ量が比較的少ないので、ステップS49では、プロセッサがノイズ区間のデータ列を除去し、上記の如きいずれかの補間処理によりノイズ区間へのデータ補間を行い、処理は図13のステップS5へ進む。具体的には、ステップS49では、プロセッサが短周期の基線成分に長周期成分を重畳したデータ列をノイズ区間に挿入することで、比較的短期間の補間で、補間による不連続性と疑似周期構造の発生を防ぐ。これにより、心拍の呼吸起点となる切り出し区間として、短期的な非定常信号の前後の区間を拡大して、短周期データの基準点間に、長周期の変動を推定したデータ列を挿入する。
ステップS49のデータ補間は、心拍1拍分のデータ置換であれば、例えば直前の短周期データ列のデータで置換しても良い。データ置換は、心拍2拍分以上のデータ置換であれば、例えば直前の短周期データ列のデータに長周期の変動成分をオフセットした短周期データ列で置換、即ち、所定の基線オフセットを重畳して置換しても良い。データ置換は、ノイズの発生による例えば心拍3〜4拍分の1短周期相当の短周期データ列の欠落の場合、前後の短周期構造単位の短周期データ列で置換、即ち、長周期内の短周期の心拍起点間のデータ列で置換しても良い。データ置換は、ノイズの発生による例えば2短周期相当以上の短周期データ列の欠落の場合、欠落以前の長周期構造単位の短周期データ列で置換しても良い。非定常信号の区間が例えば長周期構造の過半数を超える場合には、直前の長周期構造を非定常信号の区間の位相に合わせて切り出したデータ列で置換しても良い。この場合、さらに1長周期を超える補間を行う場合、補間処理の結果の品質を保証するため、例えば設定された解析区間の例えば20%を超えないように補間を行うことが好ましい。
一方、補間率が閾値より大きい場合、補間するべきデータ量が多いため、ステップS50では、プロセッサが補間処理の結果の品質を保証できないことを示す結果保証外通告を記憶部に格納したり表示部に表示したりしてから、処理はステップS49へ進む。
図13の説明に戻るに、ステップS5では、プロセッサが補間処理の結果を保証できるか否かを図16のステップS50の処理の結果に基づいて判定し、判定結果がNOであると処理はステップS6へ進み、判定結果がYESであると処理はステップS7へ進む。ステップS6では、プロセッサが補間処理の結果を保証できる程度にPPI時系列データの周期構造を補間できる場合には、周期構造を補間する構造補間処理を行い、処理はステップS8へ進む。ステップS7では、プロセッサがPPI時系列データの周期構造を解析し、補間精度保証の判定及びスペクトル構造の解析を含む周期構造解析処理を実行する。ステップS8では、プロセッサが周期構造解析処理の結果に基づき、被評価者の状態を周知の方法で推定及び判定する。
ステップS9では、プロセッサが推定及び判定した被評価者の状態から、被評価者のストレス、覚醒度などの指標を求めることができるか否かを判定する。ステップS9の判定結果がYESであると、ステップS10では、プロセッサが求めた指標を記憶部に格納したり表示部に表示してから、処理はステップS1へ戻る。ステップS10では、プロセッサが例えば後述する眠気推定処理を行い、覚醒度が被評価者による車両の運転が好ましくないレベルであると、覚醒度警報を記憶部に格納したり表示部に表示してから、処理はステップS1へ戻るようにしても良い。一方、ステップS9の判定結果がNOであると、ステップS11では、プロセッサが結果保証外通告を記憶部に格納したり表示部に表示してから、処理はステップS1へ戻る。
次に、長周期構造が短周期構造の例えば3周期分または4周期分である場合のオフセット量の設定方法の一例について、図17〜図19と共に説明する。
図17は、オフセット量の設定方法の一例を説明するフローチャートである。図17に示すオフセット量の設定処理は、図13のステップS4が実行する波形補間処理に含まれていても良い。図17において、ステップS51では、プロセッサが例えば脈拍センサが出力する脈波信号の微分信号の間隔を時系列に配列したPPI時系列データを生成し、生成したPPI時系列データで記憶部に格納されたPPI時系列データを更新する。ステップS52では、プロセッサがPPI時系列データの波形を評価する。波形の評価には、例えば予め決められた時間内での波形の振幅の著しい変化、波形の周期の著しい変化などの一時的な特徴量の変化が含まれる。ステップS53では、プロセッサが波形の評価の結果、特徴量の一時的な変化がノイズであるか否かを判定する。ステップS53の判定結果がYESであると、処理は後述するステップS61へ進み、判定結果がNOであると処理はステップS54へ進む。
