以下に、本発明の第1及び第2実施形態の蓄電状態調整装置について図面を参照して説明する。
第1及び第2実施形態の蓄電状態調整装置は、複数の畜電池(二次電池やバッテリーとも呼ぶ)が直列に接続された組電池の充放電時の蓄電状態を調整する装置である。
図1には、組電池の充放電時に蓄電池間で電池電圧(セル電圧)がバランスしていない場合が示されている。
このように組電池の充放電時に蓄電池間で電池電圧のバランスがとれていないと、蓄電池間の容量のばらつきにより、同じ電力を充放電しても、過充電/過放電となる蓄電池が出てくる。蓄電池は過充電状態、過放電状態になると、電力損失や寿命劣化や安全上の問題が起こる。
そこで、近年、組電池の充放電時に蓄電池間で電池電圧のバランスをとるためのセルバランス方式の開発が盛んに行われている。そして、セルバランス方式の中で、とりわけ、高効率かつ短時間でセルバランスを実現できるアクティブセルバランス方式が注目されている。
図2(A)及び図2(B)には、それぞれアクティブセルバランス方式が導入された比較例1、2の電池パック1´、2´が示されている。以下では、比較例1、2で同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
比較例1の電池パック1´は、図2(A)に示されるように、組電池100、フライバックトランス、蓄電状態調整回路、P+端子、P−端子などを備えている。
蓄電状態調整回路は、組電池100に含まれる複数の蓄電池(二次電池)の電池電圧の均一化を図り、各畜電池における、電気の蓄積状態(すなわち蓄電状態)を調整する。
蓄電状態調整回路は、一次側駆動部、二次側分配放出部を有する。
一次側駆動部は、セルバランスコントローラCBC1´、駆動スイッチ素子SWを有し、一次側であるエネルギ蓄積元となる。駆動スイッチ素子SWは、例えばMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、接合型FET、バイポーラトランジスタ等の半導体スイッチ素子等である。
二次側分配放出部は、ダイオードD1、D2、D3、D4を有し、各畜電池に電力(エネルギー)を放電し、再配分する。
電池パック1´において、蓄電状態調整装置回路に接続された組電池100は、複数(n個)の充放電可能な蓄電池(電池セル、二次電池、蓄電手段とも言う)BAT1〜BATn(ここでは4つの畜電池BAT1、BAT2、BAT3、BAT4)を含む。
フライバックトランスにおいて、一次側コイルLPは一次側のインダクタ、二次側コイルL1、L2、L3、L4は二次側のインダクタである。
蓄電状態調整回路は、フライバックコンバータ回路を構成している。一次側駆動部では、組電池100の正極からエネルギが供給され、セルバランスコントローラCBC1´が駆動スイッチ素子SWを制御して、駆動スイッチ素子SWのON期間にセルバランスコントローラCBC1´で設定されたエネルギを一次側コイルLPに蓄積する。
一次側コイルLPは組電池100の正極に接続されているため、充電時は充電器及び組電池100全体からエネルギの供給を受ける。この一次側コイルLPに供給されたエネルギは駆動スイッチ素子SWがOFFに切り替わると、二次側コイルL1〜L4に再分配(出力)され、二次側コイルL1〜L4が再分配された充電器および電池電圧からなるエネルギを電池電圧の低い畜電池に供給する。
また、一次側コイルLPは負荷接続時、組電池100全体からエネルギ供給を受ける。この一次側コイルLPに供給されたエネルギは、駆動スイッチ素子SWがOFFしている際、二次側コイルL1〜L4に再分配され、二次側コイルL1〜L4が再分配された電池電圧からなるエネルギーを電池電圧の低い畜電池に供給する。
二次側分配放出部は、放電・再分配部であり、駆動スイッチ素子SWがOFFの時に、一次側コイルLPに蓄積されたエネルギーをダイオードD1、D2、D3、D4を通して対応する蓄電池BAT1〜BAT4に放電供給する。
フライバックトランスは、駆動スイッチ素子SWのON期間中に一次側コイルLPにエネルギーを蓄える。そして、フライバックトランスは、駆動スイッチ素子SWがOFFに切り替わると、一次側コイルLPの逆起エネルギを利用して蓄えられていたエネルギを一気に二次側コイルL1、L2、L3、L4に出力する。
比較例1では、蓄電状態調整回路とフライバックトランスを含む装置を「蓄電状態調整装置」と呼ぶ(後述する比較例2、第1及び第2実施形態でも同様)。電池パック1´のP+端子は充電器又は負荷の正極と接続され、P−端子は充電器又は負荷の負極と接続されている。
組電池100において、蓄電池BAT1、BAT2、BAT3及びBAT4は直列に接続されており、畜電池BAT4の正極はP+端子と接続され、畜電池BAT1の負極がP−端子と接続されている。
組電池100の蓄電池BAT4の正極は一次側コイルLPの一端と接続されており、一次側コイルLPの他端は駆動スイッチ素子SWの一端と接続されている。駆動スイッチ素子SWの他端は抵抗Rを介して畜電池BAT1の負極と接続されている。
二次側コイルL1は、一端が畜電池BAT1の負極と接続されており、他端がダイオードD1を介して畜電池BAT1の正極と接続されている。ダイオードD1は一端が二次側コイルL1の他端と接続され、他端が畜電池BAT1の正極と接続されている。
二次側コイルL2は、一端が畜電池BAT1の正極と畜電池BAT2の負極に接続されており、他端がダイオードD2を介して畜電池BAT2の正極と接続されている。ダイオードD2は、一端が二次側コイルL2の他端と接続され、他端が畜電池BAT2の正極と接続されている。
