[実施形態1]
図2は実施形態に係る画像形成装置と画像形成システムそれぞれの態様を示す図である。すなわち、図2(a)は、画像形成装置101の搬送路内に用紙処理装置としての用紙後処理装置201が設置された画像形成装置101を示している。図2(b)は、画像形成装置101と、画像形成装置101の搬送路外に設けられた用紙後処理装置201とを備えた画像形成システムを示している。
用紙後処理装置201は、画像形成装置101から排出された用紙を綴じる用紙綴じ装置である圧着綴じ装置280を備えている。また、この用紙後処理装置201は、搬送路内で用紙を重ね合わせ整合する整合機能と、整合された用紙束を搬送路内で綴じる綴じ機能とを備えている。
図2(a)では、画像形成装置101の胴内で後処理することから胴内処理装置とも呼ばれている。このように本実施形態に係る用紙後処理装置201は小型で、画像形成装置101の形態に応じて胴内でも側面でも簡単に取り付け、あるいは配置することが可能である。
画像形成装置101は、画像処理部及び給紙部を含む画像形成エンジン部110と、画像読み取って画像データに変換する読み取りエンジン部103と、読み取りエンジン部103に読み取る原稿を自動的に送り込む自動原稿給送装置104とを備えている。
図2(a)では、画像形成後の用紙の排出が画像形成装置101の胴内に設けられた排紙部により行われ、図2(b)では、画像形成後の用紙の排出は画像形成装置101の外部に設けられた排紙部により行われる。
図3は図2における用紙後処理装置201の平面図であり、図4は図2における用紙後処理装置201の正面図である。図3及び図4において、用紙後処理装置201は、搬送路240に沿って入口側から入口センサ202、入口ローラ203、分岐爪204、綴じ具210及び排紙ローラ205を備えている。
入口センサ202は、画像形成装置101の排紙ローラ102から排紙され、用紙後処理装置201に搬入された用紙の先端、後端及び用紙の有無を検知する。入口センサ202としては、例えば反射型の光センサが使用される。なお、反射型の光センサに代えて透過型の光センサを使用することもできる。
入口ローラ203は、用紙後処理装置201の入口に位置し、画像形成装置101の排紙ローラ102によって排紙される用紙を受け取り、圧着綴じ装置280が有する綴じ手段である綴じ具210内に搬入する機能を有する。また、停止、回転、搬送量を制御可能な不図示の駆動手段(駆動モータ)と、この駆動手段や圧着綴じ装置280などを制御する不図示の後処理制御部も備えている。
入口ローラ203は、対となるローラとのニップに画像形成装置101側から搬送されてきた用紙の先端部を突き当て、スキュー補正も行う。
入口ローラ203の後段には、分岐爪204が配置されている。分岐爪204は用紙後端を分岐路241に導くために設けられている。この場合には、用紙後端が分岐路241を越えた後、分岐爪204は図4において時計回り方向に回転し、用紙を搬入方向と逆の方向に搬送する。
これにより、用紙後端側は分岐路241側に導かれる。分岐爪204は後述するが、ソレノイドによって駆動され、揺動動作を行う。なお、ソレノイドに代えてモータとすることもできる。
分岐爪204は図4において反時計回り方向に駆動され、回転したとき、分岐路241の搬送面に用紙あるいは用紙束を押圧することが可能である。これにより分岐爪204は用紙あるいは用紙束を分岐路241で固定することができる。
排紙ローラ205は用紙後処理装置201の搬送路240の最後段の出口直前に位置し、用紙の搬送、シフト、排出を行う機能を有する。また、入口ローラ203と同様に排紙ローラ205の停止、回転、搬送量を制御可能な駆動源(駆動モータ)を備え、この駆動源は前記後処理制御部によって制御される。排紙ローラ205のシフトはシフト機構205Mによって行われる。シフト機構205Mは、シフトリンク206、シフトカム207、シフトカムスタッド208及びシフトホームポジションセンサ209からなる。
シフトリンク206は排紙ローラ205の軸端205aに設けられ、シフトの移動力を受ける。シフトカム207はシフトカムスタッド208を有し、回転をする円盤状の部品である。この部品の回転によってシフトカムスタッド208を介しシフトリンク長穴部207aに移動可能に挿入された排紙ローラ205が用紙搬送方向と直交する方向に移動する。この移動がいわゆるシフトである。
