以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置の系統図である。図1に示されるように、ポンプ装置は、吸込水槽1に連通し、当該吸込水槽1内の水を給水場所3(例えば、給水管網)へ移送するポンプ2を備える。本実施形態では、ポンプ2は本来複数(例えば、3台)並列に配置されているが、図が煩雑になるので1系列のみ示す。これら複数のポンプ2は、同一のポンプ性能(例えば、全揚程および容量など)を有するポンプ2から構成されてもよいし、異なるポンプ性能を有するポンプ2から構成されてもよい。これらポンプ2は、各ポンプが有するポンプ性能に応じた流量で運転される。すなわち、これらポンプ2は、各ポンプ性能に応じた回転速度で運転される。運転ポンプの組み合わせであるポンプ運転パターンは、後述するように、給水場所3へ移送する水の流量、ポンプ効率、揚程などを用いて算出される軸動力の合計に基づいて変更される。
本明細書において、「運転ポンプ」は、ポンプ運転パターンで選択された、実際に運転されるポンプ2のことをいう。例えば、ポンプ性能x1のポンプ2と、ポンプ性能x2のポンプ2と、ポンプ性能x3のポンプ2が並列に配置されているポンプ装置で、ポンプ運転パターンで選択された、実際に運転されるポンプがポンプ性能x1のポンプ2の場合、運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2である。ポンプ運転パターンで選択された、実際に運転されるポンプがポンプ性能x2のポンプ2と、ポンプ性能x3のポンプ2の場合、運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2と、ポンプ性能x3のポンプ2である。なお、ポンプ装置は、異なるポンプ性能のポンプ2を1台ずつ有するとは限らない。例えば、3台のポンプ2が並列に配置されたポンプ装置は、ポンプ性能x1の2台のポンプ2と、ポンプ性能x2の1台のポンプ2を有していてもよい。さらに、本明細書において、ポンプ運転パターンの切替は、運転ポンプの変更だけでなく、運転ポンプの台数の変更も含む。例えば、ポンプ運転パターンの切替は、運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2からポンプ性能x2のポンプ2に変更される場合だけでなく、運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2から、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2に変更される場合も含む。
図1に示されるように、ポンプ2の吸込口には、吸込水槽1と連通する一本の吸込配管5から分岐された複数本(例えば、3本)の分岐吸込配管5’がそれぞれ接続される。ポンプ2の吐出口には、分岐吐出配管6’がそれぞれ接続され、複数本(例えば、3本)の分岐吐出配管6’は、1本の吐出配管6に集合する。この吐出管6は、複数のポンプ2の共通吐出管である。ポンプ2は、吸込水槽1から吸込配管5および分岐吸込配管5’を介して吸い込んだ水を、分岐吐出配管6’および吐出配管(共通吐出管)6を介して給水場所3に移送する。
分岐吸込配管5’には、それぞれ、保守・点検時などに使用される止水弁11が配置される。分岐吐出配管6’には、それぞれ、逆止弁7およびポンプ吐出弁12が配置される。逆止弁7は、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止するために設けられる。ポンプ吐出弁12は、モータ駆動の電動弁として構成される。ポンプ吐出弁12の下流側には、保守・点検時などに使用される止水弁13が配置される。さらに、複数のポンプ2の共通吐出配管である吐出配管6には、ポンプ装置の吐出圧力を計測する圧力計17と、ポンプ装置の総吐出流量を計測する流量計18とが配置される。
ポンプ2には、該ポンプ2を駆動するためのモータ15が連結されている。モータ15には、モータ15の回転速度を検知する回転速度計19と回転速度を増減するための速度制御装置16が接続される。速度制御装置16には、速度制御装置16を制御するためのコントローラ20が配線(図示せず)により接続され、コントローラ20からの指令を受けた速度制御装置16によりモータ15の回転速度が決められる。このコントローラ20には、配線(図示せず)により圧力計17および流量計18が接続され、圧力計17および流量計18で取得された計測値がコントローラ20に送られる。速度制御装置16とコントローラ20とは、配線により接続されているが、図が煩雑となるため配線の図示を省略している。同様に、圧力計17および流量計18とコントローラ20とは、配線により接続されているが、図が煩雑となるため配線の図示を省略している。なお、コントローラ20は、後述するポンプ運転パターン制御も行う。
図2は、図1に示した実施形態に係るポンプ装置の運転特性曲線図(Q−H線図)である。図2において、横軸はポンプ装置の総吐出流量(すなわち、流量計18が計測する流量)を表し、縦軸はポンプ装置の吐出圧力(または揚程、すなわち圧力計17が計測する圧力)を表す。曲線Nx1 ,Nx2 ,Nx1+x2 ,Nx3 ,Nx2+x3は、ポンプ2の運転特性を、回転速度をパラメータとして示している。すなわち、曲線Nx1は、ポンプ性能x1のポンプ2が1台で運転されるときの運転特性を表し、曲線Nx2は、ポンプ性能x2のポンプ2が1台で運転されるときの運転特性を表し、曲線Nx3は、ポンプ性能x3のポンプ2が1台で運転されるときの運転特性を表している。曲線Nx1+x2は、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときの運転特性を表し、曲線Nx2+x3は、ポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときの運転特性を表している。なお、図が煩雑となるため、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときの運転特性を表す曲線Nx1+x3の図示は、省略されている。管路抵抗曲線Rは、ポンプ2から給水末端までの水の流量に応じて変わる管路抵抗である。推定末端圧力一定制御においては、コントローラ20は、管路抵抗曲線Rで示される管路抵抗を考慮して、ポンプ運転パターンと、このポンプ運転パターンで選択されたポンプ2(すなわち、運転ポンプ)の回転速度を制御する。すなわち、ポンプ2の吐出圧力が管路抵抗曲線Rに沿って変化するように圧力計17で得られた測定値に基づいて、ポンプ運転パターンと、このポンプ運転パターンで選択された運転ポンプの回転速度が、コントローラ20により制御される。
図2に示されるように、ポンプ装置から吐出される水の流量は、ポンプ運転パターンで選択された運転ポンプの台数と、運転ポンプの容量および回転速度とによって変わる。一般に、容量の小さいポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンが、容量の大きいポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わると、ポンプ装置の吐出流量は増大する。逆に、容量の大きいポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンが、容量の小さいポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わると、ポンプ装置の吐出流量は減少する。さらに、運転ポンプの台数が少ないポンプ運転パターンが、運転ポンプの台数が多いポンプ運転パターンに切り替わると、ポンプ装置の吐出流量は増大し、運転ポンプの台数が多いポンプ運転パターンが運転ポンプの台数が少ないポンプ運転パターンに切り替わると、ポンプ装置の吐出流量は減少する。従来は、ポンプ装置の吐出流量が所定の設定流量値より増加または減少したときに、ポンプ運転パターンを切り替えて、運転ポンプの台数および/または容量を増減させていた。
例えば、図2において、ポンプ性能x2のポンプ2が運転されるポンプ運転パターンのときに吐出流量が増加していき、設定流量値である60m3/min(図2の運転点A)を越えた時点で、ポンプ性能x2よりも大きな容量を有するポンプ性能x3のポンプ2が運転されるポンプ運転パターンに切り替えていた。あるいは、ポンプ性能x2のポンプ2が運転されるポンプ運転パターンを、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が並列で運転されるポンプ運転パターンに切り替えていた。この場合、吐出流量が、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプであるポンプ運転パターンで達成可能な流量範囲内にあるにも拘わらず、ポンプ運転パターンは自動的に切り替わってしまい、ポンプ運転パターンを切り替える前後でどちらのポンプ運転パターン方が省エネルギー運転になるかは検討されていなかった。本発明の実施形態では、ポンプ運転パターンを切り替えるべきか否かをポンプ装置の消費エネルギーの観点から判断し、より省エネルギーであるポンプ運転パターンを決定する。以下に、このポンプ運転パターン制御方法について説明する。
図1に示すように、コントローラ20は、流量計18が計測する流量値を監視しており、この流量値が増加しているか、または減少しているかを判断する流量判断部21を有している。さらに、コントローラ20は、ポンプ運転パターン決定部22を有している。ポンプ運転パターン決定部22は、流量判断部21が流量が増加していると判断した場合は、ポンプ装置のポンプ運転パターンを切り替えるか否かを決定する。すなわち、ポンプ運転パターン決定部22は、運転ポンプの台数を増加させるか否か、あるいは運転ポンプをポンプ容量が小さいポンプ2から大きいポンプ2に切り替えるか否かを決定する。同様に、ポンプ運転パターン決定部22は、流量判断部21が流量が減少していると判断した場合は、ポンプ運転パターンを切り替えるか否かを決定する。すなわち、ポンプ運転パターン決定部22は、運転ポンプの台数を減少させるか否か、あるいは運転ポンプをポンプ容量が大きいポンプ2から小さいポンプ2に切り替えるか否かを決定する。
ポンプ運転パターン決定部22は、回転速度制御ルール設定部23、領域決定部24、および優先順位決定部25を有している。なお、以下では、ポンプ運転パターン決定部22がポンプ運転パターン制御ロジックプログラムを有し、このポンプ運転パターン制御ロジックプログラムに基づいて、ポンプ運転パターンを決定する実施形態が説明される。ポンプ運転パターン制御ロジックプログラムは、ポンプ運転パターンを決定するプログラムの総称であり、ポンプ運転パターン決定部22に格納されている。
ポンプ運転パターン制御ロジックプログラムは、回転速度制御ルール設定部23によって設定される回転速度制御ルールを含んでいる。回転速度制御ルールは、複数のポンプ2が並列に運転されるポンプ運転パターンの場合に、各ポンプ2の吐出圧力を同一にするためのルールである。複数のポンプ2が並列で運転されるときは、各ポンプ2の吐出圧力を同一にする必要がある。例えば、全揚程が異なる運転ポンプが並列で運転されるポンプ運転パターンの場合に、各運転ポンプの吐出圧力が異なると、これら運転ポンプ間での吐出流量の平衡が崩れ、その結果、全揚程が小さい運転ポンプが締切運転となるか、極端な場合には、全揚程が小さい運転ポンプに逆流が生じることがある。あるいは、全揚程が大きい運転ポンプの吐出流量が過大になる場合もある。この問題を防ぐために、回転速度制御ルール設定部23は、各運転ポンプの吐出圧力を同一にするための回転速度制御ルールを設定する。ポンプ運転パターン制御ロジックプログラムは、この回転速度制御ルールに基づいて、各運転ポンプの回転速度を制御する。
回転速度制御ルールは、例えば、全揚程の小さいポンプ2の回転速度に対して、全揚程の大きいポンプ2の回転速度を、全揚程の小さいポンプ2の全揚程相当の換算回転速度に抑えながら、全揚程の小さいポンプ2および全揚程の大きいポンプ2の可変速並列運転を行うルールである。以下の説明では、全揚程の小さいポンプ2を、小ポンプ2と称することがあり、全揚程の大きいポンプ2を、大ポンプ2と称することがある。このような回転速度制御ルールによれば、小ポンプ2と大ポンプ2とが並列で運転される場合に、大ポンプ2の回転速度は、小ポンプ2の回転速度に対して所定の比率で換算される(比率制御)。