二次側コイルL3は、一端が畜電池BAT2の正極と畜電池BAT3の負極に接続されており、他端がダイオードD3を介して畜電池BAT3の正極に接続されている。ダイオードD3は、一端が二次側コイルL3の他端と接続され、他端が畜電池BAT3の正極と接続されている。
二次側コイルL4は、一端が畜電池BAT3の正極と畜電池BAT4の負極に接続されており、他端がダイオードD4を介して畜電池BAT4の正極とP+端子に接続されている。ダイオードD4は、一端が二次側コイルL4の他端と接続され、他端が畜電池BAT4の正極とP+端子に接続されている。
セルバランスコントローラCBC1´は、駆動スイッチ素子SWのON/OFFを制御するスイッチ素子制御信号Sconを生成し出力する。具体的には、スイッチ素子制御信号Sconは、例えば駆動スイッチ素子SWを所定のタイミングでONさせる矩形パルス信号等である。
抵抗Rの一端はセルバランスコントローラCBC1´および駆動スイッチ素子SWに接続されている。抵抗Rの他端はP−端子と接続されている。
比較例2の電池パック2´では、一次側コイルLP1、LP2、LP3、LP4はそれぞれフライバックトランス1〜4の一次側のインダクタ、二次側コイルL1、L2、L3、L4はそれぞれフライバックトランス1〜4の二次側のインダクタである。また、フライバックトランス1〜4に対応して、抵抗R1〜R4が設けられている。
比較例2の蓄電状態調整回路は、フライバックコンバータ回路を構成している。一次側駆動部では、充電器及び組電池100全体からエネルギが供給され、セルバランスコントローラCBC2´が、4つの一次側コイルLP1〜LP4に対応する4つの駆動スイッチ素子SW1〜SW4を個別に制御して、少なくとも1つの駆動スイッチ素子のON期間にセルバランスコントローラCBC2´で設定されたエネルギを対応する一次側コイルに蓄積する。
比較例2では、4つの蓄電池BAT1〜BAT4それぞれの電池電圧を計測する電圧センサVS1〜VS4の計測値がセルバランスコントローラCBC2´に送られ、例えば4つの蓄電池BAT1〜BAT4の電池電圧の平均値よりも低い電池電圧の蓄電池に対応する駆動スイッチ素子をONとし、対応する一次側コイルにエネルギを蓄積させる。
各一次側コイルは組電池100の正極及びP+端子に接続されているため、少なくとも1つの一次側コイルは充電時に組電池100全体及び充電器からエネルギの供給を受ける。少なくとも1つの一次側コイルに供給されたエネルギは、対応する駆動スイッチ素子がOFFに切り替わると、対応する二次側コイルに再分配(出力)され、該二次側コイルが再分配された充電器および電池電圧からなるエネルギを電池電圧の低い畜電池に供給する。
また、少なくとも1つの一次側コイルは負荷接続時に組電池100全体からエネルギ供給を受ける。少なくとも1つの一次側コイルに供給されたエネルギは、対応する駆動スイッチ素子SWがOFFしている際、二次側コイルL1〜L4に再分配され、二次側コイルL1〜L4が再分配された電池電圧からなるエネルギを電池電圧の低い畜電池に供給する。
以上説明した比較例1、2の蓄電状態調整装置によれば、少なくとも1つの一次側コイルを介して二次側コイルL1〜L4に選択的に一定の電流(セルバランス電流)を供給することができ、セルバランスをとることが可能となる。
ところで、蓄電池の重要なニーズとして1回の充電で機器(負荷)の駆動時間を出来る限り長時間活用できることが望まれる。また、数分でガソリンを充電できるような自動車などにとって、蓄電池で駆動させる電気自動車などを普及するためには、充電時間が通常1時間以上の長時間に及んでしまうことが問題となっている。
この問題の対策として、比較例1、2の電池パック1´、2´の組電池の蓄電池へのセルバランス電流を増大させることが考えられるが、回路の大型化や電力損失の増大を招くことが懸念される。
詳述すると、高速充放電時には通常より大きな電流を流す必要がある。例えば5分間で蓄電池を満充電させるには、1時間かけて蓄電池を充電させる場合の12倍の速度で充放電させる必要がある。電流値では12倍の電流を流す必要があり、急速にセルバランスを完了させるためには、セルバランス電流も増大させる必要がある。蓄電池のエネルギ損失は、回路および蓄電池の内部抵抗に流れる電流の2乗に、回路抵抗と内部抵抗の和を乗じた値となる。
しかし、確実に高速充電するために大きなセルバランス電流を流すと、エネルギ損失(電力損失)が大きくなってしまう。例えばセルバランス電流IをN倍したときのエネルギ損失(NI)2×R×t=NI×NIRtとなり、セルバランス電流Iの場合のエネルギ損失I×R×Nt=NIRtのNI倍となる。
そこで、発明者は、大型化や電力損失の増大を抑制できる高速充電対応の電池パックとして、図3(A)及び図3(B)にそれぞれ示される第1及び第2実施形態の電池パック1、2を開発した。以下の第1及び第2実施形態の説明では、比較例1、2と同一の構成要素には同一の符号を付している。
第1及び第2実施形態の電池パック1、2は、それぞれ比較例1、2の電池パック1´、2´をベースに改良を加えたものである。
すなわち、第1実施形態の電池パック1は、図3(A)から分かるように駆動スイッチ素子SWに代えて可変定電流回路400が設けられている点と、第1実施形態の実施例1のセルバランス制御系を示す図4から分かるように、セルバランスコントローラCBC1が電圧監視部500、バランス時間目標値設定部600、コイル電流制御部700、記憶部800、タイマ900を含む点と、4つの蓄電池BAT1〜BAT4の電池電圧をそれぞれ計測する4つの電圧センサVS1〜VS4が設けられている点が比較例1の電池パック1´と異なる。