シフトカムスタッド208はシフトリンク長穴部207aと連動し、シフトカム207の回転運動を排紙ローラ205の軸方向の直動運動に変換する機能を有する。シフトホームポジションセンサ209はシフトリンク206の位置を検出し、シフトホームポジションセンサ209で検出した位置をホームポジションとし、このホームポジションを基準にシフトカム207の回転制御を実行する。この制御は前記後処理制御部によって実行される。
綴じ具210は、用紙端検知センサ220、綴じ具ホームポジションセンサ221及び綴じ具移動のためのガイドレール230を備えている。綴じ具210は、用紙束PBを綴じる機構で、いわゆるステイプラと称されるものである。
本実施形態では一対の歯型261で挟み込み、加圧することによって用紙を変形させ、用紙の繊維を絡めて綴じる機能を備えたものである。
この綴じ方式の他に、半抜き加工、切曲げ、切り曲げてさらに穴に通すなどの綴じ方の綴じ具を使用するステイプラも知られている。
いずれにしてもサプライ消費を抑制し、あるいはリサイクルし易くし、そのままシュレッダにかけられるなどのことから省資源に大きく貢献する。そのため、このような綴じ具210を使用すると、用紙後処理装置、いわゆるフィニッシャーにおいても、金属針を使わず、圧着綴じのように用紙単体で綴じ処理が可能となる。
用紙端検知センサ220は用紙の側端を出するセンサで、用紙を揃えるときに、このセンサ検知位置を基準に揃える。
綴じ具ホームポジションセンサ221は用紙幅方向に移動可能な綴じ具210の位置を検出すセンサで、最大サイズの用紙が搬送されても邪魔にならない位置に綴じ具210が位するポジションをホームポジションとし、その位置を検出する。
ガイドレール230は綴じ具210が用紙幅方向に安定して移動可能なように、その綴じ具210の移動をガイドするレールである。ガイドレール230は、綴じ具210がホームポジションから最小用紙サイズの用紙を綴じることができる位置まで用紙後処理装置201の搬送路240の用紙搬送方向に直交する方向に移動可能なように設置されている。
なお、綴じ具210は図示しない駆動モータを含む移動機構によってガイドレール230に沿って移動する。
搬送路240は受け入れた用紙を搬送し、排出する搬送経路であって、用紙後処理装置201の入口側から出口側まで貫通している。分岐路241は用紙を反転搬送して(スイッチバックさせて)後端側から搬入される搬送路であり、搬送路240から分岐している。分岐路241は用紙を重ね合わせて整合するために設けられ、集積手段として機能する。
突き当て面242は、分岐路241の末端に設けられ、用紙後端を突き当て整合する基準面である。
歯型261は、所定方向に凹凸形状の歯部26aが並ぶ上側歯型部261a、及び、所定方向に凹凸形状の歯部26bが並ぶ下側歯型部261bからなる一対の圧着部材である(図1参照)。そして、上側歯型部261aと下側歯型部261bそれぞれの用紙束PBを対向する歯型面の間に用紙束を挟み込んで加圧し、圧着綴じを行う機能を有する。
図5及び図6は分岐爪204を中心とする用紙後処理装置201の要部を示す図である。図5は分岐爪204が用紙搬送状態にあるときの、図6は用紙をスイッチバックさせるときの関連機構の詳細をそれぞれ示す。
分岐爪204は、用紙の搬送経路を搬送路240と分岐路241のいずれかに切り換えるために支軸204bに関して予め設定された角度範囲で揺動可能に設けられている。分岐爪204は図中の右側より受け入れた用紙が抵抗なく下流側に搬送できる位置、すなわち図5の位置がホームポジションとなっており、スプリング251により常時図示反時計回り方向に弾性的に加圧されている。
スプリング251は分岐爪可動レバー部204aに掛けられ、分岐爪可動レバー部204aには分岐ソレノイド250のプランジャが連結されている。
なお、分岐路241の搬送面と分岐爪204とは、図6の状態で用紙が分岐路241に搬送された後、図5の状態になると、分岐路241内にある用紙を挟持状態で保持することができる。
搬送経路の切り換えは、分岐ソレノイド250のON/OFFによって行われる。すなわち、分岐ソレノイド250をONすると、分岐爪204は図6において矢印R1方向に回転し、搬送路240を閉鎖し分岐路241を開放することにより、分岐路241に用紙を導くことができる。
図7〜図15は、用紙後処理装置201の綴じ具210によるオンライン綴じの綴じ動作を示す動作説明図である。なお、各図において(a)は平面図、(b)は正面図である。
