JP6644654B2 - 建物開口部の上部排水構造 - Google Patents

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Description

本発明は、窓サッシが配置される建物開口部の上部排水構造に関する。
窓サッシが配置される建物開口部において、窓サッシの上枠の上方に水切材を設けた上部排水構造が知られている。例えば、特許文献1の図2には、上枠の上側に水切材を設けた上部排水構造が図示されている。
上枠の上側に設けられる水切材は、躯体や外壁材の下地ボード、胴縁などに取り付けられている。そして、外壁材の屋内面側に浸入した雨水は、躯体や下地ボードに貼られた防水紙や防水テープに沿って流れ、前記水切材を介して屋外側に排水されている。これにより、外壁材の屋内面側に浸入した雨水が、サッシの上枠から躯体側に浸入することを防止できる。
特開2010−95905号公報
水切材の屋内側端部は、躯体や下地ボードなどに取り付けられ、水切材の屋外側端部は、外壁材や窓サッシの上枠よりも屋外側まで延長されている。
また、水切材の取付位置は、水切材を躯体、下地ボード、胴縁のいずれに取り付けるかによって変更される。また、外壁材の厚さ寸法、サッシの取付位置(外付け、半外付け等)、サッシの見込み幅(屋内外方向の見込み寸法)は、建物や窓の仕様等によって変更される。
このような水切材の取付位置、外壁材の厚さ寸法、サッシの取付位置、見込み幅によって、水切材の出幅寸法(見込み寸法)を変更する必要があり、施工現場で出幅寸法を確認して水切材を製作しなければならなかった。このため、施工現場での作業が増加して施工作業性が低下するという課題があった。
本発明の目的は、現場作業を軽減でき、外壁材の厚さ寸法や、サッシの取付位置、見込み寸法の変更にも対応できる建物開口部の上部排水構造を提供することにある。
本発明の建物開口部の上部排水構造は、建物の外壁に形成されて窓枠が配置される建物開口部の上部排水構造であって、前記外壁は、外装材と、外装材の屋内面側に設けられた防水層とを備え、前記窓枠の上枠には水切材が取り付けられ、前記水切材は、前記上枠に取り付けられる固定部と、屋外側が低くなるように傾斜された傾斜部とを備えるとともに、前記傾斜部は前記上枠よりも屋外側に延出され、前記水切材の前記傾斜部と、前記防水層とに亘って水切用防水シートが設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、水切材を窓枠の上枠に取り付けたので、上枠の屋外端部の位置を基準にして水切材の取付位置を設定できる。このため、外壁材の厚さ寸法や、サッシの取付位置、見込み寸法が変更された場合でも、これらの寸法に応じて水切材の出幅寸法を変更する必要が無く、水切材の出幅寸法を一定にできる。したがって、水切材は押出形材などで予め製造しておくことができ、施工現場で板金を折り曲げ加工して製作する必要が無いため、施工現場での作業を軽減できる。
また、外壁材の厚さ寸法や、サッシの取付位置、見込み寸法が変更された場合でも、水切材は、上枠の屋外端部を基準にして、一定の位置に取り付けることで確実に対応できる。
さらに、防水層と水切材の傾斜部とに亘って水切用防水シートを設けたので、外壁材の厚さ寸法や、サッシの取付位置、見込み寸法が変更されて防水層から水切材までの間隔が変更された場合でも、水切用防水シートの寸法を調整することで容易に対応することができる。
さらに、水切材は、上枠に取り付けられており、従来のように建物の躯体や下地ボードなどに取り付けられておらず、水切材と躯体等との間には水切用防水シートが介在されているため、水切材の熱を直接躯体に伝えない構造にでき、断熱性を向上できる。
本発明の建物開口部の上部排水構造において、前記防水層は、防水シートで形成され、前記水切用防水シートの屋内側端部は、前記防水シートに連続され、前記水切用防水シートの屋外側端部は、前記傾斜部に取り付けられていることが好ましい。
本発明によれば、防水層が防水シートで形成されているので、水切用防水シートの屋内側端部を両面テープ等の粘着テープで防水シートに貼り付けたり、水切用防水シートの屋内側端部を躯体等に沿って立ち上げ、その屋外面に防水シートの下端部が重なるように配置することで、防水シートと水切用防水シートとを連続させて防水シートから水切用防水シートに水が流れるように容易に構成できる。
また、水切用防水シートの屋外側端部は水切材の傾斜部に取り付けられているので、防水シートから水切用防水シートに流れた雨水を、水切用防水シートから水切材の傾斜部に流して排水することができる。
本発明の建物開口部の上部排水構造において、前記外装材と建物の躯体との間には、断熱材が配置され、前記断熱材と、前記上枠との間には、空気層が設けられ、前記水切材の前記固定部は、前記空気層に配置されていることが好ましい。
本発明によれば、上枠の上面と断熱材との間に、空気層が設けられる。例えば、前記水切用防水シートを気密性を有する気密防水シートで構成し、水切用防水シートとは別の気密防水シートを前記水切用防水シートと上枠との間に設けることなどで、水切用防水シート、気密防水シート、上枠で囲まれる密閉された空気層を設けることができる。この空気層は、空気の対流が生じない程度の容積で密閉されていれば断熱層として機能する。
このため、断熱材と上枠の上面との間に、水切材を配置するためのスペースを設けたため、断熱材を上枠まで連続して配置できない場合でも、空気層を介して上枠まで連続する断熱ラインが形成され、断熱性能を確保できる。
また、水切材の固定部は前記空気層に配置されているので、水切材と躯体との間に前記空気層による断熱層を設定でき、水切材から躯体側への熱流量を低減でき、断熱性能を向上できる。
本発明の建物開口部の上部排水構造において、前記外装材および前記傾斜部間には、前記外装材および前記傾斜部間を塞ぐシーリング材と、前記傾斜部に流れた水を排水する水抜き穴とが設けられていることが好ましい。
本発明によれば、外装材および水切材の傾斜部間の隙間をシーリング材で塞いでいるので、雨水がこの隙間から外装材の屋内面側に吹き込むことを防止できる。また、防水層から水切用防水シートを介して水切材の傾斜部に流れた雨水はシーリング材で堰き止められるが、前記水抜き穴を形成しているので、水抜き穴部分から屋外側に確実に排水することができる。
本発明の建物開口部の上部排水構造において、前記水抜き穴は、前記外装材および前記傾斜部間に配置される水抜き部品、または、前記シーリング材の一部に形成した切欠部で構成されていることが好ましい。