ステップS54では、プロセッサがPPI時系列データの短周期構造、即ち、短周期波形の基準点、短周期波形の0位相及び短周期波形の振幅を探索する。ステップS55では、プロセッサが探索した短周期構造から、基本周期パターンと基準点を取得する。ステップS56では、プロセッサがPPI時系列データの長周期構造、即ち、長周期波形の基準点間の間隔(或いは、長周期内の短周期数または長周期波形の位相及び振幅)を算出する。ステップS57では、プロセッサが算出した長周期構造から、長周期パターンと基準点を取得する。ステップS58では、プロセッサが長周期構造内の短周期データの分割構造、即ち、長周期変動データ列を短周期データ列で分割した構造を探索する。ステップS59では、プロセッサがPPI時系列データを周波数解析し、処理はステップS51へ戻る。
ステップS61では、プロセッサがノイズ区間を例えば長周期内の短周期数単位で確定する。ステップS62では、プロセッサが例えばノイズ区間の直前の短周期データ列から短周期パターンを準備する。ステップS63では、プロセッサが準備された短周期パターン合成し、短周期パターンの基線成分に長周期成分を重畳したデータ列をノイズ区間に挿入するための調整を行う。
ステップS64では、プロセッサが長周期の位相が0度であり、短周期が長周期の1/4または1/3であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS65ではプロセッサがオフセット量O1を0、オフセット量O2を−PL/2に設定する。オフセット量O1は、短周期波形の1周期の開始点における短周期波形の基線と長周期波形の振幅PLとの差分を表し、オフセット量O2は、短周期波形の1周期の終了点における短周期波形の基線と長周期波形の振幅PLとの差分を表す。ステップS64の判定結果がNOであると、ステップS66ではプロセッサが長周期の位相が90度であり、短周期が長周期の2/4であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS67ではプロセッサがオフセット量O1を−PL/2、オフセット量O2を0に設定する。ステップS66の判定結果がNOであると、ステップS68ではプロセッサが長周期の位相が120度であり、短周期が長周期の2/3であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS69ではプロセッサがオフセット量O1を−PL/2、オフセット量O2を+PL/2に設定する。ステップS68の判定結果がNOであると、ステップS70ではプロセッサが長周期の位相が180度であり、短周期が長周期の3/4であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS71ではプロセッサがオフセット量O1を−PL/2、オフセット量O2を0に設定する。ステップS70の判定結果がNOであると、ステップS72ではプロセッサが長周期の位相が240度または270度であり、短周期が長周期の3/4または2/3であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS73ではプロセッサがオフセット量O1を+PL/2、オフセット量O2を0に設定する。一方、ステップS72の判定結果がNOであると、ステップS74ではプロセッサがノイズ区間が想定している長周期範囲(例えば、3短周期分または4短周期分)を超えており想定外であることを判定し、オフセット量O1,O2の両方を0に設定する。
ステップS65,S67,S69,S71,S73,S74の後、処理はステップS75へ進む。ステップS75では、プロセッサが設定されたオフセット量O1,O2を重畳した短周期パターンを合成する。これにより、長周期成分は、短周期データの基線成分として短周期データの位相が0度〜360度の範囲において直線近似でオフセット量O1,O2として重畳される。ステップS76では、プロセッサが除去したノイズ区間のデータ列をオフセット量O1,O2を重畳して合成された短周期パターンで補間する。ステップS77では、プロセッサが補間されたPPI時系列データを周波数解析し、処理はステップS51へ戻る。