図3は、回転速度制御ルールを説明するためのグラフの一例であり、図4は、回転速度制御ルールを説明するためのグラフの他の例である。図3の上段のグラフは、ポンプ性能x1のポンプ2の運転特性を表す曲線Nx1と、ポンプ性能x2のポンプ2の運転特性を表す曲線Nx2と、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2とが並列運転されるときの運転特性を表す曲線Nx1+x2とを示している。図3に示されるように、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程Hx2は、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程Hx1よりも大きいので、ポンプ性能x1のポンプ2が小ポンプ2であり、ポンプ性能x2のポンプ2が大ポンプ2である。図3の下段のグラフは、小ポンプ2と大ポンプ2が並列で運転されるときに、小ポンプ2の回転速度に対して所定の比率で換算された大ポンプ2の回転速度を示すグラフである。
同様に、図4の上段のグラフは、ポンプ性能x2のポンプ2の運転特性を表す曲線Nx2と、ポンプ性能x3のポンプ2の運転特性を表す曲線Nx3と、ポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2とが並列運転されるときの運転特性を表す曲線Nx2+x3とを示している。図4に示されるように、ポンプ性能x3のポンプ2の全揚程Hx3は、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程Hx2よりも大きいので、ポンプ性能x2のポンプ2が小ポンプ2であり、ポンプ性能x3のポンプ2が大ポンプ2である。図3の下段のグラフは、小ポンプ2と大ポンプ2が並列で運転されるときに、小ポンプ2の回転速度に対して所定の比率で換算された大ポンプ2の回転速度を示すグラフである。
図3および図4に示される回転速度制御ルールの例では、小ポンプ2と大ポンプ2とが並列で運転される場合に、大ポンプ2の回転速度は、小ポンプ2の回転速度に対して所定の比率で換算される。この所定の比率は、大ポンプ2の締切全揚程に対する小ポンプ2の締切全揚程の比率をXとしたときに、X1/2である。締切全揚程の比Xは、回転速度の比の2乗に比例するので、回転速度の比は、締切全揚程の比Xの1/2乗に比例する。したがって、以下の式(1)を定義することができる。
(N2/N1)=(H1/H2)1/2=X1/2 ・・・(1)
ここで、H1は小ポンプ2の締切全揚程であり、H2は大ポンプ2の締切全揚程であり、N1は小ポンプ2の回転速度であり、N2は大ポンプ2の回転速度である。
図3に示される例では、小ポンプ2の締切全揚程H1は、60(=90−30)であり、大ポンプ2の締切全揚程H2は、70(=100−30)であるため、所定の比率X1/2は、以下の式(2)に示すように、0.93である。
(H1/H2)1/2=(60/70)1/2=0.93 ・・・(2)
したがって、図3に示される回転速度制御ルールでは、例えば、小ポンプ2の回転速度が100%のときに、この小ポンプ2と並列に運転される大ポンプ2の回転速度は93%(=100×0.93)である。
一方で、低揚程領域では、一般的に、小ポンプ2の制御可能範囲は、大ポンプ2の制御可能範囲よりも下側に存在する領域を有する。したがって、低揚程領域における小ポンプ2の回転速度は、回転速度制御ルール設定部23によって設定された回転速度制御ルールによって制限する必要がある。例えば、図3に示した例の低揚程領域では、大ポンプ2が制御可能な最低回転速度が60%であるため、回転速度制御ルールによって、小ポンプ2の最低回転速度は65%(=N2/X1/2=60/0.93)に制限される。
図4に示した例も、小ポンプ2(ポンプ性能x2のポンプ2)の締切全揚程H1は、60(=90−30)であり、大ポンプ2(ポンプ性能x3のポンプ2)の締切全揚程H2は、70(=100−30)であるため、所定の比率X1/2は、式(2)に示すように、0.93である。なお、図2に示される運転特性曲線図は、図3および図4を用いて説明された回転速度制御ルールに基づいて作成された運転特性曲線図である。すなわち、図2に示される曲線Nx1+x2では、ポンプ性能x2のポンプ2は、ポンプ性能x1のポンプ2の回転速度に所定の比率X1/2(本実施形態では、0.93)を乗算することによって得られた回転速度で運転され、曲線Nx2+x3では、ポンプ性能x3のポンプ2は、ポンプ性能x2のポンプ2の回転速度に所定の比率X1/2を(本実施形態では、0.93)乗算することによって得られた回転速度で運転される。
図1に示すように、ポンプ運転パターン決定部22は、領域決定部24を有している。ポンプ運転パターン決定部22がポンプ運転パターンを切り替えるか否かを決定する前に、領域決定部24は、切り替え前のポンプの運転パターン、及びいくつかある切り替え後のポンプ運転パターンにおけるポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度がポンプ運転パターンを切り替え可能な領域内にあるか否かを決定する。この領域決定部24を設けたことにより、運転ポンプがキャビテーション発生領域や過負荷領域、締切運転など、異常な状態で運転されることが防止される。
図5は、領域決定部24に記憶されている流量−回転速度グラフの一例である。図5では、ポンプ装置の総吐出流量およびポンプ運転パターンで選択された運転ポンプの回転速度が、ポンプ運転パターンが切り替え可能な領域内にあるか否かを決定するための境界線が描かれている。図5において、横軸はポンプ装置の総吐出流量[m3/min]であり、縦軸はポンプ2の回転速度[%]である。
さらに、図6乃至図16は、図5に示される流量−回転速度グラフの分解図である。より具体的には、図6は、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2の流量−回転速度グラフであり、図7は、ポンプ性能x1のポンプ2と、ポンプ性能x2のポンプ2と、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときのポンプ性能x1のポンプ2と、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときのポンプ性能x2のポンプ2の流量−回転速度グラフである。図8は、図7に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x1のポンプ2が運転可能な領域にハッチングを付した図であり、図9は、図7に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x2のポンプ2が運転可能な領域にハッチングを付した図である。図10は、図7に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x1のポンプ2だけでも運転可能な領域にハッチングを付した図である。図11は、図7に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x2のポンプ2だけでも運転可能な領域にハッチングを付した図である。
図12は、ポンプ性能x2のポンプ2と、ポンプ性能x3のポンプ2と、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときのポンプ性能x2のポンプ2と、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときのポンプ性能x3のポンプ2の流量−回転速度グラフである。図13は、図12に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x2のポンプ2が運転可能な領域にハッチングを付した図であり、図14は、図12に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x3のポンプ2が運転可能な領域にハッチングを付した図である。図15は、図12に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x2のポンプ2だけでも運転可能な領域にハッチングを付した図である。図16は、図12に示される流量―回転速度グラフにおいて、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x3のポンプ2だけでも運転可能な領域にハッチングを付した図である。
領域決定部24では、以下の4つの式を用いて、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度が上記の領域(ポンプ運転パターンを切り替え可能な領域)内にあるか否かの判定を行っている。
最大制限回転速度Nnmax.flow=α×Q ・・・(3)
最小制限回転速度Nnmin.flow=β×Q ・・・(4)
下限回転速度NL=γ ・・・(5)
上限回転速度NU=δ ・・・(6)
ここで、nは運転ポンプを特定するための記号であり、以下の説明では、運転ポンプのポンプ性能を表す記号x1,x2,x3が付される。例えば、ポンプ性能x1のポンプ2の最大制限回転速度は、Nx1max.flowと表され、ポンプ性能x2のポンプ2の最大制限回転速度は、Nx2max.flowと表される。さらに、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときの、ポンプ性能x1のポンプ2の最大制限回転速度は、Nx1ofx1+x2max.flowと表され、ポンプ性能x2のポンプ2の最大制限回転速度は、Nx2ofx1+x2max.flowと表される。Qはポンプ装置の総吐出流量である。α、β、γ、およびδは、ポンプ2のポンプ性能などから予め定められた定数であり、ポンプ運転パターン及びこのポンプ運転パターンで選択された運転ポンプにより異なる。
図6乃至図16で示される例における定数α、β、γ、およびδの一例を、ポンプ運転パターンで選択された運転ポンプの組み合わせごとに表1に示す。なお、表1における運転ポンプは、運転ポンプのポンプ性能を表す記号x1,x2,x3を用いて表されている。例えば、表1の「運転ポンプの組み合わせ」の列で、「x1」は、運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2を示し、「x1 of x1+x2」は、運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2であるときの、ポンプ性能x1のポンプ2を表す。なお、ポンプ運転パターンが選択する運転ポンプの組み合わせは、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2の組み合わせも存在する。しかしながら、図が煩雑となるため、図5乃至図16ではこの組み合わせの図示を省略しており、表1でも定数の記載を省略する。
図6乃至図16に示すように、式(5)と式(6)で、運転ポンプの回転速度の上限と下限とが決められる。式(3)と式(4)で運転ポンプの最大制限回転速度と最小制限回転速度とが定義される。式(3)〜式(6)によって表される直線で囲まれる領域が、ポンプ運転パターンで選択された運転ポンプの運転可能領域である。例えば、図6では、式(3)および式(4)から、ポンプ性能x1のポンプ2の最大制限回転速度Nx1max.flowは、Nx1max.flow=2.00Qの直線で描かれ、最小制限回転速度Nx1min.flowは、Nx1min.flow=5.95Qの直線で描かれる。同様に、ポンプ性能x2のポンプ2の最大制限回転速度Nx2max.flowは、Nx2max.flow=1.11Qの直線で描かれ、最小制限回転速度Nx2min.flowは、Nx2min.flow=3.33Qの直線で描かれる。
