JP6647088B2 - ばね用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、耐摩耗性および疲労特性に優れるばね用鋼に関する。
この種のばね用の材料には、主に、耐摩耗性(形状変化の抑制)、耐へたり性(ばねの形状およびばね性の維持)、および、疲労強度の3つの特性が要求される。
特許文献1には、例えば自動車のクラッチに組み込まれるダイヤフラムスプリング等に用いられる皿ばね等への適用を考慮した、耐温間へたり性に優れたばね鋼が示されている。
特許文献2には、例えば自動車の懸架装置等に用いられる板ばね等への適用を考慮した、耐へたり性にすぐれたばね用鋼が示されている。
特許文献3には、耐へたり性には、ばね内部の強度が大きく影響するため、高強度化することにより、耐へたり性を向上させたばね用熱処理鋼が示されている。
特許文献4には、ひずみ時効による転位の固着能力を向上させて、耐へたり性を向上させたばね部品用鋼が示されている。
特許文献5には、鋼中の炭化物の分布を制御することで、素材のプレス打抜き性と疲労特性とを向上させた炭素工具鋼鋼帯が示されている。
特許文献6には、引張強度が1000MPa以上であるとともに、焼入れ焼戻しを省略することにより、省コスト化し、寸法精度を向上させたリング状ばねが示されている。
特許文献7には、例えば車両懸架用部品等への適用を考慮し、高周波または通電焼入れにより、高強度化するとともに、耐食性・低温靭性を向上させたばね部品用鋼が示されている。
このように、現状では、主に耐摩耗性、耐へたり性および疲労特性が求められるばね用の材料において、高炭素鋼を使用して硬くするか、または、潤滑しやすくして摩耗を抑制することにより耐摩耗性を向上させる方法や、材料全体の強度を向上させて転位の移動を阻害することにより耐へたり性を向上させる方法や、浸炭、窒化およびショットピーニング等で表層を硬くすることにより疲労特性を向上させる方法が知られている。
特開2002−180204号公報 特開昭57−32353号公報 国際公開第2007/114491号 特開2012−111992号公報 国際公開第2013/133295号 国際公開第2013/115266号 特開2012−237040号公報
上述のように、ばねの性能劣化の主な原因には、摩耗、へたりおよび疲労破壊がある。特に皿ばねでは、小さなたわみで大きな荷重や衝撃を受けることができる反面、わずかな寸法の変化で特性が変化するため、摩耗による影響が大きい。
そして、作動頻度の高い皿ばねには摩耗抑制のために硬い材料が使用されるが、硬度を上げると靭性が低下して、材料が脆くなるという問題がある。
また、粗大な介在物や炭化物、多量のボイド等があると、疲労特性が悪化してしまう。
したがって、既存鋼と同等の硬さおよびばね特性で疲労特性を確保し、かつ、耐摩耗性に優れる材料があれば、その材料をばねに適用することで、既存の設計を変更することなく、その装置の長寿命化に繋がる。
そこで、ばね用の材料として、十分な耐摩耗性および疲労特性を確保したばね用鋼が求められていた。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、耐摩耗性および疲労特性が良好なばね用鋼を提供することを目的とする。
請求項1に記載されたばね用鋼は、C:0.60質量%以上1.25質量%以下、Si:0.50質量%以下、Mn:0.30質量%以上1.20質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Cr:0.30質量%以上1.50質量%以下、Nb:0.10質量%以上0.50質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、粒子径0.5μm以上のNb含有炭化物が、3000個/mm以上7097個/mm 以下の密度でマトリックス中に存在し、かつ、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物の最大粒径であるDmaxが16.0μm以下に調整されており、エメリー紙による摩耗試験における比摩耗量が1.5×10−4mm/N・m未満であるものである。
請求項2に記載されたばね用鋼は、請求項1記載のばね用鋼において、Ti:0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下、B:0質量%(無添加を含む。)以上0.005質量%以下を含有するものである。
請求項3に記載されたばね用鋼は、請求項1または2記載のばね用鋼において、Mo:0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下、V:0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下、Ni:0質量%(無添加を含む。)以上2.0質量%以下のうちのいずれか1種以上を含有するものである。