図18は、図17のオフセット量の設定方法を説明する図である。図18において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。図18中、(a)の上側に示す太い矢印は吸気開始点を示し、下側に示す矢印は吸気開始点に対応する基準点を示す。また、図18中、(d)の下側に示す矢印は短周期データ列の位相0の位置を示し、(e)の下側に示す矢印は長周期データ列の位相0の位置を示す。上記の如く、PPI時系列データとPPI時系列データの移動平均との差分値は、各PPI時系列データの大小関係を反映しているので、この例では、差分値が負の値に変化した点は、呼吸開始により脈波間隔が短縮した基準となる呼吸と同期した心拍であると判定する。
図18中、(a)は例えば脈波センサで検知された被評価者の脈波を示す脈波信号、(b)は(a)の脈波信号を微分した微分信号の間隔を矢印で示すように振幅に重畳したPPI信号、(c)は(b)のPPI信号の間隔を時系列に配列したPPI時系列データを示す。また、図18中、(d)はPPI時系列データの短周期構造(PPI*)、(e)はPPI時系列データの長周期構造(PPI**)、(f)は長周期の位相0の直前の1短周期分の短周期データ列、(g)は(f)の短周期データに上記オフセット量O1,O2を重畳した短周期データ列を太い破線で示す。図18中、(h)は1長周期内の各短周期データ列(この例では4短周期分)をハッチング付きの矢印で示すように(f)の如き直前の1短周期分の短周期データ列に(g)の如きオフセット量O1,O2を重畳した太い破線で示す短周期データ列から合成した場合の一例を示す。この例では、短周期は3脈拍周期に相当し、長周期は4短周期に相当する。図18中、(d),(h)の一点鎖線は短周期の基線を示し、(h)の細い破線はPPI時系列データの長周期構造を示す。
図19は、オフセット量が図17及び図18と共に説明した設定方法で設定されている場合に、脈波信号にノイズが混入した場合の波形補間の一例を説明する図である。この例では、ノイズ区間のデータ列を、ノイズ区間の直前の短周期データ列を用いて置換する。図19中、図18と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図19に示す例では、(a)の左側から3番目の吸気開始点から4番目の吸気開始点にかけてのノイズ区間において、脈波信号にノイズが混入している。図19中、(b)に太い破線で示す部分がノイズの影響を受けているPPI信号部分に相当し、下側の△印は(a)のノイズに起因してピークと誤判定されてしまう点を示す。また、図19中、(d)に◆印で示すデータサンプルを繋ぐ太い実線は、比較例におけるPPI信号の平均値による補間部分を示す。
図19中、(e)〜(h)に示すように、ノイズ区間の直前の短周期構造に、予め準備された該当する長周期の位相と振幅PLの関係に基づくオフセット量O1,O2を重畳する。また、ノイズ区間のデータ列を除去し、ノイズ区間に短周期の基線にオフセット量O1,O2を重畳した短周期データ列を挿入することで、ノイズ区間のデータ列を補間する。
図20は、脈波信号にノイズが混入した場合の波形補間の他の例を説明するフローチャートである。この例では、ノイズ区間を、ノイズ区間の直前の長周期構造の対応する位相領域の短周期データ列を用いて置換する。
図20において、ステップS81では、プロセッサが例えば脈拍センサが出力する脈波信号の微分信号の間隔を時系列に配列したPPI時系列データを生成し、生成したPPI時系列データで記憶部に格納されたPPI時系列データを更新する。ステップS82では、プロセッサがPPI時系列データの波形を評価する。波形の評価には、例えば予め決められた時間内での波形の振幅の著しい変化、波形の周期の著しい変化などの一時的な特徴量の変化が含まれる。ステップS83では、プロセッサが波形の評価の結果、特徴量の一時的な変化がノイズであるか否かを判定する。ステップS83の判定結果がYESであると、処理は後述するステップS91へ進み、判定結果がNOであると処理はステップS84へ進む。