直線γ=60、直線δ=100、直線Nx1min.flow=5.95Q、および直線Nx2min.flow=3.33Qで囲まれる領域が領域Iとして定義される。直線γ=60、直線δ=100、直線Nx2min.flow=3.33Q、および直線Nx1max.flow=2.00Qとで囲まれる領域が領域IIとして定義される。直線γ=60、直線δ=100、直線Nx1max.flow=2.00Q、および直線Nx2max.flow=1.11Qとで囲まれる領域が領域IIIとして定義される。上記のように定義された領域Iおよび領域IIが、ポンプ運転パターンで選択された運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2である場合に、該ポンプ性能x1のポンプ2の運転可能な領域である。領域IIおよび領域IIIが、ポンプ運転パターンで選択された運転ポンプがポンプ性能x2のポンプ2である場合に、該ポンプ性能x2のポンプ2の運転可能な領域である。したがって、領域IIが、ポンプ性能x1のポンプ2を運転ポンプとして選択するポンプ運転パターンと、ポンプ性能x2のポンプ2を運転ポンプとして選択するポンプ運転パターンとを切り替え可能な領域である。
ポンプ装置のポンプ運転パターンを切り替えるか否かを判断する前に、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量およびポンプ2の回転速度が切り替え前のポンプ運転パターンで選択された運転ポンプで運転可能な領域内にあるか否かを確認するとともに、切り替え後のポンプ運転パターンで選択された運転ポンプが運転可能な領域内にあるか否かを確認する。例えば、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンを、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替えるか否かを判断する際、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度がポンプ性能x1のポンプ2で運転可能な領域IおよびIIで運転されているか否かを確認する。同時に、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度がポンプ性能x2のポンプ2で運転可能な領域IIおよびIIIで運転されるか否かを確認する。したがって、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度が領域IIにある場合に、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンを、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切替可能であると判断する。
図8に示されるように、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x1のポンプ2が運転可能な領域IVは、直線γ=65、直線δ=100、直線Nx1ofx1+x2 max.flow=0.90Q、および直線Nx1ofx1+x2 min.flow=2.26Qとで囲まれる領域である。さらに、図9に示されるように、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x2のポンプ2が運転可能な領域Vは、直線γ=60、直線δ=93、直線Nx2ofx1+x2 max.flow=0.84Q、および直線Nx2ofx1+x2 min.flow=2.06Qとで囲まれる領域である。さらに、図10に示されるように、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x1のポンプ2だけでも運転可能な領域VIは、直線γ=65、直線δ=100、直線Nx1max.flow=2.00Q、および直線Nx1ofx1+x2 min.flow=2.26Qとで囲まれる領域である。したがって、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度が領域VIにある場合に、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンを、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切替可能であると判断する。
同様に、図11に示されるように、ポンプ性能x1のポンプ2およびポンプ性能x2のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x2のポンプ2だけでも運転可能な領域VIIは、直線γ=60、直線δ=93、直線Nx2max.flow=1.11Q、および直線Nx2ofx1+x2 min.flow=2.06Qとで囲まれる領域である。したがって、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度が領域VIIにある場合に、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンを、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切替可能であると判断する。
図13に示されるように、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x2のポンプ2が運転可能な領域VIIIは、直線γ=60、直線δ=93、直線Nx2ofx2+x3 max.flow=0.48Q、および直線Nx2ofx2+x3 min.flow=1.20Qとで囲まれる領域である。さらに、図14に示されるように、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に運転されるときに、ポンプ性能x3のポンプ2が運転可能な領域IXは、直線γ=65、直線δ=100、直線Nx3ofx2+x3 max.flow=0.52Q、および直線Nx3ofx2+x3 min.flow=1.29Qとで囲まれる領域である。さらに、図15に示されるように、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x2のポンプ2だけでも運転可能な領域Xは、直線γ=60、直線δ=93、直線Nx2max.flow=1.11Q、および直線Nx2ofx2+x3 min.flow=1.20Qとで囲まれる領域である。したがって、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度が領域Xにある場合に、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンを、ポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切替可能であると判断する。
同様に、図16に示されるように、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2が並列運転されることが可能な領域であり、かつポンプ性能x3のポンプ2だけでも運転可能な領域XIは、直線γ=65、直線δ=100、直線Nx3max.flow=0.79Q、および直線Nx3ofx2+x3 min.flow=1.29Qとで囲まれる領域である。したがって、領域決定部24は、ポンプ装置の総吐出流量および運転ポンプの回転速度が領域XIにある場合に、ポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンを、ポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切替可能であると判断する。
領域決定部24が、ポンプ運転パターンを切り替え可能となる領域に入っていることを確認した後で、ポンプ運転パターン決定部22は、ポンプ運転パターン制御ロジックプログラムに含まれるポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って、ポンプ装置の総軸動力が小さくなるようにポンプ運転パターンを決定する。以下では、ポンプ装置の総軸動力を算出するためのポンプ運転パターン決定アルゴリズムについて説明する。
ポンプ装置を省エネルギーで運転するためには、運転ポンプが消費する総エネルギーをできるだけ少なくする必要がある。ポンプ運転パターンによって運転ポンプとして選択されたポンプ2の消費エネルギーは軸動力で表される。ポンプの軸動力とは、ポンプの羽根車を回転させるために必要な動力であり、以下の式で表される。
L=0.163×Q×H/(η/100) ・・・(7)
ここで、Lは軸動力[kW]、Qは流量[m3/min]、Hは全揚程[m]、ηはポンプ効率[%]である。全揚程H[m]は、吐出圧力P[m]から吸込水位[m]を引いた値である。本実施形態の吸込水位は30mである。よって、吐出圧力Pが90mの場合は、全揚程Hは60mとなる。
ポンプ装置において複数台配置されるポンプ2の総軸動力は、ポンプ1台あたりの軸動力を式(7)から算出し、容量が同一のポンプであれば得られたポンプ1台あたりの軸動力にポンプ運転台数を乗算することで算出できる。容量の異なるポンプの場合には、ポンプごとに個別に軸動力を式(7)から算出して合計する必要がある。したがって、ポンプ運転パターンを切り替えるか否かの判断は、実際のポンプ運転パターンPiでの総軸動力LPiと、総吐出流量を増加させるためのポンプ運転パターンPhでの総軸動力LPh、または総吐出流量を減少させるためのポンプ運転パターンPlでの総軸動力LPlを式(7)に基づいて算出し、総軸動力LPiと、総軸動力LPhまたは総軸動力LPlとを比較することにより、ポンプ運転パターンを切り替えるか否かを決定する。以下、図17乃至図23を参照して、ポンプ運転パターンがポンプ運転パターンPiである状態から、ポンプ運転パターンPhに切り替えるか否かを決定する場合における軸動力Lを求める方法が説明される。
図17は、ポンプ運転パターン切り替え直前の運転特性曲線図(Q−H線図)の一例であり、図18は、ポンプ運転パターン切り替え直後の運転特性曲線図(Q−H線図)の一例である。図17および図18では、簡略化のためにポンプ装置の吐出圧力を一定に保つ吐出圧力一定制御が行われる例が示されており、ポンプ性能x1のポンプ2(小ポンプ2)が運転ポンプであるポンプ運転パターンPiがポンプ性能x2のポンプ2(大ポンプ2)が運転ポンプであるポンプ運転パターンPhに切り替わるときの運転特性曲線図が描かれている。さらに、両図下部には、ポンプの吐出流量に対する軸動力Lを表す曲線が描かれている。
図17において、ポンプ装置がポンプ運転パターンPiで運転されているときの運転点Bの座標(QB * ,HB *)は、以下の式(8)で表される。
(QB * ,HB *)=(ΣQPi・xn・R ,HPi・xn・R) ・・・(8)
なお、QB *は、ポンプ運転パターンPiでポンプ装置が運転されているときの総吐出流量[m3/min]であり、HB *は、ポンプ運転パターンPiでポンプ装置が運転されているときの全揚程[m]である。以下の説明において、右肩に“*”が付いている座標値は既知の値または算出解であることを示す。例えば、ポンプ装置の総吐出流量QB *は、流量計18の計測値であり、ポンプ装置の全揚程HB *は、本実施形態では吐出圧力一定制御を行っているので、圧力計17の計測値である。