本実施形態でオンライン綴じとは、図2に示すように画像形成装置101の排紙口に用紙後処理装置201を設置し、画像形成装置101で画像形成された用紙を用紙後処理装置201に連続的に受け入れて整合し、綴じ処理を行うことを言う。
これに対して、画像形成装置101から印字出力された用紙若しくは別途印字出力された用紙を用紙後処理装置201の綴じ具210で綴じることもできる。この綴じ方法は、マニュアル綴じと称される。マニュアル綴じは画像形成装置101の排紙から一連の動作で綴じるものでないので、オフライン綴じに含まれる。
図7はオンライン綴じ動作のイニシャル動作完了時の状態を示す図である。画像形成装置101から画像形成された用紙の出力が開始されると、各部はホームポジションに移動し、イニシャル処理(動作)を完了する。図7はこのときの状態を示す。
図8は画像形成装置101から1枚目の用紙P1が排紙され、用紙後処理装置201に搬入された直後の状態を示す図である。画像形成装置101から1枚目の用紙P1が用紙後処理装置201に搬入される前に、用紙後処理装置201の後処理制御部は画像形成装置101のCPU(不図示)から用紙処理の制御モードに関するモード情報と用紙情報を受け取る。そして、その情報に基づき、受け入れ待機状態になる。
制御モードには、ストレートモード、シフトモード及び綴じモードの3つのモードが設定されている。ストレートモードにおいては、受け入れ待機状態で入口ローラ203及び排紙ローラ205は用紙搬送方向に回転を開始し、用紙P1,・・・Pnが順次搬送され、排出されて最終紙Pnが排出された後、入口ローラ203及び排紙ローラ205は停止する。なお、nは2以上の正の整数である。
シフトモードにおいては、受け入れ待機状態で入口ローラ203及び排紙ローラ205は搬送方向に回転を開始する。シフト排紙動作は、1枚目の用紙P1を受け入れて搬送し、1枚目の用紙P1の後端が入口ローラ203を抜けたところで、シフトカム207が一定量回転し排紙ローラ205が軸方向に移動する。このとき1枚目の用紙P1も排紙ローラ205の移動と共に移動する。
また、1枚目の用紙P1が排出されると、シフトカム207が回転してホームポジションに復帰し、次の2枚目の用紙P2の搬入に備える。この排紙ローラ205のシフト動作を同じ部のn枚目(最終)の用紙Pnの排出が完了するまで繰り返す。
これにより、1部(1冊)分の用紙束PBが一方にシフトした状態で排紙され、積層される。次の部の1枚目の用紙P1が搬入された場合、シフトカム207は前の部とは逆方向に回転し、用紙P1は前の部とは逆側に移動し、排出される。
綴じモードにおいては、受け入れ待機状態で入口ローラ203は停止しており、排紙ローラ205が搬送方向に回転を開始する。また、綴じ具210は用紙幅より一定量退避した待機位置に移動して待機する。この場合、入口ローラ203はレジストローラとしても機能する。
すなわち、1枚目の用紙P1が用紙後処理装置201に搬入され、用紙先端は入口センサ202により検知され、さらに入口ローラ203のニップに突き当たる。そして、1枚目の用紙P1は、突き当たった位置からさらに一定量の撓みを生じさせる距離だけ画像形成装置101の排紙ローラ102によって搬送される。前記距離搬送された後、入口ローラ203の回転が開始される。
これにより、1枚目の用紙P1のスキュー補正が行われる。図8(a)及び図8(b)は、このときの状態を示す。
図9は用紙後端が入口ローラ203のニップから離脱して分岐路241を超えたときの状態を示す図である。
1枚目の用紙P1の搬送量は、用紙後端の入口センサ202による検知情報に基づいてカウントされ、用紙搬送位置の位置情報は用紙後処理装置201の後処理制御部によって把握されている。
用紙後端が入口ローラ203のニップを通過したら、入口ローラ203は次の2枚目の用紙P2の受け入れのために回転を停止する。それと同じタイミングでシフトカム207が図9の矢印R4方向(図示時計回り方向)に回転し、1枚目の用紙P1をニップした状態で排紙ローラ205は軸方向に移動を開始する。これにより、1枚目の用紙P1は図9において矢印D1方向に斜行しながら搬送される。
その後、綴じ具210に併設又は組み込まれた用紙端検知センサ220が用紙P1の側端部を検知すると、シフトカム207は停止し、次いで逆転し、用紙端検知センサ220が用紙P1の非検知状態でシフトカム207は停止する。そして、前記動作が完了し、用紙後端が分岐爪204先端を通過した所定の位置で排紙ローラ205は停止する。