ステップS84では、プロセッサがPPI時系列データの短周期構造、即ち、短周期波形の基準点、短周期波形の0位相及び短周期波形の振幅を探索する。ステップS85では、プロセッサが探索した短周期構造から、呼吸基準の短周期データ列を取得する。具体的には、プロセッサが探索した短周期構造から、吸気開始点を基準点としてPPI時系列データの短周期データ列を取得する。ステップS86では、プロセッサがPPI時系列データの長周期構造、即ち、長周期波形の基準点間の間隔(或いは、長周期内の短周期数または長周期波形の位相及び振幅)を算出する。ステップS87では、プロセッサが算出した長周期構造から、長周期に相当する短周期数分の短周期データ列を取得する。ステップS88では、プロセッサが長周期構造内の短周期データの分割構造、即ち、長周期変動データ列を短周期データ列で分割した構造を探索し、処理は後述するステップS101へ進む。
ステップS91では、プロセッサがノイズ区間を例えば長周期内の短周期数単位で確定する。ステップS92では、プロセッサが後述するステップS102,S104,S106,S108,S110,S111の設定に基づき、ノイズ区間の直前の長周期内の対応する位相領域の短周期データ列から短周期パターンを準備する。ステップS93では、プロセッサが除去したノイズ区間のデータ列を準備された短周期パターンで補間する。ステップS94では、プロセッサが補間されたPPI時系列データを周波数解析し、処理はステップS81へ戻る。
ステップS101では、プロセッサが長周期の位相が0度であり、短周期が長周期の1/4または1/3であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS102ではプロセッサが直前の長周期の1/4または1/3周期目に対応する短周期データ列を設定する。ステップS101の判定結果がNOであると、ステップS103ではプロセッサが長周期の位相が90度であり、短周期が長周期の2/4であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS104ではプロセッサが直前の長周期の2/4周期目に対応する短周期データ列を設定する。ステップS103の判定結果がNOであると、ステップS105ではプロセッサが長周期の位相が120度であり、短周期が長周期の2/3であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS106ではプロセッサが直前の長周期の2/3周期目に対応する短周期データ列を設定する。ステップS105の判定結果がNOであると、ステップS107ではプロセッサが長周期の位相が180度であり、短周期が長周期の3/4であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS108ではプロセッサが直前の長周期の3/4周期目に対応する短周期データ列を設定する。ステップS107の判定結果がNOであると、ステップS109ではプロセッサが長周期の位相が240度または270度であり、短周期が長周期の3/4または2/3であるか否かを判定し、判定結果がYESであると、ステップS110ではプロセッサが直前の長周期の3/4または2/3周期目の短周期データ列を設定する。一方、ステップS109の判定結果がNOであると、ステップS111ではプロセッサがノイズ区間が想定している長周期範囲(例えば、3短周期分または4短周期分)を超えており想定外であることを判定し、例えば直前の短周期データ列またはデフォルトの短周期データ列を設定する。
ステップS102,S104,S106,S108,S110,S111の後、処理はステップS112へ進む。ステップS112では、プロセッサが設定された次に推定された短周期データ列を取得する。ステップS113では、プロセッサがPPI時系列データを周波数解析し、処理はステップS81へ戻る。
図21は、図20と共に説明した波形補間の一例を説明する図である。図21において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。図21に示す例では、(a)の左側から5番目の吸気開始点から6番目の吸気開始点にかけてのノイズ区間において、脈波信号にノイズが混入している。図21中、(b)の下側の△印は(a)のノイズに起因してピークと誤判定されてしまう点を示す。また、図21中、(d)に◆印で示すデータサンプルを繋ぐ太い実線は、比較例におけるPPI信号の平均値による補間部分を示す。