式(8)において、QPi・xn・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプが回転速度Rで運転されているときの吐出流量を示す。例えば、QPi・x1・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された、ポンプ性能x1の運転ポンプが回転速度R[%]で運転されているときの吐出流量を表し、QPi・x2・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された、ポンプ性能x2の運転ポンプが回転速度R[%]で運転されているときの吐出流量を表す。さらに、式(8)は、ポンプ装置の総吐出流量QB *がポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプの吐出流量の合計値であることを示している。例えば、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2である場合、ポンプ装置の総吐出流量QB *は、ポンプ性能x1のポンプ2の吐出流量QPi・x1・Rとポンプ性能x2のポンプ2の吐出流量QPi・x2・Rの合計値(すなわち、QB *=QPi・x1・R+QPi・x2・R)である。図17に示される例では、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2だけなので、ポンプ装置の総吐出流量QB *(=ΣQPi・xn・R)は、ポンプ性能x1のポンプ2の吐出流量QPi・x1・Rである。
式(8)において、HPi・xn・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプが回転速度Rで運転されているときの全揚程を示す。例えば、HPi・x1・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された、ポンプ性能x1を有する運転ポンプが回転速度R[%]で運転されているときの全揚程を表し、HPi・x2・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された、ポンプ性能x2を有する運転ポンプが回転速度R[%]で運転されているときの全揚程を表す。本実施形態では、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプの全揚程は、上述した回転速度制御ルールに基づいて同一となるように制御されている。したがって、例えば、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2である場合、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程HPi・x1・Rは、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPi・x2・Rと同一であり、ポンプ装置の全揚程HB *は、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程HPi・x1・Rと、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPi・x2・Rと同一である。図17に示される例では、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2だけなので、ポンプ装置の全揚程HB *は、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程HPi・x1・Rと同一である。
ポンプ運転パターンを図17に示されるポンプ運転パターンPi(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2)から、図18に示されるポンプ運転パターンPh(運転ポンプはポンプ性能x2のポンプ2)に切り替えたときの運転点Bは、切り換え前後の運転点が同一になるため、以下の式(9)で表される。
(QB * ,HB *)=(ΣQPh・xn・R ,HPh・xn・R) ・・・(9)
上述したように、式(9)において、QPh・xn・Rは、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプが回転速度Rで運転されているときの吐出流量を示す。例えば、QPh・x2・Rは、ポンプ運転パターンPhで選択された、ポンプ性能x2を有する運転ポンプが回転速度R[%]で運転されているときの吐出流量を表す。さらに、式(9)は、ポンプ装置の総吐出流量QB *がポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの吐出流量の合計値であることを示している。例えば、ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプが、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2である場合、ポンプ装置の総吐出流量QB *は、ポンプ性能x1のポンプ2の吐出流量QPh・x1・Rとポンプ性能x2のポンプ2の吐出流量QPh・x2・Rの合計値(すなわち、QB *=QPh・x1・R+QPh・x2・R)である。図18に示される例では、ポンプ運転パターンPhにおける運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2だけなので、ポンプ装置の総吐出流量QB *(=ΣQPh・xn・R)は、ポンプ性能x2のポンプ2の吐出流量QPh・x2・Rである。
同様に、式(9)において、HPh・xn・Rは、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプが回転速度Rで運転されているときの全揚程を示す。例えば、HPh・x2・Rは、ポンプ運転パターンPhで選択された、ポンプ性能x2を有する運転ポンプが回転速度R[%]で運転されているときの全揚程を表す。本実施形態では、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの全揚程は、上述した回転速度制御ルールに基づいて同一となるように制御されている。したがって、例えば、ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプが、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2である場合、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程HPh・x1・Rは、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPh・x2・Rと同一であり、ポンプ装置の全揚程HB *は、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程HPh・x1・Rと、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPh・x2・Rと同一である。図18に示される例では、ポンプ運転パターンPhにおける運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2だけなので、ポンプ装置の全揚程HB *は、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPh・x2・Rと同一である。
ポンプ運転パターンを、ポンプ運転パターンPi(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2)からポンプ運転パターンPh(運転ポンプはポンプ性能x2のポンプ2)に切り替えた直後の総吐出流量と全揚程は、切り替え直前の総吐出流量と全揚程に等しいので、以下の式(10)および式(11)が成り立つ。
ΣQPi・xn・R=ΣQPh・xn・R=QB * ・・・(10)
HPi・xn・R=HPh・xn・R=HB * ・・・(11)
ポンプ運転パターンで選択された各運転ポンプの運転点、即ち、ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプの運転点と、ポンプ運転パターンPhにおける各運転ポンプの運転点は次のように求めることができる。
ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプの回転速度NPi・xn *は、コントローラ20が速度制御装置16の制御のために回転速度計19の値を計測しているので、この回転速度計19から得ることができる。一方で、ポンプ運転パターンPhに切り替えた後の運転ポンプの回転速度NPh・xnは未知数となる。また、各運転ポンプの吐出流量の合計値であるQB *は流量計18の計測値である。各運転ポンプの容量が異なることもあるので、各運転ポンプの吐出流量QPi・xn・RやQPh・xn・Rは未知数であるが、上記した式(10)の関係にあり、総吐出流量QB *の按分値となる。なお、各運転ポンプの全揚程は、上記した式(11)の関係となる。なお、回転速度NPi・xn *は、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプの回転速度を表し、回転速度NPh・xnは、ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプの回転速度を表す。例えば、回転速度NPi・x1 *は、ポンプ運転パターンPiで選択されたポンプ性能x1のポンプ2の回転速度を表し、回転速度NPh・x2は、ポンプ運転パターンPhで選択されたポンプ性能x2のポンプ2の回転速度を表す。
ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプの運転点の座標を(QPi・xn・R ,HPi・xn・R ,NPi・xn *)と表し、ポンプ運転パターンPhにおける各運転ポンプの運転点の座標を(QPh・xn・R ,HPh・xn・R ,NPh・xn)と表した場合、式(11)により、これら座標はそれぞれ次のように表される。
(QPi・xn・R ,HPi・xn・R ,NPi・xn *)
=(QPi・xn・R ,HB * ,NPi・xn *)・・・(12)
(QPh・xn・R ,HPh・xn・R ,NPh・xn)
=(QPh・xn・R ,HB * ,NPh・xn)・・・(13)
ここで、図17および図18に示されるようなポンプ運転特性曲線図(Q−H線図)において、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプが100%の回転速度で運転される場合、全揚程Hは、吐出流量Qの関数として表されるので、以下の関係が成り立つ。
HPi・xn・100=f(QPi・xn・100) ・・・(14)
ここで、HPi・xn・100は、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが100%の回転速度で運転されるときの全揚程を表し、QPi・xn・100は、このポンプが100%の回転速度で運転されるときの吐出流量を表す。すなわち、式(14)は、全揚程HPi・xn・100が吐出流量QPi・xn・100を変数とした関数fの式から得られることを表している。関数fの式は、運転ポンプの性能試験などにおいて得られた全揚程Hと吐出流量Qとから定まる点を複数プロットし、このプロットされた複数点を近似曲線で繋いだときの多項近似式として得ることができる。この多項近似式は、例えば、二次曲線として描くことができる。この多項近似式は、予め定められており、コントローラ20に記憶されている。
また、図17および図18に示されるようなポンプ運転特性曲線図(Q−H線図)において、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプが100%の回転速度で運転される場合、吐出流量Qは、全揚程Hの関数として表されるので、以下の関係が成り立つ。
QPi・xn・100=g(HPi・xn・100) ・・・(15)
ここで、QPi・xn・100は、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが100%の回転速度で運転されるときの吐出流量を表し、HPi・xn・100は、この運転ポンプが100%の回転速度で運転されるときの全揚程を表す。すなわち、式(15)は、吐出流量QPi・xn・100が全揚程HPi・xn・100を変数とした関数gの式から得られることを表している。関数gの式は、運転ポンプの性能試験などにおいて得られた吐出流量Qと全揚程Hとから定まる点を複数プロットし、このプロットされた複数点を近似曲線で繋いだときの多項近似式として得ることができる。この多項近似式は、例えば、二次曲線として描くことができる。この多項近似式は、予め定められており、コントローラ20に記憶されている。