可変定電流回路400は、一次側コイルLPに流れる電流を調整する電流調整部、すなわち一次側コイルLPに蓄積されるエネルギを調整するエネルギ調整部として機能する。
可変定電流回路400は、図5に示されるように、可変電流源400aと、2つのMOSFET400b、400cを有するカレントミラー回路とを含む。なお、MOSFETに代えて、接合型FETやバイポーラトランジスタを用いても良い。
2つのMOSFET400b、400cは、ゲート同士が接続され、かつドレイン同士が接続されている。
MOSFET400bでは、ソースとゲートが接続され(短絡され)、ソースが可変電流源400aの正極に接続されている。可変電流源400aからの電流がFET400bのソース−ドレイン間に参照電流Irefとして流れると、FET400cのソース−ドレイン間に参照電流Irefをコピーした出力電流Ioutが流れる。出力電流Ioutは、一次側コイルLPに供給される。セルバランスコントローラCBC1のコイル電流制御部700から可変電流源400aに送られるコイル電流設定値により、参照電流Irefひいては出力電流Ioutの大きさが決まる。
電圧監視部500は、4つの電圧センサVS1〜VS4の計測値を監視(モニタ)し、随時、複数の蓄電池BAT1〜BAT4の電池電圧(セル電圧)の差分をとり、バランス時間目標値設定部600に出力する。
ここで、複数の蓄電池の電池電圧の差分は、電池電圧が最高又最低の蓄電池とその他の蓄電池の電池電圧の差分であっても良いし、各蓄電池とその他の蓄電池の電池電圧の差分であっても良い。また、複数の蓄電池の電池電圧の差分に代えて、例えば各蓄電池の電池電圧と複数の蓄電池の電池電圧の平均値の差分を用いても良い。
バランス時間目標値設定部600は、組電池100の充電開始又は放電開始から複数の蓄電池の電圧がバランスするまでの時間であるバランス時間BTの目標値であるバランス時間目標値BTtを設定する。
詳述すると、バランス時間目標値設定部600は、電池パック1に充電器及び負荷が未接続状態のときの電圧監視部500からの複数の電池電圧の差分と、記憶部800に保存された電流上限値Imax、充電時間CT、放電時間DCTに基づいて、充電時及び放電時のバランス時間目標値BTt−C,BTt−DCを算出し、記憶部800に保存する。なお、記憶部800としては、例えばメモリやハードディスクが挙げられる。
具体的には、充電時のバランス時間目標値BTt−Cは、充電時間CT(例えば64ms)以下の時間であって、充電初期(例えば充電開始時)から電流上限値Imax(例えば44A)以下のコイル電流を一次側コイルLPに供給することで4つの蓄電池BAT1〜BAT4の電池電圧をバランスさせることができる時間として算出、設定することができる(図6、図7参照)。
図6には、充電時間CT(約64ms)に対して比較的短時間にセルバランスさせる例が示されており、ここでは、バランス時間目標値BTt−Cは、約56msに算出、設定されている。
図7には、充電時間CT(約64ms)とほぼ同じ時間でセルバランスさせる例が示されており、ここでは、バランス時間目標値BTt−Cは、約64msに算出、設定されている。
なお、放電時のバランス時間目標値BTt−DCに関しても、充電時と同様に、放電時間を基準に算出、設定することができる。図6、図7では、複数の蓄電池の電池電圧がバランスする(略一致する)電圧は、3.3V〜3.6Vとなっている。
ここで、各バランス時間目標値は、充電開始又は放電開始から該バランス時間目標値までの一次側コイルLPにおけるエネルギ総蓄積量(W=∫1/2LI2,但しLは自己インダクタンス、Iは電流)が、充電開始時から充電時間CTもしくは放電時間DCTまでの任意の時間をバランス時間目標値としたときのエネルギ総蓄積量の最大値と最小値の中間値以下となるように設定されるのが好ましく、該最小値となるように設定されるのが最も好ましい。
コイル電流制御部700は、電池パック1に充電器及び負荷が未接続状態のときの電圧監視部500からの電池電圧(セル電圧)の差分と、記憶部800に保存された電流上限値Imax、充電時間CT、放電時間DCT、バランス時間目標値BTt−C、BTt−DCに基づいて、充電時及び放電時に一次側コイルLPに供給すべきコイル電流量(コイル電流値×供給時間)を算出、設定し、充電時及び放電時のコイル電流量の設定値を記憶部800に保存する。
また、コイル電流制御部700は、電池パック1が充電器に接続された充電時又は電池パック1が負荷(機器)に接続された放電時に記憶部800から対応するコイル電流量の設定値を読み出し、該設定値に応じた駆動信号(コイル電流値をパルス振幅とし供給時間をパルス幅とする所定周期のパルス信号)を可変定電流回路400に送る。可変定電流回路400は、設定されたコイル電流量を一次側コイルLPに供給する。
なお、コイル電流制御部700には、充電器/負荷接続検知部960からの検知信号又は非検知信号が送信されるようになっている。充電器/負荷接続検知部960は、P+端子とP-端子との間の電圧の変化によって、電池パック1に対する充電器や負荷の接続の有無を検知する。すなわち、P+端子とP-端子との間の電圧の変化が大きい場合には充電器の接続の有無を検知でき、小さい場合には負荷の接続の有無を検知できる。
以下に、第1実施形態の電池パック1の実施例1のセルバランス制御系によるプレセルバランス処理について図8のフローチャートを参照して説明する。このプレセルバランス処理は、電池パック1が充電器にも負荷にも接続されていない状態、すなわち充放電時以外のときに繰り返し行われる。つまり、プレセルバランス処理は、前回行われたときから例えば数分〜数時間経過後、充放電時以外のときに行われる。