本発明によれば、シーリング材の一部に切欠部を形成することで水抜き穴を構成すれば、別途、部品を設ける必要が無く、コストを低減できる。一方、湿式のシーリング材の充填作業時に切欠部を施工する場合、施工作業者によって切欠部の大きさにばらつきが生じたりする可能性があるが、水抜き部品で構成すれば、水抜き穴のサイズも規定通りに設定でき、水抜き穴部分の仕上げも向上できる。
本発明の建物開口部の上部排水構造によれば、現場作業を軽減でき、外壁材の厚さ寸法や、サッシの取付位置、見込み寸法の変更にも対応できる。
本発明の第1実施形態の建物開口部を示す縦断面図。 第1実施形態の建物開口部を示す横断面図。 第1実施形態の要部を示す斜視図。 第1実施形態の要部を示す横断面図。 本発明の第2実施形態の建物開口部を示す縦断面図。 本発明の第3実施形態の要部を示す横断面図。 本発明の第1変形例の要部を示す縦断面図。 本発明の第2変形例の要部を示す縦断面図。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、図1〜3に示すように、建物の既設外壁1および既設枠2を残し、新設外壁3、新設枠4、新設障子5を新たに取り付けて改装した場合の建物開口部の上部排水構造である。
なお、以下の説明において、既設枠2および新設枠4を屋内側から見た際に、上下(垂直)となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、屋内外方向を見込み方向として説明する。また、既設枠2および新設枠4は矩形状に枠組みされており、枠の内周側に面した面を内周面、外周側に面した面を外周面として説明する。
また、既設枠2、新設枠4、新設障子5の枠材や框材、ガラス等の断面図では、図面を見やすくするためにハッチングを省略している。
建物は、既設外壁1や既設枠2を支持する躯体10を備える。躯体10は、例えば、適宜間隔で配置された柱や間柱と、柱や間柱間に掛け渡されて窓開口を区画する窓台、まぐさ等を備える。
[既設外壁および既設枠]
躯体10には、既設外壁1と、既設枠2とが固定されている。
既設枠2は、既設上枠21と、既設下枠22と、左右の既設縦枠23、24とを枠組みして構成されている。各枠21,22,23,24の断面形状は、既設窓の種類によって異なり、本実施形態の既設枠2は、引違い窓用である。
これらの各枠21,22,23,24は、躯体の屋外面に当接する釘ヒレ21A,22A,23A,24Aを備えており、この釘ヒレ21A,22A,23A,24Aから躯体に釘を打ち込むことで、既設枠2は躯体10に取り付けられている。
既設枠2の屋内側には、既設額縁26が窓開口の内周面に沿って取り付けられている。既設額縁26は、躯体10の屋内側を覆う内装材27の端面が当接されている。
既設枠2の外周面には、既設外壁1が配置され、既設外壁1の端面と既設枠2とは、シーリング材28で塞がれて防水処理されている。
[新設外壁]
既設外壁1の屋外側には、新設外壁3が改装によって設けられている。新設外壁3は、既設外壁1の屋外側に配置された新設断熱材31と、新設断熱材31の屋外側に配置された胴縁(本実施形態では縦胴縁)32と、胴縁32の屋外側に配置された新設外装材30とを備えている。
新設断熱材31は、ポリスチレン樹脂やフェノール樹脂等を発泡させた断熱材など、外張り断熱工法で用いられる一般的な断熱材である。
新設外装材30は、窯業系、コンクリート系、ALC(軽量気泡コンクリート)系、金属系などの様々な材質で構成される外装材である。
[新設窓]
既設枠2の開口内周面には新設窓が取り付けられている。本実施形態の新設窓は、FIX窓と、縦すべり出し窓との連窓である。新設窓は、新設枠4および新設障子5を備える。
新設枠4は、新設上枠41、新設下枠42、新設縦枠43、44、縦骨(中骨)45を備えている。
FIX窓は、新設上枠41と、新設下枠42と、新設縦枠44と、縦骨45とを枠組みして構成される窓枠内に、トリプルガラス47からなる面材を組み込むことで構成される。トリプルガラス47は、各枠41、42、44、縦骨45と、これらに取り付けられた押縁46とで保持されている。
縦すべり出し窓は、新設上枠41と、新設下枠42と、新設縦枠43と、縦骨45とを枠組みして構成される窓枠内に、新設障子5を開閉可能に取り付けることで構成される。
新設障子5は、樹脂製の上框51、下框52、左右の縦框53、54とを枠組みして構成される新設框と、この新設框内に組み込まれたトリプルガラス57からなる面材とで構成されている。トリプルガラス57は、各框51,52,53,54と、これらに取り付けられた押縁56とで保持されている。
新設窓は、新設枠4や、新設障子5の框51,52,53,54が樹脂製(合成樹脂製)であり、面材はトリプルガラス47,57で構成されているので、断熱性能の高い窓とされている。なお、本実施形態の各框51,52,53,54は、同一断面の樹脂製の押出形材で構成され、複数の中空部を備えて断熱性能を向上させている。
[新設枠]
新設上枠41、新設下枠42、新設縦枠43、44は、樹脂製の押出形材で構成されている。したがって、本実施形態では、新設枠4全体が断熱部材(樹脂部材)で構成されている。本実施形態では、各枠41,42,43,44は、同一断面形状の押出形材であるが、各枠の形状は窓の種類に応じて設定され、必ずしも同一断面形状のものに限らない。
また、各枠41,42,43,44は、見込み方向に沿って屋外側から屋内側に並んだ第1〜4中空部を備えており、枠自体の断熱性および剛性を向上させている。
第1中空部の屋外端面は、新設外装材30の屋外面とほぼ同一平面上に配置されている。第2中空部は、第1中空部よりも見付け寸法が大きくされ、第1中空部よりも内周側に突出している。第2中空部の内周面には押縁46が装着可能な係合溝が形成されている。
第3中空部は、第2中空部と同程度の見付け寸法であり、見込み寸法は既設枠2と同程度の寸法とされている。新設上枠41、新設下枠42の第3中空部には、新設障子5を開閉するためのすべり出しアームの固定用の金属プレートが配置されている。
第4中空部は、第3中空部と同程度の見付け寸法である。第4中空部の内周側には、FIX窓のトリプルガラス47の保持片や、新設障子5の戸当り部となる突出部41A,42A,43A,44Aが設けられている。