図19は、ポンプ運転パターンで選択される運転ポンプのポンプ効率を示したグラフの一例である。図19に示されるように、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプがR(=NPi・xn *)%の回転速度で運転される流量−ポンプ効率特性曲線(Q−η曲線)では、ポンプ効率ηは、吐出流量Qの関数として表されるので、以下の関係が成り立つ。
ηPi・xn・R=h(QPi・xn・100) ・・・(16)
ここで、ηPi・xn・Rは、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが回転速度R%で運転されるときのポンプ効率を表す。例えば、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2であり、この運転ポンプが回転速度R%で運転される場合、ポンプ効率は、ηPi・x1・Rと表される。QPi・xn・100は、上述のように、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが100%の回転速度で運転されるときの吐出流量を表す。すなわち、式(16)は、R%の回転速度で運転される運転ポンプのポンプ効率ηPi・xn・Rは、この運転ポンプが100%の回転速度で運転されるときの吐出流量に換算されるQPi・xn・100を変数とした関数hの式から得られることを表している。関数hの式は、ポンプ2の性能試験などにおいて得られたポンプ効率ηと吐出流量Qとから定まる点を複数プロットし、このプロットされた複数点を近似曲線で繋いだときの多項近似式として得ることができる。この多項近似式は、例えば、三次曲線として描くことができる。この多項近似式は、予め定められており、コントローラ20に記憶されている。
図20は、ポンプ運転パターンPiで選択されたポンプ性能x1のポンプ2が回転速度NPi・x1 *%で運転されている、図17に示す運転点Bから、ポンプ性能x1のポンプ2が回転速度100%で運転される運転点CPi・x1・100を換算するときの運転特性曲線図(Q−H線図)である。図20に示されるように、回転速度NPi・x1 *%の運転点Bに対し相似則により得られる回転速度100%の換算点CPi・x1・100の座標は(QPi・x1・100 ,HPi・x1・100)であり、この換算点CPi・x1・100は、ポンプ性能x1のポンプ2が回転速度100%で運転されるときの運転特性曲線(Q−H曲線)と、運転点Bを通る二次曲線H=K×Q2の交点から求めることができる。ここで、Kは下式により求められる。
K=HB */(QPi・xn・R)2 ・・・(17)
したがって、換算点CPi・x1・100を求めるためには、QPi・x1・Rを求めるか、もしくは決定しておく必要がある。
ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが回転速度100%で運転されるときの流量QPi・xn・100と、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが回転速度R%で運転されるときの流量QPi・xn・Rとの間には、以下の式(18)の関係が成り立つ。ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが回転速度100%で運転されるときの全揚程HPi・xn・100と、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプが回転速度R%で運転されるときの全揚程HPi・xn・Rとの間には、以下の式(19)の関係が成り立つ。
QPi・xn・R=(NPi・xn */100)×QPi・xn・100 ・・・(18)
HPi・xn・R=(NPi・xn */100)2×HPi・xn・100 ・・・(19)
ここで、NPi・xn *は、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプの回転速度である。(便宜上記号が異なるが、NPi・xn *とRは共に回転速度[%]を表す)
式(18)から、以下の式(20)が導かれる。
QPi・xn・100=QPi・xn・R/(NPi・xn */100) ・・・(20)
式(19)から、以下の式(21)が導かれる。
HPi・xn・100=HPi・xn・R/(NPi・xn */100)2 ・・・(21)
式(21)に式(11)代入すると、以下の式(22)が導かれる。
HPi・xn・100=HB */(NPi・xn */100)2 ・・・(22)
式(20)および式(21)を式(14)に代入すると、以下の式(23)が導かれる。
HPi・xn・R/(NPi・xn */100)2
=f(QPi・xn・R/(NPi・xn */100))
よって、
HPi・xn・R=(NPi・xn */100)2×
f(QPi・xn・R/(NPi・xn */100))・・・(23)
式(20)および式(21)を式(15)に代入すると、以下の式(24)が導かれる。
QPi・xn・R/(NPi・xn */100)
=g(HPi・xn・R/(NPi・xn */100)2)
よって、
QPi・xn・R=(NPi・xn */100)×
g(HPi・xn・R/(NPi・xn */100)2)・・・(24)
式(11)を式(24)に代入すると、以下の式(25)が導かれ、式(25)により、各運転ポンプの吐出流量QPi・xn・Rが求められる。
QPi・xn・R=(NPi・xn */100)×g(HB */(NPi・xn */100)2)
・・・(25)
式(25)を式(17)に代入すると、以下の式(26)が導かれ、Kが求められる。
K=HB */((NPi・xn */100)×g(HB */(NPi・xn */100)2))2
・・・(26)
式(26)によってKが得られるので、回転速度NPi・xn *%の運転点Bに対し相似則により得られる回転速度100%の換算点CPi・xn・100を、回転速度が100%の運転特性曲線(Q−H曲線)と運転点Bを通る二次曲線H=K×Q2との交点より求めることができる。
式(20)を式(16)に代入すると、以下の式(27)が導かれる。
ηPi・xn・R=h(QPi・xn・R/(NPi・xn */100)) ・・・(27)
式(25)を式(27)に代入することにより、以下の式(28)が導かれる。
ηPi・xn・R=h((NPi・xn */100)×
g(HB */(NPi・xn */100)2)/
(NPi・xn */100))・・・(28)
式(28)により、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプのポンプ効率ηPi・xn・Rを算出することができる。
図20は、ポンプ運転パターンPhで選択されたポンプ性能x2のポンプ2が回転速度NPh・x2 *%で運転されている、図18に示す運転点Bから、ポンプ性能x2のポンプ2が回転速度100%で運転される運転点CPh・x2・100を換算するときの運転特性曲線図(Q−H線図)としても利用できる。ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプが回転速度100%で運転されるときの換算点CPh・xn・100の座標は、(QPh・xn・100 ,HPh・xn・100 *)と表される。
式(27)と同様に、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rは、以下の式(29)により得られる。
ηPh・xn・R=h(QPh・xn・R/(NPh・xn */100)) ・・・(29)
ここで、式(25)と同様に、QPh・xn・Rには、以下の式(30)の関係が成り立つ。
QPh・xn・R=(NPh・xn/100)×g(HB */(NPh・xn/100)2)
・・・(30)
また、式(17)と同様に、以下の式(31)により、ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプが回転速度100%で運転されるときの換算点CPh・xn・100を、該運転ポンプが回転速度100%で運転されるとき運転特性曲線(Q−H曲線)と、運転点Bを通る二次曲線H=K×Q2との交点より求めることができる。
K=HB */(QPh・xn・R)2 ・・・(31)
なお、ポンプ運転パターンPhへ切り替え後の運転ポンプの回転速度NPh・xnは、以下の式(32)で表される。
NPh・xn=100×QPh・xn・R/QPh・xn・100 ・・・(32)
これらの式(29)〜式(32)より、ポンプ運転パターンPhにおける運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rを求める方法は、以下の2つの方法がある。
一方の方法は、ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプの回転速度NPh・xnを決定してから、式(30)により得られるQPh・xn・Rと、決定したNPh・xnを式(29)に代入することにより、運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rを求める方法である。
他方の方法は、まず、ポンプ運転パターンPhにおける運転ポンプの吐出流量QPh・xn・Rを決定し、回転速度100%の運転特性曲線(Q−H曲線)と運転点Bを通る二次曲線H=K×Q2との交点よりQPh・xn・100を得る。その次に、式(32)により得られるNPh・xnと、決定したQPh・xn・Rを式(29)に代入することにより、運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rを求める方法である。
式(7)および式(11)により、ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプのポンプ軸動力LPi・xnは、以下の式(33)により求められる。なお、式(25)よりQPi・xn・Rを既知の値、式(28)よりηPi・xn・Rを既知の値と定義する。
LPi・xn=0.163×QPi・xn・R *×HB */(ηPi・xn・R */100)
・・・(33)
同様に、ポンプ運転台パターンPhにおける各運転ポンプのポンプ軸動力LPh・xnは、以下の式(34)により求められる。
LPh・xn=0.163×QPh・xn・R×HB */(ηPh・xn・R/100)
・・・(34)
このように、式(25)、式(28)、および式(33)を用いて、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプの軸動力LPi・xnを求めることができる。したがって、式(35)に示されるように、ポンプ運転パターンPiで運転されるポンプ装置の総軸動力LPiは、各運転ポンプの軸動力LPi・xnの総和を求めれば得ることができる。
LPi=0.163×HB *×Σ(QPi・xn・R/(ηPi・xn・R/100))
=0.163×HB *×Σ((NPi・xn */100)×
g(HB */(NPi・xn */100)2)/
(h((NPi・xn */100)×g(HB */(NPi・xn */100)2)
/(NPi・xn */100))/100)) ・・・(35)
同様に、式(29)、式(30)、および式(34)を用いて、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの軸動力LPh・xnを求めることができる。したがって、式(36)に示されるように、ポンプ運転パターンPhで運転されるポンプ装置の総軸動力LPhは、各運転ポンプの軸動力LPh・xnの総和を求めれば得ることができる。
LPh=0.163×HB *×Σ(QPh・xn・R/(ηPh・xn・R/100))
=0.163×HB *×Σ((NPh・xn/100)×
g(HB */(NPh・xn/100)2)/
(h(QPh・xn・R/(NPh・xn */100))/100))
・・・(36)
