以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態による画像形成装置の画像形成系の断面図である。始めに図1を参照し、本実施形態による画像形成装置の画像形成系について具体的に説明する。
この画像形成系は、記録媒体100上に画像形成を行うためのものである。図1に示すように、画像形成系は、それぞれ異なる色のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1(1a〜1d)を備え、この4つの画像形成ユニット1は無端ベルト2の走行方向に沿って配置されている。それにより、本実施形態による画像形成装置は、フルカラー印刷が可能なものとなっている。図1中の矢印Aは、無端ベルト2の走行方向を示している。
この無端ベルト2は、各画像形成ユニット1が形成したトナー像を転写し、転写したトナー像を記録媒体100上に転写するための中間転写ベルトとして用いられる。このことから、以降、無端ベルト2は「中転ベルト」と表記する。無端ベルト2は、記録媒体100を各画像形成ユニット1に搬送するためのものであっても良い。
中転ベルト2は、転写ベルト駆動ローラ3、及びステアリングローラ4を含む複数のローラによって張架されている。転写ベルト駆動ローラ3は、中転ベルト2に対し、動力を伝達して走行させるためのローラである。ステアリングローラ4は、中転ベルト2の幅方向上の位置を補正する寄り補正のためのローラであり、本実施形態における接触部材に相当する。
中転ベルト2の内側には、走行速度(表面速度)検出用のスケール(マーク)が設けられている。このスケールは、例えば光学センサであるスケールセンサ5によって検出される。それにより、中転ベルト2の走行速度は高精度に制御される。
中転ベルト2は変形可能であり、その幅方向(走行方向と直交する方向)上の位置を僅かながら移動可能な状態に張架されている。それにより、中転ベルト2は、その幅方向上に位置が移動可能である。その位置が所定位置からずれた場合、記録媒体100上に形成される画像の画質を低下させる。時間の経過に応じて変化する蛇行は、記録媒体100上に形成される画像の画質を大きく低下させる危険性が極めて高い。このことから、中転ベルト2の幅方向上の位置を検出するためのベルト位置検出センサ6が設けられている。
記録媒体100は、手差しトレイ、或いは給紙トレイ等から1つずつ繰り出されて画像形成系に搬送される。矢印Cは、記録媒体100の搬送方向を示している。
記録媒体100が画像形成系に搬送された場合、中転ベルト2上に転写すべきトナー像が存在している。記録媒体100は、そのトナー像と重なるタイミングで中転ベルト2に向けて搬送され、その中転ベルト2上のトナー像は転写機7によって記録媒体100上に転写される。その転写を行った後に中転ベルト2上に残留しているトナーは、ベルト清掃機構8によって除去される。
トナー像が転写された記録媒体100は、定着装置9に搬送される。その定着装置9は、図1に示すように、加熱ドラム9a、加圧ドラム9b、定着ベルト9c、及び転向ローラ9dを備えている。
加熱ドラム9aは、内部に熱源を有し、その熱源からの熱量を間接的に記録媒体100に伝達するためのドラムである。加圧ドラム9bは、記録媒体100を加熱ドラム9aに向けて圧力を加えるためのドラムである。それにより、定着装置9は、トナー像が転写された記録媒体100に対し、熱と圧力を加え、そのトナー像を溶融・定着させる。
定着ベルト9c、及び転向ローラ9dは、加圧ドラム9bに対し動力を伝達するためのものである。トナー像が溶融・定着された後、記録媒体100は画像形成装置外に排出される。
中転ベルト2上への転写対象となるトナー像を形成可能な画像形成ユニット1a〜1dは、例えばそれぞれイエロー、マゼンダ、シアン、及びブラックのトナー像を形成させるために用いられる。各画像形成ユニット1は、それぞれ、感光ドラム11、ドラム帯電器12、露光装置13、現像器14、転写器15、及びクリーニング装置16を備えている。
トナー像を形成する場合、感光ドラム11は図1中の矢印Bの方向に回転する。帯電器12は、放電により、回転中の感光ドラム11の表面を均一に負の電荷に帯電させる。
露光装置13は、ドットイメージの画像データを用いて照射させるレーザ光により感光ドラム11を走査する。その走査によってレーザ光が照射された部分は電荷が低下する。その結果、感光ドラム11上に静電潜像が形成される。
現像器14では、定められた色のトナーが負電荷に帯電されている。このトナーは、感光ドラム11上の電荷の低下した部分に吸着する。そのようにして、感光ドラム11上の静電潜像が現像され、トナー像が形成される。感光ドラム11上に形成されたトナー像は、転写器15に印加された高電圧によって中転ベルト2上に転写される。
