JP6648006B2 - 合成樹脂製ボトル - Google Patents

Description

本発明は、合成樹脂製ボトルに関するものであり、特に、高い形状保形性を持つ胴部を有し、内部が減圧状態になると底部を内部方向に変位させてこの減圧を吸収するようにした合成樹脂製ボトルに関する。

従来、合成樹脂（例えばポリエチレンテレフタレート）製のボトルに果汁飲料やお茶等の内容物を充填するに当たっては、内容物やボトルの殺菌を目的として、例えば９０℃前後の温度で内容物をボトルに充填し、すぐにキャップを装着して密封を行う、いわゆる高温充填と呼ばれる方法が用いられている。この高温充填においては、ボトルを密封した後に冷却を行うことから、ボトル内がかなりの減圧状態となるため、胴部に変形が容易な領域（いわゆる減圧吸収パネル）を設けることや、底部がボトルの内部方向に変位できるようにする（例えば特許文献１参照）ことで、ボトルの外観に不体裁な変形が表れないようにしている。ここで、特許文献１のように底部に減圧吸収機能を持たせる場合は、ボトルの外観として目立つ胴部に減圧吸収パネルを設ける必要がないことからデザインの自由度が高く、また、変形しやすい減圧吸収パネルが不要となるので胴部の面剛性が維持されて高い保形性を付与することができるという利点がある。

国際公開第２０１０／０６１７５８号

所謂ペットボトルに代表されるような食品用等に使用されるボトルの製造工程においては、内容物の充填工程の後、ボトルを次工程に搬送するための搬送装置として、ボトルをその底部において摺動自在に案内するシューターやボトルの底部を保持するコンテナ等の搬送装置が用いられる。

しかしながら、特許文献１のように底部に減圧吸収機能を持たせた構造では、内容物が高温充填されると、ボトルの各部の肉厚が微妙に異なること等を要因として、底部の減圧吸収変位に伴って底部の外周がいびつな形状に変形し、その外径が設計上で規定された最大径を超えるおそれがある。そして、ボトルの底部の外径が規定の最大径を超えると、製造工程において、ボトルの底部がシューターやコンテナに引っかかる等の不具合を生じるおそれがあった。

本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、底部に減圧吸収機能を持たせた構造において、内容物の高温充填後に底部が規定の最大径を超えて変形することを防止することができる合成樹脂製ボトルを提供することにある。

本発明は、内容物を注出する口部を有し、この口部から順に肩部、胴部及び底部を一体に形成するとともに内部の減圧に伴い底部をボトル内部方向に変位させて減圧吸収機能を発揮する合成樹脂製ボトルであって、前記胴部は、下端に環状のリブ部を備え、前記底部は、環状となる周縁部と、周縁部より径方向内側に設けられ該周縁部より下方に突出してボトルの接地部として機能する一方、減圧変形時にボトルの内側に向けて変位して該周縁部を接地部として機能させる突条と、該突条より径方向内側に位置しボトルの内側に向けて陥没させた陥没凹部とを備え、前記周縁部は、前記リブ部の下端縁に連結する円筒状の外周円筒部と、該外周円筒部の下端縁に連結するヒール状部とを有するヒール壁部と、該ヒール壁部よりも径方向内側に設けられ環状となる外周底壁部とを備え、前記外周円筒部の外径寸法が、前記リブ部の外径寸法よりも小さくされていることを特徴とする。

本発明は、上記構成において、前記周縁部に、放射状に延びる複数の溝部が周方向に等間隔に並べて設けられているのが好ましい。

本発明は、上記構成において、前記溝部は、径方向内側に向けた先細り形状であるのが好ましい。

本発明によれば、ボトルの底部の周縁部の外径寸法を、胴部の下端部における外径寸法よりも小さくすることにより、胴部の下端部と周縁部との間に段差が形成されているため、内容物の高温充填後に、底部の外周がいびつな形状に変形しても、当該変形を胴部の下端部と周縁部との間の段差内に留めて、当該底部の外径がこの合成樹脂製ボトルの規定の最大径を超えることを防止することができる。さらに、当該段差によるリブ様の効果によって周縁部の径方向外側への変形挙動を抑制することもできる。したがって、この合成樹脂製ボトルの製造工程において、当該ボトルの底部の外径が規定の最大径を超えることで、搬送の不具合を生じることを防止することができる。

また、本発明によれば、上記構成において、周縁部に、放射状に延びる複数の溝部を周方向に等間隔に並べて設けることにより、溝部に集中する応力を周方向全体に亘って均一化させて変位しやすい部位と変位し難い部位の偏りを抑制することができる。したがって、底部の外周のいびつな変形を抑制して、底部の外径がこの合成樹脂製ボトルの規定の最大径を超えることをさらに確実に防止することができる。