図10は用紙P1をスイッチバックして用紙P1の搬送方向を整合するときの状態を示す図である。図9の状態から分岐爪204を図示矢印R5方向に回転させ、搬送経路を分岐路241に切り換えた後、排紙ローラ205を逆回転させる。
これにより、1枚目の用紙P1は矢印D2方向にスイッチバックされ、用紙後端が分岐路241に搬入され、さらに、突き当て面242に突き当てられる。この用紙後端の突き当てにより用紙後端は突き当て面242を基準に揃えられる。
1枚目の用紙P1が揃えられると、排紙ローラ205は停止する。このとき、排紙ローラ205は1枚目の用紙P1が突き当て面242に突き当たるとスリップし、搬送力が付与されないようになっている。すなわち、1枚目の用紙P1がスイッチバックして突き当て面242に突き当たり、用紙後端が突き当て面242を基準に揃えられると、それ以上、搬送されて用紙が座屈しないように設定されている。
図11は分岐路241に1枚目の用紙P1を待機させ、次の2枚目の用紙P2を搬入するときの状態を示す図である。先行の1枚目の用紙P1が突き当て面242を基準に揃えられた後、分岐爪204を図示矢印R6方向に回転させる。
これにより、分岐爪204の下面である接触面204cが分岐路241に位置している用紙後端を分岐路241の表面に強力に押さえ付け、動かない状態にして待機する。後行の2枚目の用紙P2が画像形成装置101から搬入されてくると、先行の1枚目の用紙P1と同様に入口ローラ203でスキュー補正を行う。次いで、入口ローラ203の回転が開始するのと同時に排紙ローラ205も搬送方向に回転を開始する。
図12は2枚目の用紙P2が搬入されてきたときの状態を示す図である。図11の状態から2枚目の用紙P2、さらに3枚目以降の用紙P3,・・・,Pnが搬送されてきたときも、図9及び図10に示した動作を実行する。そして、順次、画像形成装置101から搬送されてくる用紙を予め設定した位置に移動させて重ね合わせ、整合状態の用紙束PBを搬送路240内にスタック(集積)する。
図13は最終紙Pnを整合して用紙束PBを形成したときの状態を示す図である。最終紙Pnを整合状態の用紙束PBとして動作完了したら、排紙ローラ205を一定量搬送方向に回転させ停止する。この動作で用紙後端を突き当て面242に突き当てたときに発生した撓みを解消させる。
その後、分岐爪204を図示矢印R5方向に回転させ、接触面204cを分岐路241から離間させることにより用紙束PBへの加圧力を開放する。これにより用紙束PBは分岐爪204による拘束力が解除され、排紙ローラ205による搬送が可能となる。
図14は綴じ動作時の状態を示す図である。
図13の状態から排紙ローラ205を搬送方向に回転させ、綴じ具210の歯型261の位置と用紙束PBの綴じ位置が一致する距離分用紙束PBを搬送し、その位置で停止させる。これにより、用紙束PBの搬送方向の加工位置が歯型261の搬送方向の位置と合致する。
そして、綴じ具210を綴じ具210の歯型261の位置と用紙の加工位置が一致する距離分だけ図示矢印D3方向に移動させ、停止する。これにより、用紙束PBの幅方向の加工位置が歯型261の位置と搬送方向及び幅方向で合致することになる。このとき、分岐爪204は図示矢印R6方向に回転し、用紙受け入れ状態に復帰する。
その後、駆動モータ265をONし、歯型261によって用紙束PBを加圧し、絞ることによって圧着綴じを行う。
図15は用紙束PBを排紙するときの状態を示す図である。図14に示したようにして綴じられた用紙束PBは、排紙ローラ205の回転により排出される。
用紙束PBが排出され後、シフトカム207を矢印R7方向に回転させ、ホームポジション(図7の位置)に復帰させる。これと並行して綴じ具210を図示矢印D4方向に移動させ、ホームポジション(図7の位置)に復帰させる。これにより、1部(1冊)の用紙束PBの整合動作を綴じ動作が完了する。次の部がある場合には、図7から図15の動作を繰り返し、同様にして圧着綴じされた1部の用紙束PBを作成する。
図1は、圧着綴じ装置280における絞り圧着機構269の説明図である。図1(a)は、歯型261が開いた状態の綴じ具210及びその駆動機構の一例を示す説明図であり、図1(b)は、歯型261が閉じた状態の綴じ具210及びその駆動機構の一例を示す説明図である。