カラー印刷では、複数の画像形成ユニット1にトナー像を形成させる。中転ベルト2の走行方向上、下流側に位置する画像形成ユニット1でのトナー像の形成は、その中転ベルト2上に転写されたトナー像と重なるように行われる。それにより、記録媒体100上には、複数色のトナー像が重ねられた状態で転写される。
トナー像を形成させない画像形成ユニット1では、感光ドラム11は中転ベルト2と当接しない位置に退避される。それにより、トナー像を形成させる画像形成ユニット1の感光ドラム11のみが中転ベルト2と当接する状態となる。
図2は、ベルト位置検出センサの構成を説明する図である。図2(a)は上面図、図2(b)は側面図をそれぞれ表している。ここでの上面図は、中転ベルト2の内側の面に向かう視点での図である。
本実施形態でのベルト位置検出センサ6は、光学的に中転ベルト2の幅方向上の位置を検出するものである。より具体的には、当接部材21を中転ベルト2の幅方向上の端に当接させ、当接部材21の位置の変化を通して、中転ベルト2の幅方向上の位置を光学的に検出するようになっている。以降、特に断らない限り、位置は中転ベルト2の幅方向上を想定して表現する。
当接部材21は、アーム22の端部に取り付けられている。そのアーム22は、L字型の部材であり、軸23を支点として、回転可能に支持されている。当接部材21の位置を安定させると共に、その当接部材21を中転ベルト2と当接させるために、バネ24を設けている。そのバネ24は、当接部材21を右回転(図2(a)に向かう視点でのもの)させる方向、つまり当接部材21を中転ベルト2に押しつける方向に弾性力を作用するようになっている。
アーム22の他方の端部25には、図3に示すように、開口25aが設けられている。発光部26、及び受光部27は、図2(b)に示すように、この開口25aを挟むように設けられている。
この受光部27には、図4に示すように、2つの受光素子41(41a、41b)が設けられている。2つの受光素子41は、対向する端部25の開口25aの短手方向に沿って並ぶ形に配置されている。
上記のような構成のベルト位置検出センサ6では、中転ベルト2の位置の変化に伴い、当接部材21の位置が変化し、その変化に伴ってアーム22が軸23を中心に回転する。その回転により、開口25aと受光部27の位置関係も変化する。より具体的には、開口25aは、相対的に、受光素子41が並ぶ方向に移動することになる。
図5は、開口と受光部の相対的位置関係に伴う各受光素子の受光量の変化を説明する図であり、図6は、相対的位置関係により受光部の各受光素子が発生させる電圧の変化を説明する図である。ここで図5、及び図6を参照し、ベルト位置検出センサ6による中転ベルト2の位置検出について具体的に説明する。
受光部27の各受光素子41は、発光部26から照射された光のなかで開口25aを通る光を受光するために設けられている。それにより、各受光素子41の受光量、つまり各受光素子41が発生させる電圧は、各受光素子41と開口25aの位置関係によって変化する。このことから、図5では、開口25aと各受光素子41の位置関係として3つの代表的な例を示している。図5(a)には、2つの受光素子41が共に受光する場合、図5(b)には、2つの受光素子41のうちの一方のみが受光する場合、図5(c)には、2つの受光素子41が共に受光できない場合、をそれぞれ示している。
2つの受光素子41による受光状態は、図5(a)〜(c)に表す3つの状態に大別される。ここでは、以降、2つの受光素子41が共に受光する状態を「共受光状態」と表記)、2つの受光素子41のうちの一方のみが受光する状態を「単独受光状態」、2つの受光素子41が共に受光できない状態を「共未受光状態」、とそれぞれ表記する。
図6では、相対的変位による各受光素子41が発生させる電圧の変化を表している。その相対的変位は、各受光素子41と開口25aの基準とする位置関係を想定し、その基準の位置関係からの各受光素子41と開口25a間のずれ(距離)を指す用語である。ここでは、相対的変位として、受光素子41aを先頭に、開口25aを横切る方向を正にとっている。また、開口25aの短手方向上の幅W1と各受光素子41のその方向上の幅W2の関係は、W1>W2、となっている。
上記のような想定では、2つの受光素子41による受光状態は、共未受光状態→受光素子41aのみ受光する状態→共受光状態→受光素子41bのみ受光する状態→共未受光状態、の順序で変化する。受光素子41aのみが受光する状態では、受光素子41aが発生させる電圧Vaは、受光素子41aの相対的変位の大きさに伴って上昇する。これは、受光素子41aの受光面のなかで実際に光を受光している部分は相対的変位が大きくなるほど増大するからである。このため、その上昇は、受光素子41aの受光面の全てで受光できるようになって停止する。