なお、縦骨45は、各枠41,42,43,44の第2中空部から第4中空部に対応する3つの中空部(第2〜4中空部)を備えている。縦骨45の第2中空部には押縁46の係合溝が形成され、第3中空部には錠受け等の部品が取り付けられる金属プレート(チャンネル材)が配置され、第4中空部には左右方向に突出した2つの突出部45Aが形成されている。
新設上枠41、新設下枠42、新設縦枠43、44の外周面は、フラットな平面形状とされ、既設枠2の釘ヒレ21A,22A,23A,24Aに相当するヒレ部は設けられていない。
各枠41,42,43,44の屋内側端部には、屋内側に突出された取付片411、421、431、441が形成され、取付片411,421,431,441は、ネジ15によって躯体10に取り付けられている。したがって、ネジ15は、新設枠4の見込み方向に対して直交する方向(各枠41,42,43,44の見付け方向)にねじ込まれている。
このように新設枠4は、釘ヒレが無く、ネジ15を見付け方向にねじ込むことで躯体10に取り付けられるため、屋内外方向(見込み方向)の位置を調整可能に躯体10に取り付けることができる。本実施形態では、新設枠4の屋外面(第1中空部の端面)が、新設外装材30の屋外面に略揃うように、新設枠4の位置が調整されている。
さらに、図4に示すように、新設外装材30の屋外面から既設枠2の屋内側端縁までの見込み方法の長さ寸法L1は、新設外装材30の屋外面から新設枠4の屋内側端縁までの見込み方法の長さ寸法L2よりも小さくなるように設定されている。このため、新設枠4は、既設枠2の内周面を覆っている。
なお、本実施形態では、新設外装材30の屋外面は、新設枠4の屋外面と、同じ見込み方向の位置であるため、新設枠4(新設上枠41、新設下枠42、新設縦枠43、44)の見込み方向の長さ寸法も寸法L2である。
新設枠4の見込み方向の寸法L2は、各取付片411,421,431,441が既設枠2よりも屋内側に位置するように設定されている。つまり、取付片411,421,431,441の突出寸法は、寸法(L2−L1)以上とされている。このため、取付片411,421,431,441からねじ込まれるネジ15は、既設枠2よりも屋内側の位置で、既設額縁26等を介して躯体10にねじ込まれている。
新設枠4の室内側には、図1,2に示すように、木製の新設額縁36が既設額縁26に沿って配置されている。新設額縁36と内装材27との間には、新設カバー材38が掛け渡されている。新設カバー材38は、既設額縁26が屋内側に露出しないようにカバーしている。
[水切材]
図1,3に示すように、新設上枠41の外周面(上面)には、アルミ押出形材などで構成された水切材60が取り付けられている。このため、新設外装材30、新設断熱材31、胴縁32の下端面と、新設上枠41との間には、水切材60を配置するためのスペースが確保されている。
水切材60は、図3に示すように、新設上枠41にネジやリベット等で固定される固定部61と、固定部61から上方に延出された立ち上がり部62と、立ち上がり部62の上端から新設上枠41の屋外側まで延出され、屋外方向に向かうにしたがって下方に傾斜されて下り勾配が設定された傾斜部63と、傾斜部63の先端から下方に延出された水切部64とを備えている。
新設上枠41と水切部64との間には、乾式シーリング材65が取り付けられている。
傾斜部63と新設外装材30との間には、バックアップ材66および湿式シーリング材67が充填されている。バックアップ材66および湿式シーリング材67の一部には、水抜き穴を有する水抜き部品68が配置されている。
さらに、水切材60の傾斜部63と、既設上枠21や新設断熱材31との間は、後述する水切用防水シート75が掛け渡されており、新設外装材30の裏面側(屋内面側)に浸入した水は、水切用防水シート75から傾斜部63上に流れ、水抜き部品68を介して排水される。
なお、水抜き部品68を設ける代わりに、湿式シーリング材67およびバックアップ材66に水抜き穴となる切欠部を設けて排水できるように構成してもよい。
[新設枠の固定構造]
本実施形態では、新設枠4の高さ寸法を、既設枠2の開口高さ寸法よりも小さく設計し、新設枠4を既設枠2内に容易に配置できるようにしている。このため、新設枠4を既設下枠22上に設置した際に、新設上枠41と既設枠2との間には所定の隙間が生じる。そこで、図1,3に示すように、新設上枠41と、既設枠2との間には、前記隙間寸法に応じた厚さ寸法の調整部材(飼い木)415が配置されている。また、既設上枠21の下面と、既設額縁26の下面との間には段差があるため、調整部材415と既設額縁26との間にも隙間が生じ、この隙間部分には調整部材416が配置されている。
新設下枠42は、図1に示すように、既設下枠22と新設断熱材31との上面に当接するように配置されている。本実施形態の既設下枠22は、引違い窓用であり、内レールに比べて外レールの位置が低い。このため、既設下枠22には、新設下枠42の下面に当接する支持ブラケット221が取り付けられている。支持ブラケット221は、高さ調整可能なように2つの部品で構成されている。この支持ブラケット221は、既設下枠22の長手方向(既設枠2の左右方向)の全長と同程度の長さ寸法に形成して配置してもよいが、本実施形態では短尺のピース状に形成されて既設下枠22の複数箇所に取り付けられている。この支持ブラケット221が設けられているので、新設下枠42の荷重を支持でき、新設下枠42の垂れ下がりも防止できる。
また、既設額縁26上には、既設下枠22の上面との段差を無くすための調整部材426が配置されている。
新設下枠42の屋外端部は新設外装材30の位置まで延設されており、新設下枠42と新設外装材30との間には、バックアップ材66および湿式シーリング材67が充填されている。
新設縦枠43、44は、図2に示すように、既設縦枠23、24の内周側に配置されている。新設縦枠43、44と、既設額縁26との間にも、板状の調整部材435、445が配置されている。これにより、新設枠4の左右方向の幅寸法を、既設縦枠23、24間の寸法よりも小さくして、調整部材435、445で調整することで、新設枠4は、幅方向においても既設枠2内に容易に配置できる。
新設縦枠43、44の外周面(側面)は、前記調整部材435、445と、新設断熱材31とに当接されている。一方、新設外装材30、胴縁32は、新設縦枠43、44の外周面から離れて配置されている。新設縦枠43、44と新設外装材30との間には、バックアップ材66および湿式シーリング材67が充填されている。
[防水構造]