図21中、(a)は例えば脈波センサで検知された被評価者の脈波を示す脈波信号、(b)は(a)の脈波信号を微分した微分信号の間隔を矢印で示すように振幅に重畳したPPI信号、(c)は(b)のPPI信号の間隔を時系列に配列したPPI時系列データを示す。また、図21中、(d)はPPI時系列データの短周期構造(PPI*)、(e)はPPI時系列データの長周期構造(PPI**)、(f)はノイズ区間を含む長周期の直前の長周期内でノイズ区間に対応する位相領域における1短周期分の短周期データ列、(g)は(f)の短周期データをノイズ区間に挿入した場合の一例を示す。図21中、(d),(g)の一点鎖線は短周期の基線を示し、(g)の破線はPPI時系列データの長周期構造を示す。この例では、短周期は3脈拍周期に相当し、長周期は4短周期に相当する。
図22は、脈波信号にノイズが混入した場合の波形補間のさらに他の例を説明するフローチャートである。この例では、ノイズ区間のデータ列を、ノイズ区間の直前の長周期構造の対応する位相領域のPPI信号(即ち、心拍データ列)を用いて置換する。図22中、図20と同一ステップには同一符号を付し、その説明は省略する。
図22において、ステップS85−1では、プロセッサが探索した短周期構造から、短周期に相当するPPI信号を取得する。また、ステップS87−1では、プロセッサが算出した長周期構造から、長周期に相当する短周期数分のPPI信号を取得する。さらに、ステップS93の後、且つ、ステップS94の前に、ステップS93−1が実行される。ステップS93−1では、プロセッサがステップS82と同様にしてPPI時系列データの波形を再評価する。
ステップS102−1,S104−1,S106−1,S108−1,S110−1,S111−1,S112−1は、図20のステップS102,S104,S106,S108,S110,S111,S112に対応するが、処理の対象が短周期データ列ではなくPPI信号である点が図20の場合と異なる。
図23は、図22と共に説明した波形補間の一例を説明する図である。図23において、縦軸は信号振幅を任意単位で示し、横軸は時間を任意単位で示す。図23に示す例では、(a)の左側から5番目の吸気開始点から6番目の吸気開始点にかけてのノイズ区間において、脈波信号にノイズが混入している。図23中、(b),(c)に太い破線で示す部分が夫々ノイズの影響を受けているPPI信号部分及びPPI時系列データ部分に相当し、(b)の下側の△印は(a)のノイズに起因してピークと誤判定されてしまう点を示す。また、図23中、(d)に◆印で示すデータサンプルを繋ぐ太い実線は、比較例におけるPPI信号の平均値による補間部分を示す。
図23中、(a)は例えば脈波センサで検知された被評価者の脈波を示す脈波信号、(b)は(a)の脈波信号を微分した微分信号の間隔を矢印で示すように振幅に重畳したPPI信号、(c)は(b)のPPI信号の間隔を時系列に配列したPPI時系列データを示す。また、図23中、(d)はPPI時系列データの短周期構造(PPI*)、(e)はPPI時系列データの長周期構造(PPI**)、(f)はノイズ区間を含む長周期の直前の長周期内でノイズ区間に対応する位相領域における1短周期分のPPI信号、(g)は(f)の1短周期分のPPI信号がノイズ区間に挿入されて補間されたPPI信号、(h)は(g)の補間されたPPI信号に基づいて得られるPPI時系列データを示す。この例では、短周期は3脈拍周期に相当し、長周期は4短周期に相当する。このように、短周期データ列ではなくPPI信号を補間する場合、短周期データ列を補間する場合と比較すると、ノイズ区間にPPI信号の補間パターンを挿入する際に、補間パターンを前後のPPI信号部分とよりなめらかに繋げやすいため、PPI信号の連続性と周期性を維持した復元が可能となる。
上記の各例では、ノイズ区間のデータ列を、被評価者の心拍間隔の時系列データの一例である短周期単位の短周期データ列または心拍データ列(PPI信号)で補間しているが、連続的に補間する時系列データは、1短周期分に限定されるものではなく、2以上の短周期分であっても良い。
図24は、波形補間装置を適用可能な眠気判定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図24に示す眠気判定装置1は、バス37により接続されたCPU31、記憶装置32、入力装置33、表示装置34、媒体読取装置35、インタフェース(I/F:Interface)36及びセンサ101を有する。センサ101は、眠気判定装置1に対して外部接続されても良く、センサ101は例えばI/F36に接続可能である。センサ101は、被評価者の心拍波形を表すデータを測定可能なものであれば特に限定されず、例えば心電計、脈波計、心音センサ、脈拍センサなどであっても良い。なお、CPU31と眠気判定装置1の他の部分との接続は、図24に示すバス接続に限定されるものではない。