本実施形態において、歯型261は上側歯型部261aと下側歯型部261bとを有し、噛み合う形状をしている。上側歯型部261aは、凹凸形状の歯部26aを固定部材27aの下面に設けて構成されている。下側歯型部261bは、上側歯型部261aと対向するように、凹凸形状の歯部26bを可動部材27bの上面に設けて構成されている。
また、図1(b)に示すような上側歯型部261aとともに用紙束PBを綴じる綴じ位置と、図1(a)に示すような当該綴じ位置から退避した退避位置との間で移動可能なように、下側歯型部261bが回転軸23を中心に回転移動可能に設けられている。
図1に示した圧着綴じ装置280は、下側歯型部261bを移動させ歯型261に押圧力を付与する押圧力付与手段としての絞り圧着機構269を備えている。
この絞り圧着機構269は、リンク機構270や、このリンク機構270を動作させるクランク機構271などを有している。リンク機構270とクランク機構271とは、第一節点269aで回転可能に連結されている。
リンク機構270は、第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bを備えている。第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bのそれぞれの一端は、第一節点269aに連結され、他端は第二節点270c及び第三節点270dにそれぞれ回転可能に連結されている。
第二節点270cは下側歯型部261bの背面に設置され、第三節点270dは下側歯型部261bの往復直線運動の延長上(仮想直線270eの延長線上)の固定部材270fに移動不能に設置されている。この仮想直線270eは、下側歯型部261bを案内する図示しないガイド部材によって下側歯型部261bが案内される軌跡に相当する。
クランク機構271は、第三コネクティングロッド271a、駆動モータ271m、回転軸271b、及び、回転軸271bに固定され一体に回転する回転ロッド271cを備えている。
第三コネクティングロッド271aは、一端が回転ロッド271cの先端部と第四節点271dに回転可能に連結され、他端が第一節点269aに同じく回転可能に連結されている。すなわち、第一節点269aには、第一コネクティングロッド270a、第二コネクティングロッド270b、及び、第三コネクティングロッド271aの一方の端部が連結されている。なお、駆動モータ271mの回転軸271bの位置は固定である。
また、第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bは、下側歯型部261bが上側歯型部261a側に最大限変位したときに、仮想直線270eに一致しないような角度で連結されている。
言い換えれば、第一節点269aを挟んだ両者間の角度αが180度(一直線)にならないような角度で、第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bとが連結されている。このような状態で連結されたリンクは、「くの字リンク」とも称される。
「くの字リンク」とは、第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bと、第一節点269aとを含むリンク機構を意味している。
この機構では、第三コネクティングロッド271aが第一節点269aに連結され、第一節点269aは駆動モータ271mによって駆動される回転ロッド271cによって矢印D1方向または矢印D1とは反対方向に移動する。その際、矢印D1方向の第一節点269aの死点が仮想直線270eに至る直前の位置に来るようにこれらの機構の各部が配置されている。
これにより、第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bが一直線になることがなく、一直線になる直前の位置で最大限の押圧力が付与できるようになっている。このような構成であると、第一節点269aが常時頂角を有し、言わば、「く」の字のような形状をしていることから「くの字リンク」と称される。
このように構成された絞り圧着機構269では、駆動モータ271mが図示時計回り方向に回転すると、第三コネクティングロッド271aが第一節点269aを図示矢印D1方向に押し、第一節点269aが図示矢印D1方向に移動する。すると、第一コネクティングロッド270aと第二コネクティングロッド270bとの角度αが広がる。