図6中に表記の「Vth」は、中転ベルト2の位置が適切な範囲内に存在するか否かを判定するために設定された閾値である。図6では、受光素子41aが発生させる電圧Vaの値、或いは受光素子41bが発生させる電圧Vbの値が閾値Vthより小さい範囲を「エラー領域」と表記している。エラー領域から電圧Vaの上昇が停止するまでの範囲を「線形領域」と表記している。電圧Vaが一定となっている範囲は「飽和領域」と表記している。
線形領域では、上記のように、受光素子41の受光面のなかで実際に光を受光している部分が相対的変位に応じて増減することにより、光を受光している受光素子41が発生させる電圧の値は線形に変化する。飽和領域では、上記のように、受光素子41の受光面の全てで光りを受光していることから、発生させる電圧の値は一定となる。
受光素子41aの飽和領域は、その受光面の全てで受光できなくなるまで継続する。ここでは、W1>W2との想定から、受光素子41aが飽和領域となっている間に、受光素子41bによる受光が始まる。それにより、受光素子41bによる受光の開始から受光素子41aの飽和領域が終了する間は、電圧Vaの値から電圧Vbの値を減算した減算値(=Va−Vb)は減少し、電圧Vaの値と電圧Vbの値の加算値(=Va+Vb)は増大することになる。
受光素子41aの飽和領域の終了後から受光素子41bの飽和領域の開始までの間は、受光素子41aの受光量の減少分を受光素子41bが受光するようになる。この結果、各受光素子41が発生する電圧は変化しても、上記加算値は一定となり、上記減算値は単調に減少することとなる。図6では、この領域を「線形領域」と表記している。
受光素子41bの飽和領域となると、つまり開口25aを通る光を受光素子41bが全て受光するようになると、受光素子41aによる受光量の減少が減算値、及び加算値に影響するようになる。それにより、受光素子41bの飽和領域の開始から受光素子41aが受光しなくなるまでの間、減算値は減少の勾配が緩やかになり、加算値は減少する。その後は、受光素子41bの飽和領域が終了するまでの間、減算値、及び加算値は共に一定となる。
受光素子41bの飽和領域の終了後は、受光素子41bの発生させる電圧Vbの値は単調に減少する線形領域となる。その電圧Vbの値が閾値Vthより小さくなると、エラー領域となる。
各受光素子41が発生させる電圧は、図6に示すように、中転ベルト2の位置に応じて変化する。そのため、各受光素子41が発生する電圧により、中転ベルト2の位置を特定することができる。
W1>W2の関係では、飽和領域が広くなることから、飽和領域内における中転ベルト2の位置の特定精度は低下する。しかし、W1≒W2とした場合、飽和領域は無くなるか、あっても極めて狭い範囲となる。それにより、各受光素子41が発生させる電圧の変化は、図6に示すような台形状ではなく、三角形状に線形変化するようになる。そのように電圧が変化すると、各受光素子41が発生させる電圧の値は、中転ベルト2の位置に応じて変化するようになる。従って、中転ベルト2の位置は常に高精度に特定できるようになる。
このように、開口25aの幅W1と受光素子41の幅W2の関係は、線形範囲の広さと共に、中転ベルト2の位置の特定精度に大きく影響する。また、開口25aの幅W1と、2つの受光素子41が並ぶ幅(≒2W2)の関係は、中転ベルト2の位置を検出できる範囲に大きく影響する。開口25aの幅W1、各受光素子41の幅W2は、これらを考慮して決定する必要がある。
図7は、本実施形態による画像形成装置の制御系の構成を説明する図である。図7では、便宜的に、中転ベルト2の位置制御に係わる部分に着目して構成要素を示している。次に図7を参照して、制御系の構成について詳細に説明する。
画像形成装置は、図7に示すように、中転ベルト寄り補正制御ユニット71、制御基板72、操作部73、及び開閉センサ74を備えている。
中転ベルト寄り補正ユニット71は、中転ベルト2の位置を安定的に維持するために設けられたユニットであり、図7に示すように、ホームポジションセンサ711、ベルト位置検出センサ6、及びステアリングモータ712を備えている。
ホームポジションセンサ711は、ステアリングローラ4のホームポジションを検出するためのセンサである。ステアリングローラ4には、例えばその傾斜量に応じて変位する部材(位置検出用部材)が連結されており、ホームポジションセンサ711は、例えばその位置検出用部材の変位を検出するための透過型の光学センサである。例えばステアリングローラ4がホームポジションに位置している場合に、位置検出用部材の一部が光路を遮るようになっている。そのホームポジションセンサ711が出力するセンサ検出信号S1は制御基板72に入力される。ステアリングローラ4のホームポジションは、その軸が中転ベルト2を張架する他のローラの軸と平行となる姿勢である。
ベルト位置検出センサ6は、図2〜図6を参照して説明したものである。受光部27の2つの受光素子41がそれぞれ出力する信号はセンサ検出信号S2として制御基板72に入力される。