さらに、本発明によれば、上記構成において、溝部を、径方向内側に向けて先細り形状とすることにより、溝部への応力集中をより効果的に高めて、底部を更に変位し易くし、減圧吸収効果や上記効果をさらに高めることができる。

本発明によれば、周縁部に、放射状に延びる複数の溝部を周方向に等間隔に並べて設けることにより、溝部に集中する応力を周方向全体に亘って均一化させて変位しやすい部位と変位し難い部位の偏りを抑制し、これにより底部の外周のいびつな変形を抑制することができる。したがって、この合成樹脂製ボトルの製造工程において、当該ボトルの底部の外径が不正に変形することで、搬送の不具合を生じることを防止することができる。

また、本発明によれば、上記構成において、溝部を、径方向内側に向けて先細り形状とすることにより、溝部への応力集中をより効果的に高めて、底部を更に変位し易くし、減圧吸収効果や上記効果をさらに高めることができる。

さらに、本発明によれば、上記構成において、ボトルの底部の周縁部の外径寸法を、胴部の下端部における外径寸法よりも小さくすることにより、胴部の下端部と周縁部との間に段差が形成されているため、内容物の高温充填後に、底部の外周がいびつな形状に変形しても、当該変形を胴部の下端部と周縁部との間の段差内に留めて、当該底部の外径がこの合成樹脂製ボトルの規定の最大径を超えることを防止することができる。さらに、当該段差によるリブ様の効果によって周縁部の径方向外側への変形挙動を抑制することもできる。したがって、この合成樹脂製ボトルの製造工程において、当該ボトルの底部の外径が規定の最大径を超えることで、搬送の不具合を生じることを防止することができる。

本発明に従う合成樹脂製ボトルの実施形態を示す側面図である。 図１に示すボトルの下面図である。 図１に示すボトルの底部近傍につき、図２のＡ−Ａに沿う要部拡大断面図である。

以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。

図１は、本発明に従う合成樹脂製ボトルの実施形態を示す側面図であって、図２は、図１に示すボトルの下面図であって、図３は、図１に示すボトルの底部近傍につき、図２のＡ−Ａに沿う要部拡大断面図である。なお、図３に示した二点鎖線は、減圧吸収時において底部が上方へ変位する状況の一例である。

図中の符号１は、本発明に従う合成樹脂製ボトル（以下、単に「ボトル」と称す）の一実施形態を示す。ボトル１は、上方を開口させた円筒状の口部２を有し、この口部２に肩部３、円筒状の胴部４、及び底部５を一体に形成したものであり、ボトル１の内側は、内容物を収容する内部空間となっている。

胴部４は、周方向に環状に延在する周溝６を備えていて（本実施形態では総計５個）、これにより胴部４の面剛性を高めて良好な保形性を発揮させている。また、胴部４の下端部には環状のリブ部４ａが設けられている。なお胴部４の剛性（面剛性や座屈強度など）を高めるには、他にも胴部４に補強用の縦リブを設ける等、適宜変更することができる。

底部５は、その径方向最外部に位置する環状の周縁部１０を備えている。周縁部１０は、胴部４の下端縁に対して連結するヒール壁部１１と、このヒール壁部１１より径方向内側に設けられ環状となる外周底壁部１２とを備えるものである。ヒール壁部１１は、胴部４の下端縁つまりリブ４ａの下端縁に連結する円筒状の外周円筒部１１ａと、この外周円筒部１１ａの下端縁に連結するヒール状部１１ｂとを有し、外周底壁部１２はヒール状部１１ｂの内周縁に連結する。ヒール状部１１ｂは、外周円筒部１１ａと外周底壁部１２との間に連続して設けられ、下方に突出する湾曲状の部分である。また、周縁部１０より径方向内側には、周縁部１０より下方に突出する突条１３を備えている。突条１３は、ボトル１の接地部として機能するものであるが、減圧変形（減圧吸収）時にはボトルの内部空間へ向けて周縁部１０の下端よりも上方へ変位して、接地部としての機能を周縁部１０（ヒール状部１１ｂ）に付与するものである。また、突条１３より径方向内側には、ボトルの内部空間に向けて陥没した形状をなす陥没凹部１４を設けている。

本実施形態において外周底壁部１２は、図３に詳細に示すように、例えば平坦状に形成され、径方向内側に向けて上方に傾斜するものである。ここで、高温充填においては、内容物の温度によって合成樹脂が軟化しやすくなる上、充填圧力によってボトル内が加圧状態となるため、底部５に対して下方に向けた応力が作用することで当該底部５が下方に膨出変形するおそれがあるが、水平方向に対して外周底壁部１２の傾斜角度を大きくすることで、この膨出変形を有効に防止することができる。なお、外周底壁部１２の傾斜角度は、底部における膨出変形の防止効果と減圧吸収機能とのバランスを考慮して適宜選択されるが、内容物の種類や加熱充填の条件によっては、外周底壁部１２を傾斜させずに水平方向に向けて延在させてもよい。