図17に示されるポンプ運転パターンPiの例の場合、このポンプ運転パターンPiで選択される運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2だけである。したがって、式(35)から、ポンプ装置の総軸動力LPiを、以下の式(37)から得ることができる。
LPi=0.163×HB *×(QPi・x1・R/(ηPi・x1・R/100)
・・・(37)
図18に示されるポンプ運転パターンPhの例の場合、このポンプ運転パターンPhで選択される運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2だけである。したがって、式(36)から、ポンプ装置の総軸動力LPhを、以下の式(38)から得ることができる。
LPh=0.163×HB *×(QPh・x2・R/(ηPh・x2・R/100))
・・・(38)
図21は、ポンプ運転パターン切り替え直前の運転特性曲線図(Q−H線図)の他の例であり、図22は、ポンプ運転パターン切り替え直後の運転特性曲線図(Q−H線図)の他の例である。図21および図22では、簡略化のためにポンプ装置の吐出圧力を一定に保つ吐出圧力一定制御が行われる例が示されており、ポンプ性能x2のポンプ2(大ポンプ2)が運転ポンプであるポンプ運転パターンPiが、ポンプ性能x1のポンプ2(小ポンプ2)とポンプ性能x2のポンプ2(大ポンプ2)が運転ポンプであるポンプ運転パターンPhに切り替わるときの運転特性曲線図が描かれている。さらに、両図下部には、ポンプの吐出流量に対する軸動力Lを表す曲線が描かれている。
図21において、ポンプ装置がポンプ運転パターンPiで運転されているときの運転点Dの座標(QD * ,HD *)は、上記した式(8)と同様に、以下の式(39)で表される。
(QD * ,HD *)=(ΣQPi・xn・R ,HPi・xn・R) ・・・(39)
なお、QD *は、ポンプ運転パターンPiでポンプ装置が運転されているときの総吐出流量[m3/min]であり、HD *は、ポンプ運転パターンPiでポンプ装置が運転されているときの全揚程[m]である。QD *は、流量計18の計測値であり、HD *は、本実施形態では吐出圧力一定制御を行っているので、圧力計17の計測値である。図21に示される例では、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2だけなので、ポンプ装置の総吐出流量QD *は、ポンプ性能x2のポンプ2の吐出流量QPi・x2・Rである。
上述したように、本実施形態におけるポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプの全揚程HPi・xn・Rは、回転速度制御ルールに基づいて同一となるように制御されている。したがって、ポンプ装置の全揚程HD *は、各運転ポンプの全揚程HPi・xn・Rと同一である。図21に示される例では、ポンプ運転パターンPiにおける運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2だけなので、ポンプ装置の全揚程HD *は、ポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPi・x2・Rと同一である。
ポンプ運転パターンを図21に示されるポンプ運転パターンPi(運転ポンプはポンプ性能x2のポンプ2)から、図22に示されるポンプ運転パターンPh(運転ポンプはポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2)に切り替えたときの運転点Dの座標は、切り換え前後の運転点が同一になるため、以下の式(40)で表される。
(QD *,HD *)=(ΣQPh・xn・R,HPh・xn・R) ・・・(40)
図22に示される例では、ポンプ運転パターンPhにおける運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2なので、ポンプ装置の総吐出流量QD *は、ポンプ性能x1のポンプ2の吐出流量QPh・x1・Rと、ポンプ性能x2のポンプ2の吐出流量QPh・x2・Rとの合計値(すなわち、QD *=QPh・x1・R+QPh・x2・R)になる。
上述したように、本実施形態におけるポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの全揚程HPh・xn・Rは、上述した回転速度制御ルールに基づいて同一となるように制御されている。したがって、ポンプ装置の全揚程HD *は、各運転ポンプの全揚程HPh・xn・Rと同一である。図22に示される例では、ポンプ運転パターンPhにおける運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2なので、ポンプ装置の全揚程HD *は、ポンプ性能x1のポンプ2の全揚程HPh・x1・R、およびポンプ性能x2のポンプ2の全揚程HPh・x2・Rと同一である。
ポンプ運転パターンを、ポンプ運転パターンPi(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2)からポンプ運転パターンPh(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2)に切り替えた直後の総吐出流量と全揚程は、切り替え直前の総吐出流量と全揚程に等しいので、以下の式(41)および式(42)が成り立つ。
ΣQPi・xn・R=ΣQPh・xn・R=QD * ・・・(41)
HPi・xn・R=HPh・xn・R=HD * ・・・(42)
ポンプ運転パターンで選択された各運転ポンプの運転点、即ち、ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプの運転点と、ポンプ運転パターンPhにおける各運転ポンプの運転点は次のように求めることができる。
ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプの回転速度NPi・xn *は、コントローラ20が速度制御装置16の制御のために回転速度計19の値を計測しているので、この回転速度計19から得ることができる。一方で、ポンプ運転パターンPhに切り替えた後の各運転ポンプの回転速度NPh・xnは未知数となる。また、各運転ポンプの吐出流量の合計値であるQD *は流量計18の計測値である。図22に示されるポンプ運転パターンPhのように、各運転ポンプの容量が異なることもあるので、各運転ポンプの吐出流量QPi・xn・RやQPh・xn・Rは未知数であるが、上記した式(41)の関係にあり、総吐出流量QD *の按分値となる。なお、各運転ポンプの全揚程は、上記した式(42)の関係となる。
ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプの運転点の座標を(QPi・xn・R ,HPi・xn・R ,NPi・xn *)と表し、ポンプ運転パターンPhにおける各運転ポンプの運転点の座標を(QPh・xn・R ,HPh・xn・R ,NPh・xn)と表した場合、式(42)により、これら座標はそれぞれ次のように表される。
(QPi・xn・R ,HPi・xn・R ,NPi・xn *)
=(QPi・xn・R ,HD *,NPi・xn *)・・・(43)
(QPh・xn・R ,HPh・xn・R ,NPh・xn *)=(QPh・xn・R,HD *,NPh・xn)
・・・(44)
ポンプ装置の総吐出流量QD *を各運転ポンプの吐出流量で按分する方法を、運転ポンプがポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2であるポンプ運転パターンPhを示した図22を用いて説明する。図22に示される例の場合、上記した式(2)で示される所定の比率X1/2は、0.93である。運転点Dの全揚程で、ポンプ性能x1のポンプ2を運転する場合、ポンプ性能x1のポンプ2の回転速度NPh・x1は、図22から86%であることが解る。したがって、ポンプ性能x2のポンプ2の回転速度NPh・x2は、上述の回転速度制御ルールに基づいて、80%(=86×0.93)であることが解る。なお、この場合のポンプ装置の総吐出流量QD *は、ポンプ性能x1のポンプ2が回転速度86%で運転されたときの吐出流量QPh・x1・86と、ポンプ性能x2のポンプ2が回転速度80%で運転されたときの吐出流量QPh・x2・80の合計であり、以下の式(45)の関係が成立する。
QD *=QPh・x1・86+QPh・x2・80 ・・・(45)
ここで、図21および図22に示されるようなポンプ運転特性曲線図(Q−H線図)においても、上述したように、式(14)から式(16)の関係式を導くことができる。
図23は、ポンプ運転パターンPiで選択されたポンプ性能x2のポンプ2が回転速度NPi・x2 *%で運転されている、図21に示す運転点Dから、ポンプ性能x2のポンプ2が回転速度100%で運転される運転点EPi・x2・100を換算するときの運転特性曲線図(Q−H線図)である。図23に示されるように、回転速度NPi・x2 *%の運転点Dに対し相似則により得られる回転速度100%の換算点EPi・x2・100の座標は(QPi・x2・100 ,HPi・x2・100)であり、この換算点EPi・x2・100は、ポンプ性能x2のポンプ2が回転速度100%で運転されるときの運転特性曲線(Q−H曲線)と、点Dを通る二次曲線H=K×Q2の交点から求めることができる。ここで、Kは下式により求められる。
K=HD */(QPi・xn・R)2 ・・・(46)
したがって、換算点EPi・x2・100を求めるためには、QPi・x2・Rを求めるか、もしくは決定しておく必要がある。
式(42)を上記した式(24)に代入すると、以下の式(47)が導かれ、式(47)により、各運転ポンプの吐出流量QPi・xn・Rが求められる。
QPi・xn・R=(NPi・xn */100)×g(HD */(NPi・xn */100)2)
・・・(47)
式(47)を式(46)に代入すると、以下の式(48)が導かれ、Kが求められる。
K=HD */((NPi・xn */100)×g(HD */(NPi・xn */100)2))2
・・・(48)
式(48)によってKが得られるので、回転速度NPi・xn *%の運転点Dに対し相似則により得られる回転速度100%の換算点EPi・xn・100を、回転速度が100%の運転特性曲線(Q−H曲線)と運転点Dを通る二次曲線H=K×Q2との交点より求めることができる。
式(47)を上記した式(27)に代入することにより、以下の式(49)が導かれる。
ηPi・xn・R=h((NPi・xn */100)×
g(HD */(NPi・xn */100)2)/(NPi・xn */100))・・・(49)
式(49)により、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプのポンプ効率ηPi・xn・Rを算出することができる。
ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rは、上記した式(29)により得られる。
ここで、式(47)と同様に、QPh・xn・Rには、以下の式(50)の関係が成り立つ。
QPh・xn・R=(NPh・xn/100)×g(HD */(NPh・xn/100)2)
・・・(50)
また、式(46)と同様に、以下の式(51)により、ポンプ運転パターンPhで選択されたポンプ性能x1のポンプ2が回転速度100%で運転されるときの換算点EPh・x1ofx1+x2・100を、運転ポンプが回転速度100%で運転されるとき運転特性曲線(Q−H曲線)と、運転点Dx1ofx1+x2を通る二次曲線H=K×Q2との交点より求めることができる。同様に、以下の式(52)により、ポンプ運転パターンPhで選択されたポンプ性能x2のポンプ2が回転速度100%で運転されるときの換算点EPh・x2ofx1+x2・100を、運転ポンプが回転速度100%で運転されるとき運転特性曲線(Q−H曲線)と、運転点Dx2ofx1+x2を通る二次曲線H=K×Q2との交点より求めることができる。
KPh・x1=HD */(QPh・x1・86)2 ・・・(51)
KPh・x2=HD */(QPh・x2・80)2 ・・・(52)