本発明によれば、所定の成分の範囲において、粒子径0.5μm以上のNb含有炭化物が、3000個/mm以上7097個/mm 以下の密度でマトリックス中に存在し、かつ、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物の最大粒径であるDmaxが16.0μm以下に調整されているため、耐摩耗性および疲労特性を向上できる。
疲労試験片の形状を示す模式図である。
以下、本発明の一実施の形態の構成について詳細に説明する。
ばね用鋼は、0.60質量%以上1.25質量%以下のC(炭素)、0.50質量%以下のSi(ケイ素)、0.30質量%以上1.20質量%以下のMn(マンガン)、0.03質量%以下のP(リン)、0.03質量%以下のS(硫黄)、0.30質量%以上1.50質量%以下のCr(クロム)、0.10質量%以上0.50質量%以下のNb(ニオブ)を含有し、残部がFe(鉄)および不可避的不純物からなる。
また、ばね用鋼は、必要に応じて、0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下のTi(チタン)、および、0質量%(無添加を含む。)以上0.005質量%以下のB(ホウ素)を含有することが好ましい。
さらに、ばね用鋼は、必要に応じて、0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下のMo(モリブデン)、0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下のV(バナジウム)、および、0質量%(無添加を含む。)以上2.0質量%以下のNi(ニッケル)うちのいずれか1種以上を含有することが好ましい。
Cは、鋼板の強度の向上に必要な元素であり、ばね用鋼に使用するための強度を確保するには、含有量を0.60質量%以上とする必要がある。しかし、Cの含有量が1.25質量%を超えると粗大な未溶解炭化物が多くなり、靭性や疲労特性等の劣化要因となってしまう。したがって、Cの含有量は、0.60質量%以上1.25質量%以下とした。
Siは、製鋼段階で脱酸材として添加されるが、無添加でも脱酸不良は生じない。また、Siの含有量が多くなると靭性が劣化し、0.50質量%を超えるとばね用鋼に使用するための靭性を確保できない可能性がある。したがって、Siの含有量は、0.50質量%以下(無添加を含む。)とし、好ましくは0.30質量%以下である。
Mnは、鋼の焼入性向上に有効な元素であり、含有量が0.30質量%未満では焼入性を十分に向上できない。しかし、Mnの含有量が1.20質量%を超えて多量に含有させると、硬質化を招き、製造性や靭性を損なう原因となる。したがって、Mnの含有量は、0.30質量%以上1.20質量%以下とした。
PおよびSは、どちらも靭性に悪影響を及ぼすので、できるだけ含有量が少ないほうが好ましい。したがって、Pの含有量およびSの含有量は、いずれも0.03質量%以下とした。
Crは、鋼の焼入性を向上させる作用、鋼板の強度を向上させる作用、鋼板の耐摩耗性を向上させる作用、および、焼鈍の際におけるセメンタイトの粗大化を抑制する作用を有する元素である。そして、Crによる上記各作用を奏するには、Crの含有量を0.30質量%以上とする必要がある。しかし、Crは焼入処理の加熱保持においてセメンタイトの溶体化を妨げるという悪影響を及ぼす場合があり、Crの含有量が1.50質量%を超えると、焼入処理の際の未溶解セメンタイト量を増大させる要因となりうる。したがって、Crの含有量は、0.30質量%以上1.50質量%以下とした。
Nbは、鋳造後の冷却過程にて鋼中に非常に硬質なNb含有炭化物を形成し、耐摩耗性、特に耐アブレシブ摩耗性の向上に寄与する。また、Nbは、焼入の際の結晶粒を微細化させて、靭性の向上に寄与する。Nbによるこれら各作用を奏するには、Nbの含有量を0.10質量%以上とする必要がある。しかし、Nbを多量に添加すると、Nb含有炭化物が過剰に生成され、このNb含有炭化物が破壊の起点および亀裂伝播経路となり、靭性が劣化する要因となる。また、C含有レベルが比較的高い用途において調質熱処理後の良好な靭性を確保するには、Nbの含有量を0.50質量%以下に抑えることが重要である。したがって、Nbの含有量は、0.10質量%以上0.50質量%以下とした。