突条１３は、本実施形態では、外周側部１３ａと内周側部１３ｂとの間に平坦状の先端部１３ｃを有し断面形状が略台形状となるものである。なお、先端部を湾曲させてＵ字状としてもよい。本実施形態において、先端部１３ｃは、径方向内側に向けて上方に僅かに傾斜しているが、水平方向に延在させてもよい。

また、本実施形態では、外周底壁部１２の内周端縁１２ａと突条１３の外周端縁１３ｄとの間に溝状凹部１５を設けている。これにより、底部５が変位しやすくなって、上方への変位がスムーズに進展することになる。また、底部５の肉厚は必ずしも均一ではないことから、底部５が上方へ変位する際には、変形しやすい部位から優先して変位することになるため、底部５の上方への変位は、周方向に凹凸状に変形しつつ放射状に伸延する凹凸部位に曲げ応力を加えられながら進展していくことになる。このため、曲げ応力が加えられる放射状伸延部位が径方向外側へ進行すると、接地部として機能する周縁部１０にまで変形が及ぶおそれがある。一方、溝状凹部１５を設ける場合は、曲げ応力が加えられる放射状伸延部位の径方向外側への進行をこの溝状凹部１５で妨げることができるので、周縁部１０の変形を有効に防止でき、ボトル１の接地部としての機能を安定して発揮させることができる。なお、内容物の種類や加熱充填の条件によっては、溝状凹部１５を省いて外周底壁部１２と突条１３とを直接連結させてもよい。

陥没凹部１４は、本実施形態では、内部空間に向けて膨出するように湾曲する側部と、水平方向に平坦状に延在する頂部とを備える断面形状となるものである。また陥没凹部１４は、ボトル１の外側へ向けて膨出するとともに放射状に延在する補強リブ１６（本実施形態では、図２に示すように周方向に等間隔で総計４個）を備えている。なお、陥没凹部１４や補強リブ１６の断面形状、また、補強リブ１６の本数等は、適宜変更することができる。

本発明では、底部５の周縁部１０の最外側部分を構成するヒール壁部１１の外周円筒部１１ａは、その外径寸法が胴部４の下端部における外径寸法よりも小さくされている。図示する場合では、外周円筒部１１ａは、胴部４の下端部に設けられるリブ部４ａに対して内側に凹んだ段差状に形成されている。外周円筒部１１ａの外周面と胴部４のリブ部４ａの外周面との間の段差高さは、予め行われた実験の結果等に基づき、減圧吸収時に底部５が上方へ変位し、これにより外周円筒部１１ａが変形を生じても、当該変形後の外周円筒部１１ａの外径がリブ部４ａの外径よりも大きくなったり、外周円筒部１１ａの一部が胴部４のリブ部４ａの外周面よりも径方向外側に突出したりすることがない値に設定されている。

周縁部１０には、内部空間に向けて凹ませた複数の溝部１７を設けることもできる。これらの溝部１７は、図２に示すように、周縁部１０に放射状に設けられるものであり、本実施形態においては、周方向に等間隔に並べて配置されている（本実施形態では総計１２個）。これらの溝部１７は、下面視において径方向内側に向けて先細り形状をなし、概略三角形状となっている。また、溝部１７の中央部における断面形状は、図３に示すように、内周端縁１７ａが外周底壁部１２の内周端縁１２ａと一致し、外周端縁１７ｂがヒール壁部１１の外周円筒部１１ａと一致するものであって、径方向外側に向けて上方に傾斜するように延在している。

なお、本実施形態では溝部１７は溝状凹部１５に接続するが、両者を接続させない構成としてもよい。また、溝部１７の形状は前記の概略三角形状に限定されず、概略円形状、楕円、長円形状、矩形状、台形状など、適宜選択することができる。

上記のような構成となるボトル１に内容物を高温で充填し、口部２にキャップを装着した後、冷却すると、ボトル１の内部は減圧状態となって、底部５は、図３に二点鎖線で例示するように、ボトル１の内部空間に向かって上方へ変位する。これにより、ボトル１内の減圧を吸収して胴部４の変形を防止することができる。