一方、第三節点270dの位置は固定されているので、これに伴って下側歯型部261bが図示矢印D2方向に移動する。そして、下側歯型部261bが隙間Lの間に挿入された用紙束PBを挟んで上側歯型部261a側に移動する際に用紙束PBに押圧力を付与し、圧着動作が行われることになる。
このような押圧力付与機構による綴じは、圧着動作の前段の動作として絞り動作を備えていることから、前述のように絞り圧着綴じと称される。
リンク機構270は下側歯型部261bを変位させるように構成され、リンク機構270に駆動力を伝達する手段がクランク機構271となっている。
リンク機構270は前述のように第一コネクティングロッド270a及び第二コネクティングロッド270bが伸びきる辺りでは非常に強い力が発生し、車のジャッキにも使用される。そこで、リンク機構270を駆動する際に、クランク機構271で最も力が欲しいタイミングで最大限の力が出せるように両者の関係を設定する。
また、用紙束PBを綴じた後、歯型部間から用紙束PBを取り出せるよう、歯型部間の距離を広げる際には、駆動モータ271mを図示反時計回り方向に回転させる。これにより、第三コネクティングロッド271aが第一節点269aを図示矢印D1方向とは反対方向に押し、第一節点269aが図示矢印D1方向とは反対方向に移動する。すると、第一コネクティングロッド270aと第二コネクティングロッド270bとの角度αが狭まる。
一方、第三節点270dの位置は固定されているので、これに伴って下側歯型部261bが図示矢印D2方向とは反対方向、すなわち、下側歯型部261bが上側歯型部261aから離れる方向に移動する。これにより、圧着動作が解除され、上側歯型部261aと下側歯型部261bとの間の隙間Lが大きくなり、歯型部間から用紙束PBを取り出すことができる。
また、本実施形態では、前記綴じ位置から前記退避位置に下側歯型部261bが移動するときに、用紙束PBと接触し当該用紙束PBを下側歯型部261bから離間させる離間機構20を、下側歯型部261bの可動範囲内に設けている。
この離間機構20は、用紙束PBの下側歯型部261bと対向する側の面と接触する接触面である上面を有し、回転軸23を中心に回転可能な板状部材である剥がし部材21を有している。剥がし部材21には、図16に示すように下側歯型部261bの凹凸形状の歯部26bが進退可能な開口部21bが形成されている。
また、離間機構20は、剥がし部材21の上面とは反対側の面である下面に設けられた突起部21aと接触することで、剥がし部材21の回転移動を規制する回転規制部材であるストッパー22を有している。そして、剥がし部材21の突起部21とストッパー22とが接触することで、下側歯型部261bの可動範囲よりも小さい範囲で、ストッパー22により剥がし部材21の回転移動が制限される。
また、剥がし部材21の回転中心は、下側歯型部261bの回転軸23と同軸上にあり、下側歯型部261bの回転移動に連動して剥がし部材21も回転移動可能に構成されている。
下側歯型部261bが前記退避位置から前記綴じ位置に移動するときには、下側歯型部261bの可動部材27bの上面と、剥がし部材21の下面とが接触する。そして、下側歯型部261bに剥がし部材21が押し上げられながら、下側歯型部261bの回転移動に連動して剥がし部材21も回転移動する。
下側歯型部261bが前記綴じ位置に位置するときには、剥がし部材21の下面が下側歯型部261bの可動部材27bの上面と接触した状態で、剥がし部材21の開口部21bから下側歯型部261bの歯部26bが突き出ている。これにより、一対の歯型261によって用紙束PBを綴じることができる。
一方、下側歯型部261bが前記綴じ位置から前記退避位置に移動するときに、剥がし部材21が自重により下側歯型部261bの移動に連動して移動する途中で、剥がし部材21の突起部21aがストッパー22と接触し、剥がし部材21の回転移動が停止する。そして、下側歯型部261bが前記退避位置に位置するときには、剥がし部材21がストッパー22と接触した位置に位置したままとなる。
これにより、前記綴じ位置から前記退避位置に下側歯型部261bが移動するときに、圧着綴じされた用紙束PBが剥がし部材21の上面で止まる。そのため、下側歯型部261bと用紙束PBとが離間して隙間が生じ、下側歯型部261bから用紙束PBを剥がすことができる。