次に、本実施形態における防水構造について、図1〜3に基づいて説明する。本実施形態では、外壁用の防水シート71と、既設枠2および新設枠4間を空気が流通しないように封鎖する気密防水シート72と、水切材60に水を案内する水切用防水シート75との3種類の防水シートを設けている。
なお、防水シートとしては、水は通過させないが水蒸気などの湿気は通過させる透湿防水シートと、水・水蒸気・空気を通過させない気密防水シート(防湿気密シートや気密シートともいう)とがあり、前記防水シートに求められる機能によって種類が選択される。本実施形態では、新設外装材30と、新設断熱材31との間に、胴縁32を設けて通気層を形成しており、既設外壁1の湿気(水蒸気)を、新設断熱材31および通気層を介して外部に逃がすことができるように、防水シート71は透湿防水シートを用いている。また、気密防水シート72および水切用防水シート75は、気密防水シートを用いている。
なお、図1,2,4では、各防水シート同士を区別しやすいように、防水シート71を破線で示し、気密防水シート72および水切用防水シート75を太い実線で示している。
また、各防水シート71,72,75は、一般的な防水シートと同様に、可撓性を有しており、既設枠2等に沿って折り曲げることができるように構成されている。
[外壁用の防水シート]
外壁部分において、既設外壁1の裏面側には既設の防水シートなどが設けられている。ただし、この既設の防水シートは劣化している可能性もある。このため、改装時には、新設の防水シート71を装着して建物の外壁における防水構造を構成している。すなわち、既設外壁1と新設断熱材31との間には、防水シート71が接着されている。この防水シート71によって、新設外装材30の裏面側に設けられる防水層が構成される。
図1に示すように、既設上枠21と新設断熱材31との間に配置される防水シート71の端部は、後述するように、気密防水シート72、水切用防水シート75の屋外側に重なって配置されている。また、既設下枠22と新設断熱材31との間に配置される防水シート71の端部は、気密防水シート72の屋内側に重なって配置されている。すなわち、上下方向に連続する防水シートの連続部分では、上側の防水シートが下側の防水シートの屋外側に重なり、水が流れ落ちた際に、防水シートの屋外面側を流れるようにしている。
また、図2に示すように、既設縦枠23、24と新設断熱材31との間に配置される防水シート71の端部は、気密防水シート72の屋外側に重なって配置されている。これらの各防水シート71,72,75の重なり部分は、両面テープなどで互いに接着されている。
[密閉用の防水シート]
既設枠2と、新設枠4との間には、気密防水シート72が設けられている。気密防水シート72は、貫通孔等から浸入しようとする水を高分子吸収体が水を吸って膨潤し、貫通孔をふさぐ機能を備えており、例えば、スリーエムジャパン株式会社製の止水機能付き外壁防水シート2407等が利用できる。
既設枠2および新設枠4間をつなぐ気密防水シート72は、既設枠2の四周内周面に沿って配置され、既設枠2および新設枠4間において屋内外方向に空気が流通しないように密閉している。
すなわち、気密防水シート72は、図1、3に示すように、既設上枠21および新設上枠41間では、既設上枠21の屋外面に両面テープなどで貼り付けられ、既設上枠21および調整部材416の内周面(下面)に沿って屋内側に折り込まれている。気密防水シート72の屋内側端部は、調整部材415および取付片411の屋内面に沿って折り曲げられ、さらに取付片411の内周面に沿って屋外側に折り返され、取付片411に両面テープなどで貼り付けられている。
気密防水シート72は、図1に示すように、既設下枠22および新設下枠42間では、既設下枠22の屋外面に貼られた防水シート71の屋外面に両面テープなどで貼り付けられ、支持ブラケット221、既設下枠22および調整部材426の上面に沿って配置されている。気密防水シート72の屋内側端部は、取付片421の屋外面に沿って折り曲げられ、さらに取付片421の内周面に沿って屋外側に折り返され、取付片421に両面テープなどで貼り付けられている。
気密防水シート72は、図2,4に示すように、既設縦枠23、24および新設縦枠43、44間では、既設縦枠23、24の屋外面に両面テープなどで貼り付けられ、既設縦枠23、24および既設額縁26の内面に沿って配置されている。気密防水シート72の屋内側端部は、調整部材435、445の屋外面に沿って折り曲げられ、さらに取付片431、441の内周面まで折り返され、取付片431、441に両面テープなどで貼り付けられている。
気密防水シート72の屋内側端縁は、新設枠4の取付片411,421,431,441の内周面に沿って配置される新設額縁36により、屋内側に露出しないように隠されている。
[水切用の防水シート]
図1,3に示すように、既設上枠21から水切材60まで、水切用防水シート75が設けられている。水切用防水シート75は、気密防水シート72と同じく気密性を有するシートである。水切用防水シート75の屋内側端部は、既設上枠21の屋外面に貼られた気密防水シート72の表面(屋外面)に両面テープなどで貼られている。なお、新設断熱材31および既設外壁1間に配置された前記防水シート71の端部は、既設上枠21の屋外面と新設断熱材31との間において、水切用防水シート75の表面(屋外面)に両面テープなどで貼られている。すなわち、既設上枠21の屋外面と新設断熱材31との間には、屋内側から気密防水シート72、水切用防水シート75、防水シート71が積層されている。
水切用防水シート75の屋外側端部は、水切用防水シート75の屋内側端部よりも低い位置で、水切材60の傾斜部63の表面に両面テープなどで貼られている。このため、水切用防水シート75は、屋内側端部で防水シート71に連続して設けられ、この屋内型端部から屋外側端部に向かって、水切用防水シート75の表面が下り勾配となるように設けられている。
したがって、新設断熱材31および既設外壁1間に浸入した雨水は、防水シート71に沿って流れ、水切用防水シート75から水切材60の傾斜部63上に流れ、水抜き部品68から屋外側に排水される。
[断熱構造]
次に、本実施形態における断熱構造について説明する。
既設外壁1と新設外装材30との間には、断熱層80が形成されている。断熱層80は、主に新設断熱材31で構成され、新設上枠41と新設断熱材31との間は、気密防水シート72および水切用防水シート75で区画される空気層81によって構成されている。