最初のステップS1では、電圧監視部500が、複数の電圧センサV1〜V4の計測値から複数の蓄電池の電池電圧の差分を算出し、バランス時間目標値設定部600に出力する。
次のステップS2では、バランス時間目標値設定部600が、複数の蓄電池の電池電圧の差、充電時間CT及び放電時間DCT、電流上限値Imaxに基づいて、充電時、放電時のバランス時間目標値BTt−C、BTt−DCを算出する。
次のステップS3では、バランス時間目標値設定部600が、算出したバランス時間目標値BTt−C、BAT−DCを記憶部800に保存する。
次のステップS4では、コイル電流制御部700が、電流上限値Imax及びバランス時間目標値BTt−C、BTt−DCに基づいて、充電開始、放電開始からバランス時間目標値BTt−C、BTt−DCまでに複数の蓄電池の電圧をバランスさせるための、一次側コイルLPに供給すべきコイル電流を算出、設定する。
次のステップS5では、コイル電流制御部700が、充電時及び放電時のコイル電流の設定値を記憶部800に保存する。ステップS5が実行されると、フローは終了する。
以上のようにして行われるプレセルバランス処理により、理論上、電池パック1は充放電前に充放電時のセルバランスがとれた状態となる。
次に、実施例1のセルバランス制御系による蓄電状態調整処理(セルバランス処理とも呼ぶ、以下同様)について図9のフローチャートを参照して説明する。この蓄電状態調整処理は、プレセルバランス処理後、電池パック1の充放電時に行われる。具体的には、電池パック1が充電器又は負荷に接続されたときにコイル電流制御部700により開始される。このとき、タイマ900による計時が開始される。なお、電池パック1が充電器又は負荷に接続されたときや接続が解除されたときに、それを通知する信号(充電器接続信号、充電器接続解除信号、負荷接続信号、負荷接続解除信号)が充電器/負荷接続検知部960からコイル電流制御部700に送信されるようになっている。
最初のステップS11では、コイル電流制御部700が、充電器に接続されているか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS12に移行し、否定されるとステップS13に移行する。
ステップS12では、コイル電流の供給を行う。具体的には、コイル電流制御部700が、充電時のコイル電流量の設定値(コイル電流値をパルス振幅とし供給時間をパルス幅とするパルス信号)を可変定電流回路400に所定の時間間隔で(所定のパルス周期で)送る。このとき、可変定電流回路400から一次側コイルLPに設定値のコイル電流量が所定の時間間隔で供給される。コイル電流量の供給が終わる毎に、逆起エネルギにより、一次側コイルLPに蓄積されたエネルギが少なくとも1つの蓄電池に対応する二次側コイルに伝達され、蓄電池間の電圧差が低減される。ステップS12が実行されると、ステップS14に移行する。
ステップS13では、コイル電流制御部700が、放電時のコイル電流量の設定値(コイル電流値をパルス振幅とし供給時間をパルス幅とするパルス信号)を可変定電流回路400に所定の時間間隔で(所定のパルス周期で)送る。このとき、可変定電流回路400から一次側コイルLPに設定値のコイル電流量が供給される。コイル電流量の供給が終わると、逆起エネルギにより、一次側コイルLPに蓄積されたエネルギが少なくとも1つの蓄電池に対応する二次側コイルに伝達され、蓄電池間の電圧差が低減される。ステップS13が実行されると、ステップS15に移行する。
ステップS14では、コイル電流制御部700が、充電時のバランス時間目標値BTt−Cが経過したか否かをタイマ900の計時によって判断する。ここでの判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS12に戻る。
ステップS15では、コイル電流制御部700が、放電時のバランス時間目標値BTt−DCが経過したか否かをタイマ900の計時によって判断する。ここでの判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS13に戻る。
次に、第1実施形態の電池パック1の実施例2のセルバランス制御系について図10を参照して説明する。
ところで、バランス時間目標値は、プレセルバランス処理によって繰り返し更新されるが、その更新直後に蓄電状態調整処理が実施されるとは限らず、その場合には、組電池100の蓄電状態(複数の蓄電池の残量)が変化し、電力損失を抑制しつつセルバランスをとるために一次側コイルLPに供給すべきコイル電流量の総量が変化してしまう。
そこで、実施例2のセルバランス制御系には、図10に示されるように、バランス時間目標値補正部650が設けられている。
バランス時間目標値補正部650は、充放電中(好ましくは充電初期)に電圧監視部500からの複数の蓄電池の電池電圧の差ΔV1〜ΔV3を取得し、バランス時間目標値の補正値であるバランス時間目標値補正値BTt´を算出し、記憶部800に保存する。
ここでは、バランス時間目標値設定部600は、プレセルバランス処理時に、バランス時間目標値BTtに加えて複数の蓄電池の電池電圧の差ΔV1〜ΔV3を記憶部800に保存する。すなわち、プルセルバランス処理毎に、バランス時間目標値BTtとΔV1〜ΔV3が更新される。