よって、一対の歯型261による用紙束PBの噛み合わせを解除したときに、前記綴じ位置から前記退避位置に移動する下側歯型部261bに用紙束PBが張り付くのを抑制できる。よって、用紙束PBが下側歯型部261bに張り付いて、紙詰まりや用紙の損傷などが生じるのを抑制することができる。
また、下側歯型部261bやストッパー22と接触する位置に剥がし部材21を移動させるために、駆動源を別途で設けて剥がし部材21の回転移動を制御する必要がないため、装置の大型化や、制御が複雑になるのを抑制することができる。
また、図16に示したように、下側歯型部261bが進退可能な開口部21bを剥がし部材21に形成したことで、簡単な構成で圧着綴じ動作を妨げることなく、剥がし部材21により用紙束PBが下側歯型部261bに張り付くのを抑制することができる。
図17及び図18はそれぞれ綴じ具210の構成及び動作の他例を示す説明図である。図17は、歯型261が開いた状態の綴じ具210及びその駆動機構の一例を示す説明図であり、図18は、歯型261が閉じた状態の綴じ具210及びその駆動機構の一例を示す説明図である。
図17において、歯型261は上側歯型部261aと下側歯型部261bとを有し、噛み合う形状をしている。上側歯型部261aは、可動リンク部材263の先端に組み付けられている。
下側歯型部261bは、上側歯型部261aと対向するように固定リンク部材264に組み付けられている。
可動リンク部材263は、加圧レバー262の回動によって歯型261が互いに接離するように構成されている。
加圧レバー262は、図18中矢印A2方向に回転するカム266により、図18中矢印A3方向に回動する。このカム266は駆動モータ265より駆動力を与えられ回転し、カムホームポジションセンサ267の検知情報に基づき、その検知位置に位置するように制御される。
カムホームポジションセンサ267の検知位置をカム266のホームポジション(待機位置)とし、この位置で歯型261は開いた状態となっている。
用紙を綴じるときは、図18に示すように動作する。一対の歯型261が開いた状態で、その間に用紙Pを挿入し、駆動モータ265の回転によってカム266を図18中矢印A2方向へ回転させる。
そのカム面の変位によって加圧レバー262は図中矢印A3方向に回動する。その回転力は、てこを利用した可動リンク部材263を介して力を増し、その端部の上側歯型部261aに伝わる。
カム266が一定量だけ回転した時点で上側歯型部261aと下側歯型部261bとは噛み合い、用紙Pを狭持する。この狭持によって、用紙Pは変形加圧され、隣接した用紙同士の繊維が絡み合い綴じられる。
その後、駆動モータ265は逆回転し、カムホームポジションセンサ267の検知位置で停止する。また、加圧レバー262はバネ性を有しており過負荷が加わったときは撓み、その過負荷を逃がすようになっている。
図17及び図18で示す構成の綴じ具210において、用紙Pを変形加圧するように挾持する一対の歯型261が噛み合う力である綴じ力が変化し、用紙同士の繊維が絡み合って用紙束が綴じられるときの綴じ強度が変化する。一対の歯型261が噛み合うときの綴じ力は、カム266を介して加圧レバー262を回動させるときの回転力(トルク)、すなわち、駆動モータ265で発生するトルク(力のモーメント)によって変化する。
駆動モータ265で発生するトルクは、駆動モータ265に供給されるモータ電流に応じて変化する。したがって、駆動モータ265に供給されるモータ電流を制御することにより、本綴じモード及び仮綴じモードなどの綴じモードに応じて、綴じ具210の綴じ力を変更し、用紙束の綴じ強度を変更することができる。
そして、このような構成の綴じ具210に対しても、上述したような用紙束PBを上側歯型部261aから離間させる離間機構を、上側歯型部261aの可動範囲内に設けることで、圧着綴じが施された用紙束PBが上側歯型部261aに張り付くのを抑制できる。
[実施形態2]
図19に、用紙上に画像を形成する画像形成装置101と、画像形成装置101によって画像が形成された用紙の束に対して綴じ処理を施す用紙後処理装置201とを備えた画像形成システムの概略図を示す。
図19を用いて、搬送路で用紙を重ねることについて説明する。
画像形成装置101から出力された用紙は用紙後処理装置201に入り、搬送ローラ4、搬送ローラ5で搬送され、用紙の移動力で切換爪9を回動させ、それにより確保された搬送路を通り、搬送ローラ7、搬送ローラ8により整合ユニット18へ搬送される。