なお、ポンプ運転パターンPhへ切り替え後の各運転ポンプの回転速度NPh・xnは、上記した式(32)で表される。
これらの式(29)、式(32)、式(50)、式(51)、および式(52)により、ポンプ運転パターンPhにおける各運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rを求める方法は、以下の2つの方法がある。
一方の方法は、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの回転速度NPh・xnを決定してから、式(50)により得られるQPh・xn・Rと、決定したNPh・xnを式(29)に代入することにより、各運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rを求める方法である。
他方の方法は、まず、ポンプ運転パターンPhにおける各運転ポンプの吐出流量QPh・xn・Rを式(50)により決定して、回転速度100%の運転特性曲線図(Q−H)曲線と各運転ポンプの運転点D(上述の実施形態では、Dx1ofx1+x2およびDx1ofx1+x2)を通る二次曲線H=K×Q2との交点よりQPh・xn・100を得る。その次に、式(32)により得られるNPh・xnと、決定したQPh・xn・Rを式(29)に代入することにより、各運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・Rを求める方法である。
式(7)および式(42)により、ポンプ運転パターンPiにおける各運転ポンプのポンプ軸動力LPi・xnは、以下の式(53)により求められる。なお、式(47)よりQPi・xn・Rを既知の値、式(49)よりηPi・xn・Rを既知の値と定義する。
LPi・xn=0.163×QPi・xn・R *×HD */(ηPi・xn・R */100)
・・・(53)
同様に、ポンプ運転台パターンPhにおける各運転ポンプのポンプ軸動力LPh・xnは、以下の式(54)により求められる。
LPh・xn=0.163×QPh・xn・R×HD */(ηPh・xn・R/100)
・・・(54)
このように、式(47)、式(49)、および式(53)を用いて、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプの軸動力LPi・xnを求めることができる。したがって、式(55)に示されるように、ポンプ運転パターンPiで運転されるポンプ装置の総軸動力LPiは、各運転ポンプの軸動力LPi・xnの総和から得ることができる。
LPi=0.163×HD *×Σ(QPi・xn・R/(ηPi・xn・R/100))
=0.163×HD *×Σ((NPi・xn */100)×
g(HD */(NPi・xn */100)2)/
(h((NPi・xn */100)×g(HD */(NPi・xn */100)2)
/(NPi・xn */100))/100)) ・・・(55)
同様に、式(29)、式(32)、および式(54)を用いて、ポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの軸動力LPh・xnを求めることができる。したがって、式(56)に示されるように、ポンプ運転パターンPhで運転されるポンプ装置の総軸動力LPhは、各運転ポンプの軸動力LPh・xnの総和から得ることができる。
LPh=0.163×HD *×Σ(QPh・xn・R/(ηPh・xn・R/100)}
=0.163×HD *×Σ{(NPh・xn/100)×
g(HD */(NPh・xn/100)2)/
(h(QPh・xn・R/(NPh・xn */100))/100)}
・・・(56)
図21に示されるポンプ運転パターンPiの場合、このポンプ運転パターンPiで選択される運転ポンプは、ポンプ性能x2のポンプ2だけである。したがって、式(55)から、ポンプ装置の総軸動力LPiを、以下の式(57)から得ることができる。
LP=0.163×HD *×(QPi・x2・R/(ηPi・x2・R/100)・・・(57)
図22に示されるポンプ運転パターンPhの場合、このポンプ運転パターンPhで選択される運転ポンプは、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2である。したがって、式(56)から、ポンプ装置の総軸動力LPhを、以下の式(58)から得ることができる。
LPh=0.163×HD *×{(QPh・x1・R/(ηPh・x1・R/100))+
(QPh・x2・R/(ηPh・x2・R/100))} ・・・(58)
ポンプ運転パターンPiで運転されるポンプ装置の総軸動力LPiは、式(35)(または式(55))により算出することができる。ポンプ運転パターンがポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPlに切り替わる際の総軸動力LPlを算出する際には、ポンプ運転パターンPlで選択された各運転ポンプの軸動力LPl・xnの合計値である総軸動力LPlから所定の設定値ΔLを減算する。これは、ポンプ装置の総吐出流量がポンプ運転パターンの切り替え点付近で上下動した際に、ポンプ運転パターンが頻繁に切り替わる(すなわち、ハンチングする)おそれがあるからである。
そこで、図24に示されるように、このようなハンチングを防止するために、ポンプ運転パターンを切り替えるか否かを決定する際に、流量の差分であるΔQを設けて、ポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPlへのポンプ運転パターンの切り替えを行う。図24では、実際の運転点FからΔQだけ減算された運転点F’が示されている。この手段として、ポンプ運転パターンPlで運転されるポンプ装置の総軸動力LPlから所定の設定値ΔLを減算することにより、ポンプ運転パターンPiがポンプ運転パターンPlに切り替わった直後に、ポンプ運転パターンPiに再び切り替わることを防止する。なお、ポンプ運転パターンがポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPlに切り替わる場合にも、ポンプ装置の総軸動力を使用するが、総軸動力にΔLの減算が入るため、厳密な意味合いとしては、総軸動力の比較を行なっているわけではない。所定の設定値ΔLは、例えば5kWである。
また、ハンチング防止の別方法として、図1に示されるように、タイマー32を設けてもよい。図1に示されるタイマー32は、コントローラ20内に配置されているが、コントローラ20の外部に配置されてもよい。この場合、タイマー32は、コントローラ20に配線で接続される。タイマー32には、所定の遅延時間が設定されている。ポンプ運転パターン決定部22は、タイマー32に設定された遅延時間だけ遅れて、ポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPhに、またはポンプ運転パターンPlに切り替えるか否かを決定する。上述した総軸動力LPlから所定の設定値ΔLを減算する方法と、タイマー32により遅延時間を設ける方法のどちらか一方の方法だけで、ハンチングを防止してもよいし、両者を組み合わせて、ハンチングを防止してもよい。
コントローラ20のポンプ運転パターン決定部22は、このようにして求められたポンプ運転パターンPiで運転されるポンプ装置の総軸動力LPiと、ポンプ運転パターンPhで運転されるポンプ装置の総軸動力LPh、またはポンプ運転パターンPlで運転されるポンプ装置の総軸動力LPlとを比較して、総軸動力が低いポンプ運転パターンを決定する。具体的には、ポンプ装置の総吐出流量が増加しているときに、LPhがLPi以下である(LPi≧LPh)場合、ポンプ装置のポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPhに切り替える。ポンプ装置の総吐出流量が増加しているときに、LPhがLPiより大きい(LPi<LPh)場合、ポンプ装置のポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPiに維持する。ポンプ装置の総吐出流量が減少しているときに、LPl−ΔLがLPi以下である(LPi≧(LPl−ΔL))場合、ポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPlに切り替える。ポンプ装置の総吐出流量が減少しているときに、LPl−ΔLがLPiより大きい(LPi<(LPl−ΔL))場合、ポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPiに維持する。コントローラ20は、ポンプ運転パターン決定部22が決定したポンプ運転パターンでポンプ装置を運転する。なお、ポンプ運転パターンPiをポンプ運転パターンPlに切り替えるか否かをポンプ運転パターン決定部22が判断する際には、ポンプ運転パターンPlで運転されるポンプ装置の総軸動力LPlから所定の設定値ΔLが減算される。
本実施形態によれば、ポンプ装置のポンプ運転パターンを切り替えるか否かを判断する際に、総軸動力が低くなる方のポンプ運転パターンが選択される。したがって、ポンプ装置を省エネルギーで運転することができる。また、運転ポンプは、必ず(ポンプ運転パターンをPiからPlに切り替える際のハンチング防止(−ΔL)を除く)軸動力が低くなるポンプ運転パターンで運転される。したがって、運転ポンプにかかる負荷が小さくて済むので、ポンプの軸受などの消耗部品にかかる負荷を低減することができ、その結果、ポンプ2の長寿命化を図ることができる。
ポンプ装置を省エネルギーで運転するためには、運転ポンプの総軸動力Lが最小となるポンプ運転パターンを決定する必要がある。しかしながら、ポンプ運転パターンは、ポンプ装置に配置されたポンプ2の台数によっては膨大な数になる場合があるため、複数のポンプ2に優先順位を設定し、優先順位の高いポンプ2が含まれるポンプ運転パターンを優先的に選択してもよい。ポンプ2の優先順位は、図1に示されるように、ポンプ運転パターン決定部22内に配置された優先順位決定部25に入力されるか、または格納されている。ポンプ運転パターン決定部22は、この優先順位に基づいて、ポンプ運転パターンを切り替える際に、優先順位が高いポンプが運転ポンプとして選択されるポンプ運転パターンを決定してもよい。
図25は、ポンプに優先順位が設けられている場合に、ポンプ運転パターンが切り替わる複数の運転点が示された運転特性曲線図(Q−H線図)の一例である。図25に示される運転特性曲線図(Q−H線図)では、ポンプ性能x1のポンプ2、ポンプ性能x2のポンプ2、およびポンプ性能x3のポンプ2が並列に配置されたポンプ装置が吐出圧力一定制御で運転されるときの運転特性曲線図(Q−H線図)が示される。図25は、ポンプ運転パターンが切り替えられる8つの運転点a,b,c,d,e,f,g,hを示している。
運転点aは、上述したポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる運転点である。運転点bは、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転が可能な上限の運転点である。運転点cは、上述したポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる運転点である。運転点dは、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転が可能な上限の運転点である。
運転点eは、上述したポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる運転点である。運転点fは、上述したポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x2のポンプ2とポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる運転点である。運転点gは、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転が可能な上限の運転点である。運転点hは、ポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転が可能な上限の運転点である。