ステアリングモータ712は、ステアリングローラ4の姿勢を変化させるためのモータであり、例えばステッピングモータである。このステアリングモータ712は、制御基板72から出力される相信号(パルス信号)S3によって駆動される。
ステアリングローラ4の姿勢制御は、中転ベルト2の寄り補正(蛇行の抑制を含む)のために行われる。それにより、ステアリングモータ712は、本実施形態における狭義の補正部に相当する。中転ベルト2の寄り補正には、ステアリングモータ712の他に、ステアリングローラ4、及びステアリングモータ712からの動力によってそのステアリングローラ4を姿勢変更可能に支持する機構が必要である。このことから、広義には、補正部は、ステアリングモータ712、ステアリングローラ4、及びそれを支持する機構、等を含む。
このように、中転ベルト補正ユニット71は、中転ベルト2の位置の確認、ステアリングローラ4の姿勢の確認、及びステアリングローラ4の姿勢の変更を行うために設けられている。中転ベルト2の位置は、ステアリングローラ4の姿勢の変更、つまりステアリングモータ712の駆動により制御することができる。
なお、中転ベルト2の位置の制御(寄り制御)は、ステアリングローラ4以外の部材を用いて行っても良い。つまり、中転ベルト2の寄り制御を行うための構成は特に限定されない。また、中転ベルト2の位置の検出でも同様に、ベルト位置検出センサ6とは異なるセンサを採用しても良い。
操作部73は、ユーザが各種指示、或いはデータ入力、等に用いることが可能な装置である。この操作部73は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)を用いたタッチパネル、各種キー、等を備えている。ユーザは、操作部73への操作を通して、印刷を行わせるモードを任意に設定することができる。
開閉センサ74は、画像形成装置に設けられたドアの開閉状態を検出するためのセンサである。本実施形態では、開閉センサ74がドアの開状態を検出していた場合、記録媒体100への画像形成は行わないようになっている。
制御基板72は、1つのデータ処理装置(コンピュータ)である。図7に示すように、CPU(Central Processing Unit)721、ROM(Read Only Memory)722、RAM(Random Access Memory)723、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)724、I/F(InterFace)カード725、A/D(Analog−to− Digital)コンバータ726、及びドライバ727を備えている。
ROM722は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア、及び各種データが格納されている。RAM723は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU721が情報を処理する際の作業領域として用いられる。
ハードディスク装置724は、情報の読み書きが可能な記憶装置であり、記録媒体として1つ以上のハードディスク730が搭載されている。そのハードディスク730には、各種データの他に、OS(Operating System)、各種制御プログラム、及び各種アプリケーション・プログラム等の様々なプログラムが格納される。ハードディスク装置724は、原稿等の画像データの一時的な保存にも用いられる。
ハードディスク730に格納される各種データには、中転ベルト2の位置を安定させるための安定位置情報をモード毎に備える安定位置情報群731が含まれる。各種制御プログラムには、安定位置情報群731を用いて、ステアリングモータ712を駆動して、中転ベルト2の位置を安定位置に移動させるためのプログラム(以降「ベルト寄り補正制御プログラム」と表記)732が含まれる。このベルト寄り補正制御プログラム732は、本実施形態におけるプログラムに相当する。
ベルト寄り補正制御プログラム732は、ハードディスク装置724以外の記録媒体に保存しても良い。つまり、ベルト寄り補正制御プログラム732は、画像形成装置がアクセス可能な記録媒体、或いはネットワークを介して接続される外部装置がアクセス可能な記録媒体に保存したものであっても良い。
中転ベルト2の位置は、上記のように、ステアリングローラ4の姿勢を変化させることで調整することができる。中転ベルト2の位置が安定するとは、その位置の変動が許容範囲内となっている状態である。このことから、ここでの安定位置情報は、中転ベルト2の位置を安定的に維持できるステアリングローラ4の姿勢を表す情報となっている。