空気層81は、気密防水シート72および水切用防水シート75、水切材60、新設上枠41で囲まれた空間であり、空気の対流が生じない小さな容積とされている。このため、空気層81も断熱層80として機能する。
また、新設下枠42、新設縦枠43、44には、新設断熱材31が当接されている。このため、外壁部分には、新設枠4に連続する断熱層80が、新設断熱材31および空気層81によって構成されている。
断熱層80(新設断熱材31および空気層81)は、既設枠2の屋外面を覆っており、既設枠2の屋外側に断熱ラインが構成されているので、新設外装材30から既設枠2に伝わる熱流量を低減でき、外気温が低い場合でも、アルミ押出形材からなる既設枠2の温度が低下して結露が生じることを抑制できる。
新設窓においては、樹脂製の新設枠4と、樹脂製の框51,52,53,54と、トリプルガラス47、57を用いることで断熱性能を確保している。特に、新設窓において、屋外の空気に触れる面積が最も大きい面材においては、トリプルガラス47,57を採用することで断熱性能を高めており、このトリプルガラス47、57に沿って屋内外の熱流量を低減させる断熱ラインが構成される。
また、新設枠4および各框51,52,53,54においても、樹脂製とし、さらに見付け方向に並んだ複数の中空部を備えることで、断熱性能を向上させている。
ここで、新設窓が配置される開口部分において、図4に示すように、トリプルガラス47、57の少なくとも1枚のガラスは、新設断熱材31同士を結ぶ断熱ライン内に配置されている。
FIX窓のトリプルガラス47において、最も屋外側に配置されたガラス471は、見込み方向において前記断熱層80と重なる位置に配置されている。すなわち、トリプルガラス47の最も屋外側に配置されたガラス471は、新設断熱材31の屋外面の延長線上にある仮想面S1と、屋内面の延長線上にある仮想面S2との間に配置されている。
縦すべり出し窓の新設障子5のトリプルガラス57において、最も屋外側に配置されたガラス571と、中間に配置されたガラス572とは、見込み方向において前記断熱層80と重なる位置に配置されている。すなわち、ガラス571、572は、前記仮想面S1および仮想面S2間に配置されている。
したがって、新設窓に設けられた面材であるトリプルガラス47、57の少なくとも1枚のガラスは、前記断熱ラインに掛かる(重なる)位置、つまり見込み方向において前記断熱層80と重なる位置に配置されている。
このため、断熱層80と、新設枠4と、新設枠4内に配置された新設障子5(框51〜54とトリプルガラス57)およびトリプルガラス47とで、外壁面に沿って断熱ラインが形成されている。
新設枠4は、既設枠2の内周面を覆うように配置されている。このため、既設枠2の内周面は断熱性能の高い樹脂製(断熱部材製)の新設枠4で覆われる。したがって、既設枠2の屋外面および内周面は、断熱層80と、この断熱層80に連続して設けられた新設枠4とで覆われて外気に触れることがないため、新設枠4から既設枠2に伝わる熱流量も低減でき、外気温が低い場合でも、アルミ押出形材からなる既設枠2の温度が低下して結露が生じることを抑制できる。
[改装工法]
次に、本実施形態の外壁改装構造の施工方法について説明する。
まず、既設建具の障子(不図示)を既設枠2から取り外す。また、調整部材416、426を先付けし、既設上枠21、既設下枠22と、既設額縁26との段差を無くしておく。
そして、既設枠2の屋外面に気密防水シート72を貼り付けて、建物開口部の周囲において、気密防水シート(気密シート)72の屋外側端部の貼り付け工程を行う。なお、既設下枠22部分は、防水シート71が先に貼り付けられているので、防水シート71の表面に気密防水シート72の屋外側端部を貼り付ける。
気密防水シート72は、帯状(テープ状)に形成されたものが利用でき、このテープ状の気密防水シート72の長手方向の2辺のうちの一辺(屋外側端部)を、各枠21,22,23,24の屋外面に沿って粘着テープなどで貼り付ける。例えば、既設上枠21の左右方向の中央部から気密防水シート72の貼り付けを開始し、既設上枠21から既設縦枠23、既設下枠22、既設縦枠24に順次気密防水シート72を貼り付け、既設上枠21の貼付開始位置に重なる位置まで気密防水シート72を貼り付ける。この気密防水シート72は、後述するように、防水シート71つまり防水層に連続する防水シートである。
なお、既設枠2のコーナー部で気密防水シート72の貼付方向を90度変化させる場合は、気密防水シート72の外周側に切り込みを入れて方向を変化させればよい。この気密防水シート72の切り込み部分は、別の防水テープを重ねて貼り付けて塞いでおく。
次に、気密防水シート72の他の一辺側を、各枠21,22,23,24の内周面に沿って屋内側に折り込み、気密防水シート(気密シート)72を建物開口部の内周面に沿って配置する工程を行う。
なお、気密防水シート72は、テープ状のものに限らず、既設枠2とほぼ同じ大きさの1枚のシートでも構成できる。この場合は、気密防水シート72の四周縁部を既設枠2の屋外面に貼り付けた後、気密防水シート72の既設枠2の開口部分に切り込みを入れ、既設枠2に沿って屋内側に折り込む。切り込みは、例えば、既設枠2の開口の四隅、つまり既設上枠21および既設下枠22と、既設縦枠23、24とが接合されたコーナー部分から、斜め45度の角度で切り込み、2つのコーナー部からの切り込み線が交差する点同士を結ぶ線で切り込むことで、2つの三角形と、2つの台形の折り込み部分が形成されるように設定すればよい。また、気密防水シート72の折り込み部分同士の間は、コーナー用のシート材を貼り付けて塞いでおく。
次に、建物開口部内に新設枠4を配置する工程を行う。この際、新設枠4は釘ヒレが無いため、見込み方向の位置調整が可能である。このため、新設外装材30、胴縁32、新設断熱材31の見込み寸法(厚さ寸法)に応じて、新設枠4の見込み方向の取付位置を調整すればよい。例えば、新設枠4の屋外端面が、新設外装材30の屋外面にほぼ揃う位置に配置する。
次に、気密防水シート72の屋内側端部を、新設枠4の屋内側の部位である取付片411,421,431,441側に折返し、取付片411,421,431,441の内周面に防水性を有する両面テープなどを用いて貼り付ける工程を行う。なお、気密防水シート72の余った部分はカッターなどで切り取ればよい。