CPU31は、眠気判定装置1全体の制御を司る。記憶装置32は、CPU31が実行するプログラム、CPU31が実行する演算の中間データ、上記の結果保証外通告や覚醒度通告などを含む各種データを格納する。CPU31は、上記プロセッサの一例として機能することができ、記憶装置32は、上記記憶部の一例として機能することができる。眠気推定プログラムは、CPU31に眠気判定装置1の眠気推定処理の手順を実行させる。眠気推定プログラムは、CPU31を図12に示す波形補間装置50の各部(または、各手段)として機能させる波形補間プログラムを含んでも良い。CPU31に図13〜図23と共に説明した波形補間処理を実行させる波形補間プログラムは、例えば眠気推定プログラムに含まれていても、或いは、例えばプラグインで形成されていても良い。
入力装置33は、被評価者が眠気判定装置1に各種指示、データなどを入力するのに用いられ、例えばキーボード、テンキーなどで形成可能である。表示装置34は、各種メニュー、メッセージ、通告、アラーム(または、警告)などを被評価者に表示するのに用いられ、例えば液晶表示(LCD:Liquid Crystal Display)パネルなどで形成可能である。なお、入力装置33及び表示装置34は、例えば両装置33,34の機能を有するタッチパネルで形成しても良い。
媒体読取装置35は、眠気判定装置1にロードされるコンピュータ読取可能な記憶媒体からデータを読み取る機能を有し、後述する眠気スケールを格納する記憶媒体がロードされても良い。コンピュータ読取可能な記憶媒体は、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体記憶装置などで形成可能である。上記の各プログラムは、コンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されていても良い。媒体読取装置35及びこの媒体読取装置35にロードされたコンピュータ読取可能な記憶媒体は、上記記憶部の一例として機能しても良い。
I/F36は、眠気判定装置1と外部装置のインタフェースを形成する。I/F36は、例えばUSB(Universal Serial Bus)を有する。また、I/F36は、眠気判定装置1と外部装置との間の無線通信を可能とする無線インタフェース機能を有しても良い。
次に、眠気推定処理を、図25と共に説明する。図25は、CPU31が実行する眠気推定処理の一例を説明するフローチャートである。図25において、ステップS111では、被評価者が実際に車両を運転する前の安静状態で、CPU31が被評価者の心拍波形をセンサ101で測定する。安静状態とは、外乱が比較的少なく人間の呼吸が安定している状態を言う。ステップS112では、CPU31が心拍波形に基づいてPPIを時系列化した心拍間隔データを求める。ステップS112では、CPU31がノイズによって断続した心拍間隔データ列があれば、上記のいずれかの補間処理を含む図13の状態判定処理を行う。この場合、図13のステップS1〜S4は、ステップS112に含まれても良い。ステップS113では、CPU31が心拍間隔データの周波数解析を行い、周波数解析結果を初期状態として設定する。ステップS114では、CPU31が設定された初期状態に基づいて、被評価者の眠気を例えば周知の方法で推定し、処理は終了する。図13のステップS5〜S11は、ステップS113,S114に含まれても良い。
センサが測定した呼吸が安定した安静状態の被評価者の心拍波形に基づいてPPI(R-R Interval)を時系列化した心拍間隔データを求め、心拍間隔データを周波数解析して、ある時間における周波数に対するパワースペクトル密度(PSD)及び自律神経のトータルパワー(TP)を含む、心拍揺らぎの周波数解析結果を求めることができる。また、周波数解析結果を初期状態として設定し、初期状態に含まれる、推定された眠気の位置及び推定された覚醒の位置に基づいて、眠気の位置の原点と覚醒の位置の原点が設定された眠気スケールを決定することができる。