Tiは、Nbと同様に鋳造後の冷却過程にて鋼中に非常に硬質なTi含有炭化物を形成し、耐摩耗性に寄与する。また、熱間圧延の際などに再固溶し、熱間圧延中または冷却中に析出したTiCは焼入の際に結晶粒を微細化し、靭性の向上に寄与する。さらに、TiとNとの結合力が強いため、Bを添加した場合にBNの生成を防止し、Bの焼入性向上作用を引き出すうえで有効である。したがって、必要に応じてTiを添加することが好ましく、Tiによる上記各作用を奏するには、Tiの含有量を0.01質量%以上とすると効果的である。しかし、Tiの含有量が0.50質量%を超えると、Ti系炭化物が鋼板中に多量に存在して靭性劣化を招きやすいため、Tiを含有させる場合には、Tiの含有量を0.50質量%以下とすることが好ましい。
Bは、焼入性の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加することが好ましい。Bの効果を得るには、Bの含有量を0.0003質量%以上とする必要がある。なお、Bによる焼入性向上作用は、Bの含有量が0.005質量%にて飽和する。したがって、Bを含有させる場合には、Bの含有量を0.005質量%以下とすることが好ましい。
MoおよびVは、いずれも靭性向上に有効な元素であり、必要に応じて添加することが好ましい。Moによる靭性向上作用を奏するには、Moの含有量を0.10質量%以上とすると効果的である。また、Vによる靭性向上作用を奏するには、Vの含有量を0.05質量%以上とすると効果的である。しかし、MoおよびVは、比較的高価な元素であり、過剰な添加はコストの増大を招くため、MoおよびVの少なくとも1種を含有させる場合には、Moの含有量およびVの含有量を0.50質量%以下とすることが好ましい。
Niは、焼入性および低温靭性の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加することが好ましい。Niによる焼入性向上作用および低温靭性向上作用を奏するには、Niの含有量を0.10質量%以上にすると効果的である。しかし、Niの過剰添加は経済性を損ねる要因となるため、Niを添加する場合には、Niの含有量を2.0質量%以下とすることが好ましい。
上記化学成分のばね用鋼にて、ばね用の材料として十分な耐摩耗性および疲労特性を確保するには、Nb含有炭化物の個数を規定して硬質なNb含有炭化物によって耐摩耗性を向上させる一方で、そのNb含有炭化物が疲労破壊の起点にならないように、Nb含有炭化物の最大粒径を規制することが重要である。
具体的には、ばね用の材料として良好な耐摩耗性を確保するには、鋼は、Nb含有炭化物が分散した調質熱処理後の金属組織において、粒子径0.5μm以上のNb含有炭化物が、3000個/mm以上となるようにNb含有炭化物の分布状態を調整する。
また、ばね用の材料として良好な疲労特性を確保するには、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物粒子の最大粒径であるDmaxが16.0μm以下となるように、Nb含有炭化物の分布状態を調整する。
すなわち、マトリックス中における粒子径0.5μm以上のNb含有炭化物の数が3000個/mm未満であると、Nb含有炭化物による耐摩耗性向上作用が不十分で、ばね用の材料として十分な耐摩耗性(エメリー紙による摩耗試験における比摩耗量が1.5×10−4mm/N・m未満)を確保できない可能性がある。
また、板状の共晶炭化物が圧延工程で割れた際に発生するクラックが多量に存在したり、非常に粗大な硬質炭化物が存在したりすると、それらが疲労破壊の起点として作用するため、疲労特性を安定して改善することが難しい。これらの疲労特性に対する影響は、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物の最大粒径であるDmaxが16.0μmを超えると顕著になる。また、場合によっては疲労破壊によって材料の寿命が支配されることもあり、高強度材料の寿命向上のためには疲労特性の改善が重要である。
したがって、粒子径0.5μm以上のNb含有炭化物が、3000個/mm以上の密度でマトリックス中に存在し、かつ、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物の最大粒径であるDmaxが16.0μm以下に調整されているものとする。
なお、Tiを含有する場合には、NbとTiとを含有する炭化物も耐摩耗性の向上に有効である。
また、Nb含有炭化物とは、NbCを主成分とする硬質炭化物であり、NbとTiとを含有する炭化物とは、(Nb,Ti)Cなどを主成分とする硬質炭化物である(以下、これらのNbを含有する炭化物やNbとTiとを含有する炭化物を硬質炭化物とする。)。
鋼中に含有される析出粒子が硬質炭化物に該当するか否かは、EDXなどによる微視的分析によって確認できる。また、このように確認した硬質炭化物について、それぞれの面積を測定して同じ面積を有する真円の直径を算出し、この直径を硬質炭化物の粒子径とする。