ステアリングローラ4の姿勢は、ステアリングモータ712の回転量に応じて変化し、そのホームポジションが基準となる。このことから、ここでは便宜的に、安定位置情報はホームポジションからのステアリングモータ712の回転量(例えばパルス数)を表す情報と想定する。安定位置情報は、結果としてステアリングローラ4の姿勢を特定できる内容であれば良く、特に限定されない。
I/Fカード725は、操作部73を含む各種専用デバイス等と通信するための通信制御装置である。ここでは、I/Fカード725を1つのみ表しているが、I/Fカード725は複数、搭載されていても良い。
A/Dコンバータ726は、センサ検出信号S1、及びS2をA/D変換して、その電圧値をCPU721に出力する。それにより、CPU721は、ステアリングローラ4がホームポジションに位置しているか否か認識することができ、各受光素子41が発生させている電圧値から、中転ベルト2の位置を確認することができる。センサ検出信号S1、及びS2の各入力には、I/Fカード725と接続されていないI/Fが用いられる。
A/Dコンバータ726は、実際には複数、設けられている。しかし、ここでは、説明上、便宜的に1つのみと想定する。
ドライバ727は、ステアリングモータ712を駆動するための駆動回路である。このドライバ727は、CPU721が出力する制御信号に従って動作する。ドライバ727からの相信号(例えばパルス信号)S3の出力にも、I/Fカード725と接続されていないI/Fが用いられる。
図7では、CPU721がROM722、RAM723、ハードディスク装置724、I/Fカード725、A/Dコンバータ726、及びドライバ727とそれぞれ個別に接続されているように描いている。しかし、実際には、CPU721は、少なくとも、ROM722、RAM723、ハードディスク装置724、及びI/Fカード725とはバスを介して接続されている。
CPU721は、電源の投入により、ROM722に格納されているファームウェアをRAM723に読み出して実行する。その後、ハードディスク装置724からOS、及び必要なプログラムをRAM723上に読み出して実行する。そのようにして起動した後は、操作部73を介したユーザの指示、或いはネットワークを介した指示に対応するための処理を行う。また、開閉センサ74がドアの開状態を検出していた場合、記録媒体100上に画像を形成させる印刷処理を禁止させる。そのようにして、CPU721は画像形成装置全体を制御する。
ベルト寄り補正制御プログラム732は、CPU721に実行された場合、制御基板72上に図8に示す機能構成を実現させる。つまり、ベルト寄り補正制御プログラム732は、ローラ姿勢検出部81、ベルト位置検出部82、モード判定部83.記憶部84、及びモータ駆動制御部85を実現させる。
ローラ姿勢検出部81は、A/Dコンバータ726から出力される、ホームポジションセンサ711が発生させた電圧の値を監視して、ステアリングローラ4がホームポジションに位置しているか否かの判定を行う。また、モータ駆動制御部85がステアリングモータ712に出力する相信号S3を監視し、ステアリングローラ4の現在の姿勢を特定する。その姿勢は、ホームポジションからのステアリングモータ712の回転量(回転角度)、等であっても良い。
ベルト位置検出部82は、A/Dコンバータ726から入力される各受信素子41の電圧値から、中転ベルト2の位置を検出(特定)する機能である。モード判定部83は、現在、設定されているモード、つまりベルト寄り補正制御プログラム732の実行を開始した時に設定されているモードを判定する機能である。記憶部84は、安定位置情報群731を記憶する機能である。
モータ駆動制御部85は、モード判定部83が判定したモードに対応する安定位置情報を記憶部84から読み出し、ローラ姿勢検出部81が検出した姿勢からのステアリングモータ712の回転させるべき回転量を特定して、ステアリングモータ712を回転させる。また、モータ駆動制御部85は、ベルト位置検出部82が検出する中転ベルト2の位置を監視し、中転ベルト2の位置が安定しているか否かの確認を行う。モータ駆動制御部85は、その確認結果を、中転ベルト2の蛇行等を抑制(収束)するための寄り補正制御に反映させる。
本実施形態では、判定されたモードに応じて、安定位置情報によるステアリングモータ712の駆動を行う。これは、モードによって、中転ベルト2が安定する位置が変化して片寄りが発生するためである。
カラー画像を形成可能な画像形成装置では、記録媒体100に転写すべきトナー像に応じて、4つの画像形成ユニット1のなかで感光ドラム11を中転ドラム2に当接させるものが変化する。感光ドラム11を当接させる画像形成ユニット1、及びその数は、中転ベルト2の走行に影響を及ぼす。感光ドラム11を当接させる画像形成ユニット1、及びその数は、モードによって変化する。そのため、中転ベルト2の安定位置は、モードに応じて変化する。