そして、バランス時間目標値補正部650は、充電時、放電時のバランス時間目標値BTt−C、BTt−DCを、充放電開始時のΔV1〜ΔV3の総和(前者)が記憶部800に保存されたプレセルバランス処理時のΔV1〜ΔV3の総和(後者)に対して大きい場合には前者と後者の比率分だけ増加させ、小さい場合には前者と後者の比率分だけ減少させ、得られた充電時、放電時のバランス時間目標値補正値を記憶部800に保存する。なお、前者と後者が略一致する場合(例えば両者の差が両者の平均の3%未満である場合)にはバランス時間目標値を補正しない。
次に、第1実施形態の電池パック1の実施例2のセルバランス制御系による蓄電状態調整処理について図11のフローチャートを参照して説明する。この蓄電状態調整処理は、プレセルバランス処理後、電池パック1の充放電開始時に行われる。具体的には、電池パック1が充電器又は負荷に接続されたときにコイル電流制御部700により開始される。このとき、タイマ900による計時が開始される。なお、以下では、便宜上、充放電時における蓄電状態調整処理を区別することなく一括して説明する。
最初のステップS21では、バランス時間目標値補正部650が、充放電中(好ましくは充電初期)におけるΔV1〜ΔV3の総和と、記憶部800に保存されたプレセルバランス処理時のΔV1〜ΔV3の総和を比較する。
次のステップS22では、バランス時間目標値補正部650が、上述のようにしてバランス時間目標値の補正が必要か否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS23に移行し、否定されるとステップS24に移行する。
ステップS23では、バランス時間目標値補正部650が、充電中におけるΔV1〜ΔV3の総和とプレセルバランス処理時のΔV1〜ΔV3の総和の比と、コイル電流量設定値に基づいてバランス時間目標値を補正する。
ステップS24では、コイル電流制御部700が、設定値のコイル電流量を供給する。
ステップS25では、バランス時間目標値が経過したか否かをタイマ900の計時により判断する。ここでの判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS24に戻る。
次に、第1実施形態の実施例3のセルバランス制御系について図12を参照して説明する。
ところで、バランス時間目標値及びコイル電流量設定値は、プレセルバランス処理によって繰り返し更新されるが、その更新直後に蓄電状態調整処理が実施されない場合には、その更新時から組電池100の蓄電状態(複数の蓄電池の残量)が変化し、電力損失を抑制しつつセルバランスをとるために一次側コイルLPに供給すべきコイル電流量の総量が変化してしまう。
そこで、実施例3のセルバランス制御系には、図12に示されるように、電流センサISと電流監視部950が設けられている。
電流センサISは、一次側コイルLPに直列に接続され、該一次側コイルLPに流れる電流(コイル電流)を計測する。
電流センサISの計測値は電流監視部950に送られる。電流監視部950は、プレセルバランス処理時に記憶部800に保存されたコイル電流量設定値の電流値と、充放電中(好ましくは充電初期)における電流センサISの計測値の差ΔIをとり、記憶部800に保存する。
コイル電流制御部700は、記憶部800に保存された電流上限値Imax、バランス時間目標値BTt、コイル電流量設定値に基づいて、コイル電流量補正値を算出し、記憶部800に保存する。コイル電流量設定値を補正するには、コイル電流量設定値(パルス信号)の電流値であるコイル電流設定値(パルス振幅)、電流供給時間(パルス幅)、供給時間間隔(パルス周期)の少なくとも1つを変更すれば良い。
具体的には、コイル電流制御部700は、コイル電流量設定値を、充放電中のコイル電流量(前者)が、プレセルバランス処理時のコイル電流量設定値(後者)に対して大きい場合には前者と後者の比率分だけ減少させ、小さい場合には前者と後者の比率分だけ増加させ、得られた充電時、放電時のコイル電流量補正値を記憶部800に保存する。なお、前者と後者が略一致する場合(例えば両者の差が両者の平均の3%未満である場合)にはコイル電流量設定値を補正しない。
次に、第1実施形態の電池パック1の実施例3のセルバランス制御系による蓄電状態調整処理について図13のフローチャートを参照して説明する。この蓄電状態調整処理は、プレセルバランス処理後、電池パック1の充放電開始時に行われる。具体的には、電池パック1が充電器又は負荷に接続されたときにコイル電流制御部700により開始される。このとき、タイマ900による計時が開始される。なお、以下では、便宜上、充放電時における蓄電状態調整処理を区別することなく一括して説明する。
最初のステップS31では、コイル電流制御部700が、設定されたコイル電流量を供給する。
次のステップS32では、電流監視部950が、電流センサISの計測値を取得する。
次のステップS33では、コイル電流制御部700が、上述のようにしてコイル電流設定値の補正が必要か否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS34に移行し、否定されるとステップS36に移行する。
ステップS34では、コイル電流制御部700が、プレセルバランス処理時のコイル電流設定値と充放電中の電流センサISの計測値の差ΔIに基づいて、コイル電流量設定値を補正し、得られたコイル電流量補正値を記憶部800に保存する。
次のステップS35では、コイル電流制御部700が、補正後の設定値のコイル電流量を供給する。