次に、新設枠4をネジ15で躯体10に取り付ける。ネジ15は、気密防水シート72に穴をあけるが、気密防水シート72は膨潤性を有するため、水が浸入した場合は、気密防水シート72が水を吸って膨らみ、ネジ15で形成された穴を塞ぐため、気密防水シート72から屋内側への水の浸入を防止できる。
次に、既設上枠21の屋外面に貼られた気密防水シート72の表面と、新設上枠41に予め取り付けられた水切材60の傾斜部63との間に、水切用防水シート75を貼り付ける。また、既設外壁1の表面に貼った防水シート71を水切用防水シート75の表面に貼り付ける。さらに、水切用防水シート75が設けられていない既設縦枠23、24部分などでは、防水シート71を気密防水シート72に貼り付ける。これにより、気密防水シート72は、防水シート71で構成される防水層に連続して設けられる。
また、既設外壁1の屋外面に沿って新設断熱材31を配置し、胴縁32を介して新設外装材30を取り付ける。さらに、新設枠4と新設外装材30との間に、バックアップ材66および湿式シーリング材67を充填する。
以上によって、外壁および窓の改装作業が終了する。
なお、新設外装材30および新設枠4を設置して改装した後に、窓の種類を変更するため、あるいは、窓が破損、劣化したために新設窓を更に交換する場合は、新設外装材30、新設断熱材31等を残したまま、新設枠4および新設障子5を取り外して交換することができる。
この場合、新設カバー材38、新設額縁36を取り外し、新設枠4および気密防水シート72の屋内側を露出させる。そして、気密防水シート72の屋内露出部分をカッターなどで切断し、気密防水シート72の内周面や、調整部材416、426、既設額縁26等に沿って配置されている部分と、取付片411,421,431,441に貼られた部分とを分離する。
また、湿式シーリング材67、バックアップ材66も適宜除去しておく。さらに、新設上枠41と新設断熱材31との間では、水切用防水シート75を切断して水切材60から分離する。そして、新設枠4を躯体10に固定しているネジ15を外し、新設枠4を建物開口部から屋外側に取り外す。
その後、建物開口部に残っている気密防水シート72や水切用防水シート75に新たな気密防水シートを連結し、新たな新設窓を屋外側から吊り込む。
そして、新設枠4の屋内側では、気密防水シート72に連結した気密防水シートを取付片411,421,431,441の内周面に折り返して貼り付け、新設枠4をネジ15で躯体10に取り付け、新設額縁36や新設カバー材38を新たに設けて仕上げる。また、新設枠4の屋外側では、水切用防水シート75に連結した気密防水シートを、新設枠4の水切材60の傾斜部63に貼り付け、新設外装材30との隙間部分にバックアップ材66、湿式シーリング材67を充填して仕上げる。
以上の作業によって、新設窓の交換作業を行うことができる。
[第1実施形態の作用効果]
このような第1実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)既設外壁1の屋外側に新設外装材30を配置し、新設外装材30および既設外壁1間に新設断熱材31を設けたので、外壁部分の断熱性能を向上できる。また、既設枠2の開口内周側に配置された新設枠4を樹脂製としているので、新設枠4自体の断熱性能も向上できる。
さらに、既設枠2を、新設断熱材31や空気層81で構成される断熱層80と、新設枠4とで被覆し、既設枠2が屋外に露出しないように覆っているので、既設枠2を介した熱流出を低減できる。
したがって、断熱層80による外壁部分の熱流量の低減と、新設窓による壁開口部分の熱流量の低減とに加えて、壁と窓との連結部分の熱流量も低減でき、外壁全体の断熱性能を向上できる。このため、既設枠2や躯体10側の温度低下を抑制でき、結露発生も防止できる。
(2)新設枠4内に配置される新設障子5と、嵌め殺し窓の面材を、トリプルガラス47、57で構成しているので、面材部分の断熱性能を向上できる。さらに、新設障子5では、各框51,52,53,54を樹脂製としているので、框自体の断熱性能も向上でき、既設枠2内に配置される新設窓全体の断熱性能を向上できる。
(3)トリプルガラス47,57のうち、少なくとも1枚のガラス471,571,572を、見込み方向において断熱層80に重なる位置に配置したので、断熱層80で構成される断熱ラインの延長線上に、トリプルガラス47,57によって構成される面材の断熱ラインを配置できる。このため、新設断熱材31、空気層81を有する断熱層80から新設枠4、新設障子5等に形成される断熱ラインを外壁面とほぼ平行に配置できる。
したがって、断熱ラインが外壁面に対して斜めに設定された場合に比べて、既設枠2を介した熱流量を低減でき、既設枠2の周囲の結露の発生も抑制できる。
(4)新設枠4の屋外側端部を、新設外装材30の屋外面よりも屋外側に位置しているので、新設枠4と新設外装材30とを対向させて配置でき、これらの間にバックアップ材66、湿式シーリング材67を充填してシールすることができる。このため、新設枠4を、新設外装材30の見切り材として利用でき、一般的な納まり構造にできる。
また、新設外装材30が設けられていない場合は、新設枠4と既設枠2とを繋ぐジョイント部材を設けて、新設枠4および既設枠2間の隙間を塞ぐ必要があるが、本実施形態では新設枠4および新設外装材30間で通常のシール処理を行うことができ、新設枠4および既設枠2間を繋ぐジョイント部材は不要なため、納まりを簡略化できる。
(5)新設外装材30の屋外面から既設枠2の屋内端部までの見込み寸法L1を、新設外装材30の屋外面から新設枠4の屋内端部までの見込み寸法L2よりも小さくしたので、既設枠2の内周面の全体を新設枠4で覆うことができ、断熱性能および意匠性を向上できる。
(6)新設枠4の外周面を見込み方向に沿った平面で形成したので、新設外装材30や新設断熱材31の厚さ寸法に応じて、新設枠4の屋内外方向の位置を自由に設定できる。したがって、新設外装材30等の厚さ寸法が異なる場合でも、同一種類の新設枠4を用いることができ、新設枠4の種類を少なくできる。
また、新設枠4の屋内側端部から屋内方向に向かって突出された取付片411,421,431,441から躯体10にネジ15をねじ込んで新設枠4を固定しているので、開口内周側から新設枠4の取付作業を行うことができ、改装作業を容易に行うことができる。