底部５が、ボトル１の内部空間に向かって上方へ変位すると、そのヒール壁部１１の外周円筒部１１ａが変形することになる。このとき、ボトル１の各部位における肉厚が僅かに不均一となっている場合には、外周円筒部１１ａは、周方向にいびつな形状に変形するおそれがある。しかしながら、本発明では、底部５の周縁部１０の最外側部分を構成するヒール壁部１１の外周円筒部１１ａの外径寸法を、胴部４の下端部（リブ部４ａ）における外径寸法よりも小さくしているので、底部５の上方への変位に伴い、外周円筒部１１ａにいびつな変形が生じたとしても、当該変形後の外周円筒部１１ａが胴部４のリブ部４ａの外周面よりも径方向外側に達して、このボトル１の規制の最大径つまり設計上の公差を考慮した最大径を超えることを防止することができる。しかも、胴部４は、その下端部に外周円筒部１１ａに対して径方向外側に突出するリブ部４ａを有する形状に形成されているので、当該リブ部４ａと外周円筒部１１ａとで形成される段差によるリブ様の効果によって、外周円筒部１１ａの径方向外側へ向けた変形を強固に抑制することができる。したがって、このボトル１の製造工程において、内容物の高温充填後に、当該ボトル１の底部５の外径が規定の最大径を超えることを防止して、例えば、その搬送工程における不具合を防止することができる。

また、周縁部１０に放射状に延びる複数の溝部１７を周方向に等間隔に並べて設けた場合には、溝部に集中する応力を周方向全体に亘って均一化させて、外周円筒部１１ａがボトル１の規制の最大径を超えて変形することをさらに確実に防止することができる。特に、本実施形態の溝部１７のように、溝部１７の形状を径方向内側に向けた先細り形状とした場合には、溝部１７への応力集中をより効果的に高めて、底部５を更に変位し易くして減圧吸収効果や上記効果をさらに高めることができる。また、溝部１７を設けて底部５の全体を均一に変形させることにより、このボトル１の接地安定性や外観を良好に保つこともできる。

上記実施形態においては、ボトル１の底部５は、その周縁部１０の外径寸法が胴部４の下端部における外径寸法よりも小さくされるとともに、周縁部１０に放射状に延びる複数の溝部１７が周方向に等間隔に並べて設けられた構成とされているが、これに限らず、その周縁部１０の外径寸法が胴部４の下端部における外径寸法よりも小さくされるが、周縁部１０に溝部１７が設けられない構成とすることもでき、または、周縁部１０に放射状に延びる複数の溝部１７が周方向に等間隔に並べて設けられるが、周縁部１０の外径寸法が胴部４の下端部における外径寸法と同一または大きくされる構成とすることもできる。

また、上記実施形態においては、底部５の周縁部１０の最外側部分を構成するヒール壁部１１の外周面を、胴部４の下端部であるリブ部４ａに対して段差を有する円筒形状の外周円筒部１１ａに形成するようにしているが、これに限らず、当該ヒール壁部１１の外周面を胴部４の下端部（リブ部４ａ）から下方に向けて段差なく縮径する形状（例えばテーパ形状）に形成するようにしてもよい。

本発明によれば、底部に減圧吸収機能を持たせた構造において、内容物の高温充填後に底部が規定の最大径を超えて変形することを防止することができる合成樹脂製ボトルを提供することができる。

１ ボトル
２ 口部
３ 肩部
４ 胴部
４ａ リブ部
５ 底部
６ 周溝
１０ 周縁部
１１ ヒール壁部
１１ａ ヒール壁部の外周円筒部
１１ｂ ヒール壁部のヒール状部
１２ 外周底壁部
１２ａ 平坦部の内周端縁
１３ 突条
１３ａ 外周側部
１３ｂ 内周側部
１３ｃ 先端部
１３ｄ 突条の外周端縁
１４ 陥没凹部
１５ 溝状凹部
１６ 補強リブ
１７ 溝部
１７ａ 溝部の内周端縁
１７ｂ 溝部の外周端縁

Claims (3)

1. 内容物を注出する口部を有し、この口部から順に肩部、胴部及び底部を一体に形成するとともに内部の減圧に伴い底部をボトル内部方向に変位させて減圧吸収機能を発揮する合成樹脂製ボトルであって、
   前記胴部は、下端に環状のリブ部を備え、
   前記底部は、環状となる周縁部と、周縁部より径方向内側に設けられ該周縁部より下方に突出してボトルの接地部として機能する一方、減圧変形時にボトルの内側に向けて変位して該周縁部を接地部として機能させる突条と、該突条より径方向内側に位置しボトルの内側に向けて陥没させた陥没凹部とを備え、
   前記周縁部は、前記リブ部の下端縁に連結する円筒状の外周円筒部と、該外周円筒部の下端縁に連結するヒール状部とを有するヒール壁部と、該ヒール壁部よりも径方向内側に設けられ環状となる外周底壁部とを備え、
   前記外周円筒部の外径寸法が、前記リブ部の外径寸法よりも小さくされていることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
2. 前記周縁部に、放射状に延びる複数の溝部が周方向に等間隔に並べて設けられている、請求項１に記載の合成樹脂製ボトル。
3. 前記溝部は、径方向内側に向けた先細り形状である、請求項２に記載の合成樹脂製ボトル。

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