次に、上記ばね用鋼の製造方法の一例を説明する。
ばね用鋼は、鋳造、熱間圧延、冷間圧延および調質熱処理を経て製造される。
鋳片加熱処理は、一般的な熱間圧延と同様に、加熱温度Tを1100℃以上1350℃以下に設定可能である。
また、鋳片加熱処理における加熱保持時間(鋳片中心部が鋼材加熱温度Tの−50℃以上となる時間)は、30分以上240分以下が好ましい。
熱間圧延は、仕上圧延の温度を例えば800℃以上900℃以下とし、巻取温度を例えば630℃以下とする。
また、熱間圧延後の鋼板は、焼鈍および冷間圧延に供される。
焼鈍は、必要に応じてその条件を調整できる。具体的には、オーステナイトが生成し始める温度であるAc点未満の温度域にて例えば10〜50時間加熱保持することが好ましい。
また、焼鈍後に必要に応じて冷間圧延し、再度焼鈍を行って、焼鈍と冷間圧延とを複数回繰り返し行ってもよい。なお、冷間圧延の条件も必要に応じて調整可能である。
そして、このように焼鈍および冷間圧延を行った後の鋼板は、焼鈍組織におけるマトリックスがフェライト相であり、焼入焼戻しなどの調質熱処理が施される。
調質熱処理は、焼鈍および冷間圧延後の鋼板を部品形状に加工した後に行われ、焼入および焼戻しによって、例えば43〜47HRCの硬さに調質される。
また、調質熱処理は、既に調整されている硬質炭化物の分布状態が崩れることがないように溶体化温度を1000℃以下とする以外は、一般的な条件で行う。
なお、調質熱処理後の鋼板の金属組織は、硬質炭化物を含むマルテンサイト組織である。
次に、上記一実施の形態の効果を説明する。
上記ばね用鋼によれば、所定の成分の範囲において、Nbを含有する粒子径0.5μm以上の炭化物が、3000個/mm以上の密度でマトリックス中に存在するため、Nbを含有する硬質炭化物による耐摩耗性向上作用を確保できる。また、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物の最大粒径であるDmaxが16.0μm以下に調整されていることで硬質炭化物(Nb含有炭化物)の過剰生成による疲労特性の劣化を防止できる。したがって、上記ばね用鋼は、ばね用の材料として耐摩耗性および疲労特性が良好である。
ばね用鋼は、必要に応じてTiを含有させることにより、Tiを含有する硬質炭化物による耐摩耗性向上作用および疲労特性向上作用で、耐摩耗性および疲労特性を向上できる。
また、ばね用鋼は、必要に応じてBを含有させることにより、焼入性を向上できる。なお、Bを含有させる場合には、Tiを含有させることによりBとNとの結合によるBNの生成を防止でき、Bによる焼入性向上作用を奏しやすい。
さらに、ばね用鋼は、必要に応じてMo、VおよびNiの少なくとも1種を含有させることにより、疲労特性や焼入性を向上できる。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1には、ばねの母材となる鋼板の化学成分を示す。
Figure 0006647088
この表1に示す各鋼スラブを溶製し、溶融および凝固実験用の30kg鋼塊を切り出した。また、その鋼塊をるつぼ炉中で溶融させて溶鋼とし、鋳片を模擬した凝固塊(模擬鋳片)を得た。
各模擬鋳片を用いて、熱間圧延、焼鈍、冷延、焼鈍および調質熱処理の順に処理し、板厚1.5mm、調質硬さ43〜47HRCの供試材を得た。
なお、熱間圧延は、加熱温度を1250〜1350℃として60分保持後、仕上温度を850℃とし、巻取温度を590℃として、熱延板厚3.5mm(研削加工にて3.0mmに調整)の熱延板を得た。焼鈍では、690℃に加熱し、18時間保持した。
調質熱処理は、830℃で15分加熱処理した後、60℃に油冷し、組成に応じて調質硬さを43〜47HRCとする調質材を得た。
ここで、調質熱処理前の鋼板について、圧延方向および板厚方向に平行な断面(L断面)を鏡面研磨した後、村上試薬(赤血塩のアルカリ溶液)にてエッチングし、共焦点レーザ顕微鏡にて観察した。また、その画像を処理して、視野面積中に存在するNb含有炭化物(硬質炭化物)の数量を測定し、その存在密度を算出した。
Nbを含有する硬質炭化物は、観察面積90×60μm×20視野中に存在する粒子径0.5μm以上の粒子を個数をカウントし、この結果に基づいて1mmあたりの数に換算した。Nb含有炭化物の数を表2に示す。
なお、粒径は粒子面積の円相当径の値であり、粒径0.5μm以上の粒子を画像処理にてピックアップした。
また、各鋼材について、組織観察を行い、極値統計法によるNb含有炭化物の最大粒径Dmaxの推定を行った。