上記の実施例によれば、定常信号に混入した非定常信号(即ち、ノイズ)を除去した影響を、短期間での特徴推定による補間によって、周波数解析の精度劣化を防ぐことができる。また、このような補間は、生体変動の位相特性の判定結果を利用した特徴検知にも応用可能となる。その結果、例えば非侵襲な脈波の計測により、ノイズが多発する被評価者の状態変化をリアルタイムで連続して推定することができ、より安定した被評価者の状態推定を行うことで、例えば安全操作支援を提供することができる。
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
生体信号の間隔の時系列データに含まれるノイズ区間を検知すると共に、前記時系列データに含まれる基本成分であり短周期で変化する波形の短周期成分と前記基本成分より長周期で変化する波形の長周期成分との周期構造の位相及び振幅を推定する波形評価手段と、
前記ノイズ区間のデータ列を除去し、前記ノイズ区間の前後のデータ列の位相を乱さないように前記長周期成分の変調を加えたデータ列の補間パターンを前記ノイズ区間に挿入することで、前記ノイズ区間を基準点からの周期構造単位で置換する波形補間処理手段を備えたことを特徴とする、波形補間装置。
(付記2)
前記生体信号の間隔の時系列データは、被評価者の心拍間隔の時系列データであり、
前記波形補間処理手段は、前記被評価者の吸気動作における心拍起点を前記基準点として前記ノイズ区間を前記時系列データの短周期毎に確定し、前記短周期の基線成分に前記長周期成分を重畳したデータ列を前記補間パターンとして前記ノイズ区間に挿入することを特徴とする、付記1記載の波形補間装置。
(付記3)
前記波形評価手段は、
前記時系列データ中の突発ノイズ及び定常ノイズを判定する脈波分析部と、
前記生体信号の間隔を計測して振幅及び間隔が正常な正常脈拍と振幅または間隔が正常ではない不整脈を判定する脈波間隔計測部と、
前記正常脈拍のデータ列から移動平均法により前記短周期がゼロの基準点を推定する短周期分析部と、
前記正常脈拍のデータ列から移動平均法により前記長周期がゼロの基準点を推定する長周期分析部
を有することを特徴とする、付記2記載の波形補間装置。
(付記4)
前記短周期は、心拍変動から求めた被評価者の呼吸変動に依存し、
前記長周期は、前記心拍変動から求めた前記被評価者の血圧変動に依存し、
前記波形補間処理手段は、前記血圧変動に依存する変化を前記時系列データの前記短周期の平均値の変化として近似し、呼吸性基本変動に血圧性変動を合成した補間データ列を前記補間パターンとして前記ノイズ区間に挿入することを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項記載の波形補間装置。
(付記5)
前記波形補間処理手段は、前記時系列データを前記短周期の単位に分割し、前記血圧変動に相当する前記長周期成分の振幅と前記短周期の基線成分との差に基づいた基準点のオフセットを前記基線成分に重畳し、心拍起点が前記時系列データの前記心拍起点と一致する、前記ノイズ区間内の前記短周期データ列を置換するべき補間パターンを生成することを特徴とする、付記4記載の波形補間装置。
(付記6)
前記波形補間処理手段は、前記ノイズ区間が想定した長周期を超えた場合に、前記想定した長周期分の補間パターンで前記ノイズ区間を補間することを特徴とする、付記1乃至5のいずれか1項記載の波形補間装置。
(付記7)
コンピュータが、
生体信号の間隔の時系列データに含まれるノイズ区間を検知すると共に、前記時系列データに含まれる基本成分であり短周期で変化する波形の短周期成分と前記基本成分より長周期で変化する波形の長周期成分との周期構造の位相及び振幅を推定し、
前記ノイズ区間のデータ列を除去し、前記ノイズ区間の前後のデータ列の位相を乱さないように前記長周期成分の変調を加えたデータ列の補間パターンを前記ノイズ区間に挿入することで、前記ノイズ区間を基準点からの周期構造単位で置換する
ことを特徴とする、波形補間方法。
(付記8)
前記生体信号の間隔の時系列データは、被評価者の心拍間隔の時系列データであり、
前記置換は、前記被評価者の吸気動作における心拍起点を前記基準点として前記ノイズ区間を前記時系列データの短周期毎に確定し、前記短周期の基線成分に前記長周期成分を重畳したデータ列を前記補間パターンとして前記ノイズ区間に挿入することを特徴とする、付記7記載の波形補間方法。
(付記9)
前記推定は、
前記時系列データ中の突発ノイズ及び定常ノイズを判定し、