ステップS36では、バランス時間目標値が経過したか否かをタイマ900の計時により判断する。ここでの判断が肯定されるとフローは終了し、否定されると同じ判断を再び行う。
なお、上記実施例3のセルバランス制御系では、電流センサISの計測値に基づいてコイル電流量を補正しているが、図14に示される実施例4のセルバランス制御系のように、プレセルバランス処理時のΔV1〜ΔV3の総和と充放電中のΔV1〜ΔV3の総和の比に基づいて、コイル電流量設定値を補正しても良い。
また、上記実施例2のセルバランス制御系では、4つの電圧センサの計測値に基づいて、バランス時間目標値を補正しているが、図15に示される実施例5のセルバランス制御系のように、充放電中の電流センサISの計測値(前者)からプレセルバランス処理時のコイル電流設定値(後者)を引いた値ΔIに基づいて、バランス時間目標値を補正しても良い。具体的には、ΔIが正で大きい場合にはバランス時間目標値を減少させ、ΔIが負で大きい場合にはバランス時間目標値を増加させ、ΔIが略0の場合(例えばΔIの絶対値が前者と後者の平均の3%未満である場合)には補正しない。
以下に、第2実施形態の電池パック2の実施例1のセルバランス制御系について図16を参照して説明する。
第2実施形態の実施例1のセルバランス制御系には、図16に示されるように、4つの一次側コイルLP1〜LP4に対応する4つの可変定電流回路400A〜400Dが設けられている点が、第1実施形態の実施例1のセルバランス制御系と異なる。
そして、コイル電流制御部700は、プレセルバランス処理で記憶部800に保存されたΔV1〜ΔV3、バランス時間目標値BTt、電流上限値Imaxに基づいて、4つの可変定電流回路400A〜400Dの少なくとも1つに供給するコイル電流量を設定し、その設定値(コイル電流量設定値)を記憶部800に保存する。ここでは、充放電時に、プレセルバランス処理において電池電圧が4つの蓄電池の電池電圧の平均値よりも低い蓄電池に対応する一次側コイルに対して、可変定電流回路から設定されたコイル電流量がバランス時間目標値BTtを経過するまで供給される。
以下に、第2実施形態の電池パック2の実施例2のセルバランス制御系について図17を参照して説明する。
第2実施形態の実施例2のセルバランス制御系には、図17に示されるように、4つの一次側コイルLP1〜LP4に対応する4つの可変定電流回路400A〜400Dが設けられている点が、第1実施形態の実施例2のセルバランス制御系と異なる。
そして、コイル電流制御部700は、プレセルバランス処理で記憶部800に保存されたΔV1〜ΔV3、バランス時間目標値BTt、電流上限値Imaxに基づいて、4つの可変定電流回路400A〜400Dの少なくとも1つに供給するコイル電流量を設定し、その設定値(コイル電流量設定値)を記憶部800に保存する。ここでは、充放電時に、第1実施形態の実施例2と同様に必要に応じてバランス時間目標値BTtが補正され、電池電圧が4つの蓄電池の電池電圧の平均値よりも低い蓄電池に対応する一次側コイルに可変定電流回路から設定されたコイル電流量がバランス時間目標値を経過するまで供給される。
以下に、第2実施形態の電池パック2の実施例3のセルバランス制御系について図18を参照して説明する。
第2実施形態の実施例3のセルバランス制御系には、図18に示されるように、4つの一次側コイルLP1〜LP4に対応する4つの可変定電流回路400A〜400Dと4つの電流センサIS1〜IS4が設けられている点が、第1実施形態の実施例3のセルバランス制御系と異なる。
そして、コイル電流制御部700は、プレセルバランス処理で記憶部800に保存されたΔV1〜ΔV3、バランス時間目標値BTt、電流上限値Imaxに基づいて、4つの可変定電流回路400A〜400Dの少なくとも1つに供給するコイル電流量を設定し、その設定値(コイル電流量設定値)を記憶部800に保存する。ここでは、充放電時に、第1実施形態の実施例3と同様に必要に応じてバランス時間目標値BTtが補正され、電池電圧が4つの蓄電池の電池電圧の平均値よりも低い蓄電池に対応する一次側コイルに可変定電流回路から設定されたコイル電流量がバランス時間目標値を経過するまで供給される。
以下に、第2実施形態の電池パック2の実施例4のセルバランス制御系について図19を参照して説明する。
第2実施形態の実施例4のセルバランス制御系には、図19に示されるように、4つの一次側コイルLP1〜LP4に対応する4つの可変定電流回路400A〜400Dが設けられている点が、第1実施形態の実施例4のセルバランス制御系と異なる。
そして、コイル電流制御部700は、プレセルバランス処理で記憶部800に保存されたΔV1〜ΔV3、バランス時間目標値BTt、電流上限値Imaxに基づいて、4つの可変定電流回路400A〜400Dの少なくとも1つに供給するコイル電流量を設定し、その設定値(コイル電流量設定値)を記憶部800に保存する。ここでは、充放電時に、第1実施形態の実施例4と同様に必要に応じてコイル電流量設定値が補正され、電池電圧が4つの蓄電池の電池電圧の平均値よりも低い蓄電池に対応する一次側コイルに可変定電流回路から設定されたコイル電流量がバランス時間目標値を経過するまで供給される。
以下に、第2実施形態の電池パック2の実施例5のセルバランス制御系について図20を参照して説明する。
第2実施形態の実施例5のセルバランス制御系には、図20に示されるように、4つの一次側コイルLP1〜LP4に対応する4つの可変定電流回路400A〜400Dと4つの電流センサIS1〜IS4が設けられている点が、第1実施形態の実施例5のセルバランス制御系と異なる。