(7)水切材60は、新設上枠41に取り付けられており、従来のように外壁下地材、胴縁、躯体等に取り付けられていないため、金属製の水切材60と躯体10側とが直接接触することがなく、水切材60を介しての熱流量を低減でき、この点でも断熱性能を向上できる。特に、水切材60の屋内側は、密閉された空気層81で構成した断熱層80であり、水切用防水シート75も断熱性を有するため、水切材60から既設上枠21等への熱橋となる部材が設けられておらず、水切材60から既設上枠21への熱流量を低減できる。
(8)水切材を外壁側に取り付けた場合には、新設外装材30等の厚さ寸法に応じて複数種類の水切材を用意する必要があるが、本実施形態では、水切材60は、新設上枠41に取り付けられているので、新設上枠41の屋外面を基準にして取り付けることができる。このため、新設外装材30等の厚さ寸法が変わっても、水切材60の種類は一種類にすることができる。
さらに、防水シート71と水切材60とは水切用防水シート75で繋いでいるので、新設外装材30の厚さ寸法が変化して、防水シート71と水切材60との間隔が変化しても、水切用防水シート75の長さ寸法等で容易に調整できる。
(9)既設枠2と新設枠4との間を塞ぐ気密防水シート72を、新設枠4の屋内側の取付片411、421、431、441に貼り付けているので、新設枠4の取り付け後に、新設枠4の交換が必要となった場合でも、気密防水シート72の屋内側に露出する部分を切断することで、気密防水シート72と新設枠4とを切り離して新設枠4を容易に取り外すことができる。また、建物開口部に残っている気密防水シート72に新たな気密防水シートを連結し、新たに設置した新設枠4の屋内側に貼り付けることで、交換後の新設枠4との防水処理も容易に行うことができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図5に基づいて説明する。なお、第2実施形態は、防水構造における防水シートの配置のみが第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、図面に同一符号を付し説明を省略する。
第1実施形態は、新設断熱材31よりも屋内側に配置した防水シート71により、新設断熱材31の屋内側に防水ラインを構成している。
これに対し、第2実施形態では、新設断熱材31の屋外側に防水シート73を配置し、新設断熱材31の屋外側に防水ラインを構成したものである。第2実施形態の防水シート73は、透湿防水シートで構成されている。
防水シート73は、新設上枠41の部分では、水切材60の傾斜部63に貼り付けられている。したがって、防水シート73の下端部側は、水切用防水シート75としても用いられる。
防水シート73は、新設下枠42、新設縦枠43、44の部分では、新設断熱材31の端縁から新設下枠42、新設縦枠43、44に沿って屋外側に折り曲げられており、両面テープなどで新設下枠42、新設縦枠43、44に貼られている。
これにより、新設外装材30の裏面側に浸入した水は、防水シート73に沿って水切材60の傾斜部63に案内され、水抜き部品68を介して屋外側に排出される。
また、図5に示すように、既設枠2と、水切材60の固定部61や新設下枠42、新設縦枠43、44との間には、気密防水シートで構成された防水シート74が貼り付けられている。すなわち、新設上枠41部分では、防水シート74は既設上枠21の屋外面に両面テープなどで貼り付けられ、防水シート74の屋外側端部は水切材60の固定部61に両面テープなどで貼り付けられている。
新設下枠42部分では、防水シート74は既設下枠22の屋外面に貼り付けられ、新設下枠42の下面において屋外側に折り曲げられて新設下枠42に貼り付けられている。
新設縦枠43、44部分では、図示を省略するが、防水シート74は既設縦枠23、24の屋外面に貼り付けられ、新設縦枠43、44の外周面において屋外側に折り曲げられて新設縦枠43、44に貼り付けられている。
これにより、新設上枠41部分には、防水シート73、74と、新設断熱材31と、水切材60とで囲まれた密閉空間(空気層82)が形成される。第2実施形態では、この空気層82と新設断熱材31とで断熱層80が形成されている。なお、図5では、防水シート73、防水シート74を太い実線で示している。
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態では、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、防水シート73を新設断熱材31の屋外側に配置し、防水シート73の開口側端縁を、水切材60や新設下枠42、新設縦枠43、44に貼り付けているので、新設断熱材31への雨水の浸入を防止でき、胴縁32が設けられた通気層を介して雨水を排水できる。
新設枠4や水切材60と、既設枠2との間に防水シート74を設け、断熱層80として利用される空気層82を形成しているので、第1実施形態と同様に断熱性能を向上できる。
防水シート73で防水ラインを形成したので、第1実施形態における気密防水シート72を不要にできる。このため、防水シート73、74の貼り付け作業が容易となり、防水処理や改装作業を容易に行うことができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図6に基づいて説明する。なお、第3実施形態は、改装用ではなく新築用の建物開口部の上部排水構造である点が第1実施形態と相違するが、第1実施形態と対応する構成には同一符号を付し説明を省略する。
第3実施形態は、新築時の構造であるため、既設外壁1や既設枠2は設けられておらず、躯体10の屋外側には新設断熱材31、胴縁32、新設外装材30が配置されている。また、躯体10で囲まれた開口部には、新設枠4がネジ15で固定され、新設枠4内には新設障子5が開閉可能に設けられている。
新設断熱材31の屋内側に位置する躯体10の表面には、防水シート71が貼られている。防水シート71の開口側端縁は、躯体10の内周面に沿って屋内側に折り込まれ、調整部材415や取付片411の屋内面に沿って折り曲げられ、さらに取付片411の内周面に両面テープなどで貼り付けられている。
水切用防水シート75は、第1実施形態と同じく気密性を有するシートであり、防水シート71から水切材60まで設けられている。
水切用防水シート75の屋内側端部は、新設断熱材31の裏面側において、前記防水シート71の表面(屋外面)に両面テープなどで貼り付けられ、防水シート71に連続して設けられている。