前記生体信号の間隔を計測して振幅及び間隔が正常な正常脈拍と振幅または間隔が正常ではない不整脈を判定し、
前記正常脈拍のデータ列から移動平均法により前記短周期がゼロの基準点を推定し、
前記正常脈拍のデータ列から移動平均法により前記長周期がゼロの基準点を推定する
処理を含むことを特徴とする、付記8記載の波形補間方法。
(付記10)
前記短周期は、心拍変動から求めた被評価者の呼吸変動に依存し、
前記長周期は、前記心拍変動から求めた前記被評価者の血圧変動に依存し、
前記置換は、前記血圧変動に依存する変化を前記時系列データの前記短周期の平均値の変化として近似し、呼吸性基本変動に血圧性変動を合成した補間データ列を前記補間パターンとして前記ノイズ区間に挿入することを特徴とする、付記7乃至9のいずれか1項記載の波形補間方法。
(付記11)
前記置換は、前記時系列データを前記短周期の単位に分割し、前記血圧変動に相当する前記長周期成分の振幅と前記短周期の基線成分との差に基づいた基準点のオフセットを前記基線成分に重畳し、心拍起点が前記時系列データの前記心拍起点と一致する、前記ノイズ区間内の前記短周期データ列を置換するべき補間パターンを生成することを特徴とする、付記10記載の波形補間方法。
(付記12)
前記置換は、前記ノイズ区間が想定した長周期を超えた場合に、前記想定した長周期分の補間パターンで前記ノイズ区間を補間することを特徴とする、付記7乃至11のいずれか1項記載の波形補間装置。
(付記13)
コンピュータに補間処理を実行させるプログラムであって、
生体信号の間隔の時系列データに含まれるノイズ区間を検知すると共に、前記時系列データに含まれる基本成分であり短周期で変化する波形の短周期成分と前記基本成分より長周期で変化する波形の長周期成分との周期構造の位相及び振幅を推定する波形評価手順と、
前記ノイズ区間のデータ列を除去し、前記ノイズ区間の前後のデータ列の位相を乱さないように前記長周期成分の変調を加えたデータ列の補間パターンを前記ノイズ区間に挿入することで、前記ノイズ区間を基準点からの周期構造単位で置換する波形補間処理手順と
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
(付記14)
前記生体信号の間隔の時系列データは、被評価者の心拍間隔の時系列データであり、
前記波形補間処理手順は、前記被評価者の吸気動作における心拍起点を前記基準点として前記ノイズ区間を前記時系列データの短周期毎に確定し、前記短周期の基線成分に前記長周期成分を重畳したデータ列を前記補間パターンとして前記ノイズ区間に挿入することを特徴とする、付記13記載のプログラム。
(付記15)
前記波形評価手順は、
前記時系列データ中の突発ノイズ及び定常ノイズを判定し、
前記生体信号の間隔を計測して振幅及び間隔が正常な正常脈拍と振幅または間隔が正常ではない不整脈を判定し、
前記正常脈拍のデータ列から移動平均法により前記短周期がゼロの基準点を推定し、
前記正常脈拍のデータ列から移動平均法により前記長周期がゼロの基準点を推定する
ことを特徴とする、付記14記載のプログラム。
(付記16)
前記短周期は、心拍変動から求めた被評価者の呼吸変動に依存し、
前記長周期は、前記心拍変動から求めた前記被評価者の血圧変動に依存し、
前記波形補間処理手順は、前記血圧変動に依存する変化を前記時系列データの前記短周期の平均値の変化として近似し、呼吸性基本変動に血圧性変動を合成した補間データ列を前記補間パターンとして前記ノイズ区間に挿入することを特徴とする、付記13乃至15のいずれか1項記載のプログラム。
(付記17)
前記波形補間処理手順は、前記時系列データを前記短周期の単位に分割し、前記血圧変動に相当する前記長周期成分の振幅と前記短周期の基線成分との差に基づいた基準点のオフセットを前記基線成分に重畳し、心拍起点が前記時系列データの前記心拍起点と一致する、前記ノイズ区間内の前記短周期データ列を置換するべき補間パターンを生成することを特徴とする、付記16記載のプログラム。
(付記18)
前記波形補間処理手順は、前記ノイズ区間が想定した長周期を超えた場合に、前記想定した長周期分の補間パターンで前記ノイズ区間を補間することを特徴とする、付記13乃至17のいずれか1項記載のプログラム。
以上、開示の波形補間装置、方法及びプログラムを実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。