そして、コイル電流制御部700は、プレセルバランス処理で記憶部800に保存されたΔV1〜ΔV3、バランス時間目標値BTt、電流上限値Imaxに基づいて、4つの可変定電流回路400A〜400Dの少なくとも1つに供給するコイル電流量を設定し、その設定値(コイル電流量設定値)を記憶部800に保存する。ここでは、充放電時に、第1実施形態の実施例5と同様に必要に応じてバランス時間目標値が補正され、電池電圧が4つの蓄電池の電池電圧の平均値よりも低い蓄電池に対応する一次側コイルに可変定電流回路から設定されたコイル電流量がバランス時間目標値を経過するまで供給される。
以上説明した第1及び第2実施形態の蓄電状態調整装置は、複数(例えば4つ)の蓄電池BAT1〜BAT4が直列に接続された組電池100の蓄電状態を調整する蓄電状態調整装置であって、複数の蓄電池と直列に接続された一次側コイルと、複数の蓄電池それぞれと並列に接続され、一次側コイルに蓄えられたエネルギが伝達される複数の二次側コイルと、組電池100の充電開始又は放電開始から複数の蓄電池の電圧がバランスするまでの時間であるバランス時間の目標値(バランス時間目標値)を設定し、該目標値に基づいて、一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を調整するセルバランス制御系と、を備えている。
この場合、バランス時間目標値を適切な値に設定することで、充放電時にセルバランスするために一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を小さくする(好ましくは極小にする)ことができる。
この結果、一次側コイルに蓄積される総エネルギ量から、実際にセルバランスするのに消費されるエネルギ量を差し引いた値であるエネルギ損失量(電力損失量)の増大を抑制することができる。
結果として、充放電時の電力損失(エネルギ損失)の増大を抑制できる。
要するに、第1及び第2実施形態において、バランス時間目標値を設定することは、セルバランスをとるための一次側コイルに蓄積される総エネルギ量(コイル電流量×供給回数(パルス数))ひいてはエネルギ損失量を設定することに他ならない。つまり、バランス時間目標値の設定次第でエネルギ損失量が変わるため、バランス時間目標値を適切に設定することは非常に重要である。
すなわち、充電時間又は放電時間が同一の条件下では、バランス時間目標値を適切に設定することで、充放電時の電力損失を極力小さくすることができる。
また、一次側コイルに蓄積されるエネルギ量を徒に大きくするための回路構成をとらなくても良いため、装置の大型化を抑制できる。
また、セルバランス制御系は、組電池100に対して予め設定された充電時間CT又は放電時間DCTの範囲内で、一次側コイルに蓄積される総エネルギ量が所定値以下となるようにバランス時間目標値を設定し、該総エネルギ量を所定値以下となるように調整することが好ましい。
この場合、バランス時間目標値を適切な値に設定することができる。
また、セルバランス制御系は、組電池100の充放電時以外のときに、バランス時間目標値を設定し該バランス時間目標値に基づいて一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を設定することが好ましい。
この場合、事前にセルバランスをとることができる。この結果、充放電時には、充電開始時又は放電開始時から設定されたバランス時間目標値までに、設定された総エネルギ量を一次側コイルに供給すれば良いため、充放電時の制御を簡略化できる。
また、蓄電状態調整装置は、複数の蓄電池それぞれの電圧を計測する複数(例えば4つ)の電圧センサVS1〜VS4を更に備え、セルバランス制御系は、バランス時間目標値及び複数の電圧センサの出力に基づいて一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を調整することが好ましい。
この場合、バランス時間目標値及び充放電時の複数の蓄電池の電圧の差に応じて総エネルギ量を調整できるため、精度良くセルバランスさせることができる。
また、セルバランス制御系は、複数の電圧センサの計測値に応じてバランス時間目標値の設定を変更可能であることが好ましい。
この場合、蓄電池の蓄電状態に応じてバランス時間目標値の設定を変更できるので、バランス時間目標値が設定された後に蓄電池の蓄電状態が変化しても、その変化に対応した総エネルギ量を一次側コイルに供給できる。
また、蓄電状態調整装置は、一次側コイルに供給される電流を計測する電流センサを更に備え、セルバランス制御系は、バランス時間目標値及び電流センサの計測値に基づいて一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を調整することが好ましい。
この場合、バランス時間目標値及び充放電時に一次側コイルに供給される電流に応じて総エネルギ量を調整できるため、精度良くセルバランスさせることができる。
また、第2実施形態では、一次側コイルは、複数の二次側コイルに対応して複数設けられ、電流センサは、複数の一次側コイルに対応して複数設けられている。
この場合、複数の一次側コイルに供給される電流を個別に計測できるため、複数の一次側コイルに供給される電流を計測値に応じて個別に調整することができる。
また、セルバランス制御系は、電流センサの計測値に応じてバランス時間目標値の設定を変更可能であることが好ましい。
この場合、蓄電池の蓄電状態に応じてバランス時間目標値の設定を変更できるので、バランス時間目標値が設定された後に蓄電池の蓄電状態が変化しても、その変化に対応した総エネルギ量を一次側コイルに供給できる。