このようなことから、本実施形態では、モードの変更を契機に、変更後のモードの安定位置情報によるステアリングモータ712の駆動を行い、そのモードで中転ベルト2の位置を安定させるようにステアリングローラ4の姿勢を変更する。それにより、寄り補正は、ステアリングローラ4の姿勢の変更後に行うようになっている。
図9は、ステアリングローラの姿勢を変更しない場合に、モード変更に伴う中転ベルトの位置の時間変化例を説明する図であり、図10は、本実施形態による画像形成装置におけるモード変更に伴う中転ベルトの位置の時間変化例を説明するグラフである。ここで図9、及び図10を参照し、モード変更時に安定位置情報を用いた中転ベルト2の位置制御による効果について具体的に説明する。なお、モード変更によりステアリングローラ4の姿勢を変更しない画像形成装置は、従来の画像形成装置に相当する。
図9、及び図10では、縦軸に中転ベルト2の検出位置(図9、及び図10中「ベルト位置(ベルト幅方向)[μm]」と表記)、横軸に時間をとっている。図9、及び図10において、時刻tはモード変更が行われたタイミングを表している。検出位置が「0」の位置に横線を引いているのは、この位置に中転ベルト2の位置を維持させる寄り補正制御を行うのを想定しているからである。
モードによって中転ベルト2の安定位置が異なる場合、モードの変更に伴い、中転ベルト2には変更後のモードでの安定位置に移動させる力が働くことになる。そのため、モード変更によりステアリングローラ4の姿勢変更を行わない場合、図9に示すように、モード変更によって中転ベルト2の位置は大きく変動し、その位置を0に近づけるのに長い時間がかかっている。中転ベルト2に大きい力が作用することから、蛇行の抑制は困難となり、その収束に要する時間も長くなる。
これに対し、モード変更を契機にステアリングローラ4の姿勢変更を行った場合、安定位置の違いによる力の発生を回避するか、或いはその力を極めて弱いレベルに抑制することができる。それにより、図10に示すように、モード変更が行われても、中転ベルト2の位置は安定した状態に維持される。そのため、寄り補正では、事実上、中転ベルト2の片寄りの修正を行う必要性は低く、蛇行に対応しなければならない可能性は非常に低くなる。これらは、高画質を維持しつつ、より高い生産性が実現されることを意味する。
安定位置情報群731は、モード毎に安定位置情報を有する。そのため、本実施形態では、各モード、つまり中転ベルト2に感光ドラム11を当接させる画像形成ユニット1、及びその数等の変化に適切に対応することができる。
本実施形態では、ステアリングローラ4の姿勢変更、つまり安定位置情報によるステアリングモータ712の駆動は、モードの確定を契機に行われる。モードの確定時とは、具体的には印刷の開始時、及びイニシャライズの実行時、等である。
印刷開始時にはモードは確定しており、確定したモードで中転ベルト2の走行を含む動作を画像形成装置は行う。イニシャライズの実行時には、予め定めたモードが初期設定され、各部の動作確認が行われる。その際に、中転ベルト2は走行される。中転ベルト2の位置は、走行によって移動する。
このようなことから、本実施形態では、イニシャライズの実行時のモード設定も中転ベルト2の寄り補正を行う機会としている。中転ベルト2がより安定する状態で走行させることから、イニシャライズの実行時の寄り補正もより短時間に行うことができる。
イニシャライズは、電源投入時の他に、開閉スイッチ74によるドアの検出結果が開状態から閉状態に変化した場合にも行われる。ドアが開状態になることでインターロック動作を行う場合、ステアリングモータ712の励磁が切れる。それにより、ステアリングローラ4の姿勢が変化する可能性がある。このようなことから、イニシャライズを実行する契機に係わらず、本実施形態ではステアリングローラ4の姿勢変更を行うようにしている。
上記のような制御を行うモータ駆動制御部85は、例えばCPU721、ROM722、RAM723、ハードディスク装置724、及びドライバ727によって実現される。記憶部84はハードディスク装置724、及びRAM723が相当する。これは、ハードディスク装置724上のデータはRAM723に読み出されて処理されるからである。
ローラ姿勢検出部81、及びベルト位置検出部82は、例えばCPU721、ROM722、RAM723、ハードディスク装置724、及びA/Dコンバータ726によって実現される。モード判定部83は、例えばCPU721、ROM722、RAM723、及びハードディスク装置724によって実現される。
図8に示すような機能構成を実現させるベルト寄り補正プログラム732は、プログラム721に、図11にフローチャートを表す補正制御処理を実行させる。その制御処理の実行により、図8に示すような機能構成が実現される。次に図11を参照し、補正制御処理について詳細に説明する。このベルト寄り補正制御プログラム732は、印刷開始時、或いはイニシャライズの実行時に呼び出されるサブプログラムである。その制御処理は、本実施形態によるベルト位置制御方法に相当する。