Dmaxは、村上敬宜、「金属疲労 微小欠陥と介在物の影響」、養賢堂、1993年、第A3章「一定体積に含まれる最大介在物の√areamaxの推定手順」に基づき、この文献の介在物をNb含有炭化物に置き換えて測定し、統計処理を実施して測定した。
組織観察では、光学顕微鏡を用い、観察倍率100〜1000倍とし、検査基準面積(V)を100mmとし、検査回数(n)を30回とし、予測体積(V)を10mmとした。
耐摩耗試験は、焼入れ焼戻し後の試料から切り出した直径5mmの円板(酸化スケールを除去したもの)を試験片とし、ピンオンディスク型摩耗試験機を用いて摩耗試験を行った。
摩耗試験では、試験片の円板を試料ホルダに固定して、回転する♯400エメリー研摩紙(炭化ケイ素粉末を塗布した研摩紙)に試験片表面を試験荷重F=30Nで押し付けながら、摩擦速度0.66m/秒、摩擦距離L=200mの条件とした。
また、摩耗試験前後の試験片の板厚差から摩耗により消失した材料の体積を算出し、これを摩耗減量W(mm)とした。そして、比摩耗量C=摩耗減量W/(試験荷重F×摩擦距離L)の式に基づいて比摩耗量C(mm/N・m)を求めた。
調質硬さ45HRCの材料において、算出した比摩耗量Cが1.5×10−4mm/N・m以下であれば、ばねに使用されている現用鋼と比べ非常に優れた耐摩耗性を有すると判断される。
疲労試験は、調質熱処理後の供試材から図1に示す形状の疲労試験片(板厚1.5mmで、長手方向が圧延方向に一致)を作成して用いた。また、油圧サーボ式疲労試験機を用いて、周波数20Hz、応力比−1の条件で、付与応力500N/mmで10本の試験を行い、繰り返し数10回までに過半数が破壊したものを、ばね用の材料として疲労特性が不十分であると判断し不合格と評価した。
表2には、Nb含有炭化物(硬質炭化物)の測定結果、摩耗試験(耐摩耗性)の結果、および、疲労試験(疲労特性)の結果を示す。
Figure 0006647088
表2に示すように、所定の化学成分にて、粒径0.5μm以上のNb含有炭化物が3000個/mm以上存在し、極値統計法により推定される10mm中の硬質炭化物の最大粒径Dmaxが16.0μm以下である本実施例はいずれも、耐摩耗性および疲労特性に優れていた。
一方、比較例であるNo.17、No.18およびNo.24〜30は、Nbを含有していないため、硬質炭化物が存在せず、耐摩耗性が著しく低かった。
比較例であるNo.19は、Nbの含有量が少なかったため、硬質炭化物の個数が3000個/mm未満であり、耐摩耗性が不足していた。
比較例であるNo.20およびNo.21は、Nbの含有量が過剰であるため、Dmaxが16.0μm以上となり、疲労特性が劣化していた。また、疲労破壊の起点は、その多くが粗大な硬質炭化物またはその周辺のクラックであった。
比較例であるNo.22およびNo.23は、Cの含有量が過剰であるため、硬質炭化物が粗大化し、Dmaxが16.0μm以上となって疲労特性が劣化していた。また、疲労破壊の起点はその多くが硬質炭化物またはその周辺のクラックであった。

Claims (3)

  1. C:0.60質量%以上1.25質量%以下、Si:0.50質量%以下、Mn:0.30質量%以上1.20質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Cr:0.30質量%以上1.50質量%以下、Nb:0.10質量%以上0.50質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    粒子径0.5μm以上のNb含有炭化物が、3000個/mm以上7097個/mm 以下の密度でマトリックス中に存在し、かつ、極値統計法により推定される10mm中のNb含有炭化物の最大粒径であるDmaxが16.0μm以下に調整されており、
    エメリー紙による摩耗試験における比摩耗量が1.5×10−4mm/N・m未満である
    ことを特徴とするばね用鋼。
  2. Ti:0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下、B:0質量%(無添加を含む。)以上0.005質量%以下を含有する
    ことを特徴とする請求項1記載のばね用鋼。
  3. Mo:0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下、V:0質量%(無添加を含む。)以上0.50質量%以下、Ni:0質量%(無添加を含む。)以上2.0質量%以下のうちのいずれか1種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1または2記載のばね用鋼。
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