また、セルバランス制御系は、一次側コイルに接続された可変定電流回路を含むことが好ましい。
この場合、一次側コイルに電流を安定して供給でき、かつ該電流の電流値を随時変更することができる。
また、第2実施形態では、一次側コイルは、複数の二次側コイルに対応して複数設けられ、可変定電流回路は、複数の一次側コイルに対応して複数設けられている。
この場合、複数の一次側コイルに電流を個別に安定して供給でき、かつ該電流の電流値を随時変更することができる。
また、第1及び第2実施形態の電池パック1、2は、複数の蓄電池が直列に接続された組電池100と、該組電池100の蓄電状態を調整する蓄電状態調整装置と、を備えている。
この場合、充放電効率に優れた電池パックを提供できる。
また、第1又は第2実施形態の電池パックと、該電池パックに接続される充電器と、該電池パックに接続される負荷と、を備える負荷システムによれば、システム全体のエネルギ効率を向上することができる。
また、第1及び第2実施形態の蓄電状態調整方法は、複数(例えば4つ)の蓄電池BAT1〜BAT4が直列に接続された組電池100の蓄電状態を調整する蓄電状態調整方法であって、複数の蓄電池に対して一次側コイルが直列に接続され、複数の蓄電池それぞれに対して、一次側コイルに蓄えられたエネルギが伝達される複数の二次側コイルが並列に接続され、組電池の充電開始又は放電開始から前記複数の蓄電池の電圧がバランスするまでの時間であるバランス時間の目標値(バランス時間目標値)を設定する工程と、目標値に基づいて、一次側コイルに蓄積されるエネルギ量を調整する工程と、を含む。
この場合、バランス時間目標値を適切な値に設定することで、一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を小さくできる。
この結果、充放電時の電力損失(エネルギ損失)の増大を抑制できる。
また、設定する工程では、組電池100に対して予め設定された充電時間CT又は放電時間DCTの範囲内で、一次側コイルに蓄積される総エネルギ量が所定値以下となるようにバランス時間目標値を設定し、調整する工程では、該エネルギ量を所定値以下となるように調整することが好ましい。
この場合、バランス時間目標値を適切な値に設定することができる。
また、設定する工程では、組電池100の充放電時以外のときにバランス時間目標値を設定し、調整する工程では、組電池100の充放電時以外のときにバランス時間目標値に基づいて総エネルギ量を設定することが好ましい。
この場合、事前にセルバランスをとることができる。この結果、充放電時には、充電開始時又は放電開始時から設定されたバランス時間目標値までに、設定された総エネルギ量を一次側コイルに供給すれば良いため、充放電時の制御を簡略化できる。
なお、上記各実施形態では、コイル電流を調整するための調整部として、可変定電流回路が設けられているが、これに限らず、例えば、定電流源と、抵抗値を切り替え可能な抵抗回路や可変抵抗とを含む回路を設けても良いし、一次側コイルと組電池の接続と遮断を繰り返すスイッチング用のトランジスタを設けても良い。
また、可変定電流回路の構成は、可変定電流回路400、400A〜400Dの構成に限らず、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、電流供給回路として、フライバックトランスが用いられているが、これに限らず、他の電流加算器を用いても良い。この場合も、バランス時間目標値に基づいて、セルバランス制御系により電流供給回路としての電流加算器を制御することが好ましい。
また、上記実施形態において、組電池を構成する蓄電池、一次側コイル、二次側コイル、電圧センサ、電流センサの個数は、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、バランス時間目標値を、プレセルバランス処理時に設定しているが、これに代えて又は加えて、例えば充放電中に設定又は必要に応じて再設定しても良い。
また、上記実施形態では、バランス時間目標値に基づいて一次側コイルに蓄積される総エネルギ量=コイル電流値(パルス振幅)×供給時間(パルス幅)×供給回数(パルス数)を制御しているが、これに限らず、一次側コイルに蓄積される総エネルギ量を一定にして、コイル電流値やコイル電流量(コイル電流値×供給時間)や供給回数を制御しても良い。この場合も、充電開始時又は放電開始時からバランス時間目標値までのコイル電流値やコイル電流量や供給回数を閾値未満に抑えることで電力損失の増大を抑制することができる。すなわち、電流値や電流量や供給時間を時間分散させることで電流値や電流量を小さく(好ましくは最小限)に制御でき、エネルギ損失の増大及び装置の大型化を抑制できる。
また、上記実施形態の説明で用いた具体的な数値、形状等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下に、発明者が上記実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
特許文献1には、蓄電モジュールにおいて直列に接続された複数の蓄電池のセル電圧を、充電時に同一電圧にする目的で、充電電流を調整するセルバランス方式が開示されている。
しかし、高速充放電時に、電力損失の増大やモジュールの大型化を招く。
そこで、発明者は、複数の蓄電池を高速充放電する際のセルバランス時のエネルギ損失の増大や装置の大型化を抑制するために上記実施形態を発案した。