このベルト寄り補正制御プログラム732に制御が渡った場合、CPU721は、先ず、現在、イニシャライズの実行時か否か判定する(S1101)。現在、イニシャライズの実行時であった場合、S1101の判定はYESとなってS1110に移行する。イニシャライズの実行中でない場合、S1101の判定はNOとなってS1102に移行する。
S1102への移行は、印刷開始時であることを意味する。それにより、S1102では、CPU721は、現在、設定されている印刷モードは前回の印刷開始時のモードと異なるか否か判定する。前回と今回とで印刷モードが異なっていた場合、S1102の判定はYESとなってS1103に移行する。前回と今回とで印刷モードが同じであった場合、S1102の判定はNOとなってS1106に移行する。
S1103では、CPU721は、今回、設定されている印刷モードの判定を行う。ここでは、便宜的に印刷モードとして「フルカラーモード」及び「モノクロモード」のときの処理のみを図11に示している。
今回、設定されている印刷モードがフルカラーモードであった場合、S1103でその旨が判定され、S1104に移行する。そのS1104では、CPU721は、例えば安定位置情報群731をハードディスク装置724から読み出し、その安定位置情報群731中のフルカラーモードに対応する安定位置情報を抽出する。次にCPU721は、抽出した安定位置情報、及びステアリングローラ4の現在の姿勢から、ステアリングモータ712の必要な回転量(駆動量)を算出し、銅鑼愛馬727を介してステアリングモータ712を駆動する(S1105)。それにより、中転ベルト2が安定する位置にステアリングローラ4の姿勢を変更する。
次に、CPU721は、中転ベルト2を走行させる(S1106)。その後、CPU721は、蛇行を抑制しつつ、中転ベルト2の位置を基準となる位置(図10ではベルト位置が0の位置。以降「基準位置」と表記)に維持させるための中転ベルト寄り補正制御処理を実行する(S1107)。この中転ベルト寄り補正制御処理を実行した後、補正制御処理が終了する。
中転ベルト寄り補正制御処理の実行時、ステアリングモータ712は必要に応じて駆動される。その駆動を行った後のステアリングローラ4の姿勢を表す情報は保存され、次にステアリングローラ4の姿勢を変更する際に参照される。それにより、ステアリングローラ4の姿勢は適切に制御可能となっている。
なお、中転ベルト2の走行は、例えばCPU721が、I/Fカード725を介して通信する専用のユニットに指示を行うことで実現される。中転ベルト寄り補正制御処理は、中転ベルト2の位置が基準位置を含む所定の範囲内に安定的に維持されているのを確認することで終了する。印刷開始時にベルト寄り補正制御プログラム732が呼び出された場合、補正制御処理の終了後、印刷が開始することとなる。
一方、今回、設定されている印刷モードがモノクロモードであった場合、S1103でその旨が判定され、S1108に移行する。そのS1108では、CPU721は、例えば安定位置情報群731をハードディスク装置724から読み出し、その安定位置情報群731中のモノクロモードに対応する安定位置情報を抽出する。次にCPU721は、抽出した安定位置情報、及びステアリングローラ4の現在の姿勢から、ステアリングモータ712の必要な駆動量(回転量)を算出し、ドライバ727を介してステアリングモータ712を駆動する(S1109)。そのようにして、中転ベルト2が安定する位置にステアリングローラ4の姿勢を変更した後、上記S1106に移行する。
上記S1104、及びS1105のような処理は、他の設定可能な印刷モードでも同様に行われる。それにより、図11には、他の設定可能な印刷モードで実行される処理を省略している。他の設定可能な印刷モードとして、例えば2つの感光ドラムを当接させるモード等が挙げられる。また、モノクロモードにおいても、当接される感光ドラムに対してそれぞれ安定位置情報を設定しても良い。例えば、イエローの感光ドラムのみ当接される場合の安定位置情報とブラックの感光ドラムのみ当接される場合の安定位置情報とが異なっても良い。
上記S1101の判定がYESとなって移行するS1110では、CPU721は、イニシャライズの実行時に設定すべきモードに対応する安定位置情報を安定位置情報群731中から抽出する。次にCPU721は、抽出した安定位置情報、及びステアリングローラ4の現在の姿勢から、ステアリングモータ712の駆動量を算出し、ステアリングモータ712を駆動する(S1111)。そのようにして、中転ベルト2が安定する位置にステアリングローラ4の姿勢を変更した後、上記S1106に移行する。