水切用防水シート75の屋外側端部は、水切用防水シート75の屋内側端部よりも低い位置で、水切材60の傾斜部63の表面に両面テープなどで貼られている。このため、水切用防水シート75は、屋内側端部で防水シート71に連続して設けられ、この屋内型端部から屋外側端部に向かって、水切用防水シート75の表面が下り勾配となるように設けられている。
したがって、新設断熱材31および躯体10間に浸入した雨水は、防水シート71に沿って流れ、水切用防水シート75から水切材60の傾斜部63上に流れ、水抜き部品68から屋外側に排水される。
[第3実施形態の作用効果]
第3実施形態においても、水切材60を新設上枠41に取り付け、防水シート71との間は、水切用防水シート75を配置したので、前記第1実施形態の効果(7)、(8)と同様の作用効果を奏することができる。
また、既設外壁1や既設枠2が設けられていない点を除けば、防水構造や断熱構造は前記第1実施形態と同様であるため、前記第1実施形態の(1)〜(4)、(6)、(9)と同様の作用効果を奏することができる。
[変形例]
なお、本発明は以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
[第1変形例]
例えば、図7に示すように、新設断熱材31を新設上枠41に当接する位置まで延長して断熱層80を形成してもよい。すなわち、新設断熱材31には、水切材60の固定部61が配置可能な凹部311が形成され、新設断熱材31の下面を新設上枠41の上面に当接させている。
第1変形例では、第1実施形態と同じく、既設枠2と新設枠4との間に、気密防水シート72を配置している。また、図7の変形例では、第2実施形態と同様に、新設断熱材31の屋外側に防水シート73を配置して水密ラインを設定しており、新設断熱材31が新設上枠41まで連続している。このため、第2実施形態で説明した空気層82を形成するための防水シート74は設ける必要が無い。
[第2変形例]
また、図8に示すように、新築時の建物開口部の上部排水構造として、新設断熱材31を新設上枠41に当接する位置まで延長して断熱層80を形成し、第2実施形態や第1変形例と同様に、新設断熱材31の屋外側に防水シート73を配置し、この防水シート73を水切材60の傾斜部63に両面テープなどで貼り付けてもよい。
また、第3実施形態と同様に、躯体10と新設断熱材31との間に気密防水シート72を配置し、気密防水シート72の屋内側端部を新設上枠41の取付片411に貼り付けてもよい。
[その他の変形例]
本発明の建物開口部の上部排水構造としては、新設上枠41に取り付けられた水切材60と、外壁に設けられた防水層(防水シート71や防水シート73等)とを、水切用防水シート75で繋いで構成されたものであればよい。特に、水切用防水シート75は、防水シート71と別体に設けられるものでもよいし、防水シート73の下端部を水切用防水シートとして兼用してもよい。
また、水切材60の具体的な構造、形状、材質は前記実施形態に限定されない。
新設窓の面材としては、トリプルガラス47、57に限定されず、複層ガラス(二重ガラス)でもよく、一般的な単板ガラスに比べて断熱性能の高いものであればよい。
また、新設窓の面材は、少なくとも1枚のガラスの見込み方向の位置が、仮想面S1および仮想面S2間に配置されたものに限定されない。ただし、新設窓において面材によって形成される断熱ラインと、外壁において新設断熱材31等で構成される断熱層80の断熱ラインとは、見込み方向の位置がほぼ同じとされ、外壁表面に対して断熱ラインがほぼ平行となるようにすることが断熱性能を向上できる点で好ましい。
新設窓としては、前述した縦すべり出し窓とFIX窓との連窓に限定されず、引違い窓、片上げ下げ窓、FIX窓、縦すべり出し窓、すべり出し窓等の単窓や、これらを組み合わせた連窓、段窓などでもよい。すなわち、新設窓は、新築用および改装用の様々な種類の窓に適用できる。
3…新設外壁、4…新設枠、5…新設障子、10…躯体、15…ネジ、30…新設外装材、31…新設断熱材、32…胴縁、41…新設上枠、60…水切材、61…固定部、63…傾斜部、66…バックアップ材、67…湿式シーリング材、68…水抜き部品、71…防水層である防水シート、72…気密防水シート、73…防水層である防水シート、74…防水シート、75…水切用防水シート、80…断熱層、81、82…空気層。

Claims (5)

  1. 建物の外壁に形成されて窓枠が配置される建物開口部の上部排水構造であって、
    前記外壁は、外装材と、外装材の屋内面側に設けられた防水層とを備え、
    前記窓枠の上枠には水切材が取り付けられ、
    前記水切材は、前記上枠に取り付けられる固定部と、屋外側が低くなるように傾斜された傾斜部とを備えるとともに、前記傾斜部は前記上枠よりも屋外側に延出され、
    前記水切材の前記傾斜部と、前記防水層とに亘って水切用防水シートが設けられている
    ことを特徴とする建物開口部の上部排水構造。
  2. 請求項1に記載の建物開口部の上部排水構造において、
    前記防水層は、防水シートで形成され、
    前記水切用防水シートの屋内側端部は、前記防水シートに連続され、
    前記水切用防水シートの屋外側端部は、前記傾斜部に取り付けられている
    ことを特徴とする建物開口部の上部排水構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載の建物開口部の上部排水構造において、
    前記外装材と建物の躯体との間には、断熱材が配置され、
    前記断熱材と、前記上枠との間には、空気層が設けられ、
    前記水切材の前記固定部は、前記空気層に配置されている
    ことを特徴とする建物開口部の上部排水構造。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の建物開口部の上部排水構造において、
    前記外装材および前記傾斜部間には、
    前記外装材および前記傾斜部間を塞ぐシーリング材と、
    前記傾斜部に流れた水を排水する水抜き穴とが設けられている
    ことを特徴とする建物開口部の上部排水構造。
  5. 請求項4に記載の建物開口部の上部排水構造において、
    前記水抜き穴は、前記外装材および前記傾斜部間に配置される水抜き部品、または、前記シーリング材の一部に形成した切欠部で構成されている
    ことを特徴とする建物開口部の上部排水構造。
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