図示した8つの運転点a,b,c,d,e,f,g,hは、ポンプ運転パターンが切り替えられる運転点の例示であり、この他にもポンプ運転パターンが切り替えられる運転点は存在する。また、全ての運転点a,b,c,d,e,f,g,hでポンプ運転パターンを切り替える必要はない。ポンプ運転パターン決定部22は、優先順位決定部25に入力されるか、または格納されたポンプ2の優先順位に基づいて、ポンプ運転パターンが切り替えられる運転点の最適な組み合わせを選択してもよい。
図26は、図25に示した運転点a,c,fでポンプ運転パターンが切り替えられる場合に、ポンプ運転パターンで選択される運転ポンプを示す模式図である。図27は、図25に示した運転点c,fでポンプ運転パターンが切り替えられる場合に、ポンプ運転パターンで選択される運転ポンプを示す模式図である。図28は、図25に示した運転点d,eでポンプ運転パターンが切り替えられる場合に、ポンプ運転パターンで選択される運転ポンプを示す模式図である。図26、図27、および図28では、ポンプ運転パターンで選択された運転ポンプがONの位置にあり、選択されていないポンプがOFFの位置にある。以下では、図26に示されるポンプ運転パターンの組み合わせを、パターン組み合わせAと称し、図27に示されるポンプ運転パターンの組み合わせを、パターン組み合わせBと称し、図28に示されるポンプ運転パターンの組み合わせを、パターン組み合わせCと称する。
図26は、上述したポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ運転パターンが切り替えられる例を示している。すなわち、運転点aでは、運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる。運転点cでは、運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる。運転点fでは、運転ポンプの総軸動力が小さくなるように、ポンプ性能x1のポンプ2とポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンから、ポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンに切り替わる。ポンプ装置の省エネルギーを最優先する場合には、ポンプ運転パターン決定部22は、上述したポンプ運転パターン決定アルゴリズムに従って、図26に示されるパターン組み合わせAになるようにポンプ運転パターンを選択する。
一方で、優先順位決定部25で、ポンプ性能x2のポンプ2の優先順位がポンプ性能x1のポンプ2の優先順位よりも高く設定されている場合は、ポンプ運転パターン決定部22は、図27に示されるパターン組み合わせBを選択する。すなわち、ポンプ装置の運転点が運転点aを超えない領域では、図26に示されるパターン組み合わせAの例とは相違して、ポンプ装置は、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転される。ポンプ装置の運転点が運転点aを超えると、図26に示されるポンプ運転パターンと同様に、ポンプ装置は、運転ポンプの総軸動力が小さくなるポンプ運転パターンで運転される。
優先順位決定部25で、ポンプ性能x1のポンプ2の優先順位がポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2の優先順位よりも低く設定されている場合は、ポンプ運転パターン決定部22は、図28に示されるパターン組み合わせCを選択する。すなわち、ポンプ運転パターン決定部22は、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして含まれるポンプ運転パターンを選択しない。したがって、ポンプ装置は、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転が可能な上限の運転点dまで、ポンプ性能x2のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転される。ポンプ装置の運転点が運転点dから運転点eの間にある場合は、ポンプ装置は、ポンプ性能x3のポンプ2が運転ポンプとして選択されたポンプ運転パターンで運転される。ポンプ装置の運転点が運転点eを超えると、図26に示されるパターン組み合わせAと同様に、運転ポンプの総軸動力が小さくなるポンプ運転パターンで運転される。
ポンプ2の優先順位は、例えば、ポンプ設置後もしくは更新後の経過年数の長・短、ポンプ効率の大・小に相関関係のあるポンプ容量の大・小、ポンプ形式、比速度、運転回数・頻度、運転時間、および故障発生回数・頻度などの様々な要因を重み付けすることにより決定される。例えば、ポンプ性能x2のポンプ2の運転時間と、ポンプ性能x1のポンプ2の運転時間を平滑化するために、ポンプ性能x2のポンプ2をなるべく使用したい場合には、図27に示されるように、ポンプ性能x2のポンプ2の優先順位をポンプ性能x1のポンプ2よりも高く設定する。あるいは、ポンプ性能x1のポンプ2が点検などで使用できない場合には、図28に示されるように、ポンプ性能x1のポンプ2の優先順位を、ポンプ性能x2のポンプ2およびポンプ性能x3のポンプ2の優先順位よりも低く設定して、ポンプ性能x1のポンプ2が運転ポンプとして選択されないようにする。さらに、ポンプ容量の大・小、ポンプ形式、または比速度に基づいて、ポンプ2の優先順位を高くまたは低く設定してもよい。あるいは、運転回数・頻度、または運転時間が短いポンプ2の優先順位を、運転回数・頻度、または運転時間が長いポンプ2よりも高く設定してもよいし、故障発生回数・頻度が少ないポンプ2の優先順位を、故障発生回数・頻度が多いポンプ2の優先順位よりも高く設定してもよい。
このように、ポンプ2の優先順位が設定される場合、ポンプ装置の省エネルギーを図りながら、ポンプ2の運転時間の偏りをなくすことができるため、運転時間の長い特定のポンプ2が頻繁に故障するといった問題を防止することができるとともに、効率的および経済的なポンプ2の更新計画を立案することができる。さらに、ポンプ2の始動頻度を極力抑えることができるので、さらにポンプの長寿命化を図ることができる。
ポンプ効率ηはポンプ2の流量にも依存するので、容量の異なるポンプ2が運転ポンプとして選択された場合、ポンプ効率ηの比較によって、ポンプ運転パターンの切り替え前後の消費エネルギーを比較することができない。したがって、上述のポンプ運転パターン決定アルゴリズムでは、運転ポンプの総軸動力を求める必要がある。しかしながら、ポンプ運転パターンで選択される運転ポンプの容量が同一であれば、総軸動力まで算出しなくても、ポンプ1台あたりのポンプ効率を比較することにより、ポンプ運転パターンの切り替え前後の消費エネルギーを比較することができる。
ポンプ運転パターンを、ポンプ運転パターンPi(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2)からポンプ運転パターンPh(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2が2台)に切り替えた直後の総吐出流量と全揚程は、切り替え直前の総吐出流量と全揚程に等しいので、上記した式(10)および式(11)が成り立つ。
全ての運転ポンプが同一容量である場合、各運転ポンプの回転速度を揃えて(揃速)並列運転するのが一般的である。したがって、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプの流量QPi・xn・R *、およびポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプの流量QPh・xn・R *は、それぞれ以下の式(59)および式(60)のように表すことができる。
QPi・x1・R *=・・・=QPi・xp・R *=ΣQP・xn・R */p=QB */p
・・・(59)
QPh・x1・R *=・・・=QPh・xq・R *=ΣQPh・xn・R */q=QB */q
・・・(60)
ここで、pは、ポンプ運転パターンPiで選択された運転ポンプの台数を表し、qは、ポンプ運転パターンPhで選択された運転ポンプの台数を表す。pおよびqは、1以上の自然数である。
さらに、ポンプ運転パターンPiで選択された各運転ポンプのポンプ効率ηPi・xn・R *、およびポンプ運転パターンPhで選択された各運転ポンプのポンプ効率ηPh・xn・R *は、それぞれ以下の式(61)および式(62)のように表すことができる。
ηPi・x1・R *=・・・=ηPi・xp・R * ・・・(61)
ηPh・x1・R *=・・・=ηPh・xq・R * ・・・(62)
したがって、式(10)、式(59)および式(61)を式(35)に代入することにより、以下の式(63)を得ることができ、式(10)、式(60)および式(62)を式(36)に代入することにより、以下の式(64)を得ることができる。
LPi=0.163×HB *×Σ(QPi・xn・R/(ηPi・xn・R/100))
=0.163×QB *×HB */(ηPi・xp・R */100) ・・・(63)
LPh=0.163×HB *×Σ(QPh・xn・R/(ηPh・xn・R/100))
=0.163×QB *×HB */(ηPh・xq・R */100) ・・・(64)
式(63)と式(64)から明らかなように、ポンプ運転パターンPi(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2)からポンプ運転パターンPh(運転ポンプはポンプ性能x1のポンプ2が2台)に切り替えた直後の運転ポンプの総軸動力は、運転ポンプ1台あたりのポンプ効率の違いにより決定される。
つまり、運転ポンプの容量が同一であれば、ポンプ運転パターンの切り替え前後での消費エネルギーの比較は、運転ポンプ1台あたりのポンプ効率の比較に置き換えることができる。
ポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPlに切り替える際、ポンプ運転パターンが頻繁に切り替わる(すなわち、ハンチングする)ことを防止するために、上述のように、流量切り替えの差分であるΔQを設ける。この手段として、本実施形態では、運転ポンプのポンプ効率から所定の設定値Δηを減算することにより、ポンプ運転パターンがポンプ運転パターンPlに切り替わった直後に、ポンプ運転パターンPiに再び切り替わることを防止する。なお、ポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPlに切り替える場合にも、ポンプ運転パターンの決定にポンプ効率を使用するが、効率−Δηの減算が入るため、厳密な意味合いとしては、ポンプ効率の比較を行なっているわけではない。所定の設定値Δηは、例えば5%である。
上述したように、ハンチング防止の別方法として、タイマー32を設けて、ポンプ運転パターンをポンプ運転パターンPiからポンプ運転パターンPhに、またはポンプ運転パターンPlに切り替えてもよい。ポンプ効率ηから所定の設定値ΔLを減算する方法と、タイマー32により遅延時間を設ける方法のどちらか一方の方法だけで、ハンチングを防止してもよいし、両者を組み合わせて、ハンチングを防止してもよい。
これまで、3台のポンプ(すなわち、ポンプ性能x1のポンプ2、ポンプ性能x2のポンプ2、およびポンプ性能x3のポンプ2)が並列に配置されるポンプ装置が吐出圧力一定制御で運転される場合を例にして、ポンプ運転パターン制御方法の実施形態が説明されてきた。しかしながら、ポンプ装置に並列に配置されるポンプ2の台数は、2台であってもよいし、4台以上であってもよい。さらに、ポンプ装置に並列に配置される複数のポンプ2が推定末端圧力一定制御などの別の制御方法で制御される場合でも、上述したポンプ運転パターン制御方法を適用することができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。