なお、本実施形態では、安定位置情報群731は、画像形成装置の出荷時等にハードディスク装置724に予め保存されていることを想定している。これは、画像形成装置を使用開始時から高い生産性、及び高画質を実現させるためである。しかし、経時変化により、適切な安定位置情報が変化する可能性がある。このことから、安定位置情報を更新できるようにしても良い。
安定位置情報の更新は、例えばベルト寄り補正制御プログラム732に呼び出させるサブプログラムを用意することで行わせることができる。図7に示すように、安定位置情報の更新用のサブプログラム(以降「情報更新プログラム」と表記)735も、ハードディスク装置724に記憶させておけば良い。
そのような情報更新プログラム735を用意した場合、ベルト寄り補正制御プログラム732の実行によって実現される機能構成には、図8に示すように、更新部90が追加される。この更新部90は、ローラ姿勢検出部81が検出しているステアリングローラ4の姿勢、及びベルト位置検出部82が検出する中転ベルト2の位置を参照し、その参照結果から、記憶部84に記憶された安定位置情報群731を更新する。
この情報更新プログラム735は、例えば図11に示す補正制御処理内でS1107として実行される中転ベルト寄り補正制御処理内で呼び出せば良い。これは、中転ベルト寄り補正制御処理は、中転ベルト2の位置が基準位置近傍で安定しているのを確認した後、終了するからである。つまり、中転ベルト寄り補正制御処理内で呼び出すことにより、中転ベルト2の位置が基準位置近傍で安定している状況時でのステアリングローラ4の姿勢を確認できるからである。
図12は、情報更新プログラムの実行によって実現される情報更新処理を示すフローチャートである。次に、図12を参照し、その情報更新処理について詳細に説明する。ここでは、情報更新処理は、中転ベルト寄り補正制御処理内で予め定めた時間が経過する度に呼び出されるサブルーチン処理と想定している。
情報更新プログラム735に制御が渡った場合、CPU721は、先ず、中転ベルト2の位置の検出結果、及びステアリングローラ4の姿勢の検出結果を取得する(S1201)。次に、プログラム721は、中転ベルト2の今回の検出結果、及び過去の検出結果を用いて中転ベルト2の位置の変化範囲を確認する(S1202)。
その確認を行った後、CPU721は、中転ベルト2の位置が安定しているか否か判定する(S1203)。中転ベルト2の位置が基準位置近傍に安定的に維持されている場合、S1203の判定はYESとなってS1204に移行する。中転ベルト2の位置が基準位置から離れている、その位置が比較的に広い範囲で変化している、といったような場合、S1203の判定はNOとなり、ここで情報更新処理が終了する。
S1204では、CPU721は、現在のステアリングローラ4の姿勢を表す安定位置情報を算出する。次にCPU721は、算出した安定位置情報を、ハードディスク装置724に保存されている既存の対応する安定位置情報と比較し、その差が許容範囲内か否か判定する(S1205)。その差が許容範囲外であった場合、S1205の判定はNOとなり、安定位置情報を更新する必要はないとして、ここで情報更新処理が終了する。一方、その差が許容範囲内であった場合、S1205の判定はYESとなってS1206に移行する。
S1206では、CPU721は、今回、算出した安定位置情報を上書き保存する。そのようにして、ハードディスク装置724内の対応する安定位置情報を新しい安定位置情報に更新した後、情報更新処理が終了する。
このようにして、各モードの安定位置情報を必要に応じて更新した場合、モード変更時の寄り補正を行う時間をより短くすることができる。そのため、高画質、及び高い生産性を共に維持するうえで有用である。
上記情報更新処理を中転ベルト寄り補正制御処理内で実行させる場合、モード変更の度に、既存の安定位置情報は適切か否かが判定され、その判定結果に応じて更新されることになる。しかし、通常、このような頻度で安定位置情報の確認を行う必要はない。このことから、予め定めたタイミング、予め定めた条件の成立、或いはユーザ等の指示により、既存の安定位置情報を確認するようにしても良い。
この場合、安定位置情報の確認・更新は、例えばモードを自動的に変更しながら、各モードで図11に示すS1102〜S1109の処理を実行させれば良い。また、定める条件としては、寄り補正(中転ベルト2の位置の安定)に要する時間(例えば平均時間)に着目することが考えられる。これは、安定位置情報が不適切なものになるほど、寄り補正に要する時間は長くなると思われるからである。
また、本実施形態では、モード別に安定位置情報を用意しているが、これは、中転ベルト2の走行に影響を及ぼす画像形成ユニット1(感光ドラム11)、及びその数はモード(ここではサブモードを含む)によって変化するからである。モード以外に、中転ベルト2の走行に影響を及ぼす要素が存在する場合、その要素を考慮することが望ましい。