搬送された用紙は矢印B方向へ自重落下し、後端フェンス11で搬送方向を揃えられる。予め用紙の後端をセンサS2で検知し、用紙搬送方向が揃えられ得る時間の後、整合フェンス10により幅方向が揃えられる。この動作を繰り返す事で多枚数の用紙を1枚ずつ整合する。
最終紙を整合し終わると、整合された用紙束に圧着綴じ装置12で圧着綴じを施し、整合ユニット18内の放出ベルト14が矢印C方向に回転し、それに取り付いている放出爪13により整合ユニット18から矢印D方向へ用紙束を放出する。その用紙束は排出ローラ15と従動コロ16とによりトレイ3に排出スタックされる。またトレイ3はスタック枚数に応じ上下移動する機構を持っている。
この従動コロ16は搬送ガイド板17に取り付いており、搬送する用紙束の厚みが変化しても同じ搬送力を得る事が出来るように支点17aを中心に回動可能に構成され、搬送ガイド板17の自重で排出ローラ15に加圧する構成になっている。以上が1部の場合の動作である。
これが2部以上の場合は、画像形成装置101は、先の部の最終紙と次の部の1枚目とのコピー間隔を、その他の場合と同じ間隔でコピーを連続して用紙後処理装置201に送り込む。
2部目以降の処理動作を、図20(a)、図20(b)、図20(c)、図20(d)で説明する。
図20(a)の矢印方向に搬送ローラ4,5が回転し、2部目の1枚目の用紙が搬送される。センサS2がその用紙の後端を検知し、整合ユニット18が用紙を受け入れる状態ではない場合には、図20(b)の矢印方向に搬送ローラ6,7,8が逆転する。そして、切換爪9によって用紙は図20(b)に示すように搬送され、その用紙の紙端をセンサS2で検知したら停止させる。
図20(c)に示すように搬送ローラ4,5により2部目の2枚目の用紙が搬送され、その先端をセンサS2が検知すると、図20(d)の矢印方向に搬送ローラ6,7,8が回転し、2枚の用紙を重ねた状態で搬送する。このとき、それら用紙の後端をセンサS2で検知したときに、整合ユニット18が用紙を受け入れる状態にある場合は、そのまま用紙を排出する。
一方、整合ユニット18が用紙を受け入れる状態ではない場合は、1枚目の用紙と同じ動作を繰り返す。このように、2部目の2枚目以降の用紙に対して、整合ユニット18が用紙を受け入れる状態になるまで、1枚目の用紙と同じ動作を繰り返した後、2枚以上の用紙を重ねた状態で排出する。
以上の動作により、2部以上のステープル処理時に生産性を落とすこと無く、効率よく後処理を行うことができる。
また、本実施形態の圧着綴じ装置12の構成としては、実施形態1の圧着綴じ装置280と同じ構成を採用することができ、実施形態1の圧着綴じ装置280を設けた場合と同様の効果を得ることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
凹凸形状の歯部を有する一対の歯型261などの圧着部材と、前記一対の圧着部材の一方であり、上側歯型部261aなどの他方の圧着部材とともに用紙束PBなどの用紙束を綴じる綴じ位置と、当該綴じ位置から退避した退避位置との間で移動可能に設けられた下側歯型部261bなどの可動圧着部材を移動させる圧着機構269などの圧着部材移動手段とを備え、可動圧着部材移動手段により可動圧着部材を前記綴じ位置に移動させることで、前記一対の圧着部材によって用紙束を挟み込み、用紙束に綴じを行う圧着綴じ方式の圧着綴じ装置280などの用紙綴じ装置において、前記綴じ位置から前記退避位置に可動圧着部材が移動するときに、用紙束と接触し用紙束を可動圧着部材から離間させる離間機構20などの離間手段を、可動圧着部材の可動範囲内に設けた。
一対の圧着歯で用紙束を強く噛み合わせる際には、強い加圧力が必要である。そのため、一対の圧着歯による用紙束の噛み合わせを解除するときに、圧着綴じされた用紙束が可動圧着歯に張り付いた状態で、可動圧着歯が固定圧着歯から離れる方向に移動することがある。このように、用紙束が可動圧着歯に張り付いてしまうと、紙詰まりや用紙の損傷に繋がるおそれがある。
そこで、(態様A)においては、前記綴じ位置から前記退避位置に前記可動圧着部材が移動するときに、圧着綴じされた用紙束を離間手段によって可動圧着部材から離間させて剥がすことができる。これにより、一対の圧着部材による用紙束の噛み合わせを解除したときに、前記綴じ位置から前記退避位置に移動する可動圧着部材に用紙束が張り付くのを抑制できる。よって、用紙束が可動圧着部材に張り付いて、紙詰まりや用紙の損傷などが生じるのを抑制することができる。